2016年04月01日

まいてつ

 ものべのもそれなり以上に面白い作品だったし、今回は鉄道にフィーチャーしつつという部分でも興味深く、またオールE−moteという豪華な仕様、とどめにヒロインの、とりわけポーレットと日々姫がとことん可愛い!と思えたので、心の底から発売を待ち望んでいました。


シナリオ(24/30)

 郷土愛とはいずこに生まれるや?

 主人公は幼い頃、大廃線末期で事故が多発していた時期に脱線事故に遭い、両親と双子の妹を失いました。
 その後、九洲は隅本にある、清流による川下りと焼酎造りが名物の街・御一夜の右田一酒造元に養子として引き取られ、半ば生きる屍のように暮らしつつも、せめてこの拾った命を何かの為に、誰かの為に使いたいという想いを強く持つようになっていき、それによって事故のトラウマを糊塗するようになっていきます。
 やがて成長した頃に義父に連れられ帝都で進学するものの、その数年後、風の噂で御一夜に、新時代の万能交通機関となっているエアクラの工場誘致運動があることを知り、しかしそれは水質汚染の危険性を孕むため、御一夜の水を守るために主人公は休学し、二年の猶予をもらってその誘致運動を撤回させるべく御一夜に、かつて自身の命を救ってくれた飛行型エアクラ・ナビとともに戻ってきます。

 そんな主人公を、久々の再開になる義妹の日々姫や義姉の真闇はそれぞれに立場や思想はありつつも歓迎してくれ、かつて主人公を引き取る決断をしてくれた、今は亡き義理の祖父の部屋を宛がわれます。
 鉄道にかまけて酒蔵を傾けた放蕩者、として知られた祖父の部屋は、その趣味の産物が山ほどに溢れており、日々姫に手伝ってもらって整理整頓を進めていくうち、二人はガラスケースに入った不思議な人形を発見します。

 そしてかつて、鉄道に一体ずつ配備されていた運行ナビのような存在、レイルロオドと呼ばれるもので。
 ゼンマイを回したことで長きの眠りから目覚めた、8620と名付けられた蒸気機関車のトップナンバーレイルロオドであるハチロクは、些か記憶の欠損を抱きつつも、主人公をマスターと定め、彼本来の目的に対し、エアクラではカバーできないものを鉄道の再興によって成し遂げたらどうか、という提議を示してきます。
 主人公もまた、戻ってきたはいいものの具体的な撤回案はなかったところなので、寄る辺ない立場でもあるハチロクを無碍には出来ず、そしてハチロクの燃料探しを第一義にした街の周遊の最中のアクシデントにより、未だこの街にはエアクラ昨日不能地帯があり、そして鉄道が現役で走っていることを知ります。
 
 ほんの短い区間とはいえ現役で活動しているキハ07のマスターであり、そして御一夜市の現役市長でもあるポーレットと、そのレイルロオドであるれいなとの出会い、そして今の時代、鉄道の運用は自分たちのようなまいてつ、すなわち個人所有の鉄道マニアが多くを担っているという実情を教えてもらうことで、もう一歩主人公に、鉄道の復権による観光振興、というアイデアを前に進める契機を与え、彼女たちの協力を得て、ハチロクの相棒である8620の本体を見つけることにも成功して。
 半ば予想された通り、その車体は大きな損壊を負っていたものの、ポーレットや右田姉妹の協力も得、様々な街の職人達や、ポーレットのまいてつ仲間の力も借りて、そのSLを復活させ、走らせることで、観光振興の一つの大きな軸とし、エアクラ工場誘致推進の動きに対抗していこうと決意した主人公は、自身も様々に動きつつ、機関士としても働けるように鍛錬を積み重ねていって。

 幾多の困難を乗り越え、なんとか自走が可能な状況にまで持ち込み、さあこれから本格的な活動を、となったところで、主人公に示されたのは三つの道。

 ひとつは、そのまま鉄道の機関士として邁進する道。
 ひとつは、改めて地域に密着し、その声を掬い上げる道。
 ひとつは、市政に直接関与し、大枠でのプランを提示していく道。

 いずれにも利点と難点はあり、またここまで協力を惜しまなかった三人の意も精一杯汲みたいと思いつつ、けど主人公はやがてその中から道を選び、その先に贖罪を、終着点を見出すべく走り出すのです。
 これはそんな、SL復活を旗頭に故郷復興をいかに果たすか、豊かな水の土地・御一夜を、誰にも誇れる郷土として守るための奮闘記であり、それを通じてかつてのトラウマとも対峙し、克服し、人らしい生き方を取り戻していく救済と成長の物語です。


 あらすじはこんな感じですね。
 大枠としても上で触れたままに、大まかに示された三つの道程、それすなわち三人のメインヒロインの意向とも合致する流れに寄り添い、その中で結果を出していくことが、必然として当該ヒロインとの距離感を縮めることにもなり、本質的に背負った過去の影響で極度に滅私的な主人公が、はじめて自分の気持ちに悩み、迷い、戸惑いながらも前に進む決意を見出していくのに、ヒロインが抱える問題や悩みが共鳴して展開していく、という流れですね。
 また当然、当人たちの問題と並行して観光振興の行く末もそれぞれのルートで、それぞれの形である程度の決着を見る、という構図にはなっていて、基本的にはシリアス多めの物語だといえましょう。

 テキストは全体的に鉄道専門用語が乱舞する、というのを置いてもどこか格式ばっているというか、格調高いというか、特に主人公の佇まいに重厚さを感じさせる部分は多いですね。
 ただその重々しさをうまく中和してくれているのが、日々姫を筆頭として地元の人間が使う方言であり、いかにも九洲的な歯切れよく闊達としている言い回しやアクセントが、サッと空気を清浄にしてくれるような感覚があり、そのあたりは絶妙なバランスだなと思います。
 専門用語にはTIPSがついているので、最悪それを参照しながらでいいし、まあある程度ニュアンスでもわかるから概ねはサクサクと読み進められます。結構ポンポン視点キャラを変えてきたりもするので構成的に狡さはあるけれど、そこを巧みに利用して説明的になりすぎずリズム感を維持しているイメージで、読んでいて特に感情面はスッと入ってきやすい構図になっていると思います。

 ルート構成はごくシンプルに、選択肢は一箇所だけで、そこの選択によってハチロク、日々姫、ポーレットのルートに分岐し、それぞれのルートをクリアすると、関連性の高いサブヒロインのルートが解放され、そして全部のルートをクリアすると最後にグランドルートがクリアできる仕様になっています。
 プレイ当初は、主人公があくまでも事態を受けて動く、滅私的な価値観が固着したありようだけに、こういう構図でもいいのかな?と思ったんですよね。三人の請願を受け止める形で、ただそれだけを理由に動ける、そういう主人公だからこそ、ハチロクの身柄をああも悩まず受け止め、鉄道、とりわけSLという、本来的には御一夜元来の潜在力ではないものを観光振興の旗印として絡めていこう、という難しい決断をも躊躇いなく出来たんだと。
 
 その視座は今でも間違ってはいない、とは思うんですが、ただ全部クリアしてみたときに、当然サブのルートにおいても色々心理変遷の部分での足りなさ、違和感はあれ、まあそれはサブだから大目に見られるかなと留保しつつ、ただやはり最後のグランドの分岐の見せ方に至ってはちょっとどうなのかなぁ?と思うところもあって。
 その辺の詳細は後述しますが、結果論的に言えばやはり共通である程度の選択肢は用意しつつ、そこに追加選択を発生させることによる、ある程度の違和感の緩和は為せたのではないか、と思う部分はありました。

 シナリオに関しては、基本的にはすごくいい出来、だと思います。
 基本的な世界観が、現代社会をベースにしつつも、エアクラやレイルロオドなどを筆頭にかなり恣意的な改変も多々為されていて、無論それらに対する定義づけはしっかりやれているのでそれ自体は歓迎ではあります。
 ただ本質的にそういう、書き手が自在にコントロールできる部分を持っている、という中では、絶対的な意味で説得力を付与しにくい、という視点も当然あり、この作品はそこの部分を概ね観光振興活動の中にきらめく人の絆、更に言えばその絆を生み出す根幹に根付く郷土愛に規定している感は強いので、その辺は本当に感情面ではかなり成功しているのではないかと思います。

 一方で設定自体はファジーゆえに、枠組みとしてもファジーのまま済ませておけばいい部分、ってのは厳然としてあり、また逆に確固としてそうであればこそ、と共通段階で定義されている、遵守すべき主に精神面でのルール付けもあるのだけど、そのあたりの線引きが時折危うくなっていて、その辺で理路としての納得感が欠損している部分も少しはあります。
 それが上で触れたルート分岐問題や、後は歴史的経緯の部分などに顕著に出ているし、後はルート毎での手段と目的の位相の温度差、という部分でも多少は出ているかな、という気はしていて、結果的に名作ラインの25点に乗せるのにはちょっと足りない、と思った最大の理由になっています。

 あと、当然作中でも言及はされているけれど、補助線として踏まえておくべきは、やはり鉄道は儲からない、という点に尽きるわけで、ロマンだけで飯は食っていけないからどうしようか、となる中での、本来の目的と手段との混在化の度合いや、そうなった上でより大きな枠組みでの目的、価値観の創出に至れているのか、という部分が、今回の私の個別評価のもうひとつの軸になっています。

 その辺踏まえた上で個別評価は、ポーレット>>日々姫>ハチロク=グランド>稀咲>真闇>れいな>凪&ふかみくらいになるかなと思います。

 下から浚っていくと、まずそもそものサブキャラルートに関しては、基本的に滅私的で自分の事には無頓着という精神性の持ち主である主人公を恋愛に目覚めさせることの難しさ、というファクターを、どうしたってメインの三人ほどには重く深く尺を割いては紡げない、という部分で、この物語大枠の流れからほんの少し違和を生じさせる、という側面はどうしてもあると言えます。
 結局それは主人公が自身のトラウマとより深く向き合って、生かされた自分、生き延びてしまった自分というものを本当に赦せる納得を得なければ難しい部分なので、メインのルートを見た後だといかにもその好きの発生が唐突で軽薄に見えてしまうのは致し方ない、って話ですね。
 まあ逆に言えば、好きの形に変な偏見というか固定観念を持たずに来たゆえに、れいなとか凪&ふかみとか、そういう特殊な形でもすんなり受け入れられちゃう土壌になってる、という見方も出来るし、その辺はこのトラウマの重さをどのくらいに読み手が見積もるかで違ってくる解釈かもしれませんが。。。

 そういう前置きを踏まえて、稀咲と真闇ルートが断じて優れているのは、それぞれの持つ力を十全に生かして、土台に危うさのない明快な振興策の答えを提示できている点にあると思います。
 これはメイン三人のルートでも変わりないのだけれど、基本的に御一夜の範疇で振興策が完結している限り、絶対的に確実性のある方策までは打ち出せない、それは鉄道が持つスケールメリットを十全に生かしきれないから、という部分はあり、だからこそメインはそこを上手く感情面のフォローで埋め合わせています。ただサブだとそこまで蓄積を作れないし、その上で理路の通った納得感を打ち出すには、この2ルートのような構図が最適解だろうな、と思うのです。
 真闇のほうが評価低いのは、このルートにちと致命的な問題が埋まってるからですがこそれは後述。
 んでその点れいなと凪&ふかみは、それぞれポーレット、ハチロクのルートでのアイデアを援用した形になっているし、それだと噴出する後々の問題、という部分も含めてやはり色々足りないか、と思えちゃうし、特に後者は、ハチロクルートが内包する危険に最も近似的なスタンスであるがゆえに余計に、という部分はあり、また恋愛面でも特異性は否めないので評価は下げたいなと。

 グランドは最後に回すとして、ハチロクルートは当然ながら鉄道を用いての振興に全力を傾注する、というルートになり、かつメインに据えられるのが二人の凄絶な過去と数奇な巡り合わせ、それがもたらす二人三脚でのトラウマの克服になってくるので、どうしても本来の目的である誘致撤回、観光振興の面でのフォローが弱いかな、と思うのが、他より低く見てしまう点ですかね。
 まあその辺どこに主眼を置くか、読み手によって差異は当然あるでしょうけど、どのルートでもある程度、本来は手段に過ぎない鉄道の復活が目的にもすり替わっていく中で、とりわけここはその色合いが強く、その分だけ早い段階で興業としての目途は立てているのだけど、結果的にその無理が歪を生んでもいるわけで。
 そしてその歪は、ある意味でどのルートでも潜在的に内在する、と提示されているのが結構曲者ではあり、無理したことでその顕在化が早かったという部分に一定の説得性はあるものの、そもそもの振興企画の土台にSLを持ってくることの無理を顕著にしているようで、その辺心に引っかかるものはあったなと。

 加えてやはり、本来の目的からすればそこから無理してもう一度直す、という絶対的な必要はない中で、情理を尽くして押し通す、ここに至って手段と目的は完全に転換している節はあるし、それに対して手を差し伸べてくれるのも、どうしても鉄道関連の繋がりがメインになってくる、というところで、当然これはこれで一つの答えではあるにせよ、とは思うんですよね。
 鉄道のレールは繋がってこそ、というように、なんらかの愛情や熱意、思い入れを持って繋がった人の輪、というものの美しさを見せるという枠組みではテーマを外してないものの、やはりハチロクに傾倒しすぎて本義からは多少逸脱しているなあと思うし、その修復を踏まえてじゃあ今度こそ、というところで、その示唆だけなされて話としては終わってしまっているのもね、というところ。
 一応補完的に郷土愛的な部分も、最後の捜索行で示してるつもりだろうけど、その先の稀咲のアイデアからはじまる物語が私グランドなのかな、と思ってたのでそこも含めて少し評価を下げてるシナリオなのです。いや、ハチロクの気高さと弱さ、それを二人で乗り越えていく過程の高潔さ、毅然さなんかは清々しくて素晴らしかったとは思いますけどね。

 日々姫に関してはポーレットとハチロクの中庸、というイメージが一番しっくりくるのだけど、ただその分だけ振興面で打ち出せるものが半端な感じはして、ただ全体としてはすごくバランスのいいシナリオかな、って思っています。
 とりわけ説得的なのは、地域密着という日々姫の願いを叶えることが、結果的に一番大枠的な観光振興からも、鉄道運営からも距離を置くことになり、主人公の立ち位置がそこである故に、ポーレットの負担が顕著に増大して、って部分は、ポーレットルートと表裏的でありすごく納得がいくところで、そこに至る流れも不自然さはなく。
 まあそもそもこのルートを見てると選挙権とか参政権とかそういうのの資格って何なの?とか突っ込みたくなること必定ですけど(笑)、ともあれ本来生臭さを帯びるそういう舞台で、だけど日々姫なりの正々堂々がしっかりと一つの道筋となって未来を照らし、人の心を動かしていく、という部分には、青臭い綺麗事ではあれやはり清々しさがあるなあと思いますし、それを貫徹させる力を、二人の関係の進展が担っている、というところに意味があると。

 ただ上でも触れたように、振興策としての発展性、継続性、再現性においては、どうしても確実性の薄い施策止まりになってしまっているし、あとやはり今回の選挙における日々姫への信頼の多くは、元々ずっとポーレットが地道に、孤独に紡いできたものが形を変えて、だとは思う部分は大きく、その辺も踏まえるとポーレットより上の評価は出来ないよなあって。
 恋愛面においては本当に日々姫は自制が効いてるよなあというか、主人公の気質をしっかり理解した上で決して急がず、でも決して諦めず、というスタンスが明確で気持ちいいなと。そうやっていつも注意深く主人公を見ているからこそ、他のヒロインにちょっとでも傾倒しだせば敏感に察知して応援してくれたり、本当にいじらしく兄想いな素敵な妹キャラしてるなって思います。標準語と方言がてんやわんやするのもめっちゃ可愛いしねー。

 ポーレットは総合的に見て、一番理路の上でも感情の上でも納得、共感の度合いが高いシナリオに仕上がっていると思うし、かつ本来の目的に一番近いところで動けている、という部分で私の評価は高くなっています。まあ鉄道をメインに物事を見ている読み手だと逆の評価になりそうな、広範に政治的な要素が絡んでくる話でもあるのですが。
 やはりこのルートの特色は、鉄道の持つ潜在力を、どう御一夜という街の潜在的な魅力と相乗効果を持って発言できるか、という部分にあるのではないかと思うし、そこをポーレットと主人公という、本来土着の存在でない二人が成し遂げていく、という部分に意義があるのだと感じますね。

 御一夜が御一夜であるために、絶対に必要なものは何なのか?失ってはいけないものは何なのか?それを失うことは、長いスパンで見たときに、この土地に対する郷土愛を喪失させることと同義である、という色調が一番わかりやすく示されている内容であり、故に郷土史や民芸文化の面でもかなりクローズアップされ、それを複合的に有機的に絡めることで、鉄道単一では成り立たない採算に対し、政治の力も絡めて目途を立てていく方向性は非常に巧みだったと思います。
 無論その中でのポーレットとの接近、過去の陰影のちらつきと、それがもたらす二人のトラウマの克服の過程も並行して進展していく中で、非常に山谷紆余曲折ある物語と仕上がっているし、最終的には父の遺志を継ぎ、本来の郷土ではない御一夜の、一番の御一夜らしさを守るために孤軍奮闘してきたポーレットの姿勢が、想いが、きちんと郷土愛を持つ人たちの心に伝播し、それこそ御一夜市=お人好しの名の如く手を差し伸べる最後の一押しになっている、というのも素敵だったなと。
 まあ裏を返せば、これだけ様々な要素を絡めてなお、そういう不確定要素に頼らなければ達成できないくらい困難な道のりではあった、という中で、それでも全ルートの中で一番バランスよく、政策面でも恋愛面・トラウマ克服面でも、理路、筋道がしっかり立っていて共感を呼びやすい話だったと思います。

 最後にグランドに関しては、まあこれは本当に話としては全部のいいとこ取り、としかいいようはなく、鉄道のスケールメリットを最初から万全に生かすために、それを有機的に用いることが可能なだけの勢力を結集する、その方向性、レールをいの一番に提示するということでそれを為していて、まあ言葉遊びの部分も含めて色々装飾的すぎるとは思うし、振興、という観点においては一部の隙も無い決着ではあると思います。
 ただどうしても引っかかるのは、とってつけたようにハーレムじみた決着付けになってしまっているのと、後はやはり取っ掛かりの分岐において、あの時点の主人公がそこまで自発的に、元の目的意識から更に枠組みを進めて何かを為そう、という意思を持てる存在なのか?という点で。

 御一夜の水を守る、というのも、自発的に主人公が思ったようでいて、本質的には自分を育んでくれた場所に対する恩返しという受動的な部分はあり、そしてあの時点で特にどのヒロインにも思い入れることなく、ただ提案の可否だけで選択できる、という精神性は、その受動性の顕在化、だと私は思っていて。
 そこから恋という感情を知り、それと連結してトラウマを克服していく過程で、しなくてはならない、から、そうしたい、への変移が為されるというのがメインの個別の一つの大きなファクターであるならば、その前段階でその精神性を凌駕しているような発想が出てくる、というのは矛盾しないのかなと。いくら三人の意見のいいとこ取りを突き詰めていけば、という観念が成り立つとはいえ、そこまで大きな社会的貢献になってくると、まずは手の届くところから、という素朴で切実な希求、贖罪意識の具現化と噛み合わないだろうって。

 というか、こういう主人公で、ハチロクルートがああいう終わらせ方だったからこそ、そこからグランド派生なのかな、と予想してたのもあり、どうにもこの安易な分岐、雑多なつくりであの結末に至ってしまうのは蛇足じゃないか?と感じてしまったわけですね。
 基本的にこの作品、閃きの段階までの呻吟は結構しっかり書くけど、具体的な工程の段階での蹉跌や労苦はサラッと流す風潮は強く、思いついて次の場面ではもう実際のテスト段階、なんてのはザラで、まあ他の個別だとそれでも密度はあったからいいんだけど、グランド、って銘打ってこうもダイジェスト的だとねぇ。。。
 ともあれその辺を補完するのであれば、やはり共通内である程度その克服の端緒になる経緯や要素がもっと如実に顕在化してこないと、って気はするし、それが選択肢が全然ないことに対するマイナス評価とも連動しているわけです。正直ポーレットルートだけで名作ライン乗せてもいいかな?って思えるくらいではあったのだけど、このグランドが足を引っ張ってると感じましたね。

 あとひとつだけ看過できないマイナス要因があるのだけど、ちょっとネタバレ濃すぎるので白抜き。

 ぶっちゃけそれは歴史経緯の紡ぎ方の問題です。
 正直言ってこういう世界観なので、その辺かっちり作り込むのでなければ、むしろファジーに、読み手がある程度幅を持って解釈できる余地を残したままで置いておいても良かった、と思うんだけど、なぜか、本当になぜか中途半端に真闇ルート内でいくつか具体的な数字を出して説明してる部分があって。
 まあそれで全体と辻褄が合ってればいいんだけど、色々考えてみてもそれが全く合ってない、ってのがえええ……って感じなんですよねー。

 とりあえず真闇ルートで触れられている歴史的事実と年代をサラッと拾ってみると……。

 ・終戦が大紹35年(正和元年)
 ・エアクラ法施行が正和21年
 ・帝鉄解体が正和60年、大廃線が一気に進んだのもこの時期
 ・正和61年の段階で御一夜市近辺で残った路線は湯衣線のみ
 ・正和70年がポーレット父が市長就任した年

 とまあ、書かれている通りはこうなんですが。
 しかしそもそものキャラ紹介のハチロクの項目にこうあるんですよね。

 ・正和61年新造復興

 この時点でもう、両者の記述に矛盾があるのが明白なんですよねぇ。
 その新造復興が、主人公の手によるものかという部分に100%の確証こそないですけれど、少なくとも帝鉄の手で一度壊れてたのが復活させられたというなら、それは当然解体前、大廃線前じゃなきゃ矛盾するから時系列的に有り得ない。
 そしてそもそも、8620と主人公の事故も当然解体前、大廃線前じゃなきゃありえない話だし、またポーレットルートで語られる過去を踏まえると、湯衣線の再開が二人の出会いの端緒になっているから、タイミング的にも色々と合致しないし、市長就任時期も全体的に遅すぎる。

 更に勝子さんが戦前にお召し列車を運転して貰った金時計を受け継ぐとして、この年代計算だと孫としてはポーレットは年が遠すぎるでしょうと。だって最低限戦争終結の五年前と見做しても、そこから大廃線まで65年あるわけで、その時点で仮に10代後半という若さだったとしても、勝子もマイアも晩婚、高齢出産すぎる。
 何しろこの物語の時点が何年かも明示されてはいないけど、真闇ルートの記述を信頼するなら最低でも正和70年代前半ではあると推定できて。だとすれば大廃線がきっかけで金時計を受け継いだ時点ではせいぜいポーレットは6〜7歳がいいところで、そうでないと主人公との子供の頃の出会いの姿が嘘になっちゃうから、そっから逆算してもそれぞれ35歳以上になってからの子供、って計算にしかならんのですよ。

 ついでに言えば、これも確定的には書かれてないけど、ハチロクが長らく同じ人と組んできた、と言っていること、グランドで金時計に触れて、あの事故で失われたと言っているのは、そのキャリアの最初期はともかく、最終盤までは勝子と組んでいたのではと思わせるところもあり、したらいったい勝子さんてばいくつまで機関士やってたんだよと突っ込まざるを得なくなる。。。
 ともあれ、こういう風に突き詰めてみると矛盾ばっかり出てきちゃうのに、なんでわざわざ取って付けたように数字をつけちゃったの?と残念に思わざるを得ないのです。それがなければなんだかんだこれで辻褄あってるんだろうと深く考えずに済んだのに(笑)。

 とりあえず、ハチロクの復元、すなわち今が正和61年、というほうの記述を正統と見做し、かつ歴史推移が本来のものと近似している、と考えた場合は全体的に無理は少なくなるかなと思います。
 ザッとだけど、勝子がマイアを生んだのが正和10年前半くらいで、そこから戦争にまつわる引き裂かれ的な悲劇もありつつ基本的には延々機関士として働き続けて、最後の事故の責任を取って退任、これが大廃線と前後しての正和45年前後、主人公とポーレットの生まれが正和40年前後、ポーレットの両親の離婚も大廃線と、それに伴うエアクラ工場誘致運動の活発化が起因で、彼の市長就任と軌を一にする形で湯衣線も復活、くらいに見ておけば大過ないんじゃないかなあと。
 まあ正直この辺は物語を理解する上で不可欠とは言えない蛇足な部分なのですけれど、あまりに整合性がないのを提示されると整理整頓したくなるので、あくまで私はこういう流れだと解釈しています的な覚書ですね。。。


 以上、そこそこ長くなりましたが基本的には同好の輪、郷土愛の絆の美しい物語ですね、で話は終わるっちゃ終わるところです。。。
 オールエモートの威力もあり、非常に情感が伝わりやすい物語には仕上がっていて、当然プレイ中はかなりの没入度でプレイできたのですけど、全部終えてみてそれなりに瑕疵は目についたし、総合してこれくらいが妥当かな、と判断しました。本当にプラス面だけに目を向けるなら名作、と言ってもいいんですけどね、いかんせん細部に目配り、気配りの足りなささが滲んでいて、書きたいことは本当に全力で書けているのに、それを万全に見せる土壌作りに綻びがあるのは勿体ないなと思います。

 あと書きそびれたけど、えっちぃシーンは完全に回想で独立していて、質や尺は充分ですけど、シナリオの流れを阻害しない要素、という位置づけで展開されているので、個人的には本筋に集中できて悪くなかったですけど人によっては首をひねるところもある、かも?まあ少なくとも、シーンそのものにシナリオの流れの中での必然性、プラスアルファを求めない構図ではある、というところですね。
 総合して実に意欲的な力作なのは間違いなく、ボインキャラは冷遇されてますけど基本的にそっち筋の人が買う作品じゃないだろうし(笑)、本当に些細な瑕疵や違和があんまり気にならない人なら純粋に楽しみ癒される作品にはなっていると思いますね。


キャラ(20/20)

 伊達にお人好しの街ではなく、思想や立場の違いで軋轢はあれど、本質的に街を愛する心、その発展を願う心は一致している、という性善説的な観念に色濃く染まった世界観ですので、その中では歪な理想漢に固まった主人公の気質もマイナスに捉えられる要素が少なく(最初からヒロイン好感度高すぎる、って話はありますけれど。。。)、ヒロインも、それを支える面々も本当に素敵な人達だったなあと。

 その中でも最終的にやっぱり抜け出したのはポーレットだったか、というところ。ギリギリではあるけれど、多分この子が今年の殿堂第一号になるんじゃないかなぁと思います。
 肩書的にあからさまに見た目と乖離した重さを背負い捲って立ち往生している子ですけれど、でもそれが突発的だったり波状的にならなければきちんと適切に処理し、有機的に活用していける才能を持った子ですし、それでいながら全く偉ぶったところもなく謙虚で一途で誠実でひたむきで、少し人見知りというか引っ込み思案な部分まで含めて性格的には本当にツボだったなあと。

 彼女の場合、父親の遺志を継ぐ、という目的意識は強いにせよ、御一夜という街そのものに絶対的な愛着を抱くだけのファクターはそこまで大きくないはずなのに、それでも自分の立場でしか出来ないこと、御一夜が御一夜として、郷土愛を長久的に健全に育む土地であるために必要な勘所をしっかり理解し、幾多の不利な場面を負けずにしのいできたというだけで、概ね称賛に値するわけで。
 実際反対運動が下火になっても消え失せずに今まで繋がり、それが主人公の行動を誘発した、という意味では、この物語の土台を作った一番の殊勲者とも思えるほどで、それ故にその純粋で高潔な想いが正しく伝わり、評価されていく流れは心に響く、実際にそれだけの蓄積があると無条件で信じられる部分だったですからねー。
 それにまあ、この見た目ででも性格通り恋愛には初心で一途で一々挙動が可愛くって最高でしたし、この作品的には育ち過ぎなのかもだけど(笑)、私的にはやや高めのストライクゾーン、くらいの立ち位置なもんで、色んな意味で大満足のヒロインでした。

 次いで日々姫ですねー。
 この子の場合はあきらさまに義妹だけど好き、ってのが露骨ではありつつ、それを強いて押し付けるようなことは決してしない、家族なればこそ深く理解している部分を最後まで揺らがせにしないのがとっても素敵だなって思えたし、他ルートでも消沈する空気はほんのり醸しつつ、しっかり軛になってくれるような心強さも備えていて、その才能の輝きと方言のきらめきとセットで本当にキャラのインパクトがあったなあと。その点ではポーレットより上だと言えるでしょう。
 まあ少し下に置いたのは単純にシナリオへの没入度の差と、実際そこで蓄積したものの質の違いが、私にとってよりどちらが価値があるか、って程度の話ではあり、本当に可愛い可愛い義妹キャラだったと思います。というかボイス登録機能とかあったら、この子の方言コレクションとか作りたい(笑)。にぃにぃ呼びのあまやかさは最っ高でしたよね!

 当然ハチロクも素晴らしいキャラであり、古色端然とし毅然とした自己を構えていつつも、流浪の生き様の中で新たな道を見出すのに苦悶し、それでも主人公に対しての献身とその裏返しの厳しさ、信頼が本当に一滴の濁りなく綺麗に浮き立っている感じで、傍から見ていても背筋を正されるような気分になりますね。
 ただ私の期待感の中で、どうしても鉄道<観光振興的な観念が最初からあった分もあるのだろうけれど、レイルロオドという立場からもそこに固執せざるを得ない悲哀や面倒さもひっくるめて、他の二人よりそれでも素敵だったよ、と言い切れるほどの要素は私には見いだせなかったという意味でのこの位置ですね。それにやはり、レイルロオドとの恋愛、という部分には補助線が引きにくいのもありますし。

 サブだと稀咲とふかみが双璧で好き。
 稀咲はしかし過去の関わりから思い入れに至る過程に随分と正確に似合わないメルヘンな色合いがあるなと思いつつ、色んな意味で話をガラッと大きく動かす力と才を持っていて、この舞台上での魅力が引き出しやすいキャラだったと思いますね。個人的にポーレットと政策論争してる様相とかなんかすごくしっくりくるの。。。
 ふかみはまああの年で川下りを実質支えてるという設定の無茶はともかく、そういう視座があるゆえの大人と子供の幽玄がかなり顕著で、いかにも咲き掛け、という雰囲気は精神的なロリコンにヒットする立ち位置じゃないかと(笑)。性格や見た目も楚々として可愛いですしね。

 男キャラだと蓑笠の爺ちゃんが好きだなあ。飄然としつつ懐深く大抵の事は受け止め、受け入れてくれる鷹揚さと老獪さ、あれはいい味を出していたと。


CG(19/20)

 正直フルエモートの労力だけでも満点にしてもいいんじゃね?と思うくらいの部分はありつつ、素材としても多寡はあれ基本的に豪華絢爛で、ただ本質的にすごく好みに合致した絵柄、というわけではない部分、エモートモーション込みでもこれは!って言い切れるほどの一枚絵はそこまで多くはなかったからなあ、というところで。

 立ち絵に関してはやはり素晴らしいの一言。
 ポーズ絡みに関しては全部エモート制御なので、どうしても画一的になってしまうのはあれ、それぞれのキャラらしさは細かいところと組み合わせでいくらでも引き出せるという点に価値は絶大だなあと思います。元のポーズや腕差分なんかでしっかり個性は感じるしね。
 立ち姿的にはポーレット、日々姫、稀咲あたりが特に好きかな。

 服飾は本当にキャラによりけり、ではあるけれど、メインヒロインは私服が数種類もあったりと、日常感を阻害しない綿密な配慮と拘りを感じさせるし、キャラ数自体も多いから必要充分過ぎると言えるでしょう。
 特にお気に入りは日々姫の制服と私服D、ポーレットの私服D。
 その他はハチロク常務服、パジャマ、日々姫パジャマ、私服AC、ポーレット常務服、スーツ、私服C、稀咲制服、スーツ、ふかみ法被、私服Eあたりですね。

 表情差分もまたエモート制御でかなり組み合わせ自在なのでもう個別に挙げるのは無理線ですよね、って話。ただやはり基本的に日々姫とポーレットは全力で可愛かったし、リアクションも含めて最高だったなあと。
 単純に一番立ち絵で印象深いのはやっぱりポーレットルートの市役所での助力呼びかけのシーンかなあ。あの表情は本当に素敵で貰い泣きするわ。。。

 1枚絵は全部で111枚と質量ともに水準は軽くクリア、かつ全部がエモートで動くという狂気の沙汰(笑)を一切手抜きを感じさせずにやり遂げているので、まあこれを見るためだけでも十二分に買う価値はあるぞと言っておきたいところ。動かし方のクオリティなんかはそれぞれ好みや意見も出そうではあれ、本当に楽しませてくださってありがとうございますと。

 特にお気に入りは4枚。
 1枚目は夜の駅で、この横目に初々しく愛らしいポーレットの反応と、甘かったです!の破壊力のコンボは素晴らしかったと。
 2枚目は改札デート、時代を超えて出会った二人の繋がりの尊さと歓びがすごく風景と噛み合ったすてきな1枚だなと。
 3枚目は背中拭き、恥じらいと信頼を等分に滲ませつつ、それでも少し素直に頼る強さを見つけた日々姫のいじらしさが綺麗に背中に投影されているなと。
 4枚目は日々姫仕事着Hb、この華奢でスレンダーなボディのラインの艶めかしさと美しさが一番よく映える体位だったなと思うし、超可愛いです。

 その他お気に入りはページ順に、日々姫と再会、目覚めたハチロク、眠るれいな、二人のお城、エサやりふかみクマ川下り、客車試験、出発のベル、混乱、日々姫とハチロク、雨の中、お風呂で、シーリング、布団の中で、イラスト描き、決断、キス、お風呂で、レイルロオドたち、プレッシャー、夜歩く、対決、告白、未来へ、デート、出会い、森歩き、一息入れて、介抱、開放、議会、出発進行、川遊び、稀咲告白、ハチロク初Hc、制服ab、お風呂b、寝間着b、日々姫初Hab、制服b、お風呂ab、ポーレット初Hab、制服ab、お風呂ab、れいな初Hab、ふかみ法被ab、部屋ab、稀咲制服b、真闇ほろ酔いbあたりですね。


BGM(20/20)

 質量ともに豪華絢爛、というしかない仕上がりで、本当にこの独特の世界観、風光明媚な光景が目の前にガラッと広大に拓がっていくような感覚を味わわせてくれる曲が多く、それでいて派手過ぎず自然に調和ももたらしているというバランス感が絶妙だなと。

 ボーカル曲は空前絶後じゃね?と思うくらいの全部で12曲。メイン3人にグランドのOP、そしてそれぞれのEDと非常に多彩で、それぞれの特色をしっかり押さえた素晴らしいボーカル群になっており、まあ正直これだけでも満点つける価値はあるかなと思えましたね。
 全部紹介するのは辛いので(笑)、確実に年末ノミネートするだろうラインで区切っちゃいますけれど、まずハチロクOPの『レイル・ロマネスク』はどこか朴訥としたリズムから零れ出る閑寂さ、けれどその隙間から切々と伝わり、繋がっている想いの重さ、熱さが噛み締めるほどに感じられる、非常に風雅で奥行きのあるすごくすごく素敵な曲ですね。この作品内でも好き度合いは同率一位くらい、特にサビののびやかさは心に響いて大好きです。
 んでその双璧を為すのがポーレットOPの『SilentRail』、これは地味な曲ではあるけれど、森閑とした世界の中でたった一人、守りたいものを抱きしめて決然と背筋を伸ばしているような凛とした雰囲気、純朴な透明感が満ち満ちていて、流麗としたメロディと切ない歌詞のコンビネーションも絶妙、またDメロがいい味を出していて本当に気に入ってます。
 グランドOPの『未来行き☆列車』も壮大でかなりいい曲ですね。ボーカルの性質とも噛み合って、あまねく広い世界にその思いが広がっていくというイメージと密接にリンクしてきますし、出だしの汽笛の音からしてもう狙いすました高揚感を呼び起こすなと。こういうオケ的な曲はグランド向きですよねやっぱり。

 EDでは日々姫EDの『Run with our dream』が不思議と一番好きだったりする。正直歌としてはあんまり上手くない気はするんだけど(笑)、この訥々としたリズム、畳みかけるサビの音律が妙に耳に残って離れずに、いつの間にかかなりお気に入りになってしまっていたというね。。。
 ハチロクEDの『どこまでも続くこの路を』がEDとしては一番王道的で完成度も高いかな、と思いますが、逆に綺麗に纏まり過ぎていてキャッチーに欠けるきらいもあり、好きだけど順位としては下がる感じ。
 ポーレットEDの『未来へのレール』もそんな感じで、曲単体としては好きだけど他のインパクトがかなり強いのでやや埋没気味というところ、後は『ひとしずく』あたりかな。

 BGMは登録数だけで見ると膨大だけど、まあ半分以上はアレンジでもあるので、純粋な数でみると大体35曲くらい、まあ無論それでも水準は軽くクリアしているし、当然アレンジで幅を出すことによって世界観の精緻なあわいを上手く調べで紡いでいるってところもあるでしょうから、字面通りに量としても評価できるし、質も安定して高いです。

 特にお気に入りは2曲。
 1曲目は『こんな晴れた日は』、日常曲としては豪華すぎるくらいにきらめきと華やぎを感じさせる、それでいて落ち着きと情緒もしっかりと孕んだ旋律は本当に綺麗で、いつまでもその曲の調べと、その旋律が似合う風景に佇んでいたいと思わせる魔力があります。
 2曲目は『乙女の吐息』、全体的に切ないイメージを強調しつつも、それを発条に強くしなやかに前に進んでいくイメージが、順々の音の重なりと零れ方に示されていて、すごく優しくて素敵な曲だなあと思いますね。

 その他お気に入りは『緑の息吹』『果てなき軌条』『古の郷』『雨上がり 君と二人』『思いは風に乗って』『いつもいっしょ』『胸の奥のずっと深いトコで』『新緑の頃』『水面の空』『星降る夜に』『午後は二人で』『Time goes by』『熱帯夜』『想いは密かに』『ポーレットのテーマ』『心の雫』『胸の奥でずっと』あたりですね。アレンジ系はキリがないし、特に、とまでのはなかったので割愛しました。。。


システム(10/10)

 演出はそりゃまあフルエモートで文句つけられるもんならつけてみろ、ってところではありますよね。。。
 まあでもそこに胡坐をかくでなく、しっかり一シーンごとにその滋養系に見合った演出効果を組み込んで、多彩さと臨場感、自然な繋がりまできちんと見せられているし、1枚絵ともシームレスに連動している感じで本当に見事でした。素晴らしいお仕事だと思います。
 ムービーは種類を多く作った分だけ、極端にインパクトのある、というものはないんですが、それでも一つ一つに個性と意味づけがしっかり為されていて、イメージカラー含めて私はやはりポーレットOPのが一番好きかな。

 システムも非常に便利ですね。
 シーンセレクト機能にシークバーで随意のシーンに即座に移動できる機能まで完備して、ブックマーク管理こそあれぶっちゃけほぼほぼ使う必要もなく楽しめちゃうし、今みたく感想書くのにあのしーんもっかい見ときたい、なんて思ってもすぐ引き出せちゃうのは本当に素晴らしい。
 それ以外の基礎的な部分でも不備はないし、TIPSにまでボイス実装してたり、鑑賞画面も操作性抜群だったりと痒い所に手が届く感じで文句なしです。


総合(93/100)

 総プレイ時間24時間くらい。共通4時間、メイン3人の個別がシーン回想まで込みで4〜4.5時間、サブが1〜1.5時間でグランドも1時間ちょいくらいの勘定ですね。
 見た目のイメージと違って結構硬派なシナリオでありつつ、でも全力でロリゲーでもあるという中々複雑怪奇な作品ですが、その制作に込めた意欲と熱意、そして表現したいテーマに関しては非常にくっきりわかりやすく示されており、読後感の清々しい楽しめる作品、と言えるでしょう。
 ただしシナリオ面においては恣意的な部分も多く、その割にファジーな点、引っ掛かりを覚えるところも少なくなかったりと、情感の上では諸手を挙げて絶賛できるけど、理路においては及第点くらいかなあという温度差が顕著な作品ではあると思うし、過程の苦難でなく発想の呻吟に比重が重く置かれた語り口でもあるので、その辺は厳しく見れば割引材料にはなるでしょうと。

 んでもそういう細やかな欠点を打ち消して余りある長所が沢山ある作品ですし、鉄道好きでなくともロリスキーでなくとも普通にお勧めできる水準にある作品だと思います。個人的にはやっぱりポーレットが超お勧めですなー。
posted by クローバー at 04:35| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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