2015年03月03日

Dies irae Acta est Fabula

 むか〜しむかしに最初の不完全版やって以来、なんだかんだ気になり続けていた作品で、それが、なんかここしかない!って奇跡のタイミングで頭を過ぎったものでつい買ってしまったという。。。
 基本的に不完全版感想がかなり最初期の適当極まりないもの、ってのもあるし、その辺は脇に置いて改めて、って形での執筆ですが、もう五年以上前の作品でもあるのでなるだけ簡素に書きます。時間もないし。。。
 ついでにネタバレにも一切配慮しておりませんのであしからず。


シナリオ(27/30)

 相容れぬ想いの協和。


 あらすじに関しては、今更これ読んでやってみようか、って奇特な人もまずいないだろうからざっくりまとめます。
 主人公が暮らす街は、ずっと昔、第二次世界大戦時から派生する因縁に覆われていて、それが顕現していく中、本質的にその駒として作られた主人公がその渦中に巻き込まれていって。
 それは主人公の愛する日常を破壊するものだったので、その輝きを、平穏を取り戻すためにその不条理に、与えられた特殊な力で立ち向かっていく、という形。

 大枠の設定の作り込みがめっちゃ緻密かつスケール感があって、かつその設定の枠から更に終盤のルートは大きな舞台へと飛躍していく、その構成力の凄まじさと、その中でも根本の設定から揺らがない堅牢さ、常にギリギリの戦いを強いられる緊迫感と絶望感、そこからの逆転劇によるカタルシスが非常に爽快な作品。

 テキスト的には、全体的に荒々しさはありつつもギリギリのところで調和と余裕があるというか、今ほど洗練されてはいないけれど、その分ストレートに思想性が剥き出しになっていて感じ入る部分も多い、って感じでしょうか。
 語彙の豊富さも、その選択のセンスも、表現力の幅もやはり図抜けて素晴らしいと思うし、大仰な部分が目立つのはともかく、物語としての面白さ同様に、ただテキストを読んでいるだけでも楽しめる質はしっかりあると思いますね。

 ルート構成は確実にはわからんけどルートロックはあって、多分ほぼ香純⇒螢⇒マリィ⇒玲愛で一本道じゃないかなあと。
 シナリオの盛り上がり的にも、謎の開示レベルにしても、当然相乗効果はありつつもこの順番が最適だろうとはプレイして思ったし、特に玲愛シナリオは、そこまでの土台の思想性ありきで構築されているので、って感じですかね。て

 シナリオはとりあえず、前のにどれくらい既存ルートの加筆修正があるかもわからないのでその辺はスルーしつつ、全体的には本当に、極限状況でこそ炙り出される本質、特に男性性と女性性の根源的な差異とすれ違いの紡ぎ方に関しては上手いなあと思わせるつくり。
 それぞれが自身の在り方に苦悩しつつも、現状を何とか打開しようと猪突、或いは画策して、それが複合的に絡まってすごく奥行きのある展開を構築しているし、加速度的に面白くなる、という表現がしっくりくる内容ですね。

 個別評価としては玲愛>マリィ>>螢>>香純くらいでしょうか。
 この辺はどうしても土台の設定に対する踏み込める領域の差、って部分も出るし仕方ないけど、ただマリィシナリオで、ある程度主人公が自分の力で突っ走れる極北には辿り着いているから、玲愛シナリオどうするのかな〜と見ていたところで、きっちりテーマ性に則った形で、矛先の違う、でもある意味ではみんなの勝利、といえる流れに持ち込んでくるところは見事と膝を叩きましたね。

 とにかく繰り返して、非日常の危機の中での、剥き出しになるエゴの示し方がとても上手いです。
 これこそファンタジー設定ならではの特殊性、と思える、主人公の行き過ぎた抱え込みや、それに対するヒロイン達の直截な糾弾、そしてそれが悉く平行線に終わる過程も含めて、非常にめんどくさいなおまいら!と突っ込みたくはなるけれど。
 とりわけ香純シナリオでの香純とのやり取りや、玲愛シナリオでの玲愛とマリィとの三人での水掛け論とか真骨頂的というか、後の作品なんか見てもそうだけど、この人の思想としては、男の世界、女の世界の区切り、腑分けが物凄く明確に線引きされているんですよね。

 互いを思いやって妥協したり、嘘に騙されてあげたり、そういう余裕が失われる局面で、だから男と女がエゴ剥き出しでぶつかりあっても協和を見出すことなんかできなくて。
 でも逆にそれは、男同士、女同士で本気でぶつかり合ったのならば、きちんとその意は相手に届く、という考え方でもあり、故にかはともかく、この作品の数多いバトルシーンにおいても、男vs男、女vs女の戦いのほうが、鍔競り合いの中で炙り出していく本質への到達の意味ですごくすっきり面白く書けていて、逆に男vs女だとどこか後味の悪さとか感じるところは多いなって。。。

 個人的には日常の平穏の中での、男女間の協和的なあれこれ、甘っちょろい話が大好き〜、な私だけに、この作品の思想性の極北的なやり取りともいえる、玲愛シナリオの主人公と司狼のガチバトル2とか、色々剥き出しに過ぎてホントかよ〜・・・、と鼻白みたくなる部分も無きにしも非ずなんですけれど。
 そういう好みは別にしても、その光景を俯瞰して、決定的にメルクリウスとマリィの感性の差異が浮き彫りになったり、超絶した個である獣殿に、友人の真の在り方を感得させ、その後の展開に波及させていくあたりの捻じ伏せるような説得性は本当に見事だなあと思うわけです。
 女子供にはわからん世界があるんだよ!と居直った男の強さ、ってのは、平穏な暮らしの中ではどうしたって希薄になっていく部分ですし、そうありたい、とも思えないあたりに自分の軟弱さが露呈しているようでアレだ、ってのは、かえすがえす無きにしも非ずなんですけど(笑)。

 ただその上で面白いのは、そういう男の剛直さ、ある意味では純粋さに対し、直截的にへし折りにいかずに、それを後追いで下支えする形でならば、女のエゴである慈愛とか独占とか、そういう部分をさらりと波及できる土壌はある、ってところで。
 主人公にしても玲愛シナリオで司狼とバトった後は、はじめて他者に寄りかかる、助けを求めるという精神性を獲得しているし、それがあればこそ最後の展開に導く可能性を切り開けていて、流れ的に見れば、そういう風になるべく仕向けた、無意識的なきっかけをこのシナリオでは玲愛が作っているんですよね。

 それは当然玲愛のエゴそのものの欲求であり、あの時点で直接ぶつけても絶対に受け入れられないものだけれど、それを状況に溶かして潜伏させ、剛直さに罅が入ったところでスルリと飲み込ませる、そういう手練手管こそ女の真骨頂でしょ?と言いたいがような見せ方なんですよ。
 無論玲愛がそれを狙ってやったわけでは当然ない、でもなにができるかわからなくても、という向こう見ずな我武者羅さがその運命を手繰り寄せたという枠組みは確かだし、その波及の結実としての座の交代、あの場面でのマリィのエゴの刷り込みに至るまでが、実に一貫して男の女の在り方の違いと、極限の中でそれが協和する唯一を抉り出していて。
 そしてそちらのほうが、今あるものを取り落したくない、という主人公の本質的な思想にも適った在り方だ、ってところに回帰してくるのが、非常に巧みな構造だなと感じられる一番の要素かなって思いました。

 個人的に、その思想が正しいとは思いつつ、それにのめり込んで熱くなれる気質ではないので、その分だけより俯瞰的に、冷静に見ちゃう部分もあり、もっともこのプレイが発売当時で、まだ海とも山ともわからない期待感を伴っての読破ならまた全然違った可能性は否めないですけど、既に名作としての評価揺るぎない今だと、どうしてもそこはね、って感じ。
 それに細かく見れば当然粗もあるし、取っ掛かりの香純シナリオのめんどくささは、あの時点できちんと思想的にかくあるべきだったんだという裏付けがないからやはりきついものはあるかなって、諸々踏まえてこの点数が妥当かなと思います。


キャラ(19/20)

 とりあえず一渡りしても、まともな感性のキャラがあまりにも少ない作品ではあると思って。。。
 当然それを狙って紡いでいる部分はあるだろうし、キャラとしての個性の際立ちと、それぞれの感得、成長という意味合いでの評価は当然高くしなくちゃいけないつくりではありますが。
 ただキャラ評価という項目で何を最重視するかと言えば、やっぱりヒロインの可愛さではあるのですよね。。。あくまでそれが一定以上担保されてて、その上で積み重ねられるものはありがたく享受できるけど、ってスタンスだから、終わってみて、この人可愛いし素敵だなあと思えるヒロイン・・・??ってなっちゃうとね。。。その辺も感じ方の違いは大いに出る部分ですので一概にはだけど。

 当然玲愛センパイは期待通りには可愛かったけど、決して期待以上ではないし、その持って生まれたあれこれが重すぎて、どうしてもそれを抜きには語れない部分が多過ぎるからなあと。後日談的な触れ合いすらもなかったし、束の間のヒロインモード、的なまともなHシーンは結構好きではあったですけどもね。

 マリィの可愛さはやっぱりどこか動物的な部分は抜けないし、その純真さと、そこから学んでいく在り方は良くても、土台が真っ白過ぎて愛着が出てきたところで終わっちゃう感じは否めませぬ。

 地味に一番可愛かったし素敵だったのベアトリスさんじゃないか、って私思うんですよね。。。無論厳しさはあるのだろうけど、基本的に一番穏当な、そして壊れ切ってない感性を持ってる気がするし、それは当然愛を知って受け容れて、という部分もあるのでしょうけど、酷く荒んだ思想の持ち主が多い女性陣の中で異彩を放っていた気はします。

 螢は色々と不憫ではあるけど、どうにも入り込んでいけない頑なさというか、面倒さもまた目立っていたし、香純に至っては立場上もっと不憫で、どんどん容喙したいタイプなのにそれがいっさい許されないとかどんだけキャラ殺しかよとか思いますけど。。。
 ただやはり香純は、そのいじらしさと可愛さ以上に、めんどくささとうるささがイメージとして先に固着しちゃう構造もなあ、ってのはありますね。
 ルサルカの人がましさはむしろ好きではあるんですけど。

 男だとベイが好きかな。あの剥き出しのエゴと狂気、けれど一本筋が通っている雰囲気は、いい意味でシナリオにスパイス効かせてたし、彼の渇望に関しても面白かったし。


CG(19/20)

 CG全部で213枚と超ボリュームですし、クオリティもすごく安定してて迫力があって、というか昔の私いくらなんでも見る目なさすぎというか、好みの幅狭すぎというか。。。
 立ち絵素材も多彩、とまではいわないにせよ、人数考えればかなりしっかり作り込まれているし、それはまあ本質的な部分で好みど真ん中ストライクではないから満点、とは言えないけど、このくらいはつけて然るべき質ではあると思います。

 玲愛の部屋Hの構図はすごく好きですな〜、さしあたりあれを見られただけでもプレイした甲斐はあったというものです。


BGM(18/20) 

 こちらもボーカル3曲にBGM37曲と充分なボリューム、そして高い質を保っていて評価は出来るのですが、ただやはり個人的にボーカル曲はささってこないんですよね。昔ほど穿った見方ではないにせよ、頑張ってかっこよくしよう的なイメージが抜けないというべきか。
 挿入歌が一番好き、ってのも、後々作られた部分だからかなあって気もするし。

 BGM的には16番のが一番好き。特に後半のピアノで情緒を感じさせる旋律を紡ぐあたりがね。
 バトル的な曲は当然どれも高まりますし、総合的に気品と荘厳さもしっかり備えていて好きな類ではあります。


システム(10/10)

 五年前を加味しても、単純にシステムで図抜けているかはともかく、バトル演出にかける熱量は半端ないですし、多彩なアニメーションとその構図の見せ方、組み合わせ方は本当に飽きさせないものがあって、その点だけでも満点つけていいんじゃないかって思います。


総合(93/100)

 総プレイ時間32時間。共通6時間、香純5時間、螢6時間、マリィ7時間、玲愛8時間くらいかな。まあ回収とかの時間もあるから目安程度ですけど、話が深まるにつれて尺も長くなっていく、けど緩む部分はなく加速度的に面白いと、その点でとても熱中度の高い作品だと言えましょう。

 本当に今更の感想なのですごく簡素にさせてもらいましたけど、当然色々掘り下げて語ろうと思えばいくらでも、って作品ではあるし、直截的に冒険心、男心をくすぐる設定でありつつ、その土台を精密に、論理的にもしっかり納得できるだけの論拠を築いてくれていて、決して勢いだけではここまで面白くはならないよ、っていう、ファンタジーとしての利点を存分に生かした作り込みは見事。
 紆余曲折あったのは確かですが、それも踏まえてこの作品の味、と今なら素直に言えるし、後続の作品の凄みも、ここでの呻吟あればこそ、と考えればね。

 しかし困った、神楽やりたい。。。
posted by クローバー at 04:14| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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