2016年09月06日

銀色、遥か

 星織未プレイなんですけど、当時からコンセプト自体は気になっていて、そして今回は前作よりもキャラがかなり好みに思え、体験版もベタながらいい雰囲気で楽しかったので購入しました。


シナリオ(25/30)

 支え合う絆の美しさ。

 主人公は多感な時期に両親の離婚と再婚を経験し、その事もあって家庭内でも外でも出来る限りいい子であろう、誰にも迷惑をかけず嫌われず、率先して人の助けとなる生き方をしよう、という思想が、そうでないとまた壊れてしまう、という恐怖の観念と表裏一体に植え付けられていました。

 そんな中、まだ銀色に染まる街の中でも季節は春、新学期を迎え、最近義妹になった雪月が同じ学園の新入生となります。
 なにくれと彼女の世話を焼きつつ、新たな一年に向けての期待感も膨らませながら向かった学園ですが、ちょっとしたお節介の発露で早々に遅刻してしまい、そのせいでクラスがわからずにしばらく待機させられることに。

 そこで出会ったのは、金の髪と碧の瞳を持つ、妖精のような女の子。
 カナダからの留学生であるベスリーはまだ日本語の理解がたどたどしく、いきなりの意志の疎通に難しさを感じながらも持ち前の親切さでその胸襟を開こうと努力し、そして奇しくも二人は同じクラスでもあって、主人公の隣の席になった快活で親切な女の子の椛とともに、すぐ後ろの席のベスリーの生活を気にかけるようになります。
 小学生の時は別の学区に通っていたために周囲にすぐに馴染めるか心配していた雪月にも、初日から雛多という明るく気構えのいい素敵な友人が出来て、更には幼馴染でフィギュアスケーターの瑞羽も留学先のロシアから戻ってきて、主人公の生活が一気に華やいだものになっていきます。

 彼女達と交流を深めていく中で、学年が違えば抱えているものも違うみんなを一堂に会し、その垣根をなくして触れ合える、夢を語り合い支え合える場を作りたいと主人公は考えるようになり、たまさか教育実習で来た先生が実の母の教え子でもあったという縁から、彼女の主催という形でワンルーム学級を立ち上げることに。
 その思惑は成功し、学年の壁を超えて仲良くなっていく女子達を傍で支えながら、いつしか主人公の視線はその中の一人に引き寄せられ、その在り方に染まっていくのでした。
 これは夢や恋の萌芽から、数々の試練や分岐点を乗り越えて、愛と絆の力で夢を現実のものにしていく過程を超ロングスパンで描いた物語です。


 あらすじは簡素にこんなところで。
 大きな流れとしては、この作品を特徴づける中学、学園、アフターと三つの時代を跨ぐ恋模様、夢の実現に向けて努力し、切磋琢磨していく姿を丁寧に綴っていく、というところに尽きますし、元々のキャラ性から想定できる展開を大きく逸脱するような奇を衒ったものはない、非常に王道的であり、ちょっと悪く言えば非常に高水準で画一的な物語、とも言えます。

 テキスト面ではヒロイン一人ずつにつき一人のライター、という形式をほぼ貫徹している感じなので、その中で多少の色の違いはありますが、それでも全体の統括・監修がしっかりしている感じで読み口自体としても極端な差はなく、基本的に不快を催す要素や語り、仄めかしは極力排除しての丁寧な骨組みを心掛けているかなと思います。
 その分文章そのものに風雅さやおかしみはあまりないものの、全体の空気感が非常に安定していて、心安らかに読み進められるテキストメイク、って感じですね。これも悪く言えば冗長、と捉えられる点もそこそこあるけれど、それも含めてロングスパンの中での蓄積としてしっかり機能しているし、綿密な個性に裏打ちされた言動や行動原理なので少なくとも陳腐になり下がるところは全くなかった、と言い切れますね。

 ルート構成はオーソドックスに、キャラ選択と固有の好感度選択を混ぜ合わせての加点制。
 基本的には中学編の序盤の共通でルートは確定してしまうので、流石にその重みとしては最低限、という感じではあるものの、主人公の造型が基本受け身型なので、それぞれのヒロインの想いに教化されて、という筋道はしっかり見えるし、特に問題はないかなと。
 ルートによっては個別でも選択肢は出るけど、概ねシーンの差分とかその程度で、シナリオの根幹に影響を及ぼすものはないので気楽に進められる感じですね。特にロックなどもなく、ヒロインは完全に横並び、という見方で問題ありませんので、誰から攻略しても構わないと思います。

 シナリオに関しては、非常に厳正で緻密なルールに基づいて構成されており、それを十年というロングスパンの中で丁寧に反映させつつ、それぞれの夢の形、気質の変遷を追いかけていく中での差異性もきちんと発揮している、というところで、とても優等生的な作品であると言えます。
 こういう言い方が適切かはアレですが、それぞれのルートで満点を取ろうとはしていない、ただし絶対に80点以下にはしないという方向性で、とても平均点は高く、その均質化によるマイナス因子の排除の徹底で、総合的に名作に近い場所まで持っていく、ってイメージですね。

 とりあえず最初に、思い出せる限りのシナリオ構成ルールと、その是非、長所と短所について一通りまとめてみます。

 まずシナリオの形状としては、わかりやすくホップステップジャンプ、という形ではあり、恋も夢もその尺度に合わせての、その年頃なりの無理のなさに綺麗に当て嵌まってきます。
 その中で明確なのは、まず恋愛面においては決して関係性に綻びをもたらすような展開や示唆は組み込まないこと、そしてもともと無色である主人公がヒロインに触発されて少しずつ自分の夢を見据えていき、互いの夢を支え合う形で発展させていくこと、ヒロイン同士の横の関係が最後まで力や支えとなってくれることなどが顕著です。

 また固有のヒロインルートに入った時でも、他のヒロインはそれぞれに自分の夢をそれなりの形で追い求め、ある程度はそれを実現させる、というスタンスも一貫していて、個別においても主人公の関係なしでは絶対に挫折していた、夢の入り口にも立てなかった、みたいな救いのない状況を感じさせない配慮がしっかりしていると思います。
 恋愛面においても中学編はプラトニック、学園編ではじめて契りを交わしつつも、ベーシックなスパンでのエロゲに顕著な刹那的、後先考えない結ばれ方とは一線を画した現実的な形を意識しており、それぞれの夢が大人になりある程度叶ったところで、結婚を前提としての新しい家族づくり、という王道的な筋道をほぼ外していない感じですね。

 そんな風に土台部分での不自然さや不快さを極力省いていきながら、幼い頃に描いたとりとめのない夢を少しずつ現実の形にしていく中で、主人公とヒロインの夢の形がごく自然に共鳴し、生活を支え合う関係がそのまま夢を支え合う関係と一致していく、というベクトルも均質的であり、その結実においてはしっかりそれぞれのスタンスでの盛り上がりを見せてくれています。
 また些細な部分ですが、主人公は最初に見染めたヒロインの夢に引きずられていく中、でもワンルーム学級の支点は主人公の為に、その主人公の変化に対して少しずつ他のヒロインも影響を受けていく、という構図で、それぞれの個別での他ヒロインの部活や職業選択などにも変化があって、でもそれがきちんとほぼ理路に沿って紡がれているのが気に入っているところです。

 ざっくりルールとしてはこんなところではないでしょうか。
 このあたりが徹底されていることで、大枠としての骨子はどのルートも均質的ではあるものの、流石に十年というロングスパンで綴るだけあり画一的、とまでは言えない多様性の組み込みもきちんと配慮はされていて、そのバランスの取り方は間違いなくプラス材料になっているでしょう。
 ただやはり十年、というスパンの中で、どうしてもベスリーというヒロインの来日や、全員が同じ学校に存在するという状況の、時系列に合わせての重点展開にはなっていくわけで、その中でヒロインの気質やそれに引っ張られての主人公のトラウマの変質も差異があるのに、関係性の進展だけは横並び、という構図自体にはどうしても違和感を覚えなくはなかったですね。

 単純に契りを結ぶ、という一点に関しても、中学編で付き合いだしてから結ばれるまでのスパンがとても長いキャラが存在するわけで。
 物理的に距離のあるベスリーや、関係性の進展に背徳感を伴う雪月、そして互いに臆病な気質である椛との関係においてはまぁ、で済むけど、基本あれだけ好奇心旺盛な雛多とか、年齢としても精神的にも成熟している瑞羽あたりが、付き合いだしてから二年近くプラトニックを貫くってのは逆に綺麗すぎて不自然ではあると。
 無論この二人にしてもそうなって不思議ない、という観念を後付けではあれ展開しているけど、このあたりの構図はあくまでベスリーの動向に全体の歩調を合わせた故の弊害、とは言えますね。その辺はもうちょい融通が効いても良かったんじゃないかなーと個人的には思います。
 まあより個人的に言えば、ダメロリコン、クスクスーとして、中学編がどのヒロインも一番可愛いー!となる故に、その青い果実の内に頂いてしまいたかったという碌でもない欲望がないとは決して言わない(笑)。特に椛なー、中学編の椛超好きなんですよ私。。。

 あとやはり、どうしても気を付けていても多少はそのルールからはみ出てしまう部分もあり、その辺は後で個別感想で個々に指摘しますが、傾向としてはそうやって多少なりルールから逸脱してまでシナリオにフックを作ることで冗長さを防いでいる、という部分もあって、むしろそこに準拠したほうが独自性が薄れ、間延びしてしまう、という難しさはありましたかね。
 無論冗長ではあってもそれはしっかり蓄積の一端を担っていて、ロングスパンならではの説得力を有する大切なファクターでもあり、少なくとも駆け足で陳腐になり下がるより全然マシではあると思います。
 基本的に私は、長ければ名作になるとは限らないけど、フルプライスの平均テキスト量を下回る程度では名作はまず作れない、っていう思想の持ち主でもあるので、人によっては鼻につくかもしれない、けど私としてはどちらか言えば歓迎、というスタンスです。

 ただ結局そういう制約がある中では、どうしても初期設定時点での夢が持ちうるダイナミズムの多寡、表現のしやすさが、そのままシナリオの印象度、出来にも繋がってしまっているかな、という感じはあって、いい意味で安定はしているけど悪い意味で驚きはない、とは言えるでしょう。
 それにロングスパンな分だけどうしても夢の実現へ向けての努力の濃度、密度は平均的に拡散してしまうし、ある程度の濃淡はついていても薄い部分は時間の進み具合も含めてダイジェスト的な空気にもなってしまうので、その辺は匙加減が難しいところだったと思います。
 まあ後は、いくらある程度の幸せに配慮していても、これだけ素敵な女の子たちが十年間も恋することもなく過ごさなきゃいけないのは不憫っちゃ不憫ですよね。。。まあこればかりはお約束ではあるし、それこそ他の男の影とか出したら袋叩きに合うのは明白なんでしょうけども、学生時分でキリがつく物語ならともかく、こうしてはっきり大人になるまで、だとそこは思わざるを得なくなっちゃいますよねと。

 と、大雑把ですが全体をまとめたところで、それを踏まえてサラッと個別に触れておきます。
 ちなみにテーマ性というか、組み込んだ思想という部分では、敢えて掘り下げて語るほどでもなく顕著かつ真っ直ぐなので、特段にネタバレ回避しつつ書くほどのものでもないですし、個別感想も今日はそのままふんわりぼやかしつつ、で書いちゃいたいと思います。

 さしあたりの個別評価としては、瑞羽≧雪月≧椛=雛多≧ベスリーくらいですね。
 >でなく≧にしているのは、普段以上にルートの差が少ないってのもあるし、全体の質も高いのでそれを意識してです。この評価自体、紡がれる夢の種類やヒロインの好みへの反映がどうしたってあるでしょうし、あくまでも些細な差、感情的な部分での盛り上がり、共感度の差と受け止めておいてください。

 ベスリーに関しては、ボーイミーツガールとしてはこれ以上ないシチュエーションであり、運命的な出会い、繋がりというイメージは強いのですが、共通の発端にそれがある分だけ最大級のインパクトがそこにあり、その後の関係性の中でそれを凌駕するだけの盛り上がりを紡ぎにくかった、というのはあるかなと思います。
 またベスリーと雪月に関しては、物理的と精神的、という差異はあれ、その関係性を維持すること自体にエネルギーを、意志を注ぐ必要が他ヒロインより色濃いことと、そのせいもあり夢の萌芽が遅めなこともあって、主人公自身の夢をより具体的な形にまで昇華させる余裕を作れなかった、というハンデもあるかな、というところで、その上で夢の結実の形もやや地味ではあるので、総合して一番低い評価にしました。

 またこのルートに関しては、他に比べると若干だけテキストの言い回しにイラッとする部分があったり、あと説明が行き届いていない点が見受けられたりもありましたね。
 特に学園編で、このルートでだけ椛が演劇をしていない理由が正直明確ではないのが気になったし、他ルートに比べてもその他ヒロインの夢の先にある立ち位置によって、主人公とベスリーの歩みを支えていく力になる、って色付けが薄かったのも、些細な差ではありますがやはり気になるところではありました。
 ただ主人公の気質の転換自体は、ベスリーと向き合っていくと決めた時点から明確に変化していく中で、ベスリーの方は元々の引っ込み思案もあるわけだし、その関係性を踏まえて最終着地点があまり大それたものにならないのもこの二人らしいと言えばそうですし、ただ大学編の空気感の若干の差異も含めて少し肌合いが違ったかな、というのは確かかと。

 雛多に関しては、基本的に雛多が物凄い前向きな気質であり、それに引っ張られて主人公もごく早い段階でトラウマからの脱却を果たしている中で、展開としても雑多な雛多の夢と主人公の夢がいつしか歩調を合わせていく、その構図の完成度は非常に高いシナリオだったと思っています。
 ただ少し気にかかるのは、どうしてもその取っ掛かりのハルとの出会いが特殊要因ではあり、ヒロインと違って他ルートでの処遇に配慮まではされてないから、もしこのルートに進まなかったとき、ちゃんといい飼い主に恵まれているのだろうか?なんて心配をしなきゃいけないのは僅かながらストレスではありますねと。

 あと、一応は負の感情が原点にあるくせ、雛多の生き様が極端に前向きに特化しているのもやや不自然ではあり、それに輪をかけてシナリオ展開においての雛多の挫折や葛藤がとても少なく、無論裏側であるにせよそれを見せないつくりに特化させてしまっているので、いかんせん全てが上手く噛み合い過ぎていて鼻持ちならんなぁ、という穿った見方になってしまった感じですね。
 ただハルとの出会いを発端としての主人公の歩み、自身の夢の色付けは一番はっきりしっかりしているルートではあり、夢を追う事で周りに、愛する人に迷惑をかけないかという煩悶が出来る地平にまで辿り着けている、というのは、雛多というヒロインを彩る素敵な特色の反映だろうなと思いますし、なにより動物ネタはやっぱり心打たれますよね。

 ただそこでも強いて言えば、飼い始めの時点で負の要因の指摘がありつつ、最後まで頓挫なくそこの幸せを担保しきっているのは、前出の外的要因がもたらす疑念と矛盾するというか、ハルをあくまでヒロインの関係と同一線上の、破綻の兆しを組み込まない不可侵領域とするなら、その発端まで配慮は徹底して欲しかったと思います。
 逆にそうしていないなら、ベスリーのうさちゃんで茶を濁すのでなく、真っ向からそこに最後の山を置いて欲しかったな、というのは、贅沢な話かもですが率直なところですね。やっぱり前向きに努力すればすべて上手くいく、という色合いがスッキリしすぎているのは、物語としてはコクがないかなと。

 次いで椛は、特色としては二人揃って後ろ向き、傷つくのが怖い、という特性を持っている故に、関係性の進展、夢に向かってのアプローチ、そういう部分での歩みがどのルートよりもたどたどしく、煮え切らないところになるのではないかと思います。他ヒロインだと大体中学編の付き合いだす時点で克服傾向ははっきりしているけど、ここだと本当に端緒についただけで、結果的に大人になるまで抱えこむ課題になってますからね。
 また演劇、という素材は物語の中で感動を投影させるのが中々難しいところもあり、劇中劇の盛り上がりとかにどうしても温度差は出てしまうところもあって、最終的な着地点も含めてベスリー同様に極端な盛り上がりはない話ではあるかなと感じます。

 ただ私としてはまず気質の面ですごく親和的なこと、そして素材的にも演劇、物語づくりっていうのが好みである事を踏まえて楽しめたし、あと他のルート以上に生活に根ざした悩みとかが深く関わってきていて面白いなと。
 こういう言い方はなんだけど、他のルートに比べてもここが一番生活の安定は危うい話であり、それがわかっていればこそ主人公も、安定した収入の道を捨てて自分の夢を追う中で椛に寄り添う選択をしていいのか深く葛藤するわけで、そういう生き方や家族との関わりなど、クリエイティヴな道を選びながらも生き方は地に足をつけている、そのリアリティが個人的にはすごくいい仕上がりだなと感じましたね。
 大人になっても天然で可愛い椛というキャラ性も含めていいシナリオだったと思うし、読み口そのもので言えば雛多の方が上かなと思うけど、その辺の底流的な下支えの強さで逆転させた格好です。

 雪月シナリオはまず、この舞台設定の中での関係性の進展が絶妙に噛み合っているな、というのはありました。
 中学編での主人公の雪月に対する意識の変化と、それを受けての自身の対処に関しては、その時点の気質を踏まえればいかにも、と膝を打つ流れではあり、インセストな問題は付随しない中で別口の、家族としての関係を守らなければ、という観念がしっかり出ていて。
 この主人公の気質の醸成に対しては、雪月と瑞羽シナリオが一番端的に、かつ説得的に綴れていると思うし、二人ともにその関係性の変化、進展がそのまま、トラウマの殻を突き破る一歩になっている、というつくりが説得的で意義深いと感じます。それだけの覚悟を担う時間、という意味で、時系列の跳躍にも上手く対処しているし、全体の流れが一番自然なのはこのルートかなと。そして雪月の「私だって好きだよ!」は死ぬほど可愛かった。。。

 またこのルートでは明確に中学編の、学園編、アフター編で克服すべき課題が明示されており、その壁にぶつかっていく中での葛藤や恐怖、挫折などもしっかり紡がれるので間延び感が薄く、学園編時点での瑞羽の境遇に対する配慮まで完備していて見事な構成だなと思いますね。
 逆に言うと雪月が真っ直ぐに夢を追いかけていく為に克服すべき山は結構大きいので、他ルートで目立った活躍はしていないのもうなずけるところだし、それでも妹、という立場はあるのがいいバランスになっているのかなとも。

 そしてパティシエ修行での海外編とか、流石に赴任時期がそっくり被るあたりはご都合主義まっしぐらではあるにせよ、今までが恋人でもあり家族、というあやふやな枠組みにいた分だけ、新生活で改めて二人の関係を見つめ直すというのも味があったし、土地柄としても個人的にすごく愛着と興味があって楽しめました。
 無論職業的にも親和しやすいし、笑顔の為のものづくり、という観点が通貫されているのも綺麗だな、ってところで、ああいう大舞台での最後の盛り上がりはまたお約束ながらやはり心打つものがあります。そのダイナミズムが主人公側の掘り下げが薄くても良し、とさせるだけの威力を備えているし、夢の結実においてみんなが自分の立場で出来る限りの力になってくれる、というのが明確に打ち出されるのもやはり気持ちのいい終わり方ですね。とても好みの話だったと思います。

 そして瑞羽は、もうこれは素材がチート、なのは間違いないんですよね。。。他ヒロインに対し同じだけの丁寧さで綴れば、素材の破壊力分だけ頭抜き出るというべきか、スポーツの持つ感動を存分に押し出せているというか。
 まあ才能が幅を利かせる世界の中で、泥臭く努力努力で這い上がっていくありようはある意味では物語として異質なのですが、きちんとそうさせるだけの高い山を設定していて、そこに至るまで三歩進んで二歩下がる、と言わんばかりの苦悩や挫折、敗北の苦渋を積み重ねていく中で、他ルートでは途中で満足してしまうのを、主人公との約束を果たすため、ってところで最後まで貫くその些細な差のつけ方がいい味を出しているなと。

 まさしく天の時、地の利、人の輪がすべて噛み合った中での結末、って感じだし、それを演出してきたライバルの存在がまた清々しくて素敵なんですよねー。本当にこのルートの小さき絶対女王大好き。いえ決して立ち絵が成長しないからではないですよ(笑)。
 主人公自身も早い時点で、幼馴染という関係からの変転の中で気質も変貌していって、瑞羽を献身的に支える中でもきちんと自分なりの夢も見出していって、それが大きな舞台で綺麗に花開き、結実していく様は素晴らしかったし、やや情緒演出過多な部分はあるにせよ、やはり総合的に見てこのシナリオが一番面白かったかなと思っています。

 以上、構成上突き抜けて素晴らしい、とか、伏線を上手く生かしての捻じ伏せるようなカタルシスとか、そういう要素はほぼない堅実な物語なんですが、ルールの明確化と徹底によって完成度は非常に高く、ロングスパン故の特別な説得力や感銘がしっかり打ち出されていて見事でした。
 ロングスパン故のHシーンの豊富さも充分に売りになりますし、総合的に満足度の高い作品で、ちょっと迷う部分はあったけど最低限名作水準の点数はつけて然るべきかな、と思いましたね。ただアレだ、強いて言うと基本冬ゲーを真夏ど真ん中に出すと多少季節感の面での親和性が削がれるね。。。
 同じようなロングスパン作品としてもホワルバ2はその辺えげつないほど神だったし、最近でもアマツツミは夏ゲーだからこそ夏にやるべき、って肌合いをすごく感じさせてくれたしで、それは勿体ないと言えば勿体ないところですね。


キャラ(20/20)

 ここはほぼ非の打ちどころなしの素晴らしいクオリティですね。
 ロングスパンの中でヒロインのみならず脇を固める面々それぞれの人生の意義と重みを感じさせつつ、しっかり美しく成長を見せていってくれる丁寧さはここでこそ、と思える味わいですし、非常に楽しめました。

 ヒロイン的にはやっぱり最初から一目惚れだった雪月が一番可愛いですかねー。
 やっぱり個人的にも、大人になってもちっちゃかわいい妹、というファクターは素晴らしい癒しでしたし、基本的には引っ込み思案だけど、すごく心優しくて芯は強くって、やるとなったらひたむきに真っ直ぐ笑顔と愛情を湛えながら進んでいける様は本当に可愛かったなと思います。ローマ編でのベスパの二人乗りとかすごく味わい合っていいなぁと思うのだ。
 その分脇に立った時にあまり影響を及ぼすような強さは見せないけど、家族として友達としてしっかり心の支えになってくれているし、期待通りにすごく好きになれるいい子でしたね。

 次いで椛ですね。実際にプレイしてみて一番株が上がったのもこの子かなと。
 すごくほんわかしていて傍にいると癒される感じで、しっかり夢を持っていて回り道しながらも一歩ずつ進んでいくありようはらしさ満点でしたし、瑞羽に次いで距離感そのものは出てくるヒロインながらも要所で色々な助けになってくれるのもいいねと。大人になってもほわほわしていて甘え上手ですごく好き。
 ベスリーも寂しがりなところが愛に転換していく中でのストレートな気持ちの示しは本当に可愛かったですし、色々障害が大きい関係性の中で強く思い合う在り方を選べる強さもあり良かったです。

 瑞羽は年上だけど可愛げがありつつも、アスリートとしての厳しさやしなやかな強さも備えていてやはり魅力の高いヒロインだったと思います。
 雛多もその持ち前の明るさと前向きさでグループを牽引していくような輝きがあったし、面白い子でしたね。
 他キャラだと断然アリサが好き。めっちゃ可愛いあの子。思わず分岐選択肢を探してしまったわ。。。


CG(18/20)

 登場人物も多めだし、三つの時代で少しずつ立ち絵も変化させて、って中での、その成長を楽しみつつ魅せていくスタイルはいいですね。絵柄としてもそれはまあ差異はあるけど雰囲気はかなり均質化しているし悪くないと思います。

 立ち絵に関してはかなり豊富で見た目に楽しいですね。
 ポーズはヒロインは基本時代ごとに2種類、サブは基本1種類かな。どれもその時期らしさを出していて、ヒロインなんかは大人になって落ち着きが出てきたり、腰が据わったりの雰囲気がしっかり差別化されてるのがいいよねと。
 お気に入りは中学椛、雪月、ベスリー、瑞羽、学園椛、雪月、アフター椛、雪月、ベスリー、アスカあたり。

 服飾も時期や時代にしっかり拘った量と質を完備していて、基本的には冬ゲーだけにコートやマフラーなどの羽織り物の可愛さがとても良かったと思います。
 基本雪月と椛は全部好きで、後はベスリーの学園制服、私服、大人私服、瑞羽の大人私服、雛多の大人私服あたりは良かったと思います。

 表情差分も時代ごとに少しずつ差異はつけられていて、子供っぽさから大人の女に成長していく雰囲気をそこでも味わえたなぁと。
 流石に素材が多いので精査してないけど、やはり椛と雪月は大概可愛くって、特に雪月の驚きぐるぐる顔は最高に素敵でしたね。あとはベスリーの膨れ顔とか、瑞羽の苦笑とか好き。アリサの笑顔もめちゃカワユス。

 1枚絵は全部で110枚。
 ヒロインごとに22枚とこれもきっちり横並びで、量としてそこまで不満はない……と言いたいのですが、これだけ仲間の絆がクローズアップされる作品で、だけど集合絵とかがひとつもない、ってのは少しばかり勿体ないなぁと。少なくともそれを見せられるシーン自体はあるわけですし、ほぼ1枚絵が対象ヒロイン特化になっちゃうのはねと。
 出来自体もそれぞれに安定はしていて可愛いけれど、やっぱり単独か主人公と、ってのばかりだと少し情感の面でプッシュが足りないところもあったかなと思います。

 特にお気に入りは雪月のメイドさん、あれはなんというか問答無用でか、かわかわかわかわ……っ!可愛いっ!て感じでした。。。
 その他ざっくりページ順に、ベスリー出会い、プール、オーロラ、初キス、再会のキス、フェラ、正常位、背面座位、浴衣、雪アート、騎乗位、バック、ED、雛多犬カフェ、キス、背面屈曲位、手コキ、立ちバック、バック、散歩、プロポーズ、家族、椛お隣さん、芝居、一歩ずつ、デート、キス、演技、正常位、バック、フェラ、背面屈曲位、海、立ちバック、進む道、騎乗位、卒業、背面座位、騎乗位、添い寝、プロポーズ、膝枕、瑞羽約束、音楽、散歩、あーん、添い寝、対面座位、浴衣、プロポーズ、決戦、家族、雪月入学、手つなぎ、お風呂、告白、うたた寝、正常位、バック、料理、フェラ、添い寝、素また、フォークダンス、騎乗位、和解、正常位、卒業、二人乗り、正常位、背面騎乗位、結婚式あたりですね。
 個人的に雪月のコック服Hがなかったのは残念でした。。。


BGM(18/20)

 冬らしい質感と情緒溢れる音のつくりはとても素敵でしたし、ヒロインごとに特化したボーカル曲の提供もやはりすごく価値の高いものだとは思います。
 ただあくまで個人的にはですが、ヒロイン専用曲ってどうしても作中で耳にする機会が少なくなるし、色合いも希釈されてしまうなあ、ってのがあって、曲に関しては多ければ多いほどいい、というよりは、少なくともここ一番でこの作品の全てを紐づけして思い出すような強烈なものを求めてしまう分、ちゃんと全部聴き込んでみたけどやっぱり食い足りない、とは感じました。

 そのボーカル曲は12曲と超豪華。
 OPに全体のテーマ曲、そしてヒロインのテーマ曲にED曲がひとつずつ、という構成で、ヒロインごとに作詞作曲担当も統一しての世界観の深いつくり込みは歌詞を聴いていてもなるほど、とは思うんですが、やはり惜しむらくはどうしてもガツンと響くほどのものはなかったなあというところで。
 結果的には一番好きなのが全体テーマ曲の『夢の世界へ』だったりするし、どれもすごくらしさがあって素敵ではあるけど、やはり耳移りしてしまうところはありますからねぇと。それ以外だと『銀色、遥か』『コイイロセカイ』『君がくれた翼』『雪の音色』あたりが良かったと思います。

 BGMは34曲と水準はしっかり完備、と思いつつ、かなりインストの配分が高いので絶対的にはもうちょっと、かもしれません。ただ雰囲気の統一性、すごく優しく冷たい世界の中から溶け出すような温かさを感じさせる旋律の数々は中々素敵でした。
 お気に入りは『小さな足跡』『雪降る街』『冬の朝』『扉を開けて』『歩幅を合わせて』『恋人たちの時間』『陽だまりの中』『雪夜』『温かな場所』『Sunny day』『肩を並べて』『夢の扉』『雪解け』『白い吐息』『想いの結晶』『凍える指先』『確かな絆』あたりですね。


システム(9/10)

 演出はそれなり。
 基本静かなゲームですし、実際にコミカルに動く、という感じではないですけど、それぞれの個性を引き出す程度には動くし、やはりシナリオに沿わせての情感演出や背景演出などが凄く丁寧で染み入るようで悪くなかったなと。
 ムービーもすごく広がりを感じさせる爽やかなイメージと、真っ白な未来のイメージが綺麗に重なり合ってかなり好きです。

 システム的にはまずまず。
 必要なものは大体揃っているけれど、これだけ個別が長いとフローチャートとかチャプター回想とか欲しくなるよねと。スキップ自体は普通速度なので、後々振り返りたいな、と思う限りはきちんとこまめにセーブを残しておかないと、ってタイプです。それ以外で特に不備はないかな、ストロングポイントもないけれど。
 しかしこういう時にセーブデータ見返すと、個々人での思い入れの差が顕著に出て面白いのです。。。そして瑞羽なんかはシナリオ的に評価していつつも、セーブデータが残ってるのが全てアリサの登場シーンだったりする(笑)。


総合(90/100)

 総プレイ時間35時間。共通5時間に個別が6時間、まあざっくりひとつの時代で2時間平均だと思ってれば概ね間違いはないかと。
 十年に渡る人生の歩みを丁寧に綴っているので、それに見合う尺にはなっているし、所により冗長さが出るのは否めないけど極力そうならない工夫もされている、そして出来る限り読み手に不快感を与えないルールがしっかり行き渡っていて、安心してヒロインとの道行きを耽溺できる作品だと思います。
 驚くほどすごいシナリオはないけど、つまらないシナリオもひとつもないし、本当に平均点が高い作品だと思いますね。好きなヒロインが一人でもいるなら手に取って損はしないでしょうし、気質的にこういうまったり感を楽しめない人には合わないだろうけど裾野の広い作品だと思います。
posted by クローバー at 04:56| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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