2016年04月14日

時を紡ぐ約束

 体験版の内容的にはそこまで惹かれなかったんですが、ヒロインで最初から断然好きだなーと思ってた唯依が遥そらさんだったので、その時点で陥落するしかなかったというか。。。

シナリオ(18/30)

 終わりよければ、と単純には言えなくて。


 主人公は幼い頃に母親に捨てられ、孤児院で育ちました。
 その境遇から簡単に人を信じることが出来ずにいたものの、奔放で前向きな女の子、紗枝と関わりを持ち、力を合わせて劣悪な環境でも頑張っていく前向きさを少しずつ取り戻していき、やがてその仲間にやはり母親に捨てられて孤独の中にいた未莉が加わって、疑似家族として日々を過ごしていました。
 しかしある時、施設内の暴力沙汰に紗枝が巻き込まれ死亡するという痛ましい事件が起こり、挙句それを自殺として公表し世間に糊塗した施設のやり口に憤懣と絶望を覚えた主人公は、三人で過ごすようになってからは願掛けも込めてみりあ、と呼んでいた少女の手を取り、施設を出奔します。

 けれど、どう見ても訳ありの子連れの若い男をまともに雇ってくれるような場所もなく、様々な土地を転々とした二人は、住み込みの仕事の面接を受けるために風光明媚な温泉地・湯之原へと流れつきます。
 迎えてくれた草壁庵は、当地でも老舗の旅館であり、ほぼ家族経営をしていて、いきなり現れた主人公達は当然訝しげな視線を向けられるものの、それまでの経緯や苦労に同情し、かつみりあが主人公に懐いていることを決め手に住み込みで迎え入れてくれることとなり、加えて以前の施設にも預かりの保証人になってくれるという温情を与えてもらえて。
 更には主人公に、きちんと学園を卒業すべきと、若女将である美咲が通うところと同じ場所に転入する手配までしてくれて、その恩に報いるために主人公は力を尽くそうと決意します。

 主人公にはもうひとつ、不思議な秘密がありました。
 それは、母親から受け継いだ、時を紡ぐ魔法。自分自身が出来ることを、同じだけの時間を魔法の構成に集中することで完璧に再現することができるという力。
 これまで主人公はそれをほとんど無価値なものだと見做していましたが、自分の為だけでなく、誰かの為に時間を費やしていく中でなら、それが意味を持つ場面もあるのではないかと考えるのです。

 旅館の仕事に従事しつつ、いよいよ学園に通うことになった主人公は、クラスメイトになった心春や桜、忠信らから温かく迎えられ、また学年の違う唯依や穂乃香とも、珍しい転入生の噂をきっかけに知己となり、とりわけ唯依は主人公同様に草壁庵で働くようになって、そうして様々な仲間、友人がいきなり増えて戸惑いつつも、その温もりに、ずっと頑なに閉ざしていた心が解けていくのを実感して。
 彼らならきっと受け入れてくれると、魔法の事を含めて自身の境涯をさらけ出し、期待通りに受け止めてもらえたことで、益々彼らの為に自分が助けになることがあれば、と思う中で、その視線は少しずつ一人の少女に強く惹かれていき、その選択がこれから紡ぐ時の形を、未来の姿を決めていくことになります。

 これは、心傷つきながらも懸命に前を向き、手を取り合って進んでいく人の強さ、絆の尊さを綴った、希望と成長の物語です。


 あらすじはこんな感じでしょうか。
 大枠としてはシンプルに、自身の傷や葛藤と向き合いつつも、好きになった女の子が抱える問題にも一緒に体当たりで向き合っていき、その過程でより絆と愛を深め、かけがえのない温かな未来を手にするために奮闘する、という構図になります。

 テキストは全体的にちょっと理屈っぽさが先に立ち、説明が先に立ってテンポがイマイチよくなかったり、言い回しや語句の選択にまどろっこしい部分は見受けられるものの、基本的にはそつなく、丁寧にまとめられているかなと思います。
 まあ会話のやり取りがそこまで面白くはない、というのと、あと総体的に発想が古めかしいというか、昭和的な感性が色濃く表に出ている、という部分で、シンプルな読み口としても若干癖は強く、合う合わないはありそうな気はしますが、おっさん世代としてはまあ許容範囲かなってところで(笑)。
 ただし心春ルートだけは、ただでさえつまらない会話が一段と空疎で水増し感満載になるので、そこは流石にフォローできないかなぁ、という感じ。

 ルート構成は、選択肢自体がほとんどなく、基本的には好みのヒロインの心情に沿った選択を選べばOKというところ。
 一応美咲はルートロックがかかっていて、あの感じだと最悪いきなりプレイしてもいいような二重ロック構造っぽいけれど、内容的にもすべてのルートのいいとこどり、みたいなグランド的な構造になっているので、素直に一番最後に攻略推奨ですね。他三人はどういう順でも構わないと思います。


 シナリオ的にはこう、基本的に人情譚、感涙劇をイデオロギー強めで見せたかったんだろうなぁ、っていう意欲はヒシヒシと伝わってきて、総体的に力みは感じるものの、少なくとも構成的に極端に大きな破綻はなく、おおよそプロットに対して精確に、綿密に作られているんだろうなあ、という印象。
 ただやはり総体的に、どうも感情の機微の変遷の紡ぎ方が雑駁で大味で、そのメリハリのスケールに読み手の共感がスッと一致してこないような部分が結構多く、またそのメリハリのつけ方に関してもどうにも安易に粗暴な展開が目立って、それがファクターとしてダイナミズムを呼び込む、というプラス面を、画一的な構図が打ち消してしまっている感じはありました。

 まず引っかかるのはやはり共通で、主人公の過去、凄絶な体験と絶望、そして施設の教育方針の摺り込みによる独特の観念、自己評価の低さを、意外と簡単に克服の途につけているというか、単純に家族同然に温かく迎えられ、友人にも恵まれて、それだけでコロッと変われるものなのか、ってところに重みが足りなかったなと。
 疑ってかかる、という言い方はアレだけど、どうしたって単純に他者に依拠したら、いずれ足元を掬われて傷つく、くらいの拗ねた観念はある中で、せめてもう少し実体的に、その価値観を根底から覆すくらいのイベント事象はあっても良かったんじゃないかな、とは思うんですよね。
 加えて主人公には、魔法、だなんて、常識では受け入れがたい要素も持ち合わせているのに、いくらそれを無価値と思い込んでいたからといって、あんな簡単にひけらかしてしまう、というのも、シナリオ展開上必須であるとはいえ軽薄、無警戒に過ぎないか、と感じてしまうのは否めないところです。このあたりの土台固めがしっくりこない弊害が、それぞれの個別に入っても少なからず影響を及ぼしている部分はあるなと思います。

 その上での個別は、やはり多かれ少なかれ上に書いた問題点が払拭されてはいない、というところと、あとシナリオ全体としての整合性を微妙に危うくするイベント展開、心理要素が結構散見するところに雑さを感じつつ、まあそれでも見せたいテーマにはしっかり寄り添っているかな、という感じ。

 さしあたりの個別評価としては、美咲=唯依>>穂乃香>>>心春くらいですかね。
 下から順に触れていくと、心春はまず、上で書いたようにテキストが悲しいほどに面白くない、というのはまずあるのと、あとやはり一番気に入らないのは取っ掛かりの展開かなと。
 少なくとも生徒会、ってのは、生徒が健全な学生生活を送るのをサポートするためにあるわけで、そして学生の本分は学問であり、当然学問の上で頑張った子にはそれなりのメリット、進学やその後の将来にプラスのファクターがあるのは当たり前の話で。
 なのに生徒会の権威を守るためだけに、その絶対的な権利を侵害しようとする考え方が最初に出てくる時点でもう生徒会として失格だし、だからこそそれに反発し、発奮してああいう展開になることそのものは間違ってないんです。

 ただこれ、共通での中間テスト結果を踏まえての展開なので、主人公とヒロインの道行きに無関係の外的要因ではあり、だとすれば他ルートでそれが発生しなかった理由をつけられない、ってのがあり、例え主人公の目の届かないところで同じ事象があったとして、じゃあなんでそこでは発奮しなかったの?と矛盾が生じるわけで。
 少なくともこの心春ルート序盤の書かれ方だと、主人公の存在に支えられているからこそ前向きに立ち向かう勇気を持てた、という要素は抽出できないし、その視座も含め、二重の意味で有り得ない、と思わせてしまう展開なんですよねこれって。
 総体的に見たとき、生徒会は行き過ぎの部分もあるけれど、彼らなりに学園を思っての行動をしているという、信念を貫くがゆえに悪的な要素も散見してしまう、くらいのスタンスに収めたいという意図は垣間見えるのに、それすらこの点が台無しにしてるなあ、というのが大きな不満です。

 大枠との整合性も含めて考えるなら、せめてあの時点で、優秀な心春を取り込みに、例えば次期副会長になれ、くらいの事を言われて、色々迷う中、主人公との関係に勇気をもらって、体制内改革でなく、体制外改革を目指す、という決断に至るくらいの匙加減にしておくべきだったんじゃないかなと。
 そうすれば他のルートで、結局勇気が足りずにどちらにも踏み込めなかった、という理屈が成り立つし、また美咲シナリオでは、二人の行動に同様の勇気をもらって、という絵図がきちんと矛盾なく紡げると思うんですけどね。

 そして、取っ掛かりが宜しくなかったことに加え、そこから先は本当に尺に対して中身が乏しいというか、ネタバレ上等でざっくり書いてしまえば、生徒会長になるためにまずテストで一位になり、選挙活動して、当選して学園祭を主催して、ってそれだけの話なんですよねこれ。
 そしてその中で物理的・心理的な山谷があればいいんですけど、総じてその要素が薄く、また主人公が傍にいることによる意味、価値というのがあまりにも弱い構造になっています。逆説的にみて、美咲シナリオで心春が単独であれだけ出来ることに矛盾を生じさせてない、という点では全体構造に寄与してるな、って思うくらい、単純にこう、目標達成したら本格的にイチャラブできるー!的な人参要素以外、少なくとも能力面に対する影響がないからどうしても物語として淡泊だなあ、ってなっちゃいます。
 それでやり取りも面白くない、他ヒロインに比べるとえちぃシーンも削られてて、ってなったら、やっぱり総合的な評価の中ではこの位置になっちゃうのもむべなるかな、というところですね。心春自体はいいキャラだと思うんですけど、その魅力、ポテンシャルを上手く引き出すだけのシナリオの下支えは全くなかったと断じてもいいかと。

 穂乃香は逆に、山谷要素を色々短い期間の中に盛り込み過ぎていて、緩急があり過ぎる中で心情的な変化に追いつけない、ってのが目立つのと、あとどうしても本格的に粗暴さが剥き出しの殺伐とした内容なので、その辺も好き嫌いは如実に出ちゃうんじゃないかなと。まあ逆に言うと、魔法も一番実践的に活躍してるし、ダイナミズム、と括るには釈然としないものはあるけれど、ハラハラドキドキはさせられるという意味での面白さはあるんですけれど。
 あとやはりこのルート最大のマイナス要素は、事態の変化の取っ掛かりが外的要因であることなんですよね。少なくとも主人公と穂乃香の距離が近づいたことが、直接的にチンピラ同士の抗争が勃発する火種に、契機に紐づいてはいない構造ではあり、その抗争がじゃあ他ルートではなんで起きなかったのか?という部分に、納得のいく説明がつけられないじゃないかと。
 ましてその抗争が拡大していく中で、まさかの無法地帯学園なんて昭和も昭和過ぎる展開に持ち込んじゃってるから、余計に他ルートとの整合性で???となっちゃうんですよねー。

 まあ好意的に見たとき、うわき君があんなであることを念頭に、所詮無思慮のボンクラ、チンピラの考えることだから筋道なんて通ってないし、たまさかの可能性がそこで発露しただけだよ、という甘い考え方もありますけれど、それはリアルとしてはアリかもだけど、物語のリアリティを紡ぐ上では認めちゃいけない部分じゃないかなと私は思っています。
 このルートに限らず、感情の変遷においてすごくリアルっぽい軽薄さ、人の弱さ、どうしようもなさをポンッと投げ込むシーンは結構あって、それはもしかすると意図的なのかな、と思う向きもあるけれど、それを前面に押し出すとするなら、最低限理屈でも読み解ける伏線や下支えがないと、やはり物語の中で段階を追って心情に添おうとしている中で、いきなり梯子を外されたような感覚に読み手が陥る、という弊害は免れないということですね。

 ただ少なくとも心春に比べると、そもそもの好きになる発端はしっかりしている、その上で彼女の夢と現実との折り合いの中での二人三脚の苦闘、という部分はそれなりに丁寧に、情感的に紡げていると思うし、まああの事務所のあり方もやたらと堅気っぽさのない、昔がてら、という風体が強すぎて、今時の世情、常識観念からは乖離している気はしますが、その辺は物語の演出、という範疇で折り合えるかなと。
 紆余曲折と失敗、頓挫を繰り返しながらも夢を諦めずに、それを一番正しく発現出来る地平に辿り着くために、という精神性は、穂乃香というヒロインをきちんと魅力的に見せていたと思いますし、けれどやっぱり本気で殺伐とし過ぎてるから、ここまで人命が軽く扱われてると鼻白む部分はない、とは言えない、結局微妙、くらいの評価には落ち着いちゃうと。

 唯依シナリオの評価に関しては、単純にヒロインへの好みが強く反映されていることは否めないです。。。
 理屈づけるとすれば、心春シナリオよりは余程イチャラブが濃密で触れ合いにも面白さ、むずかゆさとあまやかさが満ちている、そして穂乃香シナリオほどダイナミズムはないけれど、シナリオの緩急はそれなりにあるし、特に心理的要素においては、苦難を発条に立ち上がる、成長していくという点がしっかり込められていて、総合的に一番バランスがとれているシナリオだった、というところですかね。
 ただしこのルートも良くない部分はそれなりにあり、特に上で触れたリアルな心情の劇的な投入、という点では、絵を破られたシーン、母親に衝撃の事実を持ち掛けられたシーンと、最低でもこの二ヵ所は読み手の感覚置き去りで矯激な反応に至ってしまっているのが惜しいなと。

 裏を返せば唯依というヒロインは、それだけ芸術家的な感性が強く出ていて、その分様々な事柄に繊細で鋭敏で、傷つきやすい子だって見方も出来るのですけど、いざその場面に出くわしたときに、おいおいそこまでかよ、と読み手に思わせない事前のフォローの置き方はもうちょっと上手く出来たんじゃないかなと感じます。
 どうしてもそういう突発的な拒絶反応は、ヒロインの魅力に対するマイナス要素に繋がりかねないですし、またここでの拒否反応が強いほど、グランドでそれをあっさり克服し、受け入れているという構図に対する矛盾感が色濃く出てしまうので、その辺はもっと繊細な配慮が欲しかったなとは思いますね。本当に好きな子だけにそこは苦渋なのです。

 そこを除けば、展開的に地味ではあるけれどすごく心が温まる流れではあり、変な持ち上げや飛躍もなく堅実な構図で、その上で基本的にイチャラブメインでもあったので結構満足はしてますね。ただ穂乃香を先にやってしまったこともあり、不穏な空気が仄めかされるたびに、また安直な暴力展開に持ち込むのかなあ、って冷や冷やが先に立って、安心してその温もりに浸りきれない、って憾みもあったりで、やはり穂乃香シナリオは色んな意味でやり過ぎだったと思うのです。。。
 あと個人的にこのシナリオで好きなのはエピローグ、二人の地に足のついた選択のありようもいいんですけど、それ以上にこのシーンでの唯依の一枚絵が超――――――かわええっっ!!って感じで、その愛らしさを残しつつの成長、という部分をこれだけくっきり一枚絵で示しきれているのは見事だったなと。
 美咲シナリオのお祭りシーンで、心を突き動かす芸術の力を喝采してましたけど、あの紅吹雪のシーンも確かにあがったけど、私が一番この作品プレイして盛り上がったのはこの一枚絵を見た時だったと思いますね(笑)。

 んで最後に美咲シナリオ、これは逆に、グランドとするともう一押し何かが足りないんじゃないかなって思います。
 草壁庵が危機に陥る取っ掛かりと、それによるみりあの処遇の変遷に関しては、まあ最低限他ルートでは起きない、という理由づけにはなっているかな、とは思います。まあ他ルートで例のストーカー野郎が自然に意気消沈して退去してくれているという都合の良さは飲み込まないとですけれど。

 ともあれ他ルートに比べて明らかにマイナスの局面からのスタートの中で、一致団結、とりわけ美咲を中心に据えてという中で、より美咲に寄り添っての前向きな活動と、そこから育まれた起死回生の方針への辿り着き、そしてその踏ん張りの姿が、様々な相手に心理的な影響を与えていく構図そのものはいかにもグランド的で、他ルートでの説明で触れたように、些か外的要因の処置で躓いている部分はあると思うんだけど、その辺はファジーに解釈すれば何とか、というところで、極端な破綻は招いていないだろうと。
 そうして他ヒロインがそれぞれに潜在能力を発揮して、それを大きな再興の流れに組み込んでいく、というつくりそのものは当然読んでいて気持ちいい部分ですし、話が膨らんでいくほどに気弱になる美咲を支えていくうちに距離も近づいて、という筋立てとの並行的な展開も説得力はあると思います。

 ただし他ルート、特に唯依ルートあたりに比較すると、大枠での復興事案がかなり尺を取るので、その分だけ純粋なイチャラブ成分は薄めになっているかな、というのはありますね。
 加えてその復興事案の骨子である共同での祭り開催の進行管理に関しても、それこそ心春ルートでも見え隠れしていた心春の万能に依存しているところは多く、序盤のアイデア出しの部分でこそみんなで呻吟して、という絵面はあるけれど、そこをクリアしてしまえばあとは結構とんとん拍子に進んでしまって、実際的な活動の中での不備や苦闘などがほぼほぼクローズアップされていないのは片手落ち、という印象はあります。
 そもそも祭りをやるにあたって、温泉組合の一存でそこまで出来るの?的な疑問もあるし、より地域住民と密着した形での軋轢や、そこからのプラスファクターを提示することも可能だったのではと思えて。
 
 正直個別ルートを付随させた形でのグランドとしては順風満帆過ぎると思うんですよね。
 例えばまいてつのグランドみたいにヒロインルートではない、という割り切りの中での最善を汲み取るならそれでもいいけれど、あくまでも美咲がヒロインであるルートならば、より地元の生活に密着した問題の洗い出しや、その上で改めて湯之原の良さを噛み締めていく、それを当人達がこの流れだと上辺だけ、読み手に伝わらない部分でやってしまっていて、読み手との温度差はどうしても出てしまうだろう、ってのがあります。
 まあだからといって、穂乃香ルートみたいに安直な殺伐展開持ち込まれても困るのだけど(笑)、せめて終盤にもう一つ二つくらい、学園祭に比重を置かない街そのものの今後の展望に関わる問題が勃発して、それを解決することで改めてこの街の良さを感得し、みりあをここに連れ戻すんだという想いを新たに強めていく、という積み重ね、それこそ時が紡ぐ絆の重みをより実感させるだけの苦労はあっていいだろうと。ぶっちゃけその辺のフォローがないと、イメージとしてめっちゃ治安の悪い街だなーで終わっちゃうし。。。

 あとぶっちゃけ、このルートのギャグは寒すぎる。やたら古めかしいパロが多いし、正直マッサル関連なんか確実にいらんよね、って話で、そことか里中組とかアヒルショットとかに長々と尺を割くくらいなら、もう少し谷のイベントを埋め込んだり、イチャラブを組み込んだりのほうがよほどシナリオの印象として真っ当だったし建設的だったと思います。そもそもこれ、ギャグ要素がいるシナリオ骨子じゃないもん。
 面白おかしさによる笑いでなく、人の繋がりがもたらす温かみ、おかしみがもたらすクスリとした微笑みがあれば箸休めとしては充分に機能する、それだけ質としては感動要素の強い構成なわけだし、そういう意味で全体的にメリハリのつけ方がどこかずれてるんだよなあと感じます。

 結局その土台の脆さがあるせいで、祭りの後のお約束的な展開に関しても思い入れ切れない部分は出てくるし、そもそも玄馬の信念を折伏するだけの力強さをあれだけで本当に見せられたのか?って部分で疑義は残りますね。
 まあそれに関しては、生徒会の話でも触れたけど、信念を貫くゆえに表出する悪、という立ち位置の徹底的な作り込みが貫徹し切れてない、という部分にも関連はしてくるし、全体尺としてはフルプライスとして十分な量ではあるのだけど、素人目でももう少し削っていいだろそこ、ってテキストや展開が多く、逆にこの事案に関してはこそっとでも伏線引いとかないと後々奇抜過ぎるんじゃないか?ってところがスルーされてたりで。
 総じてみるとその細かな蓄積が、テーマとしては超王道、人の時間は誰かの為に用いることで複層的に価値を増していき、絆を育むことでより大きな可能性に、幸せな未来を紡ぐ約束になる、という部分の証明譚としての重みを削いでいるのかな、と感じますし、美咲シナリオとしてはよりテーマに重く付随しているだけに、余計に軽薄な部分が目立ったかなという点で、どうしてもあまり高くは評価し切れないなと思いました。
 なんかあれだね、キサラギGOLDSTARの紗弥ルート的な、シリアスなんだからギャグいらん!感ですねこれ。。。

 以上、全体として悪い作品ではない、のだけど、全体的にテーマにがっちり束縛された力みは感じるし、そのくせ読ませどころと力を抜くべきところでのテキストメイクの緩急がついてない、フラットに進めてしまっている感じはあって、感動要素は強いのにあまり心に響かない、という惜しいことになってるなあと。
 まあそれでも個人的にはこういう、骨格が凛然とわかりやすい作品は好きですし、どうせやるなら中途半端にギャグらずに、シリアス一辺倒でも良かったんじゃないかなと思うくらい。あといつものあっぷりけシナリオだときちんとしてる、細かな整合性の不備はどうしても出てるかな、ってとこで、最大限ストロングポイントを評価しても点数としてはこのくらいが妥当かなと感じましたね。


キャラ(20/20)

 正直に言えば、唯依がいなかったら満点はつけない仕上がりでしたね。
 なんていうかキャラ造詣として、仁義に厚い善人と、無思慮無鉄砲な悪徳そのもののチンピラ、って二極化、類型化が露骨で、本来その中間を埋めるべき存在の生徒会とか玄馬とかの存在感が上手く引き出せてなくて、ヒロインもみんな可愛いは可愛いけど、全員が全員魅力を引き出せてるか、っていうとそこまででもない、って感じで、本当に私としては唯依様々、君だけが癒しだよって内容ではありました。。。

 まあとにかく唯依の可愛さは素晴らしかったですねー。
 見た目からして抜群に愛らしくど真ん中ストライク、挙措も可愛げが強くて、性格的にも控えめでありながら一途で献身的で情熱的でもあり、そして弱々しくはあっても底の部分に芯の強さを秘めていて、自分のやるべき道を見出したら一歩ずつでもしっかり前に進める強さもあって、ああ、いい子だなあと。
 多少打たれ弱すぎる、傷つきやすい部分が露骨にクローズアップされてるシナリオ構造はドンマイですけれど、まあそれすらも好きが先に来れば可愛いと思えるところだし、情誼に対しての繊細な部分も含めて、きちんとみりあとも家族としてやっていけるしなやかさの裏返しでもあるんだろうなと。

 その上結構エロエロでもあったりで、こういう子が恥じらいながらも切々と求めてくれる、っていうのはきゅんとくるものがありますよねやっぱり。そういうののとどめに、ラストの一枚絵のにっこりの破壊力が神がかっていて、ぐわぁぁぁ、ちょっとこの成長した唯依とイチャエロさせてくれませんかねぇぇぇっっ!!と血の涙を流す私(笑)。いやこのセミロングといい柄ストッキングといい素敵すぎるわ。
 無論CV的にも大満足。控えめな中にも芯がある、その清廉さ、透明感と強さの兼ね備えが絶妙に嵌ってたし、あと何気にグランドでのはっちゃけぶりも可愛かったしね。なんか大図書館の佳奈っぽいはじけ方で可愛かったよねーと。

 次いでは迷うけど一応美咲かなぁ。
 ストレートに意地っ張りな部分もありつつ、性質から気質からそこかしこにほっとけない弱さが漏れ出していて、実際に支えがないとしっかりはやってけない子だと思うけど、その甘えと、それでも純粋に好きなものに一途に向かっていく誠実さは、確かに守ってあげたいと思わせる魅力はあったと思います。
 シナリオ的にイチャラブに尺が割き辛い構図だったのは勿体なかったですし、同居なんて美味しい要素もってながら他ルートではやたら影が薄かったりと不遇な部分も感じつつ、まあ普通に好き、って感じ。

 心春の万能なのに頼りたい甘えたい的なバランス感はそこそこ好きだったし、穂乃香の飄然とした裏側の切なる想いの強さ、情熱も素敵でしたけど、まあシナリオ面含めてプッシュできるほどではないかなぁ。
 個人的に桜はかなり可愛かったので惜しいなと思いつつも、まあ彼女は忠信とくっつくといいさ、と割り切れるくらいの愛着ではあるかな(笑)。
 草壁庵の面々は本当にみんな温かくていい人達だったし、みりあも狙い過ぎ、って部分はあれいいアクセントになってて、生活感の中での雰囲気は本当に素敵な部分でしたかね。


CG(17/20)

 全体的に量としては水準、質はやはりそんなに素晴らしい、と言えるものではなく点数的にも本来はもう一点下にすべきところなんですが、本当に一枚だけ鬼のように好きだー!って魂が叫んだのがあって、それに報いる感じで上乗せしてます。。。

 立ち絵に関しては水準にはちょっと足りないくらいかな。
 ポーズはヒロインで2種類、サブで基本1種類(なぜかみりあだけ3種類あるけれど)とやや少なめ、腕差分などもないので躍動感には乏しく、キャラらしさもあまり深くまでは引き出せてない感じ。
 お気に入りは唯依正面、やや左、美咲やや右、穂乃香見返り、桜、美里、みりあバッテンあたりです。

 服飾はヒロインで3〜4種類、サブは1種類でみりあだけ3種類、ここも必要最低限、という形ではあり、デザイン的にもそこまで惹かれるものは少なかったかなと。
 お気に入りは唯依制服、私服、仲居、美咲和服、パジャマ、心春私服、浴衣、穂乃香制服、私服くらいですかね。

 表情差分もそこまで多くはなく、そこそこ遊びも含みつつ細やかな個性は出ているけれど総合的にはそこまででもなし、ただ個人的にはすごく唯依の立ち絵は全般的に可愛くて好きだったなあと。
 特にお気に入りは唯依思案1、このしたりとした猫口が可愛くて可愛くて。
 その他お気に入りは、唯依笑顔、照れ、照れ笑い、微笑、ジト目、はわわ、美咲笑顔、どや顔、微笑、照れ、心春笑顔、照れ、哀しみ、怒り、穂乃香てへ、照れ焦り、照れ、みりあ眠い、桜にっこり、照れ、美里笑顔あたりですね。


 1枚絵は通常95枚、SD6枚で計101枚と水準は充分にクリア、質的には正直荒い部分は目立つかな、とは思うのですが、素朴で愛らしい雰囲気は作風にはマッチしていると思います。

 特にお気に入りは唯依エピローグ、上の方でも散々触れたけど、この1枚で見せる唯依の成長と変わらない魅力、大人びた雰囲気の中に垣間見せる少女の愛らしさとにっこりの破壊力が凄まじくって、本気でこの1枚だけで買っといてよかったと思えるくらいではありました。。。

 その他お気に入りはページ順に、心春お弁当、相合傘、対峙、手つなぎ、お祭り!、正常位、バック、背面座位、ホールド、穂乃香病院で、挨拶、キス、猫耳、愛撫、正常位、騎乗位、唯依お風呂遭遇、にぎにぎ、膝抱き、涙、花火、キス、愛撫、正常位、フェラ、騎乗位、背面屈曲位、背面座位、美咲涙、夜空の下でキス、添い寝、お風呂、みんなでお風呂、挨拶、メッセージ、ずっと一緒に、正常位、背面屈曲位、バック、騎乗位、立ちバック、帰宅、別れ、再会あたりですね。


BGM(19/20)

 非常に情感に溢れた素敵な楽曲群で、特に日常風景の描写が素晴らしく美しくて、延々と雰囲気に浸っていたい魅力がありますね。

 ボーカル曲は4曲。
 OPの『スケッチブック』は、透明で涼やかな中に情味が溢れ、彩が増して繋がっていくイメージがくっきり描き出される中々に素敵な曲で、派手さはないけれどBメロあたりの安らぎはとて気に入ってますね。
 挿入歌の『君と紡ぐ歌』はストレートな想いが切々とシンプルなメロディラインと伴奏に下支えされて綺麗に紡がれていて、その柔らかさ、優しさは中々いいですが、名曲揃いのこの作品の中では一番落ちるかなと。
 挿入歌の『紅吹雪』はわかりやすく華暦の系譜を継ぐ和ロック、流石にあれに比べると総体的な迫力や構成力で落ちる部分はあるけれど、話としてすごく盛り上がる場面でかかるし、その疾走感、気風の良さと歯切れよさは耳に心地よく、この中では一番好きな曲です。
 EDの『かけがえのない時間』はいかにもグランドEDらしい悠遠な時間の連なりの先にある輝きを、幸せを、すみやかなボーカルと優しいメロディラインが美しく彩っていて、これもかなり好きな曲ですね。特にサビの旋律の高音域の響きがとても気に入ってます。

 BGMはアレンジ込みで全部で30曲と量的にはほぼ水準、質的には本当に日常の雰囲気づくりと、あとはやはり心に染み入る感動的な場面の曲はすごくいい出来で、これはサントラ付き買って大正解だなーと悦に浸っております。
 特にお気に入りは『星空の彼方』、このどこまでも吸い込まれそうな、夜空の広がりと夜の静謐をくっきりと写し取っている素晴らしい旋律には感銘しきりですねー。
 その他お気に入りは『The flow of time』『湯之原温泉街の朝』『温泉宿の生活』『夕日に染まる湯煙』『YUI一の衣を纏いし乙女』『大切なこと』『思い出の中の母』『草壁庵』『楽しい日常の過ごし方』『YU・A・TA・RI』『心解き放たれる時』『いつか去りゆく』『ただひたすらに』『ウキウキショッピング』『新しい一歩へ』『自分が自分でなくなる大切な場所』『スケッチブックArr.−未来へ−』あたりですね。


システム(9/10)

 演出的にはまあそこそこですかね。
 それなりにキャラは動くし、音や背景効果とセットで臨場感は結構しっかりと出せていて、動きの少ない作品の割には頑張っていると思うし、要所では特殊1枚絵も駆使して色々と工夫も感じられるかなと。シーンイメージもしっかり作ってきてるし、魅せるべき場面をちゃんと引き立てる演出は出来ていると。
 ムービーもきちんと2種類使い分けて、そのシナリオの流れのイメージをしっかり担保しつつ、曲調に合わせたスタイリッシュな雰囲気も悪くないかなと思います。

 システム的にはまあほぼ問題はなし。いつもながらのフローチャートとシナリオセレクト完備でプレイ感は楽々だし、ジャンプも高速だし、必要な項目は揃っているので充分かなと。


総合(83/100)

 総プレイ時間19時間。共通4時間、個別が3〜4時間くらいですね。
 尺としては充分なれど、絶対的に間延び感はあり、特に心春シナリオあたりは無為な会話での水増し感はかなり強いんじゃないかなと思いつつ、やっぱり少しテキストメイクの配分的にメリハリのつけ方が良くはないな、ってのが弊害として出ている感じですね。
 ところどころにきらりと光る部分はあり、その辺ピックアップしていったらそれなりに点数としては普通にはなったけど、プレイヤーの感性にピタッと嵌る間口が結構狭い作品ではあると思うので、体験版で首を傾げるようなら最後まで納得しがたいところは残る作品にはなっちゃうかと。深く考えずとも、感動要素を前面に押し出した作品としてはちょっと荒いし底が浅い、というイメージにはなってきそうで、私みたいにとことん好きな子がいる、とかでもない限り積極的にお勧めはしにくいかな、って感じはします。

 でも私としては唯依がほんっっっとうに可愛かったのでプレイしてよかったとは思ってますけれどもねー。
posted by クローバー at 05:42| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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