2016年04月28日

Steins;gate 0

 歴史に残る大傑作のシュタインズ・ゲートはこれまで派生作品も多く発表されてきましたが、その中でもこれはシュタインズ・ゲート線に向かうための戦いを綴った正統続編、という位置づけだったので買ってみました。


シナリオ(25/30)

 この作品は、本編最終章の、境界線上のシュタインズ・ゲートにおいて、一回目に紅莉栖を救いに行って失敗した後、改めてもう一度救うために立ち上がるための執念の15年、その端緒を綴った中間譚となっています。

 自らの手で紅莉栖を刺殺してしまった絶望から、鈴羽の再三の促しにも関わらずに、二度とタイムマシンに乗らず、時空に干渉することなく、分相応に生きていこうと縮こまってしまった岡部倫太郎。
 そうなっておよそ三か月後、とあるセミナーで、かつて紅莉栖が所属していた研究室のレスキネン教授が来日し、紅莉栖の理論に基づいて、自我のある人工知能、通称アマデウスの開発を発表します。しかしそれは神を畏れぬ所業だとばかりに非難が飛び交い、それに我慢できなくなった主人公が思わず擁護発言をしたことで教授と、その助手の真帆に一目置かれることに。
 改めてのパーティーで彼らと話し合い、自身が紅莉栖の知己であったことを表明すると、だったら主人公に、アマデウスの中にあるもう一つのAI人格、すなわち生前の紅莉栖との対話テスターにならないかと依頼され、そこで繰り広げられる懐かしい会話のリズムに、雰囲気に、ダメだと思いつつ頷いてしまいます。

 まゆりを助けるために紅莉栖の死を看過したα世界線。
 その世界ではいずれ第三次世界大戦が起こり、破滅的な未来が待っているとしても、それはまだ先の事だと思い込んで目を逸らしていましたが、しかし破滅の足音はすでに間近にまで迫っていました。
 その契機となったのは紅莉栖の遺産である、中鉢論文の元となるタイムマシン理論で、その為に一歩先んじたロシアに対抗すべく、様々な組織が別のアプローチで紅莉栖の知識を求めており、それは当然アマデウスも例外ではありませんでした。

 水面下で様々な抗争が繰り広げられる中、ついに主人公は久しぶりに、そして自身が発現したのでない世界線移動を頻繁に感知するようになっていき、それと同時に、紅莉栖の遺産にもっとも近しい真帆やレスキネンが狙われる煽りを食うように、主人公とその周りの面々にも危機が迫ってきます。
 引くも地獄、進むも地獄という過酷な現実を前に、果たして主人公はかつての気概を取り戻し、ごく僅かな可能性世界であるシュタインズ・ゲートへと辿り着く道筋を、未来の形を見出すことができるのでしょうか?
 これは、大きな痛みを超えてでも貫かれる、愛と信念の物語です。

 あらすじはこんな感じで、作品の性質上当然着地点は決まっており、けれどそこに辿り着くまでにやはり小さな世界線の分岐による派生未来が存在して、その脱落的なルートを潜り抜けて、全ての想いを糾合してあるべき未来へと邁進する流れになります。

 テキストは本編より勢いや重厚感がちょっと足りないかも、とは思うのですが、それはテキストそのものよりも主人公の厨二的牽引力の欠如や、複数キャラ視点採用による状況開示の簡便さがもたらす部分でもあり、まあ肝要な部分においては充分読み応えのある楽しい読み口だったと思います。

 ルート構成は、基本的に重要な場面で主体的に行動できるかで世界線が分岐していく流れでありつつ、地味にひっかけなどもあったりして、正史ルート分岐前のバッド分岐とかはそこまでの流れを踏まえると引っかかりやすいかなぁと。
 行動選択がそののちの未来を変えていく、というのは、ある意味で普通のADV的構造ではあるのだけど、ただしこの作品の場合そこに一々世界線変化が付随してくるので、その背景的な部分での解釈がこの作品は頓にややこしい気はしてます。そこが本編より評価できない最大のポイントと言ってもいい。

 シナリオ的には、作品全体の構造のロジカルな解釈の提示をある程度放棄する代わりに、多種多様に時空列を展開させて、いかに印象的に、重々しく、正史に至るまでの苦難、悲嘆、絶望と、そこから立ち上がる活力の生成過程を見せるか、という点に腐心している感じですね。
 その辺どうしても本編と比較してみてしまう部分が大きいので仕方ないと言えばそうだけど、特に気になっちゃうのは、何故そのタイミングで世界線が変化し、その結果として特定のキャラのあり方までがガラッと変容したりするのか、そのあたりに絶対的な正答を持ち込めず、なんとなくのイメージで納得するしかないところかなって。

 具体的に一番わかりやすい例を上げれば、12/15の一番最初の世界線変動感知においては、それがある場合とない場合の世界線で、主にかがりの在り方、そこから派生しての由季の在り方も大きく変動していて、けどじゃあ背後でどういう過去改変があり、その結果どうしてそうなったのか、という因果関係をスッキリまとめあげられるロジックを紡ぐための要素が読み手には提示されていないだろうという話。
 無論この時点で過去改変にまで至れる装置を持っているとすればあの国で、そしてかがりは元々はそことは敵対する立場の組織に拉致されていたのだから、その辺の介入があり、更に別の形で利用されそうになったところでトラブルがあって、なんておぼろげになら考えられるけど、結局その辺は国家レベルの権力なら、やろうと思えばなんでも出来るぜ、くらいのファジーさに支えられていて、完璧に世界の構成のロジックが整っていた本編に比べるとねぇ、となるわけで。

 その後の分岐にしても、些細な変化だとしても、あくまで対症的な措置の中でどう行動するか、という部分がどうして世界線の変容に繋がっていくのか、という理路の通った説明がしづらいし、普通のADVならこれでいいんだろうけど、ってとこなんですよね。
 その上でそこから時系列はポンポン飛ぶし、一応細くでも連続性はあるにせよ、読み手に対してただ見せたい悲嘆や過酷を鮮烈に提示するために、そういう簡便な構造にしちゃってる、という印象はぬぐえず、そのあたりも正しい未来に向けて一歩ずつ、一人の視点のみで泥中を泳ぐように進んでいく本編の重厚感と比べると、多少鼻白む部分はあったりなかったり。

 後はリーディング・シュタイナーの発現条件に関しても曖昧さは残るよねと。
 確かに2010年が、アトラクタフィールドレベルの変動がある年で、実際にそれが多発していると見做せば、このタイミングで新型脳炎、という解釈でそれが水面下に浮き上がってきた土壌は説明できるけれど、でも実際にそれだけの人間が見る幻覚的な別世界線を主人公が全部覚知しているかといえばそうでもない、ってところがポイント。
 まあ多分、本編での宝くじの時みたいにほんの僅かな世界線変動でも、それが自身の身の回りの変化に直結するなら感知して、そうでないならしない、という線引きは出来るのかなと思うし、裏を返せばそれだけ細かい世界線変動は頻発していると。ただそれが本筋ルートでのクリスマス以降のような極大的な影響を及ぼすものなら、ほぼあらゆる覚知能力者がそれを共有する、という見方でいいんでしょうけど。

 とまあ色々、ケチのつけようはある作品ではありますが、それでもやはり本編ではサラッと進んだ紅莉栖救出と、その結果としてのシュタインズ・ゲート到達の影で、実際はこれだけの長い月日の辛苦と困難、それでも挫けない信念と尊い絆があったんだ、という部分を知れたのはとても心に響くところですし、少なくとも物語の流れとして破綻はなく、要所で残酷さも前面に押し出しつつしっかり作ってきたなと思います。
 繰り返しますけど、どうしても本編と比較しちゃうから残念に思うだけで、この程度の瑕疵なら充分に名作レベルのADVとは言えると思います。まあルートによって茶番っぽい話もなくはないけど、本筋に関しては多少痛快さには欠けるかな、くらいで充分過ぎる質だったと思うし、それだけでも価値はあると実際そういう採点にもしました。


キャラ(20/20)

 本編の苦難が概ね主人公と紅莉栖に集約されていたとすれば、こちらはそこまでその苦難に触れられなかった面々が、それによって傷ついた精神を慮り、自分でも出来ることはないかと探っていくという意図が強く出ていて、それが複数視点性にも繋がっているのでしょうけど、その分それぞれの個性や心象に関しては理解しやすく楽しめたと思います。

 でもやっぱりアマデウス紅莉栖が一番可愛かったりするからなー、まあ紅莉栖を救うための執念を生むためなんだから、そこに愛執も当然含まれて然るべきだし、その辺の匙加減はとても上手かったと。その上でまゆりの献身も光るし、鈴羽とダルの関係の温かみや重さ、紅莉栖の才能と過去を振り切れない真帆の悲嘆と科学者らしい信念、また心ならず敵役に回った面々にしてもそれぞれの想いが強く裏打ちされていて、全般的にキャラとしては満足のいく仕上がりになっていたと思います。
 主人公の厨二病は、元来はまゆりを守る盾であったのが、本編ラストにおいて世界を守るための鎧へと変貌し、それでも守り切れなかった悲嘆が一時手放させていたものの、最終的にどうあれ世界は不条理を押し付けてくる、という現実に直面して、その世界を打破する剣として抱えなおす、その経緯がまたすごく印象的な作品だったし、本当に大きな意味を持つ設定になったものだなあと、最初の軽薄さを思えば強く感じますね。


CG(17/20)

 基本新規絵なんだけども、時々過去作の絵が混在してきたり、一部キャラは過去絵のままだったりで、その辺にどうしても統一感がないってのは少し手抜きのイメージではあります。
 その上で、元々の絵の重厚感、存在感の厚みに対してしまうと、新規絵がちょっと薄っぺらく見えてしまう部分はあり、まあそれまで立ち絵がなかったキャラはともかく、ダルとかるかあたりはなんか違和感が最後まで抜けなかったなあと。基本的に本編の絵より可愛くなったのって綯くらいだと思うの私。

 一枚絵は新規分だけでも88枚だったかな?量は充分だし質もばらつきはあれ、基本的に痛々しい場面の絵はかなり迫力がしっかり出せていて良かったのではと思いますね。鳳凰院復活とか、最後のタイムマシンに乗り込むところとか、基本男絵の方がインパクトが強いってのはどうかと思うんだけど。。。


BGM(18/20)

 ボーカル4曲にBGMも30曲くらいはあって量は充分、質的にも当然世界観が連続する中で、けれどより冬の気配に似合う寒々しさや重苦しさ、それだからこそ感じ得る温みの尊さを感じさせるコーディネイト、って感じで中々良かったと思います。
 ボーカル的にはOPはかなり好き、派生EDもいい曲だと思うけど、やはり愛着的にはどうしても、ラストのGate of Steinerボーカルverの破壊力にはひれ伏すしかないなーと。英語と日本語の混合詩が醸す独特の雰囲気、そしてボーカルの、とりわけ高音域の透明な響き、直線的な伸びが切なさの先にある一筋の美しい未来を指し示しているようで超素敵でした。


システム(8/10)

 本編とキーコンフィグが違う、ってのもあるんだけど、システム的に若干使いづらいな、って思う部分はあり、あと演出的にも、それこそ肝要な場面はしっかりインパクト強く見せられているとは思うけど、通常のそれは大したこともなく、全体としてはこんなところでって感じです。


総合(88/100)

 総プレイ時間20時間くらい。そこそこルート派生やらに難しさはあるけど、こっちは基本ラインの内容が多分ほとんど影響しない、重要な場面での行動選択次第で決定されるイメージなので、少なくとも本編に比べれば難易度は低く、素直に物語を追いかけていけるかなと。
 どうしてもこれ単品としては、着地点はそうならざるを得ない、ってとこでもあるのですよね。すごく贅沢を言えば、本編をプレイして、最終章で一度目の失敗のシーンでセーブしておいて、そこから0に渡ってオールクリアして、そして最後に本編での二度目の挑戦を見る、というプレイが出来れば完璧なんですけど。。。
 ともあれ正統続編、と銘打つに恥じないだけの出来ではあったし、色々粗も多くて私みたいな細かいタイプはどうしてもそれが気になってしまうのだけど、それでもプレイする価値は充分にあると思いますね。
posted by クローバー at 07:10| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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