2015年12月24日

見上げてごらん、夜空の星を

 ころげてチームの新作ですし、設定発表になった瞬間から沙夜があまりにも好み過ぎて死にそうだったわけで、体験版での絶悶えを経てほんとに、ホント〜に楽しみにしておりました。


シナリオ(26/30)

 ほんの刹那の輝きでも。


 主人公は幼い頃に両親を失い、親戚の元を転々として暮らしてきました。
 けれどそこに安逸はなく、盥回しで最後に辿り着いた祖父の元で小康を得るものの、その祖父が亡くなった後は、親戚に頼るのを良しとせずに、バイトをしながら、現状二人しか部員のいない学園の天文部を根城にして暮らしており、周りからは星を見ない天文部員と揶揄されていました。
 そんな主人公にちょくちょく差し入れを持ってくるが故に、通い妻、なんて綽名をつけられた幼馴染の沙夜などの助けもあり、なんとか綱渡りの日々を成立させていたある日、主人公は天文部の前部長の頼みで、他学園の天文部に向かう事になります。

 自分の所とは違う豪華絢爛な学園の天文部で待っていたのは、少し残念な美人の織姫と、そしてかつて近隣の天文部六校が協力して活動していたという、通称むつらぼしの会への参加要請でした。
 今の自分の立場でそれに参加する気も、資格もないと考えるものの、織姫の情熱と美貌に絆されて、全体会合への参加だけは承諾した主人公ですが、改めて六校(−1)が集まった会合は、予算と方向性の問題であっという間に決裂し、意気消沈する織姫の手前自分も抜けるとは言いだせなくなります。

 とりあえず残ったメンバーだけででも、と観望会を行う事になり、そこで連れて行かれたのは、非常に馴染みのある場所で。
 そのノスタルジーの重さに引かれるように、より深い思い出の場所につい足を運んでしまった主人公は、しかしそこで運命の再会を果たします。

 箒星ひかり。
 祖父の家にやってきたばかりの、世の中の全てが敵に見えていた頃の主人公に手を差し伸べ、唯一の形見である天体望遠鏡の楽しさを一緒に知ろうとし、同時期に転校してきた沙夜との軋轢と解消を経て、三人で星見のためのクラブを作った、その原動力となった少女。
 けれどかつての輝かしい思い出は、ひかりの転校と、その直前の大喧嘩の記憶によって塗り潰され、数年を経た今でも、主人公が星見を出来ないトラウマを植え付けた相手でもあり、そんなひかりが、かつての三人の秘密の観測所で、当時と変わらない無邪気で奔放な笑顔で笑っていたのです。

 その屈託のなさに苦いものを覚えつつも、親友との再会が嬉しくないわけでもなく、そしてひかりの帰還と、彼女が発想したむつらぼしの会を盛り上げる企画が、一度は袂を別った他校の面々や、星見からは離れていた沙夜や、そしてかつては学年の違いで仲間外れにしていたころなをその活動に参加させる牽引力となって。
 その活動を通じ、主人公もまた、少しずつ星を見ることの楽しさを、喜びを取り戻していって。

 果たして主人公は、そのトラウマを克服して、本来の星への好奇と高揚を取り戻せるのか。
 そしてひかりはなぜこの時期に戻ってきたのか。
 眩い原動力を得た事で、彼らの関係性は如何様に変化していくのか。

 これは、天文の神秘に触れることで得られる感動を共有していく中で、否応なく変わっていくものと、それでも変わらずにある大切なものを噛み締め、新たな関係に踏み出すための活力に転換していく、青春の熱情と友情と恋の物語です。


 あらすじはざっくりですがこんな感じです。
 大枠としては、共通の時点である程度大きなことを成し遂げ、その経緯によって主人公の気持ちが大きく変化して、その想いの一端は活動を通じて知った仲間達の新たな一面や魅力であり、改めてその想いを原動力に、より一層に天文活動に精力を注ぎながらその関係性も深めていく、という流れです。

 テキストは非常に読みやすく、理路がしっかりしていつつもノリはしっかり青春を謳歌する若者たちのそれを踏襲していて、その分読み手の感情の振れ幅も大きく、一緒にドキドキワクワクしたり、ハラハラしたり、ほのぼのと笑ったり、そういう感覚をすごく等身大で楽しめる読み口だなって思います。
 今回もころげて同様に、土台となる天文活動が、いわゆる社会的な利益や打算とは一切無縁の、純粋に心の底からそうしたいからする、というものであるのも、その読み口の純良さを担保してくれてますし、キャラ的にも年相応の、変にものわかりが良すぎたり頭が良すぎたりしない、普通にくだらない事で悩み、躓き、笑い、泣き、そしてまた笑う、そういう紆余曲折ある心情や、人くささを綿密に紡いでくれるので、本当に世界が生き生きと色づいている感覚ですね。

 ルート構成は基本的にロックはなく、共通中盤くらいの分岐でメイン二人かサブ二人かに分かれ、そこから更にルート分岐する、という単純な形式ではあります。
 ただ選択肢の数こそ少ないものの、その使い方は作中の心情の楔となる部分を的確に用いた意味の深いつくりであり、特にひかり・沙夜ルートに関してはその色合いは強かったなと思いますね。
 最初の手紙をどうするか、という点は、すなわち過去ときっぱり訣別して前を向くか、それともまだ未練を残すかをわかりやすく示していますし、その結果として探り当てた想いの源泉、真実を受け止めた上でどういう想いを返すか、という部分でも、幼馴染としてでない新たな蓄積を要するための仕掛けになる分岐の仕方になっていて、シナリオの全体構造と合わせて非常に巧みに出来ていると思いました。

 シナリオに関しては、テーマや方向性の違いから、ころげてに比べると率直な爽快さやダイナミズムは少し削られて、その分だけ人間関係の機微にまつわる諸々がフィーチャーされているイメージであり、当然これはこれで面白いものの、その分だけ難しさもあったかな、とは感じます。
 まあ素材的にどうしても地味、ってのはあるのでしょうけど(笑)、人間関係の変化がシナリオ展開にも影響を与え、それがリンクして目指すべき地平に辿り着く、という緻密な構造の中で、多少ならずダイナミズムの確立がわざとらしくなってしまう感はなくもなく、充分に面白い、とは思うけど、その辺で単純にシナリオのみとしては、ころげてよりは高く評価できないかな、とは素直に思いました。

 その中でより強く組み込まれた人間関係の変化や軋轢については、子供時代からの蓄積、多感な時期を迎えるにつれての心情の変遷を踏まえて、非常に堅実に、理路の整った形で紡がれています。
 特に読み手の神の視点と明確に切り分ける形で、キャラそれぞれにとって見える真実の形が少しずつ違っていて、そのずれたピントを正しくフォーカスする為に想いをぶつけ合い、時には大喧嘩になってでも、それぞれの本心と覚悟を知り、新たな関係を構築するためのプロセスを本当に丁寧に綴っていると感じました。
 そうであればこそ、それぞれの人間性が、美点も欠点も含めて赤裸々に露呈していくし、そういう感情が根付いていることが、ただ無邪気なだけだったかつての輝きへの不可逆性を示しつつ、それでも取り戻せるものはある、そしてそれを発信点として、新たな関係を、輝きを築いていけるという思想性、テーマ性との結び付け方が非常に巧みだったなと思います。

 個別評価としては、ひかり>沙夜>共通>>織姫>ころなくらいですかね。
 基本的に共通でひとつの大団円的な地平まで辿り着いて、改めてそこからはじめよう、という決意の根源になる、実際それだけの熱量を感じさせる展開になっているし、シナリオのギミック的にも、後々の心情の補完の意味も含めて非常に丁寧であり、そうでありつつ、おそらく一番求められているであろうワクワク感はしっかり担保されている、ってのが大きいですね。
 比率的にどうしても過去の回想が多くなる、って部分で、テンポの悪さを感じる向きもあるかもだけど、少なくとも私的には、そこであれだけ丁寧に心情の原点を見せてくれたことで、個別の読み解きも非常に楽でしたし、よりキャラの心情の変遷に寄り添って、噛み締めるように楽しめたと思うので高く評価してます。

 織姫ところなルートに関しては、最初の選択肢において、そうと意識はしなくとも、三人の過去にまつわる諸々についてこれ以上拘泥しないという隠然とした決意の示しになっている以上、そちらの比重は薄くなっての、ごく平均的な恋愛模様ということにはなるので、流石にそこまで高い評価にはならないなと。

 ころなに関してはそれでも、ころなの側から見た過去の三人の関係と、そこから派生する勘違いの解消の部分で、主人公が介在しないところでの沙夜との軋轢にかなり見所はあったなと思うんですけど、織姫に比べると、やはり元が幼馴染ではあるだけに、強いてころなを好きになる、という重みは足りてなかった気はします。
 また付き合いだしてからの、ころなにとっての天文熱の高め方、という部分においては、選んだ題材がかなり地味、かつ情緒を感じにくい要素が多くて、ただでさえ天文の魅力はこういう作品に落とし込んで十全に発揮させるのが難しいのに、余計にその本人達の熱意や陶酔に共鳴できない感じは否めなかったなあと。

 織姫に関しては、ある意味恋愛をする、という部分においては誰よりもハードルが低い(勿論家柄とかそういう外的な要素は抜きとして)ところはあり、実際共通でも主人公は織姫にはときめいたり、絆されたりしてあれこれ流されてる感じは強いですよね。。。
 当然それは幼馴染というフィルターがない、まっさらな関係でのスタートだからであり、またころなルートで沙夜が分析しているように、織姫という前向きさと煌めきの権化のような在り方が、本質的な部分で主人公の好みど真ん中、ってところも大きく寄与しているのでしょう。少なくとも過去への拘りを捨てて虚心に今を見据えた時に、ころなよりは確実に恋愛に発展する可能性を強く感じさせる立ち位置だったと思います。

 だから恋愛の変遷については、意外性はないけど納得はあるし、その上で、あくまでも天文に関わり続けることでその想いもまた深めていく、という在り方がらしくもあり、もうすぐ卒業生だから後進を見守る、だなんてじっとしてられないあたりの無邪気さや、その中で見せてくれる彼女なりの関わり方は、ころなの選んだ素材よりもやはり柔らかみがあり、読み手にもその想いが通じやすいってところで得をしてるんじゃないかなと思います。
 そしてこの二人のルートだと、ひかりはああいう状況下なので、恋愛成就にまつわるあれやこれやの軋轢や筋立てが全部沙夜に向かっていくのが個人的にはとてもとても不憫でならなかったですけどね。。。通い妻引退宣言とか泣けるわ〜。

 沙夜とひかりのシナリオは基本的に表裏一体ではあり、かつてこの三人で共に夢を追いかけている時の、どんなことでも出来てしまいそうな全能感を覚えさせるほどに非常に噛み合っていたトリオとしての関係性、けどそれが、恋という感情が介在することにより変化を余儀なくされて、それが結果的に三人を別つことにも繋がって。
 街の発展と共に星空が暗くなっていくのと同じように、人の関係も変わらずにはいられない、けどその過去そのものをそのままに取り戻すことは出来なくても、懸命に努力して繋ぎ止めるなら、その輝きの一端に、刹那でも触れることは出来る、そしてその思い出を喚起させる芳しさが、新たな関係を、未来を紡ぐための活力になる。
 たとえ三人の内二人の関係が恋人に変わっても、二人と一人でない、かつての三人を取り戻せるということを、それぞれと恋愛関係に至った場合はどういう経緯を辿るか追いかけつつ示している、というのがこの二人のシナリオの本質かな、と思っています。それをプロジェクト・スターライトの展開と非常に緻密に絡み合わせて、テーマとして複層的な視座を与えているところが素晴らしい構成ですね。

 後はネタバレすぎるので一応白抜きにしておきます。

 幼い頃に確立された三人それぞれの立ち位置は、簡潔にまとめれば牽引役のひかりと制御、まとめ役の沙夜、そしてその二人のバランスを取る主人公、ということになるでしょう。
 それはそのまま三人の、そこまでの生き様が波及した立ち位置でもあり、家族関係が円満で、ただずっと狭い村の中で育ってきた故に外への憧れが強いひかりの外向きの前向きさは、時に無謀にもなるけれど、沙夜に時々天才、と評されるように、誰にも思いつかない発想と、それを実現させる活力を生み出す存在で。
 逆に沙夜は、恵まれない家族関係による愛に対する無謬の信頼の欠損、自身の特異な外見による他者関係での軋轢がもたらす痛みへの怯え、それらが複合しての、大切なものを手にした時に、それを更に上積みするのでなく、少しでも失わないようにと願う気質を持ち、それ故にブレーキ役でありつつ、その活動の意味を正しく繋ぎ止めようとする存在で。

 そして主人公は、やはり沙夜同様に家族関係で恵まれない分、沙夜の痛みに共感する部分もあるけれど、大概は父親の教えが根底となる、前向きさ、根源的に美しいものに虚心に心を傾け、手を伸ばす志向も同時に備えていて、それを屈託なく出来る存在のひかりに対する強い憧れを抱いているわけですね。
 その性質は時を経ても変わらずに、それが織姫に惹かれる要因にもなっていたり、或いは元よりひかりの事が好きだったのだろうと沙夜に悲しく見透かされる原因にもなっているのでしょう。もっとも主人公自身は長らく、そういう感情に無自覚であり、それは本質的な性質にプラスして、過去の訣別の悲嘆が影響を及ぼしているのは間違いないところです。

 三人の過去での決裂は、客観的に見れば誰しもが幼かった、でまとめられるところだとは思うのですけど、その中でも一番、恋をするということの意味を含めて、そうなってしまった原因を深く突き詰め、自罰的に背負ってきたのは沙夜でしょう。
 元々親の関係から、恋の永続性への信頼を欠損しており、そして誰よりも大切なものを失いたくない、と願っていたにも拘らず、自身の恋情が発端となって、あれだけ意気投合していたはずの三人の関係を粉々に砕いてしまった、という後悔は、その上に自身がフラれた、という勘違いを加味して重たい十字架となり、常にその痛みに苛まれながらも未練は募り、僅かな希望を繋げるために、罪滅ぼしの意味も含めての定点観測に従事する大きな動機になっていて。

 だからこそ、ひかりが戻ってきて、もしかしたら過去の関係を取り戻せるかもしれない、と希望を抱いた刹那、かつての恋模様のすれ違いの真実を知ってしまったことは、沙夜にとっては大きな葛藤だったでしょうし、しかも衝動的に思いを告げ、口づけまでしてしまったことは大きな誤算ではあったでしょう。
 少なくともこの時点で、まだ過去の柵に囚われたままの主人公は、二人に対しての恋愛感情を封印していて、その中で沙夜にああされれば、それまで沙夜に背負わせていた苦悩や切実を感じ取ってしまえば、想いの固まり切っていない段階で決して無碍には断れない、というのは間違いなくて。

 沙夜がもしこの立場で前向きな気質だったら、いざ付き合ってしまえばちゃんと自分の方に振り向かせてみせる、くらいの気概を持てたのかもしれないし、ただそうするとホワイトアルバム2の序章の三角関係みたいな構図になりかねなかったのですけど(笑)、恋は色々なものを壊してしまうと思い詰め、少しでも失うものを少なくしたい、と願う、こんにゃくの海巳っぽい沙夜では、当然そのリスクを念頭に置いた上でああして保留するしかなかったと。
 この時点で沙夜の中には明確な諦念はあったのだろうと思います。やはり恋が関わってしまえば三人の関係はかつてのようには成り立たず、どちらが恋を得るに関わらず失われていくのだと、その覚悟を定める為に猶予を得たかった、というのが、あの主人公に対する正直すぎる坦懐に示されていて、しかしそう考えると本当に不憫な気質を背負わされてるよなあと、想い寄せまくりの私などは感涙を禁じ得ないところです。。。

 一方でひかりとしても、自分の存在と行為が、二人の関係の邪魔になっているのではないかという想いが生んだあの軽率な発言とその後の別離の冷ややかさに関しては深い後悔があったろうし、ある意味ではひかりにとってはじめての人間関係での喪失と蹉跌であったとも言えます。
 ノリちゃん先輩の証言からすれば、そのトラウマが今の外向きのひかり、あまり誰にも深く踏み込まないひかりを作ったとも言えるでしょうし、その想念と数年同居してきた中で、改めて主人公たちの前に姿を現すのには、相当の覚悟がいっただろうことは想像に難くなくて。
 その勇気を後押しする状況や、偶然がもたらした奇跡的な繋がりの土台はあっても、ひかりが、もしかしたら面罵されるかもしれない、或いはもう自分の入り込む余地すらない主人公と沙夜の関係性を見せつけられるかもしれない、なんて妄想じみた不安を払いのけてでも二人に逢いたい、と本来の気質を奮い立たせたことは、彼女のルートで示された、曖昧模糊とはしていても確かにそこにある想い、沙夜を通じて朧げにでもその意味が見えている想いがあるなら尚更に英断だったと言えるでしょう。
 
 そして、主人公を含めて三人ともが、この三人の間でだけ見せられる顔、というのを確かに持っていて、改めての再会でやはりそれがかけがえのないものだと知ってしまったからこそ、沙夜はより一層恋することに対して頑なにならざるを得なかった。
 けどひかりは、少なくとも主人公とどちらがくっつこうとも、もう一人を蔑ろにするようなことにはならないと前向きに考えているし、主人公としてもそれを望んでいる、そういう経緯の中で、どちらのルートでも結局のところ沙夜の後ろ向きさを払拭する為にあれこれ奔走することになってるのだろうなあと、そういう意味で沙夜は本当にめんどくさい子にはなっちゃってるし、深く考えずに表層的な振る舞いだけで云々するとマイナスに捉えかねないかなぁ、ってのは、沙夜大好きの私としては切ないところですし、こうして全力でフォローしておかねば、と思う部分でもあります。
 実際そういう沙夜だからこそ、一度完全に全てを投げ捨ててしまいそうなどん底に落ち込んでいた主人公を敏感に察知し、それまでの経緯がもたらす、気まずさ、なんて表現では決して済まない重さを懸命に飲み込みつつ救いの手を差し伸べられたわけですし、大きな痛みを知るが故に抱ける慈愛、優しさ、そしてどれだけ打ちのめされてもしなやかに立ち上がる芯の強さが、特に沙夜ルートでは色々なものを繋ぎ止める一大要素になっていますしね。

 そして、この三人はそれぞれ二人ずつの関係でも同じ顔は見せられるけど、でもその顔を二人きりで向き合わせるとどうしても軋轢や瑕疵が生じる、というのが面白いところです。
 主人公とひかりだと前向きさが勝ち過ぎてブレーキが効かなくなって周りがついてこられなくなる、主人公と沙夜だと沙夜がどうしても引きずってしまう、それまでの境遇がもたらす後ろ向きさを払拭できなくなる、そしてひかりと沙夜だけだと肝要な部分での感性のずれが露呈してぶつかり合ってしまう、結局それを解消するには、恋愛が介在しようと関係なく、もう一人の存在が必須になっているわけで。
 そういう三人の関係性がシナリオ展開にもしっかり内的要因の反映として投射されており、だからこそシナリオイメージとしてもひかりは波乱万丈に、沙夜は堅実に、何も取り落とさないように積み重ねて、という雰囲気に寄っていく、そしてその状況に至ることでようやく、三人が新たな三人を始められるスタートラインを紡げる、というところがこの二つのシナリオの真骨頂と言えるでしょう。

 青春の残滓、なんて言い方をすると歳が知れますが(笑)、きっと誰しもが、一時的にでも青春時代の想いを取り戻せる場所や人との繋がりを少なからず持っていて、時にそこに今を一切織り交ぜずに回帰することで、改めて今を前向きに生きる活力を得ていると思います。
 けどそういう場所や関係性は、意識的に繋ぎ止めようと思わなければいつしか自然に失われ、いずれ記憶からも掻き消えてしまう儚いものであり、それがかけがえがない程に、人はそれをとどまらせる努力をするものでしょう。

 そう考えた時、この三人にとってもこの物語は、三人のかけがえのない場所と想い、関係性を取り戻すためのかけがえのない回帰点を改めてつくりだすためのものだったと言えます。
 ただそこに至る為に積み重ねたものが複雑に過ぎ、痛みや悲しみも大いに伴う為に、誰しもが簡単には向き合う事が出来なかったわけで、けれどもその時間の経過がもたらす否応ない変化や成長が、幼い時分ではどうしようもなかったすれ違いを埋め合わす何かをもたらしている、それをかつての星空の輝きを象徴になぞらえることで、すごく心を打つ情景を紡いでいると思います。

 そしてそういう三人であればこそ、より大きなスケールで、未来に、移ろいゆく世界の中で変わらずに美しくあるかけがえのないものを伝道していく生きざまに辿り着けると思えば、非常にスケール感が大きく、そして人間性の根源への信頼と希望が詰まった物語だったと思いますね。
 とくにひかりシナリオでの、もっとも現代的なツールを駆使しての、もっとも原始的な感動をもたらす輝きを取り戻すという手法の対称性は見事でしたし、そういう飛躍はなくとも、連綿と紡がれた誠実な人の想いは、ちゃんと人の心を動かす原動力になるのだという沙夜シナリオの構図も美しく、僅かにダイナミズムの部分でひかりに軍配は上がるけれど、これは本当に二つ揃っての名シナリオだったと言えるでしょう。



 以上、全体としてはやはりひかりと沙夜と主人公、三人の物語に糾合されていく感はあるし、ころげてと比べ題材として物凄くキャッチー、というわけではない中で、非常に上手く心境と結び付けてカタルシスを引き出そうと頑張っている感じで、時にしみじみと、時にワクワクと楽しませてもらいました。
 正直ころげての時ほど、参った、と言いたくなるほどに感情を捻じ伏せられるような衝動には至らなかったのですが、多分後々噛み締めるほどに好きになっていけそうな作品、テーマ、キャラだったなと思うし、現状でも当然名作間違いないのでこの点数に決めました。


キャラ(20/20)

 ここは本当に、様々なキャラが出てくる中で、決してわかり過ぎてる感じのない、等身大の学生らしい個性が丁寧に紡がれているなと思うし、その心境の変遷や細やかな機微も実に誠切な手つきで掬い上げている感は強くて、特にメインの三人は美点も欠点も赤裸々に晒す中で、その人がましさの中に強い魅力を引き出せていたのではないかと思います。

 まあなんだかんだ言おうと一番好きなのは沙夜に決まってるんですけどね。もうある意味プレイ前から約束された殿堂ヒロインでしたが(笑)、実際プレイしてみて、様々に思う事はあるけれどやはり好きで好きで仕方ない、といえます。
 本当に誰にでも優しく献身的で慈愛に満ちていて、誠実かつ純良で素敵な子だなあという建前と、いざ三人の時にだけ見せる、感情表現の幅が倍くらいに膨らんで、拗ねたりいじけたり怒ったり、けどやっぱり情愛に溢れて面倒見が良くて愛らしくて、本当に根が善良で利他的だよなあとしみじみ思っちゃいますね。
 こと恋愛模様では利己的な自分がいる、なんて自罰的に思っちゃうあたりでさてもや、って感じだし、どうしても喪失の不安が付き纏って真っ直ぐに幸せに耽溺できない様子なんか見ちゃうと、全力でモフモフなでなでして安心させてあげたい、心の底から笑わせてあげたいって強く思うし、ヒロインなんだけどイチャラブの中で照れてるよりほっこり安心してる方が似合う稀有な子だなあって。

 そういう愛らしさの方が強めに出ているからこそ、個人的にそういう清楚さが崩れない範疇でのえっちぃシーンの制御感もナイス!って感じだったし、他のヒロインとくっついた時の関係性や陰ながらの献身なんかも本当に泣けてくるしで、色々めんどくさくて印象度が強い、って部分もあるにせよ、私の中では沙夜による沙夜の為の作品、ってイメージはかなり強いですね〜。最後の沙夜せんせ〜も素敵過ぎ。
 ああもうもうっ、沙夜かわいいんじゃ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!

 次いで・・・だとやっぱりひかりにはなるのかな。彼女にしても基本的にはいい子過ぎて、自由奔放のようで大切な相手にはすごく気を使って大切にしているのがわかるし、特に沙夜に対する溺愛ぶりが個人的にすんごく好きだったなあと。。。
 無論ヒロインとしての魅力も高かったし、特に逆告白のシーンの激烈な想いの吐露なんかはすごく素敵でしたねぇ。沙夜との対比、という視座でも印象度は強いし、やはり振る舞いが颯爽としていてカッコいいし、その前向きさは眩しかったです。

 織姫もかなり気に入ってますね、お姉さん系統なのにあの可愛らしさと、幼い、とすら感じさせる甘えっぷりは中々反則でしょうと。
 この人もまあ吉岡あっての、という危なっかしさもあるし、それを含めてひかりと双璧を為す前向きヒロインであり、三人の関係を取り戻す舞台そのものを復活させた、という意味では功績も大きくて、惜しむらくは共通以降の他ルートでは年代的に出番が少なかったのがねと。
 
 ころなも普通に可愛いとは思いますが、しかし頭はいいのにお馬鹿な子だなあ、ってのが沙夜との軋轢のあたりでえらく赤裸々に露呈してるし(笑)、一番幼いのに一番エロい子、なんていう立ち位置自体はちょっと単純に好みからずれてる部分ではあったりも。
 やはり昔同様、仲間には入っているけど決定的な何かをもたらす存在ではない、って部分で織姫にもインパクトで負けるし、個別にしても正直vs沙夜を経ての沙夜の方に心寄せる部分が大きくてねぇ(笑)。いやまあホントにいい子なんだけど、話の本流には最後まで乗り損ねてるような感じはありました。

 サブで好きなのはまずノリちゃん先輩かなあ。あの地味可愛さがなんか好き。
 あとひなみんもかなり可愛かったですね。奇矯ではあるけどその分インパクト強いし、アルビレオのプリンセスにぞっこんラブなあたり私の評点が甘くなる(笑)。
 美晴先生も色々身につまされる部分はありつつ、要所では確かに三人の心の支えになっている感じはあっていいバランスだったなと。
 そしてコタちゃん超可愛いよね〜、沙夜と並んでもふもふしたい。


CG(19/20)

 絵としてはころげて同様の二人体制で雰囲気は違いつつ、その中できちんと個性に寄せた組み分けであり、全体のバランスはすごく取れていて、その上でやっぱり個人的には沙夜の人のこのわかりやすい可愛さが超好みだなあと。加えて今回はやはり星空を筆頭とした背景もすごく力は入っていたし、総量的にはそこまででもないんだけど、トータルの印象度でこの点数まで押し上げられた感じですね。

 立ち絵に関しては、キャラ数が多いのもあり、一人一人の素材としてはそこまで多くはない、総合して水準クラスって感じですね。
 ポーズはヒロインで3〜4種類にサブで1種類、織姫以外のヒロインは過去の立ち絵もあるし、腕差分なんかもちょいとはあるので満足度は高いですね。
 特にお気に入りは沙夜のやや右向き。いや正直全部鬼のように可愛いんだけど(笑)、特に右向きは憂いや不安げな雰囲気が多かったのもあり、なんか薄幸の美少女感が際立ちまくっていて物凄く好きなのです。
 その他お気に入りは沙夜正面、やや左、ひかり正面、やや右、織姫正面、やや左、ころな正面、やや右、ロリ沙夜、日南あたりかな。

 服飾はヒロインで3〜4種類、サブで1〜2種類ですかね。基本的に普通の学園ものの構成ではないので、衣装としても制服と私服がメインで、加えて冬の季節感を現すコート系、というところに、ある程度特に沙夜なんかは細々した小物差分もあったりで、見た目の変化はそれなりに華やか。
 特にお気に入りは沙夜のコートフル装備かなぁ、あのたれうさ耳帽子が鬼のように可愛いなってのと、すごく白がこの子の雰囲気にピッタリだなあと。
 その他お気に入りは、沙夜私服、制服、ロリ私服、ひかり制服、コート、ロリ私服、織姫制服、私服、コート、ころな私服、明光制服、元の制服、ノリちゃん先輩に昔の美晴の先生姿あたり。

 表情差分は突出して多くはないけど、ポーズに合わせた多彩な味付けと遊び心も多分に含んだつくりかなり可愛らしくていいですね。
 特にお気に入りは沙夜の右向き微苦笑ですね〜。上でも書いたけど、この遠くを見つつ慈しみを感じさせる雰囲気が物凄く好きです。
 その他お気に入りは沙夜笑顔、照れ、照れ怒り、不満、拗ね、怒り、ギャグジト目、ギャグ線目、><、微笑、きょとん、憂い、半泣き・・・というかもう基本的に全部(笑)、ひかり快活笑顔、にひひ、不本意、怒り、思案気、苦渋、照れ目逸らし、織姫笑顔、しょんぼり、照れ笑い、拗ね、ころな笑顔、睨み、照れ困り、><、ノリちゃん笑顔、日南驚きあたりですね。


 1枚絵は通常87枚にSD22枚で水準はクリアしているし、出来も印象度が強いものが多くて素敵でしたね〜。

 特にお気に入りは5枚。
 1枚目は3人乗り、まあこれはこの作品を語る上で外せないと思うし、特にひかりルートの中でそれでもこう出来る、って雰囲気、その中で素直な感情を表に出せている沙夜がすごく可愛らしくて大好きです。
 2枚目は沙夜勇気を振り絞っての再会、この制服の沙夜も可愛いなぁ、ってのは1枚前とセットであるし、怯えを孕みながらも必死に見据えて想いを伝えようとしている健気さが切々と伝わってきて素敵です。
 3枚目は沙夜膝枕、というかこの私服いつの間に上脱いだの?と思いつつ、あのピンクのジャケットだけはなんか色合わせ的に微妙だったのでこっちの方が断然可愛いし、慈愛に溢れてほっこりしてる沙夜が本当に可愛いので。
 4枚目は沙夜自慰、基本正面向きが多い自慰シーンで敢えて楚々とした横向きで、陶然とした表情も淫靡に過ぎずに、沙夜らしいイメージで描いてくれているのがすごくツボでしたね〜、これは本当に可愛くて好き。
 5枚目は織姫のアルテミス、あれだけ期待値上げられて、確かに素敵な衣装だって思えたし、神秘的な雰囲気がしっかり出ていてお気に入りです。

 その他お気に入りはページ順に、3人で天体観測、空に手を伸ばし、温泉、見せ合い、ひかり子犬を助けて、望遠鏡をのぞく、神秘に思いを馳せて、再会、キス、改めてのキス、デート、パレード、語り継ぎ、パイズリ、対面座位、69、正常位、沙夜転校、遠目で、コタちゃん撫でたい、通い妻、衝動のキス、恥じらいコロコロ、屈み込みキス、懺悔、誓いのキス、夜空を見て、引率の先生、一番好きな星、初H愛撫、正常位、フェラ、正常位、、お尻愛撫、温泉愛撫、背面座位、織姫タロット、カップラーメンなう、キス、想いを継いで、誕生日、夜空を見上げて、道半ば、正常位、69、パイズリ、ころな落書き、押し倒し、抱きしめ告白、下着選び、どこまでも走って、騎乗位、フェラ、背面屈曲位、あとSDはコタロウと沙夜、沙夜アーン、ころなの懇願、二人の通い妻あたりが特に好きですね。


BGM(19/20)

 壮大な広がりと神秘性、儚さを兼ね備えた、素晴らしく繊細で心に響く楽曲群だったなあと思いますね。本当に全体のイメージの統一感・一体感が素晴らしいですし、量は水準だけど個々の質も高いし満足度はかなり高いです。ここしばらく特典のサントラフル回転してます。。。

 ボーカル曲は2曲。
 OPの『Winter Diamond』は非常に疾走感があり、グイグイと引きこむ強さがあって、しかも全体のメロディラインのバランスが素晴らしく良くて、サビに至るまでの勢いと流れ、イントロからの流れも本当に途切れる感じが一切なく、続いていく、連なっていくかけがえのないものの無性な美しさを力強く歌い上げていてかなり気に入ってますね。
 でもそれに輪をかけてテーマ曲の『Star map』が神曲。凄まじいまでに純度の高い透明感と清々しさ、憧れと輝きがすごく綺麗に、星座のように配置されていて、素晴らしく高揚感があるし、メロディラインもとても美しく、歌詞も深みがあって非の打ち所がない素晴らしさですね〜。

 BGMは全部で30曲と水準量、ただ要所で素晴らしくシナリオのインパクトに負けないくらいの強く印象深い曲があるし、そうでありつつ全体の空気の補完という部分でも万全の仕上がりって感じでかなり好みですね〜。

 特にお気に入りは2曲。
 『On the Earth』は最初のタイトル曲ですが、この神秘性、散りばめられた輝きの美しさをイメージさせる柔らかく零れ落ちるような旋律の広がりは本当に耳触りよく、その作品の世界観を象徴している神曲だと思います。
 『StarGazer』は感銘に打ち震えるときの決め打ち曲、という感じですし、それだけに数回しか使われた記憶はないけれど、だからこそ本当に心を切々と叩く鼓動と感動が捻じ込まれるように伝わってくる、そういう威力を備えた素晴らしい曲だったと思います。

 その他お気に入りはページ順に、『prinsess charm』『Childhood』『a promise』『Blue moon』『Never say never』『Cloudiness』『eclipse』『Planet in the Telescope』『Starry sky』『Around the earth』『Dear good friends』『Hatsukoi』あたりですね。


システム(9/10)

 演出は流石の素晴らしさでしたね。とてもかさねかたと同じエンジン使ってるとは思えない(笑)。
 ただやはり全体的に目立つのは背景効果を主軸とした雰囲気重視の演出ではあり、そのあたりは圧巻、といっていい出来ではあるけれど、日常演出に関してはそこまで凄味はないし、あくまでもシナリオを引き立てる最善、であり、見た目そのもので楽しませる方向とはまた違うので、その差異で少し物足りなさはなくもない、と贅沢にも言ってみる。まあ充分可愛いんですけど。。。
 ムービーも夜空の美しさを主軸に、派手になり過ぎない中でしっかりイメージと連動させてのキャラ紹介になっているし、夜空を泳ぐようなすみやかなイメージとスピード感はかなりいい出来ですね。特に最初の方が好きかな。

 システムは必要なものは揃ってるけれど、やっぱり基本このエンジン重たいよなあ、ってのはあるし、ジャンプも前には行けないからその分だけ野暮ったさはある。別に取り立てて問題はないけど水準と比べて何か素晴らしい、という部分もないので、演出だけなら満点でもいいんだけど、と思いつつちょい割引。


総合(93/100)

 総プレイ時間24時間くらい。共通が8時間ちょい、個別は織姫ところなは3時間くらい、ひかりが5時間ちょいで沙夜が4時間半くらいでしたかね。ボリュームとしては丁度いい感じですし、尺に対しての密度も非常に高く緻密で、キャラがしっかり立っているから平凡な日常でもすごく楽しいし、シナリオの構成だけでは補えない部分をしっかり補完しているなと思います。
 絵と音楽が今回はかなり良かったので、総合的にはころげてよりも上の点数になってますけど、まあ実際それだけの楽しさはあったでしょう。ただあっちよりも好き嫌いは出そうな切り口ではあるし、あの問答無用のカタルシスをそのまま期待すると多少は肩透かしに思えちゃう部分もあるかも?くらい。

 ただ体験版の時点で、今回は私好みの展開にはなりそうだなと思っていてその期待にはきちんと応えてくれたし、非常に読み取りやすい構図の中で、心に響くキャラ像、シナリオ展開を紡いでくれたなあと満足度は非常に高いです。
 や〜、もうホントに沙夜可愛かったです。です!
posted by クローバー at 06:49| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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