2015年11月19日

私が好きなら「好き」って言って!

 往年のシュガスパを彷彿とさせる作風に晴れたかスタッフということで、体験版も堅実かつ味わいのある内容だったし、ヒロインも概ね可愛いしで、素直に買おうと即決しましたね。


シナリオ(25/30)

 恋の蕾を咲かせるために。


 主人公は将来自分で経営する飲食店を持つ夢を抱いており、学園では園芸部に所属して自身で野菜を育てる大変さと歓びを知り、そしてナトゥラーレという飲食店で厨房のバイトをすることで将来の為の経験にしようと頑張っています。

 そんな風にやりたいことが明確にある主人公だけに、そのひたむきさが逆に今まで、恋というものに対してリソースを割かせずにここまできましたが、春先のとある日、主人公の前に、学園の裏庭で主人公が世話をしていたリンゴの木の妖精であり、また自称恋の妖精でもあるQPが現れます。
 その不可思議現象に愕然とする主人公をよそに、QPは、このまま主人公が夏を迎えると、その時に運命的な恋に出会うものの、しかしその恋に傾倒することで、主人公にとって本当に大切なものを二つ失ってしまうと予言し、それは忍びないので、それまでに主人公が他の誰かと恋が出来るようにサポートする為にやってきたと言うのです。

 どこか眉唾ながらも、QPの熱心さに押されるようにして、かつての経験から幻想を抱けずにいた、恋というあやふやなものに対する意識を少しずつ主人公は高めていって。
 
 運命的、と呼ぶには俗な出会いをした病弱美少女・彩雨。
 ずっと家族同然に思ってきた、下ネタばかりの幼馴染・友希。
 かつてほんの少しだけ付き合ったことのある天才子役・まひる。

 彼女達を改めて、恋する相手かもしれない、と意識させられることで、少しずつ主人公の日常は恋の色に染まっていく――、これは様々な形から育まれる恋の形と、その恋をきちんと成就させるために、改めて自身の夢の在り処と形を問いかける、愛と夢が紡ぐ絆の物語です。


 あらすじはざっとですけどこんな雰囲気。
 大枠としては膨大な日常的選択肢の中から、少しずつヒロインとの心の距離を縮めていって、しっかり告白し、或いは告白され、互いの恋を恋愛に紡いだところで、ヒロインが抱える問題と主人公の夢が密接に絡み合って、二人の先行きに試練と希望を浮かび上がらせる、という流れですね。

 テキストは全般的にツッコミ、からかわれ体質の主人公の八面六臂の活躍というか、全方位的な反応の良さで日常の躍動感を維持しつつ、基本的には読みやすく丁寧に仕上がっていて、伏線の引き方や心情表現も不自然さは少なく、それでいて緻密に組んであるのでスラスラっと読める感じですね。
 強いて言うと、どうしてもエピソードがぶつ切りになりやすい印象は構成的にあって、その中で程々に連続性を担保するのに苦慮はしてるかな、とは思いますが、概ねいい出来と言っていいと思います。

 ルート構成はまあかなり複雑、それはシュガスパ後継作という時点でもわかっていましたが、とりあえず大きな枠組みではまずメインの三人が攻略可能で、多分二周目以降から千穂とリンカのサブ二人が攻略できるようになるのだと思います。メインの三人に対するアプローチと、サブ二人のそれはやはり根底的な所での差異があり、その差異を明確にするためのロックではないかな、と個人的には感じます。
 細かくは、基本的に一週間ごとの単位でヒロイン好感度判定みたいなのがあり、その週に一番心を砕いた相手(選択アイコンの表情と数で判別可能)とのイベントが週末に発生し、その蓄積で恋愛に至れるか否かの判定がされる構造ですね。

 基本的にゲームの恋愛って、各ヒロインとどれくらい触れ合ったかの単純な多寡の相対性で選ばれる、みたいな構図がほとんどですけど、これは一工夫されていて、恋をきちんと花開かせるためには、継続的に水をあげ続けなければ花が萎れてしまうように、ヒロインとも継続的に想いを育んでいかないとダメだよ、と示唆するつくりになっています。
 なので基本的に同時攻略的なこと出来ないし、その分中々面倒さはあるのですけど、しっかり一人のヒロインに向き合って攻略した、という気分を深く味わわせてくれるシステムに仕上がっているとは思いますね。
 
 あとリンカだけは特殊な立ち位置におり、最初にQPが予言した存在なので、他の誰とも付き合う事のなかった展開からスタートする構造になっています。
 普通誰とも付き合えなかった後日談なんてバッド扱いですけど、これはある意味ではそれこそが本来の、QPのお節介がなければ辿り着く未来、という設定なので、その分だけ色々と深みと衝撃のあるシナリオに仕上がっており、あくまで個人的には、ですけどラスト推奨かな。
 他ヒロインはどういう順でも特に問題ないと思いますが、色んな意味でこれの後にメインヒロインの話、ってなるとややインパクトが薄くなっちゃうかも、という印象。伍するのはせいぜい彩雨シナリオくらいか。

 
 んで、そのシナリオに関しては、概ね懇切丁寧な仕上がりであり、様々な伏線を過不足なく紐解きつつ、二人の恋が育む未来の可能性を様々に提示する中で、主人公たちの強い意志による、もっとも望ましい未来への道を切り拓いていく流れを、上手くテーマ性を絡めつつ紡いでいると思います。
 根底的にQP、というファンタジー存在がいることもあり、ルートによってはそれが介在してくる場面もありますが、決してそれを恣意的に使い、かつそれが大きなプラスになる場面、ってのはほとんどなくて、あくまで懸命の努力と不断の意志の果て、どうしようもない袋小路の最中に垂らされる一筋の救い、程度の味付けになっています。
 それも元はと言えば、QPの本来の動機、リンゴの木を熱心に世話してくれる主人公に対する恩返し、という土台があり、恋を成就させた段階である程度その存在意義と力を喪失する中でも、最後まで行く末を暖かく見守っているという観念が色濃く出ているので、理路として説得的かはともかく、感情的にはスッと受け入れやすい構図になっているかと。

 そういう見せ方を加速させるのは、千穂を除くヒロインにはルート後半での選択肢分岐が用意されている点で、まあそれはわかりやすくトゥルーとノーマル、的な分かれ方にはなりますが、その二人の関係性の中での最善は何なのか、を突き詰め切れたか否かで色味が変わってくる、というのはとてもわかりやすく。
 巨視的に見ればそれは、恋愛と夢をどう両立していくか、というテーマに帰結するし、まあ厳密にはまひると千穂にはそこまで密接には影響してこないテーマではありますけど、本筋としてはその理解でいいのかなって思います。
 ともあれそういう構造からの説得性も含み、概ね安定感があり、一貫性も感じられるつくりになっているでしょう。

 そこを踏まえた上での個別評価としては、リンカ=彩雨>>友希>千穂>まひるくらいですかね。衝撃度ではリンカ、構成力では彩雨が個人的には突出して素晴らしかったと思うし、友希と千穂もそれぞれに見せたいものは明確で、まひるだけはヒロインとして一人年齢層が低い、って部分を加味しても少し味付けが薄かった気はしますね。

 サラッとネタバレになり過ぎない程度で個別内容下から浚っていくと、まずまひるは過去の主人公との関係性が土台にあり、それで作品全体における初期の主人公の恋愛観の消極性を規定しつつ、結局そのいざこざの本質は、まひるという女の子が育んでしまった特殊な感性、自己抑圧の発露に過ぎないから、なんとかそれを解きほぐそう、という流れ。
 正しい意味で両想いになってなお、どうしても割り切れない想いをどう汲み取り、その心配を払拭させてあげるか、という部分で、あくまでかなり年下ロリッ子ヒロインであるまひるの心の成長を促す部分にシナリオの大半がフォーカスされており、その割にその根幹である家族との関係性は淡白に流されてしまうきらいがあって、せめてその辺もう少しフォローが欲しかったです。具体的にはもっとまやさんを活躍されてくれ〜(笑)。
 正直ここだけはあまりトゥルーとノーマルの印象度のギャップも強くないし、色々勿体ない感じですね。

 千穂はサブのひとつのテーマでもある恋愛の発端の在り方の多様性を、ある意味リンカ以上に担保する存在でもあり、言い方は悪いけど吊り橋効果的な出だしから、このシナリオだけは根底部分に大きくファンタジーが介在することで、どこかミステリーめいた構成になっています。
 基本的には記憶喪失の千穂の記憶探しをする過程で恋が芽生えて、ではあるのだけど、それをする以前から千穂には明確に想いの欠片が眠っており、それを具体的に示すのは、実はこの子だけ、一切好感度上げずに告白しても付き合える、ってところだったりします。。。

 ではなぜそうなのか、どこにその想いの源泉があるのか、という部分での構成、伏線とミスリードの紡ぎ方は中々に秀逸で、よくよく思い返せば確かにそれを示唆するものはあった、と腑に落ちるし、時系列的にも矛盾がないところに感心出来る、綺麗などんでん返しが決まるところは見事。
 ただ物語としてのテーマ性や奥行きはやはり薄いし、サブ扱いだから尺的にも、ってのはあって、この舞台ならではのアイデア勝ちって感は強いし、あとどうしてもファンタジー色が強めな分だけ、まあそういうこともあるのかもね、みたいな冷めた目線になっちゃう部分は否めないかなぁと。でも面白い話です。

 友希はまず、システム的な部分で緻密に恋愛観を醸成していく流れの中で、幼馴染との恋愛という、本来飛躍の難しい部分を丁寧に解きほぐしている部分はプラスに評価するべきところ。
 その上で彼女が抱える家族の問題と、主人公の夢がかなり直接的に関与して、様々な伏線が露呈していく中で二人の関係性を揺るがす大きなファクターになっていく、という部分は、非常にスケール感ある構想になっているんじゃないかと思います。

 ただまあ、祖父との軋轢に関しては序盤から簡単に予想できる範疇ではあるものの、そこにもう一段密接に関わる仕掛けがあり、それに関しては果たして友希がそこまで鈍感であっていいものなのか・・・?という疑問はやや付き纏いますかね。そこだけは少し強引さを感じました。
 あとその設定を下敷きに見た場合に、その経緯が祖父の認識を決定的にした、という部分は確かだろうけど、それ以前からの祖父なりの生き様から得た教訓というか、自身が夢を挫折し堅実に生きてきたことによる、ほんの少しの後悔と、だけどちゃんと家族は幸せにしてきたと言う自負の色味を、より具体的に提示できれば、どうしても傍目から見て頑固一徹分からず屋、という印象をもう少し緩和出来て、対立感をマイルドに出来たんじゃないかと。

 無論話のハラハラ感としては徹底した否定、みたいなのは効果的ですけど、その前提が弱いとそれぞれの正義、という公平な観点が読み手に浸透しにくいし、無理に悪役を作っている感じもしちゃうわけで。
 少なくとも友希が望む関係と、そして当事者それぞれへの理解の中では、誰かを悪役・踏み台にして、という意識は微塵もないわけだし、それを踏襲するならば話のダイナミズムよりも思想性の説得力を上位に取るべき構図ではなかったかと思ったりはしました。

 ただそういう細かい不満はあれど、全体像としてはとても良く出来ているし、最後の和解への鍵も途中からある程度予想は出来るものの、やはり心に染み入るつくりになっているかなぁと思います。
 その成算がない中で、主人公がけど強い意志を持ってその和解への道に踏み出せるかどうか、それは同時に自分の夢を叶える為に必要なものがなにか、という観点において独り善がりにならずにいられた証左でもあり、その辺はノーマルとの区分けで非常に上手く表現されていて。
 ノーマルのラストは、一見ハッピーエンドに見えるのは確かなんですけど、それはその時点までの物語として、であって、和解のないままでそこに至っている、ということは、畢竟友希の両親の覆轍をなぞっている、とも言えるわけなんですよね。

 実際恋愛と夢を過不足なく両立させる、というのは、きっと単に当事者同士の問題でなく、より多くの人の支えがあってじゃないと中々成り立たせ得ない難業なのかな、と、最近このテーマで考えさせられる作品が多かったこともあり切実に思うところで。
 だからまあ、より現実的に言えば、きちんと和解を果たした流れであってもダメになっちゃうときはダメになる、ってシビアさはある、それくらい難しい事ではあるけれど、それを為すためには最大限の努力で絆の輪を強固にしていく必要があるんだ、という部分で、このトゥルーとノーマルのコントラストは見事だったと思います。

 彩雨はこの設定を最大限に上手く生かした非常に丁寧で緻密で、それでいてしっかり心揺さぶってくる素晴らしいシナリオだったなと思います。
 彼女の過去を知り、その想いの純粋さと切実さに触れて、それを叶えてあげたいと強く思い入れる過程が非常に丁寧に紡がれているし、その上で彼女が抱える本質的な問題を炙り出す過程として、まず主人公自身の体験としてのファクターをクッションに置き、それを担保にしてその特殊性を飛躍に感じさせず、論理的にあり得ることなんだと読み手に深く納得させる図式で展開しているのは見事の一言ですね。

 また彼女と寄り添っていく為の前提的な知識や観念としても、QPとの関係性の中で暗々裏に示唆されている部分が非常に多く、それはそこまではまだ茫洋としていた主人公の夢の形を、より鮮明にしていく為の準備にもなっていて。
 その、そうしたい、という想いが、彩雨との関係性、彼女の生きるべきステージの構築という難題に対処する中で、そうしなきゃいけない必然と完璧に重なり合ってくるところに真骨頂があったと思うし、でもそれは、生き様としても恋愛模様としてもかなりの苦難をヒシヒシと予感させる在り方でもあって。

 友希でも触れたように、恋愛と夢を両立させる生き方は非常に難しく、そしてこのルートの凄味は、夢を達成しなければ、正しい意味で永続的な二人の恋愛は成り立たない、という構図を一切の無理なく成り立たせてしまったところにあります。
 そしてその為には、当然最大限自身の努力もしなきゃいけないし、周りの沢山の人に全力で助けてもらう必要もある、そういう諸々を背負い、それでも成功するかわからない茨の道に踏み出す意思と覚悟があるか、その時点で主人公にそこまでの自覚はなくとも、それでも彩雨のこれからの生き方を規定する宣言であるというのは明白で、それだけの重みが最後の告白選択に圧し掛かっていて。

 その時点ではまだ確実に悪い方に触れるかもわからない、という半端な状況がまたその選択を難しくしているし、だからこそこの彩雨のノーマルエンドへの道筋は、ある意味ではごくごく普通の人の弱さが正直に出てしまった故であり、それを責められるような印象はどうしても出てこないけれど、でもそこから状況は坂道を下るように転がり落ちていって。
 結果的に猶予を得ることは出来るけれど、そこに敢えてファンタジー的な奇跡を介在させることで、その土台の危うさを示唆しつつのラストであり、ここは本当に奇跡の使い方として非常に巧みだなと感じました。
 強く純粋な感情が呼び込む奇跡そのものは、当然物語の中では比較的目につく要素でもあり、読み手の感情に訴えて納得をもたらす手法であり、このルートにおいてはその文脈でも充分に説得力は有しているのですが、それでもその奇跡はあくまでまやかし、誤魔化しであり、いつかぶつかる壁を先送りにしたに過ぎない、という点は非常にシビアで。
 まあ奇跡の全否定を土台にして人の意志の崇高さを浮き彫りにしたサクラノ詩ほどの矯激さはないにせよ、奇跡の用い方として非常に抑制の効いた、かつリンカシナリオとの対比という意味でも絶妙の匙加減だったと思います。

 そしてそれだけのノーマルがあればこそ、トゥルーで辿り着いた未来の、ささやかだけど確かにその手の中にある幸せの偉大さ、そこに至るまでの苦難の重みに心揺さぶられるし、まあ贅沢を言えばリンカシナリオ共々、その苦難の具体的な部分をもう少し話に盛り込んでもいいのだけど、とは思うけど、非常に満足度、納得感の高いシナリオだったと思いますね。

 リンカに関しては本当にある意味ではこの作品のテーマを鋭角に抉りきった内容であり、ラスボス的なシナリオ、立ち位置だなあとは思います。流石にリンカくらいはネタバレ白抜きにしておきますね。

 まず根源的に考えちゃうのは、一目惚れ、というものが本当にあるのか、というところで、それは当然現実にあるのは間違いないんだけど、ただそれは本来物語の中には持ち込みにくい要素なんですよね。何故ならその恋の発芽に前提がない、ストーリーもないでは、読み手の思い入れを醸成する土壌がないし、物語としても発展性を持ち込みにくいわけですし。
 けどこのリンカというヒロインは、幾層かの仕掛けを経ることで、その本来成り立たせにくい、一目惚れからの恋愛、というものを説得的に、かつ読み手にも思い入れが抱ける形で書かれている、まずそこは一つ素晴らしい点だと思います。

 その要素としては、まず当然、事前にQPによってその関係性が予言されていることがあり、また後々にQPの存在がどういう人間になら認識できるのか、という部分で二重に担保されている、という点が挙げられますね。
 QPの存在認識の理由づけとしては、植物の成長に歌がいい影響を与える、という部分で、まずQPがそうしたいと思う意味を設定し、かつ主人公とリンカの視座が、他の同年代の面々とはやはり違う地平を見ている、という部分の裏付けにもなっていて。

 他ヒロインも主人公と付き合いだして、最後の最後くらいでQPを認識できる場面はあるのですが、やはりそれは主人公に対する信頼と愛情が前提としてありきであり、自身の世界の見え方の中からそれを見出すことは出来なくて。
 じゃあそれは何かって言えば当然、ひたむきに夢を追いかけ、想いを育むことで養われる世界の見え方なんだろうと思うし、そしてそれは逆説的に、主人公とリンカの目線の位置が重なり合っている、という証左にもなっているんですよね。

 そこまで二人ともに、ひたすらにQPのお節介を受け、恋というものを強烈に意識させられながらも、それでも夢に向ける想いほどには恋に心を傾注できなかった、その純度の高い在り方故にこそ、一目出会った瞬間に互いの琴線が鳴り響くほどに相和する関係性が成り立ったのだろうと、少なくともこの文脈においての一目惚れの定義はこれでいいのだろうと思います。
 ましてリンカのほうは、その自分の生き方のポイントオブノーリターンの直前にあり、最終確認のためのモラトリアムの中で、という経緯もあるから余計に、運命を感じさせる要素は強かったと言えるのでしょう。

 その上でのシナリオ展開としては、まあこういう二人だからこその、理性的に見えつつも実際は行き当たりばったりの流れの中で、誰かを騙すことは出来ても、自分自身は騙せない、特にそれが、一番誠実に純粋に向き合ってきた夢に対してなら、という部分を、どこまでも残酷に抉った話に仕上がっていますね。
 これは一見すると、ノーマルエンドの方が穏やかで、それでもそういう結末になれるならいいじゃない、とすら思わせるほどの衝撃感があるわけですが、ただ結局このノーマルは、あくまでも夢>恋愛という方程式が確立した上で、夢をある程度叶えたが故の余裕の範疇でしか恋愛には至れないという悲しみも備えていて、互いの納得がある分だけ残酷さはないけど、スタンスとしては恋カケの星奏に親和するものがあるよなぁと感じます。

 トゥルーに関しては、まあ途中から絶対そうなるんだろうな〜と予想は出来るけれど、やはり実際目の当たりにして心を抉られまくる展開だし、その経緯があるが故のリンカの懸命の嘘と、でも自身がそうだから、というどうしようもなく切ない理由でそれを見透かし、突き付けざるを得ない主人公の在り方には、夢、というものが持つ呪いにも似た引力の怖さを切々と感じさせます。
 ただ少なくとも、その本心をこういう形で誠実に吐露できるだけ良心的ではあるというか、同じ地平を見つめていた同士だからこそ許されるコミュニケーションなのかな、って感じで、これまた恋カケと対比してみて、あの時点の主人公に星奏がそれを突きつけるだけの言葉を持てなかった理由も畢竟ここに尽きるのかなと改めて思わされたりしました。

 ただ少なくとも、嘘とはいえ一度は恋を選んだことは、例えその根底に贖罪感があろうと、少なからず二人の生き方の根底を覆すだけの意味があって。
 それでもそこで、もしリンカ一人が先に進む結果になってしまっていたならば、それはいつしか乖離し、溶けて消え去ってしまう、すなわち共通で示唆された、継続的に育まねば枯れてしまう想いの発芽であり、極論を言えば、ここに至ってはじめて二人は普通の恋愛のステージに至る心情を、けれど夢に対する想いも毀損せずに獲得し得た、と言えるのかなって思います。

 そして、正しき形で夢を、恋愛を成就させるために、その道中の苦衷や慨嘆が大いに予感させられる中で一歩を踏み出すことは、非常に重たく、覚悟と勇気の伴う行為であって。
 それはこの作品における個別後半の選択、という部分で色濃く出ていて、個人的にその踏み込みの重さがそのままシナリオ評価とリンクしている感もあるのですけど、とりわけリンカシナリオにおいてはもうひとつ、トゥルーでの主人公の、夢に対する渇望と絶望からの脱却のための選択にその重みが一層際立っていて。

 それは、主人公とリンカが互いに夢と恋愛を両立させ、手を取り合って前に進むためには絶対に必要な覚悟であり、けれど残酷に過ぎる現実は、その夢が叶う可能性を微塵も示唆してくれなくて。
 けれど少なくとも、二人はそこまで恋することを諦めたりはしなかった、それは何もない歴史と違って、QPが二人に容喙し続けてきたからこそ芽生えた意識の影響でもあり、多分そうでない未来では、無理を重ねて疲弊した上での悲嘆に塗れた別れに至るんだろうな・・・というイメージはあまりに悲しくも鮮明であって。

 何より夢を大事にしつつも、それでも恋を諦めたくない、という想いを成就させるための、主人公がその背負ったハンデを乗り越えていく気概と覚悟、その何よりも大きく重い一歩、その手助けにそっと添えられる、恋の妖精の面目躍如というべき奇跡、この構図は本当に美しいと思えます。
 何故ならそれは、本当にやるべき事を一通りは全てやり、絶望し、その経緯でどうしても生まれる暗い想いも隠さずぶつけ合い、その上でどうしてもそうしたいとまだ思える、尊い祈りが生んだものだからで、ただ想いだけで発現した彩雨シナリオノーマルのそれとは明確に一線を画した意味を示しているからなんですよね。

 彩雨でも触れたように、例えばなんだろ、ひこうき雲の瑛莉シナリオみたいにモノクロダイジェストでもいいから、そのリハビリの過程、二人の努力の過程を具象的に提示してくれればなお、あのラストは感動的になったかもなぁとは思うんですが、それでも充分心に響く終わり方でしたし、わかりやすく二人が語った夢と恋愛の成就の結晶、という感じで、心痛むところも多かったけど素晴らしい話だったと思います。


 以上、全体としても非常に丁寧につくりだし、要所での爆発力もあり、ゲーム性もそこそこに高くて、かなり満足度の高い内容だったと思います。
 まあ敢えて言えば少しシナリオの出来に差異はあったし、共通の流れにももう一工夫あれば、って感じる向きもあったけどそれは贅沢かな。より贅沢を言えば、まやさん攻略できないバグをどうにかして欲しい。あと絵里も。会長はどうでもいい(笑)。


キャラ(20/20)

 思った以上にシナリオゲーとしての比重が高い気はしたし、恋愛面で言うと告白モードでの瞬発的な可愛さはともかく、総合的にイチャイチャしている中での画一性、間怠さ、とりわけキューピット桜使っての序盤からの秘匿恋愛モードとかは、それはそれで楽しい、とはいえどこか作業感出ちゃう気もしたけれど、少なくともそれぞれの個性は色濃く、それでいて嫌味なく仕上がっているし、概ねみんな可愛かったかなとは思いますね。

 一番好きなのは・・・ん〜、迷うけど彩雨かなぁ。
 箱入りお嬢様らしい特殊な感性の中でも女の子らしい愛らしさは随所に見せてくれたし、個人的に時代劇チックな言い回しが結構好きで(笑)。ならぬものはならぬのです、なんて武士道まっしぐらな台詞妙にツボでした。
 性には初心な所もありつつ、だからこその純粋な好奇心と積極性は可愛かったし、イチャイチャの反応も素直で可愛かったし、地味に私の中では一番えろっちかったし、シナリオの良さも相俟ってかなり印象のいい子ですね。

 次いでやはりリンカ、かなぁ。あのシナリオは卑怯だし、シュガスパ好きだった身としてはあのノリはなんか親近感が強く湧くし。。。
 性質としてはどうしても芸術家としての特殊性は色濃いし、それ故に普通の恋をするのに障害が多いというところで面倒だし、トゥルーでの心情の吐露とかあまりに正直すぎて人によってはオイオイ、ってなりそうな気もするけれど、互いの全てを支えられる気概と覚悟は、こういう経緯じゃなきゃ育めなかっただろうという部分も込みで、すごく可愛いしいじらしい子だと思えましたね。

 そしてまやさん超好きなのに〜、攻略したかったのに〜(笑)。
 ぶっちゃけ共通や週末イベントなんかでもあからさまにフラグ経ってるだけにぐぬぬ感半端なかったし、ただまひるルートでの情に薄くない?的なスタンス含めて、どこまでも自分からは決して踏み込んでいけないタイプなんだろうなあ、ってのは露呈しちゃってるんですよね。その辺でヒロイン力の差異化を図っていると見るべきか。。。

 まひるの駄々っ子ぶりもあれはあれで可愛かったし、たまに素直になるとめっちゃ可愛かったけど、まあそれ以上の何かはなく、千穂もあの無邪気な慕いっぷりは好きたけどくらい、友希はやはり下ネタ大王過ぎて、それが行為の表れだとしても中々なぁとは。当然恋人になるといじらしさ恥じらい出てきて素敵ではありますけど、元々射程外ですしね。。。
 QPは確かにうざいしめんどいけれど、色んな意味で正直ではあったし、結果的に難しく考え過ぎずに想いに真っ直ぐ向き合っていく大切さを浮き彫りにしている面もアリで、あとだんだんあのポーズが癖になるよね。

 そして父親のブラックぶり爆笑。あとノウカーも爆笑。


CG(17/20)

 根本的に凄く可愛いとまでは言い切れない絵柄ではあるものの、総合的な質量は高いし、印象は結構鮮烈ではありますかね。もう一点あげるべきか迷ったんだけど、特にレベルでの好きがそこまで多くはなかったのでこの点数で。

 立ち絵は水準はクリアしてるかなと。
 ポーズはヒロインで2種類、サブで1種類とそんなに多くはなく、ただ演出力もありそれなりに躍動感は感じるしそれぞれにらしさは出てるかなと。
 お気に入りは彩雨正面、やや右、リンカ正面、やや右、まやさん、まひる正面、千穂正面、QP天を指さしあたり。

 服飾はかなり多く、メインの三人は制服二種、私服二種、体操着に水着に浴衣にウェイトレスまであったから8種類か。サブヒロインの二人も4種くらいはあったし、それ以外も2種類くらいはあったのでかなり豊富、デザイン自体はそこまで洗練、って感じはないけど目に楽しいバラエティでしたね。
 お気に入りは彩雨制服、春私服、夏私服、水着、浴衣、ウェイトレス、リンカ夏制服、私服、水着、まひる夏制服、夏私服、水着、体操服、浴衣、まやさん私服、ウェイトレス、友希春私服、水着、浴衣、千穂私服あたりですね。

 表情差分はそこまでバリエーションは感じなかったけど、基本的なものは揃っているし独特の可愛げがあって結構好き。
 お気に入りは彩雨笑顔、膨れ、困り、照れ、リンカからかい、笑顔、照れ困り、しょんぼり、まやさん笑顔、照れ焦り、拗ね、まひる笑顔、怒り、ジト目、照れ笑い、千穂笑顔、ギャグガーン、半泣き、友希ウインク、笑顔、照れ目そらしあたりですね。


 1枚絵は通常94枚、SDっぽいのが6枚ですかね。量としてはまずしっかりしてるし、やや似通った構図もあるけど概ね無難には仕上がっていると思います。

 特にお気に入りは彩雨の慟哭、自身の生きる意味を問うあの涙と表情の迫力は見事だったと思いますね。
 その他お気に入りはページ順に、アップルパイ、鎮め、菜の花畑、お化け屋敷、温泉、オイル塗、告白、正常位、キス、バック、フェラ、添い寝、騎乗位、本物のアップルパイ、友希添い寝、お風呂、キス、告白、くんかくんか、パイズリ、騎乗位、バック、正常位、まひる水着抱きしめ、キス、正常位、フェラ、騎乗位、背面座位、添い寝、危機一髪、千穂出会い、キス、添い寝、バック、リンカ舞台、木陰で、キス、正常位、バック、悲しみの本音、辿り着いた場所、再会、髪を上げたらあたりですね。


BGM(19/20)

 ここは量自体はかなり少なめ、ではあるんですが、一々こうシナリオと連動してのツボに入り方が素晴らしかったというか、聴けば聴くほど好きになっていく感じがあって、その分かなり甘めに加点してますかね。

 ボーカル曲は2曲。
 OPの『私が好きなら「好き」って言って!』は、非常にポップでキュートで爽快感があり、ボーカルの透明感とも相俟って実に耳触りがいいのと、あとサビの部分のメロディラインのノリの良さが素晴らしく、とりわけ告白ムービーからの繋ぎでこの出だしが流れるときの感銘というかね、あれが物凄い好きなんですよね〜。
 あとBメロ終わりからの溜めが綺麗で好き。あと歌詞も超ストレートで好き。

 挿入歌の『木漏れ日のバラード』はやはり出だしの透明感と柔らかさ、そこからひとつシンバルが入っての盛り上がりへの繋ぎがすごく心に響くし、Bメロ、サビとしっかり盛り上がる響きの広がるメロディラインから、また最後にAメロの安らぎに回帰してくる構成が物凄くいいですね。
 他エンドで聴いてもすごくいい曲だと思っていたのですが、しかしやはりリンカシナリオで聴いた時の破壊力が一線を画していて、素晴らしくシナリオと一体化して神曲レベルに好きになれた感じです。

 BGMは全部で20曲とやや少ないですが、質はかなり高く、特に要所での選択を迫られたり、その克服の過程での盛り上げの曲がすごく耳に残ってますね。

 特にお気に入りは2曲。
 『瞳を閉じて』は出だしこそ綺麗だけど普通かな、と思ってたんですが、聴き込むほどに深みと悲しみの浸透率が素晴らしい感じで、中盤以降のメロディラインがめっちゃ好きだったので。
 『涙の理由』はとにかく痛々しさと、歯を食いしばって想いを吐露する情景とのマッチングが非常に鮮烈で相当に好きですね。

 その他お気に入りは、『Sunny Sunny Day』『ツギイッテミヨウ〜』『恋の花が咲く瞬間』『夢の中へ』『stardust memories』『雨音を聴きながら』『十字架』『閉ざされた扉』『時計仕掛けの空』あたりです。


システム(9/10)

 演出はかなり効果的でインパクトもあり文句なしですね。
 通常の立ち絵演出もそれなりにはコミカルに動いて面白いですし、やはり白眉は告白演出とそこからのムービーの繋ぎ、あとはHシーンアニメーションもそんなに多くはないけど搭載されていて、ややぎこちなさはあるんだけどまあないよりはあったほうが嬉しいよね、とは思いますし。
 ムービーは色使いとキャラ固有のイメージスタイルをセンス良く配置しつつで、中々の出来だと思います。

 システムも必要なものは揃ってるし、かなり周回しないといけないけれどシーンジャンプはあるのでそこまで苦痛ではない、かな。スキップの汎用性がもう少し高いと楽かなあとは思うけれど。


総合(90/100)

 総プレイ時間28時間くらい。ほとんど共通と呼べる範囲はなくてだいたい1時間程度、それ以外は日常イベントを拾って行く形なので実際に真っ直ぐシナリオだけ追いかけた時のボリュームはわからないけど、概ねメイン3人でルートに入るまでに2時間、個別が2〜2,5時間くらいで分岐あり、再プレイの恋人モードが1時間分くらいはあったかなと。
 サブの2人はそれぞれ3時間くらいで、あとは色々試行錯誤した分も含めてイメージ的にですね。難易度は慣れちゃえばそこまででもない、けど多少は作業感の出る場面やイベントもなくはないですね。特に一度ルートクリアしてからの桜使っての回収イチャラブは、それはそれで楽しいけれどって感じ。

 細かく見ていけば不満もなくはないけど、少なくともシステムの中にもシナリオに通じる意味をしっかりこめた構成になっているし、その上で全体構造もひとつひとつのシナリオもかなりしっかり作り込まれていて、やはり特にリンカと彩雨の出来は素晴らしかったので、あんまりこれ書くのに間を置いてない分感情で走ってる部分はあるけど、名作と思ってもいい出来じゃないかなと私は感じましたね。
 決して単純なイチャラブゲーではないのでその辺踏まえて、ってのはありますけど、これはかなりお勧めしたい出来です。
posted by クローバー at 06:49| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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