2015年04月02日

花の野に咲くうたかたの

 待望のあっぷりけ新作ですし、体験版も非常にいとおかし、だったので文句なく即決で購入。


シナリオ(24/30)

 世界は“記憶”で彩られ、そして――。


 主人公は幼い頃の事故で失明し、しかしある日突然それが治り、その時から世界に、文字通りの“色”がついて見えるようになりました。
 誰一人として全く同じでない、人間が携える色の軌跡を見られる能力は、重宝する部分もありつつ、けれど人に話せるものでもなく、無差別に受容してしまう不便さも含めて悩みの種ではあり、そのせいで人の多い場所には居づらいなどの現実的な弊害も多く、苦労してきました。

 そんな背景もあり、生活圏にくらい他者の色がない、一人暮らしに対する希求はずっと持っていましたが、ある日突然父親に、親戚の持家である桜花荘で一人暮らしをしろと持ち掛けられ、丁度新学期への変わり目だったのもありそれを了承します。
 従姉妹の汐音や、その姉の千歳に歓迎され入居した桜花荘、しかしそこで主人公は、桜花荘に対する、幽霊屋敷との不穏な噂を耳にし、そして実際室内で不思議な白い影を目撃します。
 勘違いだと思おうとしたものの、一晩明けてみると、すぐ枕元に和装に身を包んだ儚く可憐な美少女が佇んでおり、彼女は自分のことを桜花と名乗り、建物に残った想いと主人公の潜在意識が結びついて生まれた影のようなものだと説明します。

 その説明を、主人公はすんなり納得します。
 何故なら、その少女には、本来誰しもが持っている筈の“色”が存在しなかったからです。
 桜花の存在にあれこれ翻弄されつつ、その背景を調べようとやってきた図書館で、幼馴染の麗奈に不義理を指摘されたり、行きつけのファミレスで後輩の涼子と交流したりして過ごしていくうち、しかしある日、あれこれ調べていた主人公にもう満足だと伝え、桜花との別れを迎えて狼狽して。
 けれどそこまでが、実は桜花の仕掛けた壮大な悪戯であり、彼女は自立した意思を持った幽霊で、性格まで変わって主人公の前に再び現れた事に、主人公は憤慨しつつも、言い様のない安堵を覚えて。

 基本的に桜花荘の外に一人では出られない桜花は、外の生活に対し好奇心旺盛で、主人公は日々のありようを桜花に語っていくのが日課になっていきます。
 学園生活が始まり、その中で起きた且些細な事件などにも桜花は多大な関心を示し、冴える頭脳をもってその背景を推測して披露してくるため、その真偽を確かめるために主人公が奔走することになり、その過程で、同じように謎の追及をしていた学生会長の雫とも知己になって。

 並行して、主人公と共になら外に出られる桜花の、単独での行動範囲を広げるための試みもなされ、しかし桜花のお茶目さ、大胆さが裏目に出て、身近な女の子達にも桜花の存在とその不思議が知られてしまうことになります。
 けれど、確かにそこに見えて、触れられもする桜花の存在を彼女達は、程度の差はあれきちんと受け入れてくれて、それと合わせて、主人公の持つ不思議な力に対しても理解を示してくれるようになり、結果として各々との距離感を縮めていく事になります。

 桜花の耳目にかかれば、些細な違和感も、その背景にそれぞれの個にまつわる大きな問題が孕んでいることに気付かされ、それに介入していく中で、いずれ主人公は取捨選択を迫られることになります。
 なにもかも、とは出来ないから、自分の中で処理すべき問題に優先順位を、色分けをして、それは結果的に、どの女の子と道を一にするかの選択とも重なっていって。

 様々な色が、記憶が織り成す世界の中で、それぞれに積み重ねてきた経験や想い、それらが重なり合い、共鳴したときに、世界の色は新たな情景を見せてくれて。
 そこに孕む不可思議とも対峙しつつ、手を取り合って前に進むきっかけと覚悟を見出していく、これはそんな、記憶と想いが育む絆と、世界の繋がり、成り立ちの美しさを綴った物語です。


 あらすじはざっくりこんな感じでしょうか。
 大枠としては、主に学内で起こるあれこれの事件に直面したり、或いはこの街、引いては桜花の存在そのものに対する不可思議を解明するために奔走したり、バラバラに散りばめられた欠片を取り集めつつ、少しずつ真実に、世界の在り様に近づいていく、という流れになります。

 テキストはいつもながら素朴かつ流麗で、非常に無駄の少ない洗練された文章だと思いますね。
 無為な文飾がない分逆に、あざとくなり過ぎない範疇で愛らしいキャラの、繊細な心の機微が浮き彫りになりやすかったり、その触れ合いの中で、人らしいおかしみや安らぎがじんわりと溢れ出てくるような、非常に温かい雰囲気を味わえるし、それでいて構成上の必須要素はしっかり網羅されているので、とても引き締まった感覚もあります。
 書くべき事だけしっかり書いているから、要所でもしっかり切迫感とか、説得力とかが滲み出ているし、構成の妙と相俟ってとても読みやすく、腑に落ちやすい文章ですね。
 強いて言えば結構誤字脱字が目立ったのが残念な部分かな。

 ルート構成はやや特殊で、とりあえず最初から攻略できるのは雫、麗奈、涼子の三人、汐音は誰か一人なのか、あるいは特定の誰かクリアで解放、そして四人クリアで桜花が解放、そのまま最終ルートに流れていく形ですね。
 フローチャートが便利なので、どこで分岐するかってのは一目瞭然だし、どちらかと言えばヒロインへの何か、が選択の前提にはないつくりで、あくまでその道を選んだ先に、特定のヒロインとの距離を劇的に縮める要素が備わっている、という形なのは、この形式の特色でもあり、らしさが良く出るところでもあります。

 シナリオとしては、簡素簡潔にまとまっている作品ながら、そのテーマと洗練された筆致に味わい深さを楽しめるなと。
 ルート構成のありようと絡んで、元々主人公が抱えていた特殊体質への屈託の解消、けれどその力があったが故に生まれた経験や共感、結びつきがあって、そこを改めて、それぞれの関係が深まる中で噛み締める機会が訪れ、関係性を飛躍させる契機になっているところは実に丁寧、かつ説得的なつくり。

 基本的にその関係性の飛躍にまつわる事象、事件の解決が本線となっていくシナリオがほとんどなので、横の繋がりとか、単なるイチャラブとか、そういう要素を必要以上に求められない構造にはなってしまっていますが、その分日常感の有難みとか、ふと見せる刹那の恋人ならではの魅力などが光っているともいえ、その辺は好き好きはあるかなあと。
 唯一不可思議に深く踏み込まない涼子シナリオだけは逆に、非常に交際感が色濃い内容にもなっているから、その辺で総体的なバランスは取れているのかなとも思うし、どちらにもそれなりの楽しみ、おかしみがあるとしておきたいところ。

 そして、個々のルートで断片的に追及、解明されていく欠片が、しっかり最終ルートで糾合され、一つの線になって昇華されているのも、まあ期待通りではあるけれど流石だなと。
 ある程度不可思議というか、ファンタジックな要素は絡んできますが、この作品、というかあっぷりけ作品のいいところは、まず土台をあくまで日本固有の神道的な神秘に置いているために、日本人としてそれを飲み込むための敷居がすごく低くて済む、っていうのがまずあります。
 その上で、その不可思議に対して多角的な、オカルトの側面と、科学的に見た側面、両方を提示し、連関することで、さもありなん、と感情でも理性でも納得をもたらしてくれる丁寧さがいい味なんですよね。

 フローチャートの構造自体もかなり意識的なつくりであり、中庸、というか、本来あるべき平穏な日常の象徴として真ん中に涼子がいて、そこから脇に逸れるに従って、主人公の意識の上での関係性、恋愛観の飛躍が大きくなっていくイメージ。
 その上で左右の振り分けとしては、右側がはじめに不可思議現象の解明ありきで、左側が大切な相手を守るという人ありきの取っ掛かりになっているのかなって思います。地味に汐音と桜花の位置の組み方が、主人公の内在意識を鮮明にしていて面白い。

 個別評価としては、花のの>>汐音=麗奈>雫=桜花=涼子くらいで、基本的にどの個別ルートも突出した面白さはないものの、非常に安定した仕上がり、味わいに仕上がっていて、その上で花ののルートも、無理のない範疇で飛躍は用いつつ、きちんとそこまでに築いた堅牢な土台をしっかり生かした、やはり特段の驚きはなくとも、噛み締めるほどに味のあるつくりになっていると思いますね。

 涼子シナリオは間違いなくこの作品で一番イチャラブしている話で、それは単純に様々な謎や事件に一切首を突っ込まなかった故の、という消極的な部分こそあれ、そもそもとして涼子が一番主人公にとって恋愛を意識する相手であったことと、彼女との馴れ初めが、自身の能力を不必要に疎まずに済む源泉の一角になっているからだ、という部分が明白にされるため、色んな意味で指針ともなる内容かなと。
 だから突飛な展開はないけど、全体構造の中で光るものがあるし、なにより涼子のひたむきさと素直さ、愛らしさを全力で楽しめるので満足度は高いですね。

 雫シナリオは、元々人間関係としては一番遠いところにいた分、恋愛に踏み込むハードルが低いというか、それまで互いが持ち得なかった唯一の共感、共鳴がもたらされたことに対する充足度合いがそれだけ大きい、という説得性をしっかりと帯びていて。
 その上で不可思議現象に巻き込まれて、極限的な体験の中で、本質的な距離感を他のヒロイン同等にまで高めるという結果を引き出しているし、全体像から見てもそこでそうなることにどうしようもない必然はあるので面白いなと。
 単純にそこまで踏み込まない、ノーマル的なエンドの分岐もこのルートにだけはある、ってのも、あとはHシーンの取り組み方、って言い方もなんだけど、最初から全てを委ね切る感じでないのも、人としての関係性の深みがない分のブレーキ、という意味づけが明白で、そのあたりの機微の紡ぎ方は流石だと思います。

 麗奈シナリオは、第三者の存在とそこに関わる不可思議を追いかけていく中で、今まで見えてこなかった近しい相手の新たな一面と真実を垣間見て、という、幼馴染シナリオとしては比較的王道的なつくりでありつつ、それでも変な葛藤とか無駄に組み込まずに、あくまで今までの想いに一滴、二滴違った色合いの想いが混ざっただけで、時に色は鮮やかな反応を示す、というイメージで構成されているかと。
 麗奈と美奈の関係性とか、美奈と主人公の関係とか、そしてそこから引き出されていく麗奈の父親の問題など、自身の思惑に縛られる窮屈さと無益さを色濃く知らしめてくれるし、それに気付いたからこその関係の進展、という連関性もすっきりしていて、幼馴染シナリオとして実に無理のない誠実な構成かと。

 汐音シナリオはやはり幼馴染として、しかし麗奈と以上に、心のどこかで相手を大事にし過ぎるというか、引け目のような何かを無意識的に抱え込んでいて、それが忘れ去っていた過去の出来事に帰結しているわけですね。
 故に麗奈以上に、互いが今の関係から踏み出す契機、意思が希薄な部分もあって、けれど誰が一番に大事か、を考慮した結果として、石の効用という非日常の極みによって、という構図は、全体構成がもたらす可能性の中で、確かにこれしかないんだろうなあ、という感覚をもたらしてくれます。
 フローの項目でも触れたように、ある意味桜花以上に恋愛に踏み込む上で心理的障害が大きい、という部分はいかにも、って気はするし、だからこそその先にある屈託のない汐音の歓び、笑顔がとても愛おしく、かけがえないものに思えるシナリオだなあと。

 桜花〜花ののシナリオは、まず桜花との関係性において、あくまで最初のインスピレーションというか、桜花という個性に対する想いありきで、一際に互いの感性を重ね合う出来事を経て結ばれていく形そのものは、他シナリオと同列に、主人公の内在性とそこへの容喙ありきを遵守した格好になっていて。
 そこからの桜花との日々が、些細な日常に輝きを見出してはしゃぐ桜花を目の当たりにして、すると自分達の成り立ちのあやふやさをそのままにしておいて、いつか理不尽に奪われるような未来があってはならない、という思いに駆られるのは道理であるわけですよね。

 その道理を具象化したのが花ののの展開であり、とりわけ本来の目的とは少しずれたところでの山登りから、ああいう結果を引き出してくるあたりの構成は実に自然で、非常に綿密で骨太な構成だと思います。
 その上で、その事実がもたらす未来図をどうしていくか、って部分は王道的であり、ある程度以上まで理を突き詰めつつ、あくまで最後は想いを振り絞っての飛躍に到達するというつくりもらしさ溢れていて、エンド分岐のありようも含めて非常に余韻の残る味わい深い内容だったなあと感じますね。

 あっぷりけ作品の割に、サブルートへの分岐なかったな、という見方もありますけど、実際この主人公の内在性だと、どうしても恋愛に踏み込むには何か大きな必然が必要になってくるからそこは仕方ないかなと。
 むしろ最近、夏ノスとかサノバとかソレヨリとか、特殊能力系の主人公結構多かったのでその比較で、って考えると、この主人公はかなり後ろ向きな部分を見せずにいるだけとっつきやすいし、それでもなお、より深く繋がる為には、ってところに壁がしっかりあるという匙加減の丁寧さを鑑みれば、それを軽挙に壊すような安直なサブシナリオは作れないよなあってしみじみ思います。

 ・・・いや、優枝ちゃんとか美緒ちゃんとかつまみ食いしたいな〜、って思うのは山々なんですけどね(笑)。とりあえず資料集での、美緒の一枚絵に対しての、誰だよ、この絵が一番性的に興奮するって言った奴!?ってコメントに、そ〜っと手を上げたのは私です生きててすみません。。。
 だってだってぇ、ジャコスの子でメインヒロイン張れるメーカーだよ、主人公の本質的な好みど真ん中が涼子ちゃんなんだよ、期待しちゃうじゃないですかやだ〜!
 ルート作るにはそれなりの土台が必要だからここでは、ってのは理解できるから、それをしっかり整えたFD待ってますよ〜(満面の笑みで)。

 以下より露骨にネタバレであれこれ思索モード。

 といっても、構造的にすごくわかりやすいし、テーマとのリンクもしっかりしているし、補足としても付録冊子など見れば瞭然、ってところがあるから、ここで偉ぶってああだこうだ語る余地もそんなにないと言えばないんですが(笑)。

 ともあれまず言えるのは、主人公の能力である、記憶を色として判別できる点にまつわる諸々の意味づけ、説明の部分が実に実体的というか、誰しもが少なからず覚えがある状況に即したつくりになっているのが、まずこの作品の親近感というか、地に足のついたイメージを醸成しているとは思っていて。
 記憶のメカニズムに対して干渉する要素というのは、とりわけ自然に対する信仰の色濃い社会においては広く頒布されているし、誰しもが白昼夢とか、臨在感とか、いわゆる目に見えないものに対する認識を意識したことはあるはずでしょう。
 また、記憶内での時間感覚の現実との乖離、という観点でも、例えば二度寝したときに見た夢がとても長大に思えたのに、起きてみたら10分くらいしか経ってない、なんて経験は誰しもあることと思うし、鏡石がもたらす記憶にまつわる事象の大半は、きちんとそうやって自己体験に寄り添って解釈しやすい構図を提供してくれているんですよね。

 そうしたアニミズム的要素とは別に、いわゆる人間原理的な観念も持ち込んで、世界が人の記憶の集積で成り立っている、という要素を重ね合わせることで、主人公の能力の総体を理屈でも解剖できるように書かれているし、またその見せ方も上手かったなあと思います。
 そして、それが千差万別の“色”で目に映る、という部分も、一つには世界の認識の曖昧さというか、果たして個々人の目に映る世界とは本当に同一のものなのか、という哲学的な深遠さを問いつつ、その不確かなものを共有しようとする意志、想いが人の世界を美しく彩っているという観念的なイメージを想起させます。

 逆に言えば、誰にもに認識されない想いは、存在しないも同様になるという、泡沫のような儚さを、この世界の成り立ちは孕んでいるわけで、それを散り行く桜の侘しさに仮託して、桜花というヒロインの存在に具象化した構造は本当に綺麗で。
 そして、その存在を泡沫でなくするための力、或いは神秘においては、ここだけは明確にファンタジーの枠組みに踏み込んでる、とは言えるのですけど、上に書いた通り、その土台に関しては両義的な納得を組み込んであるし、その上で敢えて、物語としての美しさに華を添える範疇での神秘があるというのは、やはり自然に対する謙虚さ、人間原理に寄り過ぎない中庸を思わせるところです。

 とまれ、物語とはリアルでなく、あくまでリアリティーを追求するものですから、その視座での構造的な下支えと納得がもたらされればそれは正しい、いわゆる真善美であるとは言えるし、その匙加減をとてもよくわかっているつくりだったと言えましょう。
 そして、そういう作品だからこそ、これだけ美しく、そして内容を噛み締めるほどにこれしかない、って思わせてくれるタイトルがつけられるんだなぁと。やっぱりね、タイトルの語感がしっくりこない作品は、それだけテーマ性がぶれてる、って感じはしますし、タイトル良くても内容倒れ、ってのはあるけど、その逆はまず見ないですからねぇ。 



 以上、なんというか、作品としてとてもわかりやすくすっきり綺麗にまとまり過ぎているので、逆にグダグダあれこれ思索の羽根を広げる余地が薄いというか、最近だとなないろリンカネーション書いた時と同じような感覚ですねぇ。コンパクトにまとまり過ぎていて、素敵な作品だとは思うけどどこか食い足りなさはあるというか。
 どうしても翻って見れば、どのルートに関しても本質的にはひとつの事象に収束していく、という見方は出来てしまって、多様性とか奥行きの部分で、コンチェルトやシンセミアに比べるともう一歩かな、とも感じましたし、文句なく名作、というラインに乗せるのにはどこか引っかかるものがあったのですよね。

 まあ贅沢かつ傲慢な言い方をすれば、期待通りのものは出てきたけど、期待以上の驚きや深みはなかったかなと。それでも構造的な部分はすごく私好みだし、やや個別が軽かったりするのを踏まえても充分面白かったので、その辺の機微の中庸でこの点数、って感じですね。


キャラ(20/20)

 いつもながら非常に素朴で親しみ深い造型であり、じわりじわりと沁みてくる可愛さ、温かみが味わえていいですよね。極端なあざとさがない分、要所でのちょっと特別な顔とか反応とかが逆にすごく鮮度が高くて、その上でなだらかながらもきちんと、主人公との関係の中で自身の葛藤や未練と折り合いをつけ、前に進む強さも示してくれるので、実にバランスのいいつくりだと思います。

 一番好きなのは、汐音かなあやっぱり。
 この子の朗らかさというか、すごく自然体での温かみは、側に居てくれるだけで嬉しいという感懐が強く滲み出ていて、勿論主人公に対する想いも切実に秘めてはいるのだけど、それすらもどこか淡く柔らかいイメージがあり、他ヒロインシナリオでの在り方とか振る舞いとか含めて本当に可愛いなあと。
 CVの間延びした感じとも物凄くマッチしていたなと思うし、実に素敵な幼馴染だったと思います。

 次いで桜花と涼子が同率くらいでしょうか。
 桜花はやはりその存在感というか、ひどく達観・老成しているような部分と、日常に触れて無邪気に笑うありようの二面性がもたらす儚さ、危うさが惹きつける要素として強く働いているし、どこまでも本質は想いの結晶であるが故の純粋さ、一途さと献身性が光っていて、だからこそ、その苦悩を超えた先にあるあの笑顔の尊さが一層に美しいなと。

 涼子は純粋に、こういう後輩がいたら学園生活とかバイトとかとてもとても楽しいだろうなあ、と思わせてくれる、癒しと温もりを存分に与えてくれる素敵な子でしたよねぇ。
 一番シナリオで真っ当にイチャラブもしてくれるし、おずおずと甘えてきてくれるところなんか破壊力ありまくりで、ものすごく可愛かったです。CV的にもやっぱり年下声でこそだよねえ、としみじみ次のと合わせて思う次第だし、スポーツ少女なのに元気系に寄りすぎなかったのも私的にはGJ、って感じでしたね。

 当然麗奈と雫も好きですけど、他ヒロインに比べると、元々の気質とか、設定上の理由とかで、可愛げのある反応が瞬発的ではあるので、その分破壊力もありつつ、トータルで見ると他三人と比較するとね、ってところではあり。

 サブだとやはり優枝と美緒は可愛かったですねぇ。千歳とか恋とかの年上コンビもいい味出してたし、同級生キャラはそこまで惹かれなかったけど、全体的に誰しもがきちんと理由のある存在感を示していて良かったです。

 あと立ち絵とか全くなかったけど、親世代の理解というか、子供の成長と意思をしっかり見極めている様子なんかは素敵だったなあと。
 そもそもの主人公の引っ越しからして、ある程度区切りをつける時期に来ているっていう思惑ありきで、けれど不必要に容喙することなく最後のあのシーンまで見守ってくれていた、ってあたり、作品のイメージを裏切らない在り様だったと思います。


CG(16/20)

 まあここらしい、という言い方は出来るけれど、やっぱりそこまで上手いとは思えないし、物量的にももう一歩欲しいかな、って感じはしたので。

 立ち絵はやや少なめ、って感じですかね。雰囲気そのものは好きですけど。
 ポーズはヒロインで2種類、サブで1種類、特段に動きの大きさを見せる作風でもないので、全体的に個性を仄めかせつつ自然体のポーズ、って感じで、腕差分とかもないので印象としては薄い、ですかね。
 お気に入りは汐音基本、横向き、桜花基本、横向き、涼子基本、正面、雫基本、麗奈横向き、優枝基本、美緒基本あたりです。

 服飾はヒロインで2〜3種類、サブで1〜2種類、といっても種類多いのバイトしてる子だけだから実質は、となって流石に物寂しい感じ。基本的にロング系統のスカートが多いのは個人的にはらしさが出ていていいなとは思いますが、お泊り会とかあるなら寝間着系も欲しかったなあとか思ったり。
 お気に入りは汐音制服、私服、桜花和装、涼子制服、バイト服、雫制服、私服、優枝巫女服、美緒私服あたりです。

 表情差分もそこまで多くはなく、でもそれぞれの個性はしっかり区分けされているし、味のある表情が多くて好きですね。
 特にお気に入りは汐音の恐怖、この子の半泣き顔は本当になんというか微笑ましくて、つい悪戯して泣かせたいとか思わせる雰囲気がありますよね。。。
 その他お気に入りは、桜花溜め息、ニヤリ、怒り1、思案1、拗ね、照れ1、3、笑顔、驚き2、汐音そっぽ、溜め息、困惑、怒り1、照れ1、2、苦笑、驚き、ジト目1、微笑、怒り1、照れジト目、涼子溜め息、上目、怒り1、慌て1、2、焦り、照れ溜め息、照れ疑問、狼狽、笑顔1、2、苦笑1、2、雫ジト目、そっぽ、思案、照れ4、優枝きょとん、照れ、美緒悲しみ、照れ、驚きあたりです。


 1枚絵は通常85枚、SD12枚で計97枚、水準量ではありますし、出来もばらつきはあるんだけど要所ではすごく情感のあるものもあって良し悪し、って感じ。

 特にお気に入りは桜花の泣き笑顔、まあこればかりはシーン演出の妙もあるし、全力で桜花の魅力を引き出してきてますからねぇ、敢えて触れておきたいところです。

 その他お気に入りはページ順に、桜花枕元、登場、寄り添い、キス、慟哭、抱きしめ、着替え、病室のみんな、お風呂対面座位、麗奈膝抱え、幼いキス、寄り添い、キス、バック、涼子バイト出迎え、部活、寄り添い、キス、デート、愛撫、バック、キス、対面座位、汐音登校、お昼、子供、手つなぎデート、指輪、愛撫、正常位、立位、雫ベンチで、幼き憧憬、膝枕、バック、フェラ、秘め事、捕まる美緒、その手を掴んで、あたりですね。
 SDは初めての試みでしたっけ?コミカルで可愛いけど、え〜、あの汐音好評って。。。


BGM(20/20)

 実に淡麗で風雅で、情緒あふれる曲が山盛りで、これはもう素晴らしい出来でしたね。

 ボーカル曲は3曲。
 OPの『華暦』がもうとんでもないレベルで神曲過ぎましたねぇ。はじめて聴いた時からこれはやばい、と思っていたけれど、聴き込めば聴き込むほどにその完成度の高さ、疾走感の中に優美に漂う情感、そして歌詞の美しさと、正に非の打ち所を感じない素晴らしい曲。
 これだけ走っていても、作風と不思議とベストマッチ、って印象だし、Aメロの繰り返しの入りとか、Bメロからサビへの繋ぎとか、サビ全般とか、Dメロの重厚感とか、ひとつひとつ上げていったらキリがないくらいにどこもかしこも大好きな曲になりました。

 挿入歌の『桜の記憶』もかなりの名曲。非常に情感あふれるシンプルながら深みのあるメロディと澄んだ歌唱が、記憶と絆がもたらす世界の温もりをこれ以上なく引き立ててくれていて、聴けば聴くほどに胸にじんわりと沁みてくる素敵な曲ですね。特にAメロが好き。
 EDの『avenir』は、この3曲の中では一番劣るけれど、それでも素朴な明るさの中に染み入るような輝きと温もりを感じさせて、これはこれで好きな曲ですね。

 BGMはアレンジ込みで全部で30曲と量はほぼ平均、ただ質はとても高く、繊細で流麗で優雅で、滔々とした時間の流れの中での人の営みの温もり、繋がりを切々と感じさせてくれる素敵な仕上がりになっていると思います。
 
 特にお気に入りは4曲。
 『彩の花』はタイトル曲でもありますが、訥々とした出だしから、徐々に情味が溢れていって、繰り返しの中で少しずつ積層していく想いの尊さを感じさせてくれる素敵な曲ですね。
 『波紋−心たゆたう−』は、楽器的に洋の装いなのにどこかすごく和の香りと渾然一体となって、柔らかく温かい世界観をじんわりと投射してくれるような雰囲気がすごく好きです。
 『桜花荘−白蓮−』は、出だしのピアノの旋律の美しさにまず心を鷲掴みにされるし、そこからの穏やかだけど愛しさ溢れる日常、とりわけ清々しい朝の空気の中で、というイメージが鮮烈で、神曲揃いの中でもこれが一番好きかなと思います。
 『今在るがままに』は、出だしの不協和音からの世界の理の崩壊、その中で手を伸ばすべき想いの欠片を探して、という切迫感が、和のテイストで存分に発揮されていて実に好みです。

 その他お気に入りは、『桜花荘−香−、−そこに色づくもの−』『学園生活』『また明日』『夜空の交差』『桜花、汐音、涼子、雫のテーマ』『対峙』『心を締め付けるその言葉』『深層記憶』『華暦−咲花−』『桜の記憶−決意−』あたりですね。


システム(8/10)

 演出は、丁寧ではあるけど必要最低限でもあると思うし、やはり時代性との相対的な比較でみるともうちょっと何かしら欲しいな、ってのは出てきちゃいますかね。地味に立ち絵同期あったり、演出的に進歩はしてると思うんですけども。
 OPムービーは素晴らしい出来。曲の迫力に負けないくらいに鮮烈な色使いながら、決して品のない事にならずに作品の雰囲気をきちんと押し出していて、その上でキャラのイメージもしっかり引き出している、申し分のない出来だと思います。

 システム的にはやはりフローチャートは便利、ではあるものの、もう今になると同じくらいに便利なシステムは結構あちこちにありますしね。無論シナリオとのリンクにおいて必須要素なのは確かですし、あって助かるのも同様ですが。
 他システムも必要なものは揃ってるし、問題はないけど取り立てるところもないかなと。ここも点数迷ったけど、全体としてSクラス、ではないかな、って思うところもあって、CGともどもやや厳しめに。


総合(88/100)

 総プレイ時間21時間くらい。共通が5時間、個別が2,5〜3時間で、花ののが2時間くらい勘定で、フラグメントは出現する時点で常に見るという形でですね。
 尺としてはまあ水準クラスで、過去作に比べると小粒な印象はあれ、内容としては綺麗に、綺麗すぎるくらいにしっかりまとまっていて、読後感も良く、突き抜けた部分こそないけれど、しっとりしたおかしみをもたらしてくれる良質の物語だと思います。
 尖った部分も薄めなので、物足りないと感じる向きもあるかもだけど、私としてはこれだけテーマに沿って丁寧に紡いでくれているのは流石だなあと喜ばしいところだったし、絵のキャッチー、って部分でどうしても損はしてるだろうけど、素直にお勧めできる質だったと感じましたね。
posted by クローバー at 03:33| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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