2016年02月09日

凍京NECRO

 15周年記念作品ということで、体験版もすごく設定から展開から演出から隙の無い抜群の仕上がりだったし、キャラがそこまで好みではなかった、という点を差し引いてもこれはプレイしておくべきだろうと。


シナリオ(29/30)

 生死が織り成す運命の綾。

 2199年の凍京は、混沌と退廃が支配する街と化していました。
 突如全世界を襲った大氷河期により、人類の生活圏は著しく狭められ、その僅かな地域を巡っての大国の抗争が頻発した結果、より人類は疲弊して。
 それに止めを刺した感があるのが、戦争を有利に進める為に開発された、死者を一時的に動かすことのできる新技術、ネクロマンシーで、それが戦争を泥沼化させた上、致命的な流行病まで生み出してしまい、益々人の生きられる土地は痩せ細っていって。
 そして今では、地中に存在する地熱を最大限に利用し、それをホットパイプと呼ばれる装置で地上に汲み上げて、なんとか人が生きていける温かさを確保しており、その為にその地熱が存在する場所にかつての都市国家のような街が点在し、それぞれの干渉をほとんど放棄したまま独自の変化を遂げていったのです。

 その中でも凍京は、かつての大戦による占領政策の名残もあり、様々な人種が犇いて覇権を争う無法地帯と化しており、挙句その頭上には、ホットパイプの運用技術を開発した帝国エネルギー社という存在があって、こちらは凍京湾の上にメガフロートを建設し、完全に高みから街を支配する姿勢を見せていて。
 抗争が激しい、ということは、軍事技術の流入もまた多く、とりわけ戦争の終結で行き場と存在理由を失ったネクロマンシーの跋扈により益々荒廃していく中で、当然その所業を専任に取り締まるような仕事も生まれます。

 かつての戦争の英雄を父に持つ二人の主人公、早雲とエチカは、共にネクロマンシーで生み出された動く死体を再殺するための仕事、通称リビングデット・ストーカーとして、同じ事務所の仲間として活躍していました。
 ある日、副都知事誘拐の容疑者であるネクロマンサーの根城になっていると情報のあった娼館に襲撃を仕掛け、その中で早雲は、敵のネクロマンサーが見せる不思議な視線に引きずられるように荒廃地に誘い込まれ、そこでの一騎打ちになんとか薄氷の勝利を収めるものの、本来追いかけていた事件はそれでは解決せず、逆に敵が乗っていた車の中から謎の少女を救出することになります。

 イリアと名乗った少女は、しかし名前以外の一切の記憶を失っており、けれど誘拐されるほどだから敵にとって意味のある存在なのは間違いなくて。
 街のその他の組織に信を置けず、またイリアという少女に不思議な魅力を認めた主人公たちは、事務所の総力を挙げて彼女を匿い、その記憶を取り戻す手助けをすることになり、一方で元々の事件の顛末も追いかけていく中で、その背後には世界でもっとも有名なネクロマンサーであるミルグラムが関わっていることが浮き彫りになっていきます。

 軍警察に所属するエチカの義姉の霧里や、元々情報面でのバックアップで助けてもらうことの多かったコン・スー、更に本来はライバル事務所のエースアタッカーながら、ミルグラムに対する因縁から手を汲むことになった蜜魅などの協力を得つつ、イリアの背景と彼女がどう事件に関与しているかを調べていき、その影には幾多の陣営の壮大な思惑が錯綜していて。
 何を敵としていいのかも明確にわからない状況の中で、それでも主人公達はそれまでに培ったスキルを駆使し、次々に押し寄せる修羅場を、悪意を、暴力を掻い潜りながら真実に肉薄していきます。

 果たして、イリア誘拐の端緒になった様々な事情とは何なのか?
 彼女の存在がどういう形で世界の在り方に意味を与えていくのか?
 生き馬の目を抜く、なんて言葉では甘いくらいに過酷な抗争の中、主人公たちは無事にそれぞれの信念を貫き、あるべき地平に辿り着けるのか?
 これは凄絶な世界の中で、それでも生き足掻く人間の生々しさと強靭無比な信念の発露、その中に孕む醜さ美しさ全てを公正に映し出しながら、一歩でも前に、より良い未来の為に戦う生き様の輝きを示した物語です。


 あらすじはこんな感じですね。
 大枠としては、イリアという少女を掌中に収めたことによって、様々な組織から目をつけられ、力づくの抗争を仕掛けられる状況に陥る中、苛烈な闘争の渦中での選択が導く結果が、連鎖的に世界の在りようとそれぞれの思惑の向きを変化させ、全く違う様相の世界を紡いでいって、そのそれぞれの局面で主人公の二人を軸にして、各人の精一杯の生き方を描き出す、という流れです。

 テキストに関してはまあ圧巻の出来、といっていいでしょう。
 舞台設定がかなり空想科学の領域に踏み込んでいるのですが、元の設定からして根本的な現代の科学知識という堅牢な土台の上に紡がれていて全く上滑りするところがないし、それを索引も用いつつ、くどくなり過ぎずテンポも悪くせずに、無理なく文章の中にすんなり織り込んでいるところは本当に見事で。
 それだけに読み口が、簡潔でありながら明瞭で、その分だけ世界の殺伐やそれがもたらす痛み、諦念などを色濃く滲ませており、けどそれでも明るく前向きに、というスタンスがぶれずにあるから噛み砕いても後味が悪くならないんですよね。

 またこの作品は非常に演出が優れているのですが、テキストもその演出の効果を最大限に引き出せるように、或いは相乗効果でより迫力を与えられるような配慮が隅々まで為されており、特に戦闘描写の迫真ぶりは圧倒的で、演出効果の下支えもあるとはいえ、刹那の認識を読み手に強烈に喚起させる言葉の選択は実に巧みだったなと。
 その下地がどっしり構えているからこそ、各人が強烈に抱くイデオロギーの特異性や歪みに関しても説得力と迫力を持って読み手に迫ってくるし、それが空論でなく、力を背景とした現実的なものとして描かれているのもやはり抜群のバランス感覚で、テキストそのものとしても非常に完成度が高い、と言えるでしょう。
 強いて瑕疵を挙げるとすれば、圧倒的なプロットの為に遊びの部分が少なく、機知を感じさせる場面がもっとあってもなあ、ってのと、あと多少誤字脱字が目についたかな、ってくらいですね。

 ルート構成は非常に単純で、そして単純故にこの作品の凄味を端的に表しています。
 基本的にはイリアの記憶を辿っての調査の中で仕掛けられた戦闘で、主人公二人がそれぞれひとつずつ選択を迫られ、その結果の組み合わせで四パターンに分岐し、一応各々にヒロイン格のキャラは出てくるものの、本質的には主人公たちの物語が仕立てられていきます。
 そしてその全パターンを網羅した上で、その可能性分岐を透徹できる視座を持った存在の煩悶、という形で、より主人公達が報われる形の未来が提示されるというつくりですね。

 後でネタバレで詳述するつもりですが、選択肢としては非常に簡素なつくりなのに、舞台設定と主人公たちの立ち位置の妙と、それぞれが深く影響を及ぼす相手に対し、その処遇の結果が及ぼす心理的・物質的影響の些細な差異が絶妙に噛み合い、その僅かの違いがバタフライエフェクト宜しく大きな変化を生んでいって。
 その変化の過程に微塵も齟齬や矛盾がなく、僅かな心理的影響と、それが命取りに繋がるほど過酷な世界の在りようまで計算され尽くした構成そのものが、この作品で最大限に評価すべき項目ではないかな、と思っています。

 シナリオに関しては、ネタバレ抜きで語れることは本当に少ないのですが、ベースとなる世界観の重さ、価値観の切実さなどを、机上の空論でなく実際の抗争の中で懇切に抉り出し、そこには人の様々な因縁・宿業・罪悪・信念が横たわっていて。
 それを善悪や正義不正義という不当な価値観でなく、単純に勝者と敗者という結果の中で赤裸々に抉り出し、人類がどうしても超克できない暴力の因業の重さを、哀しみを底流に備えつつ、それでもより良い世界の在り方の為に、とひたむきに、それぞれの信念に殉じて生きる様を多角的に照射してくれているなあと。

 基本のよっつのルートにおいては、それぞれに主格的なヒロインと敵役が微妙に変化していって、上の観点においてそれぞれに十全の展開、その結果がもたらす気付きを見せてくれるし、けれどその流れの中では、どれだけ主人公達だけが万全を期して足掻こうと取り落としてしまうものがあって。
 けれど、イリアという少女の存在意義とも繋がってくる、ネットワークがもたらす特殊な要素をよりプラスの形で涵養できたときに、はじめて大団円に近しい可能性を導き出せる、という構造は実に見事で、かつそれが派生するルート以外では、しっかりその精神を涵養できない状況が整っているあたり、本当に完成度の高さに驚かされますね。

 以下はもうめんどいので全部ネタバレで。。。

 まず単純にシナリオ評価としては、トゥルー>>イリア>蜜魅=コン・スー>霧里くらいですかね。
 といってもほぼ大差はなくどのルートも素晴らしい完成度と迫力だし、やはりその僅かな差を規定しているのは、純粋なキャラに対する愛着と、あと選択状況による変化のカオス度合いにある程度比例しているかな、とは感じます。

 上でも触れたように、この作品の凄味はこの選択肢の簡素さで、これだけ複雑怪奇な展開への変化を制御しきり、一切不自然さや取ってつけた感を感じさせないところにあるでしょう。
 その選択はごくシンプルに主人公二人の生死を別つものであり、本来それは究極的ではあるはずが、彼らの生業と周りの思惑、とりわけネクロマンシーという技術の存在と使い手のそれによって糊塗・偽装されて。
 けれどリビングデットという存在の特性である、徐々に感情が棄損していく、という部分に依拠する形で、本来生きていればもっと鋭敏に反応している筈の、ヒロインに対する向き合い方・触れ合い方に及ぶ些細な変化の影響が、連鎖し膨張して、人類抗生戦線、帝国エネルギー社、軍警察という三巨頭(プラス、やや影響力は落ちるもののフォートレスも)の行動方針とその結果にまで差異をもたらしていく、その作り込みの緻密さには唖然とさせられるほどです。
 個々の事象に一々触れていくといくら紙幅があろうと足りないくらいだし、そこまで微に入り差異に穿ち説明するのは無粋でもあるので割愛させてもらいますが、繊細に的確に、その配慮は多岐に及んでいて、どの場面の変化においてもちゃんと論理的に説明がつく、わかりやすく読み解けるというのが本当に痛快ですね。

 さしあたり大まかな外枠にだけ触れていくと、基本的には主人公二人の生死パターンが四種類、すなわち「生・生」「生・死」「死・生」「死・死」とある中で、どちらかといえば秩序を保って、二大強者である抗生戦線と帝国エネの思惑寄りに進むのが早雲が生きているパターンであり、逆に早雲が死んだときは、その二大巨頭の天秤が拮抗し、結果相内のような形になるところを、多少影響力が落ちる軍警察が漁夫の利を浚っていくわけで。  
 更に二人ともが死ぬと、その軍警察の思惑まで頓挫してかなり展開がカオスで無秩序になっていくし、その土俵の上でこそ輝く物語が展開されているという視座では見事なんだけど、やはり読後感という意味で少なからず相対的にマイナスに振れてしまう部分もあるかな、って思うのが、微妙なシナリオ評価の差に繋がっていると。

 ただ結果的に見て、これらのルートがヒロインの、というよりはもっと色濃く、死者の物語、という位置付けなんだろうなあ、ってのは、クレジットの最初に死者の名前が、弔いのように刻まれている点でも明瞭であり。
 抵抗の甲斐なく死を迎え、けれど特殊な技術によって僅かな猶予が与えられる中で、その立場ではじめて見えてくる生きる意味や輝きを、せめて感情が生きている内に成し遂げようと前向きに足掻く様こそが、汚泥に満ちた世界の中で一際に美しく輝くのだ、という一面と、逆説的に、生きていればこそ手に出来る無限の未来の可能性の美しさという面をバランスよく配置することで、総合的な人の生きる意味、をテーマとして奥深く抉り出しているのかなと。

 二人くらいクリアしたところで、およそそういうテーマ性は予想がついたために、だからこそ「生・生」パターンであるはずのイリアが大団円的なストーリーになるのだろう、と思ったのですが、しかしそこで一筋縄ではいかないのがこの作品の壮大な部分で。
 主人公二人が生き延びることで秩序が最大限に保たれ、けどそのために皮肉にも最強の敵の陰謀が最も予定通りの形で展開されることになってしまい、結果的にそれぞれの主人公が自身の最大のトラウマの克服を求められる相手と対峙することになって、その過程を引き出すための贄としてイリアが宛がわれているという発想がまた冷徹かつ斬新だなあと。
 その中でまた、生者が死者の思い出を乗り越えていく、というイニシエーションでの生き様を摘出しつつ、やはり結果として新時代の黎明に至ることはないままに終焉を迎えてはいるものの、でもその派生の中で唯一可能性として残ったのがサブコンの存在、というわけで。

 まあネットワーク意識、という存在が、果たして潜在的無意識の集積の賜物なのかとか、その根源的な部分に対する議論は様々ありそうなところではあるのだけど、有機的な素材に指向性を与える為に、そういう高次元的な意識の存在が必要である、という作中の観念、要するにリバースプロジェクトの内実においては整合性は取れていて、その為にイリアがいる、というのも明確な部分で。
 そしてイリアに求められていたのは、その意識を人の為にプラスとなるよう色づけ、その方向性の中でより人に親和的な自意識を萌芽させることであり、けどイリアルート以外においては、どちらかの主人公が死んでいることの影響が波及して、そのイリアの調律、という言葉が正当かはアレだけど、それが及ぶ前にサブコンが人の悪意に晒され、そちらに強く影響を受けてしまう展開に陥らざるを得ないわけですね。

 その意味では善意が必ずしも善を生み出すわけではない、という皮肉な観念が見え隠れしているというか、ともかく企業主導でメガフロートにサブコンの意識が喚び出された時点で頓挫する運命にあったわけで、コン・スールートで明らかなように、一度不信に染まった意識は、引き戻せたとしてもそれはもう残骸的な何かで、求める形ではなくなっていて。
 物質的にメガフロートが沈むルートでは当然のこと、一応現存する蜜魅ルートにしたって、やはり本来の形でのリバプロにサブコンを導くことは無理なのだろうと。

 けれど、ミルグラムの思惑が完璧に嵌ったイリアルートにおいては、サブコンの意識は純粋なままに保たれ、かつそこで、そこまでで唯一認識を強めている相手であるイリアの死に直面することで、彼女が死の意味を意識し、その解釈を多数の世界線の中に求めることで、自身が世界にもたらせる影響力、ポテンシャルを最大限に引き出し、イリアの死を回避したい、という渇望に辿り着く、そのフレームをしっかりゲーム性の中で担保しているのがまた素晴らしく。
 その中で、サブコンに出来得るほんの些細な一押しが、けれど劇的に未来の形を変え得るのだというのを、早雲が辿り着いたエクスブレインの本質に密接する形で提示し、大団円に繋げてくるのだから、つくづくその発想力・創造力には舌を巻くしかないなあと。

 この重苦しく生きにくい世界の中でも、万に一つ、或いは奥にひとつかもしれなくとも、善意が善意のままに結果にコミットし、想い合う二人は結ばれ、過去の因縁から解き放たれて前向きに未来に進める意志を手に出来る、そんな美しすぎるほど美しい決着もあるのだと、その温度差があのラストシーンを一際に鮮烈にしているなと思います。
 そしてそれこそが人が生きる意味でもあり、死者と生者を厳然と別つ壁、すなわち死者には、今そこに見えている可能性を守ることは出来ても、新たな可能性を創造していくとは出来ない、というメッセージ性を顕著に打ち出していて、それもまた、ここまで様々な人の業を、醜いものも含めてつぶさに目撃させてきた中で、より相対的に、論理的な解釈と納得を導くものになっていて。
 でもそれ以上に、絶対的に、わけもなく美しいものは美しいのだ、という感情的な納得を喚起するのにも成功している、それぞれの生き様の鮮烈さによって読み手の感情を捻じ伏せられる力強さをも備えているところに、この作品の真骨頂を感じ取ることが出来ますね。


 以上、総合的に見てほとんど隙のない完璧に近しい完成度の物語であり、当然評価としてもそれに相応しい数字にしなくては、という感は強く。
 ただ敢えてマイナス要素を挙げるとすれば、いくらその土台が堅牢で重厚であろうと、空想科学の領域での展開が大半であるのは確かで、当然読み手側の基礎知識の欠乏が及ぼす想像力の未達もあるとはいえ、全てが全て道理として納得しきれるか、っていうのはなくはないし、後は概ねどの場面でも盛り上がる代わりに、究極的なカタルシスを感じるほど破壊力のあるシーンはなかったかな、ってあたり。

 後は純粋に、物語としては素晴らしいのだけど、どうしてもそのプロットそのものにキャラ性は引きずられていて、その土俵の上でのキャラそのものに対する愛着・好みがそこまで合致しなかったかなと。
 特に恋愛面においてはどうしても簡素になっちゃうし、一番のメインであるイリアもその能力に依拠して、って部分は色濃くて、物語としては良くとも、読み手がその共感能力を体現できる土壌があるわけではない分だけ少し……という、より私的な理由において少し割り引き、というところで、結果的にかなり迷ったけどこの点数にしました。


キャラ(20/20)

 上でも触れたように、物語の中において、それぞれが生きる意味と信念を固有に強固に抱き、それに殉じるように生き、死んでいく重みは充分に堪能できるし、それをもキャラ性と見るならば、少なくともマイナスを掛ける要素は全くないとは思います。
 まあでも私が項目的に捉えているキャラ性は、どちらかといえばシナリオから乖離したところでのシンプルな可愛さとかカッコよさに比重を置いているわけで、その視座においては男キャラのかっこよさはともかく、ヒロインの可愛さ、という部分ではもちょっと食い足りない感はあったし、そもそもの素材的にストライクに入ってこない、ってのはあるんですよねぇ(笑)。
 普通シナリオでこれだけの点数を叩きだせば、そのシナリオ補正含めて最低一人くらい殿堂キャラいてもいいものなんだけど、多分この作品からは出さないかなあ、ってのが今のところの正直な所感。

 無論イリアはそれなりに可愛いと思うけど、やはり情緒が歪んだ部分はあるしねルートによってあからさまに感性に影響受けたりで、イマイチ評価が定まらないキャラでもあったなと。
 単純に可愛い、という意味では実は蜜魅が一番だったかなとは思うけど、彼女も本質的には凛々しさを前に出すタイプではあるし、そのギャップ萌えを引き出すだけの場面をイリア共々さほど用意されていない、ってのが勿体無いねと。
 霧里の真っ直ぐ正しさを求める強さも好きではあるけど一面的だし、コン・スーは色々と拗らせ過ぎていてヒロイン?って感じではあるし、サブも含めて本当に女性キャラはイマイチ好きになりきれる子がいなかったなあ、と。強いて言えばラストのサブコン、あれは可愛いね(笑)。

 男キャラはやはり敵役が光っていたなあと。特にミルグラムと鉾康は、その思想性の突飛さと、けれど強靭過ぎる信念がもたらす歪み方と美学のありようが本気で切実で、感情的に理解は出来ずとも染み入る納得はあるキャラだったなと。
 主人公二人もそれぞれに味はあったし、印象度そのものは大きいんですけどね。


CG(18/20)

 この項目も採点にかなり迷ったところはあります。
 単純な絵柄としてはそこまで好み寄りではなく、一枚絵、という観点だけならもう少し低くてもいいんだけど、やはりポリゴンデザインとかモンスターデザイン、背景などの総合的な部分も含めて考えれば相当の完成度であり、ただ最終的にはヒロインデザインの好み度を重く置いて、もう一点上でもいいけど、ってところを割り引いてる形ですかね。

 立ち絵に関しては、ポリゴンまで含めて考えるとそれなり以上ではあるし、ただ本当に必要なところへの注力度合いと、そうでないところの簡素さのギャップは大きくて、色々特異な作品だよなあってのはこの辺でも思うところ。
 ポーズはメインでも多くて二種類、大半が一種類で、キャライメージに合致はしているけどそれ自体でどうこう、って感じではないかなあ。お気に入りは霧里、蜜魅、イリアちょい横くらいか。

 服飾もほとんどのキャラは一種類、多くて三種類くらいなので視覚的な愉しみとしては今一歩。デザイン的にもそこまで好みではないし。
 お気に入りはコン・スーの普段着、霧里水着、蜜魅私服あたりかな。

 表情差分も少なくとも普通の立ち絵ではかなり控えめで、まあ重要なシーンはポリゴンでその都度情感を引き出してくるからそれでいいんだろうけどねって感じ。
 お気に入りはイリア昂奮、怒り、困り、霧里困惑、微笑、蜜魅慌て、真剣、程度しか思い出せないなあ。


 純粋な一枚絵は全部で90枚かな、これだけでも水準クラスではあり、ただそれ以外にモンスターデザインとか、ポリゴンデザインとかもかなり多彩にあるからねやはり総合的には水準を凌駕する力の入ったつくりだとは言えます。
 ただその辺は回想で見られないので、一先ずピックアップするのは普通の一枚絵だけになりますが、しかし唯一の特にお気に入りがミルグラムの死に様、ってあたりがこの作品を象徴している気がする(笑)。あの死に化粧に塗れつつ満足げな顔は反則的にかっこいいですよね〜。

 その他お気に入りはページ順に、早雲近接銃撃、玲子とエチカ、引導、イリア発見、間違った巫女服、抱き留め、夜景を背に、愛撫、殉死、別れ、浜辺の再会、本当の再会、蜜魅を助けて、拷問フェラ、バック、水中キス、二人のゆく道、過去との決別、霧里夜景、寝転び、雪中の正義、キス、母と娘、コン・スートリップ、逆さ吊り、想い出、駆け上り、親友との再会、ヨーイドン、羨望と満足、事務所の日常、ミルグラムとパブロフ、教導隊、ミルグラム演説、再生、ようこそ!あたりですね。


BGM(19/20)

 美少女ゲームにあるまじき男ボーカル率の高さではありつつ(笑)、全体的に世界観を素晴らしく濃密に描き出していて質量ともに素晴らしく満足です。

 ボーカル曲は5曲+αでいいかなあ。ハイウェイの曲もボーカル扱いだけど、正直そんな感じはないし。。。
 OPの『凍京レクイエム』は疾走感と退廃感、圧迫感が三位一体になりぐわっと押し寄せてくるような迫力のある曲で、特にBメロの構成が好みでしたね。

 挿入歌の『傷』は、なんていうか男くさい信念を彩る痩せ我慢的なイメージが強く、噛み締めるほどに哀愁が滲み出る曲で、これはこれで好きです。
 『雪化粧』はここにあるのだからボーカルのはずなのになぜかイントロしか入ってないのでとりあえず割愛。一々蜜魅ルートの該当場所ロードしてまで聴き込む時間がなかったともいう(笑)。
 『閃光雪華』はこの作品のボーカルで二番目に好き、わかりやすく鮮烈なバトルシーン、って感じで勢いと緊密さがあり、否応なくテンションが上がるメロディラインのかっこよさが素敵です。
 
 んで一番に好きなのが、グランドEDの『Assemble REBIRTH A…』で、いや別に唯一の女性ボーカルだから、ってわけではなく(笑)、そこまでノイジーにしか表せなかったサブコンの想いがストレートに表現されつつ、曲としてもメロディラインの完成度が高くて、Bメロからサビの繋ぎ、サビの明るく温かい旋律が相当に好きで、当然歌詞もテーマにしっかりリンクしていて素敵な曲だなと思います。

 BGMは全部で46曲と水準は遥かに凌駕し、その分だけ多岐に渡るイメージを曲で下支えもしており、上下幅はそれなりにあるけど総合的に見て十分に高い水準だろうと。
 特にお気に入りは2曲。
 『レクイエム』は悲しみを多分に秘めつつも、戦わざるを得ない宿業に真っ向から立ち向かっていく心根の美しさが滲み出ていてとても好き。
 『ホログラムの手触り』は、失われた過去をどうしても振り切れずに、でもそんな自分を認め、見つめ直して愛おしむような温かみが感じられて素敵ですね。

 その他お気に入りは、『古代魚』『オリエンタル繁華街』『Hi−fight』『死者再殺』『死者再生』『Departed』『愚連隊』『Sarvival strategy』『共に歩む』『赤刃』『沸点上昇蒸気圧降下』『つながる』『Shine』『DEADLINE』『Frozen memory』『Against』『ボイル』『浜辺の風景』あたりですね。


システム(10/10)

 まあ演出に関しては、多分今年最高は揺らぎないどころか、史上においても最高水準なのではないかと思えるくらいに素晴らしかったなと。
 特にバトルシーンにおけるポリゴンアクションとテキストの連動性が生み出す迫真とスピード感は素晴らしく、これだけでもこの作品をプレイする価値は充分にあると言えるし、それが満遍なくかなりの頻度で見られるというのもポイントが高いですね。
 またゲームデザイン的な部分まで含めての総合演出という視座でも図抜けたセンスを発揮しているし、そのゲーム性が内容と密接にリンクしているのもポイントは高くて、文句のつけようはないねという感じです。
 OPムービーも細やかでありつつ大迫力で臨場感満点であり、素晴らしいの一言で充分だろうと思える出来でした。

 システム的には、多少演出面での弊害というか、起動にめんどくささがあったり、操作性が特殊だったりはするんですが、まあ慣れてしまえば問題ないし、項目的にはかなり細かい部分までしっかりフォローしていてほぼ文句はないかな。ジャンプがあれば楽ではあったけど、既読判定はしっかりしてる上にスキップもそんなに遅くはないから気になるほどではなかったと。


総合(96/100)

 総プレイ時間27時間くらい。共通が5時間に各個別も大体平均して5時間くらい、最後のトゥルーが2時間弱くらいの感じで、尺としても水準を大きく超えていつつ、全く緩むところはなく、矛盾も隙もない密度が高く熱中度の高い物語が延々展開されていくので本当に満足度は高いです。
 設定的にどうしても殺伐とするし、グロいシーンや重たいシーンも続発するけれど、その過酷を乗り越えてこそ、という生き様の輝きがしっかり担保されているし、最終的に見事過ぎるほど綺麗に大団円に辿り着く、それが奇跡的な確率だと伝わりつつもご都合主義とは思わせないところが凄味になっていて、名作、傑作と言い切っていいでしょう。

 色々取っつきにくさはあるかも、と、基本キャラそのものには愛着を抱き切れなかった私の類例もあるので思うのですが、その辺無視しても充分シナリオと演出の妙だけで元が取れる素晴らしい仕上がりですし、バトル物が好き、って人なら間違いなく買って損はしないと思います。
 しかし年初一発目でSSランクをつけるとは思わんかったなあ。

 2017/01/20追記、シナリオ+1点。
posted by クローバー at 05:17| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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