2016年08月18日

死に逝く君、館に芽吹く憎悪

 普段滅多に手にしない方向性の作品なんですけど、ちょうど昔のゴア作品をリプレイしてた時期に体験版やって、ライターさんやコンセプトが似通った部分があるな、面白いなと感じ、かつメインヒロインの美亜がとても好みだったので、ミドルプライスでもあるしやってみようかと。


シナリオ(19/30)

 人を人、たらしめるもの。


 世界は、ある日突然崩壊しました。
 いきなり別の次元からやってきた、上位種族と名乗る面々が、その圧倒的な能力を持って人類を蹂躙しはじめたのです。
 その惨劇の最初期に不幸にも出くわし、両親と姉を殺されてしまった美亜は、一人逃げ延びながら絶望を抱く中で、たまたま人間を捕食中の上位種族を見つけ、激情に任せるままに彼を途中で拾ったナイフで刺す、という暴挙に出ます。
 しかしそのくらいで上位種族が死ぬことはなく、あっさり返り討ちに合った美亜は彼に捕らえられ、そして自分に傷をつけたことは「万死」に値する、と宣言されて、彼がねぐらとする館の中での恐怖を土台にしたサバイバルゲームに強制的に参加させられます。

 ゆっくりとではあるけれど、どんな傷でも治る部屋を与えられ、肉体的にも精神的にも痛めつけられる日々。
 そこから脱却するためには、上位種族の男を殺す以外に方法はなく。
 幾多も人としての尊厳を傷つけられ、恐怖と苦痛で心をへし折られながらも、美亜は少しずつその境遇に適応し、死の恐怖を飼い慣らしながらゲームを勝ち抜く可能性を探っていきます。
 これは、極限状況でも諦めることなく、人らしさを失わずに生きる一人の少女の、絶望の先に見出す愛と絆の物語です。

 あらすじはサラッとこんな感じですね。
 基本的には一本道の作品で、美亜が何度も何度も痛めつけられ、時には本当に死んでしまっても生き返らせられて、その都度に記憶を混濁させながら、男を殺すという唯一無二の解放のために様々な手段や協力を用い立ち向かっていく、という流れになります。

 テキストはやはり実にこなれた無駄のない読み口で、基本的にシナリオゲー、と言い難いだけの尺の猟奇・凌辱・拷問が幅を利かすのは確かですが、そういうシーンでも、或いはその隙間でも、心理描写や行動原理、状況変化などの部分で、ハッと考えさせられたり、巧みな伏線を用意していたりと、その辺のバランス感覚は見事だなと。
 
 ルート構成はベースとしては一本道で、ただ道中で幾人かのゲストキャラと協力して立ち向かう場面があり、そこでの選択肢で人として大切な様々なものが試されたのち、その蓄積で最終的に入れる結末ルートが変化してくるのかな、と、きちんと考証はしてないですがそんなイメージ。ただ一周目でもかなりトゥルーに近いエンドに辿り着けたので、特別ロックはないんじゃないかと思います。
 選択肢自体は簡単ではないですが、全編通してクリアした後で振り返ると、基本的にはパニックや自暴自棄に同調せず、感情に流され過ぎずに理性的な対処をしていくことで、結果的にそのゲストキャラの為にもなり、自身の人間性を毀損せずに前に進むことが出来る、という解釈でいいのかなと。


 シナリオ的には、ほとんど救いのない悲しい話、ではあるものの、その中に一握の希望をしっかり埋め込み、きちんと美亜が人らしい心を保ち続けられるか否かで、その希望が美亜の在り方に呼応し、未来を切り拓いてくれる部分に価値を見出せる、そこだけは本当にすごく綺麗な物語に仕上がっていますね。
 タイトルにもある通り、芽吹く憎悪に囚われてしまえば多少なりと明るい未来はなく、絶望と狂気に囚われてしまう、という匙加減も素晴らしく、個人的に道中の選択をすべてクリアした上で、最後の選択だけ間違えた時の復讐戦の凄惨さが、それを一番顕著に物語っているなと思えました。

 ともあれ、どれだけ死んでも蘇らせられてしまう、文字通り「万の死」を与えんとする残忍さを見せる一方で、変わり者、と称されるその男は決して自分が決めたルールを逸脱することはなく、様々なやり方で人の、美亜の感情の引き出しを揺さぶっていく中、時には本当に紳士的に振る舞ったりもするし、遊び心を受け入れる余裕もあったりと、その辺は多少恣意的な点はあります。
 それでもそれは、根本的に彼が退屈を嫌い、今まで見たことのない景色を、反応を知りたいという単純な欲求に紐づけさせているから極端な違和感はなく、その興味の中には自身の死、すらも内包しているからこそ、本来なら人の手によってどうにかできるはずのない存在に対し対抗する可能性を見出せるわけですね。

 それを最終的に可能にするためのギミックとしては、まあ流石に明け透け、とまではいかなくとも、大概のプレイヤーが中盤くらいで気付くんじゃないかな?とは思いますが、一方でそれを美亜が最後の最後まで気づけない事にもきっちり必然的な状況を設定できているので、その温度差の中でハラハラしつつ、そしてそれに気付いていれば選択の上でも何が正解か、を導きやすくなっていると。
 そう言う意味でも非常に総合的な完成度は高いし、筋道もわかりやすいくらいわかりやすく、むしろ逆に作品そのものとしては綺麗に纏まり過ぎていて、私としても特別解釈や推論を膨らませていく必要性をあまり感じないな、って部分で逆に物足りなさがあるくらいです。。。

 以下、ネタバレ必須なので軽く白抜きで。

 結局作品内で具体的な日数経過を示唆してはいないのですが、少なくとも美亜が捕らえられてからみあ(愛美)が生まれ、その子がほぼ成人となるまでがゲーム期間であり、上位種族が現れたのちに生まれた永遠生、なんて子もいるので、どんなに短くとも二十年以上、下手するとそこにも万の死が絡んでるのかな、すなわち死の恐怖を間近に味わいながら生きる日々が万日繰り返される、という意味でも解釈出来るのかなと。

 美亜の死から蘇るスパンについても明確なところはわかりませんが、少なくともプレイヤーの視座よりも更に多くの埋もれた記憶があるのだろう、というのは心々乃の反応などからもうかがえます。
 ただやはりそういうシーン自体はそこまで多くはなく、基本的には愛美が教えてくれた通り、時には数年を生き返るのに要した場合もあると。

 そこに上位種族の男の限界があるのか、それともそのスパンすらも遊びの一環で、次なる舞台を整えるための匙加減なのかはわかりませんが、イメージ的には短絡的で痛みや苦しみの少ない死を迎えたときは結構あっさり蘇っていて、それは幾度かだけ、メイド服を着たまま目覚める経緯があったことでもそうかなって。
 多分長い眠りの時は、床ずれとか防ぐために裸で安置した上で、都度都度に愛美が面倒見てくれてたんじゃないかなー、と思えるところだし、そこでも母親に対する一心の愛情の光を見ることは出来て。
 そして逆に、本当に絶望的な苦しみを味わった後は復活までに時間がかかる、それは身体というより心の修復にかかる時間でもあり、そのメカニズムも含めて男は楽しんでいる感はある為、そこも一定のルールに根差したものと解釈していいのでしょう。

 ともあれ、そういう日々の中で時折現れるゲストヒロインとの協力体制は、しかしそのヒロインの心性によって様々な可能性を孕み、対処の難しさを見せてくれます。
 夏美はしっかり自分を持っているようで、土壇場では利己と保身に走る子ですし、心々乃に至っては徹底的に自分本位でみっともない気質であり、男の好みとしても挫けない高潔な精神を望むのは明らかな中で、その諦念や絶望に影響され、染まらない強さが求められるのが面白いところ。

 最後のゲストヒロインの永遠生だけは、最初から絶望に染まった世界で生まれた分だけ肝が据わっているというか、なまじ平和な時代の普通を知らないだけ強く在れる、という部分があるでしょうし、だからこそきちんと理性的な話し合いの中で道を模索していけるわけで、その上でそこまで時間が経過したことで拓けた可能性を掴めるか、ってのが実に巧みな構成です。
 結果的に場合によっては自分を犠牲にしても彼女らを逃がす、という選択を取ることで、美亜自身は持って生まれた人らしい優しさや献身性を失わずに引き継げ、それがトゥルーに至る可能性を見出してもくれますが、だからこそそれがギリギリのところで万全に満たされる事なく潰えた時の反転ぶりは切なく悲しいものはありましたねぇ。

 無論この世界観の中でハッピーエンド、があるとは思ってなかったですけれど、それでも愛美と男が相打ちになって一人逃げるルートでの、先に進むたびに突きつけられる絶望の重みは本当にうわぁ…………ってなりましたし、そこまでギリギリで保ってきたものがプツン、と張り裂けるのもやんぬるかな、って感じで。
 そこで考えさせられるのは、やはり人にはどうあれ支えが必要なんだなと。
 最初は面白半分でこの特別な境涯に放り込まれたにせよ、おそらく美亜の中には僅かばかりでも男に対する連帯感も芽生えていたはずで、それは一時の優しい記憶なども影響はしているのでしょうが、気持ちの張り、という意味でも男がそこにいて、目的意識を失わずに済む、というのは意味のある事だったと、そり機微はトゥルーで、男に自らの手で引導を渡す際の雰囲気にも表れているなと。

 人とはそういう存在だからこそ、完全に自分が独りきりで、そして世界に絶望しかないと諦めてしまえば壊れるのは必定で、だからこそ愛美、という、自覚のない自分の娘の存在に寄り添えるか否かが最後の大きなファクターになっているのも必然、ではあったのでしょう。
 男にとっても、人の生活を模し、人のように子を成して、その結果として絶対的に相容れない部分は多く残ったにせよ、少なからず人の心の機微に近しいものを体得できていて、それもまた人らしいありようなのではないかなとしみじみ思うところです。

 最後の館の元主人との別れといい、その部分だけ切り取っての情感は本当に切なくも愛しいものがあり、その先に相当の苦難が、悲しみがある事は安易に想像できても、きっと二人で手を取り合ってなら、挫けずに前に進んでいけるのだろうと、それだけは信じられる構成だったんではないでしょうか。
 ま、とはいえそういう情緒的な部分は多くはなく、大半はやっぱり愉悦と歓楽に満ちた残虐にあるわけで、和姦シーンなんてひとつきりだし、いざシーンが始まってしまえばかなり容赦はないし、その辺で肌に合うか、と言われればやっぱりノー、ではありますねぇ。

 美亜みたいな可愛い子が、って意味での興奮以上に、やっぱり痛々しさ、見てられなさが先に立ってしまうあたり我ながら弱っちいというかなんというかですけれど、まあそればかりは性分ですので仕方ない。そのあたりも含め、トータルで見てこのくらいの評価が妥当かな、というところですね。
 …………。と言いつつも、愛美が愛美の時点でイタズラするシーンがなかったのを少し残念に思っているあたり、ダーメロリコン、クスクスー、って感じでどうしようもないんですけどもね(笑)。



キャラ(19/20)

 いやまあ、コンセプトに沿った中での人間性、という意味では本当に緻密にえげつなく描写できている、とは思うし、その分印象も強いんですけれど、やっぱり根源的にそれは私が楽しんで見られるものでない、ってところで、救いはあったにせよ単純にそれだけで文句なく、とは言えないのは仕方ない、ですよねと。

 その中で美亜はやっぱり可愛いなと思うし、どれだけ虐げられても挫けない強さと、自然体での優しさのバランスは本当に好きでしたね。だからこそ見ていられない、ってところは多々あったし、それを裏切っていく輩に対してはいい印象を持てない、ってのもマイナス評価の一因ではあるけれど、個人的に男との関係性はなんだかんだで楽しめた部分はありましたね。

 そしてやっぱりあの子のひたむきな献身は素敵というか、それしか輝かしい想いを育む余地がないというところでの存在の悲しみを存分に思わせつつ、なおそうも真っ直ぐ在れることが、美亜を鏡にしてなのか、或いは男の薫陶なのか難しさはあれ、色んな意味で象徴的なんだなと。
 個人的には当然中盤あたりが一番好きなんですけど(笑)、もっと出番が欲しかったし、そのあたりだと心々乃があんなだから余計に痛々しく、ホントお前はさっさと死ねー、って思ってましたよ。。。

 後はやっぱり永遠生は中々魅力的ではありましたかね。ややボイン過ぎるというか、良くこの時勢の中でそこまで育ったねとは思うんですが(笑)、だからこその特異でありつつ純良な気質は、その直前がああだっただけにより輝いていたと思うし、そしてナイス黒ストでしたしね。。。

 そしてやはり男の存在感は見逃せないというか、基本享楽的ではあれ、刹那的な気儘さとはまた違った、襟の立った生き方をしている、というイメージはあって、本気で人間の生態や感情を観察し、学んでいるのかなって感じはあり、故にこそ通い合うものがあった、というところはあるだろうと。
 一度決めたルールは確実に守る、という意味で紳士ではありましたし、存在そのものが人間にとっての絶対悪なのは動かしようがないにしても、その孤高な在り方は印象深いですね。


CG(18/20)

 こんな残虐な作品には似合わないくらいにキャラデザインは可愛いんですよねぇ。だからこそいい、って部分もあるのでしょうし、実際絵的には相当気に入った部分もあるので点数としても少し甘めに。

 立ち絵に関しては美亜とメイドだけはポーズも三種類と優遇されているものの、他はほぼ一種類、服装も美亜以外は一種類と、まあその辺はシステムや設定上仕方ないところでしょう。美亜のメイド服と愛美の私服は可愛いです。
 表情差分も当然多くはないけど普通に可愛いし、特に美亜の正面照れきょとんとかめっちゃ可愛くて、こんなゲームなのにほっこり和んでしまいますね。。。

 1枚絵は全部で54枚と値段相応、当然ほぼ全てが凌辱・拷問シーンではあるのですけど、そこでもハッとするものは見せられるし、時折ある穏やかなシーンが余計に愛おしく感じる、という意味では良かったと。
 お気に入りは脱出、破瓜、感電、和姦、切断、解剖、バック凌辱、宙づり、破裂、煮え湯、拘束圧迫、殴打、あやとり、心々乃フェラ、正常位、一人あやとり、メイドバック、永遠生フェラ、正常位、食卓、鉄板焼き、ほろんだ世界、メイド拷問、宙づり快楽責め、相打ちキス、懐の中で、復讐鬼、穏やかな死、別れ、出立あたりですね。


BGM(15/20)

 量としては値段踏まえてギリギリ水準かな、とは思うけど、作風的にどうしても重々しい曲が多いし、あまり刺さるところがなかったのでこのくらいで。

 ボーカル曲は1曲。
 OPの『舘廻り』は絶望の輪廻を思わせる旋律がインパクトはあるものの、その分曲としての情緒は薄いしそこまで好きではないかなあと。
 BGMは全部で14曲、悪くはないけどやはりインパクトにはやや欠けるしもう一歩ですかね。
 お気に入りは『予感』『憂鬱の隙間』『逃亡』『追憶』『果て』あたりです。


システム(8/10)

 演出はやはり基本的には弱め、ですかね。
 シーン演出も日常演出もそこまで深みはなく、基本1枚絵依存と雰囲気で読ませるところは多いし、それなりには動くけど目立ったところはなかったと思います。
 ムービーも絶望と危機感が上手く示せているとは思うし悪くはないけど印象深くまではないかな。

 システム的にはかなり優秀で、操作性は高いしプレイしやすいですね。この手のゲーム、ってことを考えれば充分だと思います。


総合(79/100) 

 総プレイ時間10時間くらい。本筋が7時間くらいで、バッド派生とか拾っていくとそのくらい、って感じですかね。
 コンパクトに綺麗に纏まっている話なので、だれることなく緊迫感を持って一気にクリアできますし、最後にトゥルーをプレイできれば少しは救われた気分で終われるとも思うし、やはり単純な猟奇凌辱ゲーではなかったなと、その点では満足してますけど、やっぱり肌合い、ってところでどうしても手放しでのめりこめる仕様ではなかったので、点数としては控えめに。
 無論この方向性が好きな人にとっては、その上でこのシナリオ面での程よい味付けの方が期待以上の嬉しい部分、ってなってくれる出来ではあると思うし、絵もキャラも基本的には可愛いのでやってみる価値は充分にあると思いますね。
posted by クローバー at 04:22| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: