2016年06月21日

ナツイロココロログ

 情報出たときからうおぉぉキャラかわええっ!って思ってたし、体験版でもごく水準的な仕上がりの中でまったり優しい幸せ感を提供してくれそうだ、という安心感があって、素直に癒し枠として購入。


シナリオ(20/30)

 じかに触れられない想いに。


 お話の舞台は、ネットダイブ(以下ND)による体感コンテンツが隆盛を誇っている近未来。
 主人公は両親が家を空けているために妹の鈴と二人で慎ましく暮らしていて、そのせいで部活などに打ち込む時間を作れなかった分、自宅でND型の格闘ゲームに夢中になっていて、現在ではランキングの上位に名を連ねていました。
 ある日、その評判を聞き知ってなのか先輩である綺新に格闘ゲーム勝負を挑まれ、そして彼女が作ったという電脳研究部に足を運びます。そこには最新の機材が揃っており、そこからのダイブ感覚は今までよりも格段に鮮明で、過去最高に自分の身体をイメージ通りに動かせる感覚に勝利を確信しますが、しかし結果は敢え無く敗北。
 なぜならば綺新はナギと呼ばれるその格闘ゲームの最上位ランカーであり、それに気づいて歯噛みするも時すでに遅し、けれど綺新のほうは主人公のプレイスタイルと態度に感じ入るものがあったようで、設立したばかりで部員の足りない電脳研究部にぜひ入って欲しいと熱心に誘われます。

 いったん答えを留保した主人公ですが、その誘いには心がぐらついて。
 家に戻って鈴と相談し、家の負担は建前上平等に負う、という約束を踏まえ、この機会に二人揃って部活を始めてみよう、という話に落ち着いて。
 翌日、早速勇んで電脳研究部の門を叩いた主人公は、そこで担任の梅宮先生が顧問であり、その弟ともども凄腕のエンジニアであることを知ります。
 そして昨夜は何の部活をするかまだ悩んでいた風の鈴が、親友の小都音を連れて入部することになり、また生徒会の副会長で、かつては主人公や鈴と幼馴染でありながら今は何となく疎遠になっている久遠も、その内実を見極めるという名目で参加することになります。

 可愛い女の子たちと共に日々ゲームをして過ごす日常、それは新鮮かつときめきを感じさせるもので、けどそんな風に部員を集めたことで、本来の部活の目的も本格的に始動することになります。
 それは梅宮先生が開発しているND型恋愛シミュレーションで、リアルの感触、実感をほぼ完璧に再現し、自身のアバターで仮想の中で恋愛を成就させることを目的としており、しかしまだまだ未完成のそのゲームのテスターとして主人公達は巻き込まれていくことに。
 ヒロイン達は主人公の事を、外見を似せたAIであると説明し、逆に主人公にはヒロインの中身は本物であると明かして、現実では中々曝け出せないヒロイン達の本音や本質を知ることで恋愛に至るためのフックを紡いでいこうという試みの中、主人公はヒロイン達が相当に現実と乖離した性格、姿で登場することに困惑しつつ、生真面目に彼女達と向き合っていきます。

 そうやって仮想空間での触れ合いを蓄積することで、今まで知らなかった一面を知り、それが現実の視座にも反映して気持ちが寄っていき……と、先生の狙い通りの効果は発揮されていく中で、けれどどうしてヒロインがそういう擬態めいた姿を取らねばならないのか、やがてその本質に突き当たって。
 果たして主人公達は、現実ではどうしても踏み越えられない壁を、仮想の中での触れ合いの温もりの尊さ、歓びを糧として克服していくことが出来るのか、これはそんな新時代の回避的傾向を強める若人に、迂回的に恋愛の素晴らしさを伝え、心が寄り添う事の素晴らしさを気付かせる過程を丁寧に描いた絆と成長の物語です。


 あらすじはこんな感じです。
 大枠としてもほぼ上で触れた通り、仮想の中でヒロイン達と触れ合っていくうちに、特にその中の一人が気に留まるようになっていって、仮想と現実の両方で距離を縮めていくことで彼女が抱える悩みや葛藤、一歩を踏み出せない壁の存在に直面して、それを克服するために、その壁の向こうに引っ張り上げるために主人公が奔走していく、という形になります。

 テキストは概ねシンプルで、特段に風雅であったりエスプリが効いてたりなんかはしないけど、素直にほのぼのとした気分で読み進められる簡潔さと柔らかさは備えているかなと思います。
 無論ルート間で多少の肌触りの違いはあるけれど、概ねシリアスをシリアスになりすぎないような塩梅に調整はしている感じで、極力ヒロインの健やかな魅力を真っ直ぐ綴ってくれている分、物語の切所となる場面でのやや矯激な反応にもネガティヴなイメージを強く持たずに済む、というイメージでしょうか。

 ルート構成は特に難しい事はなく、狙いのヒロインを追いかけていけばいい、という感じですね。実はプレイするまで先生ルートがあるの知らなかったけど。。。
 ただ基本的に選択肢の内容は、どのヒロインを優先的に助けるかとか、誰と優先して遊ぶかとかそんな形ばかりであり、心情に一段深く寄り添う形のような選択がなかったのは、せっかく仮想空間で得た知見、というアドバンテージが紡げる中ではちょっと勿体なかったかな、と思います。その辺は下でシナリオ構造について触れたときにもう少し具体的に絡めて書きます。

 シナリオに関してはいい点と悪い点が結構はっきりしていて、どちらに意識の比重を置くかで評価も変わってきそうだけど、概ね雰囲気のいい素敵な話であるのは間違いないかなと。

 まずいい点としては、仮想空間での疑似恋愛、という状況設定の中で汲み取るべきテーマをしっかりどのルートでも反映させていて、そこにはブレがなかったことで作品の一体感と清々しい読後感を担保できている部分かなと思います。
 ネット上の恋愛、なんていうとやはりどこかいかがわしさというか、本物じゃないみたいな風潮は根強いだろうけれど、ほんの十数年前に比べてもどんどん若人の回避的体質が進み、それを助長するコンテンツも一世を風靡していく中で、昔気質の体当たりの恋愛は荷が重い、という感覚は、とりわけこういうゲームに耽溺する層には色濃い観念でしょう。

 そういうユーザーの気質を踏まえた上で、この作品はヒロインそれぞれに恋愛に対して積極的になれないファクターを付与し、疑似的に回避的性質、ただそれは純粋に人と触れ合うのが嫌、というのでなく、触れ合いたいけど傷つくのが怖い、それくらいなら無理に触れず、穏やかでそれなりに幸せな今を守りたいという心情形成のありようを明示していて、ヒロインに対し読み手が共感的に向き合いやすい設定になっています。
 その上で、アバターという自分の理想、或いは現実では曝け出せない自分を反映できる空間で、ゲームテストという大義名分も備えて恋愛ごっこを楽しむ、というのは当然精神的な敷居はかなり低く、回避性パーソナリティの持ち主であってもそれくらいなら踏み出せるだろうな、と納得できるスタートラインになっていて。
 そして主人公に関しては、ヒロイン達程に決定的な回避的傾向は備えていない分だけ触れ合いに対しても臆病になり過ぎることはなく、そういう資質を見込んでヒロインとは一線を画した、全てを知る立場でのテストプレイヤー、として対置されているわけですね。

 そうしてはじまる疑似恋愛ですが、しかしこの世界観のシステムにおいてはそれはもう疑似のレベルを遥かに凌駕していて。
 本質的に触れ合いと、それがもたらす愛着、安心は、心と身体両面が満たされることで十全に成り立つものであり、従来仮想ではどうしても身体的接触の部分で嘘くささが付きまとっていた、これは程度の差はあれ現代的なシステムともベクトルとしては同質ですが、そこを抜本的に是正しているのが肝であり、それでも心理的にはアバターという一つの膜の上から触れている、という逃げ道があるのがミソで。

 そのいざ、って時の逃げ道があればこそより大胆にもなれるし、そうすることで触れ合いの楽しさ、気持ちよさを知っていくことで、現実においても取っ掛かりをクリアすればこの気持ちよさがよりリアルに体感できるんだ、という期待感を醸成し、それがいずれ心理的抵抗感を凌駕していくというのは、回避性を前提に考えたときに実に説得力のある恋愛関係の紡ぎ方だと思うんですね。
 ついでにエロゲーとしておいしくもあり、かつ設定的にもプラスな部分としては、仮想空間でのHだとはじめての痛みを伴わないように設定されている、という点ですよね。。。
 当然シーンそのものとしても仮想と現実両方で破瓜シーンやられたらめんどっ!ってなるし、そして全ヒロイン必ず仮想での体験が先に来るのがミソで、そっちで気持ちよさを味わってしまったからこそ、現実でも痛みを乗り越えてでも触れあいたい、という覚悟をスムーズに紡げる部分にこのシステムの真骨頂があるのではないかと思います。

 そして、そういうシステムの中で関係を深めていくことにより、回避的な性質でも無理のない段階を踏んで、現実でだけ触れ合っていたのではきっと簡単には克服できなかっただろう、特にヒロインの感情的な反発の壁という阻害要因を、急がば回れ、ではないけど彼らなりの最短距離で駆け抜けられている、という点がどのルートでもぶれていないのがいいところだなと思うわけです。
 要するに、恋愛下手の現代人が無理なく心理的葛藤や抵抗なく恋愛にのめりこんでいけるフレームが用意されている舞台で、その狙い通りに一般的な回避的気質よりもなお具体的に(ヒロイン間で程度の差はあるけれど)自分の現状に拘泥せざるを得ない要因を、仮想と現実の二面での恋愛の進展によって柔軟に解していくことが出来ているわけで、単純な恋愛模様とはそこで明確に一線が引かれているのがこの作品の特色であり、私が結構いいじゃん、と思った部分となります。

 で、逆に悪いと思う部分は、そういう枠組みそのものはすごくいいんだけど、そのせいでルート間毎の整合性や心情面で当然抱くべき憂愁とか焦燥とか、まあ妬心までいっちゃうと雰囲気壊れるからいいにしても、その辺の摺り合わせがやはり複数ライターでそれぞれのルートを、となる中でおざなりではあるなと。

 特に心情面で顕著なのは、久遠と綺新の抱える心情が他ルートでは微塵も仄めかされない不自然ですかね。
 単純な恋愛模様として見たときに、鈴と久遠は元々の関係があってそこから、という定義は明確に為されていて、でも鈴は妹でもあるから元々諦観は強くあるだろうし、主人公が他のヒロインとくっつけば素直に祝福しつつ、仮想での触れ合いをささやかな幸せの思い出として抱えてそれを現実に波及させないだろう、とは思えます。
 けど久遠の場合、ブランクがあってその分だけ遠さもある、という中での諦めもあるかもだけど、それでも多少なりと、主人公が他のヒロインと結ばれたことに関して心情的戸惑いや悲しみがあってもいいよね、とは思うんですよね。

 そのシーンに限らず、なんですけれど、折角ヒロインビューを採用しているのだから、もう少しヒロイン側の心情を掘り下げてもいいんじゃない?って部分は結構あって、特に久遠絡みにおいては後述する理由も含めて、そういう面でのフォローを密にしてくれないと切ない、ってのが結構赤裸々に感じ取れてしまって、評価として留保や葛藤なく素晴らしい、といえなくなる要素になっちゃってるのが勿体ないなと。
 綺新にしても、このゲームに対する深い思い入れや関係性があるのに、他ルートではそういう素振りを微塵も見せない、また裏で苦労している雰囲気すら漂わせないとなるとやはり違和感にはなっていて、せめて恋人関係になった二人に対し思わせぶりな一言、くらいの差し込みがあるだけでも印象は変わってくるのに惜しいなあと感じます。

 そして整合性、という視座においては、まず上の問題点と連関する形で、他ルートでの心情面での繋がりが乏しいのと同時に、とりわけ久遠や綺新が抱えている問題が他ルートの流れの中で解決に至る契機を紡げるのか?という部分に不安を感じてしまうのが挙げられます。
 二人ともにかなり重い心理的抑圧、固執を形成してしまっている以上、それを解きほぐすのは中々難しく、逆にそれを乗り越えていくからこそ個別での盛り上がり、感動はあるのだけど、でもそれは諸刃の剣でもあるわけで、もしや他ルートではその抑圧が解消されないままに生きていかなくてはならないの?と読み手に感じさせてしまうのはマイナスファクターだと思うのです。

 例えばいつか、届く、あの空に。みたいに、一人のヒロインと向き合えばその背後には他のヒロインの犠牲がある、という構造を狙って作ってるような作品なら、それは切ないけどどうしようもないんだな、と納得はいくからいいんだけど、この作品はそういう方向性を企図してはないよね、とは思うわけで。
 無論回避性の傾向からしてシビアに見ればそれはあり得る未来なんだけど、でもやっぱりこの世界観、雰囲気の中で、或いはずっと抑圧の根源が解消されないまま、意に添わない生き方に縛られ続けるの?と匂わせる要素は消しておくべきだと思うんですよね。

 具体的には他ルートでも、いずれ彼女の抱えるものは解消される、と信じられる言及や態度の変化を組み込んでほしい、ってところで、それは前段の心情の敷衍、という指摘に繋がってくるところです。
 とりわけ久遠だと、主人公と誰か、という恋愛模様を見つめる中で、自己の中での失恋、という感覚に向き合うことで、それが自分の両親への想いに、父親の悲しみと今も抱える愛情の在り処に視線を向ける余地が出来て、時間はかかるにしてもちゃんと話し合っていける土壌が用意されたよ、という示唆があるだけで、読み手の心理的安心感が全然違うとは思うのです。
 綺新に関してはもっとシンプルに、二人の恋愛の成功を受けてシステムの有用性を確信し、より深くその道に力を尽くす決心を表明させておけば、それはいずれその信念と表裏一体の頑なさを解きほぐしてくれるだろう存在と出会える、という予感の萌芽になってくれると思うし、その辺のフォローが綺麗に出来ていれば本当にもっともっと素敵な作品になったろうになあと。

 そしてここまでの観点も含め、より広範な視点での整合性、という意味でやや鬼子になっているのが小都音の存在だったりします。
 ここまで、久遠と綺新はその抱えている心理的抑圧が重すぎて、そのくせ他ルートでちゃんと幸せになってくれるだろう、って担保が感じられなかったのが問題だと語ってきましたが、小都音の場合は逆にどうして彼女がここまで回避性を強めているのか、その根源が見えなさすぎるのが問題で。

 勿論回避性パーソナリティってのは一種病理ではあり、そして後天的要因よりも先天的、遺伝的要因によって発露する部分も大きいから、なんの理由もないけどそういう気質、ってことも充分有り得るのだけど、ただ物語としてはやはりなにかしらの理由づけがあったほうが心情的に寄り添いやすいし、かつ他のヒロインにはそれが付与されているのにこの子だけ、ってなると余計に目立つなあと。
 後で触れますけど鈴に関してはその辺絶妙にバランスが取れていていいんですが、久遠と綺新に関してはむしろ重すぎるくらい、小都音は逆に軽すぎる、と、そのバランスの悪さが、テーマとしては一貫しているのに物語としての統一感を損ねている大きな要因になっていると私は思いました。

 この辺も折角ヒロインビューがあるのだから、それを用いてある程度は解消できるところで、特に個人的にはこの恋愛ゲームを始めるときに、ヒロイン達がどうしてそのアバターの姿を選んだのか、その部分に関してのヒロイン側の心境の吐露を組み込んでほしかったなと思います。
 特に小都音はライという、名前も姿も現実の自分とは乖離したアバターを用いているわけで、何故以前からその姿でネットアイドルなんてしていたのか、その辺の機微も含めて言及し、その中で回避性を強めたささやかな起因、それこそ両親が共働きで、一人っ子だからずっと寂しくて、くらいの要素で充分なので添付してくれれば、よりこの子の物語を身近に感じながらプレイできたのになあと。

 あともうひとつこのルートで気になるのは、他のルートが概ね当該ヒロインと関係を深めることで隠されていた問題が噴出する、という内的要因のみで構成されている中、小都音ルートの公園整備のシーンだけは外的要因に思えるんですよね。
 例えバタフライエフェクトであろうと、そこには細くとも確かな因果の糸がなければ物語としての説得性は薄らぐし、それこそ他ルートでどうしたの?ってなるわけで。他ではその危機に気付いてないなんてのは都合いいし、気付いて取り組んだけど頓挫した、だったら悲しいし、その悲しさが全く他ルート内で反映されないのも不憫だし、ってところで、我ながら細かいけどこういうのはやっぱり気になる。

 だからこの部分は、いっそ内的要因になるように再構成し、かつそれが小都音ルートの終盤の問題である人格乖離に対してより効果的なファクターとなるように紡がれていれば良かったなと思います。
 まず前提としての回避的素養はある、その上で元々小都音はその公園の整備を手伝っていたけど、主人公と関係が深まっていって、デートしたりに時間を取られる中でついそっちが疎かになって、そのせいで管理人さんが無理をして倒れてしまった、と内的動因を契機としての状況であれば、他ルートとの整合性はまず担保できて。

 そしてその蹉跌は、恋愛に浮かれていた小都音に冷や水を浴びせ、やっぱり私なんかが恋をする資格はないんだ、と、元々の回避傾向に拍車をかけるダメージを帯びさせて、それでも諦められないから、だったらせめてライとしてだけでも、って流れでだと、より深みを帯びた乖離の発現のフックになるんじゃないかなと思うんですよね。
 ほんの少し他ルートのありように合わせて匙加減を加えるだけでも、このルートは大分読み口の深み、面白さ、共感度が違ってくると思うだけに、個人的に本当に勿体なかったなと思うのです。やっぱり現状の話の中でだと、どうしてそこまで小都音が思い詰めてしまうの?って突き放した見方に天秤が触れやすい、誤解を招きやすい構造になっちゃってると感じるので。

 そして、ここまでで提起した問題点を踏まえてみたときに、やっぱり鈴ルートは一番無難に安定しているよなあと思うんですよね。
 妹シナリオとして、妹が兄を特別に思う心情の形成の余地を生み出す土壌はしっかり準備されており、けど同時にその状況が生み出す抑圧が彼女の回避性を、臆病さをも育んでいるという構図は、全てが内的要因で帰結する部分も含めてすごく王道的で。

 その下地があるところに恋愛への希望を加速させる装置が提供されれば、それはもう深みに嵌れば嵌るほど抜け出せなくなるだろうなあ、ってものすごい納得がいくし、逆にある程度で留まるなら上でも触れたように、それを大切な思い出としてそっと心の宝箱に仕舞いつつ、他ヒロインとの幸せを素直に祝福できる、そういう立ち位置でもあると。
 まあ意識ダイブの部分は多少強引さはないでもないけど、それでもそういう風になってしまう、という前提が堅牢であるからこそ、ここ一番で情緒特化であってもマイナスには感じないし、またこのルートはあくまでも二人の心情の問題に特化していて、テーマとはずれてしまうインセストタブーの発露の部分に深く切り込まない節度を持っているのも、人によってはスッキリしない、と思うかもだけど、私的には高く評価しているところです。

 ……んー、ちょっとテーマを切り口に取り留めなく書いていったのでまとまりのない話になってしまったけど、今更だけど個別評価としては、鈴>久遠>綺新>小都音くらい。
 テーマとしては一貫していてどれも同質の味わい、読後感の良さがあるし、その分物語として飛び抜けていいのも悪いのもないけど、ここまでで触れた些細な匙加減の違いで印象度は違っていて、それがそのままシナリオ評価に直結しているかなってイメージです。

 だからこの評価は減点式で、特に久遠シナリオなんかは素材としては本当に心温まる素敵なものなだけに、もう少し見せ方に配慮と重みがあれば、かつ他ルートでの尊重があれば鈴より上にいったんだろうけどなぁって。
 わかりやすく言えば、久遠は素材としては90点まで取れるけど、料理の仕方がちょっと悪くて70点、鈴は素材的には80点が限界だけど、その素材の持ち味をかなりしっかり引き出せているので75点、くらいの評価をしてると。同様に示せば、綺新は85点マックスの素材でやや粗野なところがあるので68点くらい、小都音は80点マックスで下味のつけ方が上手くないので65点とかそんな感じ。

 普段はあんまり細かく書かないけど、一応私の中では各ルート毎に素材点をつけていて、例えば一ヒロインの為に特化した構成だったらそのヒロインは素材点100点になるけど、その割を食って他のヒロインはせいぜい70〜80点までになるし、逆に横並びなら構成の質にもよるけどより平均的になると。
 ちょっとパッと過去作でわかりやすくこれ、っての浮かばなかったけど、脱落式なんかだと特化型になりやすいですよね。あ、まだ出てない新作だけどアレだ、アマツツミだったらほたるは確実に素材点100点で、こころと愛は多分85点くらいになりそうだけど、響子はすごくおミソになりそうだよね、みたいな(笑)。

 ともあれ、そのマックス値を踏まえた上で、どれだけそのポテンシャルを引き出しているかで採点して、横並びの作品ならその平均値を、特化型だったら特化部分をより重視して最終的にシナリオ点にすると。これはわかりやすく横並びではあるので、平均点が69点くらいだからまあ20/30だよなあとという感じです。
 正確に言えば20,7くらいだから21でもいいんだけど、他の点数との兼ね合いで21にするとAクラスになるので、そこはA、ではないかなという感覚的判断も含んでます。
 実際久遠や小都音、綺新に関しては、ほんのちょっとの配慮と工夫、摺り合わせが行き届いていれば、それぞれが簡単にあと10点くらいステップアップできる余地があると思えたので、いい作品だと思うけど惜しいなあ、というところに落ち着くし、そのちょい足りない感を反映させるのに境界は大切という事です。

 ……ちと余計な話に脱線しましたが、ともあれ私みたいに意地悪く細かい人だとこうかもだけど、基本的には心安く明るく爽やかに楽しめる、その上でほんのり泣ける、みたいな感じでいい作品ではあると思いますよ。


キャラ(20/20)

 基本的にヒロインは本当にみんな愛らしく可愛くって、その魅力を丹念に引き出そうとはしてくれているので、いざ重要な局面で後ろ向きになったり矯激な行動に走っても、痛々しくは思ってもなんだこいつ?とは思わせない程度にバランスがとられているし、そこを経ての成長要素、テーマと寄り添っての在り方はやはり清々しくも快く、みんないい子だなあとしみじみ味わいながら終わらせてくれるので満足してます。

 一番好きなのは結果的には頭一つ抜けて鈴でしたね。
 元々相当好きになるだろう、とは思ってたけど、やはり元々のスペック的にもちっちゃくて頑張り屋で甲斐甲斐しい妹、ってのはツボなんですよねぇ。特にこういう生活感が色濃く出る作品で、その妹らしさを存分に発揮してくれるのはすごくいいなぁって思うし、最近では花咲のののかと同レベルで好きな妹かな。
 今年はここまでそれほどすごくいいと思える妹いなかったから余計にそう感じるのかも。日々姫はかなり好きだけど、でもなんかそこまで妹感がないし、兎亜はパーペキ妹様だし(笑)。

 ともあれ、素材の部分で大好物な妹像でありつつ、しかし彼女の中でそのしっかり者の自分がひとつのコンプレックスにもなっている、というのがまた味わい深いところで、そう言う自分を誇りつつも寂しさを抱え、妹である歓びを覚えつつも物足りなさも感じ続けて、そういう葛藤の機微が本当に丁寧にシナリオに落とし込まれているし、一口に妹としての恋愛に至る葛藤とはまた違う風味を照らし出していて、そこはすごくいいなと思ったところ。
 あと立ち絵的にも超可愛いしね〜、あのミニサイドポニーが程よく幼さを醸していて物凄い好き。シナリオ的にも一番好きだし、他ルートでも献身的に支えてくれてそこに屈託を感じずに済むし、色んな意味で一番癒されるキャラでした。

 次いで久遠、かな。ほぼ小都音と同点だとは思うけど。
 いわゆるツンデレ的な要素を出しつつも、極端にツンツンはしてなくてちゃんと話せば通じるしノリもいい、そういう素朴な在り方は素敵な中で、でも理想の自分との乖離で苦しんでいる部分もあり、そこを掬い取れる個別に関しては本当に可愛いなって思うし、むしろこの子を一番最初にやってしまったせいで、他ルートに進むのが少し気重になってしまったりも(笑)。
 そういう点で少しマイナスも孕みつつ、ストレートにいいキャラだったと思うし、見た目もやっぱり凄く華やかで可愛いし好きですね。

 小都音に関しては、素材的には鈴と同じくらいに好みだったんだけど、見せ方がちょっと雑だったなと。
 どうしてもその心情の根源を忖度して寄り添える形になってない中でだと、彼女の度が過ぎたようにも思える引っ込み思案や拒絶は余計痛々しく見えるし、そこまで思い詰めるの?ってところで、そこに手を差し伸べるだけの愛着との天秤が微妙になっているなあと。
 それでもライであるときの雰囲気も含めてすごく心優しくいい子であるのは間違いないし、おずおずとでも恋人として振る舞い、ふわりと花咲くように喜んでくれる仕草や風情なんかは本当に可愛くて、シナリオも花言葉とかその辺に絡めてるあたりは生き生きしてていいんですけどね。。。

 綺新も見た目のステータスより全然上品というか、個性として粗野な部分は全然なくて気持ちのいいさっぱりした性格だし、だからこそ個別でのああした思い詰め方はむしろ極端だな、もちょっと緩和した方が他との整合性でも、とは思ったけど、それを含めて魅力ではあると思います。
 恋愛音痴甚だしいのでその分恋愛模様の滑稽さ、というと失礼かもだけどその辺楽しかったし、でも女の子だけ(厳密には違うか。。。)服選びのシーンで他ヒロインがどうにも良識の足りない子になってるのが笑うしかなかったともいう。。。

 あとはやっぱりエウ君かなぁ、流石マスコットだけあって全力でキュートだったし、シナリオによってはかなり活躍したり、素朴で素敵な示唆をくれたり、作品の雰囲気づくりにも大きく寄与していたし良かったと思います。
 梅宮姉弟もいいキャラだったし、その他の大人もみんな善良で、基本的に性善説の世界なので心地いい、ってのは確実にありますね。


CG(19/20)

 これは期待以上にとっても可愛かったですねぇ。細やかな部分にまで配慮が行き届いていて、とにかくヒロインはみんな華やかで可愛らしく描かれていたし、量的には値段踏まえると抜群とは言えないにせよ、かなりインパクトの強い点も多かったのでここはこの点数をつけたい、と思いました。……その分シナリオが割を食ってるともいう。。。

 立ち絵に関してはアバターもあるから量としても水準はクリアできているし、質は本当に素敵でしたね。
 ポーズはヒロインで2〜3種類、サブで1種類と、腕差分もアバターとしてしかないからそこまで動きが活発、って感じではなくて、でも不思議とそれぞれの個性が色濃く出ていてすごく可愛いんだよなあと。
 特にお気に入りは鈴のやや右向き、この向きでのサイドポニーの見え方がめっちゃ可愛くて、いい意味で幼さを引き出せていて大好きですね。
 その他お気に入りは、鈴正面、ロリ鈴正面、久遠正面、やや左、小都音正面、指合わせ、ライ正面、横ポーズ、綺新正面あたりですね。

 服飾はアバター込みでヒロイン6〜7種類、サブで2種類とかなり豊富、かつデザインが本当に華やかでかつ繊細で、物凄く可愛いので抜群に目の保養でしたねー。
 特にお気に入りは鈴の浴衣と小都音の私服ですかね。鈴は色といいラインといい華やかさといい絶妙だったし、小都音のワンピースは清楚可憐で、かつ正面向きで肩ひもがゆるっとするのが抜群に可愛かったなと。
 その他お気に入りは鈴制服、私服、水着、リン水着、看護服、久遠制服、ドレス、浴衣、水着、クオンドレス、水着、小都音制服、水着、浴衣、部屋着、ライ水着、綺新制服、浴衣、私服、メイド服あたりですね。

 表情差分はやはりそんなに多くはないけど可愛らしさに溢れていて満足です。
 特にお気に入りは鈴のやや右苦笑と久遠の正面拗ねかなぁ。どちらもそれぞれの個性がにじみ出ていてとってもかわいいし、ポーズとのマッチングが完璧だったんですよね。
 その他お気に入りは、鈴笑顔、怒り、呆れ、照れ焦り、照れ笑い、拗ね、きょとん、久遠笑顔、きょとん、照れ笑顔、照れ困惑、不満げ、小都音笑顔、半泣き、困惑、悄然、上目、拗ね、ライ笑顔、不安、綺新笑顔、不満げ、照れ困りあたりですね。あ、エウ君の半泣きとドヤ顔も好き。

 1枚絵は通常81枚にSD14枚の計95枚。キュッパチとしてはまあギリギリ水準かな、くらいの量ではありますが、質としては期待以上に素敵だったし安定もしていて、とても満足できましたね。

 特にお気に入りは4枚。
 1枚目は久遠背面屈曲位、このボディラインの美しさと官能に浸りつつ安心も感じさせる久遠の柔らかさがとても好きです。
 2枚目は鈴屈曲位、どこかまだあけっぴろげにはなれない心境を反映したような体位を丁寧に解きほぐしていく、そのさやかな表情の変化が超気に入ってます。
 3枚目は鈴と帰り道、振り返っての闊達な雰囲気と、情緒あふれる光景はすごく後味の良さを引き立ててくれる1枚だと。
 4枚目は小都音正常位、色んな葛藤を超えた上での正面からの向き合い、という意味でも感慨深いし、すごくちっちゃくって可愛いよねと。

 その他お気に入りはページ順に、空中庭園、仮想プール、海、花火、久遠はお嬢様、手つなぎデート、キス、正常位、バック、誕生日、対面座位、立ちバック、母の記憶、手を繋いで、添い寝、バースデー、ウェディング、鈴料理、腕組みデート、着替え、肩車、正常位、フェラ、お風呂、昏睡、背面座位、寄り添い、観覧車、バック、騎乗位、綺新メイド、デート、キス、バック、膝枕、正常位、パイズリ、バック、ウェディング、立位、膝座り、小都音水やり、ライデート、公園、過去、デート、正常位、屈曲位、キス、パイズリ、抱きしめ、貝合わせ、未来へ、背面座位、添い抱きしめ、贈り物あたりですね。


BGM(17/20)

 要所に独特の雰囲気を醸しつつ、概ねはこの温かい世界観にマッチする柔らかい曲が多かったかなというイメージですね。質量ともに水準はクリアしているし悪くはなかったけど、ガツンと来るところもなかったかなと。あとここの曲鑑賞はコメント付きなのがいいですよね。

 ボーカル曲は2曲。
 OPの『DIVE 2 WORLD』は、電脳世界っぽいイメージと疾走感を色濃く出しつつ、最後までスタイリッシュに流しきった感じで、曲としての完成度は高いなって思うけど個人的にグッと引き込むところなくスッと抜けていく感じでもありますね。
 EDの『seed of happiness』はOPとは真逆の柔らかく温かく、そして幸せをしみじみと噛み締めるようなイメージで、穏やかな愛を求めるありようにもしっかりマッチしてくるけれど、曲として鮮烈な印象は流石にないなあと。

 BGMは全部で35曲と水準は軽くクリア、特別にすごい好き、ってのはもう一歩足りないって感じでなかったんだけど、全体的に曲の隅々まできらめきややさしさが行き届いていて、総合的にすごく質が高く画一的にもなってないなと。
 お気に入りは『HeartfulDiVE』『Twinkleworld』『UFD』『Battle of overture』『DUEL of SYBER』『ありのままの彼女』『不和迷宮』『記憶の扉』『ぬくもり』『追鈴』『未来へ架ける橋』『かけがえのない君へ』『アイノオト』『静かな波紋に浮かんだ僕ら』『その先のRelation』『SecretPurelyBell』『オシロイバナ』あたりですね。


システム(8/10)

 演出としてはまあ普通、かなぁ。
 日常に関してはそこそこは動くけど活発に、ってほどではないし、電脳空間や未来感という部分でもそれなりにはイメージを紡げているけど派手に、ってほどではない、総じてしっとり大人しめの演出ではあると思いますし、といってシナリオに即した強調演出もさほど目立ってないので……うん、やっぱり普通か。
 OPムービーは色遣いが凄く綺麗なのとスピード感のマッチングがいいなとは思うけど、すごくって程ではないかな。

 システム的にも特に不備はなし、ジャンプも高速なのでプレイ感はとても楽。
 細かいところで少し足りない、ってのはあるけど、必要なものは最低限揃ってるし、特別加点要素もないけど減点もないかな。あ、EDが飛ばせないのだけはちとめんどかったかも。


総合(84/100)

 総プレイ時間18時間くらい。共通4,5時間、個別が3時間ずつに先生が1,5時間くらいかな。そこまでポリューミーではないけどその分コンパクトにテーマに合わせてまとまった話になってるし、もう少し心情の掘り下げが丁寧ならなおいい、って場面は多々あったけど、その筋道が見えないほどではないので総じて悪くはなかったと思います。
 正直もっとシナリオとしてはグダグダになるのも覚悟していたので、これは結構嬉しい誤算ではあったな、と同時に、それでもちょっと詰めが甘いなあと感じるところが多くって勿体なかった。本当にシナリオ項目で触れた部分がちょっとずつでも配慮されているなら、相当に統合感もあるより気持ちのいい作品になったと思うんですけどね。

 それでもシナリオは充分ヒロインの魅力は引き出してくれているし、絵とキャラ買いするにしても充分な質はあるので、好きな子がいるなら特攻して損はないと思います。 
posted by クローバー at 06:22| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: