2017年01月02日

シンソウノイズ 〜受信探偵の事件簿〜

 初見時からすごく面白そうだと感じていて、体験版をプレイして細やかな心理描写の丁寧さと生々しさ、リアルさに驚き、ミステリーとしての堅実で一切のズルのないつくりに感銘し、ヒロイン達の底知れない魅力に惹かれ、そして衝撃の結末に打ちのめされて、これはもう買うしかない!と。

シナリオ(29/30)

 洗練の極北。

★あらすじ

 主人公は生まれつき、他人の心の声を受信してしまう特殊能力者でした。
 ただしそれは半端なもので、基本的にそれが誰の声か判別できず、また自分の意思で遮断する事も覚束ない故まともに社会の中で生きていけず、幼い頃に同じ力の持ち主である祖母に引き取られて、人の少ない田舎で辛うじて最低限の物心、人と付き合う術を学び、その実地訓練としてそこそこ人口の多い静之宮の学園に通うことになったのです。

 ただ、そういう生まれの為に基本的には人見知り、人間不信を拗らせたコミュ障で、そのくせ生々しい心の声だけは読めるので何かと冷笑的で。
 かつこちらに来たばかりの頃は、いきなりの人の多さ、受信量からくる頭痛に悩まされてまともに動けなかったため、クラスのコミュニティ形成の段階ではバッチリ出遅れ、ゴールデンウィーク明けに学園側から押し付けられる、その後一年何かグループ行動をする時の基準になる班分けの時点でも、他のメンバーにほとんど顔を覚えられていない上、一部の相手には不思議なくらい強い反感を買われている始末で。

 快活ながら好悪の波が激しそうなスポーツ少女、夏希。
 出で立ちと言動で悪目立ちしているうさんくさい霊感少女、沙彩。
 眉目秀麗で性格も綺麗、地元の名士でもある優等生、百合子。
 朴訥で率直な愛されキャラのスポーツ青年、陽一。
 少しチャラいけど気のいい好青年、瞬太。

 自己紹介でも滑り気味で、このメンバーとこれから上手くやっていけるか、そう内心で危惧した時、背後から透明な声がかけられて。

 静謐な空気を纏うクラス委員長、さくら。

 彼女もまたこの班のメンバーであり、他の班にプリントを配っていたので合流が遅れたのです。
 そしてその登場に、主人公は自分の心音がひとつ大きく跳ねるのを感じて。

 それには理由がありました。
 主人公は日々、昼休みになると屋上の物陰に隠れ、決まって現れるさくらの心象風景を窃視していたのです。
 そしてそれは、非常に写実的で陰惨な自死風景であり、普段はあまり垣間見えない心の声の向こう側で彼女が見ている景色の鮮烈さ、その情意の濃密さに中毒を起こし、それが嵩じて歪んだ初恋として芽生えていたのです。

 班決め当日もそのように日課を終え、その上で、立ち上がりで与えた悪印象を挽回すべく、最初の班行動であるグループ合宿の候補地と活動計画を煮詰めるために、過去の事例を求めて図書室へ赴いて。
 するとそこで、一人の少女がおろおろと困惑している様に出くわします。

 ふわふわ子供のような無邪気さを放つ、ちょっと機転の利かない少女、萌花。

 先の班決めでも、たまさか先生のミスで割り当てが成されず、けれどそれを授業終了まで言い出せなくてみんなの顰蹙を買い、なんとかお情けのようにひとつのグループに入れてもらったものの、その経緯から班行動の下調べを一手に押し付けられたようで。
 それでも意気に思ってやってきたのに、最初自分で確保していた過去の文集を、後から来た同じ目的の面々に掠め取られて、どうすればいいかわからずに立ち往生していたのです。

 最初はいつものように自業自得、と冷笑的に見ていた主人公ですが、その時不可思議な事に気付きます。
 それは、萌花の心の声だけが、他の人のようにのっぺりした機械的な音声に変換されず、元の声のままで頭の中に響いてくる、という事で。
 そしてその声が漂わせる空回りと困惑と不安につい情が絆され、その場にいた面々に、必要な分だけコピーを取ればいいという建設的な提案を提示して場の混乱を解決するのですが、慣れないことをした気疲れと、萌花が向けてくる一心な感謝と尊敬の念にむずかゆさを堪え切れず逃げ出してしまいます。

 帰り道、電話で祖母に確かめてみると、稀に子供の頃の綺麗で無垢な心のままに成長してしまった子がいて、そういう存在は筒子と呼ばれ、なにを隠そう祖母の伴侶もそういう存在であったらしく。
 そんな子は滅多にいない、それは運命の出会いだとはしゃぐ祖母に対し、全ての気持ちが筒抜けで対等な関係が成り立つものかとやはり冷笑的に思い、さくらの姿を思い浮かべて、自分はあんな風に謎に満ちた心の持ち主の方が好きだと改めて実感して。

 翌日、自分の仕事の成果を披露するものの、反応は賛否様々で。
 どちらにせよもう少しみんなで煮詰めて、と一番理性的な百合子が話をまとめにかかったところで、さくらがいつも以上に静かで、なんなら上の空であることに気付いて。
 その虚ろで、いつも以上に無理やり感情を抑えているような様が気になって、昼休みに班のメンバーに昼食に誘われるのを振り切って日課の屋上に向かいます。

 或いは、と懸念していたものの、さくらは今日もやってきて、いつものように自死想念を開始して。
 けれどいつも鮮明過ぎるほどに鮮明だったその像は酷く歪んでぼやけ、その心象の揺れをまざまざと示しており、なんがあったのか気を揉んでいると、さくらが屋上の手すりから身を乗り出そうとしている思念が、物音が伝わってきます。
 それは主人公に、やはり、という納得を呼び起こすものの、いざその時が来ると、静かな心でその美学を完成させてあげよう、と見守る気分ではいられず、千々に乱れる心の赴くままに桜の前に姿を現し、想いの半分も伝わらないであろう稚拙な言葉で必死にその自殺を止めようとしてしまい、あぁ、やっぱり自分はこの人が好きなのか、と改めて強く実感させられて。

 そんな主人公の必死な様子に、そして心を読んでいるから、とは当然知らずに、言葉の端々にのぼる、さくらの生々しい想念に対し理解を示す感情に触れて、さくらは興が削がれたように手すりから手を放して。
 そして死の羽ばたきを妨げた代償として、自分を抱いてくれないか、と、突拍子もない、けれどこの上なく真剣で、悲愴さと必死さを漂わせた提案を持ち掛けてきます。

 元々好いている相手でもあり、その濃密な情念に誘引されるように二人は行きずりのような身体の関係を持って。
 その最中に感じ取れたさくらの心に満ちる幸福感に慰められつつ、それでも肝心な事には踏み込めないまま、一時の夢として互いの胸に仕舞うことを約束してその日は別れるものの、益々その存在感は膨れ上がっていくばかりで。
 そんな想いも後押しになったのか、帰りの電車でたまさか自分を嫌っているように見える夏希が痴漢被害に遭っているところに出くわし、その力を使って犯人を割り出し告発する、などという慣れない英雄的行為をしたりもして。

 そしてさらに翌日。運命の日。
 その日は校内一斉のワックスがけ作業があり、ほとんどの生徒は昼前に家に戻っていって。
 けれど未だ班合宿の行先と目的が決まっていなかった主人公の班は、夏希や百合子の部活終わりを待ってもう一度話し合おうと約束し、その時間までうろうろしている時に、先生の話を聞きそびれて、いつものように屋上に上がってしまって戻れないさくらと、その鞄を手にして困っている萌花を見つけ、ミーティングが終わるまで待ってるという萌花を引き連れ待ち合わせ場所に向かうと、そこに険しい剣幕で飛び出してくる夏希の姿があって。

 よくよく話を聞くと、部活で泳いでいる間にロッカーに入れていた体操着が盗まれた、との事で、昨日の件に引き続いてのそういう被害に、激高しつつも内心でかなり打ちひしがれており。
 やってきた先生はどうも警察沙汰になどせず穏便に済ませたいようで、どちらにせよ内部の犯行の可能性が高く、班メンバーでの話し合いの結果、それなら自分達で調査してみようという流れになって。

 関係性や立ち回りなどから自分が強く疑われているとわかった主人公は冷や汗をかき、内心に伝わってくる犯人の焦りからどうにかして筋道の立った推理を導き出し、精密な短期記憶という特別な才能を持っている萌花の力も借りてなんとか真犯人とその動機を暴き出し。
 その内容が、結果的に夏希の思っていた動機とはかけ離れていたこともあり、無事にその件は内々で手打ちになって、改めてさくらと合流して今度こそミーティングをしなくては、と全員で探している最中、遠くから重々しい、何かがひしゃげ潰れるような音が聞こえ、間髪置かずにつんざくような悲鳴が轟いて。

 確信に近い予感を抱きながら現場に駆け付ければ、そこには、柘榴のように毒々しい赤を撒き散らす、さくらの墜落死体が、かつてさくらが幻視していた姿がまざまざと大地に描き出されていて、それを目撃してしまったらしい夏希と百合子が顔色を失って立ち竦んでおり。
 駆け付けた沙彩が頽れ、瞬太、陽一も愕然としたままで、いち早く立ち直った百合子が救急車を呼んで、と泣き叫ぶ中、主人公の脳裏に残酷な言葉が流れ込んできます。

 私が、殺した――。

 それはさくらの死が自殺ではなく、何者かの手によることを示唆する、呪いの囁きでした。

 その後の日々の中で、誰しもがその衝撃を振り払い、日常に回帰しようと努力する中で、その死が殺人であると知っている主人公と、元よりさくらと友人で、やはりその死に納得がいかない萌花は、二人で力を合わせてほんとうのこと、そのさくらの死の背景を探っていく事になります。

 やがて受信探偵、と呼称される主人公達、彼らはその特異な力を有用に生かして、深い深い闇の底、深層に眠る事件の真相に辿り着けるでしょうか?
 この作品は様々な事件を通じて人の心の闇をまざまざと浮き彫りにするファンタジックミステリー、そして精緻で洗練された心理描写を軸にして、絆の尊さを描き出す濃密なヒューマンドラマです。 

★テキスト

 簡潔、明瞭にしてエレガンス、非常に洗練された優美で官能的な文体は、語彙のひとつに至るまで精緻な配慮の上に紡がれており、純粋に文章としての美しさが際立っています。
 時にしちめんどくさい場面描写や心理描写が必要でも、それをわかりやすく、感覚的に理解が及ぶギリギリまで言葉を削って綴られている、という感じで、スッ、とその描写に籠められた感性が読み手に沁み込むように伝わってくる、というのは、上質の書き手でなければ不可能な技であり、読み進めるにつれて感嘆が溢れてきましたね。
 端的に文章を、会話を、心理描写そのものを追いかけているだけでもすごく楽しかったし、その上でシナリオとしての完成度も高く、伏線なども実に自然な流れの中にさりげなく織り込まれていて、本当に幸福な読書体験を得たなー、という感覚ですね。横文字を多用しないのも好みなところで、日本語表現の幅広さを折々に堪能させてくれる素晴らしい読み口でした。

 そうであればこそキャラ性も奥深く、生々しく迫ってきて、その説得性があればこそのシナリオ展開でもあるので、この点は本当に強調してし過ぎることはない素晴らしさだったなと思います。
 こんな風に仰々しく書くと、それこそ無駄に肩肘張った格調高い文章か、って思われるかもだけど決してそんな事はなく、基本的にはざっかけない、とっつきやすいイメージで、ただ要所要所でハッとさせられる表現の妙、比喩や暗喩、或いは倒置の綾などが煌いている、という感じですので、細かいこと考えずサラッと読んでも十二分に楽しめると思いますね。

★ルート構成

 基本的にADVパートにおける選択肢は脱落型、階段分岐になっています。
 各章ごとに主役を張るヒロインが交代していき、物語の流れの中で充分に好感度は稼いで、その上でこの先更に謎の真相を追うか、それともドロップアウトして当該のヒロインとの穏やかな幸せを望むか、という形で、脱落した場合、その後謎の解明に乗り出せないような心理的仕掛けもしっかり組み込まれているので、非常にこの物語に相性のいい構造だと思いますね。
 体験版の時点では個別そもそもないんじゃね?って危惧もしていたので、おまけ程度にせよ各々のヒロインとイチャラブできる展開があるのは良かったです。

 そして、シナリオ後半では一部強制ルート分岐があり、その結末を踏まえてのトゥルー進行、という要素が組み込まれていて、この辺はきっとプレイヤーの中でも賛否が一番出やすいところではないかなと。
 私の場合、基本的に脱落分岐があれば先にそちらを、という形で順々にプレイしていったので、明確な分岐発生条件はわかりませんが、話的にも真相を暴いてから他のヒロインとのifを拾い読み、ってのは読後感を損なう感じもあるので、私のように分岐ごとに寄り道していくプレイをお勧めします。
 …………いやまぁ、こいつには興味ないからどうせ見ない、ってんなら無視しても構わない程度の個別なのは確かなんですけどね。特に三章とか、萌花の信頼を裏切ってまでそっちに走るの?と物凄い煩悶葛藤したものですし(笑)。

 それとは別個に、推理パートでの選択、というのも多数組み込まれていて。
 一部複数回答だったり、後半になると自分で解答入力があったり、不正解だと強制的にトゥルーへの道が閉鎖されたりとか、中々にシビアなつくりになっています。ホント六章は難しかった…………。

 ちょっとシナリオに絡み過ぎる話ですが、ついでなのでここで書いておくと、この推理システム自体はとても良く出来ていて、萌花の記憶力、という索引を頼りに、事件にまつわる色々な証拠が改めて参照できるし、ミステリーの基本ルール、ノックスの十戒でしたっけ、私自身それそのものはあまりよく知らないですけど、作中でも言及されていたそのルールは厳正に守られています。
 全ての謎が判明した事実から論理的に推察できる仕組みだし、特殊能力に関してもその範疇、きっちり全ての使用可能な能力一覧が提示された上でなので、その展開、結論は不条理だ、とか、力を都合よく恣意的に用いすぎている、という印象をほぼ根絶しているのではないかと。

 その上で、各章ごとに探偵ものあるあるー、で必ず事件に巻き込まれるのはご愛敬としても、その事件の中で判明した新たな事実の欠片を拾い集めていく事で、元々の目的であるさくらの死の真相を導き出す素材が集まっていく、という入れ子構造も見事であり、謎解きとしても素直に楽しく、そうやって徐々に全体像が見えていく様は本当に爽快でしたね。
 そういう論理的思考を導いてくれる、という意味でも有用な選択肢であり、推理システムだったと思います。

★シナリオ(大枠)

 全七章、時系列としては半年以上の長いスパンで綴られる物語ですが、そのグライドデザインの部分から、細部の至るところまで非常に洗練されたつくりに、読み進めるごとに驚嘆し、ひれ伏すしかない凄まじい完成度、面白さだったと思います。
 減点理由は強制バッドでかなり非情な結末が突き付けられることのみ、それにしたって物語の流れの中で心理的変遷を正確に辿っていけば必然に近いものだと理屈では納得できるのですが、まあそれでもきついものはきついので。

 主題としては人間心理の複雑怪奇さを、その中でも特にままならず、自覚的であっても制御が難しい感情である恋と嫉妬を深く掘り下げている内容でありながら、話の筋道そのものは決してとっちらかることなく綿密なロードマップの中に丹念に、丁寧に植え込まれていて。
 その生々しく、時に醜いながらも一切不自然さはない遷移を、主人公の体質的にどうしても届いてしまう心の声の更なる裏側に至るまで計算され尽くして綴られていて、微塵も破綻していないと感じさせるのは本当に神業的だなと思います。
 本当にライターさんは人間観察、心理の掘り下げと想像力に長けているのだろうな、って思えたし、その分だけキャラの個性が濃密に立ち上がっていて、モブに至るまで多彩な存在感を放っていて素晴らしいな、と思いますね。

 ちなみにこれ書く前、昨夜の段階で日記書いた後に第一章だけサラッとリプレイしてみたんですけど、もうね、その時点での各人の心理の裏側まで理解した上で読むと圧倒的な奥深さに満ちていて。
 間の取り方や個々の反応などから一々沁みてくるものがあるし、結末に至るまで判別しない伏線なども絶妙にさりげなく組み込まれているし、やはりとりわけさくらの心情に対しては哀切を抱かずに読めるわけないよね、って。
 ぶっちゃけ二回目、いや体験版を含めれば三回目のリプレイとなるHシーンで、その想いの切なさにほろっとくるとか普通有り得ないよねと。そういうシーンで泣きそうになったのなんて、パッと思いつくのかにしのの梓乃シナリオくらいですよホント。

 裏を返すと、改めてこの時点での主人公のポンコツぶりが露呈するなぁ、ってのもあって。
 その地点から萌花を筆頭とした仲間たちと日々触れ合っていく中で心を育てていくのも大きな主題ではあるし、実際にこの時点ではまだこうでしかあれないのも、その後の折に触れてのトラウマ想起でわかりすぎるほどわかっているから仕方ないとはいえもどかしいですよね。
 誰かがキャストコメントで(あれはあれで、敢えて嘘ネタ折り込んでください指定があったんだろうな、ってとこでセンスと思い切りが問われてて面白かった)、主人公がタイムリープしてさくらを救うルートが!って言ってたけど、本当に作ってくれー、って切実に思うわ(笑)。
 まあこれだけ設定がかっちり決まっちゃってる作品だと、いきなり時空を超えるテレパス!とか世界観を壊滅的に掻き乱す不確定要素は突っ込みにくいでしょうけどもね。人生は一期一会、人はその時々で自分が見たい現実しか見ない、見られない、それが残酷だけど的確な箴言だというのを、この作品は厳しく浮き彫りにしているなと思います。

 ともあれ大枠としては、きちんとひとつひとつの章が半独立的な物語性を帯びていつつも、それがきちんと有機的、連環的に機能して、底流にある根源的な能力者の謎、それがもたらす悲哀を暴きつつ、二人が追いかける真相にも肉薄する中で、人の心理の奥深さ、崇高さ、温かさを主人公が正面から受け止め、信じられるようになっていく、という複層的な構造なわけで。
 個々の章から個別への流れも普通にいい出来ですし、それでもやはり、終盤に向けて加速する謎の開示と想いの着地点の定まり方は、感涙を禁じ得ない素晴らしい展開に仕上がっているかなと思います。

 ミステリーとしては正直緩急つけた派手などんでん返し、というものはほぼなく、どうしても緻密に情報を蓄積していく中で消去法的に炙り出されていく感じなので、そこでの驚嘆を一番の期待としていた人には多少肩透かし、という可能性も否めないかな、とは思います。
 でもそこを犠牲にしている代わりに、愚直な蓄積、正攻法的に心の変遷を追いかけてきたことによる、重大局面での振る舞い、選択に対しての、理屈と感情両面での決定的な説得性を付与することに完璧に成功していると思うし、個人的にはこの比重の振り分けはこの作品にとっては最善の選択ではなかったかなと感じていますね。

 だって実際に、これ一章の時点でふとした弾みで主人公が自身の謎をドロップアウトする流れになってたら、その後どうなるかなんて火を見るより明らかですものねぇ(笑)。ワンチャあっても強制沙彩ルートだわ。。。
 不可解な状況、辛い事件を肩寄せ合って乗り越えていく中で培われていく信頼、絆の力が、ああして最後に望むべき世界を、あるべき姿を刹那ではあれ現出する原動力になっていると思えばやはり感無量だし、一方でそうやって距離が縮まるほどに湧き上がる、決してプラスなだけでない感情の噴出にも絶対的な理を感じさせ、どうしようもなかった、という味付けの匙加減が最後まで一切狂いなく貫かれたところも、厳しく辛いけど納得は出来ちゃうのが凄みですよね。

★シナリオ(ネタバレ白抜き)

 正直どの地点でもネタバレしたら興ざめ、って類の作品ではあるので、個別評価的な形では書きにくいしまとめてここでざっくりと。
 さしあたり純粋な物語の好み度、面白さで言うと、最終章>六章=四章=一章>二章=五章>三章くらいかなと。どれも高水準なんですけど、やっぱり単純にヒロインへの思い入れとか状況の緊迫感も加味して考えるとこんな感じかなと思います。
 ちなみに個別だと地味に夏希が一番好きかも、沙彩も鬼のように可愛かったし、百合子も萌花も味はあったけどね。だがひかり、てめーはダメだ…………と言いたいところだけど、あの子はあの子なりにああもどす黒くねじ曲がった理由はありそうな雰囲気は醸してましたけどね。或いはそこまで、主人公が見たくない現実を糊塗するために幻視・幻聴した風景だったら救いがないですけど。。。

 そして本当にこの作品、ゲスいキャラはとことんゲスですよねー。
 安西先生っぽいのに事なかれ主義の権化な担任や、プライドの権化のような真理亜くらいはご愛嬌ですけど、二章の浜からはじまり、三章のひかり、四章〜六章にかけての社浦なんてホント死ね!死ねーっ!って感じで、登場のたびにハラハラ胸が軋む感じはもうつらかったですわー。
 特に社浦!モモちゃんにあんな陰惨なことやらかしといて、しれっとまた普通に出てくるとかどういう了見!?って思いますよね、ね!いくら憎まれっ子世に憚るとはいえ、普通こういうゲームの救いのない悪人って、一度退治されたらチャンチャン、って言うのがセオリーなのに、設定を逆手に取ってまた図々しく近づいてくるとかホンット心臓に悪いですから!

 挙句百合子の新しい婚約者とか、大鳥家どんだけ人を見る目がないんだよ、と逆に戦慄するんですけど。よくそれで生き馬の目を抜く世界の中で名家の地位を保ってこられたもんだよなぁ、というか保てそうにないから皺寄せが百合子、引いてはさくらにも及んでいるのでしょうけど。
 ともあれ、だから最後のエピローグで、沙彩と理子が息を合わせての「ざまぁ。」に素晴らしく溜飲が下がったのは決して私だけではないはず(笑)。まあ流石に物語くらいは勧善懲悪であってくれませんとね。

 その辺の悪役側の立ち回りも含めて、基本全て状況はクリアにされている中、ただひとつだけ明示されていなかったように思うのは、誰が放送室にあんな物騒な能力者発現装置を置いたのか?ってところ。
 まあ動機の点では千草の父親一択なんですけどね。千草に実験しすぎて枯れ果てそうだから新たな獲物を、って考えて仕込んだ後すぐに殺されて、だから誰もその装置の存在を知らず放置されて、統制の利かないことになった、と考えるのが一番しっくりはきますし。
 どうあれそういうひとつひとつの行動が連関してあの状況を導いているわけだし、つくづく人の業とはままならないものだと思いますね。力がなければ良かった、とだけ一概に言えない部分も沢山あるわけですし。

 あとこの作品の特色としては、本筋の流れの中で、設定や状況がもたらす必然の中でヒロインとの情事が自然に組み込まれている点でしょうか。
 まあこれはこれで、一章から先に進む毎に誰かと結ばれる中で、その対象ヒロインの自由意志と尊厳に対する毀損がどんどん重くなっていくというのも色々示唆的だなあとは思います。
 最初のさくらは別にして、純粋に健全な心のありよう、振れ幅を持っている順、という見做し方も出来て、一番乙女らしい感情の揺らぎを持ってる夏希だからああして自分から、って事になるし、環境のストッパーがある百合子、性質のストッパーがある沙彩、逆に揺らぎなく綺麗過ぎるが故に一番遠い萌花、という視点で見ていくと面白いものがありますね。

 どうやってもそうして一度肌を合わせた相手に情は残る、という当然を担保にしつつの、それぞれの立場を弁えつつのアプローチや、その裏で渦巻く複雑な感情のありようはなるほど、と頷かせてくれるし、それに触れることで主人公もまた、咄嗟に聞こえる感情だけがその人の全てではない、という当たり前を学んでいくわけで。
 ただ、根本的には善良であっても、それを素直に表に出す回路がねじ曲がりくねっていて、さながら装飾過多のカップルストローの節々が折り潰されているように、中々そこを真っ直ぐ吐露は出来ない気質の主人公に取って、パーソナルスペースに気負いなくスッと入り込んでくる純真無垢な萌花の気持ちが毒薬に等しいものであるのも事実、なんですよね。

 実際その毒に幾度も充てられて距離を置こうとしたり、酷い嫉妬の感情を湧き起こらせたり、客観的に見ると実際主人公もかなりのダメ男ではある、その欠点を萌花以外はある程度わかっていつつ、仕方ないなぁ、と支えてくれる下地をそんな形で作っているのは、特異ではあるけど巧いなぁと感心するところです。
 それに一応、すごく心が痛いシチュもあるはあるけれど、ヒロイン全員実際に結ばれたのは主人公だけ、という部分は厳守されているのも配慮の一環なのかな、とは思いますね。さくらがあの日ああなったのも、ある意味では普通に家に帰った時に待つ地獄がわかっていればこその、って色合いは多少ならず籠っているわけでしょうし。

 そして同族嫌悪、という言葉があるけれど、それになぞらえての作中での対立関係も中々奥深く、さくらと百合子のありようを踏み台にして主人公と千草、というステージを展開する手法も説得的で。
 そういう幼く醜い感情の坩堝に放り込まれた子羊、殉教者的な立ち位置で、萌花はあんなあちこちで酷い目に遭っちゃう、ってのも、不憫だけど萌花がこういうまっさらな心根の持ち主で、その周りにそれが毒になる主人公や千草、引いてはその連なりの中に社浦みたいなゴミクズがいる、という必然として納得は出来ちゃうのがすごいんですよねぇ。
 ただそれでも不憫には違いないし、あんなやりきれない強制バッドはやっぱり辛いなぁ、とは思わざるを得ないんですけれどもねー。

 ともあれ、表面的には少しずつ絆を深めていく班の面々の中でも、様々な愛憎渦巻くドラマが犇めいてはいて、瞬太と陽平の男二人はいい意味で緩衝材、ムードメーカーとして活躍はしていたと思うけど、流石に女子の細かい機微にまでは食い込める余地はなく。
 そして百合子に夏希、萌花は、それぞれベクトルは違えど基本自分の事を御するのに精一杯、ってところがある中での、沙彩の潤滑剤としての立ち回り、要所での気配りはさりげなく作中全編通して光ってたなー、と思うのです。

 沙彩の場合、やっぱり立ち位置が独特なんですよね。
 主人公と同じく特異能力持ちで、それに苦しんだ末の処世術として表面的な仮面を被ってはいて、だから主人公の心情に対しても鋭い理解と共感を示してくれる一方、一足早く同族の仲間との交流の中で触れ合いの温もりを、心の余裕を取り戻している分だけ、普通の人のありようにも配慮と理解が行き届いていて。
 そういうスタンスを意識的に確立させたのはさくらが死んだ後だってのは、改めて一章見てるとよくわかるのですが、その中で折々に苦しんでいる班の仲間を支え、本質的な心の距離が遠い主人公と他のメンバーの橋渡しとしても機能し、萌花とは違う意味での主人公の最大の理解者、拠り所になってるんですよね。

 敢えて言葉にするなら、萌花は主人公のする事をなんでもそのまま受け入れてくれる。
 けど沙彩は、主人公のする事を全てきちんとわかってくれて、その上で是非をはっきり指摘してくれる。

 萌花は萌花なりにその地点からわかりたい!という一念で成長していくし、どうあれ能力と日々の生活が切り離せない中で、萌花の存在が最大の救いである事には間違いはないけれど、それはずっと人と触れ合ってこなかった主人公がいきなり摂取するには過激すぎる、それこそ良薬も飲み過ぎれば毒になる、という類のもので。
 自身の体験知も踏まえ、そうならないように要所で処方箋を書いて、少しずつその薬の効果が沁みてくるように調整する役回りを、かなり自覚的にやってくれている、というところで、これはこれで底なしのお人好しでお節介だなぁと、当初のイメージから相当に乖離した魅力を見せてくれていたと思いますね。

 なんにせよ、細かく触れていたらきりがないくらい、心理面での微細な変化を丁寧に汲み取って埋め込んでいく部分の巧みさは際立っていて、最後のさくらの慟哭に至るまで、そしてEDを経てタイトルに戻った時のパッケージデザインの意味が一目瞭然でわかるところまで、本当に完璧なデザインだと思ったし、素晴らしい物語でした。


★シナリオ総括

 すごかった、の一言に尽きます。
 体験版の時点でもピカイチだと評価してたと思うけど、世にいう体験版詐欺、そこの面白さがピークでしたー、って作品もゴロゴロある中で、これは先に進む毎にそこまでの流れを完璧に踏襲して想いを蓄積し、加速度的に盛り上げていく完成度を誇っていますし、その結末に至るまでどうしても避け得ない痛みも多かったけれど、それも含めて報われた、と思える美しいラストに、いつまでも余韻が引かない感覚を味わってますね。

 読み口もすごく肌に合ったし、エロス要素や個別でのイチャラブが必要最低限なのは物足りない、と思う向きも全くないとは言わないけれど、それを補って余りある魅力に溢れていた作品でした。
 作中序盤で主人公が好きだと公言する(それもある意味示唆的なんですよね)、人物が書けてない薄っぺらいミステリーとは対極の、ギミックの面白味に溺れずあくまでもヒューマンドラマを主軸に描き切った文句なしの傑作、名作だと思います。


キャラ(20/20)

★全体評価
 
 シナリオ項目でも結構触れたけど、本当にこの作品は心理描写の深さが半端なく、かつ極端な色眼鏡を置かずに善悪どちらもフラットな視点で、あるがままの心理変遷を引き出している、という感があり。
 それ故の怖さ、醜さも相応に表面化しているものの、それを補って余りある心の成長や絆の尊さ、純良な心の美しさを丹念に拾い上げてくれていて、それがキャラひとりひとりの、大袈裟に言えば人生そのものを掬い取っているような存在感を感じさせてくれます。

 だから当然ヒロインに対してはほぼ全員凄く深い思い入れと愛着が持てているし、モブキャラや悪役に至るまではっきりとしたイメージが頭の中に残っていて、ここは満点でも足りないくらいだなぁと。

★NO,1!イチオシ!

 いやー、まさか終わった時にここまで沙彩大好きー、になるとは思いも寄らなかったですわ。
 勿論最初から好ましく思ってはいたけれど、体験版の時点ではまだ本領のごくごく一部しか垣間見せていなかったし、みんなで一概にさくらの死を前にして傷ついて、そこから立ち直っていく過程での立ち回り、気遣い、潤滑油兼トリックスターとしての意識の高さは、さりげなく、だけど確実にシナリオ全体に浸透している感じで。
 特に主人公に対しては同族的共感も一際強い分だけ、周りとの関係で軋轢や齟齬をきたさないように、自分の出来る範囲で調整弁を積極的に買って出てくれているところもあり、加えて秘密の共有者としての近しさ、気安さもあって、本当に読み手にとってもいると安心する子、って感じでしたね。

 あんまりその設定生きてたか知らんけど、学年主席ならではの頭の回転の良さ、機知に富んだ会話の紡ぎ方などなど、マルチな場面で平均的に活躍してくれたし、萌花とは違う第二の助手的な立ち位置から、その気持ちが定まるまで辛抱強く見守ってくれていたりと、本当に素敵で気配り上手で慈愛に満ちた子だなあと思いましたねー。
 ヒロイン、としての特別な魅力そのものはそこまで出てこなかったけど、基本人との距離感に戸惑うことの多い主人公にとっては、中盤以降だと萌花に対してどうしても隔意を置く場面も多い中で一番気の置けない相手になっていたかなと思うし、その辺自覚して、好んでそうしてくれている、って形での好意の示し方もらしくて最高に可愛かったと思います。
 惜しむらくはアレですね、髪を下ろしたネグリジェスタイルで、完全に仮面を外してのイチャラブHシーンとかは見てみたかったよ!

★NO,2〜3

 次いでは迷うけどさくらかな。
 どうしても出番そのものは少ないし、ただ追想的な形で折々にその想いに触れては傷口の感触を確かめる、という中で、それこそ臨在感で作品を覆い尽くしているヒロインではあっただろうと。実際いつでもあなたの傍に、ではあったわけでもありますし(笑)。
 やはりさくらに関しては、最後の最後で真相と心情を吐露しての慟哭の美しさが白眉かな、とは思うし、その辺を踏まえた上で最初からやるとまた別次元の魅力を放ってくる感じで、あぁ、こんないい子が本当の意味で幸せになれないなんて…………と慨嘆と哀切を呼び覚ましてくれますね。
 ホントにご都合主義全開でもいいから、さくらが生きて、そして魔の手からも救われるifルート作って下されお願い申します!!!(必死)

 当然萌花も素晴らしく可愛かったです。
 特に序盤はふわふわと愛らしさ、愛嬌を全力で振り撒いて、さくらの死に沈む面々を励ます大きな活力になってくれていたし、ただどうしてもちらほらと見え隠れする、その気質故の危うさはあって。
 だから途中からかなり懸念はしていたのだけど、ぶっちゃけその予想を遥かに上回るえげつない扱いでしたね!もう心痛いよ、私のライフはゼロだよ!って叫びそうになりましたもの。おのれシャウラー、許すまじー…………!
 ただ結局、本当の意味で主人公の救いになりたいのであれば、そこはどうしても克服しなくてはならない部分だったのはよくわかるし、それを理解した上でなお心を強くしなやかに保ち、一番大切な部分まで変わらずにいられるのは本当に凄い子だなぁとつくづく感心しましたね。ある意味では、本当にこんな純粋無垢で健全で強い子がいるのか、ってのが一番のファンタジーに思えるくらいに(笑)。

★その他

 百合子も当然かなり好きではあり、その落ち着いた物腰とは裏腹の性格なんかすごく可愛げがあって好きなんですけど、シナリオ全体を通してどうしても家のくびき、そしてもう拭いようのない罪悪感に支配されてしまっているだけ、その魅力と才能を存分に生かす場面が少なかったのは、必然的とはいえ勿体ないなと。
 ちなみに最初のシーンのエロさは群を抜いていた気がします。いやー、色々抑圧されて溜め込んでるんだなー、ってのがああいう場面で露呈するのっていいですよね(笑)。

 夏希もチョロインではあるけど根底的にお人好しでいい子で、だけど根が素直で、きっとあまり挫折も知らずに育ってきた分だけ感情の制御が上手くないというべきか。
 ある意味では夏希は一般的な人間のプロトタイプ的な立ち位置であり、誰しもが咄嗟にちょっと嫌な感情を脳裏に過ぎらせたり、それを後悔してうじうじしたり、そういうのは凄く人間味のある反応と言えて。
 だけど初期の主人公は、大抵その最初の反応「だけ」を読み取って、「わかったつもり」になって人間不信を更に拗らせていくわけで、そういう思想性は最初にさくらの思惑を勘違いした部分にも色濃く出ているし、その点純粋な相性が一番悪い相手、ああいう行き違い、いざこざが起こるのも当然だな、と思います。
 だからこそのこの役回り、でもあろうし、主人公のダメっぷりを鏡写しにしてくれるキャラでもあって、でもその分いざ想いが通じた時の振れ幅が大きいんですよねー。多分個別ルートで一番乙女で可愛いのはこの子だと思いますし、最後ようやく見栄を振り払って素直に甘える夏希は本当に可愛かったです。

 瞬太も陽平も基本的に仲間想いで真っ直ぐだし、色々修羅場をくぐる中でちょっとしたことに動じない胆力も身につけていくし、最終章の屋上のシーンとか、実に男らしい、素っ気なくも力強い支えと信頼を体現していて、やっぱり骨太の物語には同性の友人は必須だよなあと思わせてくれました。
 その他色々な形で支えてくれる人たちの温かさも身に染みたし、幾人か本気で生得的にゲスな面々もいたわけだけど、それも含めて人、という割り切りの元にマイナス面も容赦なく抉り出してくるのが、物語の重厚感には大きく寄与していると思いますね。

 まあそれにしてもシャウラーは初見からああだからともかく、ひかりは本気で性質悪いですよねぇ。読み手に対してもプラスの意味での登場を予感させといてのミスリードとか、いっそすり替わりでこいつが突き落とされてて、なり替わりでしれっとさくらが生きてます展開の方が幾分マシか、って本気で思わせてくれたし。。。
 あの分岐にしても、基本100%コンプするのが当たり前、って感覚の私なのでやらざるを得なかったのだけども、萌花に縋るような信頼を向けられ、沙彩にも無念はあっても、と下駄を預けられての場面で、どうしてこんなゴミクズ選ばんといかんのかー!ってどれだけ葛藤した事か(笑)。まああの時点の成熟度では、そちらに誘引されるだけの必然もあるから仕方ないとはいえ、ねぇ…………。


CG(19/20)

★全体評価

 この人の絵ははじめてだったのですが、期待以上に素晴らしかったですね。
 非常に人物像に存在感があり、ググッと画面から迫ってくるようで、それを質の高い塗りがより重厚に、耽美に仕上げていて、可愛くも凛々しく、そして官能的という絶妙のバランスを醸し出しているのではないかと思います。
 量的には値段相応か、もう少しあれば、と思うところもなくはないので、満点までつけるのは自重しましたが、このシナリオに対しての親和性も含めて素晴らしい出来でした。

★立ち絵

 ポーズはヒロインで2種類、サブで1種類、おそらく腕差分はちょっとだけ、全体的に立ち絵のある登場キャラが多いのでその辺踏まえれば仕方ないところもあるし、基本的にキャラの動きで魅せるタイプの作品ではないですしね。
 お気に入りは沙彩正面、やや右、さくら正面、萌花やや左、夏希正面、百合子正面あたりですね。

 服飾はヒロインで2〜3種類、サブで1種類。ここにはちょっと不満はあって、ゲーム内で季節が初夏から冬間際まで変化していく中で、夏服冬服の切り替えとかがなく、私服もワンパターンしかないのは残念。沙彩とかいつまであのノースリーブやねん!とか思うよやっぱり。流石に髪下ろしネグリジェまで立ち絵にせい、とは言わないからさぁ。。。
 お気に入りは沙彩制服、私服、さくら制服、萌花私服、百合子私服、体操着、夏希水着くらいかな。

 表情差分もそこそこ、まあ色々と重い感情を噛み締める場面も多い中で、ほぼ遊びのないつくりになってるかなと。
 お気に入りは沙彩笑顔、ニヤリ、不安げ、照れ笑い、さくら驚き、微笑、思案、萌花笑顔、にっこり、驚き、苦笑、照れ焦り、百合子驚き、微笑、困惑、夏希不満、照れ迷いあたりですね。

★1枚絵

 全部で80枚、SDなどもないので総量としてはギリッギリ水準かな、ってくらい。ただ出来は全体的に非常に安定しているし雰囲気も素晴らしくて、そこは非常に満足でした。

 特にお気に入りは4枚。
 1枚目はさくら愛撫、この透明感の中に息づくほのかなエロスが鮮烈だし、表情や息遣い、身体のラインの美しさも全て好みでした。
 2枚目は百合子騎乗位、このどうしようもない衝動のままに、という中での端正な美しさと淫猥さの絶妙なバランスは、テキストでも語っていたけど本当に素晴らしい匙加減だと思いますね。
 3枚目は沙彩アイス、ここでの飄々としつつ色々気苦労背負って頼りたいオーラ出してる沙彩がめっちゃ可愛いんですよねー。
 4枚目は病室にお見舞い、引きの集合絵としては出色の細部の出来の良さが目を引くし、特に横目になってる沙彩と手前の陽平の精悍な笑顔が凄く好き。

 その他お気に入りは、班のメンバー、屋上にて、図書室で差し向かい、痴漢、プール、屋上会議、夏希バック、お風呂、夕餉、夜の語らい、レインボーローズ、百合子愛撫、転校、猥褻写真、憑りつき、フェラ、背面座位、騎乗位、バック、告白、正常位、お弁当、抱きしめ、仄暗い水底、表彰、線香花火、ナンパは許しません、作戦会議、イマラチオ、バック、69、屈曲位、肩車、読み合わせ、見舞い、ポスター、観劇、告白、フェラ、まんぐり返し、悪戯、クレープ、箱の謎、崩壊、キス、正常位、騎乗位、墓参り、夢幻、追求、刹那の真実、8人、抵抗、共に墜ちるあたりですね。

BGM(19/20)

★全体評価

 全体的にとても深い哀切、悲嘆が滲み出るようなイメージは強く、特に要所ではその傾向が強くて、でもその質がすこぶる高いのでそちらからもグイッと世界観に引き込まれる感じで、量的には標準だけど素晴らしい出来だったと思います。

★ボーカル曲

 全部で2曲。
 OPの『シンソウノイズ』は、どこかシュールで退廃的なイメージを醸しつつの独特のメロディラインが、透明な声質と上手く噛み合って奥深い味わいを醸していて、サビの高音域からスッと潮が引くように途切れていく流れもこの作品のイメージに合致していてかなり好きですね。

 でもEDの『Voice』の方が更に好きかな。これは神曲クラス。
 出だしから切々と悲しみと無力感、その中でも前に進む強さを持たなくては、というイメージがガン、と過ぎる中で、メロディ性をやや弱めて、その分ツイン混成ボーカルでの独特な味わいを強めに引き出し、繰り返しがそれをさらに強調して。
 そしてDメロ?になるのかな、そこでの透明で伸びやかな高音に、未練を振り切り前に進む強さと、去りゆくものへの挽歌を込め、なにより面白いのは、その歌詞を入れ替えることでどちらのヒロインに心を寄せたかを示すベクトルになっているところ。これは見事な仕掛け、演出でもあり、それも付加して高評価ですねー。

★BGM

 全部で34曲、のはず。これ数えにくいんですよ。。。
 無論日常的な穏やかな曲やコミカルな曲もそれなにはあるけれど、出現頻度という意味ではやたらさくらのテーマが頻発して、その哀切、哀愁、哀憐で雰囲気を支配してきますので、どうにも全体イメージもそっちに寄っちゃうよなあと。でも目立たない曲の出来も高く素晴らしいですよ。

 特にお気に入りは2曲。
 1曲目は当然『屋上の少女(さくらのテーマ)』、最初のタイトル曲でもあるし、本当にしょっちゅうかかるのでいの一番にこれは!って思ってタイトル調べて、その時点で神曲確定的でしたね。とにかくとことんまで哀切をメロディに乗せて折り込み、透明感の中に悲愴さを織り交ぜ、美しさの中に儚さを溶け込ませる、こちらの方向に特化した、さくらの、というより作品全体のテーマ曲ではないでしょうか。本当にこの旋律、特に中盤の八分音符の連打のところは胸に染み入るなぁと。
 2曲目は『絆』、これはこれで最後のタイトル曲でもあり、ここ一番でインパクトを残してくれますね。
 単音から徐々に複層的に展開していく中で、主旋律のピアノがさくらのテーマと似通った、だけど一握の希望を感じさせる旋律で展開され、その広がりとつながりのイメージが後半でさやかに爆発する感じが特に好きで、非常に美しく仕上がっているなあと思います。

 その他お気に入りは『爽やかな始まり』『静穏』『COOL』『花の少女(萌花のテーマ)』『優しい心』『ずっと傍に居て』『喪失』『ぬくもり』『心象世界』『忌まわしい毒』『真相推理』『決意の時』『焦燥』『天使と悪魔』『穏やかに時は流れて』あたりです。


システム(9/10)

★演出

 細かなキャラ演出は最低限だけど、情景を奥深く展開するための演出効果はかなり丁寧に組み込まれていて、シナリオとの連動性も高く、話に没入させ盛り上げる効果をしっかり出せているなと思いましたね。
 OPムービーもどこかシニカルでアバンギャルドでありつつ、そうあらざるを得ない悲しみが節々に籠められている感じですごく好きだし、EDも特にさくらverとか切な過ぎて泣くわ、って感じでいい演出だったと思いますね。

★システム

 全体的には良好、ではあるけど、それなりに長い話でもあり、バックジャンプまであればなお良かったかな。
 あとフォント変更がないのも個人的には微妙、だけどこの作品には高質なゴシックが合ってはいるからまあいいか、ってところ。
 音楽回想でリピート機能がないのはつらい。ボーカル曲かけ流しで執筆したかったのに、仕方がないので延々さくらのテーマ流してますけども。うー、サントラ欲しいなぁこれ、買っちゃう?

 そしてシステム面で最大の癌というか、めんどくさいのはインストールシステム。
 DMMゲームプレイヤーとの連動がどういう意味があるのかもよくわからんけど、ゲームプレイするのにそっちの設定までやらないとダメってのはなんつーか敷居が高いし厄介。しかもショートカット起動できずに一々プレイヤー呼び出すのもめんどいしね、これはなんとかならんかったかと。
 ゲーム自体はすこぶる名作なだけに、こういう入り口のところで間口を狭く、プレイヤーを躊躇わせる要素があるってのはなんとも勿体ないとは思うんですけどもねー。


総合(96/100)

 総プレイ時間27時間くらい。1〜7章がそれぞれ最低3時間から4時間弱で、個別やバッド分岐など拾っていくので全部で2時間ちょい、それに謎解きとかで使った時間も含めて、ですかね。
 基本的にルート分岐で迷うことはないけど、謎解きでつまずく可能性は結構ある、特に6章はすごく難しかったと思うので、その辺でも微妙にハードルの高さはある作品ですが、しかしそんな些末なことが吹き飛ぶほどに完成度が高く、面白く、感動できる作品ですので、個人的には文章の美しさも併せて超おすすめ。

 プレイから余間を置いていない、というところで、洗練とは程遠い感想になってしまったし、採点的にも熱に浮かされる部分はあるかもだけど、でもこれはSSに相応しい名作だと思います。これには12月新作の中で一番期待はしていたけれど、まさかここまで突き抜けて楽しいとは嬉しい誤算でしたねー。
 
 追記:沙彩のSSが完成したのでこちらにも貼っておきます。

シンソウノイズクリア記念 沙彩ショートストーリー

昏き水底からの呼び声    それでも、瞳を閉じずにいられたら
 
posted by クローバー at 09:40| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: