2015年05月26日

相州戦神館学園 万仙陣

 八命陣は肌合いが微妙に、という部分はありつつやはり面白かったですし、新規ヒロインもそれぞれにアクの強さは人一倍ながら、信念に裏打ちされた強さに惹かれたので購入。


シナリオ(25/30)

 正しく続編。

 この作品は、2014年2月に発売された相州戦神館学園 八命陣の続編、という位置づけになります。既存のヒロインとの触れ合いも、構成の中で矛盾や飛越がないように調整されて組み込まれつつ、本質的には前作の時系列の続き物であり、そこで派生した外伝的な要素をも持ち合わせた作品です。

 さらっとだけ粗筋に触れれば、かつての主人公たちが、邯鄲の中で自身の出生を誤認させられていた時代がやってきて、そこに朔という天文的な魔性の要素が加味されることで、かつての抗争の余波が現代に漏れ出すかもしれない、ということで、神祇省の末裔である静乃が当地に派遣されてきます。
 そこで静乃は、かつての英雄たちの子孫と交わり、普通の生活に心ときめかせつつも、やはり発生してしまった怪異に、仲間達と共に第二盧生から託された仁義八行の力をもって立ち向かっていくことになります。

 一方で、その朔と、その裏側にある本質をいち早く見抜き、自身の志望を満たすためにその状況を全力で利用しようと企む少女、南天は、自身と同類の気質、形質を備えている水希の弟の信行を自身の陣営に取り込み、邯鄲の夢の中で過去の真実を垣間見つつ、自分にとって都合のいいように事象をコントロールしようとしていました。

 静乃と南天、そこに至る経緯は全く違えど、いずれ過去の因縁に縛られた二人を中心にした視座が織り成す、過去から引き継がれた負の遺産、瑕疵と、そこに秘められた思想性の鈍悪さを抉りだし、前作とはまた違った角度から、人の絆と強さを導き出す物語です。

 テキストは前作同様に熱量充分、世界観によりこなれた分、繋ぎの作品としての緩急、日常と非日常のメリハリやキャラ性の抽出などは前作よりも光っていましたし、その上でしっかり、複座的な感性の中からより濃度を高めたテーマ性を引き出すことに成功していて、相変わらず見事だなあと思います。

 ルート構成は説明しづらいのですが、本筋に関わる部分では完璧に一本道であり、ただヒロインイベントやif談、お遊び息抜きイベントなどを全部網羅するためにはかなり複雑な選択を経ないとならなくて、わかりやすく一番見せたいものだけはきちんと、後はデザート感覚で、欲しければどうぞ、みたいな構造ですね。

 シナリオに関しては、舞台がもたらす制約に対する整合性はやはりしっかり整えつつ、奥行きと迫力のある話にしっかり仕上げていて、緋衣の存在あたりは若干後付け感はあるにせよ、割り込みからでも全くトータルで破綻をもたらさない構成力は凄いなと。
 また前作において、ラスボス打倒の過程に注力しきって、その後の展開や、そこに含まれた謎などは結構ほったらかしなのが、思想性の偏りと合わせて気にはなっていましたが、なるほどこうやって連作形式で補完していく構想が最初からあったのか、と感じる内容でしたし、穿ち過ぎでなくこれはもう1作は作る気ありそうだな、って終わり方で、けどこれはこれで物語として独立しているところが見事ですね。

 内容的にも、前回はどうしても邯鄲の実相と、そこで用いる力の作用などの具象的な部分にかなり筆を割く必要があったのに対し、今回はそれを全部下敷きにしているために、より先鋭に濃密に、心象的な部分での機微に尺を割いている感覚がありました。
 その上で、前作はどうしても、強さと強さの真っ向対峙という構成の中で、女性的な感覚はそこに分け入るべきでないくらいの覇気がありましたが、逆に今回はその女性的な弱さやしたたかさなどを中心に、強さが織り成す世界を手玉に取る、或いは全て飲み込み受け容れる気概を示していくことで、対話のバイパスをしっかり拡張してきたなと、そこはすごく私の感性にフィットした部分ですね。

 男同士でこそ通じ合うなにか、というのは、現代っ子の私的にはあまりに男性的過ぎて胃もたれを起こすような感触はあった、というのは前回に似たようなニュアンスで書いたと思いますが、それを下敷きにしつつ、その枠組みの中で、とはいえ、信明が南天を、静乃が黄を、それぞれの頑なを打ち破るキーとなる心の交感をもたらしているところに、この話の真骨頂があったかなと思います。

 無論それだけでなく、静乃というキャラの精神性を起点にした世界観のトリックなどは、ある意味この手のゲームでそういうつくりに慣れているユーザーの思考停止を激しく叱咤しつつ、その思考の死角を貫いてくるものであったり、大元を辿れば前作からの時系列をしっかり踏襲しつつ、まだ山場を残した中での、それでも座視は決してできない事象の解決、という位置づけに置いているところなどは実に巧みでした。
 それだけに、まだここでも謎の全てが見え切ってない、対峙の構図も小手調べ、という程度で流している部分はそこそこあって、静乃の物語としては完結しているけれど、というイメージは強いですね。あくまでテーマそのものは踏襲していくならば、個人的にはここまで個と個の繋がりのパターンを男男、男女でやってきたから、次は女女と、あとは一対多の構図での展開が両立してくるのが、今後の真の目的を見据える中では王道かなと感じます。

 ともあれ、そういう外伝的な位置付けでありつつも決して手抜き感はなく、ラストバトルなんかはユーザーが一番みたい構図を惜しげもなく披露しつつ、けどあくまでテーマに則った枠組み、振る舞いで完結させていく部分、そこに説得性をしっかり付与してくるところに凄みはあり、物語そのものとしては前作より好きですね。
 当然前作ありきで、かなりショートカットしている部分もあるので、きちんと内容と思想を把握してないと難しい、って感じるところもあったけれど、概ねノリだけでも充分以上に楽しめる出来だったと思います。
 ただまあ、どうしても続き物であるが故の絶対的な新鮮味とかは薄く、まして主人公たちの存在がああいう設定ですから、継ぎ足しや焼き直しで済んじゃう部分も多いので、その辺差し引いて前作と同じ評価に落ち着けました。


キャラ(20/20)

 この点は相変わらず素晴らしいですね。ヒロイン格に至るまで、悪は悪としっかり切り分けて書きつつ、そこにしっかり信念と意志があればこそ、それを安直に裁いて済ませられない凄味と、そこから滲み出る魅力を確実に引き出してきますし、脇役と呼んでいいのかわからないレベルで、誰しもが存在感を主張してくるので本当に楽しいです。

 とりあえず新規の二人から触れておくと、静乃は無意識に残酷なことしてる子ではありつつ、それだけ想いが純粋で強くもあり、その強さが結局、自身の罪を突きつけられてひしゃげて、奈落の底に転落しそうになっても、しなやかに立ち上がれるものをもたらしているのだなあと。
 それだけ彼らとの日常が、それまでその輝きを知らなかった彼女にとって宝物であった証左でもあり、その絆、繋がりの価値が最後の局面を打開するカギになっているという立ち位置もすごく美味しかったですし、性格的にもカラッと気風よく、けれど変なところで照れたりと面白かったですね。

 南天は当然立ち位置としては悪人ではあるのだけど、その思想を余儀なくされるだけの不条理の連鎖を背負っているわけだし、その中で一途に見せる強さと、けど同類の男には見られないしたたかさは、わかっていても嵌りたくなる魅力に溢れていてかなり好きだなあと。
 そして、男の矜持に割り込まない形で自身の志望を追い求めた結果としてのあのラスト、と思えばなるほど、と頷けるものはあるし、少しずつでも素直に可愛くなっていく様は、NEでしか垣間見られないにせよやっぱりいいなあと思います。

 雪子は次で飛び入りヒロインの可能性はあるのかしら?かなり可愛かったので期待。

 既存キャラでは、やっぱり私は水希大好きだなあと思いつつ、今回は一歩引いた立ち位置でもありそこまで目立たなかったのでちと残念。ただヘルとの絡みとか、正史においては未だ水希だけ添い遂げた歴史を持たないという立ち位置からしても、ヒロインの座争奪最終戦の様相の中で主軸になってくることは疑いないので超期待してます。
 あと時間を置いて改めてこの世界観に入ると、意外と歩美がかなり好きになってる自分に気付いたり。鈴子や晶は相変わらず、男衆もそれぞれ締めるところは締めつつ相変わらずですが、脇二人の恋模様がきちんと完結するところは見たい。

 ・・・というか、今回の総代百合香が相当可愛かったので、そこが寸止めで終わったのかなり苦渋でしたよぐぬぬ。祥子も当然可愛いし、未知の魅力も加味されるとはいえ、下手すると水希以外のヒロインよりもこの二人の方が好きだったりするからなあ。。。

 ヘルもすごくいいキャラだったし、甘粕さんは相変わらずのようで(笑)。


CG(17/20)

 出来はいつも通り、続編でもあり素材の使い回しは当然多いし、それでもフルプライスに足る追加はあったかなと思うので前作と同じ点数でいいかなと。

 立ち絵に関しては新規の二人、静乃と南天はそれぞれに可愛かったですね。
 静乃は正面向きでの照れた顔が物凄くツボだったし、南天もたまに無邪気に笑う姿がめっちゃ可愛くて、あと南天の私服もすごく好き。昔の制服もかなりいいですけどね。
 そして中盤のお約束の水着回GJ(笑)。水希と歩美、百合香、南天あたりの水着はかなり好みでしたね。
 そして百合香の現代制服での黒ストは素晴らしいでやんす。。。

 1枚絵は新規分で83枚、前作からの流用に差分増加があるかまだはわかりませんが、まあギリ水準かなとは思うし、質も安定して迫力と魅力が溢れていて良かったです。

 特にお気に入りは、敦士と百合香の背中合わせ、特に現代編の百合香のコケティッシュな雰囲気が物凄く好きですねぇ、あと黒スト(笑)。

 その他お気に入りはページ順に、膝枕、将棋、インラインスケート、静乃添い寝、構え、南天との再会、狩摩と百合香、雪麗の誘い、キーラライブ、ライブ、百合香渾身、ヘルの背中、黄の仙境、南天抱きしめ、脱皮、この世界で生きる、これからの戦い、水希の水着、南天水着、血族対決、百合香の未練、ヘル構え、ヘルと水希、雪麗との誓い、ダンス、自身との戦い、三盧生揃い踏み、想いを拳に、龍の咆哮、南天バック、水希と歩美はだけ、貝合わせ、南天正常位、騎乗位、静乃愛撫、対面座位、水希騎乗位、晶バック、歩美屈曲位、鈴子正常位あたりですね。


BGM(17/20)

 すごくテンションの上がる曲、切迫感を醸し出す楽曲が揃って、新規分もそれなりにありいい感じではありますが、いつもながら不思議なくらいボーカルが刺さらないのと、前作ほどBGMもツボに入ったのがなかったので、連作での流用も多いあたりと調整してこの点数かと。

 新規ボーカル曲は2曲。
 OPの『憧憬ライアニズム』はノリも良く、テーマにも沿っていていい曲だとは思うんですが、どうも細かい部分でのメロディラインがスッと入ってこないというか、結構頑張って繰り返し聴いてみたけどその違和感から抜けられなかったのがなんだろうな〜と。
 EDの『月詠月夜』も切なさと悲しみを湛えながらも、それをもたらした全てに感謝を傾けるようなしみじみした雰囲気はいいとは思います。でも曲としては綺麗にまとまり過ぎててあまり面白くなかったんですよね・・・。

 BGMは新規17曲と、続編であると思えばそれなりですね。出来も安定して高いのですが、特に、クラスの刺さる曲まではなかったのがちと残念なところ。
 お気に入りは『霧露乾坤網』『箴言』『蓬莱』『墜落の逆さ磔』『My Love My Hero』『盧生、死すべし――』『朔』『雪麗封神榜』『桃源万仙陣』あたりです。


システム(9/10)

 演出はいつもながら多彩なムービーを駆使しての迫力ある戦闘シーンは見事ですね。日常のコミカルさとの対比でよりいい味が出せているし面白かったです。
 ムービーは後々から見ると世界観をしっかり組み込んでいてなるほど、と思う部分がありつつ、そこまで強い印象ではないですかね。

 システムも基本的には揃ってるし、回収が多いからジャンプがもう少し軽ければ助かるなあくらいのところです。


総合(88/100)

 総プレイ時間20時間、本筋が13時間くらいで、あとキャライベントやifイベント回収などでだいたい7時間くらいかなと。前作に比べてボリュームとしては劣るけれど、その分中身は濃いと思えたし、ある程度軽めに、キャラの魅力もしっかり引き出しつつのバランス感がとても良かったです。
 やはり安定していい作品だなと思いますし、まだ続きがありそう、って部分で、手放しでどうこうとはならないけれど、正しい続編として期待にはしっかり応えられる出来でした。
posted by クローバー at 04:17| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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