2017年10月24日

桜ひとひら恋もよう

 体験版やっていつものパラソルだなー、って感じではあったけど、また面白い妹設定を作ってきてそこに期待出来たのと、あと千歳が見た目超好み+小鳥居さんで強力だったので押さえておくかー、という感じで。

シナリオ(16/30)

 妹以外がなおざりやん。

★あらすじ

 主人公は母一人子一人の過程で生まれ育ち、まだ幼い頃にその母の死に目を看取ってからは隣の家の高澤家のお世話を受け、特にその娘の美綾とは姉弟同然に育ってきました。
 高澤家のおかげで世を拗ねずに真っ直ぐ育つことは出来たものの、大切な家族を突然失う恐怖はトラウマとなって主人公の心に深く根付き、そのせいかずっと変わらない思慕を向けてくれる美綾の想いにも応えようとはせずに日々を過ごしていました。

 しかしある時、偶然同じ塾になった紗矢に対して運命的なものを感じ、向こうも幸い此方を好いてくれて恋愛関係に発展するものの、決定的な繋がりを得る前に、沙矢の父親に会いに行った時、主人公の運命は一気に暗転します。
 その父親は主人公を見るなり、主人公が認知していない自分の息子である事を口にし、つまるところ兄妹の関係となる紗矢との交際は決して許さないと豪語し、実際にそれに見合うだけの法的な措置まで取ってきました。
 出会う事すら難しくなる中で、紗矢の、これ以上主人公に傷ついて欲しくないという言葉に心が折れ、想いをずっと残しながらも鬱々とした日々を送るしかなくて、毎度のように何も聞かずにただ甘やかしてくれる美綾の想いにも報いる事はないまま無情に時が過ぎていきます。

 そんな風に燻っていたある春、主人公の通う自由な校風が売りの桑都学園は、経営難によって、今時時代遅れな厳罰主義と規律正しいカリキュラムを謳う北条学園と合併するのでは、と囁かれるようになります。
 奇しくもその学園は、紗矢との仲を引き裂いた憎き実の父が理事長を務めてもいて、それだけで剥き出しの反発心が疼くものの、けれどなにか自分から動く、そんな気概を主人公はどこかに置き忘れていたのです。

 けれど、桜の下で懸命に合併反対を訴え、チラシを配っている桜花の姿を見た時に、このままじゃいけない、と奮い立つものがあって。
 理事長の孫で、未だ小学生ながら次期理事長を自称する桜花を支える、という形で、主人公は合併反対運動に名を連ね、引いては数年越しに、かつて力でねじ伏せられた実の父への反逆を開始します。

 その活動には既に、主人公のクラス委員長で、誰よりもこの学園の校風を愛し、合併に憤っていた芳野が既に参加を決めていて、そして主人公がやるなら、という事で、当然のように美綾も力を貸してくれることになります。
 また今年の新入生で、近すぎる関係にあるのに男女の仲ではない、という不思議な立ち位置の主人公と美綾を、自身のテーマである恋愛研究のモチーフとして扱いたい、と考えている不可思議な少女・千歳も、すぐ傍で二人の関係を見られるなら、と取引する形で活動に手を携えてくれるようになって。

 更には桜花の手引きにより、合併相手の北条学園の生徒会長も参加してくれることになったのですが、その相手はなんと、かつて引き裂かれた最愛の恋人にして義理の兄妹でもある紗矢なのでした。
 手放しで再会を喜びたい主人公でしたが、紗矢は今は二人の関係を極力伏せておきたいようで、ツンツンとした態度で接してきたため、そんな素振りから改めて、一度二人の関係は終わってしまったんだ、という事を主人公は痛感する事になります。
 かくして様々な思惑を持つ面々が集まり、北条学園の親玉である主人公と紗矢の父親、更にその母体となる組織の悪辣な所業を世に知らしめ、壊滅される事によって結果的に合併を頓挫させるという作戦が火ぶたを切って落とされたのです。

 主に紗矢が立案する様々な策戦に従って、時に危険も伴う活動に従事しながら、主人公はそこで色んな女の子の素顔と、今まで良く知っていたはずの女の子の意外な面を垣間見ていく事になって。
 それは今までにない積極的な気持ちを呼び起こすものでもあり、それを大切にしつつ、まずは目的を達するために全力投球を繰り返す事となります。

 果たして彼らは、首尾よく最大の目的である合併阻止に至れるのか?
 それを為した時、主人公の心はどこに向かっていくのか?

 これは、ひとひらの桜の願いが凝っていた主人公の想いを動かし、新たな絆を紡ぐ契機となる、爽やかな愛と絆の青春物語です。


★テキスト

 全体的に雅飾が強かったり、情緒面を殊更に強調したリと比較的癖は強めですが、極端に読みにくいというほどではなく、どちらかというと必要な説明を置き去りにしても感情面のあれこれをメインに据えてくる感触があるので、テンポ自体はスルッとしていて、読み口はまぁ普通、というところです。
 多分恋愛日常の妹シナリオの人が今回は共通も書いてるっぽいけど、流石にあれだけ特化的なインパクトは薄口に仕立てて、その分幅広くキャラ性をしっかり盛り立てることに成功はしているかな、と思います。

 読み物として上等かはともかく、触れ合いの中での機微の拾い方や掛け合いの面白さ、ほのぼの感は独特の味わいがあって好きですし、個別は違うライターさんもいるので大分違った雰囲気にはなりますけれど、総合的には極端ではないけど個性のある、けれど破綻はしていないテキストにはなっていますね。まぁ正直色々肉付けが足りない、と思う向きはありますが。


★ルート構成

 色々思わせぶりな背景を持つヒロインが二人もいるくせに、ヒロイン選択肢自体は非常に画一的で、気になるヒロインを都度都度に追いかけていくだけ、というシンプルなものです。
 誰か一人クリアするとロックが解放され、ヒロイン毎の後日談に、パッチを適応する事で桜花・若菜のミニストーリーを楽しむことが出来ます。

 基本的には味も素っ気もないつくりで難易度もないに等しいですし、ルートロックもないので誰からでも構わないっちゃ構わないのですが、純粋なシナリオの出来としては紗矢が図抜けていると思うので、これを最後にするか、或いは思い切って最初にやってしまうかのどちらかが推奨、ですかね。


★シナリオ(大枠)

 結構体験版の範疇では面倒くさい厄介ごとに首を突っ込む形になっていますが、その時点でも既に茶番的な色合い、あくまでもヒロイン達が一堂に会して活動をする場を作る為だけの活動、という雰囲気は滲み出ていました。
 実際体験版を抜けてすぐに、主人公は紗矢から決定的な証拠を握る為の活動を依頼され、それを達成する事で敵は壊滅、元来の目的である合併阻止という最低限の目標はあっさり達成される事となり、そこから先は純粋なイチャラブシナリオ、という、割り切りがかなりはっきりした構成になっていると思います。

 ただ、その共通ラストの展開でヒロイン確定イベントも同時に兼ねるというかなりの力技を駆使している事で、その淡泊で画一的なつくりが後々の個別での味気なさや整合性の面での疑問を生んでいる側面はあり、正直このあたりはかなり雑だなぁ、と感じました。
 勿論延々と合併運動でシリアスを引っ張って欲しい、と思わせるほど、その中身にしっかりとした土台を組み立てている作品ではないので、イチャラブメインに早々シフトしていくのは悪くない発想ではあると思うのですが、それにしても取り落としたものはかなり多く、そのあたりのフォローをルート間で擦り合わせることのないまま突き進んでいるので、ルート毎の温度差や矛盾が結構見えてしまうのは勿体ないところです。

 一応メインである紗矢だけは、最低限の共通からの余波をしっかりクリアしつつ、生き別れの兄妹としてのらしい恋物語を綴っていて、かつオチもそれなりにしっかりしたハートウォームストーリーに仕上がっていると思いますが、他は尺的にも質的にも、ヒロインが可愛い、という利点以上にシナリオが雑過ぎる、という難点が目に付く内容で、全体的にはあまり褒められたものではなかったですね。


★シナリオ(ネタバレ)

 そもそも論として、この作品ってかなり主人公のスタンスが特殊というか、本質的には恋愛に踏み込むのを忌避するような部分があると思っているんですよね。

 ぶっちゃけ作中でその点ほぼ明言はされていないんですけど、母親とともに寝て、目を覚ましたら隣で死んでいた、というトラウマ体験が、大切なものを失う怖さを必要以上に強調して、実際はじめてヒロインと同衾した次の日の朝とかは、そのトラウマが起こったり、或いはそれが克服されていることを安堵する、そんな描写は比較的目立ちます。
 そうであればこそ、家族同然、という想いと恩義はあれ、ずっと思慕を向けていた美綾に靡かずにここまできた、という背景が説得力を持つわけで、けどじゃあなんで紗矢とは付き合ったのか、って部分に、彼らが持つ本能的な遺伝子の欲求の影を見て取ることは可能でしょう。

 共に愛情に飢えて育った面があればこそ、家族の温かい繋がりを心の深くでは希求し、それを求められる相手と無意識下で認識して惹かれ合うものの、それを自覚することなく恋愛的なものと勘違いしてはじまった、と解釈すれば納得がいきますし、なのでこのあたりはもう少し、主人公の想いを掘り下げ、そういう自分の在り方を自覚する展開の補正は必要だったんじゃないかな、と思っています。
 どうあれ紗矢とも無情に引き裂かれる結果となり、かつ実の父があんなんだったことで、主人公はよりそういう深い関係を結ぶ意義に懐疑的になった部分はありそうですし、総合的に見るとこれはほんっっっとうに美綾にとっては不憫に過ぎる状況なんですよねぇ。

 結果的に見た時に、これだけ想い続けて尽くしてきても、いざ合併反対運動でヒロインズが集結した時に横並びの扱いをされて、かつ他の子と結ばれたときはその心情を忖度して潔く身を引くとか、幼馴染ヒロインにしても中々に無情過ぎる扱いではあって。
 むしろそこを袖にして、元々関係の深い紗矢との焼け木杭に火が付いた、というのはまだしも、他の二人のヒロインにホイホイ流れていく主人公はあんまりじゃないかなぁ、と思うのです。

 その辺も主人公のトラウマが捻じれた事で生成された要因のひとつ、的なフォローが出来ていればまだ緩和されたかもですけれど、そういうのもないまま、基本的にその非情な振る舞いを続けてきたという自覚は美綾ルートでしか総括されないので、その温度差がひっどいなぁとは感じました。
 私は別に美綾は大して好きではないのにそう思うんだから、この子に感情移入してプレイしちゃうと主人公そのものが好きになれないんじゃ、とすら懸念する雑駁さではありましたね。

 それを助長するのが共通の構成、なかんずくラストの、アブソリュート壊滅のための潜入捜査のくだりに、わざわざヒロイン確定イベントを挿入する無茶っぷりです。
 そもそもそのイベント自体、ヒロインとの距離を縮める為にハラハラした展開を演出するための飾りみたいなものではあるし、かつ千歳なんか実際のところ役に立ってたっけ?と思うくらい適当なものではありまして、その流れの中でヒロインの好感度を選択肢で高めていく、という点に折り合いの悪さを感じたのは私だけでしょうか?

 かつその選択の影響によって主人公が最も心寄せるヒロインがほぼ見透かされ、そうなると周りのヒロインが空気を読んでくれるのもあまりに都合がよく。
 缶詰先に意中のヒロインの手紙だけが届けられたりするのもなんだかなぁ、普通に全員分持ってこいや、って思ったし、フラフラになって人格崩壊寸前で家に戻ってくると、その意中のヒロインが出迎えてくれるっていうのも、冷静に見た時美綾以外がそれをしたら不法侵入じゃん、ってちょっと白けたりもして(笑)。
 むしろそれを裏側で甲斐甲斐しく段取ったに違いない美綾の献身と、その影に隠れた悲しみを思えば、なんでこんな無理に共通を圧縮するような雑なつくりにしたかなぁ、と思わざるを得ないわけです。正直このイベントは、全員で励まし、全員で出迎えるで良かったと思うんですよね。

 その上でもうひとつ問題視したいのが、このアブソリュート壊滅の余波に関しての擦り合わせの薄さと、加えて言えばその後をおざなりにすることで、他ヒロインの介入する余地を格段に減らしてしまっているつくり、ですね。
 合併阻止は出来た、それは一先ず最低限の目標達成で目出度い、という所でいいのですが、けれどじゃあ学園がそれで安泰か、と言えば、そもそも学園の合併問題が桑都学園の経営難に端を発している以上そんなはずはないんですよね。
 けれどその点について軽くでも言及し、解決策をなおざりとはいえ提示出来ているのは紗矢シナリオだけで、芳野シナリオなんかはむしろその原点的な問題を置き去りにしたまま情緒的な方向に突っ走っていく軽佻ぶりを披瀝してしまっています。

 だから個人的には、共通の段階で合併阻止は出来た、だけどこれで安泰ではないという認識をチームで共有し、それこそ桜花を正式な理事長に据える為の活動、そこから波及して学院を潰さないための活性化運動にスタンスを切り替えて、このメンバーでワイワイとやっていく土壌を作っておけば、整合性の面でも問題は減りますし、無難に他ヒロインが個別で関わってこられる設定を組み込めるので一石二鳥じゃない?って思いました。
 そうした上で、各々のヒロインが学園を活性化するためにどんなことがしたいか、というフックを作って、そこに主人公が共感を覚える、というのを恋愛的なトリガーを引く、という視座でも最後の一押しに据えれば、まだ紗矢と美綾以外のヒロインに走る違和感も緩和すると思うんですよね。

 主人公にとってはアブソリュート壊滅の流れは、ある意味で母親の敵討ち的な感覚もあるだろうし、憎き父親に一矢報いた、と留飲を下げることで、それまでの自己を総括し、改めて前向きに未来を見据えて動いていける土壌を生成するとも考えられます。
 それを為し、反省もした上で、それでもなお、例えば芳野のこちら側主導での合併案や、千歳の恋愛研究の発端にあるものに対する想いに惹かれるものがある、という筋道を踏んでくれれば良かったな、と思うし、個別もイチャラブ一辺倒に近い凡庸なものから脱却した面白味が積み上げられたと感じるのですよね。

 加えて、紗矢シナリオで発生する父親との軋轢に関しても、全てのルートに波及するのでなく、そのあたりにトリガーを埋め込んでおけばバランスが取れたのかな、と感じます。
 こういう事件で当局の動きが慎重になり、逮捕まで時間がかかるってのはありがちでしょうし、その間に自分を破滅に追い込んだ張本人を追求するなど、いかにも性格の悪いあの父親がやりそうな事ではあるので、そこは動かさない方がいいとは思います。

 ただそれが紗矢のせいだと露見するのに、紗矢が活性化運動に積極的に加担する事がきっかけになって、とすれば、他ルートでは紗矢の家出騒動まで発展しない理由づけになりますし、むしろそれを理由に、あまり積極的に活動には参加せず逼塞している、というスタンスを説得的に紡ぐことも出来るはずで。
 そもそも紗矢だけは通う学園が違うのもあり、その後の活動には他ルートでは最低限、というスタンスを取る事で、ある意味メインヒロインらしいメリハリを個別に強く色づけることも出来たでしょう。
 紗矢ルート自体は非常に出来がいいものの、総合的な部分との齟齬や温度差が歴然ではあるので、その辺がもうちょっとでも噛み合っていればなお素晴らしいシナリオになったと思えるだけに、そのあたりはつくづく残念なところですね。

 ともあれ、共通の部分でこれだけ気になる点が噴出する上で、その弊害を基本的に紗矢以外のシナリオはもろに食らっている、というのが率直な印象です。
 まぁ正直なところ、敢えてそんな風にぶつ切りにして、あくまでイチャラブ特化、という構成を企図していたのかもしれないですけれど、どちらにせよ紗矢以外のシナリオは合格点を出しづらい、全体的に味気なかったり、説得性が致命的に足りなかったり、共通との齟齬が大きかったりと問題点を種々抱えたものにはなっているかなーと思いますね。
 むしろなにも山谷のないおまけの桜花ルートの方が、心情の発端としては納得がいくだけにまとも、に思えてしまうくらいですから(笑)。パッチヒロインのくせに何故か専用のED曲もあるしね。。。

 個別に関しては日記であれこれ語り過ぎている部分もあるので、要点だけサラッとに留めておきます。
 とりあえず評価としては紗矢>>>千歳=芳野>美綾くらいです。紗矢だけ良作の上くらいで、後は概ね凡作だと思います。

 美綾はその立ち位置自体は非常に同情を呼ぶものだ、というのは上で考察しましたし、故にその想いが報われたときの爆発力、圧倒的な愛し方を表現したい、という意図はまぁ、わかります。
 でもそれにしたって、日々のあらゆることそっちのけに近い形でエロエロエロエロ…………と、回想枠こそ他ヒロインと横並びでとどめていますが、そこに記載されないちょっとしたシーンも数多く、正直美綾がエロモンスターにしか思えませんでした。。。

 そしてそのシーンの大概も主人公が美綾にひたすら尻に敷かれ、搾り取られる傾向が強くて、M気質の人ならこういうのもアリ、ってなるんでしょうけど、その辺あまり適性のない私には辛いところでしたね。
 紗矢シナリオもそういう、Hシーンでの主導権争いってのは勃発するのですけど、こちらは一進一退で共に切磋琢磨しつつ成長していく感があるのに対し、一方的に射精管理される状況はやはり好ましくないです。純粋に主導権を争っているHシーンそのものは嫌いじゃないんですけど、程度によります。

 その上このルートは一切合併問題解決後の諸々をうっちゃってしまってもいるので、その点もマイナスですね。
 その点でも共通のつくりのおざなりさ、強引さの失点を取り返せないルートですし、かつあのつくりの中でフラれる美綾は本当に不憫なので、あれこれ含めて複雑ではあるけれど、それでもやっぱりシナリオとしては面白くないです。
 どこまでも主人公に一途、なのはいいとしても、その本願が叶ったところで、改めて未来図を描き、それを学園の発展に波及させて、自分がここで過ごした爪痕を残す、そんなイベントくらいは欲しかったですし、ここまでエロ一辺倒だとどうにも味気ないのはあると思います。

 芳野はまぁ、発想の原点は悪くないと思うんですよね。
 合併問題でゴタゴタしたけれど、いざ相手の学園の実態を知って、その不遇に手を差し伸べたい!と全力で憤るのは、如何にもこの学園を愛し、実際に反対運動に自分から踏み出した芳野らしい在り方ではあり、けれどそれがそもそもの学園の安泰を担保する活動を抜きに、一足飛びに扱われてしまっているのは勇み足に感じてしまうんですよねぇ。

 恋愛面でも別に千歳ほど難しいところはなくてシンプルに好き合っていく形ですし、イチャイチャとエロスのバランスという意味では尺全体からのバランスとしても、内容としても紗矢に匹敵するくらいまともに思えただけに、その合間に組み込む軽めのシリアスの質の悪さが余計に目立ってしまったというべきでしょうか。
 このシナリオに関しては上で触れたような共通の組み立てにしておけば、それだけで解決する些細な齟齬ではありますし、芳野自体はすごく健やかで見ていて気分のいい子で、Hにも積極的でとっても可愛いんですけどね、共通とは別ライターである弊害が大きく出てしまっていますし、勿体ない内容でした。

 千歳も同様に、共通との齟齬が結構大きいのと、あとシリアス面での下積みの圧倒的な足りなさ、純粋なライターの力不足を感じる内容ではあったと思います。
 千歳も主人公同様に幼い頃に両親を亡くし、叔父夫婦に大切に育てられるものの、それでも喪失の痛みを知っていることでどこか恋愛に臆病な面を持っていて、それが恋愛研究なんて頭でっかちなやり方に繋がっているのは衆目の一致するところでしょう。

 そういう子にとっては、まず共通の時点で、勢いで主人公の無事を祝ってキスしちゃう、という画一的な展開そのものがキャラ性からすると少し逸脱している感がありました。
 しかもその後の個別で、序盤から好きって気持ちはあるのに互いに中々踏み込めなくて、ダラダラともどかしいラブコメ展開をかなり冗長に続けてくるわけで、その在り方自体は千歳との相性は悪くない、むしろそれくらい丁寧でもいいと思うのですけど、それだけにじゃあなぜあの時だけ先走った?ってのが違和感として残るんですよねぇ。
 普通あそこまですれば好意は確かなものだと互いに認識しちゃうでしょうし、いくらこの二人とは言えどその辺でまず噛み合ってなかったと思います。これも共通が雑である事の弊害で、芳野ルート同様上の処置が出来ていればどうとでもなった部分ですね。

 その上で、このルートの肝としては、主人公と恋愛をし、人を好きになり、子を産み育てる喜びがどのようなものか、その一端を体感的に知ることで、自分が本当に両親から愛されていた、という確信を得たいというのがあると思います。
 この愛の確信、というファクターは何気に紗矢シナリオでもラストに大きな意味を持っているのですが、その点で意外性と説得性を兼ね備えた素晴らしいオチを用意してきた紗矢シナリオと引き比べてしまうと、この千歳シナリオのオチは三段くらい落ちる、と言わざるを得ません。

 両親の未来先取りムービー、というのは、発想としては別に悪くないと思いますが、その内容に関してはかなり綿密に伏線を敷いておかないと、どうにも恣意的なつくりに見えてしまう弊害もあります。
 しかもこの場合、それまでは毎年そんなに変わり映えのない挨拶とフォトアルバムだったのに対し、この年だけ特別なもの、千歳の将来に対しての祝福となっていました。これもアイデア自体は決して悪くはありません。
 ただ、そういうムービーがこのタイミングで現れるのが必然である、と読み手に思わせるだけの下積みが圧倒的に足りていなかったことで、すごく読み手と中の二人に温度差が出来るつくりになってしまっていたと感じました。

 この手法ですと、どうあれ多少は恣意的に感じてしまうのは避けられないかもですが、それでもいくらかはやりようがあったと思います。
 例えば同じ桑都学園で出会い、結ばれた二人の歳と、今の千歳の歳が同じであることをしっかり繰り返し強調しておいたり、結構茶目っ気があって、時に先走りや空回りも多々あるような、身体は弱いけどその分日々を懸命に生きていた賑やかな両親だった、なんて言及をしっかり打ち出しておけば、多少なりあの内容をかましても仕方ない、と苦笑できる素地にはなるでしょう。
 正直な話、他のルートで主人公が他の子とイチャエロしている影で、この先走りムービーを千歳が一人で鑑賞していると思うと、その寒々しさに愕然としますからね(笑)。

 出来れば叔父夫婦とも主人公がしっかり話し合って、幼い千歳の目には映らなかった二人の苦労や頑張りなどの側面を補完もするべきでしたし、そういう話をして悪戯に悲しませたくない、と考えるかもしれない千歳と一度はぶつかるも、それを乗り越えて、なんて展開も王道的だったでしょう。
 そういう補助線を一切引く努力をせずに、ただ共通でちょっと触れただけのムービーの話題をいきなり終盤で、もうすぐ誕生日、という情報とセットで唐突に引っ張り出してきて、それでお涙頂戴、ってのは流石に虫が良過ぎたと思いますし、工夫次第では地味だけど良シナリオ、って水準に化ける余地は充分にあったと思うだけに残念ですね。
 千歳自体は私の趣味的には最高の可愛さだっただけに尚更、もうちょいなんとかならんかったか、という想いが一番強いです。

 紗矢シナリオに関しては、その中で配慮されているいくつかの問題は、出来れば共通で片づけて統一性を打ち出しておくべきものだった、という認識こそあるものの、総じて隙のない完成度の高い内容だったと思っています。
 ああいう形での同居展開や、その中で巻き起こる葛藤と真実を希求したいという気持ち、そのあたりを上手く寸止めのスパイスにしつつ妹との禁断の背徳的なイチャラブを存分に堪能させてくれる筆致は、流石にあの遥シナリオを書いた人だ、と思わせる凄みがありました。

 まぁキャラ的にあそこまで尖ってはいないというか、遥の場合この作品での紗矢と美綾のハイブリット的な在り方だった気もするんですけど、ともあれそういう過去作との連関でも楽しめつつ(エクストラでのさんはい♪とか超笑ったし)、全体的に密度の高いストーリーでしたね。
 どうしても道徳という全くもって名は体を現さない、ろくでなしの父親に対するヘイトでうんざり、という側面もあるので、この辺好き好みはあると思うのですが、一応そういう流れを血の宿命論的な部分からも補完はしていたし、こういう近親相姦の連鎖ってこの前美少女万華鏡−罪と罰の少女−でも見たけれど、本来血縁の異性は忌避する遺伝子反応が実在する中での一定の説得性は感じるものではあります。

 あの父親が本当に愛していたのは誰だったのか、それが果たせなかったことがああした人格の歪みを加速させてしまったのではないか、そういう生育環境論的な視座からも、ただドキュンなモンスターファーザー、と一概に言い切れないものを有してはいて。
 そのあたりは近親相姦の業の深さ、怖さを相対的に披瀝して、けれどそれでも二人はその茨の道を征く、それだけの覚悟と愛があるのだ、という説得性に繋げようとしているのかな、とも思います。
 そもそもこの人は遥シナリオでも、近親相姦のその先で二人が幸せに暮らしました、という御伽噺的な結論に至るのを敢えて避けているわけで、クインダブルの時がどうだったかはプレイしてないから知らんのですけど、そのあたりは一貫した理念に基づいているのかなぁ、という気はしますね。

 とにかくそういう経緯を踏んで、紗矢がようやく自分の出自の確かなところを確信に至ることで、改めて生じる渇望を、けれどもうそれはどうしようもない、と諦観を抱く中で、ああいう形で綺麗なオチをつけてきたのは中々のトリックだったと思います。
 私も単語の綴りがおかしい、って最初に勘付いたけれど、それでも流石にインドネシア語とまでは発想を繋げにくかったですし、でもよくよく見ていけばそれを示唆する伏線はしっかり引いてあるんですよね。
 その点千歳のそれに比べて非常に重厚で、かつその想いが明快かつひたむきに伝わってくるオチになっていて、この密度の高いシナリオを絶妙な味付けで締めくくってくれたな、と喝采したいですね。

 これは本当に、流石に非の打ちどころはない、とまでは言わないものの、厄介な部分にもしっかり思想性が感じられる精緻に練り込まれたシナリオだと思います。
 それだけに他との完成度の差が本当に勿体ないですし、これ単品だけなら23〜4点つけてもいいかな、って思うくらいなんですけど、他3本で取ると13〜4点になっちゃうので、結局中庸を取るとこの点数に落ち着くという。。。
 まぁ余程凄みのあるシナリオならそのプラス要素をより大きく見積もっても、とは思うのですけど、流石にそこまでではないですしね。



キャラ(19/20)

★全体評価

 基本的なステータスとしては面白いヒロインや脇キャラがいると思うんですけど、そのポテンシャルをシナリオが生かし切れてない面が強いですし、確かに純粋なイチャラブそのものはそんなに質が悪くないんですけど、やっぱりそれってそれだけで完全に切り分けきれるものではなく、良質なシナリオに支えられてこそ、って面も間違いなくありますからね。
 そういう部分や、個別で横の繋がりが頓に薄くなってしまう弊害なども含めて物足りなさはありますし、明確に不快感をもたらすキャラも跋扈しているので、少し割り引いておきたいかな、と思います。

★NO,1!イチオシ!

 シナリオが足を引っ張ったとはいえ、それでもギリギリで千歳が紗矢から逃げ切ったかなぁ、というところ。無論シナリオ補正込みだと圧倒的に紗矢に軍配が上がりますが。。。

 とにかく基本的に見た目があざといまでに可愛いし、ポーズも表情も可愛いし、言動もどこか朴訥ながらユーモアもあって愛らしいですし、CVも個人的にはこういう控えめタイプの小鳥居さんかなり好きなので大歓喜だったしで、概ね期待通りの破壊力を発揮してくれたと思います。
 中々くっつかずにやきもきさせられるとこなんかも千歳らしさが出ていて嫌いじゃないですし、一旦触れ合った後はどんどんそれに傾斜して甘えてくれるのもすこぶる可愛く、色々な意味で非常に満足度は高かったです。本当にシナリオの完成度さえ高ければ殿堂すら視野に入るレベルなんですけどねぇ…………。

★NO,2〜

 紗矢は流石の妹力でした。
 設定的にコテコテの兄妹とは感性の違うところもありつつ、それでも家族、というカテゴリに対する純粋な憧れと、男女としての思慕をひたむきに両立させ、貪欲にその発展を追求していく姿勢は流石だなぁー、と思いましたし、頑張って主導権を握ろうとしても時々ちょろくて逆転を食らってしまうあたりとかも可愛げがあって素晴らしく良かったと思います。

 キャラデザ的にもCV的にも、千歳には及ばないもののかなりの好み度合いでしたし、何気にHシーンの質という意味でも一番良かったなぁと思いますし、この点は期待以上の素敵ぶりでしたね。まぁ総合的に見ると期待以下の部分もあるのでトントンなんですけれど。。。

 芳野も基本的には好きですけど、やっぱりインパクトが薄くなっちゃうのはありますね。最初にクリアしたせいもあるでしょうが、その後が空気過ぎるからなぁ。。。
 こういう快活だけど女子的な感性も繊細に持ち合わせている、って塩梅は好みでしたし、猫口になってニヤニヤしているのがとても可愛かったので意外と拾い物ではありました。

 美綾は正直重いのでキャラとしてはドンマイですが、立ち位置は不憫なのでその辺で切り捨てきれない感はありますね(笑)。
 桜花はしかし9年経っても成長しないとはなんたる、なんたるご褒美(笑)。いや流石に手抜きじゃね?とは思ったけど。
 若菜はまぁ、ヒロインとしてはおまけもおまけだし、紗矢シナリオでの存在感はそこそこあったのでその辺も含めて嫌いじゃないですけどね。


CG(16/20)

★全体評価

 基本そこまでキャッチーで鮮烈な絵柄ではなく、作風にはマッチしているとはいえ抜群に上手い、というほどでも、安定感に長けている、という感じもなくて、かつ量的にもやや不足気味となるとこのくらいが妥当なラインかなと思います。

★立ち絵

 ポーズはヒロインで2種類、サブで1種類ですね。
 基本的にちゃんと個性が反映した味付けになっていますが、それにしても千歳の猫の手はあざとい可愛さでしたな。。。

 服飾はヒロインで5種類、サブで2種類でしょうか。
 学園が舞台の割にそれ絡みの服飾、引いてはイベントが限りなく少ないのは微妙なところではありますが、私服が普段使いとデート用の2種類あるのと、寝間着がきちんと完備されているのはポイント高いと思います。
 お気に入りは千歳制服、デート服、水着、沙矢私服、水着、芳野バイト服あたりは可愛かったですね。

 表情差分もそこまで多くはないですが、ある程度個性で色分けしつつあざと過ぎない程度の可愛さをしっかり引き出せていて良かったですね。
 基本的にみんなジト目とほんわか顔が可愛いなーって感じですし、千歳は猫の手ポーズでの照れ顔とかワクワクキラキラとか絶妙に可愛いと感じましたね。


★1枚絵

 通常75枚にSD12枚で計87枚、パッチ適応済みです。
 やはり単純に通常絵が値段の割に少し寂しい、と感じるところはありますし、シーン数自体は各ヒロイン6回とそこそこ豊富ながら、1シーンに1枚、というパターンがかなり多いのも惜しいところです。
 当然日常の、みんなでワイワイ楽しくしている集合絵などももうちょい欲しかったですし、諸々含めて少し物足りないところでした。

 特にお気に入りは3枚。
 1枚目は紗矢の添い寝、まぁこれは純粋に可愛いというか、安心し切ってる雰囲気と恥じらいのバランス感がいいですよね。
 2枚目は紗矢制服騎乗位、この胸のラインの良さ、破れた黒ストの艶めかしさ、ペタ腰での密着具合など、実に私の好みにヒットしています。
 3枚目は千歳添い寝、これも他の絵に比べて目がパッチリしていて、なんか他の安定感のなさからすると奇跡的な可愛さに仕上がっていると思いますねー。


BGM(17/20)

★全体評価

 特別凄味があるわけでもないですが、安定して雰囲気のいい優雅な空気の漂う曲が揃っていたなと思いますし、ボーカルの豪華さなど含めてもこの点数でいいかなという感じです。

★ボーカル曲

 全部で6曲、OPと桜花まで含めた各ヒロイン毎にEDが用意されている仕様です。
 全部触れていくのは大変なのでスルーしますが(笑)、一番好きなのは紗矢EDの『背伸びをして、キス』、次いで美綾EDの『わたしのありか』ですね。

★BGM

 全部で25曲、ボーカルインストまで含めると30曲丁度なのでまぁ水準クラスと言っていいでしょう。
 基本的には当たり障りないつくりが多いですが、時々耳にうるさいくらい主張してくるのがあり、でも意外とそれが作品にピリッとした独特な緊張感をもたらしている感じもして、総合的には存外まとまっているのかなぁ?というイメージでしたね。

 特にお気に入りは『spring vision』と『彷徨』ですね。
 前者はすごく爽快で軽快な春の息吹を感じさせる出だしのイントロがすごく綺麗で好きです。
 後者は運命の残酷に打ちひしがれて立ち止まるのを、そっと優しく抱き留めてくれる誰かがいる、という、切なさの中に潜む一握の温もりの味付けが絶妙で大好きですね。


システム(8/10)

★演出
 
 まあ可もなく不可もなく、というラインでしょうか。
 ある程度は日常の立ち絵もコミカルに動くし、音や背景などの演出もそれなりには完備していて、特別目立ったところはないですけど悪くはないと思います。
 ただあのHシーンの絶頂間近でチカチカするの、もうちょい上手く出来ないもんですかね?

 ムービーは素朴な味付けでしっとりと見せていて悪くはないですけどまぁ普通、ですね。

★システム

 こちらも特に不備はなく、といって使いやすさも便利さも特別なものはないのでコメントに困るところではあります。
 強いて言えば一応共通の早い段階から選択肢の仕様上のルート分岐が発生するので、シーンジャンプがあればより楽ではあったかなと。大した差ではないでしょうけどね。


総合(77/100)

 総プレイ時間15時間ちょい。
 共通が4時間で紗矢が3時間、他3人は2,5時間前後で、おまけの桜花と若菜で30分ちょい、ってところでしょうか。

 正直全体の尺としてもフルプライスとしてはちょい物足りないですし、そしてシナリオで散々語ったようにより面白い作品にするだけのちょっとした工夫の余地は沢山あるので、それだけでも大分違ったものになったんじゃないかなぁ、と思う次第。
 まぁ正直そこまでシナリオに期待していなかったので、紗矢シナリオの出来の良さは嬉しい誤算でしたし、千歳も期待通りには可愛かったので元は取れているかなー、くらいですね。

 妹シナリオが好きな人ならやってみる価値はある、と思いますが、基本的には微妙なので、あまり力を入れておススメとは言い難いですかね。
posted by クローバー at 14:19| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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