2017年05月30日

真剣で私に恋しなさい!A

 Sの発売からこのAシリーズ完結パッケージ版が出るまで5年近くを擁したので、大分内容も抜けているところは多かったのですが、やはり無印・Sとプレイしてきた以上これもちゃんとやっておくべきだろうと購入。

シナリオ(24/30)

 心の故郷。

★概要

 この作品は、2010年8月にリリースされた真剣で私に恋しなさい!!、及び2012年1月にリリースされた真剣で私に恋しなさい!Sの続編、Aというイニシャルに象徴されるように、アナザー&アフターストーリーの色合いが濃く出ています。

 元から超多彩な登場人物を誇るこのシリーズにおいて、とりわけSで追加投入されたヒロインを中心に、それぞれとのらしさ溢れる恋愛物語を綴ったもので、A−1からA−5までナンバリングされ、ひとつずつダウンロード専売でリリースされていたものが一括されたものになります。
 当然1〜5まで全ての物語、全部で14人+αのヒロインとのイチャラブが楽しめる上に、このパッケージ版の特典であるプラスディスクで更なるおまけシナリオ、シリーズの集大成となる卒業シナリオまで楽しめる、なんとも豪華な作品になっています。

 時系列的には、大よそSの共通からの派生、或いはルートによっては紋白の従者になることを選択した後の派生、という感じで、個々の物語の独立性はそれなりに高く仕上がっており、最悪お気に入りのヒロインを数人つまみ食いするだけでもコスパ的には充分元を取れそうなポリューミーな仕上がりです。

★テキスト

 テキストの雰囲気は全く本編の頃から変わらず、武士娘、というカテゴリだけは鉄壁化されているので、それに合わせた気風、強気さや前向きさは共通させつつ、その中できっちり個性の色分けが出来ているのが流石の仕事だなぁと思いますし、読み口にもスピード感と清々しさがあっていいですね。
 特にSからは半分群像劇的な様相、主人公の介在しない地点での物語の組み込みの度合いが多くなっている感もあり、そのあたりも含めて隅から隅までマジ恋ワールドを堪能できるので、この世界観、やや癖の強い思想性が好きだ、という人には間違いなく楽しめるでしょうし、そうでなくとも嫌味なくさくさく読み進められると思います。

★ルート構成

 各シリーズごとに核になるヒロインが2〜3人いて、スタート時に誰を攻略するかをまず選択する事になります。
 その上で、各ルート内でもそれなりに数多くの選択肢が出てきて、そのチョイスによっては可能性の揺り戻しや変異が起こって、サブ的な立場のヒロインのルートになったり、バッドエンドになったりと色々派生していくので、その全てを追い掛けるだけでも楽しみはあります。
 まあ中には弁慶シナリオのバッドとか、普通こんなの選べるかい、って選択肢もあったりして、でもCGとか埋める為にはちゃんと網羅しないと厳しい、ってのがあったりするので複雑な感じはありますけれど。

 ともあれ、選択肢としてそれなりの難易度はありつつも、ジャンプシステムが優秀ですし総当たりでも苦も無く進められるので、その辺は有難いですね。メリハリがくっきりしすぎているとはいえ、ADVらしいADVだと思います。

★シナリオ

 総合的に見た時に、一応S共通乃至紋白ルートからの派生、という括りがある中で、その後の展開にやたらめったら外的要因が散発するのはオイオイ、と思うのですが、この辺はこのシリーズの定番でもあり、確か無印もSもそういう各ルートの外的要因や展開を、時系列だけ整えて一直線に繋げてしまう、という荒業を披露していたように思います。
 今回もラストの卒業シナリオでその操作をしていますし、恣意的だとは思いますが一応一定の連関性は有しているので、そこは改めて目くじら立てるのもなんだかな、という部分になりますね。

 勿論そういう操作をしている関係上、各々のルートで温度差はあれど、大抵破天荒な展開や事実が飛び出してきたリで、そのワクワク感、ハラハラ感は非常にこのシリーズらしい醍醐味をキープできていたと思います。
 勿論A、アナザーという括りなので、無印は元より、Sのヒロインズに比べても関係性を進展させる為の積み上げは薄めで、元々モテモテ主人公ではありますけど本気で一目置かれ、好かれるまでの展開は早いなぁ、とは感じました。
 まあこれだけのヒロインがいる以上、それぞれに決定的な深みや状況の蓄積を用意していたら陽が暮れるのは必定ですし、せめても最低限は担保しているだけ良心的なのでしょう。実際きちんと全てのヒロインの、恋をしての魅力は書けていると思います。

 そんな感じで、きっかけ作りは一部のルートを除き軽め、イチャラブメインで話が進んでいくわけですが、当然ながらこのシリーズだけに、要所要所で武力衝突が関わってきます。
 特にクローン武士娘絡みの話はその様相は色濃く、内容も本編に負けない水準で骨太に作られていて、清楚/項羽や、義経ルートは非常にダイナミズムもあり面白かったなと思います。後バトル展開と言う意味では地味にアイエスも好きですし、ラストの卒業シナリオも流石の出来でした。
 これだけ才能溢れる面々が揃っている中で、決して死にキャラを出さずにしっかり全てに見せ場を作ってくる剛腕ぶりは相変わらずだな、と思いますし、それを不自然に感じさせない構成力には唸らされますね。

 流石にひとつひとつどれが好き、どこが好き、と語っていると時間も紙幅も足りないのでそのあたりはまるっと割愛しますが、総じて言えるのは、このAシリーズはSで契機を作った、より外向きの物語という点です。
 本編の感想でも触れているように、本編はある程度主人公も人脈人脈言いつつ、なんだかんだで一番大切で変わって欲しくないのはファミリーとの日々、という前提があり、そこからの対立構造が学園を飛び越えて拡大していく中で、どうしたって終わりはきてしまうという切なさを内包しつつ、それでも、それだからこそより一層今を大事にしようと噛み締める、見方によっては小さい世界観での物語でした。

 それがSになって、少しずつ外部とのチャンネルが広がっていき、その過程で今まで見えてこなかった別のグループ、組織なりの正義や心持ち、その中で気分よく前向きに生きていく術を知っていく、という観念が発現しています。
 無印ではどうしても読み手は、一定感覚S組や九鬼家に対し胡散臭さやもやっとしたものを感じていたと思うのですが、その学内レベルでの違和感を、より外部に仮想敵が生まれることで払拭する、という操作が為されています。
 そこではいわば、ファミリーは確かに大事だけど、いつまでも留まってはいられないというシビアな現実を受け入れつつ、新たなステージに飛躍しても、心の故郷としてファミリーの結束・絆は確かにある、例え矢折れ心尽き果てても温かく迎えてくれる、一種の安全基地としての役割を定義していて、このAシリーズではその延長線上にあるより時間軸、世界像的な広がりを意識した構成になっていると感じました。九鬼家に就職して世界を股にかけたり、梁山泊の参謀になったり、猟犬部隊に籍を置いたり、そのあたりは特に顕著でしたね。

 つまり元々無印では仲間愛が一番だった、それがSになると郷土愛の様相を色濃く持つようになり、そこからAで人類愛にまで飛躍しているイメージで、かつそれがしっかり入れ子構造として機能しており、どこまで思いを広げても、芯になるもの、核にあるのはファミリー愛とその思い出や絆がもたらす安らぎである、という思想性が汲み取れるつくりになっていると感じました。
 そこでは新しい世界に飛び込み、その世界の理路に合わせて柔軟に自分を変化させていく、その大切さと意義がしっかり組み込まれていて、無論そうさせる原動力としての恋愛要素を軸のひとつとして明確にしつつ、視座が変われば世界の景色も全く違ってくる、という、当たり前でも気づきにくい現実を直視しているわけですね。

 そういう意味では、無印あたりはモラトリアムの物語でありつつ、S〜Aと繋がる中でそこから脱皮し、大人として現実に対峙しつつ、その中でどう楽しむ術を見出していくか、という、より大人の視座で楽しめる構成になっています。
 それはこれだけ製作期間が長く伸びている中で、最初期の頃にはまだ若かったファンが、いつしか大人になり社会の荒波に揉まれて苦しんでいる、その現実に対するエールにも思えるし、購入層の潜在的欲求を掬い上げ、その心理に寄り添うという機能も併存させていて、その着眼点は中々に見事だなと感じます。
 勿論それ一辺倒ではなく、ひとつのシリーズにひとつずつ程度、さりげなくそういう味付けを塗しているというバランス感覚も含めて、本当にマーケット感覚は鋭い人だなぁと思いますね。その意識がある故に、改めて今プレイしても時代性から取り残されたオワコン的な感覚は一切感じないつくりになっているのではないか、と推察します。

 ともあれ、やや外殻的な余談に話を振り過ぎましたが、そんなしちめんどいこと考えずともひとつひとつが非常にエンタメ性の高い素敵な物語になっているので、充分に高い評価は出来ます。
 流石に名作ラインか、と言われると色々欲張り過ぎていてなんとも、ですが、少なくとも1本のフルプライスパッケージとしては非常にコスパは高いですし、それでいて弛むことなく活き活きと楽しめるので、昔本編はやって好きだったけど、いかんせん時間が空き過ぎて今楽しめるかわからない、と思っているなら、そのあたりの配慮もそれなりにしっかり行き届いていると感じたのでおススメです。


キャラ(20/20)

★全体評価

 キャラに関しては当然文句なしですね。それぞれに癖はあるけれど、きちんと懐に入っていくと彼らなりの視座、正義の意味がきちんと見えてくる構成になっていますし、対立構造は当然あるにせよ、そこで一方的な偏見や保守思想が蔓延るのを許さない気風が、より一層強く打ち出されていて、概ね清々しく感じられるのが見事です。
 その上で改めて、これだけキャラがいるのに各々の個性のインパクトは決して低くなく、また皆無、とまでは言わないにせよ、あらゆる場面で出来る限りのキャラにその持ち味・気質を生かしての活躍の場を用意していて、誰のファンでも一定納得できる割り振りになっていたと思いますね。

★NO,1!イチオシ!

 一応新規攻略キャラ、という括りで考えると、やっぱり義経になるのかなと思います。
 とにかく裏表がなく生真面目で心優しく誠実で、かつ自分の気持ちにも全く嘘をつかない高潔さ、清冽さがあって、恋愛模様でも主従関係でも、ライバル関係でもその持ち味が存分に発揮されており、とにかくどの場面で出てきても読み手の気分を健やかにさせてくれる特異なヒロインだったなと思いますね。
 ラストのA−5で立ち絵も増えて、感情の機微に広がりを見せてからの破壊力は圧巻でしたし、そういう気質を延々見せつけた上でのラストの遮那王逆鱗への繋ぎは本当に見事な伏線だったと思います。

★NO,2〜

 次いでだと焔、になるかなぁと。
 この子もすごく気風が良く、サバサバしていて磊落で、だけどしっかり女の子らしい可愛さや恥じらいも持っているというバランス感が良かったですし、恋愛になっての真っ直ぐさ、夢に邁進するひたむきさ、自分を決して曲げない根性も含めて本当に好きですね。
 おまけに、Sプレイ時は全く気付かなかったんですけど、CVの名義は違うけど小鳥居さんじゃん、というところでの加点もあります。というか、時系列的にSの発売と学☆王の発売って全く同じ日なんですよね。今日記見直してみたら、先に学☆王クリアして次にSって感じでプレイしてるのに、所詮馬鹿耳だから全く気付いてないと。。。まあそもそも小鳥居ボイス素敵じゃない?って意識した初めてが学☆王なわけだから、今とはまるで蓄積も思い入れも違うし仕方ない話ですけどね。

 アイエスもかなり好き、あの人を食ったような個性が、一皮むくとめっちゃチョロイン、というバランス感覚に痺れますし、懐いて甘えてくる時の破壊力が独特の味わいですごく良かったですね、ケタケタ。

 林冲も可愛かったけど、この子も京よろしく愛が重い系だったかー、というのはありますね。。。
 その意味では武松の素朴な可愛さも中々良かったですし、後は猟犬部隊のコジマやテルマなんかも相当に好き。
 沙也香も見た目や気質的には相当お気に入りなんですけど、一番最初にやったのと、それ以外で後半出番がほぼなかったのもありそこで割を食っている気がしますね。。。

 九鬼関連では李が一番好きかな。あのとぼけた雰囲気と母性的なありようのミスマッチ感が独特の個性になっていて好き。シェイラちゃんはCV補正合っても腹黒だからなぁ(笑)、あの専用曲には笑ったけど。
 紋様や燕は安定して可愛い、あとおまけで虎子Hもあったのは嬉しかったり。なんだかんだSの感想時点で、この子好きだから攻略したい、と思ってたヒロインがそのままスライドして好き、ってあたり、5年経っても全く同じところに立ち止まっている自分の現実が色濃く見える。。。

 風間ファミリーはもう安定して素敵だし、兎に角キャラゲーとしては申し分ない出来でした。

CG(19/20)

★全体評価など

 基本的にひとつずつが、ダウンロード版のお値段でも不足感ない量になっているので、パッケージ版で見ると非常にお得感溢れる量になっていると思います。
 完全新規作品ではない上に素材量が膨大なので、この辺はある程度簡潔にまとめさせてもらっちゃいますが、立ち絵素材もヒロイン格に昇格する時点でしっかり追加投入されていますし、1枚絵も素晴らしい量で、特にA−5は、他のナンバリングが40枚前後なのにこれだけ80枚とフルプライス並みの量になっていてびっくりします。

 質に関しては多少安定性がなく感じる時もありますが、それでも当然統一感は強く、プラスディスクも含めて計255枚もあるわけですからね、差し引いてもお釣りがくると思います。
 特にアイエスと弁慶/義経絡みは良かった気がしています。弁慶ルート最後での義経をわしゃわしゃしてるのがなんかすごく好き、あとアイエスのお風呂ばったり。


BGM(18/20)

★全体評価など

 こちらも基本的にはシリーズの曲を用いつつ、Aシリーズ汎用曲と、キャラ曲がそれぞれ4〜5個ずつナンバーごとに投入されている感じで、ボーカルもプラスディスクまで含めると3曲あり、かつその主題歌をヒロイン全員に歌わせ、その個性に合わせて少しずつ歌詞まで弄るという発想は面白いですね。

 既存の曲が出来がいいのもあり、ガツンと目立って凄い、というのはなかったんですけど、どれもメリハリの効いたらしい曲が揃っていて、それだけでもこのくらいの評価は充分できるかな、というところです。
 新規だと『さざなみ』『源氏大戦』あたりはかなり好き。既存だと『君のヒーローになるために』はやっぱりすごくテンション上がるなぁと。


システム(9/10)

★演出など

 無印発売当時の2010年では中々に先進的な演出だったわけで、一応そこからある程度進化は見せつつ、でもシリーズのイメージを踏襲する上で振り切ったところまでは踏み込めない、という制約もあるわけで、その点で相対的に突出感は流石になくなってしまったかな、とは思います。
 勿論非常に安定して楽しく迫力ある演出になっていると思いますが、スクリーン対応などの点も含めてどうしてもいざ今プレイすると、って感覚は出てきますかね。そのあたりで無印/Sは満点つけたけど少し下げておこうかなという感覚です。 


総合(90/100)

 総プレイ時間は48時間くらい。A1〜4が8時間前後、A−5が12時間くらい、プラスディスクが4時間くらいの計算です。
 まあ長い、とは思っていたけど予想以上に大ボリュームで、ここまで待っていた甲斐があるコスパの良さですし、このシリーズらしい雰囲気は一切毀損せず、だけどその中に少しずつ独自の人生観や社会性の必然を折り込んで、長くシリーズを愛しているファン層のニーズ、潜在欲求に幅広く応えるつくりになっていて素晴らしかったと思います。

 一応ほぼこれでシリーズ完結、という形でしょうし、その上で今から無印/S/Aと新たに続けてプレイしてみるのも面白い、と思いますが、シリーズ通貫するとそれこそ100時間近くかかってしまうので中々その点で敷居が高くはありますね。
 あと本当に上でも触れたように、発売スパンとプレイヤーの時間間隔、現実での立場の変化をも踏まえたつくりをかなり強く意識していると思うので、この作品に限っては随時追いかけていた方が正解だったのかもなぁと今更に思います。ただダウンロード版ってどうも肌に合わないんですよね、古臭く頭の固い人種なので。。。

 ともあれ、本編が楽しめた人ならその思い出補正を崩さないまま安心して楽しめるつくりになっていますし、一気呵成にクリアしないとダメ、ってつくりでもないので、無印プレイ当時はまだ学生やってて時間あったけど、今は社会人でそんなまとまった時間取れない、という人にこそ、細切れで少しずつでも存分に楽しめて活力を分け与えてもらえる稀有な作品にはなっていると思うので、コスパもいいですしお勧めできますね。
 
posted by クローバー at 05:00| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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