2017年06月08日

月に寄り添う乙女の作法2.1 E×S×PAR

 また露骨にFD分割商法でえぇー、ってのはあったけど、そんなに欲しいものがない月だったし、ルミねぇ出てこないかなーという期待もあって購入。

シナリオ(17/30)

 らしさは存分に味わえるけども。

★概要

 この作品は、2014年12月に発売された月に寄り添う乙女の作法2のFDになります。
 FDなんですが、今回のコンテンツは4人のヒロインの内エストと春心の二人のみにスポットを当てたものに、このシリーズの大人気キャラ(なんでしょうねおそらく)のお兄様の若かりし頃の苦闘を描いた掌編、釣り乙0(ゼロ)を加えたものとなっています。
 かつこのパッケージの中に既に2.2、残りのヒロイン二人の朔莉とルミネ、そして妹のアトレにスポットを当てた次回作の告知も入っていて、うーんなんとも分割商法極まれりだなぁ、と思ってしまう次第。というか、アトレ攻略できるのは嬉しいけど九千代もついでにヒロインにしてくれないかしらん。。。

 その辺の思惑はさておき、ヒロイン二人は当然ながら本編ルート後の後日談になっていて、向こうの感想でも基本的にこの物語は主人公の誇大妄想が打ち砕かれて、等身大の自分を見つめ直すことで本当にやりたいこと、進みたい道に迷いなく邁進する契機を作った作品、と定義しているわけですが、それを裏付ける形での、わかりやすく丸くなった主人公とヒロインのイチャラブ込みでのその先、という形になっています。

★テキスト

 FDという点も踏まえてなのか、いつも以上に言葉遊びやはっちゃけた色合いは強く、それでいて時に情熱的な多弁雄弁を挟んできたリと、この緩急と突拍子のなさは健在、というより強化されている感じがあります。
 それはアクも強くなった、という視座でも見られますが、まぁ実際FD、しかもこんな露骨な分割商法信者向けなので(笑)、このテンションに適応している人しか買わんだろう、って考えれば、顧客層のニーズをより一層突き詰めて煮出した読み口、と言えるかもしれません。
 ただここまで口癖シリーズや奇声が頻繁に出てくるってのは、元々の雰囲気というか品性の部分でどうなん?ってのはありますけどね。その辺初代シリーズの方が今から考えると洗練されていた気もするのが現実。まぁ嫌いじゃないですけど、時折辟易するのはある、かな。

★ルート構成

 エストルートだけそこそこ選択肢があり、それ次第でサブルートのより深い顛末や、エストとの関係性のちょっとした変化などが楽しめる仕様になっています。
 まぁどちらにせよそれも二人の幸せな在り方、という部分は確実に担保されているので、気楽に進めて問題ないでしょう。

★シナリオ

 外殻として統一感のあるテーマ性が滲むわけでもないので、素直に個々の感想をサラッと触れてさっくり片づけようと思います。。。

 まず春心シナリオですが、こちらは本編で一番主人公の思想の変転が大きかったルート、というのもありつつ、それでもきちんとこちらの側に立っての対立構造の解消は為されているので、本編であったギスギス感やいや〜な空気は完全に払拭されているのがありがたいところです。
 そうであればこそ、改めて伸び伸びと自身を見つめ直し、この先どうありたいのか、を考える時間を作ることも出来て。
 パル子自体も今までは精一杯その日その日を生きるだけだったのが、ある程度未来像を提示され、そこに安心を得ることで、今まで踏み込まなかった部分、特に競争や対立を煽りかねない場面にも臆さず踏み込んでいく強さを得る、という、わかりやすく相見互いに支え合う素敵な関係が成立していますね。

 相変わらずぱるぱるしるばー活動はワイワイしてて楽しいですし、その中で主人公とエストが畑違いに苦戦しつつ売り上げで張り合うなんて展開もクスッと出来て、そしてこのルートは本当にマルキューの存在感がピリッとしてるというか、しっかり話を締めてくれるというか、すごくいい子だよなぁやっぱりと思わされますね。
 なんにせよ、前にも増してパル子が驥足を目一杯伸ばしてあれこれやっていられるのも、様々な縁の下の力持ちが支えてくれるから、ってのはあり、でもそれを呼び込んだのは、辛い境遇の中でも前を向くことを諦めなかった(もっとも前しか見れなかった、という意味では歪ですけど)彼女自身の功績なので、主人公をよりいい方に変えた、という意味でもこのルートはすごくしっくりきます。

 確か本編感想でも書いたけど、主人公の肥大妄想に対するアンチテーゼがしっかり威力を発揮しているのはエストとパル子が双璧だと思っているので、その意味ではシナリオ面で楽しみな後日談がこっちにまとまってしまっているなぁ、というのはあるんですよね。
 ルミねぇなんか当然キャラ的には好きなんだけど、あのシナリオは正直踏み込みが足りないって思うし、朔莉にしてもベクトルが違うのはあるしなぁ、ってところで、その辺どう処理してくるか、どうせ文句垂れつつも買ってしまうだろうから楽しみにはしています。

 次いでエストルートは、こちらはより被服の王道を貫いて、その上で自分を偽ることなくいられる環境が手に入った、という部分での都合の良さはありますが、それを説得的にするだけの本編の積み上げがあるルートでもあるので、本当はそっちをリプレイして空気感の変遷を引き継いでからプレイしたかったなー、って忸怩たるものはあります。
 こちらはこちらで、秘密の共有、というポイントを含みつつの一致団結、ほのぼのした空気が醸成されていて気楽ですし、人間関係の組み合わせもまた少しずつ変化があって面白い。特に、パル子ルートでも仲良くはなってたけど、このルートでのいせたん×ジャス子の百合百合しさったらなくて、本当に噛み合わないのに無性にお似合い、ってのがまた笑えるところではありましたねぇ。

 その辺の余興や、それぞれの家族との関係もある程度しっかりフォローしつつ、やっぱり本質的には二人はデザイナーとして大成したい、という志望があり、それを二人の関係とどう折り合わせていくかの試行錯誤がしっかり描かれているのも好感触です。
 エストというヒロインは、恋人でもあるけど元々のライバル関係や、身バレ以前の主従関係の気風も揃って受け継いでいるから、主人公もある程度それを自覚的に使い分ける狡さを見せていたりして、そういう部分も含めて二人がぶつかりながらも楽しんでいる、という色合いがしっかり出ていて、まぁ終盤で多少息詰まる部分もあったりはしますが、概ねFDらしいところです。

 パル子ルートよりもより自我に寄り添う形での迷妄からの解脱が為されている分、自身の今をしっかり認めつつも、その先を望む心、戦闘意欲はまだまだ十分で、それこそ三つ子の魂百まで、と言わんばかりに服飾絡みで喧々諤々戦う二人と、その喧嘩の後のHは燃えるぜー、的な描写のバランスが素敵でしたね。まぁこのシリーズはその手のシーンに期待は持てないですし、実際そういう事がありました的モノローグで片づけられてるから脳内補完するしかないんだけど。。。
 その上での終盤の選択は、どちらを取ってもこの二人らしい結末ではあるのは確かで、価値観の置き方そのものに大きな差異があるわけでもないけど、今対峙している状況の結末には影響を及ぼす、というところでの面白味はありますね。しかもそのライバルが例の百合ップルだから二重におかしみがあると言いますか。
 ともあれ、FDとしては十全のフォローが効いた内容ではありますし、安定して面白かったと思います。

 最後にゼロに関しては、やべぇ八千代さん可愛いし。。。山吹の血はなんか好み度合い高いなぁ私の中で。
 お兄様がああいう人間になってしまった原因は初代釣り乙である程度掘り下げられていますが、その中で言葉では明確に語られなかった苦労や頓挫、いかにしてその強靭な意思を貫き通したか、という部分の一端が垣間見える内容は、確かにファン垂涎と言えるのかもしれません。

 ただ、正直もっと怜悧な印象なのかと思ったら結構和気藹々としていてあれ?ってのはあり、でもそれも若さがあればこその柔軟性やある意味では未練、そしてまだそこを踏み越える過渡期にいる中での揺らぎを感じさせるものです。
 まぁ若かりし頃のジャン、ラフォーレ、衣遠、八千代というカルテットの濃さと才能の迸り感はビンビン伝わってきましたし、そこにやや畑の違う才能であるアルテが絡んできての展開は、背景で衣遠がギリギリに追い詰められていながらも虚勢を張りまくる中で、なにかの契機、神託的な様相を感じさせました。

 実際に彼女の目的は、という部分で、それはそれですごく歪んでいるものの、彼女が生きてきた過酷な現実の中で手にした揺るぎない観念、信念を感じさせるもので。
 けどそれを理解し、どこか共鳴するところもありつつ、それに飲まれず、逆にその意思を飲み込んで自己の栄光の糧と為すありようには、実に圧倒的な自我の強さの更なる萌芽を感じさせるところでした。
 あの場面での神への啖呵はそれこそお兄様の真骨頂的な迫力を醸していましたし、そうであっても結局孤高のままではどうにもならない、というありのままの現実すら飲み下して、その帰結としてのラストの発表会のシーン、あの1枚絵には痺れましたねー。

 その発想の質云々はともかく、あの圧倒的な自身に満ち溢れた傲岸不遜な表情こそは、なにか壁を1枚突き抜けた後の超越的な観念がはっきり滲んでいて、無論それでこそ取り落としたものもあって、その弊害が無印に繋がっていくわけなんでしょうけど、ここだけ切り取ればその裂帛の意志には崇敬すら感じますものね。
 八千代と今に至るまで腐れ縁的な関係であり続ける源泉的な部分もなんとなく把握できるつくりになっていましたし、諸々含めていい補完シナリオになっていたと思います。

 以上、総合的に見てFDとしてひとつひとつのシナリオは必要十分の出来にありますが、といってその枠を踏み出して傑出しているというほどでもなく、ゼロに関しても本当にファンのための御約束的な色合いから踏み出してはいません。
 それを鑑みた上で、やっぱりFDなのに半分ずつ、って出し惜しみ感は半端なく、それでいてお値段ミドルプライスですからコスパ的な意味では正直どうかな、って思います。
 どうせ次が出た後にフルパッケージで少しお安いの出るでしょうし、どうしても、って事がなければそれを待って買うのでも充分な気はする、という程度に、普通の面白いFDでした、というところでこの点数ですね。


★キャラ(20/20)

★全体評価など

 基本的に対立構造が消し飛んで、ギスギスした空気が消えたことで、のびのびと本来の気質を発揮できる土壌が整った作品でもあり、その点では本編以上に魅力を高めてきたキャラは、サブを含めて結構いるなという印象で、素直に評価としてもマイナス要素はないだろうと。
 特に味わい深かったのはパル子ルートでのエストとマルキュー、そしてエストルートでのいせたん×ジャス子だろうなぁと思います。女の子同士できゃいきゃいするのはやっぱり素敵よね、というか最近頓にそちら側の素養が増してる気がする私なのです。。。

 あとホント単純な可愛さだと、改めて九千代が好きだなぁと思う私。分割するならせめてその辺のイフルートもぷりーず…………。


CG(18/20)

★全体評価など

 相変わらずそれぞれの原画に味があって悪くないですし、FD水準で見れば物量もまずまず、質も2から特に上がり下がりなく安定していると思います。
 立ち絵素材などはほとんど新規追加はないと思いますが、相変わらずこのピコピコ動く感じとの噛み合わせはいいですよね。

 1枚絵は全部で50枚、お値段からするとギリッギリ水準かなとは思いますが、ヒロイン二人+αという事を考えると、それなりには贅沢に使っているとも言えますね。
 特にお気に入りはやっぱりアレですよ、お兄様のファッションショーに尽きますね。最後の最後であのインパクトは卑怯なレベルで爆笑するしかなかった。。。

 その他お気に入りは、エスト草原、添い寝、姉妹、ステージ一連、キス、正常位、春心贈り物、添い寝、写真、髪結い、舞台一連、でこちゅー、手コキ、バック、いせジャ一連、心配するマルキュー、打ち上げ、泥酔八千代、神への啖呵あたりですね。


BGM(15/20)

★全体評価など

 新規は各ヒロインテーマボーカル曲2曲に、BGM4曲のようですね。
 まあどうしてもこの辺は新たに、というのは出しにくいですし、実際BGM追加はゼロ編のみ、ボーカル曲もステージイメージとセットでの演出面の色合いが強く、曲としてそこまでガツンとは来なかったかなぁと。
 エストの『Crosen Road』は爽やかでスタイリッシュで綺麗な曲で、どちらかといえば好きだけど歴代のボーカルと比較するとそんなでもなく、春心の『未来永劫』もキュート&ポップなイメージで悪くないけどさほどでもないかなと。

 BGMに関しても新規でそこまでガツンと来るものはなかったですかね。
 強いて言うと『愛を拒み覇道を征く若き天才のテーマ』が、タイトルの字句イメージよりは柔らかみがあって、それでもどこか不協和な色合いを醸している所からの、EDでの本編お兄様テーマに繋げてくるテクニックは素晴らしい、対比的に印象深いものはありましたけどね。


システム(9/10)

★全体評価など

 基本的には本編準拠で、むしろ本編よりはっちゃけて派手に動いてるかも、ってくらいですね。
 ステージムービーも健在ですし、基本的に演出の面白さ、システム面でもさほど文句はないです。
 ただし私のPCスペックの問題か、時々アクセス不正なんちゃらで強制的にフリーズするのはどうにかならんものなのか、とは思ったりね。


総合(79/100)

 総プレイ時間9時間。春心3時間、エスト4時間、ゼロが2時間弱くらいの勘定ですね。
 まぁ全体尺として、例えばFDとしてロロログのように、各ヒロイン一律で2時間弱のHシーン多め、ってパターンがいいのか、それとも分割でも本編並のその後の掘り下げをしっかりやったほうがいいのか、って考え方の違いはあって、確かにこのシリーズに求められているものは楽しい会話・日常風景と、その中での芸術を武器にしての丁々発止、というのはあるわけで、これはこれでひとつの正解なのでしょう。

 でもなぁ、それだったらフルプライスで全員まとめて出そうよ、というのが率直なところですし、内容はともかく売り方として気に食わないのは正直あります。
 物語としては普通に面白いだけに、そういう間口の時点で印象を撓めてしまう理由があるのは勿体ないですし、現状でぜひやるべき!と推せるだけのインパクトがあるわけでもないので、評価としては難しいですがこの辺なのかなと思いますね。
posted by クローバー at 03:12| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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