2016年05月19日

ウィザーズコンプレックス

 体験版やってみて、とにもかくにもアイリスが圧倒的に可愛すぎたので、シナリオ的にそこまで奥行きはないかもしれんなぁ、とは思いつつアイリスの為に全力買い。


シナリオ(24/30)

 ぶつからなければ届かないもの。

 主人公は世界ではじめて、魔力を持つ男として生を受けました。
 それ故に幼い頃から注視されてきたものの、その力は微々たるもので、発現の仕方もわからない無色のものであり、研究こそ継続的に続けられてきたものの、今では基本的に一般人として、魔女の姉とともに暮らしてきました。

 しかしある日、姉の職場でもある魔女育成のための学園、御久仁学園に連れていかれ、学園長であるマリアとの面談を経て、学園唯一の男の魔法使いとして特待生で迎え入れられることになり、その日常は大きく変転していくことに。
 入学初日から変質者と間違えられて追いかけ回されたりと災難もありつつ、クラスメイトのほのかや一葉、鳴とはすぐに仲良くなり、学園長の娘で留学生のアイリスが自宅にホームステイすることになって暮らしも賑やかになっていきます。

 そして、御久仁学園には一つの大きな特色がありました。
 国内組と留学組からそれぞれ生徒会メンバーが指名制で見出され、それぞれの代表として魔法生徒会対戦と呼ばれる戦いに挑み、勝った方がその一年の学園の牽引役となると同時に、ひとつ学則を変更できるという強大な力を与えられるという制度がそれで、故に長らく二つの派閥は学内で対立し続け、それを象徴するのが二つに分かたれた塔のような建築構造で。
 そして、塔の方角を取って東塔生徒会と西塔生徒会と呼ばれる二つの組織に、主人公に近しい面々は深く関わっていくことになります。主人公の所属する国内組ではほのかが生徒会長に選ばれ、その流れで主人公や一葉、鳴も参加することになり、留学組ではアイリスが生徒会長に選ばれて、それぞれ穏健な思想の持ち主で、日常においては仲良くしたいと思う関係でありながら、それぞれの派閥の論理、同調圧力に突き動かされる形で対峙していくことに。

 学園長はあくまでもその対峙が学問の一環であり、勝ち負けそのものを問題とせずその中から魔女としてあるべき正しい姿を見出すことが大切、と説きますが、その理想論は既に蔓延った対立構造の中では存在感を持ち得ず。
 主人公達は、本当にこの戦いに意義があるのか、常にそんな疑問に直面しつつ、状況に自身の信念を流されないように戒めながら、それでも一生懸命にその戦いに挑んでいき、それは確かにそういう場でしか醸成できないような得難い絆をも紡いでくれて。
 主人公はとりわけ心を惹かれたヒロインの在り方に、想いに寄り添い、共鳴することで、自分達が真っ直ぐに成長し、そして学園に蔓延するいがみ合いを、対立を、疎隔を解消しようと奮闘することになります。
 これは、戦いを含めたあらゆる状況の中から様々な価値観を知り、より深く分かり合うためにときに譲れないものをぶつけ合いながら絆を育み、その違いを包摂しながら共に歩んでいく未来を模索していく、愛と友情と希望の物語です。


 あらすじはこんな感じですね。
 大枠としては、序盤で一番共感できる考えを持つヒロインを選択し、戦いが進む中でそこに親和し、強固で具象的な観念と信念を形成していって、その想いに従う形で身の振り方を決めていくことで状況も大きく変化し、その派生でどうしても対立せざるを得ない想いとぶつかり合い、認め合って、それをも内包する形での望ましい未来の形を作り上げていく、という流れです。

 テキストは概ね軽快で、ヒロイン視点を多用しての心情面の細やかな機微のフォローが目立っているかな、というイメージ。
 状況やテーマ的には結構重いものはあるのですが、それを重くし過ぎない雰囲気の作り方は上手いし、なによりヒロインを筆頭としたキャラの個性を大切にしている感じが良く出ていて、時に対立を通じて弱さや醜さが露呈することはあっても、それを決定的なマイナス要素にしないフォローも丁寧で、読み口のバランスはしっかりとれているのではないかと思います。
 といっても極端にネタキャラ的な存在もなく、基本的には誠実というか真っ当というか、笑いというよりは温かみ、おかしみを楽しむスタンスですし、そういう奇矯な部分が少ないのは設定からすれば妥当であり、私好みの配慮がなされているなという感じです。

 ルート構成は、特にロックなどはなく、お気に入りのヒロインの心情に添う形での選択を繰り返せばOKという形。んで一人クリアするとおまけ程度のサブ四人のルートが解放されます。
 主人公は作品冒頭で示されるように幼い頃にモルモット的な扱いの中で強い疎外感を感じ、それを桜子の温もりが救ってくれた、という経緯があります。
 その疎外の辛さを知る故、常に他者の気持ちに立ってものを考えられるという得難い資質を体得していて、故にシナリオへの影響としても基本的にはヒロインに寄り添い、或いはぶつかり合う気持ちの両方を忖度して調停する、という色合いが強いです。
 なので選択肢的にもそれをきちんと反映して、相手の想いを知りつつどう対処するか、戦いの場でどういう思想に共鳴するか、最低限とはいえ多面的な心情への踏み込みを介してヒロインが選ばれ、その積層された興味や信頼、尊敬の念がやがて恋情をも育んでいく、という自然な経緯を説得的に紡げている適切な選択肢配置だと思います。

 シナリオに関しては、思った以上にはっきり割り切りが出来ている話だな、と感じます。
 その枠組みにおいて、あくまで学内の魔法大戦にまつわる諸々が事象としてのほぼ全てであり、より広い社会に深く関わっていくような構図はほとんどありません。
 ごく一部、生徒会活動としての魔法の啓蒙活動や、アイリスルートでの最後の演説での、外側の世界における軋轢の存在の示唆はあったにせよ、そういう外部的な騒音は学園という優しい箱庭の中にいる限りは影響を及ぼさない、というスタンスが明確になっているのが個人的には好ましく思うところ。

 体験版の時点で作品イメージとしてすごく恋剣乙女と似通った印象はあったのだけど、あれみたいに軽率にダイナミズムを求めて半端に外部との関わりを作ってしまうとキリかなくなる&説得力が薄くなるのは自明で、そこにしっかり制御が効いているのは良かったと。
 逆に言えば、特に魔法についての秘密や陰謀みたいな話は一切合切出てこないので、その点では私が最初に感じた奥深さはなさそう、という点は、こと社会状況へのアプローチという観点では間違いでなく、そういう方面でのワクワクドキドキを期待していると肩透かし、となる可能性はある作品だとも思います。

 じゃあこの作品にダイナミズムはないのか、と言われれば、私は決してそんなことはないと考えます。
 あくまでも学内における、魔法大戦を通じての心の成長と絆の形成のみが主題ではあるものの、その経緯の追いかけ方が非常に丁寧であることと、やや都合の良さはあるとはいえ、前提の設定の中でその大戦の展開が大きく変貌していく可能性を準備してあることで、それぞれのヒロインルートでしっかり展開に差異を作り、対になる相手との対峙の中で心情を鮮烈にぶつけ合うことで充分に盛り上がりは担保できていると感じます。
 特にメインであるほのかとアイリスの関係には色々な思想が絡まっての奥行き、醍醐味が溢れており、その辺の細かい部分はネタバレで精察しますが、個人的には非常に読み応えがあり、思索を巡らせる余地が沢山あり、かつそれをきちんと論理的に読み解けるだけの材料を確実に丁寧に提供してくれている、という点で相当に高く評価しています。

 勿論その経緯の中でヒロインのマイナス面が露骨に露呈する場面もあり、特にアイリスはそういう不憫な要素を一身に背負わされている感もあるから評価の割れそうなキャラだなー、と、ぞっこんラブの私でも思うくらいです。。。
 基本的に全編通して気分良く楽しめる、という類の作品ではないのは確かで、ヘンな言い方をすると読み手も試されているというか、うわこいつダメだ、とか、この子苦手、嫌い、と思った時にそこで思考停止するか、それともなぜそういう気質なのか、そうしてしまうのかというバックボーンに想いを寄せ、相手の立場に立って考えられるかによって楽しめる度合いが変わっていく構造に敢えてしているのかな、とも感じます。

 それくらいキャラ性、というものに対して、作り手が非常に誠実に描写している作品だと思うし、シナリオにも存分にそれが反映していて、その点での一貫性は見事であるものの、そこを主軸に置いている分、やはり設定として後出しになったり都合よく柔軟性を持たせていたり、後はルートによっては設定の拡大解釈ギリギリで作り込まれていたりで。
 個人的にこういう心情の機微の部分をすごく丁寧に掘り下げ、親和させていく類の作品はものすごく好みなのですが、シナリオとして総合的に見たときにやはりそこそこ粗は散見するし、特化させた部分においてもまだ説明が足りないのではないか、補助線が足りなくて誤解を招くのではないか、という印象は完全には払拭出来ていないかな、とも思うので、ギリギリ名作ラインには乗せられないだろう、という評価にしています。

 個別シナリオ評価としては、アイリス>>ほのか>鳴>一葉、サブはまあ流石におまけ程度で細かく評価には出せないくらいですね。あるだけラッキーくらいの解釈でいいかと。
 メンタリティやそれを紡ぐ深層構造の部分も散発的にネタバレ込みで触れていくと思うのでもう最初から白抜きということで、個々のシナリオをサラッと下から触れていきつつ、最終的に全体構造の中でのヒロインの意義やテーマとの関連性に言及していきましょう。

 一葉シナリオは、それまでほのかと共に在り、ほのかの価値観と同質化してそれを是として生きてきた一葉が、はじめてそれと同じくらいに心を揺り動かされる存在を知り、そこで今までの自分の在り方が実はすこぶる歪だった、ということに気付き、虚像が崩れて露呈した脆さ、弱さに恐々としつつ、主人公との関係を新たに築いていく中で、そういう自分を認め、受け入れていく部分が主軸になっています。
 その派生で大戦の展開にも影響があり、一葉のメンタルの揺れによってチーム崩壊の危機にまで追い込まれるものの、最後はみんなの信頼に応えて、というお約束的な盛り上がりを用意しており、かなり都合の良さは見受けられるものの堅実にまとめている、という感じ。

 マイナス点としては、あくまで作品全体として見たときに、一葉のメンタリティの設定からすると恋愛面での進展の加速はちょっといい加減かな、とは思いましたね。まあ弱ってる時に優しくされてグラッとくる、という意味ではわからなくもないけれど、気質的にもあの落ち込んだところから告白を受けて、そのまま身体の関係まで雪崩れ込むのは展開が雑かと。
 少なくとも無意味に尺の都合で安易にそうなってる、という訳ではないけれど、ほのかとの気質の差、状況の危機度合いも踏まえると軽率には思えてしまうし、なにかしらそれを自然に感じさせる工夫は欲しかったところです。
 
 加えてこれも総合的に見た場合、にはなってしまうけれど、一葉がほのかの存在の輝きに救われ続けてきたように、そのほのかの輝きを一葉がここまで守り抜いてきたことも尊い事ではあり、そういうほのかがここまで保たれていたからこそアイリスが変わっていける契機を紡げた、という枠組みは確かにあって。
 だけどその辺の支え方に関しては抽象的に言及されるだけで、それが一葉の存在価値を読み手に軽んじさせる可能性は否めず、やはりそこをもう少し、ほのかの口から具体的なエピソードとして語られる、みたいな補足があれば万全だったのに、と思います。

 その点についてはハルキスの主人公と伊月の関係性なんかはお手本的だったなと今でも思うのです。主人公が伊月の危機を救い、その真っ直ぐな人間性を欠損させずに済んだことで、最終的に主人公を救い上げる力になっていく点、そして似たような状況下から救いを受けた伊月と、それがなかった葵がその後どういう気質の変化を起こしていったかという具体的なケーススタディを並列する事での説得性は本当に見事で。
 この話でもベクトルは違えど、一葉が保全し続けたほのかの朗らかで輝かしい人間性があることで、アイリスを苛む二重三重の苦悩、疎外から解き放つことが可能になった、かつそれを受けることでほのか自身もその気質を毀損しないままに更に成長する余地を得た、という経緯はあって(……しかしその意味では、はいはい私は恵まれてますよ、それが何か?って最初から言い切れてる伊月って完成してるよなあとつくづく思う)。
 その脈絡の中で、総合的に一葉の存在の意味は深く掘り下げて考えるべきだし、それを正当に評価する上でも上記のような補完はどこかであって然るべきだった、そしてそれをやるならほのかシナリオではなく、やはり一葉シナリオでしかなかったろうと思うのです。

 ……しまった、全然サラッとしてないと反省しつつ鳴シナリオ。
 鳴に関してはある意味キャラとして別のベクトルに立っているというか、ターニャとセットでメインの二人のルートでより顕著に顕在化する疎外・対立の内在性とはちょっと違う、社会的マイノリティとしての疎外が伴う感性の掬い上げと、それを社会に認知させた上での歩み寄りがテーマになっていて、設定の使い方や展開も他ルートとは一線を画していて、統一感という意味では少し異端となっている話。
 ただその分、オタク的なメンタリティに対する細やかな機微の掬い上げと寄り添いが実に適切で、加えて総合的なテーマである疎外感を、鳴とターニャの共鳴するところはありつつも対峙せざるを得ない状況から浮き彫りにしていて面白いです。

 流石に大戦の種目選択がファジーすぎるな、ってのはあるにせよ、最後のバトルの熱さと面白さはこの作品でも屈指と言える出来だったと思うし、この流れだとほのかと一葉が蚊帳の外になり過ぎるのは勿体ないけど、その分こういう状況下でのアイリスの活躍は堪能できて私としては結構好きなシナリオ。あそこであんな風に泣きながら訴えてくれるのは実にアイリスだよねぇ。
 ただしやはり一葉にしても鳴にしても、状況が特殊な方向に流れていく中で、ほのかとアイリスのポテンシャル部分に関しては持ち腐れにならざるを得ないので、その点トータルで見ると不完全燃焼ともいえ、総合的な評価では上二人には及ばないだろうと思います。 
 後は主人公の力の使い方もかなりギリギリではあるよなあと。最後にフォローされた心性条件でギリギリその状況を解釈の射程圏に押し込んでる、とは思うし、その解釈そのものはどのルートに敷衍しても感情的には納得のいくところはあるのですけど、それが発生した起因については曖昧なままなのがネックにはなるかな。

 ほのかシナリオに関しては、非常にほのかの気質にそぐわった、真っ直ぐでスピード感のある話だと思います。
 アイリスと対比してみるとそれは露骨に顕著であり、ちょっと紅蓮華を彷彿とさせますね。元の関係性と気質によって明確に話の長さが制御されていて、ひたすらに目的一本道のくおんシナリオと、ひたすらに迂回してコツコツ関係性を積み上げていくリーゼシナリオの対比ととても似通った作り手の意思を感じます。
 ともあれ一葉によって保全されてきたほのかの善良で健全な精神性は、この学園の、なかんずく魔法大戦の存在が呼び起こす歪みをただ甘受することを当然許さず、恋愛面での紆余曲折にも影響を受けて頓挫や中絶はありつつも、あくまでも両生徒会の融和、ひいては両塔の対立関係の解消を目指していく意思は揺るぎなくて。

 その想いは恋の成就で、より密接に主人公の支えを得ることで益々強固になり、存分にほのかがその才能を覚悟を持って奮える土壌が出来ていって、そうなると相手側としてはそのほのかを抑えられる唯一無二の存在としてのアイリスの価値が相対的に高まり、それに対する期待と価値観の押し付け、同調圧力も一際に強まっていって。
 そのせいではからずも緊張が強まる中で、改めて大戦そのものの価値への疑義を強く抱くようになっていく過程や、それを踏まえての真っ直ぐな処置もいかにもほのからしい気質を反映しているものの、それらすべてが逆説的にアイリスの枷を更に重くしていくことには気づけなくて、というのが絶妙な構成だなと。

 アイリスの激情を受けて、そのやり方が、心の置き方が、決して間違ってはいなくても相手への本当の配慮を欠いた傲慢なものだと思い知らされ、けどその、いわばほのかにとってはじめての挫折を主人公と二人で謙虚に受け止め、それでも、と立ち上がる力に変えて心を閉ざしたアイリスに改めて対峙し、救いの手を伸ばしていく過程はメインテーマに相応しい彩を見せてくれるし、その上での二人の本気の対決の様が見られるのもやはり盛り上がりという意味では抜群ですね。
 強いて言うと本当にこのルートのアイリスの追い詰められ方は不憫だな、ってのと、いくら自主性を尊重するといっても、最後の戦いに孕んだ危険性の高さをああまで看過していいのか?という意味で、マリアの葛藤は総合的に見て理解は及ぶのだけど、あの場面に至ってはそれをかなぐり捨てる勇気はあるべきだったんじゃないかな、とは思うのです。
 最終的な解決は主人公とほのかの手に委ねたとしても、その介助になるなんらかの介入、母親としての情の衝動的な発露を前提に置いて欲しかったし、そういう細やかさがあれば、アイリスシナリオでのあの演出華美の甘えのシーンにもより強い説得性を補完出来たのではないかなと。

 最後にアイリスシナリオは、まあ正直客観的に見てほのかシナリオより二段階も上に評価を置くほど傑出したシナリオではない、とは思うんですが、ここはもう私が最初からアイリスに傾倒し切っていたことと、その気質に触れて、個別シナリオはこうであって欲しいな、と思った部分をほとんど完璧にトレースしてくれていた、というところで、好みがかなり強く反映していることは前提に置いておいてください。
 ほのかと対比的に、という意味も含めて、アイリスシナリオは非常に関係性の変化も展開も緩やか穏やかで、恋愛面に至ってもドキドキが先にきて気が逸る、もっと知りたい触れたいという強い想いが状況を加速させていくほのかとは裏腹です。というかぶっちゃけ、シナリオ序盤だとアイリスの心情は主人公に向けて、より、ほのかに向けてのほうが余程恋してるように見える(笑)。
 
 そもそもの関係のはじまりの時点で、アイリスは本来母親と共にいて甘えたい、という愛着の飢餓を多分に備えており、けどそれは十全に叶うことはなく主人公の家にホームステイすることになり、けどそこで主人公の気遣いの細やかさと優しさに触れて、そこに疑似的な安全基地、愛着の対象としての存在を見出していて。
 その最初にアイリスが求めていた、親子関係に似た安心を伴う関係性を、何気ない日常の中で丹念に蓄積し、その在り方に静かに寄り添っていく中で少しずつ互いの精神性に理解を及ばせていって、いつしかその積層が一定水準を超えたときに、もっともっと深く傍にいたい、偽りの愛着でなく、より強い実感を伴う愛着を、愛情を育む関係に進展したい、という想いがじわっと溢れ出すわけですね。

 なのでその経緯を丹念に綴っているこのルートは本当になだらかで、かつそこはマリアの恣意的な配慮があると見做すべきなのか、その変化の速度や方向性を損ないかねない魔法大戦も、その変化の期が熟すまで起こらないのが特色です。
 他のルートでは時に強制的に状況を捻じ曲げて、それを受けてアイリスの心情も違った道を辿るのは、鳴シナリオやほのかシナリオの変遷を見れば明らかであり、アイリスは本質的に思考の反射速度が遅く、咄嗟の判断では本当に正しい答えに辿り着けない場合が多い中、このルートでは主人公が寄り添ってその変わりたいという想いを積極的に支えてくれている、という意思がマリアにも伝わり、暗黙の連携を為している、と考えていいと思います。

 そして、アイリスの最大の美点は、答えを出すまでにとことん悩み、苦しみ、立ち止まって迷いはするものの、でも答えを出すことそのものは決して諦めない、どんな辛い状況下に置かれても思考し続けられる強さにあると私は考えます。
 その源泉はアイリスの善良さと高潔さ、大切な人への信頼や期待に応えたいという想いが複層的に絡まっていて、それは非常に強固な信念であり、この作品のヒロインの中では見た目とは裏腹に、根っこの部分で一番強い子はアイリスだなと私は思っています。逆に一番弱いのは幼い頃に思考停止してしまっている一葉、となると思いますが、その是非に関してはまた後で触れます。

 ともあれそれは裏返せば、きちんと思考の材料と契機が与えられ、ちゃんと時間をかければどんな事であれ、自分の心に正直な答えに辿り着ける、ということではあり、それを頓挫させないために主人公はただ、最終的な安全基地として、無条件の味方として傍にいる、という構図は本当にアイリスというヒロインの気質を書き手が尊重しているんだなあとしみじみ思うところです。
 ちなみに私の解釈だと、様々な不幸な状況が重なり尽くしたことで、ほのかシナリオのラストではその信念の根底全て、とりわけ母親への信頼と、主人公とほのかへの信頼が揺らいだ為、かつそこから立ち直るタイミングもないまま最終戦に突入せざるを得なかった為に絶望からの思考停止という状況に陥っていて、アイリス贔屓の私としてはそこまでこの子を追い詰めるシステムそのものが絶対に間違ってるだろ、と思わせる要素にもなっていますね。

 少し脇道に逸れましたが、そうやって想いを蓄積していきつつ、きちんと学園の未来を、自分が誰かの為に出来ることも考え続け、ある程度まとまった答えに辿り着いたところで、その理想を現実に変えていくためには当然戦いに対峙せざるを得なくて。
 そうやってはじめて多少なりと積極的に戦いに向き合う中、恋愛成就の幸福感も手伝って、少しずつアイリスの人間性を蝕む最大の癌ともいえる、自分に自信がない、全て自分が悪いと抱え込んでしまう根源的な精神性そのものから克服しないと、本当に変われたことにはならないという事実に直面することになります。

 ……そしてここでまた長々と脇道に逸れますが、この辺の補助線はしっかり引いておかないと、私の言いたいこと、解釈したことが万全に行き届かないだろうと思うのでお付き合いください。

 まず触れておきたいのは、ほのかと一葉とアイリスの三人を対比しての、愛着という人間の根源的な気質を大きく左右する心理的なシステムについてですね。
 ここでいう愛着とは、幼い頃にどれだけ親の愛情を受けたか、それが長らく担保されてきたかという生育環境により、健全な自己愛、自分が愛されている自信をどれだけ堅牢に抱けているかの指標的な意味を示します。すなわち愛着が強固に紡がれていれば自分に自信が持てて、それが薄いほど自信が持てない、と、無論そんな単純化していい概念ではないですが、この話でこの三人の関係を語る上ではそこにフォーカスを集中させてみる方がわかりやすいと思います。

 最初に結論的に言えば、ほのかは万全の愛着を形成しており、一葉はやや欠損しつつその代償的な安全基地を持ち続けていて、そしアイリスには物語のスタート時点ではかなりそれが薄い、と考えられます。
 両親が健在で真っ直ぐに愛情を注がれているからこそ、ほのかは全く屈折することなく健全な自己愛と善良さを備えていて、途中からはそれを積極的に一葉が保全するべく奔走したことで、むしろ浮世離れするほどに綺麗なままにいられて。
 一葉は両親は健在ながら、幼い頃から武に携わる身として厳しく育てられる中で、時にその愛情を疑わざるを得なくなり、素直に甘えられない代償にほのかを保全することで、理想的な偶像として祭りあげることでバランスを保ってしまっている、と言えるでしょう。
 そしてアイリスは本当に幼い頃は愛着を十全に受けていたのでしょうが、幼い頃にマリアを傷つけたトラウマを契機に、母親の赴任、父親の死、寂しい一人暮らしという境遇に蝕まれ、やがて甘え方を忘れ、自分への自信を失い、けどなまじ温もりそのものは知っているためにそれを希求する想いだけは人一倍強くて。

 このあたり、アイリスの境遇は正確に把握できない部分もあるのですが、まあ少なくとも魔法大戦が伝統と思われるくらいに歴史を積み重ねていること、その時点でマリアが学園長を務めている事を踏まえれば、十年単位で好きな時に母親に会えない生活は続いていると考えられますし、少なくとも近年は一人暮らし、という言及も本人からありました。
 そういう生活の中で、周りからは母親のように立派に、というプレッシャーも加わり、アイリスの中で母親という存在が純粋に甘えていい存在でなくなってしまっていく条件は揃っていたと言えるでしょう。愛着は欠損し、それに対する切実な希求はあるものの、その想いを母親に向けていいかわからない、そもそも向け方もわからなくなってしまっているのがアイリスという子なのです。

 故にこそ、主人公に対してああいう幼気な懐き方をするわけで、そこに疑似的な安全基地、なにをしても許される、無条件に味方でいてくれると信じられる相手としての可能性を見出しているわけで、だからこそ例えば主人公がもっとはやくアイリスを好きになって性急に告白したとしても、きっとそれは逆効果というか、むしろ安心できない相手、という想いを抱いて関係性が遠のく確率の方が高くて。
 その意味でもこのアイリスシナリオの、尺が長くなってもアイリスの気質に寄り添った形でなければ恋は成就しない、という確信を感じさせる構成は好きなのです。

 そして、人の本質的な強さ、弱さは当然可塑性のあるもので。
 愛着が本物であれば当然人は強くあれる、けどそれが疑似的なものでしかなければ、それが突き崩されたときに、その擬制で糊塗していた弱い部分が一気に露呈してしまう、というのが一葉のありようで、でもそれが一概に悪い、とは言えないでしょう。
 少なくとも同じように、まだより心の弱い幼い時分にアイリスがほのかのような存在に出会っていたら、そこに依存せずにいられたかと思えば、二人の差は単純に縋れるものに出会えたか否かであって、出会えなかったアイリスは、それでも愛着の源泉である母親を求め、そこに辿り着くために強くならなくてはいけなかった、というだけの差だとは思っています。

 けどやはりそうして時間を置けば置くほどに愛着の回復は難しいもので。
 一葉の場合はまだ僅かな欠損の時点で凍結させてしまっていたようなものなので、それに向き合っても比較的簡単にそれを認め、受け入れることが出来たと言えますが、アイリスはもう筋金入りなので、理屈ではわかっていてもそれを感情に落とし込むのはとても容易に出来ることではないわけですね。
 でもアイリスはそういう状況でも考えることを決してやめない子ですから、なぜ自分がそうなのか、理想として仰ぐほのかの違いはなんなのか、とりわけ自身のルートとほのかルートではそれを深く考えに考え尽くしている、と私は思っていて。

 さて、ここで更に話が迂回しちゃうのですが、まず少なくとも愛着の形成面におけるほのかとアイリスの差異、恵まれている度合いの差は上で触れた通りで、そこは当然アイリスは思い至っているとしてください。
 その上でもうひとつ、現状を取り巻く中で絶対的に二人の差となっているのは、学園に蔓延る対立関係の根源である疎外、にあります。その辺を細かく分析していきましょう。

 疎外、という概念は、なかんずく生理的な疎外感、というのは、最近の日本人には理解の及びにくい概念のようです。
 この作品でいうと、例えば鳴やターニャが示すマイノリティ的な趣味の持ち主が、一般的な社会の中でなんとなく波長が合わない、というように感じるミクロな疎外感なら、誰しもがそれなりに理解できるとは思います。
 ただここで問題にしたいのは、よりマクロな、社会的、国家的規模での疎外感であり、風土・価値観の決定的な違いがもたらす観念についてです。

 郷に入っては郷に従え、という慣用句があるように、かつては日本においても今でいう市町村レベルで独特の風土を維持していたわけですが、利便が普及し生活環境が画一化していく中で、少しずつその独自の風土は風化していき、それと同時に生理的な疎外感、という概念も縮小化していきました。
 それこそまだ1970年代くらいまでは都会においても、歌声喫茶とかそういう、各地方独特の風土に触れることで疎外感を一時でも忘れられるような仕組みがあったらしいですが、もう私くらいの世代からだとその辺は皮膚感覚で知り得ることのほぼない概念になっていて、自分が疎外感を味わう場面も、疎外感を味わっている誰かに直面する機会も失われていて。
 それはある意味では幸せな事なんでしょうけど、だからこそいざその事例に直面したとして上手く対処できないわけで、日本人が外国人、すなわち価値観の違う相手とのコミュニケーションが上手くない、と総体的に指摘される根源はこのあたりにあると言えます。

 そしてこの作品においては、より大所から見たときに、ここに通う生徒は魔女、というマイノリティではあり、そういう疎外される対象であるとも言えるのですが、少なくとも作中の事象においてはそういう外挿的な悪意の視線や干渉は学園という枠組みで切り離し、守り通しているという建前があって。
 けど人は二人でも喧嘩し三人揃えば派閥が出来る、と揶揄されるほど社会的に徒党を、区別をつけたがる習性があるわけで、その前提を置き去りにした中では、当然最大の枠組みとして国内組と留学組、という、価値観を共に出来ない明快な派閥が出来てしまうのは必然、ではあるのですね。

 で、その必然に対して的確なガス抜きが出来ていれば良かったけれど、結果的にそれが為されずに、むしろガス抜きの為のシステムが益々対立を生むというのがこの学園の現状であり、交流すらもまともにしなくなった中では、相互理解など当然生まれずに誤解や偏見が跋扈するのは当たり前で。
 そしてこの時に一番問題視すべきなのは、いわばホームである国内組が、自分達の権利を蚕食されていると感じ、留学組に対して無意識的に郷に入っては郷に従え、的な観念を押し付ける点だと思うんですよね。その理念はホームにいる側が持ち出すのは傲慢であり、相手の被害者意識を確実に強めてしまうファクターであって、けど相互理解が苦手な国内組の面々だと臭いものには蓋、的な対処しかこれまで出来てこなかったと。

 そういう土壌が確立してしまっている以上、留学組が態度を硬化させるのも自明というべきか、それはある意味それまでの自身の価値観を否定されているに等しいからそりゃ受け入れ難いだろう、生理的な疎外感も強く感じるだろうなと。
 大小の差はあれ、留学組とはそういうセンシティブな不安を内包してこの学園に在籍しているわけで、その意味ではアイリスが最初に主人公に触れ合えたのは僥倖だったし、間接的とはいえマリアの愛情を感じさせる処置だったのでしょう。多分最初の人定も、学生としての資格に加えて、アイリスを託すに値するか、ってのも見てたんだろうし、後でまとめるけどマリアが主人公を学園に引き入れたのは色々な期待が籠っているんだよなあと。

 そして主人公はその期待に万全に応えたというか、多分何よりもアイリスの心に真っ直ぐ響いたのは、ぶっちゃけスウェディッシュミートボールだと思う(笑)。
 畢竟文化や風土ってのはかなりの部分食事に依存する点が大きいと思うし、どんなに不安でも慣れ親しんだものを食べられればホッとする、受け入れられているという感覚を味わえる要素で、だから最初にアイリスを歓迎する上で、その思いやりの形として郷土料理を提供したのは、その日語った言葉の全てより影響力があったんじゃないかなと私は思ってます。
 その文脈で見たときに、鳴ルートでターニャが西側の学食メニュー拡大に手を付けているのも、なんだかんだでターニャもその疎外感を緩和する要因がわかってるんだなと思わせるし、だからこそやり方が乱暴なのは窘めても、その内容自体にはアイリスも積極的に賛成してるんじゃないか、って私は解釈してます。

 んで、アイリスにとって更に不憫なのは、シャリーがアイリスシナリオで言及しているけど、元々同じ価値観でまとまっている国内組と違い、留学組はそれぞれに異なる価値観を持っているのに、国内組とは違う、という一括的な処理でまとめられていて、最初の時点ではその疎外感の共有以外で歩調を揃える要素がない部分なんですよね。
 かつ、舞生が国内組から一年生ばかり生徒会役員を選んだのは、能力もさることながらやはり本質的にはその、この学園の空気に染まっていない価値観による変革への期待も籠っていたと思うけど、シャリーの場合は単純に能力重視で選んだら全員一年生になった、ってだけで、いきなりその疎外感に直面して面喰らっている、気負っている状況下で、あの個性までやたらと強い面々をまとめていくとか無茶にも程があるよなあと。

 私も体験版プレイの時点では、留学組のアイリス以外の役員の偏狭さか聞く耳のなさとかイラッとするなあ、と思ってた口だし、サブルートやる前くらいまではその印象を引きずったままでしたので、日記にも全然興味ないぜー、とか書いたわけです。
 まあ最終的にもヒロインとして魅力的かはともかく、それぞれの精神性を垣間見る、という視座では意味があったし、そこでおやっ、と印象が上向いたうえでだと、ほのかやアイリスシナリオをより奥深く楽しめる構造にはなっていて、個人的にはプレイ順としてもほのかアイリスは後ろに回して、先にサブクリアってのがいいかなと思います。

 要するに彼女らがああいう態度になってしまう理由は明確に示されており、けどそれ自体もまた生徒会運営の中ではほのかに比べてアイリスの大きな重荷、ハンデになってしまうのは否めないと、それくらいこの疎外の概念は理解度、温度差が違っているという事です。
 それは畢竟ほのかとアイリスの関係性にも象徴的に仕込まれているのですが、まだそこまで話が進んでいないので(我ながら無駄に前置き書き過ぎですよね。。。)、一先ずこの二つの要素、愛着と疎外がもたらす二人の不公平さをアイリスがしっかり考えた上で認識した、という本筋に部分にようやっと戻りましょう。。。

 この時点でのアイリスは、主人公との関係の進展もあり、そちらからより深い安心を得られるようになったことで、多少の失敗でもどん底まで落ち込まず、少しずつでも自分に自信を持っていいのかな?という前向きな想いが芽生える端緒にあります。
 その過程で上のような気付きを得たとき、そこは善良100%のアイリスなので、その不公平に憤るよりも、自分が頑張ってそれを払拭すればやがて同じ立場に辿り着けるかも、と、それまで見えていなかった憧れの存在に並び立つための具体的な道筋を見出して奮起するわけですね。
 いわばそこで、今まではどうせ頑張っても、といじけ気味だったのが、頑張れば出来る!と自分に期待を抱けるようになって、しかしターニャが陰ながら懸念するように、その付け焼刃の奮闘が上手くいく保証はなく、そして自分に期待すればするほど、それが失敗に終わった時のみじめさ、辛さはそれまでより大きくなるのは必然で。

 そういう感情の緩急は、ここまでなだらかな変化に心地よく親和してきたアイリスの気質を鑑みても、間違いなく劇薬的な効果をもたらすわけで、もしも他の場面よりここでの落ち込みが一際自虐的でめんどくさく鬱陶しく見えたのならそれは唐突な自棄ばちでなく、そういう前提があってこそだと思ってあげて欲しいところです。
 そしてそこにほのかの正論が、優しくも正しくもあるけれど、でも相手を思いやる心が行き届いてはいない言葉が届いてしまえば、いかにアイリスでも本音の部分の、黒い感情を吐露せざるを得なかったと。

 みんなはその発言を衝動的なもので本音じゃない、とほのかを慰めるけど、それは主人公すらこの時点でアイリスの価値感に理解が届き切ってないだけで、実際は本音も本音、とことん考え抜かれた上で厳重に心の底に封印していた、アイリスの一番黒く醜い心だったと私は思います。
 「なにもかも与えられてるくせに、偉そうなこと言わないで!」という語彙の選択からして、ほのかの一番痛いところを精密に抉っているんですよね。確かにほのかは全てを与えられ、支えられ、その上でのびのびと自分の気持ちを真っ直ぐに示していればいい、そしてこのタイミングまで、その自分の立ち位置がどれだけ価値のあるものか、ということに想いを馳せず、ただ無邪気にここまでおいで、と安全圏から手だけを差し伸べているわけで、アイリスの溺れる汚泥に踏み込む意思はなくて。

 それは当然、ほのかが一葉との関係を一番大事として、その関係性を守ることを金科玉条としている限り脱却できない部分で。
 一葉シナリオでは一葉がその歪さを、主人公との関係を進める上で突きつけざるを得なくなったけれど、でもだからといって、ほのかがわざわざ一葉の弱さに寄り添う覚悟を定める必要はなく、主人公との関係の中で同じ高みに戻ってきてくれていて。
 そして自分のルートにおいても、主人公と結ばれることで裏側で一葉の精神面に影響はあるかもだけど、少なくともほのか自身は変わる必要はなかったのです、あっちではアイリスに、「私はかわいそうな子じゃない!!」と突きつけられるまでは。

 ほのかルートではそれでもすぐ傍に主人公がいたから、自分の過ちをすぐに悟って、二人で力を合わせてそれを改め、アイリスの闇に沈んだ心を救い出す事が出来ましたけど、まあどうあれこの作品において、ほのかの無意識的に、価値観を共有しない相手に疎外感を与える態度を突き崩せるのは、その精神構造までをも綿密に解析して咀嚼して、言葉の刃にして突きつけられるのは、何よりも誰よりも疎外され、圧迫され、苦しんでも考え続けてきたアイリスしかいないわけで。
 そしてアイリスルートでは、ほのかの傍には主人公はいてはいけなくて。このシーンで極めて鋭く傷つけられても、それでも迷う主人公の背中をああして押せるほのかの強さもまた本物なのだと、個人的にこのシーンで私の中のほのかの株は数段上がりましたね。
 むしろこのシーンは、そもそもほのかを連れてきた主人公に配慮と思いやりが行き届いてないよなあ、自力で見つけて無言で抱きしめてやれよー、とか思ったのですが、結局主人公もこの国の人間なのは違いないから、その価値観の異なる内在性ははっきり言葉にされなきゃ忖度できないのは仕方ない面もあるし、この経緯があるからこそ、ここから本当の意味で恋人に、アイリスの心の支えになれたとも見做せるのでしょうね。

 で、このシーンのすぐ後の、一葉とでほのかを慰めにいくシーンでの一葉の台詞が、一番この作品の率直さを見せてくれているというか、一葉からすればそう見える、というのも一面の真理で、そういう部分を超えて支えていく、信じ合う関係の尊さを裏打ちしていて、歪さがあるとはいえ一葉の想いもまた本物なのだと感じさせてくれますね。
 ただだいーぶ上で触れたように(笑)、その尊さをより印象的に読み手に感じさせる仕掛けがあれば、このシーンの一葉の言い分にもより強い説得力が出たろうに、というのは残念に思ってます。後はまあ、結局一葉ってどのルートでも、ほのかというフィルターを通してしかアイリスに接してないよね、っていうのはあって、でも本質的な部分では余程ほのかより波長が合いそうなのに惜しいなあ、なんて感じます。

 ともあれ、覆せないほどはっきりと自分の醜さを曝け出しても、それでも信じて支えてくれる人がいるという事実に力づけられ、ようやく我が儘な自分を、純粋に甘えたい自分をマリアにぶつけられたアイリス、まあこのシーンは演出も華美であり作り手側としても見せ場だと力入ってるんですけど、ここでまた微妙に脇道に入って、マリアがどういう想いでこのアイリスを迎えたのか、という部分を見ていきましょう。

 まあどうしても社会的なあれこれが不透明な設定なので確実なことは言えませんが、上でも書いたように魔女という存在はまだまだ社会的な立場は強くない、と推察されます。
 存在そのものは太古からいたのかもだけど、それが科学と融合して魔科学として社会の発展に寄与するようになったのはせいぜいここ数十年の話ではないかと、老人達の偏見、みたいな話からも予想は出来て、かつ魔法を使えるのが女だけ、というのは、基本的に男系社会で成り立ってきた社会の力学を崩しかねないもの故、それこそ様々な疎外や圧力、忌避を受けているだろうと。

 そういう世界観の中では、外の世界の圧力を排除して安心して魔法の素質を伸ばし、同時にそれを社会に還元する高潔な精神性を育む教育機関を運営することは並大抵の苦労ではないだろうし、実際にそれを成立させている(と作中からは解釈できる)マリアの政治力は、決して本人が謙遜するほど低くはなく、その能力と共に尊敬されるべき教育者なのは疑いはないです。
 ただ、その教育者としての立場を全うするために、一人の母親としての時間を犠牲にしなくてはならなかった、という事実は厳然としてあり、大きな視野で見たときに、アイリスのような子が安心して魔法を学んでいける場所を守ることは尊いけれど、アイリス一個人の幸せを鑑みたときには、その愛情は求めている形とは違う、となるのはどうしようもないところで。
 家庭事情とか父親がどんな人だったのかなんてのも曖昧なので一概には言えませんが(アイリスまでが日本語ペラペラなのを設定の都合、で切り捨てなければ、やはりそのあたりにこの国との関わりを強くする要因はありそうですけど)、母親として及第点は上げられない、というのは厳然たる客観的事実でしょう。

 その上で、内憂外患じゃないけど、マリアは学内で蔓延る疎外、対立の解消に対しても打つ手を間違ってしまっていて。
 地獄への道は善意で敷き詰められている、ではないけれど、良かれと思ったガス抜きの提案が、予想もしない理念を孕んで対立を煽る主因になってしまった時には、それを上から強権で押さえつけるわけにはいかなくなってしまっている、それをすればここまでに巣立っていった教え子が自分の生き方を、学びを否定されることになると、深い葛藤に陥ってしまっています。

 当然そんな場所にアイリスを呼び寄せることに関しても、大きな迷いはあったでしょう。
 ましてアイリスの性格を知悉していれば、現状のこの学園で錦の御旗とされ、色々な思いに板挟みになり押し潰されかねないのは、ほのかシナリオの進展を見ればさもありなん、ってところだし、だけどここで、おそらく母親の運営する学園に通う事だけを心の支えにしてきたアイリスを無碍に突き放すのも無情の極みで、それこそさやかに繋がっている母娘の情を完全に千切り捨ててしまうような痛みを伴う処置であるのも間違いなく。

 そして、そんなアイリスをただ甘えさせる、ということもまたマリアには出来ないんですよね。
 何故ならマリアは、アイリスに立派な魔女にもなって欲しいと思っていて。
 多分甘えさせ方をわからなくなっている、というわけではないのは、この設問の端緒で触れたアイリスルートの白眉である母娘の心からの触れ合いのシーンを見れば明らかで、けどこの辛い場の中で挫けそうになるアイリスに対し、マリアが自分から甘えていいの、弱くなってもいいのとは言い出せない。
 もしそれをすれば、アイリスがこれまで頑張って支えてきたものは簡単に折れて、その優しさに縋りついてしまって、彼女の最大の美点である、どんな苦難の中でも自分の頭で誠実に物事を見据え、考え、答えを出すという在り方が消え去ってしまう、一葉みたいに偽りの愛着の中で思考停止してしまう。
 そうなればきっとアイリスはもう自立した立派な魔女とはなり得ないだろう、というのは火を見るより明らかで、まあこの辺はマリアの自業自得というか、母親と教育者、二者択一の未来の中で砂を噛む思いで選択するしかなかった、どうしようもなかった部分なんでしょうけども。

 そして当然ながら、マリアには今のアイリスが、自分から単なる寄り添い以上の意味で甘えたいと、心の全てを預けて、子供のように無心に甘えたいと、それを言い出せないのは痛いほど理解していて。
 だからこそ、マリアは主人公をこの学園に招聘するべく政治力を駆使したのだろう、と思います。

 大枠の設定的にも、今まで女しかいない魔女がより存在感を強めれば、よりマクロな対立が社会に跋扈するのは必然に思える中で、そこで生まれた男の魔力持ち、という存在は、その時点ではその能力の真価は判明してなかったけれど、架け橋、調停者となれる資質を生得的に備えている、と言えて。
 より芝居かがった言い方をすれば、人が必然の対立に向かうのを避けるために、遺伝子が変容して安全弁を生み出した、みたいな存在ではあり、その特異性によって学内の状況を正しく健全な方向に変革させてはくれないか、凝り固まった価値観に風穴を開けてくれないか、それが無理でもアイリスの心の支えになってくれないか、そういう多重の期待があったと思えます。
 その意味では主人公は本当に都合よく、かつ自分の意思が介在しない形で使われてるなあと感じますが、そこはマリアにとっての割り切りというか、一番大切な相手の立場に寄り添いつつも、ギリギリ教育者としての矜持も損なわない選択であり、アイリスに対する出来得る限り最大限の愛情の示し方だったのでしょう。

 だからこそこの場面で、ずっとアイリスが求めていた愛情を与えても、もうアイリスはそれに安住し立ち止まることはないと、自分からそれを口に出来たことが何よりの証左だとわかっていればこそ、マリアは全てを放棄してただ一人の、娘に全ての愛を注ぐ母親に立ち戻ることを許されたのでしょう。
 そう思えばこそ、やはりほのかルートでのラストの暴走シーンではもうひとつなにか、母親としての顔が欲しかったなあとは思うんですよね。まあ極論すればあの場面で危険なのはアイリス以外で、アイリスは魔力が尽きれば昏倒するだけと判断すればこそ、諦念と悔悟を噛み締めつつああするしかなかった、とも言えなくはないんですけどもね……。

 とにかく、マリアが向けてくれた愛情がかけがえのない本物だと満身で感得すればこそ、ここで本当の意味でアイリスの愛着は十全とは無論言えないにせよ大きく満たされ、それが自分に対する自信につながっていく好循環を生み出して。
 その結果として生徒会の面々ともより強い絆を紡ぐことが出来、力を合わせて戦う事の意味を、喜びを知り、ようやく魔法を使うことが楽しい、という根源的な感情に辿り着ける中で、主人公の心配りもあってほのかとの関係も戦いを通じて深まっていく、このあたりは実に馬鹿正直というか綺麗すぎるくらい綺麗な流れ。

 ただ少なくとも、主人公がアイリスに寄り添っている限りは、彼女が望む速度で、そして彼女が望む正しい形に辿り着かなければ嘘なのではあり、その想いを受け止める形で、迷いの中にいたほのかも遂に一人で答えに辿り着く、それでこそアイリスシナリオだと言えましょう。
 手を差し伸べるだけでなく、互いに歩み寄る、同じ高みで対等に言葉を交わし、想いをぶつけ、感情を迸らせる、そしてこういう場面できちんと想いを正しく言葉を選んで発することが出来る、その準備を整えているからアイリスなんだよね、と、内的動因の面でのダイナミズムが素晴らしく紡がれているなと感じました。

 かつその結末がああとか、卑俗に見れば結局三角関係で勝った分だけ強いのかい!みたいなバカバカしさと爽やかさがあって、キャラのみならず読み手の心にも蟠りを残さない着地点になってるのかなと。
 その上でより外に意識を広げた時に自分達はまとめて疎外されうる立場なんだと演説でサラッと触れるあたり、いかにアイリスがその疎外のメカニズムに精通していて、その屈折した心理を迂回させ、学内の意識を統一させるのにはまずどういう旗振りが必要かわかってるよなぁと感心します。
 理想を言えば当然みんなが思いやりを持ち、分かり合う努力を涵養すべきでも、当然誰しもがそんな高潔ではあれないのが現実ですから、言い方は悪いけど仮想敵の存在を仄めかしてナショナリズム的な一体感を喚起する、その辺政治家的な才能もあるじゃん、と思うし、二人の意見のいいとこ取り、という今後の方針からしても妥当な措置だなって。

 そして、そこをスタートとしての新たな関係性は本当にアイリスにとって心安い、そしてかけがえのないものなんだろうと思わせてくれるのは、エピローグでの台詞、「昔からだもん。私、陰険で有名だもん」が証明してるかなと。
 実際アイリスは結構心の中では黒いことも考えてるだろうし、本当の地の性格は、おまけHシーンでも露呈してきているようにほのかにも負けないくらい好奇心旺盛でおてんばなんだろうな、ってところで、自分のそういう汚いところを笑いに紛らせて言葉に出来る、ってのは、本当に心からの信頼があればこそ、それくらいで揺るがない絆を紡げていると信じられていればこそで、このシーンで全力嫉妬するアイリスはもうほんっとうに可愛くて仕方ないですね。
 他ルートでは流石にここまで辿り着くのは難しい、と思えるし、本当にアイリスを大切に紡いでくれている話だと思いました。とてもとても満足です。

 タイトル的にも、コンプレックスって言葉は日本語の平均的なイメージだと劣等意識とかのほうが強いだろうし、実際その要素も強い作品ですけど、同時に本義的な意味である複合性、という観点でも読み解ける、魔女同士でも複雑に分かれる価値観や想いを糾合して未来をより良い形に紡いでいく、その辺の二重性が奥深く、本当に興味深い作品に仕上がっているな、と感銘を受けますね。


 ……はい、以上です。本気で論文だわこれ。。。
 ともかく作品としては期待以上に深く、思索の余地がありまくりで私の大好物のタイプでした。
 シナリオの枠組みとして限界を設定しているし、その中で仕上げる物語としてはかなり上質だけど、細かく見れば不満点も散見するのでギリギリ名作ラインには乗せませんでしたが、これはかなり思い入れ深くなりそうです。本当に執筆し甲斐があったというか、アイリスの素敵さを少しでも深く伝えたい!という意欲に溢れ過ぎていて痛々しかったらごめんなさいですな。。。
 

キャラ(20/20)

 とりあえずシナリオで書き過ぎたのでここからは簡素にいきます。。。
 キャラ的には当然いいところも悪いところもしっかり見せつつ、トータルできちんとプラスに振れるような成長と魅力を引き出せていて良かったですし、ま、アイリス可愛すぎて死にそうでした。。。

 というわけでアイリスはもう当然の殿堂入りですな。まさかここまで大当たりしてくれるなんて嬉しい悲鳴にも程がありますよ。
 基本的にしとやかで心優しくて愛らしくて、情緒がちょっと幼いところもきちんとシナリオの中で生きているし、ぶっちゃけかなり不遇な子ではあるし、ルートによっては設定にかなり痛めつけられるわけですけど、頑張って頑張って苦悶の中でも自分で考え続けることを諦めない強さに感服しますし、こういう子が救われない世界なんて嘘だ!と思ってしまうくらいにいじらしい子なのです。
 恋愛的にも本当に穏やかな入りの中で、少しずつ少しずつ自分を表に出し、控えめにでも距離を縮め、求めてきてくれる姿はぐぁぁぁぁかわぇぇぇぇぇっっ!!!と悶え死ぬ勢いでしたし、本当の自分を取り戻す中でいたずらっぽさや溌剌さを発揮していくのもそれはそれでめっちゃ可愛い。見た目も最強にツボど真ん中だし、こ〜ちゃさん必殺のにっこり笑顔が最強だし、というか基本的にもうなんでも可愛い。この子の全てが可愛すぎて死ぬのです。アイリス大好き。大好き。大好き。

 次いで、遠くは離れてしまうけどほのかの存在感は流石でした。
 天真爛漫で可愛いし、明るくて元気をくれるし、いざというときの強さも素敵だし、恋人モードでもじもじしながらも積極的なのも可愛い。基本的に可愛いし、確かに一見すると、こんな子に優しく手を差し伸べられてそれを跳ねのけるアイリスのほうが意固地に見えてしまうのは仕方ない、と私でも思うくらいにはいい子。
 まあ設定的にそういう突き抜けた強さが保全されている、というころがミソであり、それゆえの奇矯さというか世間知らずっぷり、思いやりはあってもピントがずれていたりと、欠点もそれなりにありつつやはり魅力的だなと感じますが、キャラ的な深みでは流石にアイリスには遠く及ばないし、ってとこですね。

 一葉は見た目より評価されるべき、とは理性的には思うけど、キャラとしてはやっぱりもちょっと柔軟になれんか、と個別以外では思っちゃうよね。まあ個別のはっちゃけはそれなりに良かったし、凛としてすごくいい子なのは違いないんですけど。
 鳴も主要のテーマとは少しベクトルのずれた立ち位置ではあれ、きちんと仲間としての絆はしっかりしているし、最初はゲームキャラうーん、だったけど終わってみればいい子だなー、って思えるようにはなりました。

 サブだとなんだかんだメリッサとターニャは最終的に憎めないキャラに思えるなあ、ってのは、アイリスを精密に分析する中で連関して掘り下げて考える部分が多かったからかも。そしてポムちゃんはいい癒し。


CG(18/20)

 いつも通りファンタジックな世界観のふんわりしたヒロイン像にはカチッと嵌ってくる絵柄だな、って思うし、質と量を鑑みると抜群ではないけれど、シナリオとの相乗効果で刺さるところも多かったしこのくらいの点数になるかなと。

 立ち絵はまず水準くらい。
 ポーズはヒロインで2種類+戦闘固定モーション、サブで1種類ですが、腕差分はとりわけヒロインはかなり多く用意されているので多彩性はあり、躍動感も感じますね。
 お気に入りはアイリス正面、やや左、バトル、ほのかやや右、一葉正面、バトル、鳴正面、ターニャあたりですね。

 服飾はヒロイン・サブともに基本4種類で小物差分なんかもありつつ。
 特にお気に入りはアイリスの私服、あの民族衣装っぽさを僅かに醸した彩と重ね着の感じがすごく可愛くて好き。
 その他お気に入りはアイリス制服、魔法服、水着、ほのか制服、水着、一葉私服、魔法服、鳴魔法服、水着、ターニャ魔法服、メリッサ私服あたりですね。

 表情差分は比較的多め、立ち絵演出とセットでコロコロ表情が変わるのはやっぱり可愛いし満足。
 特にお気に入りはアイリス正面にっこり、照れにっこり、まあ最近だと涼乃に彩芽の系譜でこの表情ピックアップしてるけど、やっぱり必殺的に可愛いんだよなあ不思議と。
 その他アイリス笑顔、困惑、苦笑、泣き叫び、照れ笑い、ジト目、ジト目笑い、きょとん、慌て……つか基本アイリスはなんでも可愛いよで(笑)、ほのか笑顔、不満げ、照れ笑い、首傾げ、拗ね、一葉澄まし、照れ焦り、怒り、睨み、鳴笑顔、ニヤリ、憤然、ジト目、半泣き、照れ笑い、舞生澄まし、困惑、ターニャ照れ怒り、メリッサ意気揚々あたりですね。


 1枚絵は通常が84枚にSD17枚で計101枚。値段踏まえるともすこし日常欲しくはあるけどギリギリ水準かなとは思うし、いつもながらそこそこばらつきはあるけど可愛いのはすんごく可愛いしね。

 特にお気に入りは3枚。
 1枚目はほのか背面座位、これはなんかボディラインのバランスがとても好きで、ラブラブな感じでいいなと。
 2枚目はアイリス押し倒し、まあ掴みはオッケー、的にアイリスの1枚目でこれは可愛いなあねと
唸らせてくれましたので。
 3枚目はアイリス騎乗位、他も基本的に好きなんだけど、一番アイリスが必死に献身してる感じと表情が最高に好みだったかなと。

 その他お気に入りはページ順に、ほのか出会い、魔法、アルバム、抱き付き、3人で繋がる、手を取って、愛撫、パイズリ、バック、騎乗位、アイリス魔法、料理、月見、キャンプ、ママ大好き、対峙、キス、奪い合い、愛撫、正常位、フェラ、立ちバック、バック、背面座位、一葉剣戟、おんぶ、ぬいぐるみ、告白、バイト、二人で、海、騎乗位、バック、屈曲位、鳴雷撃、ゲーム、抱きしめ、舌戦、海、語らい、フェラ、背面座位、背面騎乗位、バック、正常位、舞生バック、メリッサ騎乗位、温泉あたりですね。


BGM(18/20)

 全体的にどみるらしい神秘と荘厳が煌いたつくりで、かなり好みでしたね。
 ボーカル曲は2曲。
 OPの『ウィザーズコンプレックス』は、いかにもなツインボーカルで伸びやかに拡がっていくメロディがらしさ満点で、爽快さもあってまずまず好きですかね。
 EDの『夜明けがきこえる』は予想以上にしっとり重たくも切ない曲調で、個人的にはこちらの方が断然好きですね。特にBメロからサビのつなぎと、そこからの盛り上がりが気に入ってます。

 BGMは全部で27曲とほぼ水準。
 特にお気に入りは2曲。
 『魔法生徒会大戦』はいかにもどみるの戦闘曲っていう疾走感の中に華やかさと幻想性が籠められていて、なんだかんだでこのノリ好きだなー、って思います。
 『Laugh,以下略(笑)』は、タイトルが慣用句からの引用なのでこんな長いのね、というのはともかく、この意味にしっかり見合う悲しみと切なさに沈んだイメージがすごく素敵で、個人的にやはりアイリスの哀しみのありようが、共に泣くものなし、という理解されない悲哀も含めてマッチする曲だなと思いますね。

 その他お気に入りは『C’est super!』『月の理』『夜の帳は静かに降りて』『頭文字M』『あなたが側にいるだけで』『心の迷路』『純血の鎖』『夢幻』『そしてぼくらは世界を変えた』あたりですね。


システム(9/10)

 演出はいつも通り軽快でコミカルでいい感じですね。
 立ち絵はやはりコロコロ動いて、SEのらしさも合わせていいなって思うし、ただバトル演出に関してはぶっちゃけ演出カットがウィッチズガーデンのと一緒やん、ってのがそこそこ目立ったのはアレかも。まあそこまでバトル主題でって話でもなし、程よい塩梅とは思いますが。
 OPムービーはやはりほのかとアイリスの対比の見せ方がすごくかっこいいし、そこに比重を置いて全体のバランスも調和しているし結構好きかも。

 システムも必要なものは揃っていて、スキップもジャンプも速いし使いやすいしいつものどみるでよろしいかと。


総合(89/100)

 総プレイ時間21時間くらい。共通4時間、鳴と一葉が3時間、サブ4人で1,5時間、ほのかが3,5時間、アイリス6時間くらい。まあアイリスだけかなり大切に進めているのはあるけれど、実際的にも他よりはかなり長めになってると思うし、それがシナリオ構成の中できっちり特色になってるので、まあそこをもどかしいと取るか、アイリスにはこれでこそと思うかで評価は割れるかなあと。

 魔法ものとしては珍しく、というのもなんだけど、冒険的な要素が薄めで、あくまでも魔法がある世界の中での軋轢と、そこを乗り越えての心の繋がりというテーマに注力し割り切った構成ではあるので、スペクタクルや壮大なダイナミズムを期待するとちょっと違う、って作品になるでしょう。
 逆に私みたいにこういう細かい心の機微を丁寧に追いかけてくれるのが大好き、って人にはかなりツボに嵌ると思うし、とりわけ最初から群を抜いて一番好きなアイリスが、作品の中でも群を抜いて考察しがいのある子だったもので、まあホント馬鹿みたいに長々と書いてしまいました。。。

 まあ誰しもにお勧めか、と言われるとそこまででもない、表面だけ浚うなら安定して面白い、くらいの出来ではあると思うし、キャラ性にしても色々補助線を設定して、自分なりにキャラの立場を忖度して見つめないと見えてこない部分も多いし、そうしないと不快な点ばかり強調されてしまうなって思うので難しいところではありますね。
 というかまさかこんな思想的な要素が色濃い作品になってるとは正直体験版の時点でも思わなかったし、本当にこれは嬉しい悲鳴。まあ猫撫の人がライター参加してるからそういうエッセンスがしっかり組み込まれたのかな、なんて思いつつ、本当に楽しませていただきましたし、アイリスという素晴らしいヒロインに出会えて大満足でした。
posted by クローバー at 05:00| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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