2016年05月17日

D.S.−Dal Segno−

 体験版自体はそんなに面白くなかったんだけども、流石に絵とCVが強すぎてスルーすることを許してくれなかったので購入。


シナリオ(14/30)

 情緒に全張りしすぎていて。


 風南島。
 列島より遥か南にある、常夏で、近年資本が投下されて学園都市としての機能を充実させた、通称「誰も不幸にならない島」。
 幼い頃に両親を亡くし、妹の鳴と二人で親戚を盥回しにされた経験を持つ主人公は、そのせいで自分達が迷惑をかける存在であることを強く自覚しており、その為ようやく自分達に良くしてくれる親戚に巡り合っても中々胸襟を開くことが出来ず。
 とにかく余計な迷惑をかけないように、少しでも早く自立して恩返しをしたいという想いから、その親戚の娘である乃絵里の勧めもあり、寮制度と奨学金が整ったこの島の学園へと転入してきました。

 はじめての島は色々と面食らう事ばかりで、とりわけ飛び切りの笑顔で出迎えてくれた自称人工知能の天の存在には中々現実感が追い付かなくて。
 ふわふわと歩む天が思わず崖から飛び出した――そう勘違いして手を伸ばし、盛大に空回りして自身が海に落ちるという失態を犯し、気を失って、ひまりと呼ばれる少女に助けられます。
 その際に天からの贈り物として幸運の四つ葉のクローバーのネックレスを貰い、そして改めて世界を見渡した時、その光景には今までなかったものが含まれていて。

 道行く人々の頭上に浮かぶ謎の数字、数字、数字……。
 その不可思議さに、これまでで最大級の疑問と不信を抱くものの、天の秘密の説明により、それがこの島をこの島なさしめている根幹システム、通称楽園システムの副産物である、人の幸福度合いを様々な要素を掛け合わせて導き出した幸福度であり、たまさか何かの要因で主人公にもそれが見えるようになってしまった、ということで。
 そして天はその数値を適宜観測し、極端な下降があればその人が不幸になったと判断して、幸せになるための手伝いをするために生み出されたインターフェイスホログラムだというのです。

 色々と釈然とはしないながらも、最低限の対処法もあったために一先ずそれは棚上げにして、新たに始まる島での生活を楽しもうと前向きに考える主人公。
 しかし季節外れの転入だったこともあり、主人公に宛がわれたのは学園の問題児が集められた第二学生寮。
 そこにはクラスメイトにもなったひまりや、魔王の娘を自称する依愛、そしてお目付け役としての乃絵里に、常駐しているわけではないものの、寮長で生徒会長も務める遥月が所属しており、その一癖も二癖もあるメンバーに囲まれ、中々に波乱に富んだスタートになって。
 更には身近に迫ったクリパに、転入生も積極的に参加し楽しんでほしい、という押し付けの善意によって、主人公にミスコンの推薦枠が与えられることになり、その参加メンバー探しにも汲々とすることになって、当初の不可思議などは徐々に頭から離れ、日々を充実させるためにあれこれと奔走することになります。

 誰も不幸にならない島。
 不思議さに溢れつつも、その善意で優しく人々を見守る島の風土に支えられ、また他人が困っているのに手を差し伸べる過程で、それぞれのヒロインが抱える問題にも否応なく触れていくことになって、その中で主人公は、果たして本当の幸せを見つけることができるのか、そしてそれを大切な誰かと分かち合うことができるのか?
 これは幸せという不可思議な観念に直面し、幾度も揺り戻しを味わいつつ、そこで育んだ想いを胸に誠実に前に進む強さと輝きを綴った物語です。


 あらすじはこんなところです。
 大枠としてはクリパのミスコン推薦者を序盤の分岐の中で見繕い、その子と二人三脚でミスコンで活躍するために奔走して、その過程でグッと距離が縮まりお付き合いにまで発展していくものの、やがて不思議要素も絡んでその順風満帆に思えた関係に影が差し、揺り戻しが起きて、それでも諦められないと無我夢中で手を伸ばしていく、そんな流れになります。まあありきたりっちゃそれまで。。。

 テキストは全般的になんつーか柔軟さがないというか、極端に読みにくい、ってこともないけど全体的にテンポの組み立てがぎくしゃくしている感じはあって、会話のやり取りとかも軽妙と単調を混同しているような印象も多々あり、総合的に見て単純にあまり面白くは思えなかったなと。
 無論ルート差はあるし、個人的にはとりわけ乃絵里はイマイチだったなあと思うのだけど、それ以外でも純粋に読み口で笑ったり和んだり、そういう反応を引き出すだけの遊びや工夫がなく、淡々とプロットに最低限の肉付けをしました、というイメージが強くて、後に触れる構成の不十分さも踏まえて色々勿体ないなと思います。

 ルート構成は基本的には好みの女の子を追いかけていけば、いざミスコンの推薦者を思い浮かべる段階でその子が選択肢に浮上してくる、というシンプルなつくり。
 ただ天だけはルートロックがかかっていて、四人攻略後に新たな選択肢が出て進めるようになり、そして彼女をクリアすると最終のエピローグ的な話に進めるという、この辺の構成はいかにもサーカスらしいイメージ。
 選択肢自体は基本的にマップ移動であり、特定のヒロインの居場所に向かうだけでその心情を汲み取ってプラスの影響を与えたり、とかそういう要素はないので簡素かつ薄味。唯一追加選択の天にだけはそういう要素がある、というのは色々示唆的ではあると思うけど、どの道その内容も含めて、これだけでルート確定してしまうのはやや弱い構図ではあるだろうと。

 シナリオに関しては、色んな意味で消化不良、というのが一番素直なところかなと。
 かなり不可思議要素の大きい設定でありながら、その根幹部分に対しての言及が作品全体を通してほとんどなく不透明なままに、けどその設定そのものはシナリオの転換部分に大きく影響を及ぼしていて。
 ヒロインの背景設定にも言及が少ないうえ、それが露呈した時点で取り乱して一人で思い詰め話を聞かなくなるというお約束的な点も含め、言い方は悪いけど超展開的な、順風満帆に思えた日々からいきなり奈落に突き落とされるような薄っぺらい劇的さが目立ち、その説得性の薄さを全力で情緒に、感情に訴えることで糊塗しよう、という印象が全体的に色濃いなと思います。

 まあそれ自体はいかにもサーカスというメーカーの風土に合致した印象、でもあるのだけど、私のスタンスとしてはやはりもっと枠組みの構造の中で相関関係をスッキリ理解できる要素があってくれないと辛いなー、ってのはあるし、今回久しぶりの新シリーズである程度の原点回帰を、というコンセプトだからか、それこそ初代DCみたいな安っぽいお涙頂戴の雰囲気を無造作に踏襲してしまっていて。
 ただDCの出た時代ならともかく、色々と成熟しつつも多様なニーズの変化を遂げた今の時代において、果たしてこの情緒一点張りの力押しはウケるのか?という疑問は大きいし、設定をもっと煮詰めていけばより面白く出来る可能性は多々秘めている、と思えるだけに歯痒いなと感じますね。

 結局のところ、この島を動かしている楽園システムが、思想面はともかく、どのような構造で動いているのか、ってのが全く不透明なのは困りものだなあと思います。
 少なくともパッと見のイメージでは最先端科学的な色合いが強いながらも、細かい要素で見ていくといわゆる魔法としか思えないような不可思議現象すらも包摂していて、その背景部分を敢えてファジーにすることで様々な展開に矛盾の在り処を感じさせずに関与してくるわけで、やはりそれは都合が良過ぎると私の観念では感じてしまうのだけど、少なくともそれを礎としてすべてのルートが成り立っている事実は飲み込んで。
 その上で、DSというタイトルにも示されるある程度の蓄積を踏まえた上での繰り返し(DCのまっさらな繰り返しとは一線を画したテーマ性)のイメージは一応それぞれのルートでも内包され、とりわけ天ルート+αでより鮮明に見えてくる、と一貫性のある構成にはなっていて、あくまでも見せたい方向性がそっちに特化していると見做すべきなんでしょうね。

 とりあえず細かい部分の問題提起や考察は後でネタバレで軽く(深く考えても決定的な正答を見出せるだけの材料がそもそもないからね。。。)触れるとして、ここまでの前提を踏まえての個別評価としては、遥月=天+α>ひまり>依愛>乃絵里くらいですかね。
 全体としてどんぐりの背比べ、的なイメージは拭えず、加点材料が多い、というより減点材料がまだ少ない、という消極的な判断基準での序列付けにはなっていて、正直に言うとシナリオ面では鼻白む部分のほうが多かったな、という感じ。

 下からかるーく触れていきます。
 乃絵里は純粋に話の枠組みとして面白味が薄いのもあるし、テキスト面でのフォローが弱いのもまた一因としてはある。その上で完全に不思議要素によって不安が無尽蔵に増幅される形での試練、的な超展開であり、その解決もほぼほぼ情緒面、想いの力に委ねる格好になっていて。
 無論その状況の中でお互いの抱える想いに向き合う、トラウマめいた観念から一歩踏み出し、二人で支え合って未来を紡いでいくという形式そのものは綺麗でいいんだけど、それに直面させるのに用いるにしては矯激な展開でもあるし、もちょっと地に足のついた形でやって欲しい内容だなと。
 唯一プラスに評価できるのは、全般的にもんのすごいHシーンが軽いつくりになっている中で、ほぼ唯一まともに2シーン機能している、ってくらいかしら(笑)。まあそれも元々の関係という担保ありきと見做せば、構造的に一貫はしてるんですけどね、絶対的に物足りないけどもさ。。。

 依愛はやはりシナリオとして見たときに、依愛の生活環境というか、どうしてそんな風に空想の世界に傾倒したのか、という部分を突き詰めないままに関係に深めて、その皺寄せが一気に、という構造そのものは別に悪くないのだけど、それを露呈させるのに外挿的な要素、かつ悲劇性の強い要素を安易に組み込んでるのがいただけないなと。
 その事象自体は二人が付き合おうがどうしようが発生する外的要因だろうと思えるし、他ルートは一応付き合うという経緯がもたらす変化によって引き起こされた、と因果関係がしっかりしてるため余計に目立ってしまうなと。

 少なくともその事実を受け、それを認めたくなくて依愛がああなってしまうのが不可避であるなら、当然他ルートの文脈でも、とはなってしまうし、実際他ルートで依愛まともに出てこないけど(笑)、でも流石にそうはなってないだろうからなあ、というところで割引はしないとと。
 それにやはりこのルートも、不思議要素を拡大解釈しての展開であり、その枷の破却においても同様であるからどうしても浮ついた感じは否めないよねと。まあ純粋に乃絵里ルートよりは恋愛面での構成がまだ楽しめたし、キャラ的には突き抜けて好き、ってのもあってこの位置ですけど、純粋にシナリオ的には乃絵里以上に感心はしなかったなと。

 ひまりはやはり不思議要素が大きく絡んではくるのだけど、他ヒロインと一線を画しているのは、既にそれが画定した事象としてそこにあり、それを踏まえて改めて現実に向き合うも頓挫して、という中で、主人公から見れば理不尽に突っぱねられるのは一緒でも、その内在性に関して理解が及びやすいというのはあります。
 かつその心境自体が、どうしても後出し、という部分での都合の良さは滲むにせよ、主人公の内面と共鳴する部分が多い、という中で、そこから一歩踏み出すために引き寄せる言葉にしっかり重みを付与できていたのは、ここまでの2ルートに比べるとマシに思える最大の要素かなと感じます。
 ただひまりに関しては会話がやけに空疎というか、そういう逃げの姿勢もまた彼女の境涯が培わせたものだろうと思いはするけどそれでもね、という印象も強く、最後の解決に関してもやはり都合よく情緒の力押しで誤魔化してるなあ、とは思うので、その分評価としても上向かないと。

 遥月はあくまで相対的に見て、不思議要素に直面してもそれを感情に任せてすべて突っぱねることもなく、ある程度の距離はおいてしまうもののそれでも現実に向き合おう、という意思そのものはあって、でもそれを対症的に可能か、それとも根治的に踏み込まないと無理か、という解釈の差ですれ違っていく構図は、まあこの作品の中では一番堅実な構成であり、キャラ性と合わせても納得はいく話だったかなと。
 解決に関してもやはりそれなりの不思議要素の都合の良さに後押しされている部分はあれど、最終的には真っ直ぐに現実と向き合う形でスッキリ綺麗にまとめられているし、キャラ性の複層的な部分もこのルートならではの設定で後押しがされていて素直に飲み込めるし、総合的に失点の少ないつくりだったと思います。
 まあ強いて言えばこの堅物で、重いものを抱えている遥月が、そもそもああもあっさり恋愛に靡くものかなという、この画一的なヒロイン分岐の構成の中での疑義は出てくるのだけど、その辺は後でネタバレで触れる推論にフォローしてもらえる形にはなるかな、と。

 最後に天に関しては、少なくともまず私の期待としては、最低限この世界観の中で、どうしてそういう不思議要素が発生するのか、という部分の説得的な解釈の提示があって欲しかったわけですが、概ねそれは完全スルーで。。。
 あくまでも人工知能である天という存在が、幸福という概念の奥深さに触れていく中で必然的に起こる葛藤と壁に苛まれながらも、その芽生えた想いを尊重するがゆえに避けられない現実に対峙し、外的に見た幸福と、個々人の幸福感の差異という、ずっと心に残る大切なものの輝きを信じて、という、一際に情緒面に特化した構成になってしまっているのは、まあこれはこれで良さがあるのは認めるけどやっぱり残念だなと。

 そもそもこういうの、それこそ初代DCのロボ美春あたりからお約束・焼き直しの展開ではあり、そこにこの世界観ならではの特異性をあまり搦めることもなく、あくまでも主人公と天の恋愛から派生する要素のみで押し切ってしまうのは勿体ないし、どこか古臭い、黴の生えた展開だなと思ってしまう比率のほうが高くなっちゃうなと思うのです。
 それを受けた上でのDSで、一応この作品でやりたい、示したいテーマ性はしっかり担保できてはいるものの、ただ物語としてそれでスッキリいい話だったー、と終われるかと言えば微妙でもあって、わざわざルートロックまでかけて見せられる話としては色々と足りていないものが多すぎたんではないかなと。

 以下ザッとネタバレ濃い目の問題提起や考察など雑多に。

 やっぱり結局のところ、楽園システムは科学なの魔法なの?って部分での明快な設定が示されないのは色々と致命的ではありますよねと。
 あくまでも研究として成り立つ以上、理路に添った構成要素は天にせよ妖精にせよあるのだろうし、幸福度システムにしてもより緻密な解釈は出来るだろうけど、おそらく天が配っているクローバーのネックレスの効果であろう、島の住人に不思議な力を付与する部分にまで至ると、それが本当に科学で解釈できるのか、ってのはかなり難解になっている感じで。

 大枠で見ると、そもそも島全体が特異な力場を醸成しているようにも感じるし、それを利用してのシステムなんじゃないかな、というイメージはあります。その視座で言えば、島の伝承的なものがあれば最低限その不思議さに対する説得材料にはなったし、その大枠の中で科学も魔法的な要素も包摂できる、という確証を読み手に提供してくれることにはなるので良かったんですけれど、その辺も特に言及はないんですよねー。
 そしてどうしても思うのは、主人公があのネックレスを提供されてすぐに幸せ指数が見えるようになったことを天は原因不明というけれど、少なくともその時点でひまりという相似した前例はあった中で、その関連性に全く思い至らない、という状況は不自然で、そのあたりも統括的な解釈の下地が相当ファジーにしか組み立てられていない証左なのかなと。

 また、天がそのネックレスを与えるに際しての基準もやたらと曖昧なんですよねぇ。
 一応の方針としては、不幸せな人を幸せにしたい、そのベクトルの中での行為の一環ではあるのでしょうけど、でも単純に幸福値を基準にしたときに、社会的な環境にも恵まれてなくて数値の低めな依愛やひまり(加えて主人公自身もこの島に来た段階では低いとは推定される&いきなり不幸に見舞われてはいる)はともかく、数値の高い乃絵里や遥月までが所持していることにどう解釈をつけるべきかと。
 主人公の見たものを正しいと前提するなら、別にこの物語の始まりの時点でのひまりや依愛の数字は、他の一般ピープルに比べて特段に低いわけでもなく、むしろ乃絵里が普通以上に、そして遥月は群を抜いて高い数値になっているわけで、少なくともそこからわざわざ選別されている理由は見いだせないわけで。
 なのでせめて、それぞれがそのネックレスを貰った状況に関しては、それぞれのルートででもいいからもう少し掘り下げて、それが天というキャラのイメージも合わせてそうなって不思議ない、と思わせる補助線は引いておくべきだったなと思います。

 どうあれ、そのネックレスを所持して、そして強く願うことで現実を幻想に塗り替えられる、という構図はどのルートでもおよそ齟齬なく機能していて、ひまりルートだけはその幻想を忌避するがゆえに、という裏向きの構図にはなっているにせよ、その点はほぼ確実だと見做していいかな、とは思えて。
 そうなったとき、そのネックレスがどういう効用をもたらしているのか?

 あくまでこの世界観の上での科学的な範疇で考えるなら、ハピルス、という指数そのものが、最終的に天が触れているように、個々人が蓄える幸福感は、客観的な数値化など無粋な、それぞれの関係性の中でのみ適応される唯一無二、特別な感情なのだ、という思想で否定的に見つめられるものの、それまでは盲目的にその数値が信奉されていて。
 また少なくともそのハピルス測定の時点でも、ハピラーゼという幸福感の発生を汲み取って数値に反映させる仕組みは成立しているし、その中で考え得るのは、各人の幸せになりたい、その為には……という具体的な想いを受け止め、増幅させて循環させて、ハピラーゼをより強く引き出す働きかけをする装置、であるのかなと。

 無論遥月の影分身的な要素など、一筋縄で説明しにくいところもあるけれど、そのネックレスを所持している人の間では何某かの共有観念みたいなものが成立していて、幻想の世界もまた共有できるような働きかけをしていると解釈すれば一応の筋は通る感じで。
 またそれに加えて、常に幸せになりたいという想いをより強く喚起されることで、特に恋愛という、一般に想像できる中でかなり序列の高い幸せな情景に対する希求は強くなっているのかなと、それ故に転校生である主人公がちょっとクリパ絡みで仲を深めただけで、最初から好き好きオーラ発してる乃絵里はまたベクトルが違うけど、他の面々、明らかに心のガードが固いはずのヒロイン達とも恋仲になれる土壌が成立しているのではと考えます。
 ……まあそうでも考えないと、あれだけの触れ合いで簡単に転ぶヒロインが不自然だろ、ってところに説得性を有せないし、選択肢としての簡素さにも納得がいかないので。。。

 そしてそうやって速成的に積み上げられた恋愛だけに、それは本当の意味での信頼や寄りかかりをも醸成してくれるわけではなく、そのツケが後半の、ヒロインのことを何も知らないままに試練や事件、苦悩に巻き込まれて、だけどそれを分かち合おうと思えなくてヒロインが殻に籠る、という画一的な展開にも最低限納得を与えてくれるかなと思います。
 Hシーンの寸止め具合に関しても、実質的な関係は進んでも心は追いついていない、というアンバランスさを示唆する構図にはなっていると思うし、それはひとつのテーマでもある社会的な幸福と個々人の実感としての幸福感の乖離の様を、かつ幸福感を関係性の中で正しく積み上げない限りその関係はすぐに霧散してしまう脆いものだという点もフォローしている構成と見做せます。
 まあだからと言ってこのシーン数の少なさを許容できるわけでもなく、それこそ後日談的にイチャラブシーンのフォローはあってしかるべきだったとは思いますけど。思いますけどっ!

 ただ少なくともその文脈で見たときに、乃絵里だけがちゃんと最初から結ばれるのは、彼女だけがきちんとその恋人関係の中で心と身体の乖離とは無縁なほど信頼関係を築いていると思えている故と言えるし、逆にその信頼の土台を崩されたからこそああも劇的な反応にならざるを得なかった、という部分では、確かに全体的なつくりとして一貫はしてるんですよね。
 その上で、天と結ばれるのにはきちんとこの心を擽るアプローチが必要になってくる、という差異性こそ、逆説的に他のヒロインには明確なそれを必要としなくとも恋愛にまで至れる補助輪がついていた証左でもあるのかなって思うし、かつ天がその存在理念として恋を実感としてイメージするには難しい要素も備えているから、というところで、最低限の意味づけはなされていると解釈できます。

 まあでもこれは本当に、数少ない状況証拠から推論に推論を重ねてのこじつけ、でもありますし、筋道として間違っていないにしても正直それを作り手側できちんと企図しているのかさえ怪しい、私が勝手に色々と穿って深読みして、独り相撲を取ってるだけかもなあという虚しさを伴う作業仮説の構築でして、つくづくそのあたり、理路の通った読み解き可能な伏線が乏しくて残念だなあ、という感想に一周して戻ってきてしまう感じですね。


 以上、まあ正直素直に感情面からの評価としてならここまで低くしなくてもいいかな?と思わなくもないんだけど、私のスタンスとしてここまで開き直って設定を蔑ろにされてしまっていると、やっぱりそれは納得がいかない、深みが足りないと感じてしまうわけで。
 まあ当然その設定に説明がついたとして、そこに矛盾や稚拙があればそれはそれで糾弾するんだからめんどくさいやっちゃ、って話ですけれど、やろうとして失敗してるならまだいい、とは思えるし、でもこれはそもそも説明責任を最初から放棄しているようにすら見えてしまうのが気に入らないのです。

 それ故に、いくらテーマ性として崇高で面白味があり、その点に関しての一貫性は担保しているとはいっても、そこに全力を傾注しすぎて、本来その幹をより逞しく見せるための枝葉を剥ぎ取ってしまっているようで、どうしてもそこに寒々しさ、白々しさを見て取れてしまった以上、ここは厳しめの採点にしておかねば、と思います。


キャラ(19/20)

 キャラに関しても、どうしても構成の犠牲になっている部分というか、生半可に分かり合った状態で一足飛びに恋愛に至る構図が、必然的なすれ違いや信頼感の欠如を引き出してしまっていて、その一連の流れの中でヒロインの魅力を減じてしまっているのは否めないんじゃないかなとは思います。
 無論その谷を越えての成長、現実への向き合いの中で挽回されているところもあるとはいえ、総合的に見て人間性の面でも、ヒロインとしてもシナリオが引き出してくれる魅力が薄いし、色々食い足りないなあと思いますね。しかもすっごいおざなりに、男の友情的なのまで突っ込んでくるのが逆に白々しくて。。。

 ただまあ、シナリオがダメ?そんなことはどうでもいい!と熱弁するくらいには、依愛だけはすんっっっっっごく可愛いなー、と思えたのは事実。というか、これだけ好き好きな依愛を擁していても減点せざるを得ないという状況に戦慄するわ。。。
 この子にしても、根本的にどうして人とそういう距離感、接し方しかできなくなったのか、という根源的な部分が最後まで明らかにならないままで暴走していくのでその辺は決定的にマイナス、ではあるのだけど、その憎めないキャラ性と愛らしさ、本質的な善良さと抱えてる寂しさがそれを充分に糊塗してくれるし、その上で特に終盤連打されるしとやかな姫モードの可愛さがもう半端ないのですよ!
 それまでのギャップもあるし、ああいう素直な弱さを見せてくれる、甘えてくれるというところに気概を感じさせる流れでもあり、そしてやはりCV力様々というか、ほんっとに演技の幅が広いしそつがなく、どうあれ濁りのない素敵さを振り撒いてくれるのは御馳走様です!と最敬礼せざるを得ない。特に最近はどっちかと言えば強気系、元気系のほうが割り当て多かったし、純粋にあそこまでしとやかなのは滅多に見ないからその点でもすごく新鮮で最高でしたしね。
 ……いやほんと、依愛だけでもいいから後日談のイチャラブ増産してくださいませんかね?

 次いではやはり天になるのかな。
 天真爛漫という言葉がぴったりくる雰囲気だし、その元気さは作風的にどこか淀みがあるのを吹き飛ばしてくれるし、こういうキャラ性だからこそこういうシナリオのヒロインとしてもそこまで角が立たない、という見方は出来ると思います。
 立ち位置的に恋愛に対する自覚が芽生えるのに苦労するのは仕方ないし、その過程での可愛さも存分に堪能できたし、その辺で見るとヒロインとしては一番マイナス点も少ないし良かったなと思うのです。

 遥月は思いのほか柔らかさや可愛げもあるキャラだったし、それが更に一段ブーストする仕掛けも用意されていて中々悪くなかったけどそこまで、乃絵里は正直ウザったさが目に付く部分は多くて、折角絵とCVは最高なのに勿体ない……と嘆く場面は多くて。
 ひまりも可愛いとは思うけど、どうにもあの徹底的にはぐらかして逃げ腰の感じは、いざ肝が据わった時の演技バリバリの振る舞いと合わせてうーん……って感じる向きが私は強かったかな。


CG(18/20)

 んー、やっぱり私鷹野さんの絵柄は本当に大好きなので、そっちに好きなヒロインが割り振られてるってのも含めて印象的な満足度は相当に高いんですけれども、ただ総合的な質量、シナリオとの連関性がもたらす感銘なども踏まえると、もう1点上にするにはちょっと足りてないかなあ、と。

 立ち絵に関してはほぼ水準、と見做していいでしょうかね。
 ポーズはヒロインで3種類ずつ、サブは1種類とまず平均的、特徴的なのはヒロイン全員に見返りの姿勢が用意されていることで、一応些細ながら腕差分もあり、それぞれの特色を示しつつ躍動感は出せているかなと。
 お気に入りは依愛やや左、見返り、天正面、見返り、乃絵里正面、やや右、遥月正面、ひまりやや右、見返りあたりですね。

 服飾はヒロインで2〜4種類、サブで1種類とまあ最低限は用意されているかなと。
 デザイン的にはそれなりに華やかだけどまあ、くらいの中で、ただ依愛の改造感はいいアクセントになっているかと。
 お気に入りは依愛制服、ゴスロリ私服、水着、天制服、カスタム服、乃絵里制服、外出着、水着、遥月制服、水着、ひまり水着あたりですね。

 表情差分もまあ多くはないけどそれぞれに特色は出てるし可愛いなと。鑑賞があるのて調べやすいのは助かる。
 お気に入りは依愛笑顔、不敵、不満、しょんぼり、ジト目、膨れ、照れ目逸らし、照れ上目、天笑顔、快活、拗ね、ジト目、照れ焦り、焦り、びっくり、哀しみ、乃絵里思案、呆れ、照れ驚き、ジト目、真剣、遥月微笑、困惑、怒り、睨み、照れ困り、ウインク、ひまり笑顔、不満、呆れ、誤魔化し、照れ焦り、ウインク、ジト目あたりですね。


 1枚絵は全部で83枚、まあ値段踏まえるともちょっとフォローは欲しい枚数ではあり、Hシーンが少ない分日常での頻出度に不満はないから、やっぱりアフターストーリー的なイチャラブフォローで更にHシーン的なの2〜3枚ずつくらい上乗せされてはいて欲しかったという感じでしょうか。
 ただまあ質的には、特に依愛サイドの可愛さは特上の素敵さだったし満足はしてますけれどもね。つか本当に乃絵里はシナリオは好きじゃないんだけど絵だけは抜群に可愛いんだよなぁ……。

 特にお気に入りは5枚ですね。
 1枚目は依愛添い寝、全てを委ねた後の、それまでの依愛が混然一体となりつつも安心して寄り添ってくれている雰囲気がものすごく可愛いし、大好きな1枚です。
 2枚目は乃絵里押し倒し、その驚きと羞恥と期待のバランス感が絶妙だったと思うし、少しずつはだけていく感じもめっちゃ可愛くてとても好きです。
 3枚目は乃絵里目が覚めて、この切なく差し込む夕焼けの中での淡い微笑みと歓びの光景が本当に神秘的で可愛くて好きなんですよね。
 4枚目は乃絵里対面座位、好きって気持ちが万全にその組みつき方に現れていて絶妙に可愛く、全体のバランスもよくて最高ですな。
 5枚目は天仮初の遊泳、この幻想的な疑似的海の光景と、その中に溶け込んで幸せそうな天の様子は素敵ですよね。

 その他お気に入りは、ひまり出会い、灯台、ミスコン、告白、水着、添い寝、騎乗位、手を取って、遥月うたたね、ミスコン、腕組み、水着、愛撫、添い寝、昏倒、依愛お弁当、隣の席、部屋、魔王降臨、着替え、寛ぎ、踏み踏み、虫刺され、オイル、執筆、姫抱っこ、改めての告白、愛撫、背面座位、墓参り、乃絵里喫茶店、朝起こし、料理、近くて遠い、壇上告白、ペンギンさん、愛撫、添い寝、ビーチバレー、お風呂乱入、バック、看病、出会い、共に歩む、天危ない!、興味津々、機能展開、ミスコン、空を仰ぐ、告白、チョコバナナ、愛撫、立ちバック、水着、抱きしめ、さよなら、きっとまた出会う、キャンプ、花火、妹あたりですね。


BGM(18/20) 

 全体的に情緒的な曲が多いのは話の骨格とすり合わせてだろうし、質量ともに充分な出来でしたね。

 ボーカル曲は全部で6曲と中々に豪華。
 OPの『Pleasure Garden』は中々に爽快でスタイリッシュな雰囲気が独特の魅力を放っていて、特に出だしのAメロからの広がりを感じさせる旋律がかなり素敵だなと。逆に出だしのインパクトがスカッとしすぎているので、それ以上の盛り上がりがサビで感じないのがご愛敬ですが、総体的にはかなり好きな曲。

 挿入歌は3曲もあり、どれもベクトル的にはとにかく情感を全力で引き出しにかかってるところで、いかにもここらしい力押しだけど、でも実際に曲の魅力が後押しになっている部分はかなり大きいんじゃないかなと思えるほどにそれぞれ素晴らしい出来。
 『愛しさの雫』はなんつーか往年のDCの挿入歌を彷彿とさせるストレートに気持ちを吐露するような素直な盛り上がりが素敵だし、『アイノヒカリ』はボーカルとセットでとにかく切なさを噛み締めての後押しが強烈、けど『天音〜アマオト〜』がその中でも更にかかるシーンの哀しみとも合わせて実に感傷的で、メロディラインの美しさもあってすごく印象に残ってますね。この作品の中でこれが一番好きかなる

 EDは通常とグランドで2曲、ただどちらも挿入歌に比べると軽やかさが目立つし、テーマ性と合致はしてるけどイマイチインパクトはなかったかな。まだ『君と見た物語』のほうがいいかな。
 グランドの曲からOPに繋げる演出は中々面白いとは思ったし、なるほどとも思うけど、ちょっと曲としてOPに負けてるし、この『続く☆ミライ』はあの終わり方の後としてはいくらなんでも明るすぎるでしょと思う。


 BGMは全部で36曲と、アレンジも含むとはいえ水準はクリア、曲の雰囲気も概ね美しく和やかに仕上がっていて、耳障り良く心地いい世界観を演出できていたと思います。
 特にお気に入りは『心のページ』、この柔らかく互いの想いを伝えあって心が温まるような雰囲気はいいですし、後半での軽やかなピアノの旋律もかなり気に入ってます。
 その他お気に入りは、『メインテーマ』『ひまりのテーマ』『ひまりのテーマ〜光の中へ〜』『依愛のテーマ〜新しい自分〜』『天のテーマ〜ハッピーエンドとは〜』『眩しい風』『夜風』『哀傷』『孤独』『溢れる想い』『伝えたい……』『勇気を出して』『愛しさ』『それぞれの理由』あたりですね。


システム(8/10)

 演出はごくごく普通。
 立ち絵もそれなりには動くけど大したものでもなし、背景演出や1枚絵の使い方にしても突飛なものはなく堅実なつくりで、総合的に見れば少し物足りないかな、ってくらい。
 ムービーは爽やかさと空の美しさが印象的な中で、しっかりキャラのイメージも投影できていて質は高いかなと思います。

 システム的には抜群ってことはないけど使いにくくもないしこんなものかなと。
 バックジャンプしかないのは面倒なのと、あと一部のボイスが反映されてないのは仕様なんだかこっちのトラブルなのかわからんけど、まあでもシーン回想もあるし全般的に文句はないですかね。音楽鑑賞のお気に入り登録そのものはいいんだけど、どうせなら進行バーもつけてくれると尚更使いやすくていいんですけどね。とりま今、これ書く間に後ろで好きな曲だけループさせるのに役に立ってくれているので印象度よし(笑)。


総合(77/100)

 総プレイ時間18時間くらい。共通3時間に個別も3時間ずつとまあ平均的な構図で、ラストのエピローグは10分くらいなので本当にまとめ、って感じ。
 ただ構図的にかなり画一的な序盤、ってのもあるし、そこからの展開も概ねファジーな舞台設定に則った超展開気味のものが多く、理詰めでものを考えたい人にはとりわけ相性が悪い話かな、とは思います。情緒面で素敵なら細かいことは気にしない人なら、音楽や絵の質は高いし十分楽しめるかもだけど。

 個人的に最初から最後まで引っかかるところは多い作品で、やりたいことはわかるけどそこだけに特化してどうすんの?折角のポテンシャルが勿体ないしもどかしい、って思ってしまうし、私としては結構珍しくも辛口な評価にしてるつもり。実際絵や音楽はかなり良くって、もう1点上でもいいくらいなんだけども、シナリオ面との相乗効果、という部分でどうしても自分の中でグッと盛り上がるものがなかったのがねと。
 まあ体験版の時点で合わないかもなー、ってのは覚悟はしてたし、想定内の下限、くらいでは収まってはくれていて、その上でそれでもいい、と思わせてくれるくらい依愛が可愛かったので、買って損したとまでは思わないですけれど、私としてはちょっと人にはお勧めできないタイトルかなって思いますね。ツボに嵌る人には嵌る、とは思うけど、これまでのこの系列の作品に比べてもそのスポットが狭い気はします。
 
posted by クローバー at 05:30| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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