2016年09月15日

BELDR HEART

 バルドシリーズ最新作であり、かつフォース、スカイとシリーズ屈指の名作を手掛けてきたライターさんの作品なので、もうこれはやらないわけにはいかないだろうと。


シナリオ(30/30)

 見えるものを疑え。見えないものを信じろ。

 アセンブラ危機の時代より遥か先、世界は未だ統合の管轄下にありました。
 しかしその間に世界は、かつての国家という境界がより一層曖昧になり、代わりに経済を牛耳る数十のメガコーポレーションが世界を揺り動かす原動力へと変貌していて。
 そんな時代においても闘争は決して止むことはなく、基本的にこの時代の戦争は企業間同士が、統合の一定の容認を受けて、サイバー上で傭兵を雇って行うものとなっていました。

 主人公はここ数十年で一気にのし上がった府嶽という企業の育成所を出て、今は雇われ傭兵として働いていましたが、ある日とある作戦実行時に、戦場に民間人の少女が紛れているのを見つけます。彼女は瓦礫に脚を挟まれ、アンカーが展開されていることでムーブで脱出することも出来ずに困り果てていました。
 ほぼ同時に戦場においては大規模破壊兵器の使用が宣言され、すぐに逃げなければ大変なことになるのですが、幼い頃のトラウマが嵩じて、主人公はどうしても困難に直面しているか弱き存在を無視できない気質を抱いており、その時も自身のシュミクラムを盾にして少女を庇う事を選択します。
 結果として破壊兵器の余波を食らう事になった主人公は、命こそ取り留めたものの脳神経が痛めつけられ、よりによってシュミクラムの兵装との連結がおしゃかになってしまい、これ以上傭兵家業を続けられなくなってしまって。

 失意の中、都落ちとばかりに相棒のユーリを付き添いに故郷の海神に戻ってきた主人公。
 海神は三十年ほど前の府嶽との企業間戦争の敗北後に没落しており、ほぼ占領下にあるような扱いで、果たしてこんな場所で再起が望めるのか、と絶望していたところで、何故か主人公を名指しでの仕事の依頼が舞い込みます。
 それは近年、府嶽の関連施設や企業を狙ったテロが勃発しており、それにとある学園の、廃校に抵抗して居座っている当今の学生たちが関わっている可能性があるから、そこに入学して内偵して欲しいというもので、過去の戦争時にも同様の義勇兵によるクーデターなどがあったことから一笑に付すことも出来ずに、主人公は潜入調査を開始します。

 そこでは数十人ほどの若者が集っており、自主的に学園活動を継続していました。
 幼い頃の知り合いなどもいるためにやりにくさを感じつつ、しかし彼女たちの活動、特にリーダー格の茉緒を中心とした生徒会の動きは怪しく、茉緒とは別の意味で一目置かれている凪にしてもその実態は把握していないと素っ気なくされ、実際にその活動の内実を調べていくことに。
 同じ頃に、自身と同じく傷病兵としてこの島に来たらしい、記憶すら定かでない少女を街で助け、一宿一飯の恩義とばかりに居着くのをやはり無碍に出来ず、彼女に月詠という名前を与えて世話をすることにもなって。

 内偵を進めていく中で、今の海神には不穏が空気が満ち満ちており、なにかが起こる前兆を予感させて。
 その中で、かつての先輩たちのように向こう見ずな正義を振りかざそうとする学生たちの活動を危うい、と思いつつも、そのひたむきさに打たれ、自身のトラウマもあって少しずつ主人公はそちら側に傾斜していき、いつくかの事件に立ち向かう中で、月詠がかつての学徒部隊の中心人物であった少女にそっくりである事が判明します。

 月詠の存在の謎とはいかなるものなのか?
 海神の背後で蠢く陰謀の全貌はどのようなものなのか?
 その対立をもたらす根源的な理由とは何なのか?

 遥か過去より繋がる因縁が交差し、互いに触発して爆発寸前のこの不穏な時期に、学生たちの傍にある事で見出した儚い正義と勇気を主人公は守り通すことが出来るのか?
 その中で心寄せた相手と、幸せな未来に辿り着くことが出来るのか? 
 これは、数多の野望や思惑、妄執が跋扈する中で、目には見えない絆を胸に、自分たちなりの正義を貫く勇気と希望と郷愁の物語です。


 あらすじはさっくりこんなところですね。
 大枠としては舞台裏で大きな陰謀が芽吹き、首をもたげようとしている中で、どのヒロインと心を通わせ、その想いに寄り添って進んでいくかで、その陰謀に巻き込まれていく学生側のアプローチも少しずつ変化し、その度合いによって垣間見える真実の幅も変化していく中で、その選んだ道程の中で最善の未来を掴み取るために足掻き、立ち向かっていくという流れになります。

 テキストは非常に簡潔明瞭で、かつ洗練された仕上がりですね。
 どうしても特異な世界観の状況を説明する必要性は大きいながら、その肝要な部分のみをしっかり組み込み、不必要に冗長にせず、それでいてわかりやすく纏めている手腕は相変わらず見事で、この世界観に対する思索の深さを存分に感じさせ、同時に多方向への教養の深さも滲ませています。
 特にその世界の構成や変化、個々人の権力者の振る舞いなどは、基本的に歴史をアナロジカルに捉え、援用することで非常に説得性のあるつくりになっていると思うし、それをシンプルな語句でしっかり読み手に植え付けてくるところは流石だなと。
 殺伐とした世界観の中でも若者らしい個性とのバランスもしっかり考えられているし、スカイの時のような二極化によるノスタルジーがもたらす威力はなくとも、キャラ性をきちんと引き出し愛おしく大切に思わせてくれるので、一層没入、共鳴できる部分は多かったなと思います。

 ルート構成は、これはバルドシリーズの恒例でもありますが、ヒロインの攻略順は厳密に決まっています。
 具体的には月詠⇒茉緒⇒ユーリ⇒凪の順で、ムービーでの登場順そのままですね。それぞれのヒロインのいずれかのエンドをクリアすると先に進める仕様になっているようで、またルート内の選択によって1〜2つのバッドエンド、或いはノーマルエンドも用意されています。
 こういう一見作り手の恣意的な分岐の在り方は評価に悩むときもありますが、このシリーズの場合はその仕組み、枠組みがきちんと世界の謎との関連性を保持しており、今回にしてもきちんと俯瞰的な視座とのリンクがあり、無意識下にトライアンドエラーを繰り返していく、というイメージが堅牢ですので、その辺もやはり見事だなと。

 分岐条件自体は、凪以外はそんなに面倒ではないと思うので、普通に想いに沿って進めていけば一発でグッドに辿り着けるかなとは思うし、最悪一周クリアすればシナリオ分岐がチャートで目視できるようになるので、攻略自体はそこまで難易度は高くないと思います。
 まあただ、これもシリーズ恒例で武装の引継ぎがあり、それぞれ一周するくらいだと武装の成長が敵の強化に追いつかないので、基本的には各ヒロインで最低二周ずつやって、全てのエンドを網羅しつつ鍛える、というのが常道かなと。


 シナリオに関してはやはり圧巻、の一言ですね。
 最初の月詠ルートでこそ、開示される情報が少なくサクッと終わってしまって、色々ともやもやしたところの残る感じですが、そこからほとんど倍々ゲームの勢いで、そこまでのシナリオで得られた部分はダイジェスト的に組み込みつつ、更にその先の謎を次々と披瀝していく、非常に密度が高く切迫感に満ち溢れた物語が展開されます。
 全ての謎が解き明かされるラストの凪シナリオに至っては、プレイ時間で月詠ルートの4〜5倍くらいの圧倒的な分量になっており、それでいながら全く間延び感なく、しっかりあらゆる伏線を生かし切って物語を抜群に美しく収束させることに成功していて、本当に天才的な構成力だなあと脱帽するしかありませんでした。

 ざっくりした外観としては、どのヒロインに寄り添うかが、結果的に海神を舞台に繰り広げられる陰謀に対してどのくらい深く、或いはどのくらい早く関わっていくかという差異を、それぞれのヒロインが抱える問題や懸念を発端とする形で無理なく組み込めており、そのタイミングと踏み込み方によって後々の被害や決着点にも変化が及んでくる、という感じです。
 大まかに言えば月詠ルートだと基本受け身、茉緒ルートでも受け身ではあるけどその中で少しでも出来ることを増やそうという努力はより明示化、具体化されていて、ユーリルートではそこまでのルートで信頼を勝ち得なかった存在との繋がりを得ることではじめて少しでも積極的に、破滅的な事態の進行を防ごうとする試みがなされ、凪ルートでは更にそれが、凪との直接的な信頼を紡ぐ中で深く鋭い踏み込みとなっていきます。
 そしてルートが進む毎に結末の悲劇性も少しずつ薄れていく、という王道的なつくりであり、まあバルドだけに最後に至っても完全無欠のハッピーエンド、というわけでもないのですけど、本来は学生の立場では到底どうしようもないはずの大きな陰謀に対し、あの手この手で歯向かい、食い下がり、諦めずに意思を貫くことで、僅かずつでも未来をきちんと切り拓いていっている、という進歩が手に取るように見える構図はやはり心打つものがあります。

 そういうつくりである以上、どうしてもシナリオ評価としてもそのまま、先に進めば進むほど面白い、ってことにはなっていて、完全に後傾型の物語であり、極論すれば最初の三人は前座で、凪の物語をハッピーエンドに導くために必要なものを揃える土壌、とも言えます。
 シナリオ構造的にもある意味では強制的な階段脱落ではあるわけで、アマツツミと構造的に似通った色合いで、やはり私はこういう一人のヒロインに全ての意味が収束していく特化構図は大好きだし、凪自身も最初からかなり好きではあったので本当に凪ルートは心躍らせっぱなし、ハラハラしっぱなしで最高に楽しめましたね。

 以下はネタバレで、考察と言うほど綿密にはならない、色々雑多な感想を織り交ぜて書き残しておきましょう。

 今回は過去作に比べてもより綿密に、ワイアードゴーストの成り立ちへの考察が深く為されていて、哲学的な観念から脳生理学の分野、更にはオカルト理論までを駆使して、理屈と神秘の両面でそれが、特に電脳空間では成り立つ可能性は確実にあるのだ、というのをわかりやすく見せてくれていますね。
 ミームという概念と、その拡散による世界の変貌は、あくまでもAIが一方的な神でなく、人間の総体的な想いを汲み上げて世界を構築する受動的な神である故の特異性であり、そのルールの中では認識の錯誤がそのまま事実として投影される、というのは改めてなるほど、と膝を打つ世界観の透徹だなあと。

 それだけ人の認識というものは曖昧で、見たいものしか見ない、という事実は、よりネット内では具象化されやすいのは確かながら、でもそれは間違いなく現実でも起こり得る事象だからこそ組み込まれた、という説得性を、凪という存在の特異性、現実の肉体は封印されたままなのに、現実世界で影響を及ぼす幽霊のようなものである、という事実から強く打ち出せているのもまた見事な仕掛け。
 そこには現実とネット、どちらの世界にあろうと誤認によって双方向的に影響を及ぼすことが出来る、という意味で、極論死んだと思わなければ死なない、というパラダイムの変換の可能性をも示唆していて。

 そのあたりは根本的に人が死を恐れ、死にたくないと思う生き物であり、AIとしてもそれを長い時間の中で汲み取って、それでアカーシャのようなネット内のあの世を構築するまでに至っているわけで、その存在を予期し、そこに干渉することで電子体の復活を可能と見做した天本博士の先見は確かながら、それを現実にするために支払った犠牲は非常に大きなものであり、かつ長い間様々な形で現実に軋轢を波及させてきたわけですね。
 ただ結果的に、その研究がなければそもそも凪と主人公は生まれてもいない、ということにはなり、その誕生に植え付けられた先天的な運命と、その後の苦難の中、忘却の彼方で紡がれた運命、更に今回の物語の中で出会い、絆を育むという、いわば三重の運命の導きがある中で、先天の呪いをいかに打ち払い、死の概念すらも切り払って共に歩む未来を築けるか、この難題を綺麗に解決しているのは本当に素晴らしいですよね。

 最終的にはアカーシャに繋がる超常的な力の助けを得ている、とはいえ、その認識に至るまでの艱難辛苦は一通りではなく、どこまでも諦めることなく理路の中での可能性をギリギリまで追求したからこそのものであって、こういう一度は別れを予感したところからの再会、って構図はそりゃ巷に溢れ返る構図ではあれ、それを必然と思わせるだけの下積みがあるかないかはその価値を激変させるわけで。
 たまさかだけど直前にハナヒメのポリーナルートやってて、そのあまりにもご都合主義な復活劇に多少ならず7白けたという経緯があった中で、この重厚感、理屈からでも神秘的な側面からでも筋道をはっきり解釈できる複層的な下支えを備えてのラストシーンは感動的でした。
 まあ後超個人的には、まさかのロリ凪降臨でヒャッハー!でもあったりする(笑)。愛し合う気持ちだけは電脳世界で育んだ記憶そのままに、けどこれから本当の意味で結ばれるには肉体の成長を待たなくちゃいけない仕様とか、ロリコンとしてはもどかしいけどときめき過ぎる。。。むしろその経緯をスピンオフで綴ってくれ!と切実にお願いしたい(笑)。

 あと多少気になっているのは、冒頭の妖精=岬との出会いのシーンがどこまで偶然だったのかな?というのは検証しておきたいところ。
 そもそも論として、どうしてこの時期までアカシック計画の再発動が為されていなかったのか、というところは、リンカネーターのある戦艦が統合の監視下に置かれていたことで、あくまでも有事のどさくさでないと事を成し遂げにくいという判断があったのか、再び海神の側から協力を得ないと難しい、というところでその根回しに時間を費やしていたのか、或いは凪の存在がしっかり確認できない故の足踏みだったのか、色々推測の余地はあるわけで。

 ただ少なくとも主人公が殻である以上、その身柄が府嶽の管轄にある限りは、職務命令として上手く糊塗しつつその本懐を遂げる役割を果たさせること自体は、きっとそのままなら難しくなかったはずなんですよね。もしもあの時点で事故に遭って除隊することがなければ、おそらく主人公は府嶽の傭兵として茉緒達と戦い、そして極秘任務とかの名目でリンカネーターに繋がれて、航一郎の精神と記憶を移植されてしまったのではないかと。
 妖精としては記憶が定かでなくとも、ある程度海神を包む不穏な動きや気配は察知できたのだろうし、その一環で絢矢歌の電子体の復活、なんてこともやってのけているわけで、その上でもうひとつの殻である主人公の存在を探しに出掛けた、というのは普通に考えられるところで。

 なのであの場所で二人が出会ったのが完全に偶然だったのか、はわからないところだし、穿って考えれば俯瞰的に複層的な歴史を捉えられる力を持つ中で、どうすれば主人公を海神の側に引き寄せられるか、という可能性を突き詰めた結果があの形、だった可能性も否定は出来ないところ。
 実際問題、上で触れた選択肢の恣意的な付け加えにしても、妖精とリンクしていることで無意識的にでも一方の未来の可能性を感得している中、より真っ当な未来を模索する中での視野の拡大をもたらす、という意味でその辺の不可思議パワーは機能しているのだと思えるし、まああの時点の妖精にそこまで計算高い行動がとれるか、って気もするけど、無意識下でもなんとなくそうするべきだ、くらいの導きはあったのかもなと。

 そう言う意味では過去においても今にしても、妖精=岬の活躍、影響力はかなり大きいものがあるし、リンカネーターの存在がもたらした正の要素であって、それをどこまで上手く活用できるかで、基本それ以上に跋扈してしまう負の要素をなんとかフラットに押し留める可能性を引き出している、というところですね。
 どうあれ人類の概念においてその研究が異端であり、倫理観に抵触するものでもあって、でもそれが当たり前、となった時には、ネットの中においてはそれが確かな事実、真実として固着してしまう危険があると思えば、その危険の排除具合という意味でもルート間格差をしっかり見いだせて面白いなと。
 月詠ルートではそもそもリンカネーターはそのまま健在だし、茉緒とユーリでは爆破はしたもののカトウ=天本は健在だからいずれ再築される可能性は排除できない、凪ルートでだけその両者を封じ込められているわけで、バルドルとの関係も含め海神の未来、という意味でもしっかり段階を踏んで前進しているわけです。

 あと今作をプレイして思ったのは、揺るがない信念を持った悪、というキャラ自体はいないのかな、ってところ。
 極限までろくでなしだった変態性愛者の雄大や、最後まで噛ませ犬まっしぐらだった社蓄直翔あたりは、流石に信念、という言葉を被せるには足りないし、将軍とか親父あたりは壁になることはあっても決して悪ではない、敢えて言えばカトウ=天本なんだけど、あれもひとつのプログラムの所産ではある、というスタンスだし、ラスボスの名もなき妹に至っては、そのラスボス戦BGMの無垢と虚無が示すとおりに、何色でもないところに無理やり妄執だけを植え付けられた被害者でもあって。

 そうやって見ていくと、人が人であるからこそ抱く業の部分を様々な形で切り取る中で、その想いにいかなる行為が付随するかで善悪どちらにも傾く可能性があるのだと、敢えて悪を自覚して悪を為す存在をオミットすることで強く浮き彫りにしているのかな、とも思いましたね。
 兵装少女にしても結局過去の学徒の想いそのものであり、本来そういう無念や未練が物質に取りついただけなら暴走してしまうのを、妖精=岬という高次の存在が仲介、媒介になることで防いでいるわけで、想いそのものに善悪はなくともその扱い次第で価値は変わってくる、という一面なのだろうと思います。
 正直コラボ兵装の朱璃が全然出てこなくて道中あれー?って思ってたけど、最後までプレイしてその意味を理解すれば、そりゃ当然だよなって納得を得られたし、きちんと戦闘システムとシナリオ面での結びつきが明快なのも高く評価すべきポイントですよね。

 ともあれ、シナリオの奥行き、重厚感、組み立て、カタルシスと爽快感に至るまで万全の仕上がりとなっていて、まあこれは素直に満点評価していいんじゃないかな、と。いささかハードル低くなってる気もしないでもないけど、少なくともこの総合的な完成度の高さは、今年の作品でならネクロと双璧だと思うし、その上で一点突破構造がもたらす感動はアマツツミと双璧、その辺抱き合わせで考えれば今年もっとも素晴らしいシナリオ、と評価して差し支えないでしょう。


 後はサラッとバトルシステムについても、私なりに触れておきましょう。基本的に延々イージーでしかプレイしない、やり込み皆無のダメダメプレイヤーなのは自覚してるので、あまり突っ込んだ評価できるほどの立場でもないし(笑)。

 今回の目玉としてはシナリオでもちょい触れたけど兵装少女、というシステム。
 今までは一定のポイントや使用回数などが勘案されて階段状に武装がオープンしていく、という無骨なつくりだったわけですが、今回はそれぞれの兵装少女の使用回数、活躍度に応じてステータスが上がり、一定の経験値、愛着度に達すると新しい兵装を閃いて、それをポイントで開放していく、ということになります。
 冊子とかでも言及してるように、確かにバルドらしからぬ媚びた要素ではあるけれど、少なくともぬるゲーマーで美少女大好きーな私としては大歓迎できる要素だったし、実際可愛いなと思える子はより成長させる意欲を持てて、かつ一定の信頼度を得れば他の少女を勧誘してくれる、というシステムも、より幅広い兵装を試す契機になってくれていたなと。
 正直今までは本当に遠距離武装ばかりしか使わないチキンプレイだったけど、今回はそれなりに近距離武装も使い込んで色々試してはみたし、それをするモチベになってくれたのは良かったのではないかと。

 兵装自体は36体いる兵装少女にそれぞれ5種類ずつ、特典とかコラボまで含めれば190種類近い武装があり、自分なりの武装を作っていくのも色々目移りして中々大変、ですがやはりそれはそれで楽しいです。
 その5種類の内通常武装が3種類で、ひとつは必殺アクション、そしてもう1個が今回新たに組み込まれたFEI−アクションというもので、これは本来同一武装を連続で使えない仕様なんですが、その枠を超えて単一で連打も可能な特殊アクションになっています。

 ここに何を組み込むかによって、今までどうしようもなかったタイミングでの緊急回避とか防御、或いは追撃やカウンターなども可能になり、その意味では多少難易度が下がっているのかな、と思います。
 私の場合この枠は中盤からずっとシールドにしてて、開幕にシールド張りながら距離を取って、という戦略でかなり序盤の安全、安定性を確保できたし、近距離攻撃は無理だけど遠距離攻撃の大半はある程度弾いてくれるので、反射神経が死んでる私でもダメージ食らう前に回避出来るようになって、おかげで今回は一度もゲームオーバーにならずにクリアできましたね。
 まあシールドがない頃の一周目の絢矢歌戦とか、あと流石にラスボス戦はちょい苦戦しましたし、このあたりノーマルまで上げてたら怪しいのは事実なので、あくまでも私なりに、ではあるのですが。。。でも間違いなくスカイよりは全体的に苦戦せずにいけたと思う。

 今回に関しては武装の組み合わせが上手く作れた、というのもあるでしょうけどね。
 最終的には遠距離特化に戻って、中盤以降は大抵ホーミングミサイルで足止めし、サテライトレーザーぶっこんで、そこに多弾頭ミサイルで追撃、という攻撃パターンで概ね安定してダメージ与えられたし、そのあたりが育ち切った辺りからは普通にオラオラプレイできたので楽しかったです。無論華麗さの欠片もないけど。。。

 ともあれ、基本システムとしてはもう万全のつくりであるバトルだし、その上でより戦略の幅を広げる要素を組み込んでくれているのは、やり込み派にとってもとりあえずクリアできればいい、って派閥にとっても有用だったのではないかと思います。こちらも減点する要素はないし、スカイより楽、とは書いたけどやはりすごく歯応えのある戦闘は多くて大変に楽しかったです。
 
 以上、総合的に勘案してもやっぱりほぼ隙のない素晴らしい作品だったと思いますし、アマツツミに満点つけたならこれにつけない理由は全くないよね、ってところ。
 基本的に何を書いてもネタバレだし、といって個々の場面から一々その理屈の確かさを検証していたらどれだけ紙幅があっても終わらないので、ざっくりした部分だけで終わらせてしまいましたが、そもそも私のつたない感想読んでる暇があったら是非にプレイしろ、って思うくらい、この楽しさを言葉で伝えるのは至難な、奥深く没入感の高い傑作でした。


キャラ(20/20)

 あらゆるキャラがそれぞれの立場でしっかり強い覚悟や信念を持って危機に立ち向かう姿が描かれていくし、特に主軸になる学生たち、主人公周りの成長やくのう、悲しみはすごく純良なものがあって、時にそれが悪用されたり、挫かれたりしての悲しみに陥ることもあるけれど、それを踏み越えて強く生きる様を最後まで見せてくれるのは本当に心に残りますね。

 そして終わってみればやはり凪の存在感が素晴らしかったなあと。シナリオ補正も大いにあるけれど、その出自や立場などから中々前に出てこなかった気質や性格が、より能動的なルートに進む毎に詳らかになっていって、背負う宿命の重さ、因縁の深さの中で懸命に、はじめて手にした想いを胸に走り続ける姿はとてもカッコよかったですし、可愛かったと思います。
 やっぱり普段からクールなキャラが慌てふためいたり照れたりするのは破壊力高いですし、この仮面の裏側には本当に熱い情熱を隠し持っていて、その想いの強さがあればこそああいう形でもその想いが繋がることは良かったなあと素直に感動できるところ。本当にアフターストーリーがすごく見たいんですけど(笑)。

 茉緒も元々は一番好みかな、と思っていた通りにすごく真っ直ぐでひたむきで純粋で、強がってしまうけど本質的には頼りたい気持ちを持つ優しく儚い子でもあって、ヒロイン唯一の品乳枠でもありやはりとても可愛かったですね〜。
 それだけに月詠ルートなんかはうわぁぁぁぁぁ!って感じでしたが、それがある故にその後の自身のルートから、更にその先でのより強さを獲得して信念を貫く様が光って見えるし、ヒロインの中でも一番女の子らしい女の子してるのもあってとても好きです。

 月詠もわかりやすい大和撫子らしさでとっても可愛かったですし、こうやって献身的に寄り添い支えてくれるキャラはやはりいいですよねー。
 ユーリもなんだかんだで最後まで献身的に支えてくれるし、態度とは裏腹に初心だったりと可愛いところも多く良かったです。

 だがしかし、その二人よりは私カンナの方が好きだったりはする。。。ええロリコンですし。
 でもああいう素っ気なくも懐いてくれる感じはとてもいいし、声もすごくマッチしているし、特に後半のシナリオにおいてはどんな場面でもジョーカー的活躍というか、縁の下の力持ちというか、どのヒロインに寄り添うか以上にこの子の信頼を獲得するか否かで出来ることの奥行き、見える世界の色がガラッと違ってくるのが面白いところでした。
 シーンがあったのもすごく嬉しくはあったけど、でも最初の時は確実に罠だと思って泣く泣くスルーしたけどね。まあ凪クリア後の分岐条件開示で見た限り、あそこでカンナ抱いてもユーリとの選択で間違わなければグッドエンドはいけるってのがこの二人らしいと言えばらしい。。。

 男キャラだとやっぱりヴィルヘルム中佐と岩永巌将軍は別格の存在感ではあったなと。
 戦いの中で己を磨いてきた骨太の存在感、それぞれに立場があって苦悩もする中で、信念を貫くために時には拳を交えることしか出来ずとも、その想いをしっかり受け継いでいかねば、と思わせる生き様の凄みはやはり図抜けていたのではないかと思います。実にいい父親でもあったしね。


CG(18/20)

 フォースやスカイとは絵師さん変わって、兵装少女ともどもよりキャッチーなイメージにはなっていて、これはこれで可愛いけどやっぱり多少違和感はあるかな、って感じはする。後は1枚絵の分量や配置的に色々難しさはあって、その辺どう評価するか難しいところなんですが、どちらにせよ満点までは届かないな、ってところなので素直に。

 立ち絵に関してはあくまでそれなり、というところ。半分くらいは電脳空間やバトルが占めるわけだし、立ち絵の必要性は相対的に高くはないからここは仕方ないかな。
 ポーズはヒロインで2種類、サブで1種類と最低限、動き自体もあまり派手ではなく立ち絵シーンでの躍動感はそこまで感じられないかな。
 お気に入りは凪やや右、茉緒やや左、やや右、月詠正面、カンナあたり。

 服飾もヒロインで1〜3種類、サブは1種類と必要最小限。なぜかユーリには寝間着があるのに、月詠にはないという。いつもあの服で寝てるのかこの子は。。。
 お気に入りは凪制服、茉緒制服、私服、ユーリ私服、月詠制服、カンナ私服あたり。

 表情差分もそんなに多くないし遊びも少なく、シナリオのイメージに合致したものがきちんと選ばれてはいるので違和感はないけど印象としてもそこまで強くはなく。
 お気に入りは凪澄まし、照れ焦り、微笑、困惑、悄然、茉緒怒り、照れ、笑顔、ジト目、月詠笑顔、苦笑、慌て、照れ上目、ユーリニヤリ、怒り、カンナ睨み、呆れ、焦りあたりですかね。


 1枚絵はキャラ分で79枚、シュミクラムで37枚の計116枚。
 まあシュミクラム絵もかなり出来がいいし、それを含めれば水準は軽く超えているのは確かなんだけど、でもスカイの時あたりはキャラ1枚絵だけで通常レベルクリアした上で、だった気もしたし、あとシナリオ構造上致し方ないとはいえかなりヒロイン格差が大きいんですよね。流石に月詠は不憫である。
 キャラ1枚絵自体も安定して可愛いけど突き抜けるほどではなかったし、総合するとこのくらいの評価に落ち着くのかな、という感じ。

 お気に入りはページ順に、月詠添い寝、窓辺で、抱きしめ、押し倒し、愛撫、バック、抱きしめ、パイズリ、正常位、主の敵、逃亡、茉緒演説、庇い、路地、強制キス、改めてのキス、愛撫、墜落、クンニ、69、対面座位、騎乗位、夕陽の誓い、崩壊、ユーリ愛撫、キス、研究所、騎乗位、正常位、対面座位、キック、爆破、凪出会い、読書、庇い、夜景、海の上から、看病、キス、愛撫、はしゃぎ、餌、愛撫、正常位、バック、寄り添い、抱きしめ、再会、再誕、妖精、フレイア、カンナ怯え、デート、午後のお茶、正常位、ひとつにあたりですね。
 シュミクラムも出来はもちろんいいんだけど、どれがどの機体とか名前までちゃんと覚えてないし割愛。。。


BGM(20/20)

 どこか退廃的な世界観の色を底流に備えつつ、切迫感や荘厳さ、重厚感を前面に押し出した曲が多く、それでいて時に純粋透明な曲を交えることでアクセントにしていて、そのメリハリがある中での一体感が素晴らしい仕上がりだなと思います。

 ボーカル曲は2曲。
 OPの『Sign of Suspition』はいかにもバルドシリーズらしいスピード感と近未来感、哀愁が綺麗に組み合わさった素敵な曲ですね。特にAメロとサビはかなり好きですけど、ただフォースやスカイのOPと比べると多少落ちるかな、殿堂には届かないかな、ってところですね。
 EDの『In this world』もまた抒情感溢れる出だしからの、どこか虚無的なイメージを残しつつのらしいメロディを、こぶしの利いたボーカルが迫力たっぷりに演出していて、特にサビへの渡りの部分と、出だしの余韻が凄く好きですね。でもやっぱり殿堂までは届かない、かな。もう一歩奥行きが欲しかったし、2曲ともフルバージョン聴ければ違うのかもだけどもね。あ、OPの方はバトル停止させてれば聴こうと思えば聴けるのか。

 BGMは全部で29曲と量は水準ながら、質は圧倒的。
 特に下10曲くらいの出来がどれも神がかっていて、それぞれにかなりポリューミーではあるのだけど後半に進むほどに情感に溢れ、迫力と疾走感に満ちての素晴らしい出来になっていて、流石にバトル中だと聞き惚れている余裕なんて微塵もないので是非に後々からでもワンループ楽しむ価値はあると思います。

 特にお気に入りは5曲。
 『きみの光がみえる/きえる』は出だしから哀愁漂う非常に切ない曲で、作中でも悲しい事態が巻き起こった時の定番、って感じだったけど、この旋律の透明感と噛み締めるような音の重なりが本当に素敵で奥行きもあってね素晴らしい曲だと思います。
 『勝利は我が手に!』はとにかく後半の和テイストの疾走感が炸裂するメロディラインの美しさ、笛の音ののびやかさが最強ですね。いかにも月詠、というか甲華学装隊の曲、って感じで、皇国華撃団かよ、とかちょっと思ったけどとにかくそんなイメージの絢爛華美で清々しい勝利曲。
 『Rise of Children』はこれも完璧な後半型の曲で、出だしはとても地味に、何も持たないところから懸命に努力し這い上がっていく学徒のイメージを投影していて、そこから少しずつ輝かしい未来に辿り着く道筋を感じさせてくれる曲です。とにかく2分過ぎてからの後半のメロディの栄光の道、って感じの雰囲気が超好き。この作品で一番好きな曲ですし、下手すると今年トップクラスではないかと。
 『無垢と虚無』はラスボス戦らしい重厚感、荘厳さに加え、戦わねばならない非業の運命への悲しみも混じっての重々しい出だしではありつつ、それでもそこから解放してあげねばならない、という想いが色濃く反映しての中盤、2分半くらいからの徐々に盛り上がっていって、そこから一気呵成に吹っ切れたように走り出すメロディがまた素晴らしい出来だなと思います。
 『Reimagination』は気持ちが通じ合った時の感銘を素直に切り取ったような透明で安らかで温かい、非常に美しい曲でやはり印象深いですね。

 その他お気に入りは『わだつみのささやき』『N.L.C.S』『Blue Lightning』『鉛の楽園』『Unbreakable Heart』『きみの声がきこえる』『人形の国と眠り姫』『n/a−Invisible Tears−』『Next to you』『Don’t Believe The Truth』『No Weapon Sharper Than Will』あたりですね。


システム(10/10)

 演出に関してはやはり素晴らしいなと。
 流石にADV部分まではそこまで手が込んだことはしてないけど、それでも通常レベルには動くし、情感もしっかり引き出す中で、やはりバトル中の演出も素晴らしく派手に、インパクト強く仕上がっているので文句なし、ですかね。
 ムービーもこれぞバルド!って感じのサイバー感の中でセンスあふれる構図でのつくりであり、やはりかなり印象深いです。

 システム的にも全く問題なし。
 安心安定の戯画システムですし、これだけガチャガチャ動く戦闘でも動作に不安なし、ハナヒメの後だと尚更にこの安心して没入できる安定感に信頼を置けますよねー(笑)。必要なものも全て揃っているし、最終的にシナリオジャンプ、戦闘スキップのプラグインも獲得できるのでリプレイも敷居低く、理想に近いシステムですね。


総合(98/100)

 総プレイ時間はセーブデータの時間を信じるなら45時間。一応共通、と呼べる部分はあるけどせいぜい2時間くらいで基本的には概ね個別と考えていいつくりだし、そしてヒロイン攻略が進む毎にシナリオも戦闘も厚みを増していくスタイル。大よそだけど月詠が5時間、茉緒が8時間、ユーリが11時間、凪で18時間くらいが、周回プレイバッド回収込みで費やした時間かなと思います。後は少しだけサバイバルやったりね。朱璃@遥そらさんをプニプニしたかっただけです。。。

 最悪クリアするだけなら4周で済みますけど、実際問題それだと武装の強化が追い付かずに、攻略レベルが低くても中々苦戦するだろうから、なんだかんだで回収がてら8〜10周するくらいはデフォになるのではと。いや私がアクションバトルドヘタな上にゲームオーバー大嫌いなチキンプレイヤーだからなのは否めませんが。。。
 でもバトルに関しても非常に奥深い戦略性とやり込み要素が満載だし、それと並行してのシナリオの素晴らしさも流石の一言で、バルドシリーズの本流として文句のつけようもない最高の面白さだったと思います。
 多分今回のFEIシステムのおかげで、今までよりは少しアクションゲーとしての敷居が低くはなったと思うし、最悪ベリーイージーという手段もありますから、なんか大変そう、と思っても是非手にしてみることをお勧めしたいですね。無論以前のバルドシリーズ網羅している方がより楽しめる向きはあるにせよ、物語としてはこれ単独で独立している、世界観の説明も必要充分に備わっているのでいきなり手を付けても問題ないですし。
posted by クローバー at 06:56| Comment(2) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
先日 BALDR HEART をクリアして色んな人の感想を読みたくなってこのページにたどり着きました。こんなに丁寧に書かれている感想を読んで感動しました
Posted by すずめ at 2020年04月19日 17:15
コメントどうもです。

BALDR HEARTは個人的に超名作判定なので、その分感想も力を入れて、しっかり本編の内容を吟味して書いた記憶があります。
この頃までがギリギリ、感想を綿密に書けていた時期なので、正直今プレイしたとして、ここまで丁寧には無理ですねー。

バルドシリーズはフォースとスカイが有名すぎますけど、これももう少し知名度が上がっていい傑作ですし、本当に時間があればいつかリプレイしたいです。
ただゲームパートをもう一度やるのが辛いんですよねぇ……。
Posted by クローバー at 2020年04月20日 10:43
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