2016年03月10日

ノラと皇女と野良猫ハート

 初見の時は無反応だったんだけど、CV出ておいぃっ!?ってなって、体験版やってみたらかなり面白かったのでいそいそと購入。


シナリオ(23/30)

 想いは繋がり、世界を変える力になる。


 主人公の母親は、とにかく捨てる、ということをしない人でした。
 シングルマザーで男癖も悪く、けれどなんでも受け入れてカラッと笑っていて、社会からはみ出した存在でも決して見捨てることはせずに、それぞれの生きるペースを尊重し、ありのままで愛し、支えてくれて。
 そんな今は亡き母親の薫陶を受けた主人公もまた、基本的にお節介で情味溢れる性格に育ち、今はかつての拾い子のシャチとともに暮らしながら、母親が続けてきたゆるい塾のような、子供をただ受け入れる場を守り続けてきました。

 ある日、主人公は運命的な出会いに遭遇します。
 桜の樹の下で、具合悪そうにへたり込む、金の髪と紫の瞳を持った、不思議な気品を感じさせる少女。しかしその雰囲気に見惚れるも束の間、更に気分を悪くした彼女を介抱するも吐かれ、多少改善したところで、その少女・パトリシアは自身が冥界の皇女であると名乗るなど、どうにも話は噛み合わないまま、けれどパトリシアはその出会いに強い歓びと期待感を覚えて。

 一時パトリシアを振り切り学園にやってきた主人公は、些細なミスから覗きを疑われ、幼馴染の風紀委員である未知に捕まり、その注意の流れで彼女から告白の練習の手伝いを依頼されます。
 二人が屋上ですったもんだしている内に、主人公を追って学園にやってきたパトリシアもその場に現れ、未知の告白の文言を地上の魔法の詠唱と勘違いし、自分もその、胸を騒がせる切なる調べを口にしたいと希求し、そのまま主人公にぶつけて。
 その想いの爆ぜるままに、口づけまでをも交わして。

 すると不思議なことに、主人公の体は猫の姿に変貌してしまいます。
 その恋愛魔法・告白に秘められた想いが、二人の関係を主人と眷属という形に帰結させたのですが、すべての魔力を使い果たしていったん冥界に戻ったパトリシアはそれに気づかず、主人公の放浪が始まって。
 何昼夜彷徨ったのか、精魂尽き果てようとしたところに、未知が性質の悪い男達に絡まれているのを見つけ、果敢に助けに入るもののいかんせん慣れない猫の体、あっさり返り討ちに遭い、海に投げ出され、未知の手によってかろうじて救出されます。
 それを主人公と気づかないままに猫かわいがりしてくれる未知ですが、それが嵩じて口づけを交わした時に、いきなり主人公の体は元に戻ってあらびっくり、再度アクシデントのように口づけすることでまた猫に戻り、色々な危機は回避するものの、根本的な問題は解決していなくて。

 その体質への変化の心当たりはひとつしかなく、時を同じくして今度は姉妹であるルーシアとユウラシアを連れてやってきたパトリシアに、紆余曲折の末に再会することで、なんとか暫定的に人の姿を取り戻すものの、その眷属契約を破棄する方法はすぐには見つからないままで。
 けれど一連の経過の中で、地上の世界での学びと、そこに息づく人の在り方に感銘を受けたパトリシアは主人公の家に足繁く通うようになり、それと並行してその体質を治すための方法も探してくれて。
 そんな、人と猫の二重生活が始まる中、主人公は猫という別視点を手にすることで、今まで見えていなかった世界の形、人の在り方を様々に知ることになり、その知見はやがて、より深くそばにいる誰かに傾倒していく契機となっていくのです。

 それぞれが自分の生きる中で積み重ねてきたものがあって。
 生きる規範と、安心と、息苦しさを少なからず抱えていて。
 その様々な柵の驥足から脱し、新しく誇れる自分を手にするための覚悟、それを培うための想いは、世界の見え方はまた様々で、でもだからこそ美しくも尊くて。
 これはそんな、新たな出会いや気づきの中で育んだ想いを、自由で鷹揚な心で受け止め、向かい合い、何ものも断ち切ることなく前に進む力を得るための、愛と友情と希望の物語です。


 あらすじは難しいんですけどこんなところで。
 大枠的にはあまり明晰に論理立ててはいないファンタジックな世界観の中で、その形がもたらす変化が、世界の彩りの差異が恋という想いに変貌し、それを原動力として、それぞれが抱えた世界の閉塞感を、友の力も借りて打ち破り、時には世界の理そのものを乗り越えて、その愛を貫いていくという流れになります。

 テキストはかなり特徴的。
 一番目立つのがナレーションの存在であり、この俯瞰的な視座でのおとぎ話の解説のような雰囲気が、ややファジーなファンタジー設定を無理なく世界観に溶け込ませる一助になっているとともに、説明的な部分までそこに委ねることでかなり極端に地の文をカットしており、非常に小気味よいスピード感ある読み口になっています。
 その上で非常にシュールな比喩や形容など、会話の奥行きの引き出し方が多彩かつ巧みで面白く、また日常のシリアスの匙加減もかなりソリッドが効いていて、流石に文飾過多じゃない?って思えるくらい、シリアスシーンでの古典を流用しつつオリジナリティもある美麗な調べの連打は目立っています。
 流石にそれが格調高い、とまでは言えないのですが、この非常に人情味溢れる物語、世界観には絶妙にその青臭さがマッチしているし、理屈としてはやや強引でも、感情的に、情緒的に有無を言わさず納得させるだけの不思議な威力はあったんじゃないかな、とは思いましたね。

 ルート構成は、時折サブコンテンツというか、閑話というか、そういう面白小話に切り替わる選択が多用されるのですけど、それを除いた純粋なルート確定のための選択はかなり少な目かな、とは思います。
 まあ基本的に恋愛的な契機を紡ぐ最大の要因がネコ化によっての各人の知られざる姿と想いの開陳にあるのは確かなので、ちょっとしたプラスアルファでそれが一気に雪だるま式に膨らんでいく、という観点は間違いではない、とは思いますが、それでも多少簡素には過ぎるかな、って気はしますかねぇ。

 シナリオに関しては、作品の説明タイトルにも出ている、絶対君と添い遂げるブレイブストーリー、ってのが本当にそのままだな、って感じの内容です。
 人が人として生きていく中で、誰もが母親から生まれ、その薫陶を、影響を受けて育ち、自分なりの規範を、世界との向き合い方を確立していて、それを根付かせる観念が強いほどに、それがもたらす閉塞の軛は断ち切りがたくなっていって。
 そんな固着してしまった世界の見え方を変えていくのが、まずは主人公の変貌であり、その変化によってもたらされた恋情であり、でも様々な柵がある中で、ただ好きだからと寄り添えるわけではなく、今までの自分を壊して前に進むのにも、その結果として今まで自分の世界を守ってきたものを蔑ろにするのにも怖さはどうしたって付きまとって。
 それでも好きだから、という強い想いを胸に、時に世界の在り方そのものを捻じ伏せてでもともに在れる道を探す、その中で何かを捨てるのでなく、全てに認められる形を、世界に受け入れられる形を手にしたいという真摯で切実で我儘な想いが、様々な助けや状況の打開を呼び込んでいくという、いわゆる当人達の精神性に宿った、自由を求める覚悟と世界への感謝の構築そのものに比重を置いた物語だといえます。

 どうしても明確にファンタジーが介在していることで、展開の恣意的なイメージ、都合の良さは付き纏うものの、ただ逆説的にそれが土台にあることで、状況により印象的な、情緒的な風景を付与することも可能にはなっていて。
 ひとつ前の感想の罪の光でも似たようなこと書いたけど、この作品も結構長い期間桜咲いてるよなあ、なんて思いつつ、ただその世界の変化、咲き続ける桜という象徴的な情景が、きちんとファンタジーの文脈の中では必然的に、まあこの場合具体的にはパトリシアの生の鼓動がもたらす世界への影響と見做せるのでしょうけど、その辺はこういう設定ならではだよなあと。
 そのうえでテキストでも触れたように、あくまでも理屈に拠るのではなく、感情に寄り添うことで、そして少なくともその感情の構築に至る流れは堅実に筋道立てて組み立てることで、その方策を一貫していることで、読み手の感情に納得を捻じ込むだけのなにか、を芽吹かせることに成功している稀有な作品ではないかと思います。

 その成功を担保しているのが、現代的な視座だとどうしても萎みがちな人情譚、友情譚の再設計と、様々な余裕をなくした現代のそれとの対比、けれど何かを断罪することなく常にプラスの面を掬い上げていく前向きで懐の深い視座にあるのかなと。とりわけ家族、という在り方に対する冷徹な視座と、けれどそれが浮き彫りにする悲しみすらも内包する大らかさは目立っています。
 総合的に見たとき、それはやはりかなりの部分で主人公の母親の精神性に寄与するところが大きく、それはこの物語を統括する観念となり、それは終盤でより明示的になるわけですが、その想いがきちんと根付いているのも、その根幹たる場所と絆をみんなの力で護り続けてきたからでもあり、畢竟それは死者を忘れない、という想いに繋がっていて。
 それがそもそもの、パトリシア達がこの世界に現れた理由とも連関し、恋を知った彼女が、死という概念に対して新たな前向きな解釈を取り付けることで、一際に今を懸命に生きることの輝きを引き立てているのだと思えますね。

 まあそんな感じで前置きが長くなりつつ、個別評価としてはパトリシア>未知>>ユウキ>シャチくらいですかね。
 基本的に前二人は尺的にもスタンス的にも優遇されてはいるし、その分の優位性もありつつ、よりテーマに深く密接しているところも含めてこうなっていますが、下の二人も別に悪いシナリオではなく、ただ前二人に比べればやや簡素さは否めないかなと。

 その上でまずシャチは、その存在的な部分に、物語全体としての相対性こそ担保されてるもののやはり突飛なステータスが付与されている分、余計に話の短さが、その特異な精神性を掘り下げ切れていないかなとという評価です。
 まあ冥界があるんだから、という部分で納得はできつつも、それ故に付与された力の形がああであること、わざわざああいう形でこの世界に顕現したことの理由付けはどうしても薄く、ただそういう存在だからこそ、刷り込みのように、ある意味では主人公以上に、この家で育まれていた家族の形に拘泥する、という点は説得的で。
 そこから一旦二人の関係を解体し、改めて家族として踏み出す誓いに至る流れはスムーズできれいですし、そこまてで見せる献身性と、だから他ルートでは別にでしゃばることもないのね、的な落ち着くスタンスはアリなんですけど、キャラそのものとしてものめりこめないところはあったし、平均点はクリアしてるけど、って感じですね。

 ユウキはいわゆる落ちこぼれ的な存在の象徴的な部分と、けれどその分だけ深い情と、地頭の良さ、人と人との関係や機微を、やや辛辣ながらも的確に捉える才を持っていて、そのアンバランスさが導いた処世術からの脱却が個別においては大きなテーマになっていますね。
 他ルートでは実に的確なアドバイザーとしての有能さを発揮しつつ、いざ自分が恋に直面した時には、誰よりも一番世界を崩していくことに臆病で、自分に対して被虐的で、その辺を魅力と受け止めるかめんどくさっ!となるかは微妙なところですけど、そこはうまく構成でフォローできているのかなと。
 彼女の過去にまとわりつく柵は、ある意味で主人公たちの外れ方とベクトルの真逆な外れ方ではあり、それ故に一番悪意的に捉えられる向きもあるけれど、それもまた、そのスタンスにおいての親愛であるというギリギリの見せ方は興味深くもあって、ラストの余韻なんかは一番切なさがあったなあと思います。

 未知はもうね、ひたすらめんどくさい!というか、それがある意味でこの世界において一番まっとうだと一般的に評される在り方の中で醸成されているのが徹底的に皮肉が効いているなと思う部分ですね。
 そのめんどくささも基本的には環境依存の部分が大きく、とりわけ母親の影響力は絶大であり、その閉塞感に押し潰されそうになりつつも、それでも家族であり、そこに思いやりがあると知っていればこそ突き放すことができない、という苦しみが、未知というヒロインの牛歩の歩みとその都度の煩悶の中にありありと息づいていて。
 だから単純に付き合う、という形に至るまでに、上の二人の全ルート分の尺くらい使ってるし、そのドロドロさはどうしたってもどかしく、好き嫌いは出る話なんですけれど、ただ少なくともその脈絡において理路からの飛躍や不当な変遷は、少なくとも私の解釈では見受けなかったし、その辺正統的に勝負している内容だと思います。

 ともあれ、恋愛を育む過程での未知というアンバランスな精神性、なかんずく恋愛に対する情緒の幼さが少しずつでも進展していく様は悶えるほどに可愛かったですし、いざその恋に邪魔が入った時に、自分が守られている子供だという自覚の中で、それでも傍にいたいから、今の自分達に最大限出来ることを、という健全、かつご都合的でない展開は本当に地に足がついていて。
 全ルートの中でもユウキと並んでファンタジーな観念に揺らがない人らしさ、人がましさを貫けていると思うし、その想いを醸成できたからこそ、ファンタジーの影響も含めての世界の変転に価値と意義が生まれるのかなと感じましたね。

 そしてここまでの三人が、基本的に恋情を抱いたとしてもそれを素直に受け止められるだけの土壌を育んではおらず、紆余曲折を経ないとそれを受け入れる勇気を手にできなかったのと対比的に、パトリシアというヒロインは恋、という感情を知ったことで手にした、その目に映る世界の変貌をありのままに受け止め、吸収し、抱き留めていて。
 それは当然、他三人に比べて生者ならではの柵が存在しないゆえの淡泊さ、純粋さではありつつ、だからこそその無垢な反応、生の歓びの謳歌が絶妙の輝かしさを孕んでいて、とにかくキャラとしては素晴らしく突出して光っていたのではないかと、その辺は相対的な部分もあるだろうけどやはり特筆しておきたい部分ですね。

 けれど彼女個人の精神性が即座にそこに対応したとしても、彼女の持つ肩書まではそれを安易に許すはずはなくて。
 タイトルにもなっているノラと皇女、という対比は、ある意味では自由と束縛の象徴でもあるかなって思うし、その乖離した観念を寄り添わせ、かつ立場にそぐう責任を、あるいは自由に伴う責任を、世界の理非に介在する責任をもまとめて背負って生きていく、という覚悟への経緯は、他ルートに比べても一段抜けて情緒的で。
 三姉妹、としての対峙も含め、やはり家族としての観念がより強く表に出つつ、ファンタジックな精神性ならではの斬新さも組み込んで、美しいものは美しい、という信念を背骨に、とても温かみのある内容になっているのではないかなと思いますね。

 作中に、人が獣となるとき、伝説が生まれる、という台詞が随所に出てきます。
 これを砕いて解釈すると、タイトルの野良猫ハート、という言葉に通じる精神性、すなわち常識や理念に縛られずに自分の気持ちを一番に見据え、その自由に伴う責任までも全部背負い、向き合う覚悟を抱けるか、というのがまず最初にあって。
 それを獲得できれば、その視野には今までと違う、普通の人には見えない世界が、地平が垣間見えるようになって、その超越が、世界の変革が伝説を育む土壌になっていくわけで、この主人公の場合その順序こそ逆転はしているし、比喩的でなく具体的に、って部分もあるけれど、やはり猫になったことがそこに至る契機になっているのは確かで。

 またパトリシアルートでシャチが彼女を評した台詞、「彼女は見えないものを見ようとする人、聞こえないものを聞こうとする人」というのもそこに通じるものがあり、彼女をそうさせた恋という力の偉大さを示すとともに、その純良さ、子供の素直さこそは、時を経ても失わずにいたい魂なんだと、あるいは人の生きる意味なのかもしれないと示唆していて。
 生きることはどうしたって一歩ずつ死に近づくことでもあって、だったら尚更に世界の美しさを、輝きを、歓びを知らぬままに漫然と、閉塞した世界に生きるのは虚しいことだと、誰でも心の奥に飼っているはずの獣をもっと真摯に見据えるべきだと、とりわけに二人の想いがその超越に強く踏み込めているパトリシアルートは顕著ですし、そういうパトリシアだからその存在感は他ルートにも強く余波をもたらしているわけですね。
 その意味では、精神的な基盤はともかくとして、やはり実際的な変化は彼女の存在なくしては成り立たないものであって、メインヒロインとしての面目をしっかり保っているし、それをしっかり証明しているシナリオにもなっていると思います。


 以上、まあ基本的に私のスタンスだとどうしても理屈が先走ってしまうので、こういう勢い重視の作品との合口はそんなに良くないのですけど、これに関しては全体に迸る気骨というか覇気というか、とにかく一貫して見せ方にブレがなく、この精神性を描き出したいがために状況はあるんだ文句ありますか的な押し出しに、少なからず頷かされる部分は大きかったなと。
 実際演出面でもその意図を強く押し出す見せ方は多かったし、ただ文章としてだけ読んだならともかく、って部分で、総合芸術としての目的意識と完成度はかなり高く仕上がっており、素直に楽しいし心打たれた、と言えますね。
 流石に下支えが曖昧な分は、突き抜けるほどの面白さ、とまでは言えなくしちゃってるし、名作、と言い切るには癖と粗は多いので点数的にはここかな、って感じですけど、すごく楽しい作品であったのは間違いないですね。


キャラ(20/20)

 キャラに関しては非常にサブに至るまで個性が満ち溢れていて、そこにしっかり人情の深みも担保されており、時にヒロインを中心に泥臭くも人がましくも、みっともなくもなるけれど、その弱さも含めてみんなで支えあい、前を向いて、成長への階に、強さと優しさの体得に繋がっていくのが実に小気味よい設定だったなと思います。

 一番好きなのはパトリシアかな。終わってみれば文句なしって感じ。
 とにかくそのありようが真摯で誠実で前向きで、何に対しても体当たりで、決して世を拗ねたりせずに強く明るく歓びを伴っていて、その眩しさが本当に素敵だったし、当然その素直さが恋に反映されてもすさまじい破壊力であり、元々のステータスの特異性が生み出す心機に置いても素朴な斬新さや特別感ある愛らしさが引き出せていて素晴らしかったですね。
 彼女の瞳に映る世界が果たしてどんなものだったのか、あるいはそれはパトリシアルートのエピローグで語られたように、冥界の皇女ならではの特異性を孕んでいたのかもしれないですけれど、だからこそなお、死者への想いを大切にするこのコミュニティに対する傾倒が一心なものになった、と思えば、やはりそれは生死の連関、輪廻云々とは別の部分で美しさを感じさせます。
 ビジュアル的にもボイン過ぎるのを除けばすごくツボだったし、CV的にも素晴らしかったし大満足でしたね。

 次いではまあ未知になりますね。
 正直この子はパトリシアとは対極的というか、非常に何かを変える、ということが苦手で下手で、それが必要になるたびに立ち止まり、煩悶し、迷い戸惑って感情を揺らして、とほんっっっっとうにめんどい子ではあるのですが、でもそのめんどくささを、ちゃんとギリギリめんどくさかわいい!と思えるだけの味わいに仕上げているのは素晴らしいと。
 ただ個人的に、それを為しえたのはかなりCVの力もあるなあ、って思ってて、とにかくこの感情の振れ幅の大きさは演じるにもさぞ難しかろう、ってところで、一貫して高潔さは保ちつつ、その都度都度でしっかり感情の変転に寄り添った抜群の演技を見せてくれたところで、ますます私としては遥そらさんやっぱサイコーですわー、と唸らざるを得なかったです。
 まあその補正があっても、流石にパトリシアほどの爽快さはないし、これはこれで、の可愛さで留まってしまうのだけれども、それでも作品のテーマにはすごく密接したいいキャラだったと思います。

 後はやはりロリ枠としてのユウラシアは無邪気残酷でこれはこれで可愛かったし、あと攻略不可ではあるけれどやたらとノブチナは光っていたなあと。どのルートでもシニカルなスタンスは崩さないままに、けどちゃんといつの間にか力になってくれている、その身内に対する絶対的な情念の傾きは、その背景設定が言葉だけでしか語られていない部分も含めて巧妙でしたね。

 シャチとユウキも当然魅力的ではあったけど、どちらも私的にはサブに回って支えたりアドバイスしたりの時のほうが光っていたかなあ、くらいにはなっちゃうかなぁ。
 あとおかんはなあ、あのスタンスはずるいとは思うけどやはり光ってました。


CG(17/20)

 絵柄的にははじめて、ってのもあり、特別好き、とまでは言えない感じで、全体として立ち絵はかなり好きだけど一枚絵になるとそこまででもないかな、ってイメージ手。それでも安定して可愛いし、質量ともに水準には達しているので、順当にこの点数に落ち着いた格好ですかね。

 立ち絵はまあ量的には水準かもう一歩、くらいですけど、質としては中々良かったですね。
 ポーズはヒロインで2種類、サブで1種類であとちょこちょこ腕差分も、ってところで、やはりそこまで躍動感は感じないものの、それぞれの個性がすごく鮮烈に紡がれてはいてそこは良かったなと。しかし未知に関しては正面向きが九分九厘で、もう一つのほう滅多に見なかったのはなんだかなあ、でしたけど。。。
 お気に入りはパトリシア正面、横、未知正面、シャチ横、ユウラシア正面、ノブチナやや横くらいですかね。

 服飾はヒロインで4〜5種類、サブで2〜3種類とまあベーシック。必要なものは揃ってるし個性も出ていて、デザイン的にすごく好き、とまではいかないけど良かったです。
 お気に入りはパトリシア制服、私服、冥界服、下着、水着、未知制服、私服、水着、シャチ私服、水着、ユウキバイト服、私服、ユウラシア制服、私服、冥界服あたりですね。

 表情差分も多彩とは言えないけど、それぞれに個性と味わいは出せているし遊びもそれなりにあって、まあ文句はないかなという感じ。
 お気に入りはパトリシア笑顔、困惑、拗ね、甘え、照れ笑い、照れ困り、未知笑顔、怒り、目逸らし、悄然、照れ、半泣き、シャチ笑顔、真剣、ユウキ笑顔、苦笑、目逸らし、ユウラシア笑顔、膨れ、思案、ノブチナ驚き、怒りあたりですね。


 1枚絵は通常が89枚にSD的なのが18枚、あとアイキャッチも8種類登録されてますね。量としては水準は確実にクリアできているし、あと個人的にはしっかりシナリオの尺に合わせて差異があるのも評価できるところ。
 パトリシアが姉妹絡みもあるとはいえ31枚、未知が23枚で他二人は18枚となっているので、その辺横並びのほうが、って人とか、他二人のほうが好みなのに、って人には残念な感じではありますが、私はこうやってシナリオと合わせてメリハリついてるほうが好きですし、パトリシアと未知が好きだったから満足。
 ただ質としては正直立ち絵のほうが可愛いな、って感じで、シーンがもたらす情感的にグッとくるのもあったけれど結果的に特に、レベルで好きになれのはなかったのは残念でした。……いや、最後までノーパン黒ストは迷ったけどな!

 お気に入りはページ順に、パトリシア出会い、追跡、キス、詠唱、読書、祈り、花火、姉妹、学び、月夜、死者と語らい、二度と離さない、初H愛撫、正常位、フェラ、騎乗位、ルーシア正常位、背面屈曲位、ユウラシア背面座位、バック、正常位、未知子供の別れ、抱きしめ眠り、告白、抱きしめ、駆け出す、愛撫、パイズリ、騎乗位、正常位、バック、シャチ抱きしめ、湯上り、家族、手コキ、正常位、騎乗位、バック、ユウキ合格発表、寂しくて、手をつないで、正常位、フェラ、騎乗位、バックあたりですね。


BGM(19/20)

 非常に質量ともに素晴らしく、かつ印象的な曲がかなり多かったなあと。とりわけ三拍子の曲の情緒豊かな雰囲気は耳に残ったし、かなり満足度は高かったですね。

 ボーカル曲は5曲。
 OP・EDの『野良猫ハート』はヒロイン集合ボーカルではありつつ、それぞれにしっかり歌唱力もあり、曲としての完成度も中々に高くて、疾走感の中に情味が生き生きと息づいており、特にAメロとサビの後半の余韻の流し方はかなり好きですね。少し残念なのは、EDでフルバージョンを流してくれなかったことかなー。

 んで挿入歌が4曲と非常に豪華で、これもシナリオ面での情感の引き出しにかなり大きく寄与していて、正直少しあざといくらいなんですけれど(笑)、実際にそれを可能にするだけの質の高さでもあったと思います。
 『Re:start』は爽やかで真っすぐな雰囲気、鮮やかに色づいた世界の歓びを描いている感じで、曲としての深みは一番下かな、とは思うけどなかなかいい曲。
 『僕が君を護る理由』は、ひっじょーに情念の深いコクのあるボーカルとゆったりしたメロディのマッチ感が半端なく、どこか悲壮さを孕む覚悟を示すシーンでの破壊力は抜群で、サビのメロディはとても好きです。個人的にすごくG線の挿入歌を思い出す。。。
 『Brave Guardian』はストレートに勇気と覚悟の示しを照らしていて、この爽快感と疾走感、力強さはやはり挿入歌として素敵でしたね。曲としては少しシンプルすぎる気もするけど、Bメロなんかはかなり好きです。
 『月』はある意味でパトリシアのテーマ曲に親和する部分もあり、透明で閑寂で素朴でありつつ、風雅で流麗で神秘的で、美しさを結晶化させたような雰囲気、高音域の調べがとりわけにそれを助長していて、曲としては変則的な部分もありつつ、地味にこれが一番好きなんですよね。本当に三拍子がすごく嵌ってます。


 BGMは全部で47曲とかなり多彩。まあアレンジ関連一括りにすれば40曲くらいだけどそれでも圧巻だし、コミカルな日常、情味溢れる人の繋がり、それらが醸し出す切なさを非常に丁寧に引き立てていていい出来だと思います。
 お気に入りは『月のしらべ』『冥界』『黒猫タイム』『夕暮れ』『Good Cook』『Hail』『SPY』『勇猛』『Reply』『彩り』『光射して』『小箱』『しずく』『月のゆくえ』あたりですね。


システム(8/10)

 演出に関しては良きもあり食い足りないところもあり。
 情景を印象的に見せるという視座での演出は、シナリオと相まって中々ではありますが、通常のキャラ演出はそれなりに効果演出こそあれあまり動きが多くはなくそれなりで、トータルで見ると悪くはないけど、くらいのイメージで。
 OPムービーもあまり取り立てて目立った工夫もなくストレートなイメージではあり、ボーカルとキャラ紹介がマッチしているのとかはいいんだけど目を引くほどじゃないかなと。
 あと個人的には、OPEDで同じ曲使うなら、EDクレジットももう少しムービーっぽくして、んでフルバージョンでかけて欲しかったなあと。付属のサントラにもショートしか入ってないし、ちゃんとしたサントラ買えってことですのん?

 システムは特に不備もなく、特にスキップ周りは非常に優秀ですね。
 ここはトータルで見てもう一点上でも良かったんだけど、やっぱこのED絡みでの物足りなさが決定打というところでギリギリ下補正かけた感じ。


総合(87/100)

 総プレイ時間21時間、共通が5時間に個別はパトリシア・未知が5時間、他二人が3時間くらいの勘定ですね。明らかにパトリシア・未知はシナリオ的にも立ち位置的にも優遇されているし、実際作品のテーマ的にも外連味としてもだいぶ質に差はあるかなって思うし、その辺噛み合えば評価も高くなる感じ。
 特に未知ルートは長々やるには色々危険の伴う構成、設定ではあり、そこを真っ向勝負しているのは私的には喝采したいところだし、本当に素晴らしい遥そらさん引き出してくれたのでそれだけでも買った甲斐があったというものです(笑)。

 そういう大枠的な質の部分で毀誉褒貶はあるかもだけど、トータルで見て非常に安定的に笑い、おかしみを提供してくれるし、体験版の読み口が肌に合ったならまず楽しめる作風になっていると思いますね。まあ強いて言えば、せめて一人くらいボインじゃないヒロインが欲しかったなあ……。今月は巨乳村が横行しすぎているので、そこは次の五つ子に癒してもらいます(笑)。
posted by クローバー at 05:16| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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