2017年08月01日

美少女万華鏡 −神が造りたもうた少女たちー

 発売当時は色々事情があってスルーしてたんですが、新作の罪と罰がやりたかったので、念の為先にこちらをやっておこうと。

シナリオ(20/30)

 人らしくある為には。

★あらすじ

 発達し過ぎた文明の果て、人とAIの争いで壊滅的な荒廃が訪れた黄昏の時代の物語。
 主人公は旧文明の遺物である象牙の塔とも言える場所で、AIの教育係にたっぷりと愛情を受けて育つものの、そのせいかこの時代に生き延びた人間との価値観がまるで違ってしまいました。
 AIのマザーが、主人公こそ人類の希望で救世主と持て囃すため、自分でもなにかは出来るはずと、塔に残されているオーバーテクノロジーを駆使して作物の品種改良などに取り組むものの中々結果は出ず、マザーが停止してから並行して行っていた、近隣の村との交流もぎこちないものが続いていて。

 その中で、幼い頃からの憧れであった旧世界のロボットの復元に成功した主人公は、その従順な相手を練習台に、コミュニケーションを学ぶつもりでしたが、初期設定のすれ違いや、感情のある強いAIであることなどから、生まれてきたアリスは傲岸不遜で、極度の意地っ張りで、ちっとも主人公の言う事を聞きません。
 アリスに散々手を焼いた主人公は、改めてもう一体ドロシーというロボットを復元し、こちらはほぼ狙い通りに設定されたものの、こちらも物言わぬ視線の中に様々な想いがあるようで、元々対人能力の低い主人公には手の余る存在でした。
 命令システムなどを濫用して強引に身体を奪ってしまったりもしつつ、しかしそうやって想いを交わし、ぶつかり合う中で、少しずつ本音と建前のズレに気付くことが出来るようになり、やがて二人とも想いが通じるようになるものの、それはそれでまたひとつの新たな火種の発端でした。

 アリスとドロシーという、二人の可憐なAI人形の想いは、それこそほぼ人間のそれと変わりなく、むしろ存在意義を狭めて作られている故により一途で、強固で。
 果たして主人公はその想いに対しいかなる答えを出すのか?
 そしてこの時代における禁忌を行った事が、本来為すべき人間との交流にいかなる影を落とすのか?

 これは沢山のすれ違い、ままならない想いに直面しつつ、この閉塞した世界で自身の生き方を、希望を見出していく物語です。

★テキスト

 全体的にバランス良く、ままならない幼稚な心理描写と葛藤の書き方は相変わらず上手で、今回は世界観設定の説明やそのおどろおどろしさに関しても中々に真に迫った描写が出来ていると感じました。
 一方で相変わらずえっちぃシーンでの卑語モードの行き過ぎ感はあって、その辺は人それぞれの趣味的な要素でしょうけど、やっぱり私としてはそれがすごく嵌る、グッとくるということはないんだなぁと。このあたり好きと苦手がくっきり二分化しているんですよねぇ。
 ただ今回は、ヒロイン設定にセクサロイド機能搭載、という要素があるので、必然的に求められれば応えてしまう、という意味での自然さ、説得性は付与されていたと思いますし、それは多少なりプラスに評価したいところではあります。

★ルート構成

 それなりに選択肢も多く、エンディングもそこそこ用意されています。
 基本的にはアリスかドロシー、どちらか一人を選ぶのが正道、という形で、それ以外のハーレムや浮気的なルートもありますが、そこでは本筋の問題には絡まない、その上でシナリオ構成に合わせた示唆的な結末が用意されています。
 選択肢自体は何も難しいところはないので、基本的には二人のうち好きな方を選んでいれば、というところですね。

★シナリオ

 文明の発展で一度破滅したあと、という世界観設定が中々に面白く、その中で一人だけ、人間でありつつAIに育てられて、それこそ鳥籠育ちのお嬢様宜しく、世故を知らないままに成長してしまった主人公の、それでも想いを交わせる仲間が、相手が欲しいという切実な願いを根底としての交流記、という趣です。

 マザーが起動している内はギリギリバランスを保てていた主人公の内面が、彼女が停止して完全なる孤独を実感することで暴走し、人を求め、ついには禁忌のロボットまで求めていく――――そのあたりは一種狂気的な側面も感じさせつつ、けれど性格的にはどうしても迎合的で、相手の気持ちが全く理解できない故の恐怖に常に苛まれていて、そのアンバランスさがシナリオの味わいにいいスパイスとして発現しています。
 アリスやドロシーにしても、本来細かく用途分けされていたAI人形、という大前提はあり、けれど感情もあるから、本来の存在理由と乖離した命令に対する拒絶感や不満というものは相応にあって、その幅がより大きいアリスの情緒の幼さは顕著ですし、ドロシーの面従腹背のような気配も決して心地いいものではなく、中盤くらいまでの息苦しさはかなり顕著です。

 けどそれもたがいに想いがあればこそのすれ違い、というのも確かで、きちんと赤裸々に想いと向き合い、本音でぶつかり合うことでスッと分かり合えるのは、逆にそれだけ機微の面での蓄積がなく、純粋無垢だからこその一足飛びの関係性構築、とも言えるのでしょう。
 そのあたりを鑑みれば、結局主人公は生育環境によって、AI寄りの精神性を強固に紡いでしまっているとも言えて、それが要所においてこの時代の人との決定的な断絶となってしまう、という悲しさもある物語です。

 村の人は村の人で、それこそ中世的な閉塞感・抑圧的な世界の中にしか自己を確立できない上、阿片的な宗教に頭を抑えられてしまっていて、そこから逸脱している主人公に対しどこまで受け入れていいかわからない、という面があり、まだ進歩的な存在であるリリィとの触れ合いでもそれは顕著になっていて。
 アリスとドロシーと想いを通わせたものの、二人は二人で、どちらが本当の意味で一番か、人らしい恋的な面での寵を競い合うようになっていて、家族として二人の存在を規定した主人公にとっては、またその飛躍についていくのは勇気が必要なことであり、その逃げ場、止まり木的にリリィの店を活用する中で、フラッと彼女に靡いてしまうそれ自体はまぁ、とは思います。
 ただこのルートでは、その後のHシーンで既に破綻が発現していて、主人公の存在がもはや人間よりAIに近しいものである、という事を露骨に示してしまっているのが痛々しいですね。

 結果的に二人とも選ぶハーレムが、表面的には一番穏やかではあるものの、そこには発展的な要素も皆無なので、それはそれで、となりますし、その上での二人の本筋ルートも中々に熾烈なもので。
 過去の真実とかそのあたりの真に迫ったつくりも中々に面白かったですし、結果的に善意で為したことでも、未知の恐怖はすぐにそれを悪意にすり替えてしまうという悲しい現実の中に、もっとも分かり合えず愚かで度し難いのは盲従的で思考停止してしまっている人間に他ならない、というシニカルな表層を提示していて、なんとも切ない話になっています。

 その中で一番大切なものは、と、自己犠牲を厭わずに突き走る主人公は、ここで確かに人間としてひとつ成長した感はありますし、それがラストの、失敗しても全てがダメになるわけでなく、希望の芽はいたるところに芽吹いている、というまとめに繋がるわけで。
 そこでの相手となるのが、本来この世界で疎外的な存在、というのも、そうであればこそ様々な現実に対峙し、抵抗を示してきた逞しさの象徴的なものではあり、人が生きる、という事の意味や難しさを改めて感じさせる余韻のあるラストになっているのかなと思いますね。幸せの意味や自己の存在価値を、外的な部分に担保させていてはいけません、という教訓譚的な色合いも強いですが、それ以上に抒情的な雰囲気がこってりと滲み出る作品です。

 ヒロインシナリオに関しても、それぞれの個性をしっかり反映させた耽美的で、けれど純情一途なバランスをしっかり保ったまま進めていて、特にアリスなどは前半の挙動や言動にきついものはありますけれど、概ね可愛らしくえっちく素敵なものに仕上がっていたと思います。
 より大枠的な部分でも少しく進展があったようですし、全体として物語としては今までのシリーズの中で一番好きかな、という感じはありましたね。


キャラ(19/20)

★全体評価

 どうしてもシナリオの性質上仕方ない、のはあれ、あたりのきつさとかすれ違いの空疎さとか、必要とわかっていても辛いよ!ってのは結構あるし、それがキャラの欠点と直結していて痛々しい、というところもあるので、リアリティ的な意味ではともかく、キャラ性の魅力という視座ではどうしてもマイナス要素は結構強いぞ、とは感じますね。
 最終的にその溝を完璧に埋めきって大団円、という体でもないのがまたそれに拍車を掛けますし、この点ではちょっと割り引きたいかな、とは思います。

★NO,1!イチオシ!

 私の趣味嗜好的にそりゃあドロシー一択です。。。
 クールで理知的な雰囲気を保ちつつ、内面では激しい想いを常に持っていて、それが発露した時の温度差が凄く魅力的ではありますね。
 アリスに対して非常に抑制的な分、逆に不気味さも醸しますが、それでもストレートに想いそのものはぶつけてくれる、という点でも、アリスの失敗を踏まえてのイメージはあって、基本的に可愛らしく素直で善良で親切でもあり、いいなぁこういう子に傅かれたいなぁ〜、とか碌でもない事を考えてしまうくらいには好きですね。。。

★その他

 アリスもそりゃあデレてからは可愛いですけどそれまでがきついし、このギャップの激しさは一作目のヒロインをちょっと思い出しますね。
 リリィはいい人だとは思うけど、結局自分の価値観の中でしか生きられない部分はあるし、でもあの村の人間は神父の犠牲者的な側面もあるから難しいんですけどね。

 そして神父アホだなぁ、というか、細分化された宗教はどうしたって矯激さを増すし、理知的に見えて狂的な面が強く出てしまうものだというのを顕著に体現していて、もっとも主人公達が現れなければそれはそれでひとつの発展性のないオベリスクとして、最低限の幸せを担保しつつ歩んでいけたかもしれないのでなんとも、ですけどね。


CG(20/20)

★全体評価など

 流石に素晴らしい出来で、耽美さと可愛らしさが同居した雰囲気はいつもながらにぐいぐい世界観に引き込んでくれます。
 立ち絵素材も豊富ではないものの、特にアリスとドロシーの可愛らしさや性格の違い、雰囲気をしっかり担保したものになっていますし、1枚絵も全部で57枚と値段を考えれば破格の量で、文句のつけようはないと思いますね。

 特にお気に入りはドロシーのお風呂場正常位と、制服フェラかな。基本的にどれも可愛いしエロいですけど、特にこの二つが好きです。
 ただドロシーに関しては、ムービーシーンの使いどころと、黒ストHの出番がほとんどなかったのが無念ですかねー。


BGM(18/20)

★全体評価など

 どこか退廃的でありつつ、透明感のある曲が多く揃っていて、かつ世界観のおどろおどろしさ、不安感も同時にしっかり加味されており、全体的に凄くしっかり構築されたBGMだと思います。
 ボーカルは新規だったのかちょっとわからないですけど、すごく幽玄で掴みどころのない雰囲気がこの作風にピッタリでしたし、BGMも27曲とかなり多く、新規は20曲ちょいとは思いますがそれでも十分な出来でした。

 特にお気に入りは『虹の彼方の少女』と『Lachrymal』ですね。どちらも凄く純粋な存在感や悲しみが感じられて素敵です。


システム(9/10)

★演出など

 全体的にしっかり動きますし、情感演出や世界観の雰囲気づくりの一環でアニメーションを導入したリと、意欲的なイメージがありますね。
 無論それらがしっかり有機的に噛み合っていい味を出していますし、いつもながらHシーンムービーも出来が良く、値段以上の満足度を得られる内容になっていると感じます。

 システム面も特別なものはないですが必要なものは揃っていますし、プレイ感として不備はなかったと思います。


総合(86/100)

 総プレイ時間8時間くらいですかね。
 駆け足気味とはいえシナリオの骨格もしっかりしていますし、それがもたらす悲嘆と、一方で象牙の塔の中での淫靡で耽美な日常とのバランスが程よく、やや感情面での尖り方が顕著な分辛いところもありますが、総じて安定したいい出来だと思います。

 あんまり過去作評価してなかったんですけど、改めてこれやってみると面白かったなと素直に思えましたし、新作も楽しみですね。
posted by クローバー at 04:23| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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