2017年08月29日

美少女万華鏡 −罪と罰の少女−

 今回は双子の姉弟もの、というコンセプトがちょっと面白そうだったので、改めて3作目の予習もしてこちらの購入。

シナリオ(22/30)

 たったひとつの冴えたやり方。

★あらすじ

 主人公は長らく、家庭内の問題などの影響で心身を病み、入院生活を続けていました。
 けれど、そろそろ回復の兆しが見えるということで、双子の姉の夕莉が迎えに来てくれて、新しく引越しした家に住まう事になります。

 その新しい生活は、主人公の心を浮き立たせずにはいられませんでした。
 何故なら主人公は、自分と瓜二つの美しい姉に、道ならぬ思いをずっと抱き続けてきていたからです。
 すぐ傍に姉の夕莉がいる生活は、一方で父親には虫けらのように疎まれているのを改めて実感してしまう事を差し引いても素晴らしいもので、しばらく自宅療養を続けている間、姉の部屋に忍び込んでは倒錯的な遊びに興じるのが日課になっていました。

 しかしある日、よんどころない理由で早退してきた夕莉にその現場を見つけられてしまい、絶望に打ちひしがれる主人公ですが、しかし夕莉もまたそんな主人公を毛嫌いせず、むしろ背徳的な悪戯を仕掛けてきて。
 その上で、その弱味を盾に、いつでも一緒にいるための名分として、主人公に女装をさせて自分の通っている女子校に編入することを要求し、自身の女装姿を見た主人公も、これならと思い、何より夕莉の傍にいられるならとそれを渋々ながら認めます。

 かくして始まった、嘘と打算に塗れた新たな学園生活。
 その中でクラス内でどこか浮いている少女達との交流が生まれ、僅かながらに友情めいたものが芽生えたり、しかし時には残虐な牙が主人公の身に降り掛かったり、波乱を伴う生活の中でも、やっぱり二人にとっての最優先は、互いに一緒にいることで。
 その為の阻害要因は、どんな手段をもってしても取り除く――――そんな夕莉の強い意思から、自分に向けられた強い愛情を確信した主人公は、自身の傷をも利用する形で、禁忌の一線を飛び越えていくことに成功します。

 果たして二人の想いは成就するものなのか、それを妨げる諸悪の根源に対し、どんな思いで二人は立ち向かい、克服していくのか?
 これは、複雑な家庭環境が生成した二人の強固な絆の証を示し、今までの関係性から飛躍した結びつきを形成していく、純真なる背徳の物語です。

★テキスト

 今回は作品全体に中原忠治の詩情がエッセンスとして塗されていることもあり、全体としてどこか優美がつ幽玄で、当然いつもながらに退廃的で耽美な雰囲気とも咬み合わせながら、中々に格調高く仕上がっていると思います。
 といって決して文飾過多でリズムが悪い、ということもないですし、相変わらずエロスなシーンになると違う意味で文飾過多になるのは私的には苦笑いですが、それでも読み物、としての面白さは過去シリーズと引き比べても一段上のステージにあるのではないかと感じました。素直に面白かったです。

★ルート構成

 基本的には一本道で、時々主人公の想いの純粋さを試されるような罠が仕掛けられていて、他のヒロインのルートはその脱落バッド、という形で紡がれます。
 単純に夕莉に一途であれば問題なくクリアできますし、分岐の形式としても物語上の主人公の特質にフックがあって、そこに引っ掛かってきたもの、という位置づけでの、ふらりと流されてしまう悪徳になんとはなく納得できる構成にもなっています。

 最後の選択肢だけルート分岐、というか、結末の分岐があり、ただその内容自体は一緒で、見え方だけが変わっている、という面白い構図になっており、より深みがある方では、きちんとそこまでの伏線を生かしての展開が紡がれていますので、そのあたりも中々に良く考え抜かれているなと思いましたね。

★シナリオ(ネタバレ)

 フレームをぼやかせて語るのも難しいですし、最初からネタバレにしちゃいます。

 基本的には凛々しく気高く強い憧れの姉と、気弱で情緒不安定な弟、という組み合わせで楽しめる、二人の優美で姉主体の触れ合いを、序盤から中盤くらいまでは丹念に楽しむことが出来ます。
 父親との関係性や、学園での不祥事などでも、率先して身を張り、夕莉は主人公を助けてくれるわけで、そんな自分を不甲斐無いと思いつつも、ますます倒錯的な愛に転げ落ちていく主人公のありようは、みっともなくはあってもその想いに関しては淳良だと感じさせますし、そして一線を超えることでその関係性は少しずつ変化をもたらしていきます。

 姉に対しての主導権を多少なりセックスの中で獲得していき、そうなることで生来的な気質が頭をもたげる中で、家庭環境故に保持していた被虐性と、生得的に持っていた嗜虐性、その両面での揺らぎを試される、という意味で文芸部ヒロインが介在している、という構図は、特にいちかに対しては、最初に見るとその急激な変化に違和感がありますが、最後までクリアするとなるほど、と頷けるものがあります。
 まあ当然そういう火遊びの末路は悲惨なものではありますし、けれどそういう魔が差す感覚、人としての弱さを決して捨てきれているわけではない、主人公の冷徹さと裏腹のみっともなさも含めて、この作品の耽美な印象をより鮮やかに彩っていると言えるでしょう。

 物語が後半に進むにつれて、それまで完璧な姉であり、主人公の保護者として恙なく様々な阻害要因を退けてきた夕莉とても手に負えないくらいの諸々が襲い掛かってきて。
 先生の復讐も当然ながら、やはり一番の障害は父親であるのは明白で、しかし本当にここでの家族環境のハチャメチャさはなんともいえませんね。無論この父親が善人とは言いませんが、しかし色んな意味で主人公側に流れる血の魔力に翻弄された被害者的な面もあるのは間違いないでしょう。

 既に死した主人公達の母親に対する思慕を拗らせた中で、その破倫の象徴たる主人公を毛嫌い、一方で同じ血を持ちながらも、母親の現身としての夕莉に対する想いはより卑近なものへとすり替わっていく、その追い詰められていく心理と変貌にはおどろおどろしさがありましたし、いつかはそのバランスが崩れるのも必定、と感じさせる狂気が最初から蔓延っていたのは確かで。
 それを退ける上で、夕莉の身を心配して追い掛けた先で危険な場面に遭遇し、自分の手を汚すことで、夕莉が実は内心で抱え続けた葛藤や後ろめたさを真の意味で共有できる存在になる、というのは、最初にプレイした段階ではそれでも十分になるほど、と納得できるものはありました。

 しかし二周目の、一連の事件の黒幕が実は主人公で、それぞれの心理を手玉に取って、最終的に守るべきものと壊すべきもの、その目標を明確にし、冷徹にそれを遂行してのけた胆力には寒気がしましたね。
 一応それでどちらに触れても辻褄が合うようにバランスがとられていますし、けれど最後の場面での白痴の幸福、の主体がどちらなのか、という部分では明確な差が出ていて、その中でより、夕莉という少女も確かに強く、そして道ならぬ道を進む上での覚悟を定めているけれど、主人公はもっともっと壊れていた、というのが証明されるわけですね。

 にしたって、周りの阻害要因などいつでも取り覗こうと思えば簡単に出来る中で、自分の身を挺いてでも、本来の最大目標、夕莉から姉、という心理的上位要因を剥ぎ取ることに邁進した事は凄みがありますし、猟奇的でもありますが、でも確かにその姉としての矜持は、本当の意味で主人公の虜にする、という意味では一番厄介なのにも理解は及びます。
 どちらにせよ血の禁忌を継続していく上で、最初の周のように共犯者意識が対等で終わってしまってはそれを乗り越えることはできないからこそ、扇動者として実質的には父母、それに叔父まで含めて復讐は果たしつつ、その負い目を全て夕莉に背負わせるあたりは冷酷で、目的のために手段を択ばない残忍さ、嗜虐性を確かなものに見せますね。いちかとの関わりが納得できるのもここを理解してからになるでしょう。

 最後に生まれたのが双子なのも、遺伝子的な意味での血の乱脈、不逞の宿業の連鎖を象徴的に示していますし、その点ではやっぱり外部存在だった父親のとばっちり感はあるなぁと。世界が自分達の血だけで完結する、そんな狂気のサイクルの中でこそ見られる、切なくも狂おしい恋模様・人間模様だったと思います。
 勿論物語として駆け足気味な所、そういうシーンを優先して肉付けが足りない部分もないとは言いませんし、終始気持ち良く楽しめるタイプの構成でもないのは確かですが、物語性の高さと中也の詩を援用しての繊細な心情の裏付けなどは中々に見事で、このシリーズとしてはいちばん高い評価をしたいなと思いますね。



キャラ(19/20)

★全体評価

 キャラとしては非道そのものだったり、自身の愉悦や感情に正直過ぎたりと、どうにも雑味が強い味付けではあり、相対的に夕莉の高潔さと苛烈さが程よく引き立てられている、というのはあれ、総合的に魅力的なキャラが揃っていた、とは言いづらいですかねぇ。
 ピカレスクとしての味付けも半端で卑小ではありますし、主人公自身がある意味では一番の爆弾になっているわけで、どうしても夕莉一人でその印象を覆すほどの破壊力は引き出せないよなぁと感じます。

★NO,1!イチオシ!

 夕莉しかいない、というのが実情ではありますが、勿論消去法ではないところでの夕莉の魅力はたっぷりあります。
 あくまで主人公限定のところはあれど、ひちすらに優しく包容力があって、その想いになら全て報いると決めているありようは中々に気取っておらずに素敵でしたし、主人公を弄ってほわわんとしているのも可愛いものがありました。
 その上で、恋愛を進めていく中でまた違った等身大の少女としての可愛さも見えてきますし、気を張っていてもまだこの子は一線を踏み越えていない普通の少女なんだ、という部分も見えてきて、それだけに最後の展開でああも手玉に取られているのは痛々しさはあると言えばそうなのですが、それでも望む形での未来は得られているし、或いはそれもわかって受け止めている、とも見做せるので、やはり印象深く魅力的なヒロインに仕上がっていたとは言えるでしょう。


CG(19/20)

★全体評価

 今回も非常に優美で幻想的で、そして淫靡な絵柄で大変に良かったんですけれど、神少女に比べると単純に枚数は減ってしまっている(それでも値段踏まえれば充分過ぎるんですけれど)のと、抜群にグッと来たのがそこまでなかったのもあって、ちょっと引いておこうかな、と。

★立ち絵

 基本的にはポーズパターンも服飾も夕莉がメインであり、得に私服やパジャマなどは可愛かったですね。
 表情差分も夕莉以外はさほど多くないですし、夕莉にしても多彩な表情を見せてくれるのは後半になってから、というのもあるので、そのあたりでの印象はあまり強くないなという所ではあります。流し目とか実に可愛いですけどね。

★1枚絵

 全部で38枚。量的にはこれでも充分過ぎるくらいですし、質も安定して高く、綺麗でエロいです。

 特にお気に入りは夕莉の寝転がりキスモーションと、お風呂場バックくらいかな。これはどちらもモーション付きで反応のエロさ、肉の震え方のバランスが素晴らしかったと思うのです。


BGM(17/20) 

★全体評価

 今回は格調高い雰囲気を助長するように、クラシック系のBGMで統一されていて、それ自体は素敵です。
 ただ実際のクラシックの流用度がかなり高く、あまりそちらに造詣がない私としてはどこまでがそうなのか線引きは出来ないんですが、少なくとも半分近くは私でも聞いたことはある、って曲なので、その点での新味は薄いのかなと。
 勿論アレンジやらなにやらで独自性は出ていると思いますし、使い方そのものも上手なので極端な割引要因ではないですが、ってところですね。

★ボーカル曲

 EDは新規ですよね、ただ回想に登録されてないので聴きこみにくく、タイトルも拾い忘れたのであくまで印象だけ、ただこれまでのEDに比べると退廃的な中に前向きさや力強さが感じられて、それは大枠の中での変化にもつながる要素なのかな、と思ったり。曲としても結構好きになれそうな感じではありました…………が、敢えて聴きこむ時間を作るか、と言われるとうーん、ですけど。。。

★BGM

 全部で28曲とかなり多いですが、上で触れた通り半分近くはクラシックそのものとは思うので、実質新規で評価するなら値段相応、って所に落ち着くのかなと。
 個人的にアラベスク超好きなので、それだけでも結構テンション上がる構成ですけど、まぁ特別に凄い、というほどのものはなく、全体的に荘厳で優美ながら、どこか哀切も孕んだ雰囲気の統一感は良かったと思います。


システム(9/10)

★演出

 いつも通りの仕上がり、というところで、贅沢な話をすればいつももうちょいモーションシーン欲しいよなぁ、って思うのだけど、今回は結構好みの構図で組み込まれていたのでその点は良かったです。上でも触れたけどあのディープキスのモーションは中々画期的かつ扇情的で素晴らしかったと思います。

★システム

 こちらもいつも通り、必要なものはありますし操作性も簡便で問題なし、ですね。


総合(86/100)

 総プレイ時間8時間くらい。
 全体的にしっかり引き締まっていて、緊張感と耽美な雰囲気が絶妙のバランスで絡み合う、このシリーズらしい雰囲気に文学性が彩られた面白い作品になっていると思います。

 オチのつけ方などは、これまでの作品より逆に攻めている感じもあり、けれどこの設定でこの二人のありようからはそれが決して不自然ではないところに落ち着いていますし、総合的にスケール感を上げてきたなと感じます。
 いつもながらに、出だしの2人のやり取りさえ気にしなければ、シリーズ過去作をやらずとも楽しめる内容にはなっていますし、禁忌の近親相姦の背徳性にときめく人や、夕莉のデザインが気に入った人なら、普通に楽しめる内容にはなっているのかなと思いますね。
posted by クローバー at 08:31| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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