2017年07月18日

春音アリス*グラム

 散々延期繰り返してたし、内容的にはあまり期待は持てなかったんですけど、絵とCVが強かったので惰性に任せて買ってみた、という感じですね。

シナリオ(14/30)

 乱雑もここまでくると芸術か?

★あらすじ

 主人公は、かつて正義感からとある事件を起こし、下手すると退学になりかねなかったところを生徒会長の優理に助けられ、懲罰的な意味も含めて生徒会の下部組織である黄昏部に所属する事になりました。
 部長の耶々も同じように優理に助けられて、その受け皿としてこの部を作ってもらった経緯があり、その為に恩返しを、という想いは軌を一にしていて。
 故に、学園で実験的にごく少数に配られているアーケンカードの特異な能力を用いつつ、二人でこじんまりと、生徒会では目の行き届かないささやかな人助けに奔走しています。

 この学園には、とある事情から自治組織が生徒会と新生会の二つあり、新生会が一方的に旧態依然とした生徒会のやり方を弾劾し、新風を巻き起こそうと対立を煽る中で、新生会下部組織の風紀執行部代表である幼馴染の一葉や、新生会の役員ながらしょっちゅう黄昏部に遊びに来る後輩の雪などとは、立場を超えた交流を持ちつつ、穏やかに日々を過ごしていました。

 そんなある日、学園に北欧からの転入生・エリサがやってきます。
 転校前日にひょんなきっかけで彼女と交流を持った主人公は、好奇心旺盛なエリサにいい意味で一目置かれ、その傍にいれば面白い事が沢山ありそう、くらいのノリで黄昏部の新たな部員となって。
 その登場と足並みを合わせるように、学園内ではZEROと呼ばれる不思議な怪盗の噂が流れ始めます。
 黄昏部が出窓としている目安箱にも、そのZEROと思しき相手からの数々の挑戦状や予告状が送られてきて、学園のイベント絡みで奔走する中でそちらの対処にも追われることとなり、今まで以上に賑やかな日々と、そして沢山の事件が舞い降りてきます。

 ひとつひとつの事件を足腰を据えて解決しつつ、その経緯でヒロインとの関係性もより深いものにしていって、そうこうする中でヒロイン達が抱える葛藤や苦悩、それをもたらす様々な学園にまつわる謎や闇も垣間見えて。
 やがて寄り添う相手を見出した主人公は、その相手の問題に向き合い、自身が持つ無限の可能性を有用に扱いながら立ち向かっていくことになります。

 果たして学園を騒がせる怪盗の正体と狙いはなんだったのか?
 アーケンという不透明な技術がもたらす不穏を、彼らは無事にはねのけられるのか?
 対立という関係性を克服し、手を取り合って、より明るい学園の未来像を紡いでいけるのか?

 これは春の手前で足踏みしている謎を解き明かし、美しく輝かしい未来を紡ぐための愛と絆の物語です。

★テキスト

 基本的に当たり障りはない、と思いますが、どこかとっつきにくさ、読みにくさは感じる文章です。
 全体的にノリそのものは真面目寄りなんですけど、説明しなくていいところがくどかったり、逆にすべきところが淡泊だったり、そのあたりのバランスが悪いのと、キャラ性を意識するのはいいにしても反応がかなり画一的で新鮮味が薄い空疎なやり取りになりがち、ってのはあります。
 サブ含めて横の繋がりが広いのはいいところなのですが、その幅広さを生かし切れていないというか、有機的な反応を引き出しきれていない感は強く、別枠でヒロイン視点モードもある割に、感情の掘り下げが基本浅いなぁ、と思いました。

 加えて土台の構成自体もかなり骨組みがファジーなのも相俟って、都度都度の状況が非常にアバウトで芯がない感じ故に、多少テキストが頑張って感情に訴えようとしても空転する、というイメージは強く、総じて眠くなりやすいというか、スラスラと先を読みたいと思わせてくれる吸引力はあまりなかったですね。

★ルート構成

 基本的にロックはなく、共通の中で狙ったヒロイン寄りの選択肢を選んでいけば、というオーソドックスなつくりです。
 ただこの点でプラス評価なのは、個々の選択がヒロインの心情を汲み取り、より深く寄り添うか否かというものであることと、その数が比較的最近のゲームにしては多く用意されているところですかね。そこで少なくとも主人公とヒロイン両者の信頼感や、恋愛の萌芽に至る筋道をある程度説得的に担保していると思います。

★シナリオ(大枠)

 基本的には不思議な能力や現象などと、ヒロインの心情を色々と噛み合わせながら情緒的な物語に組み上げていく、という事になりますが、大枠で見た時に気になる部分はかなり散見するつくりです。

 大別すれば三つあるのですが、一つ目は作品全体を通貫するテーマ性の弱さですね。
 基本的には優理のありようを模範として、善悪の対立と、悪をも内包し改心させて前に進む理想的な在り方を紡ぎたい、というところはあるでしょうが、ルート毎に内容そのものはかなり多様化、パラレル化しており、その中での強弱はどうしても出てきます。
 それはエンタメ色の強さ、という意味ではプラスに働くかもですが、その分作品の統一性においては致命的な欠損をもたらしてもいて、読後感の味わいひとつとってもかなり差異があるので、この作品といえばこう!というフックがないなぁと感じさせます。

 二つ目はそれに付随しての、強制力の高そうな外的要因の濫用と整合性の放棄ですね。
 特にエリサと一葉ルートで顕著ですが、少なくとも主人公達の立ち振る舞いとは全く無関係のところでほぼ確実に発生しうる事件を物語の土台に置くのは、他のルートではなぜそれが発生しないの?という疑問に直結します。
 勿論ある程度共通で伏線は引かれている展開なのですが、特にエリサルートのそれなどは共通の主軸と言ってもいい部分で、なのに他のルートに入ったらその問題は一切表面化せずに終わってしまうというのはあまりにも不自然であり、このあたりの都合のいい恣意的な構成は気に入りません。しかもエリサルートはラストがあんなんですし、その点でも救いがないというか。

 三つ目は章立ての構成面の画一感と、その繋ぎの不自然さですね。
 この作品は1章が導入、2〜6章がそれぞれヒロイン一人ずつにスポットを当てつつの共通で、7〜9章が個別になっています。
 この個別の割り振りがほぼ全員一緒で、7章で恋愛感情を高めてお付き合い開始、8章でイチャラブエロス、9章でシリアス〜解決という流れなのですが、この尺だとまず単純にイチャラブ自体はそんなに多くなく、密度も高くないと言えます。
 その上で9章でいきなり唐突にシリアスが始まることが多く、その個々の是非は個別感想に譲るとしても、その前の7〜8章での伏線の引き方や、9章での危機の中にいるなりのイチャラブ要素というものの引き出しが乏しく、あまりに不自然な状況で無理矢理エッチに雪崩れ込んだりとか、最初から回数が決まってるから消化しました、感がありありと出ているのが目立ちました。

 このあたりは正直もっと柔軟性があっていいと思いますし、シリアスもやるならやるでもっときちんと説得性を有するようなつくりにして欲しかったなぁと。上で触れた外的要因の扱いにしてもそうですし、それを抜きにしても個々のルートでの展開があまりにも都合が良過ぎることが多かったし、その背景についての説明不足は目立っていましたので、そのあたりは良くないと思います。

 ともあれ、この辺を踏まえた上で個別感想に入っていこうと思います。

★シナリオ(個別・ネタバレ)

 一応それぞれのルートのネタバレも書かないと語れない部分が大きいので、白抜きで進めていきますね。

 個別評価としては、優理>>雪=耶々=一葉>エリサくらいですね。
 正直物語としてのダイナミズムに関しては一葉とエリサがトップを争う感じですけど、私の評価的にはそういう部分的な盛り上がりの為に全体の整合性を大きく犠牲にしているのは気に入らないし、その上でまだご都合主義全開でもハッピーエンドだった一葉はともかく、エリサルートって誰得?と思わざるを得ないのでこうなりました。
 正直頭一つ抜けて最上位評価の優理でも水準クラスよりちょいマシ程度、というイメージですけどね。

 今日は下から順番に行きますと、まずエリサは本当に色々勿体ないルート。
 このルートはエリサが来日した真の目的と、そこでエリサが護りたいものをつけ狙うZEROとの対決、という構図で、その点ある意味共通のイメージからは一番シームレスに繋がるシナリオでもあったりします。

 ただこのルート、本当に色々と強引さや無理やりさが付き纏う上に、ものすっごいビターエンドなんですよね。。。
 そもそもからして時計塔の秘密と、そこに隠された秘宝の存在をどうしてZEROは最初から知っているのか、それを目的として色々画策、行動できたのか?って疑問点は色濃くありますし、ああまで執拗に主人公に介入させようとする想い自体も、過去の関係性があるとはいえかなり無茶なこじつけに思えるんですよね。
 かつその動機が本当に切実で、それがなきゃ自分が死んでしまうという中で、そこまでなのにどうして他のルートでは全く鳴りを潜めて、それこそ人知れずに死んでいってしまうのか、という部分がなんとも虚しく、なんでこんな設定にしたのかと思いたくなります。

 結局のところ、他のルートで整合性を保てないなら、ここで辻褄は合わせて欲しかったし、こんな重いものにして欲しくはなかったですよね。
 共通のZEROはあくまで主人公に絡む愉快犯的な部分が強かった、けどエリサルートで二人が時計塔の秘密を探ることになって、それを窺っている内にその秘密の内実に気付いて、それが自身の目的と合致していると気づいてより介入を加速させた、くらいの後付け、内的要因での展開に組み立てられる部分だと思いますし、かつあんな悲惨な背景はいらないだろと。
 あくまで過去を懐かしむノスタルジックと、そこで得た人生観との乖離を妨げるため、というイデオロギー的な対立に留めておけば、まだこの世界観的な善による悪の内包、というファクターとも絡み合ってくるのに、どうしても無理矢理悲劇的な物語に仕立てたかった、としか思えない悪意的な展開と構成要因なんですよ。しかもそれが他ルートにも悪影響を及ぼしているから何重にも性質が悪いというべきか。

 そこに至る経緯にしても、七不思議を解決しなきゃ道は開かれない、なんてのも、どこでそれを判定してるのか全く不透明ですし、あの殺伐とした展開の中で、主人公のアーケンの用い方としても、一葉ルートと並んで突拍子もない能力の発現になっています。
 基本主人公のカードは特別製で、想いの力で何物にもなれる、というのはまぁこの手のゲームでお約束感はありますが、それを特に苦労もなく恣意的に発現出来てしまうというのは、一葉ルートもそうですけどどっちらけの要因になりますよね。しかも本当にその幅が広すぎてやりたい放題なのも拍車をかけています。
 ここでもミスれば死、なんて矯激的な条件を付加するための巻き戻し、という強烈な発現に至っていますし、謎解きそのものは結構面白かっただけに、その温度差が何とも勿体ないですよね、と。
 挙句あのタイミングでHシーン突っ込むのはあまりに無謀だったと言わざるを得ない。。。

 その辺コミコミで最終盤の対決も、盛り上がりというより悲壮感ばかりが先に立ちますし、ここまであれこれやっておきながら、いざ対峙すればしたらでのあまりにも茶番な展開で、約束された悲劇を踏み越えてなんとか目的に辿り着いたかと思えば、そこから更にエリサとの別れなんていういらん要素まで持ち込んでくるから度し難いというべきか。
 確かに元々は三学期一杯、というのは共通でも出ていましたけど、他のルートだと目的が達せられていないのかは知らないですが普通に新学期になってもいるじゃん、という話で(逆に遥くんだけはちゃんといないのがなんとも哀愁をそそりますが)、この辺こそ都合よくどうにでも出来るだろうと。

 そもそも自身が政争の具になることを良しとは思っていないはずですし、その火種になる時計を封印したとしても、それを見守る為にこちらに残る、的な選択を、上手く別口の理由をつけて紡ぐくらいは出来ると思うんですよねぇ。
 結局このルートに関しては徹頭徹尾敢えて切ない展開を企図しているとしか言えず、そこに構成面での必然性が感じられないから鼻白むし、誰がこんなビターエンドを望んだんだよ!って突っ込まざるを得なくなるのです。

 さて、エリサで長くなりすぎたので後はサクッとにしたいですが、一葉もフレームとしてはエリサと似たような問題を抱えています。
 アーケン利権を巡っての外部対立、というのは共通でも示唆されてはいましたが、それがこのルートでだけ勃発する理由づけが皆無の上に、そこに主人公の父親の問題を無理にこじつけているから構成が非常にちぐはぐというか、粗いというか。

 一葉を助けたい、という想いで風紀に移籍して、そこからの距離の縮め方やイチャラブ展開自体はかなりいい味わいだっただけに、余計にそのシリアスの唐突さと上げ底のスケール感が痛々しくはなるんですよね。
 元々本格的なバトルもの、という構成ではなく、特に主人公はそっちの資質は現状ほぼない、という中で、それこそ自分達に出来ることをコツコツ進めていったら、いつの間にか大きな危機の流れに巻き込まれていた、という段階的な構成であれば、まだ最終的にこういう直接ラスボスと対峙、というつくりでも納得はいきます。
 しかしこれは、危険とわかっている所に徒手空拳で特攻する無謀そのものであり、それを是認する周りもどうかって思いますし、それを一葉と結ばれてのかつての正義感・信念の再勃興の証・裏付けとして見せたいと意図したなら、尚更に軽率で浅はかな側面ばかり目立って逆効果にすら思えます。
 挙句その打破にアーケンの無限可能性を拡大解釈しまくったようなやり方で対処しちゃってるし、時間がない、という側面はあったにしても(それだって物語的都合だからどうにでもなるし)、あまりにも粗雑だったとは思います。

 まぁ光の剣召喚して快刀乱麻を断つ、とばかりに獅子奮迅の活躍をする一葉がカッコ可愛いのは確かですし、終盤の展開も実は糸を引いていたのは…………的なお約束構成で、このあたりは土台がしっかりしていれば盛り上がった事でしょうが、あまりにその存在が唐突過ぎる&伏線が雑すぎるのでなんともなぁ、というところ。
 まだしもみんなの力を糾合して大団円、という方向にこじつけてるだけマシですけど、やっぱりもうちょっと構成に工夫がいるだろうと。その偽アーケンの活用にしても、露見しないようにより隠微に、とか、或いは二人の行動がそれを加速させる要因を作るとか、最低限それだけでもイメージは違ってきたのに、とは思います。

 あとエリサほどではないけど、そのタイミングでえっちに雪崩れ込むの?ってのは相変わらず。せめて梢に、時間までは二人きりでごゆっくり〜、くらいの台詞を言わせておけって話で、あの飛び出し方でもし真っ只中に戻ってこられたらどうすんのよ、って話で(笑)。
 そもそも一葉に関しては、仮にも風紀のワンツーのくせにはじめてが風紀委員室、という時点でアレなんですけどね。。。ただこの舞台設定だと、腰を据えて事に及ぶだけの場所が少ないってのはあるんですよねぇ。
 これは優理の話ですけど、彼女のはじめても主人公の部屋に連れていってみたら相方がいなくて、なし崩し的に結ばれて、でしたが、これ正直めっちゃ冷や冷やするというか、してる途中で戻ってきたらどうすんのよ、と思って集中できなくなっちゃうんですよねぇ。
 これがせめて優理の部屋なら、優理のあられもない姿を見るのが朝陽って事になるからまだいいけど(むしろその時の反応を見てみたい&まかり間違って3Pに雪崩れ込んで欲しい。。。)、主人公にしたって最愛の彼女の裸を別の男に見られる危険性は考えろって言いたいわ。

 ともかく、全体的にHシーンの回数と挿入場面が画一的に割り振られている弊害か、安心して二人きりの世界でイチャエロ出来る、というイメージを持ちにくいシーンがやたら多かったのが勿体無いところですし、一葉はその筆頭格ではあったな、とは思うのです。
 そして梢ルートの分岐がない事に望陀の涙を流すしかない。。。良い妹キャラなのになぁ。

 耶々に関しては、物語としてのダイナミズムは薄めで、あくまでも耶々が抱えるかつての家族への複雑な想いの解消がメインになっています。
 その点で極端な外的要因は用いていないし、シリアスとしてもアクセントは弱めなので、7〜8章でイチャエロしつつ少しずつその内面の複雑さに触れていく、という流れも自然ではありましたが、ただ9章の構成は非常に雑でしたね。

 いくらなんでも主人公がようやく黙ってみているだけでなく、自分で腰を上げて解決を目指そう!と思い立ってフラフラしているところで、超ご都合的にその過去を知る相手と遭遇して、本人にも聞けないような話を聞き及んでしまう、というのは不誠実でもあり、適当に過ぎるとも思います。
 そしてその原因となる病気やら技術やらも裏付けのないブラックボックスですし、それと結果的に主人公のアーケンの拡大性や、耶々母過労設定とか必要だった?と思える乱雑ぶりで、心理の踏み込みも浅く色々な意味で稚拙だったなと感じます。
 上に書いた2ルートに比べれば減点要素は少なめですが、逆に加点要素も少ないですし、ここもやっぱりその雪崩れ込みHシーンでいいのかい?ってのもあったりで、最初にプレイしたルートですがこの時点で作品全体にあまり印象は持てなかったですね。

 雪ルートも似たような感じで、彼女が拘泥する悠久の場所にまつわるエピソードがメインであり、その拘泥に至った心理をほぐしていくのが主題になりますが、その割に心理的変遷の紡ぎ方が稚拙と言うべきか。
 ヒロインとしての可愛さは抜群なのですが、その裏側で色々我慢したり、得たものが愛しいほどに怖くなる、という特殊な心情をしっかり掘り下げきれていないので、いきなりフラッといなくなって、その世界観に主人公を巻き込もうとするメンヘラちゃん的な見え方が強く出ていて、このあたりは確実にもっと工夫・掘り下げが必要だった部分でしょう。幻のゲーム探しにあんな尺割いてる余裕があったらこっち補完せい、って感じ。。。
 まあ悠久の場所、という不可思議の塊要素を抜きにすれば、基本内在要因だけで話は完結していますし、筋道そのものは悪くないのですけど、やっぱり基本的にパンチが足りない話なのは間違いないと思います。

 最後に優理ルートですが、これとて他に比べればかなりマシ、というだけで、色々ファジーな部分は目立ちます。
 良い点としては、元々伏線として紡がれていた過去の生徒会の不祥事と、それに尾を引く問題を、本来の優理だときちんと仕事を回すだけで手いっぱいで解決に導く決意にすら至れないところ、主人公と結ばれその助けを得て、そこに踏み込む余裕と勇気を得た、という内的要因で完結している部分、かつそこにほぼ不思議要素が絡んでこない点です。
 結果的にそれを推進することで、臭いものに蓋をしていた状況から一時反発を呼ぶものの、その誠実さとひたむきさで事態に向き合っていく中で協力者も沢山現れ、理想の形での送り出しが出来るという、いかにも善人過ぎる優理らしい綺麗な結末に導けているのも読後感としては素晴らしいと感じますし、そこに踏み出すまでに、溜め込んだものを全て主人公に受け止めてもらう、という愛情の蓄積があるのも丁寧なつくりだったなと。

 ただ一方で、結局その過去の不祥事絡みに関する明確な説明や、結果としての現在が必然だったと思わせるだけの説得力はほとんどないんですよね。
 そもそも学園の生徒会で派閥ってなんだよ、って思いますしねぇ。なんとなくその派閥って語感で、古く融通の利かない因習、というイメージを確立させて、それで有耶無耶に押し切っている感じがしてなんとも、ですし、それを解体するためにああいう自爆作戦が本当に必要だったのか、というのも怪しいところで。

 勿論ただ告発するだけじゃそれを守る勢力は砕けないから、一度その派閥に取り込まれて内部から瓦解させる、という戦略性はわからないでもないですが、そうならそうでそこをしっかり浮気さんくらいは把握していて示唆して欲しいですし、その結果として色々と負い目を追ったり、いらない苦労をしょい込むことになった人が多数いるのもまた事実なんですよね。
 大体からして、優理は元々の生徒会の一員ではなかったはずなのに、どうして後継者に選ばれたのか、それ以前に元会長の朝陽の姉とどういう関係性だったのか、その辺が全く不透明なのも良くない点で、朝陽の傾倒も含めて、優理自身にその大任が務められる、と邑陽に信じさせる繋がりをきちんと組み込んでおくべきだったと思います。

 言ってみれば今の生徒会って貧乏籤みたいなものですし(笑)、その筆頭が優理と朝陽なわけで、朝陽はまだ身内の事ですからともかく、優理はその不条理を押し付けた相手に対してもっと複雑な思いがあってもよさそうなものなのに、むしろ尊敬してます、その理念を継ぎたいです、と全力いい子ちゃん過ぎるわけでねぇ。
 共通での事件に関しても、魔が差した、出来心、って話で済ませていいの?っとレベルのおいたをあっさり許しちゃうところはあり、あまりに女神過ぎて逆にどうなの?とすら思ってしまうわけで、そうある背景も含めての掘り下げ、時系列を含めた明確な裏付けがあれば、このシナリオはもっともっと心に響く内容に出来たろうに、と残念に思います。


★シナリオ総括

 以上、とにかく全体的に色々とっ散らかってて、総合してなにが見せたいのかがわかりにくく、かつ物語としての味わいもコクが足りないというか、奥行きが薄いというかで、最後までこの世界観に没入出来る感じがなかったですね。
 アーケンにしてもこのメーカーの風土としての特殊性だけにより踏み込みにくいところはあり、でも多分以前の作品やっててもそこまでこの世界観に馴染めてる気はしないんですけどね。アリアも体験版だけやったけどかなり粗雑だったのは確かですし。

 ともあれ、局所的に見れば評価できる部分もあるけれど、総合的に色々と乱雑で面白味も濃くなく、後味が宜しくないルートもあるのでなんともなぁ、という感じです。
 ここまで取っ掛かりがないと逆に点数にしづらいですが、良い点を最大限評価してもこのくらいが限界かな、というところですね。


キャラ(19/20)

★全体評価

 サブキャラ沢山でにぎわっているのはいいですが、どうしても一人ずつの掘り下げは浅く、また善悪の振れ幅も大きい割にそれを一括りにしてしまうようなざっばさ、気持ち悪さもあったりで、全体的に造形としてまとまりを欠くし、乗り切れない部分もあっのたで少し減点、という感じで。

★NO,1!イチオシ!

 最初に出てくるのが朝陽、って時点で色々どうかなって話です。。。
 まあでもこの子が一番癖はなくまっすぐ淳良で、かつバランスも取れていたと思うんですよね。あたりは強いですけど敬慕する相手には礼節もあるし、率直に自分の想いとも向き合えるいい子なので、是非攻略キャラにしてあげてください。。。

★NO,2〜

 優理は流石の安定感で可愛かったですね。ヒロインモードでの女の子らしさは抜群でしたし、実に王道ヒロインだったと思います。
 ただこの子の無限大の優しさの根源がわからぬままに進むので、その点シナリオの中でちょっと気味悪く見えたりしてしまったりもするし、バランスという意味ではやや善性全振りしすぎてリアリティがないなぁとは感じました。

 次いで梢になっちゃうかなぁ。この子もいい実妹ヒロインでしたし、それでいて一線を超える想いを抱くに足る経緯を持っているので惜しいなぁと。
 それ以外のヒロインもそれぞれに魅力はありますけど、めんどくささやシナリオ面での脚の引っ張りがあったりで、どうにもガツンとは来なかったというのが率直な所。


CG(18/20)

★全体評価

 美麗な絵柄ではありますし、当然可愛くて満足なのですが、やっぱり本質的にボイン特化ではあるし、シーンに入っての品性を崩すような構図を狙ってやってくるところで、私の好みとは噛み合い切らんなぁ、ってのはありますかね。量的にもちょっと足りないですし。

★立ち絵

 ポーズはヒロイン2種類にサブ1種類、腕差分もあるけれど躍動感はそこまで、ですかね。それぞれの個性に見合ったつくりではあったと思います。
 お気に入りは優理全部、雪正面、一葉正面、梢、朝陽、乃々花あたりです。

 服飾はヒロインで3〜4種類、サブで1〜2種類ですね。決して多くはないですが必要なものは揃っています、が、贅沢を言えば寮生活なんだしパジャマは欲しかったかな。
 お気に入りは優理制服、水着、一葉水着、耶々制服、私服、雪制服、水着、着物、朝陽制服、梢私服あたりですね。

 表情差分もそこまで多くはなく、遊びも含めて面白さはありますし可愛かったですけど特別感はないかなと。
 お気に入りは優理は大体全部、一葉笑顔、怒り、照れ目逸らし、雪笑顔、ドヤ顔、ジト目、耶々照れ焦り、苦笑、朝陽笑顔、ジト目、怒り、梢笑顔、てへぺろあたりですね。

★1枚絵

 通常82枚にSD10枚で計92枚、値段を鑑みるともう一押し欲しいかな、という感じで、特にみんなでワイワイってイベントは結構あるのだから集合絵は欲しかったです。
 質は悪くないですが、上に書いたように好みと合致しない部分もあり、特に、と言えるほどのものはなかったですね。


BGM(19/20)

★全体評価

 質量ともに素晴らしく、この作品で唯一手放しで賞賛できるポイント。
 非常に神秘的かつ抒情的な曲が多くて、ちょっと不思議な世界観を見事に下支えしているなと思います。

★ボーカル曲

 全部で2曲。
 OPの『春音*ベール』は爽快さと流麗さがしっかり表に出ていて、高音域のボーカルやコーラスの使い方が上手く、それでも耳に刺々しくなく響いてくるメロディラインの美しさと合わせて中々いい曲だと思います。
 EDの『ALICE GRADUATION』もかなりの名曲。
 こちらはしっとりした出だしでEDらしく、と思いきや、Aメロ後半から奔放な展開を織り交ぜ、サビでも一気に高音域まで突き抜ける鮮やかさを見せながら、全体の統一感は取れているという見事さ。シナリオ構成に爪の垢を煎じて飲ませたい(笑)。

★BGM

 全部で46曲とかなり豪華。正直リソースつぎ込むべきところを間違えてる気すらする。。。
 とにかくその分だけ状況に合わせて細やかに曲を設定できているし、ひとつひとつに奥行きがあり神秘性と透明感、荘厳さも付与されていて非常に耳に残る出来でしたね。シナリオがイマイチでも、曲の力で盛り上げていると感じた場面も多々ありました(笑)。

 特にお気に入りは2曲。
 『悠久のアリスグラム』は問答無用で神曲ですね。今年のBGMでもトップクラスに入ってくるのではないかと。
 とにかくピアノの主旋律が神秘的で壮麗で、それでいて哀切や郷愁も応分に織り交ぜ、それを全て公平に内容して想いに転化してくる感じで、汎用性も高く非常に耳に残りやすい、この作品を代表する曲だと思います。
 『未来完了形』も非常に素晴らしい曲です。
 こちらは受け入れがたい現実と向き合い、それを乗り越えていく強さと覚悟の尊さを刻み込んだ感じで、中盤の盛り上がりから終盤静謐さを取り戻すところまでの構成が絶妙であり、こりーれも大好きな一曲ですね。

 その他お気に入りは割愛。最近CGもだけど、特に、以外をわざわざ書く必要ってないかも、と思い始めてきたので。。。


システム(8/10)

★演出

 そこそこ頑張ってはいますけど全体的にもっさりしているし、カットインに頼り過ぎている部分もあったりで、あまりパッとはしないですかね。
 情景演出もそこまで後押しできるほどの迫力はなかったですし、ムービーなども普通の出来なので、総じて可もなく不可もなく、ってところです。

★システム

 こちらは比較的豪華というか、色々面白い機能も搭載しているなと。
 勿論必要最低限はしっかり完備した上で、お気に入りボイスとかプレイ時計とかは中々実用性があると言えばあるし(使わなかったけど。。。)、やっぱりちょっと動作が重い気はするけれど全体的に悪くはないです。
 しかしゲーム内の時間表記の管理が甘すぎるのは、シナリオの責任もあるでしょうけどもうちょいなんとかしようよ、とは思いますけどね。


総合(78/100)

 総プレイ時間22時間くらい。共通が7時間、個別が3時間ずつという感じですね。
 全体尺としては結構しっかりあるのですけど、いかんせん個別がパラレルなくせ、共通にその伏線を無造作に全部突っ込む雑仕様ですし、繋ぎに無駄な部分も多いのでなんともですね。
 個別の構成もスムーズとは言い難く、時間の割に中身はない感じで、正直プレイ中に入り込めずしょっちゅうウトウトしていた私がいる。。。つまらない、とまでは断言しませんが、これだけ時間をかけてこのシナリオはなぁ、とは思います。

 まぁ絵とCVは期待通りの威力でしたが、といって期待以上ではなく、むしろキャラの魅力をシナリオが足を引っ張って減衰させているところもなくはないので、その辺は難しいですね。
 まぁ基本的にはあまりお勧めは出来ない一本、という感じかなと。
posted by クローバー at 04:24| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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