2017年01月09日

Liber_7 永劫の終わりを待つ君へ

 Lassの本幹であるナンバーシリーズの新作でもあったし、体験版もそれなりに面白い&ヒロインも可愛かったので、最近のブランド自体の低迷から悩むところもあったけど押さえておこうと。

シナリオ(21/30)

 偽りの中の本物。

★あらすじ

 主人公はある一点を除けば、ごく普通の学園生。
 その一点とは、人や物の記憶を読めるという特殊能力の持ち主であることで、しかしながらいくらかの苦い経験の中で、その人倫に悖るような能力を無闇に使うような卑怯は出来ない正義感を持っており、故に普段は一切力を揮うことなく過ごしています。

 同じマンションに住む幼馴染の未来と沙綾、そして悪友の颯太と共に、面白おかしい日常を繰り返していく、それを疑っていなかった主人公ですが、しかし七夕の日を前にした頃、ふと周囲から不思議な音を感知するようになります。
 それはどうやら自分にしか聞こえてないもので、そしてその音を聞いて以来、周囲で物騒な事件が頻発するようになり、それはすぐに沙綾の失踪や、颯太がテロに巻き込まれるなど、身近な間柄の人間にまで波及していって。

 突然の不条理に振り回されつつも懸命に前を向き、せめて沙綾の消息を自身の特殊能力で探し出せないかと決意し、街中に残る沙綾の痕跡を求めて彷徨います。
 しかしその途中、いつからか自身を追い回す影の存在に気付き、振り返ってみるとそれはちょっと派手で奇矯なゴシックパンクのステージ衣装に身を包んだ年若い女の子で。
 なぜこんな子が?と疑問に思いつつ真意を問い質すも、相手もどうやらかなり思い詰め、錯乱しているようで話がうまく通じず、そしていきなりその少女が自身の特殊能力・念動力を使って襲い掛かってきます。

 その奇襲から命からがら逃げだした主人公ですが、日付が七夕の日に変わった瞬間、空に巨大な魔方陣が描き出され、そこから発した光が世界の全てを灼き溶かしていく光景を目撃し、それと同時に自身もまたその光に飲み込まれてしまいます。
 あぁ、これが世界の終焉か…………という想いを抱きながら意識を失い――――次に目覚めた時は自分の部屋のベッドの上でした。

 そこにあったのは、ほんの三日前、まだ事件が何も起きていない頃の平和な風景で。
 みんなと会話していても上手く噛み合わないところが多く、そこではじめて主人公は、自分が三日ほど時を遡ったことを認識して。
 けれどそれは、先程までの世界ではもう望めない、沙綾と颯太が無事に暮らしている光景であり、そしてあのエコー音の謎や、自分以外にも特殊能力者がこの街にはいて、それが夜な夜な跋扈して事件を起こしている事に気付き、ならばこの日常を守るために、その非日常を自身の力で退けなくちゃいけない、と決意します。

 かくしてはじまった、三日を境にループし続ける不思議な世界の中での戦い。
 果たしてその先にどんな敵が待ち受けているのか?
 この世界の謎の根幹に主人公は辿り着くことが出来るのか?
 仲間を、そして大切な相手を、自分の流儀で守り抜くことが出来るのか?
 これはそんな、不条理に渾身で立ち向かっていく中で新たな道、想いを紡いでいく、愛と友情と信念の物語です。

★テキスト

 基本的に軽妙でノリのいい会話と、心象風景を中心にした地の文が多いので、特に引っかかることなくスラスラと読めるとは思います。
 ただここの十八番ではありますが、全ての過去作含めての一貫したシェアワールド概念と、その中で蓄積された多種多様な設定が根底にあり、その辺りを説明するのにこの作中ではザナドゥという百科辞書へのリンクが頻繁に出てきて、そちらではもう蘊蓄語り放題、という感じになっているので、物語のリズムを守りたいならそちらは後追いで、常に最新の情報を解釈しつつなら、そのリンクを参照しつつ、ってところで、プレイスタイルで読み口の印象も違ってくるかなと。

 というか、正直設定集の方はかなりの確率で過去作の設定を援用していたりするし、世界観がもたらす特殊な展開は作中でもそれなりに頻発するけれど、正直いきなりこの説明を読んだだけで全体像が捉えられるものだろうか?って疑問はつきますねー。純粋にオカルトや量子論的な話柄での知的探求心が強い人には楽しく読めるとは思いますが。
 そしてそちらにリソースを取られている分、というわけでもないでしょうが、心理面での細やかな機微への容喙はあまりなく、心象の筋道としては違和感はないけれど、一歩ずつが大き過ぎて読み手の感情がついていく前に先に進んでしまっているような場面もかなり多く、その辺テキストとしてもフォローが弱かったのは勿体ないところです。

★ルート構成

 基本的には一本道で、ヒロイン分岐そのものは階段分岐、脱落式で展開されます。
 本筋は本筋で、誰をヒロインに選ぼうとさほど変化なく展開されて、その結果を受けてのラストが各々のヒロインに寄り添う話になる、程度の、11eyesの時と同じくらいの個別の比重ではあり、そちらにはあまり大きな期待を寄せない方が無難、というところ。
 他にも選択肢でやや特殊なバッド派生などもありますが、過去のナンバリングシリーズに比べると、戦闘でミスしてどうこう、ってのがほとんどないのはその設定故に仕方ないところで、その辺はやや緊迫感を削いでいる感もなくはない、って思います。

 一応予想通りに未来がシナリオの根幹に関わるヒロインではあり、最初から攻略できるのかはちょっと試してないのでわからないですけれど、基本的には階段順、沙綾⇒萌生or紅愛⇒未来にしておくのが無難、ではないかなと。
 未来ルートはやや特殊な演出も含まれますが、基本的には一本道なので流れに沿って進めれば問題ありません。

★シナリオ(大枠)

 序盤から中盤にかけてはベーシックなループもので、周回を重ねる中で仲間・同志を増やし、回避出来る悲劇を回避して、みんなでこの無限ループから脱出するための手がかりを、世界の謎の解明に突き進んでいき、それが煮詰まってきたところで新たな敵や真の敵が、というお約束展開になっています。
 その中で終盤の仕掛けに、さもありなん、ではありつつそれなりに驚きと切なさをもたらす仕掛けがあって、このシリーズの中では一番科学的な要素を強く持った設定だな、と思いますが、それでも背景に魔術やらなにやらが跳梁してはいるので、その影響力をどのくらいに見積もるか、そしてその分だけ設定を理路で読み解くのに曖昧さ、ブラックボックスな部分が出てきてしまっているのが、らしいけど惜しい、と感じるところです。

 また、全体的にややシナリオの密度そのものは低いな、と感じました。
 一周のループごとに、敢えて不必要な危険にまでは踏み込まずに、少しずつ手にした果実大事に溜めていく、という慎重さも正しいと言えばそうですが、ループの実態も判明してない中でやや切迫感が薄い、とやきもきする場面も多かったし、そのせいで一周毎の変化、密度が乏しく、水増ししている感覚がなくはなかった、というところ。

 別に謎の構成、筋立てとしては不必要に錯綜させなくてもいいけれど、だったらその分ヒロインサイドの心情補完などをもっと細やかにフォローできるように組み立てても良かったのではないかな、と思います。
 ヒロイン視点はやらない、って決め打ってる作品ならともかく、これはそうではないわけだし、どうしたって主人公は朴念仁でもあるから、恋愛事でも事態に対する心持ちでも、些か心情の飛躍が各所で見受けられ、その分だけそう思うことの必然を読み手に浸透させ切れていないまま物語が進行、蓄積されていってしまっている気がしました。

 謎の仕掛け自体は、今時だと斬新、とまでは言えないけどやはりワクワク感のある壮大なものだったし、その中で人のありようそのものに惑いつつ、それでも自分達が積み上げてきた感情、関係性は決して紛い物ではないという強い意思の中で、自分達が正しいと思う道を貫く姿勢は実に王道的だっただけに、その幹の部分はかなり良くても、枝葉がおざなりなせいで全体像のバランスが若干良くない、と感じてしまうのは勿体なかったですね。
 あとやはり、幾分か設定にファジーさはあり、多少ならず恣意的、ご都合主義に感じる展開はあって、感情的にそれは決してダメって事はないけれど、理路でもしっかり補完できる上でならなお良し、ってところなので、もう少し精緻なつくり込みがあれば名作クラスには届いたかもな、と感じます。まあひとつ前が心の機微の変遷や謎の構成を論理的に読み取れる、という点でほぼ完璧に近い作品だった、という不運もありますが。。。

 個別に関しては、それぞれにその後に関わる問題はある中で、でもこの尺の中に押し込むのは無茶じゃない?ってのはありましたね。
 特に紅愛なんかは顕著で、そのエピローグ程度の長さの個別で、そんな重たい問題の解決をサラッと終わらせちゃダメだろ、って思うし、未来も今はともかく後々の事を踏まえると、ってのはあるから、バランス的には萌生か沙綾くらいの匙加減で、の方が、バランス的にいいのではないかなとは思いました。
 とはいえ、ひとつひとつを細かく見て差をつけるほどの重さのある個別でもないので、その辺はやはりおまけ程度、と考えておけばいいかなと。ループ展開諸々の中で、気持ちの面ではともかく、肉体的にははじめて、って場面がやたら多くなるのもなんだかなぁ、って感じはありますしね(笑)。

★シナリオ(ネタバレ白抜き)

 しかし最近頓にこういう仮想現実ネタは増えてきましたねー。以前はバトルや謎解きものの専売特許、って感じでしたけど、最近はそうでもないところでも普通に出てくるから敷居が低くなった、というのはあるし、その中でどう差異化していくか、ってのは、話のインパクトとして大切になってくると思います。
 その意味でこれは、まあ道中の話題の流れ方からして可能性のひとつとしては推測できる範疇だったし、それをもたらした根源の部分に胡散臭い力が関わっているせいで色々スッキリしない部分もあるけれど、基本的には熱量高く、切ない展開もあるにせよ基本的には大団円的な形に流れていってくれたし、期待以上には面白かったと思いますね。

 ただやっぱり上でも触れたように、心情面へのフォローが全体的に弱いし、敵方の信念や、そんな風にねじ曲がってしまった背景などの言及が薄く、あっても戦った後に回顧的に、みたいな段取りの中で、例えば譲れない戦い!みたいな強い思いのぶつかり合い、って感じの緊迫感・没入感はあまり得られなかったのかなと。
 勿論行間を読む形で見ていけば、例えば愛美がああもヤンデレ化してしまったのには、それこそ過去に紅愛バッドみたいな愛欲に溺れ、爛れた日々の記憶があってこそなのかな、って思うし、ぶっちゃけ肉体的にはともかく、掻き消された記憶まで含めれば、主人公は絶対はじめてじゃないだろ(笑)、とか突っ込みたくはなります。
 
 宇治野にしても、あまりに敵役としての存在感が薄くて、正直何のために出てきたの?ってくらいだし、そこをもう少し掘り下げていく流れはあって欲しかった、そしてラスボスの真にしたって、表層的に見るとあまりにも小物感が際立っていて、その世界そのものを滅ぼしても構わない、とまで思い詰める凄惨な過去の色合いがやはり弱いのは残念な部分ですね。
 無論ある程度、過去作でのその一族の執念のありようなども含めてみれば、その分だけ思い入れは増す部分もありますけれど、それも微々たるものではあり、あんな形で主人公が許したい、とするのを、ただ自分の信念に帰するのではなく、相手のありように哀憐を抱けるだけの担保はあって欲しかったなと思います。

 その辺の敵役の心情も、例えばループ中はこの世界に包括される意識の全てが一極化されていて、その中で繰り返すごとに幕間的に敵方の来し方を夢で垣間見るとか、どうせ胡散臭い魔獣設定が付きまとうなら、いっそそれを逆手に取った仕掛けでフォローできていれば、理路としてはともかく感情面でも物語にもっと重厚感と密度が生まれたと思うんですよね。
 当然ヒロイン側も一周毎に重ねる想いは変化していく中で、個別分岐以降はそれを克明に追いかけるくらいのフォローはあっていいし、どうしたって好きの理由、結ばれたいと願う理由が大概特殊な状況ゆえ、ってところに帰結する作品だからこそ、その利便、吊り橋効果的なものに依拠しきらずに、多角的・複層的な心情の機微を拾っていってほしかったなと。

 その上で、もう少し構成・設定面でも突き詰められる部分は多かったかなと感じます。
 やっぱり中盤から終盤へ雪崩れ込む展開が、少し軽率というか、中盤の山場を越えるのがあっさりしすぎていて、その後の衝撃の展開!と思わせたいところで落差が足りなかったりはするし、それも誰が犯人か、残りの能力者か、なんて部分は大よそ立ち絵の存在で推測がついてしまう悲しさがあるわけで(笑)。
 だったらそこも、瞬間的な驚きより、そういう風に心理的に追い詰められる必然、苦悩をちゃんとフォローした上で、それが起爆するだけの絆の価値をより燦然と見せられる、そういう構成の方が親和性は高かったのではないかと感じました。

 それこそもっと宇治野に苦戦する中で、少しの間戦闘訓練的な周回を作って、そこでヒロイン達とより人間的な部分での親交を深めるというワンクッションがあるだけでも、背後で愛美が妬心を滾らせるブースト要因としてだけでもいいスパイスになるし、その渦中で宇治野の人間性、そういう活動に身を投じさせる絶望に触れて、それでも、と意思を統一してはじめて勝負の土俵に立つ、くらいの溜めは、あの中盤にはあっても良かったなと思うのです。

 終盤の展開もやはりやや駆け足過ぎたし、しかもそれをもたらす条件付けの部分で曖昧さがあったりで、色々パッとしない部分はありましたね。
 ある程度は曖昧な点が残っても、魔術が基幹にある世界観だから仕方ないとは思うのだけど、例えば真がこの世界の秘密に開眼したくだりなどに一切の理由づけが見出せないのは流石に片手落ちかな、って思います。
 そもそも主人公の記憶のループが解放されたのが、未来の言を信じるならここ100周前後、つまり能力者が頻繁に顕現してからであり、それはすなわち真が主人公の封印を解いたから、という、物語の根幹をなす連関があるわけだから余計に、と思うのです。

 例えばですが、当然ながら、こちらの世界が延々続いていれば、現実世界での昏睡は長引くわけで、そのあたり連続使用の制限、限界を設定されていて、というような外的要因が、内部の状況を自壊に導く働きかけをしたとか。
 そしてそこで、本来は異物として排除されるはずだった真だけれど、クローンとしての研究過程でベルトホルトの潜在遺伝子も植え付けられていたから、逆に管理権限的な部分を、本来主人公に向かうはずだったのを強制的に簒奪できた、みたいな理屈くらいあれば良かったんですが、正直この内容だと本当に、ある日突然開眼した、という曖昧さしか読み取れないので残念だなぁと。

 …………というかそもそも、ベルトホルト自体が症例2000にも満たない稀な病気で、かつそこから主観を投影できる特殊能力を発現するのは1%にも満たない、とか説明しておいて、いくら研究過程でキャリアを集め、発現の為の非人道的実験を繰り返していたとはいえ、この街仮想現実の中で能力者に目覚めることが出来る素地を持った人間多過ぎるよね(笑)。
 ラストバトルでも颯太の発現とか流石に都合良過ぎるよなぁ、って感じが先に立ってしまうし、愛美が助太刀してくれた経緯もやっぱり不透明ではあるから、面白いんだけど熱中しきれないもどかしさは最後までつき纏ってしまったなってのが率直なところです。

 まあ多分、見える限りの流れの中で理屈付けるとすると、まずあのシュタインズ・ゲート丸パクリ…………もとい、リスペクトの偽EDクレジットの仕掛け、しかしこれ、パッと見だと本家の電話が鳴ってからの驚愕と、でもそうなる可能性は確かに、と思わせる下地の完璧さに対し、いきなりクレジットが途切れて記憶回復〜!ってだけじゃいかんせんお粗末でしょう、って印象は否めなかったわけで。
 でもおそらくここは、多分あの記憶が戻った瞬間に、真がLiber_6を再起動させて、より現実世界に対し強大な支配力を展開したから、って考えれば色々辻褄は合うんですよね。

 とりわけあの仮想現実により深い執着を抱いていた人間は、その回帰が速かった、と見做すべきで、いずれ沙綾や紅愛もその起動が続けば自力で取り戻していた、けどそれより先に主人公がアプローチしたから、と考えられるし、そうであればこそこんなタイムリー過ぎるタイミングで萌生のメールも届いたわけで。
 他ヒロインの個別ルートの時は、そもそもLiber_6が自壊している、という結末があるので、その展開は起き得ないという必然を担保出来ていて、その上で愛の絆が二人の閉ざされた記憶を開いた、という部分はまあいいのだけれど、この未来ルートではそういう点での当事者性は誰もが低くって。
 主人公もまた未来自身に向き合えない以上ヒントだけでは取り戻し切れない、ってもどかしさはちゃんと見せてくれているのだから、肝心要の最後の一押しがなんなのか、はもう少し開示的に演出を組み込むべきだったろうと。例えば画像のブレの後、あの赤い目の未来の瞼がパチッと妖艶怪奇に開く様を挿入するとかね。

 ちなみにその文脈の中で、颯太の覚醒に関しては、じゃあなんで向こうの世界で?或いは27人の中には入っていたけれどあの時点では除外されていた?と考えられるけど、そうであれば未来は知ってる筈なので、さりげなくでもその可能性を示唆する言動とかでフォローしておいてほしかったな、って思います。
 愛美に関しては、そこで即座に思い出すあたりまだ未練タラタラなのか、で済むかもだけど(笑)、どちらにせよその世界の切り替わりの意味をもう少しわかりやすく表現出来ていれば、そして主人公以外の面々の意識が覚醒する刹那を巡回的に捉えておく仕掛けがあれば、もっと終盤は盛り上がったとは思うんですよね。
 やっぱり純粋なインパクトだけを重視して、その為に必然の下積みを糊塗してしまうのは、私の中では最善のやり口ではないと考えますし、そこも含め、展開の構成自体がちょっとずつ色々勿体なかったです。

 あと、物語の根幹に関わるかは判然としないけど、現実の未来が眠るように死んだのと、現実の沙綾が昏睡に陥ったタイミングが同期しててるのも、なにか意味のある点だったのですかね?或いは未来の最後の思念が、より病状として深く発現していた沙綾には致命的な影響だったとか見做せば、二人の関係のいい意味でも悪い意味でもの運命感が際立つので、そこも筋道が立っていたら良かったのにな、と。


★シナリオ総括

 とにかく、全体として整合性は取れているし面白いんだけど、少しずつ減点が降り積もって結果的にもう一歩食い足りない、余韻にしても物足りない、って事になってるのはつくづく惜しいんですよね。
 素材としては面白い組み合わせだし、展開に奥行きもそれなりにあって楽しいんですけど、なんだかんだでマイナス点ばっかり取り上げることになってしまっているのはなんともなぁ、という感じ。名作になれるポテンシャルがあった作品ですし、実際に面白いんですけどね、どうも煮え切らないと感じてしまうのは私が贅沢なんでしょうかね?

 なので点数としても、色々足し算引き算してこんな感じ、決して悪い作品ではないけど、やはりシリーズ的な部分での敷居はちょっとはあるし、そうだからこそ三部作セットで売った、ってところでしょうけど、個人的には純粋にシナリオ面では、3daysと11eyesの面白さには届いていないかな、と評価させていただきます。


キャラ(19/20)

★総合評価

 基本的な素材としては決して悪くないとは思うんですけど、やはりその調理の仕方が多少雑で、誤解を招きかねなかったり、奥深い味わいを引き出すまでに至らなかったり、そう感じる部分が大きかったですね。
 本来のシリーズ的な観念だと、もう少し敵役側の心情にもフォーカスした展開があったと思うし、そのあたりを継ぎ足せない構造、というわけでもない中で、どうしてもシナリオの流れ優先でややキャラ性を空疎なまま進めてしまったきらいは強く、その辺は減点材料になるかなと。

★NO,1!イチオシ!

 うーん、帯に短し襷に長し、ってところはあるのだけど、終わってみると沙綾、になるのかなぁ。
 基本的に冷静で理知的でありつつも、大切な相手の事になれば熱い思いを吐露する情味に溢れたところもあって、かつやはり誰よりも病状が深刻な中での恐怖、どう生きていきたいか、という切実さが一番強く透けて見える子でした。
 といっていきなりあのナイフはやり過ぎというか、そういう心情に流れる危険性は当然理解できるけど、そういうのこそある程度ヒロイン視点とかで含みを置いておこうよ、って感じで、沙綾に限らずこの特殊な状況の中での心情の掘り下げ、推論が浅く、歩幅が大きいのが総じて残念なのです。そこが細やかにフォローされていれば、もっともっとヒロインとしても人間としても好きになれる素地が沢山あったのになぁと。
 まあでも、最初の立ち位置のアドバンテージが大きいとはいえ、常に一番傍に居て魅力を振り撒いてくれたし、CV的にも満足させていただいたので、ってところですね。

★NO,2〜3

 まあなんだかんだで未来は可愛いのですが、やっぱり根底的な所で、この子は本当に生きていると言えるのか?的な哲学的命題はついて回るし、これから時代の進化で、二人の関係性に発展的ななにかを紡ぐ余地があるのか、って部分も含めて、個人的には全く葛藤なくスッキリ、とは言い難い結末ではあったと思うんですよね。
 その上で、それをわかっていつつああ振る舞えるのは確かに人としては強さである、と思うけど、その前提を所与のものと見做していいのか、その辺の掘り下げが用語説明からだけでは十全に汲み取り切れなかったのが、この子に対する思い入れも半端なものにしちゃってる気はします。うん、可愛いんだけどね確かに。

 萌生も思ったより狷介なところがなく、色んな意味でちょろい感じすらあるのはご愛嬌だけど、チームの頭脳としての活躍も、時折見せる女の子らしい反応もそれぞれに味があって良かったと思います。

★その他

 紅愛も可愛くない、とは言わないけど、どうしても設定的に重たい、マイナスに見せてしまう部分がかなり強いので、それを覆すほどの魅力をその後で見せられているか、ってなるとやっぱり足りないしなぁ、と。
 愛美とかももっと掘り下げれば面白いキャラだろうに、あれでは正直狂言回しの域を出ていないし、他の敵役にしても深みが一様に足りないのは間違いなかったかなと思います。


CG(17/20)

★総合評価

 複数原画ではあるけれど、そこは馴染みの、ってところで雰囲気的にはやはり相似するものはあるし、いつもながらに粗さは目立つけどその分だけ息づいた感じは良く出ていて、これはこれで悪くない、ってイメージですね。量的にもギリギリ水準にはあると思うし、もう一点下にするか微妙なラインではあったけど、立ち絵のバリエーションに免じて、って感じ。

★立ち絵

 ただ、確かにポーズ差分はそれなりに多くて楽しめたんですけど、ヒロイン全員が腕を差し出す系のポーズを完備してるのは画一的に過ぎたかな?とは思います。ああいうのって未来みたいに快活で懐の広い子ならともかく、ってのはありますし。
 ともあれその辺も含めてポーズ自体は2種類ずつ、差分はそれなりで中々躍動感があり、華やかでもあったと思います。
 お気に入りは沙綾正面、やや左、未来正面、やや左、萌生正面、やや右、紅愛正面くらいですね。

 服飾はヒロインで2〜3種類と最低限、3種類あるのも紅愛のステージ衣装のみだから、ここはちょっと物足りないですかね。こぞって泊まりにくるイベントとかあるんだから、寝間着くらいはあっても良かったかなと。
 あとこの作品、時系列的には11eyesの数年後(マスターの子供の歳から推定)のはずで、なのに制服が変わっているのだから、その点言及があってもいいんじゃない?とは思った。デザイン的にはこっちの方が好きなのでいいっちゃいいんですけど。。。
 お気に入りは沙綾制服、未来制服、私服、萌生制服、私服、紅愛制服、私服、ステージ衣装あたり。

 表情差分もそこまで多くはなく、シナリオ的な部分も含めて遊びも最低限、というかその辺は一括してシュパイン君の専売特許化してた感じ。。。
 お気に入りは沙綾笑顔、困惑、照れ焦り、不服、思案、半泣き、未来笑顔、ウインク、苦笑、しょんぼり、半泣き、決然、萌生笑顔、怒り、不安、得意げ、紅愛微笑、照れ笑い、悲しみあたりですね。

★1枚絵

 全部で80枚、SDもないのでギリギリ水準の範疇かな、ってところ。
 ただ正直無駄なくらいに男の絵が多いので(笑)、それはそれでいいけどもう少しヒロインに色々と欲しかったな、とは思います。出来そのものはまずまず安定してるのではないかと。

 お気に入りはページ順に、未来七夕、回想、料理、キス、指輪、枕抱き、正常位、愛撫、対面座位、浴衣、屈曲位、沙綾うたた寝、問い詰め、寄り添い、キス、未来の作家、不可知の輪、添い寝、フェラ、正常位、騎乗位、バック、背面座位、萌生添い寝、なでなで、甘いもの好き、聖櫃、跳躍、愛撫、正常位、対面座位、紅愛演奏、虜、隣で、ライブ、戦い、フェラ、バック、背面座位、騎乗位、団欒あたりですね。


BGM(19/20)

★総合評価

 日常の穏やかな愉しみ、非日常の切迫、覚悟の対峙、そのあたりのメリハリがしっかりついている上で、全体的に荘厳なイメージを付与するのに成功しており、実にらしいつくりで聞き応えがあったなと。またBGMでも声付きのものがかなり多用されていて、それも奥行きの深さに一役買っているかと。質量ともに満足度の高い出来だと思います。

★ボーカル曲

 全部で3曲。
 OPの『Liberator』は、危急と悲愴がじんわり滲む中で、疾走感あるメロディが覚悟を追いかけていくようなイメージでの展開、サビでの盛り上がりは中々いい味を出しているし、迫力のあるいい曲だと思います。
 挿入歌の『Rebel Yell』もストレートなロック感に溢れていて、反逆と革新という、似通った読みの二つの単語を行き来するようなイメージで綴られる覇気が中々に素敵でしたね。
 EDの『夏の空を見上げて』は、彼らが目標にしている七夕の夜をそのままイメージさせる、透明で澄んだ空気感の中で、しっかりと手にしたものの大切さ、温もりを噛み締めるような切ない曲に仕上がっていて、この3曲の中では一番派手さはないけれど、染み入るようなメロディは一番気に入ってますね。特にBメロへの渡りの部分が好みでした。

★BGM

 全部で38曲と量的にも水準は凌駕しているし、その上でひとつひとつの曲の出来もかなり素晴らしく、場面ごとのメリハリがかなりしっかり効いていて良かったと思います。こういうボーカルハミングがセットになってるBGMはもっと流行って欲しいなぁと思いますね。

 特にお気に入りは2曲。
 『想い出は遥か遠く』は、とても哀切が漂うしんみりしたメロディの中に、世界観そのものがもたらす悲愴が二重写しになっているようで、とても作風にマッチした素敵な曲だと思います。
 『永劫の終わりを待つ天使』は、なんともラスボスー的な荘厳さと、その存在そのものの悲しみを、男性ボーカルのラップを背後に据えることで独特な空気感の中で醸し出していて、それがコーラスをより際立たせていてすごく耳に残る曲です。マーリーアー、のとこのコーラスが特に好き。

 その他お気に入りは、『無限の追憶』『My sweet home』『Girls Talk』『新綾女ノスタルジア』『星辰のささやき』『愚神の見えざる手』『燔祭』『焦燥の魔』『昔日は還らず』『寄り添う孤独』『穢れ無き少女』『失われた空』『運命の反逆者』『凶気の追撃』『The Damned』『Godspeed you』『万折不撓』『咆哮する全ての命』『一閃、捲土重来』『惜しみない愛を貴方に』あたりです。


システム(9/10)

★演出

 演出はそれなり、ですね。
 日常でのキャラのコミカルな動きはそれなりに豊富で楽しめるし、バトルシーンでの演出もありきたりではあるけれどらしさは出せていて、もう少し深みと奥行きがあればとは思うけど総合的にきちんとよくできているとは感じます。
 OPムービーも非常に広がりのある世界観と、それとはうらはらの狭く限定された世界の二極的なイメージを、サブタイトルあたりとも絡めてうまく表現できていて悪くないと思います。

★システム

 システムも必要なものは揃っているし、ややジャンプ自体が遅い、ってのはあるけどないよりは全然マシ、抜群とは言えないけど水準はキープしているそつのないシステム周りだとは思います。


総合(85/100)

 総プレイ時間17時間。共通が13時間くらいと流石に長く、個別自体は固有のシーンとか込々でも1時間ずつくらいとおまけ程度、あくまで本筋を楽しむ類の作品ですね。
 尺的に足りない、ってほどではないけど、作品の質的にもっともっと肉付けした方が、それだけ重厚感と説得力が出て面白くなる類の設定だと思うだけに、全体的に簡素に、ただ状況だけを追いかけて綺麗にまとめてしまっているのは、それなりに面白いだけに勿体ないなとやはり感じます。
 ただ、お勧めできない、ってほど足りないわけでもないので、簡素にSF的要素を多分に孕んだ燃える展開を楽しみたい、というなら悪くないと思います。ただキャラに傾倒してプレイするのはあんまりプラスにはならないかも、なかんずく紅愛あたりはね(笑)。
posted by クローバー at 03:36| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: