2016年07月05日

ゴア・スクリーミング・ショウ

 流石に購入動機までは覚えてないなあ……。最初のプレイ時からいい作品だと評価はしていて、いつかリプレイして感想書きたい作品ではあったのに、いつの間にか十年も過ぎ去ってしまっていたとは切ない……。


シナリオ(25/30)

 人の業を赤裸々に。

 主人公は両親の転勤を機に、親戚の闇子を頼って数年ぶりに生まれ育った土地に戻ってきます。
 転校初日、自転車で学園へ向かう途中、ふと気配がして振り向けば、そこには嫣然とした笑みを浮かべた少女の姿があり、それに気を取られている内に知らぬ間に森の中に迷い込んでしまっていていきなり遅刻してしまい、不可思議さといたたまれなさを抱えながら新生活をスタートさせて。

 それでも元々いた土地でもあり、幼馴染のあかねやその親友の葵、更には偶然にも都会時代にクラスメイトだった希衣佳も在籍しており、多少ぎこちない部分はありつつも、いきなりその土地の有力者の息子である貞島に目をつけられ、それに一矢報いるという武勇伝を築いたこともあって、徐々にクラスにも溶け込んでいきます。

 けれど、いつから世界は歪みはじめていたのか?
 はじめは学園外で起こる不気味な事件に過ぎなかったものが、徐々に主人公の周縁にも影を落とすようになっていき、そしてその状況の中で最初の日にチラリと見かけて強く印象に残った少女、ユカとも再会して。
 彼女の特異で先鋭な言動は、誰しもの心を深く抉り、感情の揺らぎを植え付けていって、それを発端にしたかのように繰り広げられる怪奇現象に彼らは翻弄され、時に道を見失い破滅へと転がり落ちていき、けど時には育んだ絆の純粋な強さによってそれを打ち払い、ユカの執着を断ち切って。

 土地をめぐる神話や伝承、おどろおどろしい過去がもたらす怪奇の中で、徹底的に人の弱みが、脆さが露呈しながらも、それでもそれをすべて受け入れて生きていく、という覚悟を抱くことで夢幻の誘惑を断ち切っていく、これはそんな信念や絆の意味を問う純愛物語です。


 旧作なので全体的に軽く書かせてもらいますが、大枠としても主人公が誰に想いを寄せるかで当然世界の位相が変わっていく中、その対象ヒロインが抱える一番大きな弱みや後悔をユカとゴアが事ある毎につつき、増幅させていく中で、その悪魔的な指嗾に影響され半ば現実から乖離していくのを、やはり心の強さで、弱みも全て受け入れる強さで克服していく、というのが大よそのイメージになります。

 テキスト的には淡々としていながらも確実に鋭く人の心が持つ弱さや醜さを赤裸々に示して、そこに居心地の悪さを紡いで、状況との相乗効果で非常に独特の世界観を構築することに成功していますね。
 文章そのものもかなり文学的で雅趣すら漂わせており、でも総合的には退廃的というか、無常観を強く打ち出しつつの語りで、その雰囲気を打破する上での覚悟の築き方や真っ直ぐな強さの価値を相対的に重く感じさせる読み口になっているのではないかと思います。
 猟奇的なシーンも多い中でその表現にも容赦はないし、その辺は本当に骨があって挑戦的でもあって、好き嫌いは出るだろうけど引き込まれる文章になっていると感じますね。

 ルート構成はそこそこ難易度が高く、ただ選択肢毎にヒロイン好感度の増減を判別できるようにはなっているので、単純にヒロインルートに入るだけなら難しくはないはず。
 ただその中で終盤は主人公の心情や迷いの有無を問うようなものも増えてきて、ちょっとでも揺らぎや隙を見せれば即BAD、なんていう殺伐さをもしっかり内包しているので気が抜けないし、まあむしろBADエンドだからこそ書ける特殊な心情とか人間性の本質の示唆とかもあるので、バランスよく全エンドを楽しむべきではあります。
 あかね、葵、希衣佳の三人をクリアするとロックが解除されて闇子が、そしてその後にユカが攻略可能になり、基本的に後半二人はそこまでの不気味で一見理不尽にも見える世界観の解明や、それまでヴェールの影に隠れていた真実が開示させる形で、また少し味わいの違う物語になっています。

 
 シナリオ的にはどうしても猟奇的、凌辱的なシーンの残忍さが際立っている中で掴みにくいところもありますが、基本的に非常に筋道の通った物語になっていると思います。
 まず前提として、土地に伝わる伝承などからこの場に影響を及ぼす人ならざるものの力の存在を示唆し、でもそれが現実にまで影響を及ぼすにはいくつもの制約があって、現代における発端は戦中の狂気的な実験の副産物、という形で示されているのでしょう。

 かの狂った女性が示唆する通りに、皇国の荒廃をかけての狂気的な、けどだからこそ迷いのない一心不乱の祈りが、生贄があればこそ、向こうの世界との扉が開き、この世界でその猛威の一端を担うためのオーパーツ的な石が送り込まれてきて、けどそれを一番最初に享受した女性は、もうその時点で儀式と称しての残酷無比な仕打ちに心を分離崩壊させていたから、その力の本質は理解しつつもそれを運用することはなかったと見做せます。
 けれどユカは一時的な恐怖や狂気に苛まれる中でその石に取り込まれたことで、ある程度正気を保ったままでその恩恵を授受してしまっていて、結果としてあんな力を揮うことが出来ていると。

 ただしユカ自体、その力の誘惑に数年以上は必死で抗ったと思われる示唆はあり、主人公との夏祭りのシーンの直前までは一線を超えていない、けど数年が過ぎても一切歳を取らない娘に対する心情の変化に耐えきれなくなり、世界の全てに絶望してその暴虐に身をやつしたところで遅まきながら差し伸べられた救いにユカは拘泥して生きていくことになるわけで、その辺の機微は切々と言葉で語られるわけでないのですがしっかり伝わってくる構成になっていると思います。

 ともあれ、そんな経緯でゴアという表層を持つ、いわば夢幻の世界の力を一定条件の下でなら行使できるようになったユカは、その力を過去への復讐と、そして主人公を手に入れるために不必要なものを排除する、という二点に限定しながら行使していて。
 そしてその力を最大限に奮える条件は、まず対象がこの街にいること、そして深い後悔や弱みを持っている事で、果たしてその力でどこまで心理を鏡写しに読み取ることが出来るのかは言及はされていないけど、少なくとも一番重くその人の人生に塗り込まれている悔恨や唾棄すべき心情を的確に掬い上げられるのは、はじめてあかねや葵、希衣佳に遭遇した時の言動で裏付けられるでしょう。

 そういうユカの干渉とは別個に、街でまことしやかに語られている神隠し事件は、おそらくゴアが表出していることでより鋭敏に発生する神隠しの、この作品上で規定された本質を語るもので、ある意味では自然現象的なものなのだと解釈できます。
 誰しもが持つ弱みや触れられたくない部分を否応なく見つめなければならない状況下で、自分を律することが出来ずにマイナスの感情に溺れていってしまう、そういう現実への絶望、消失願望に似た想いが強まることで向こう側の世界との親和性が高まり、その結果としてゴア的な存在がその人物を向こうに連れていく条件を満たす、というメカニズムを示すことで、ヒロインの心のケアに失敗してそういう自暴自棄を露呈させてしまえば、同等の結果がもたらされるのだと示唆しているわけですね。

 まとめると、その神ならぬ力は人の弱さを感知することが出来て、それを能動的に用いれば傷を抉り、揺さぶることも出来る、そうすることで現実から剥離させることも可能で、ユカはそうすることで主人公の周りにいるお邪魔虫を排除しようと企んでいる、それが最初から攻略できるヒロイン三人のルートの根底にあり、そうやってぐらぐらと揺さぶられる心を強く律し、互いを信じ合い、弱みも醜さも曝け出して向き合って、それでも純粋な想いを抱き続けられるか、その心の強さが問われるシナリオになっている、と総括できるでしょう。
 個人的な好みも踏まえると希衣佳>葵>あかねくらいのシナリオ評価になりますが、どれも多少ならず不可思議現象の中、より一層心の強さが世界の形を決定づける、という条件下に放り込まれていて、現実と夢幻の境目がわかりにくく解釈は難しいけど、基本的には余程その世界に親和しないと現実での物理的表出にはつながらない、というルールは定義させていると思います。
 だからどのルートでも少なからず現実に爪痕、傷痕は残るものの、それも自分の弱さが招いたことだと受け止め、主人公の支えを受けて真っ直ぐ今の自分を認めるように胸を張っていく、というありようがラストには示されていて、逆にそこに至れなければ悲嘆や絶望の中で悦楽の夢に飲まれ、消えていくという構図ですね。

 そういう心情の在り方を、決して善悪を基準として紡いでいないのも特色的で、あくまでもそれは人が人として生きる限り付きまとう業であり、それを無闇に否定するのも過剰に肯定するのも人としてのバランスを欠く行為であって。
 だから必要なのは、現状の自分を過不足なく真っ直ぐ受け止める誠実さと、その芯がある故に閾値を踏み越えるほどには揺れない心の強さであると、非常に上手く出来ていると思うのはそれを登場人物の全てに問題なくあてはめられる、というところだと考えます。

 それを読み取る上でキーになるのは由規という、ユカの手によって命を落とした妻の復讐の念に凝り固まって生きてきた男のありように明確に示されているかなと。
 上で善悪を基準としていない、と触れたように、夢幻に囚われない強さの根源がなんであるかは様々で。
 例えば過去の石の表出に影響を及ぼした強さの根源は狂気だと思うし、ユカと由規のそれは憎悪にほかならず、全てを振り捨ててでも一心にそこに拘泥し続ける迷いのなさ、純粋さがあればこそ無限に飲まれずにいられる、と言えます。
 無論ヒロイン三人のルートで提示されるように、純粋な信頼や愛情もまた同位の価値を示すものであり、しかし皮肉なのは、守るものがある、という状況の中ではそのこと自体が人の弱みになってしまうということで。

 ヒロインルートにおける主人公も、ヒロインが彼岸の世界に足をかけてしまった追い詰められた状況の中で、選択の余地がそれしかないという条件下でようやく強さを発揮できているし、そして更に皮肉なのは、そういう主人公の覚悟を由規が尊重し、以前の自分の境遇と重ね合って見てしまう事で、それがこの状況下での由規の弱みになっているというつくりなんですよね。
 だからヒロインルートでは例外なく由規は主人公が想いを遂げるための捨て石的な立ち位置に置かれてしまうわけで、そのあたりの厳格さも含めて、その心理を蝕む容喙に対する処方箋が純粋さのみに規定されている、と読み取ることが出来ます。

 ただし、ユカが積極的にそこに容喙する条件は限定されていて、本来は闇子もその条件に当てはまる存在でありながら、特異な状況と勘違いがそれを回避する要素として組み込まれており、また実際にユカと対峙する機会が、由規の配慮もあって極端に少ないという状況も後押しする形で、あくまでも現実に沿ってユカの過去と今を見つめるための材料を、そこから解放するための手段を見出すという道筋に進めているのが闇子ルートで。
 ここでもやはり由規は、主人公と闇子の両方の想いを尊重する中でそれを弱みとしてつけこまれ、散っていく運命にあり、けどその身を挺した献身が結果的に根治的な解決の道筋を提示することになっているのが象徴的ですね。
 すなわち、他者を思いやることは悪意を持って付け込まれれば弱みになるけれど、その思いやりが育んだ絆が大きければ大きいほど結果として理想に近い解決が得られると、その辺はいかにも物語的な救いであり、ホッと心を和ませてくれる要素でもあって、基本冷徹無比な現実を投影している中で一服の安らぎになっていると感じます。

 この闇子ルートの前提と、ユカルートで示されるユカの心情を行間まで汲み取っていくことで、どれだけユカの想いが愛情と憎悪の二面性を持ちつつも純粋さを保っているかを納得させてくれるし、無論他ルートのような実際的な暴虐はせいぜい真太相手にしか見せていない(無論選択次第で裏側の条件は変貌するけれども)部分もあるだろうけど、主人公がユカに心を寄せる必然はしっかり紡げていて。
 しかしここで面白いのは、ユカが待望していた主人公の心を掴むことは、すなわちユカにとって守りたいものが出来たという事で、逆に失うものがないままでいられる由規との主客転倒が発生している、という点なんですよね。

 ここでも、弱みを持たない方が強い、という冷酷な節理が反映しており、そして由規の力はあくまでユカとは違って現実のみに立脚するものだから、ユカの力に対抗するのには心の強さこそが最大の処方箋であったのに対し、主人公がユカを守るために出来ることが絶望的に縮小しているところには徹底的なリアリティがあります。
 だから実際的に護ることは不可能で、けれどその想いを貫き切ったことは結果的に由規の心も動かし、理想的、とは言えずとも、最低限この先に理想の形を紡げる力を蓄えていく、そして望みの未来を築く可能性を残す決着に落ち着いていて。
 いわばユカルートは、主人公が自分の今を過不足なく見据え、まだ子供の自分を認めるイニシエーションでもあり、それは三人のヒロインルートでヒロイン達が直面したものと同質であって、極端な自己愛や自己卑下に至らない平衡感覚の根源がどこにあるのか、それを如実に示しているという意味で絶妙のラストだったし、とても良く出来た物語、或いは説話といってもいい仕上がりだと思いますね。

 改めてプレイしても、人間性の本質という変化しようもないテーマを綴っているからか古臭さは全然感じなかったし、過激な要素は多彩でそういう心理的ギャップにフォローさせている部分も多いとはいえ、総合的に見てあくまで猟奇的要素は弱さに基づく揺らぎが呼び込んだ必然、というスタンスは絶対に崩してないので、見たいから見る猟奇・凌辱とは確実に一線を画したつくりにはなっていると。
 そういう土壌があればこそ、暴虐を尽くされ愉悦に溺れていくヒロイン、という絵姿にも感じ入る部分はあるし、シナリオとエログロのバランスが素晴らしく上手く取れている名作だと思います。


キャラ(19/20)

 どうしても扱っているテーマがテーマだけに、主要キャラもそれぞれに弱さや醜さは露呈せざるを得ないし、それを綺麗な形で克服し成長する、という涼しげな雰囲気は微塵もない、よりリアルさを伴うドロドロしたつくりではあるので、無邪気にヒロイン達をかわいー、と思っていられる作品ではないのは仕方ないところ。
 無論その心情の切実さのリアリティや綿密さを評価はするけれど、登場人物の魅力、という点だけで見做すと多少は割り引かざるを得ないかな、というのはありますね。

 一番好きなのは希衣佳で、ある意味では一番自己完結的な弱みである中で、その生々しさと愛情の深さの合わせ技でとてもそそられる子ではあったなと。
 葵とあかねの関係性もやはり複雑で面白味はあるけれど、その中で好意が絡んでくると途端に破綻の目が芽吹く、というあたりにえぐさはあり、どちらもそれなりに可愛いとは思うけど傾倒し切れるほどではないんだよなあと。
 ユカにしても可愛いのは確かなんだけど、それでもやってることの凶悪さは半端ないわけだし、プラマイで言えば綺麗に最後くるっと裏返せているにしても、そのマイナス面まで含めて愛せるほどには傾斜できないのが率直なところかなと。


CG(17/20)

 非常に耽美的な絵柄なのは改めても印象通りだし、どこか艶がかって純粋な可愛さや愛くるしさとは一線を画した雰囲気が魅力で、こういう雰囲気の作品にはやはりカチッと嵌ってくるなあと。
 質量としては抜群、とまではいかないにせよ、独特の作風で生まれる醜さも含めた機微を丁寧にトレースしていると思うし、猟奇シーンも手抜きなく丹念に残酷さを描写していて、とても迫力があって良かったし、概ねがそうだからこそ、時折出てくる純愛的なHシーンとか、全ての葛藤を洗い流して前を向く姿の清廉な雰囲気が際立つというのもいい味を出しているかなと。


BGM(18/20)

 メタルな雰囲気を強く打ち出して、作風にマッチした楽曲群になっていると。
 ボーカル曲は2曲ですが、とにかくOPの『Distorted pain』は神曲で、曲単体で聴いても素晴らしい完成度と疾走感、迫力だと思うけど、ムービーとセットで見るとより一層雰囲気との親和性が素晴らしく心に響きますね。
 EDもしっとりしつつもメタルっぽさは生かしていて、最終盤のイントロのつくりが気に入ってます。

 BGMも曲数自体は水準くらいだけど概ね仕上がりはよく、雰囲気をしっかり下支えしているなと思います。


システム(8/10)

 正直十年前の水準がどうだったかもはや自分の中の基準が廃れているので何とも言えないんですが、やはり見せたい部分の演出は凝っていると感じるし、特にダメと思う部分もなかったしいいのかなと。
 そしてこのOPムービーは神がかった出来の良さではないかと思っていて、本当に1枚絵の切り取り方とそれを提示する構成センスが素晴らしくて、曲の走りと合わせて物凄くワクワクドキドキを感じさせてくれるものだなと思います。

 システム的にもこの時代ならこんなものかなと。
 スキップは結構速いし、ボイスカットないのがちと物足りないなってくらいでプレイしていてめんどくさっ!ってのは今やっても特に感じなかったので。


総合(87/100)

 総プレイ時間22時間くらいかな。共通4時間、ヒロイン個別が4時間ずつで闇子とユカが3時間くらいのイメージ。全体的に何が飛び出してくるか、って怖さが全編的に蔓延っていて緊迫感はあるし、それでも総合してみればきちんと整合性があり、グランドデザインが実にしっかりしていて、非常にスッキリとした読後感を与えてくれる作品です。
 昨今だとこういう、シナリオとエログロを丁寧に両立させた作品ってのは中々見受けられないし、ただ私はプレイしてないけどそういう方向性そのものは今の時代でも充分受け入れられるのだろう、ってのは、数少ない例外、特に一見エログロメインに見えて実はそれなりにシナリオゲーだった、って評価の作品がウケているところからも想像できるし、テーマが普遍的でもあるからこの作品は今やっても充分面白いと、個人的にはかなりお勧めの一本ですね。
posted by クローバー at 04:36| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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