2017年12月05日

アオイトリ

 同じスタッフのアマツツミが自分内ベストヒットに近い素晴らしい内容でしたし、それをバリバリ意識したイメージのこの作品は手に取らない理由がなかったですね。

シナリオ(24/30)

 幸せの在り処は。

★あらすじ

 主人公は生まれてすぐ、とある女学園に併設された礼拝堂に捨てられていました。
 そこの神父に拾われ、次代の神父になるように育てられた主人公には生まれつき特異な力があり、それは彼に触れる相手を問答無用で幸せな気持ちにしてくれる、というもの、その一方でこの学園の敷地からは一歩も外に出られないという弊害も伴う不思議なものでした。
 それ故にこの場に留まるより選択肢のない主人公は、幼い頃から女学園の生徒達に大人気で、長じてからはただ触れるだけでなく、より深い幸福感を味わえるセックスを求められるようになります。

 ずっと礼拝堂で神の教えを基準に育てられてきたために、基本的には他者に奉仕する事を当然と思っている主人公はその立場を受け入れますが、しかし心の片隅では世間一般の「普通」に憧れる想いもありました。
 それが嵩じて、ただ一度だけ、女学生からのセックスの要求を断ったところ、数日後にその生徒が自殺してしまい、彼女を救えなかったという自責が、それまで以上に自身の役割に徹する自己を確立させていく事になります。

 そんな日々を繰り返していく中では、時に印象的な女生徒と睦む事もあって。
 その日やってきた二人組の片割れは、どう見ても楚々として品が良く、性にも臆病な様子を見せながら、主人公の立場と想いを知り、いざ踏み込んできてからは底なし沼の様な淫靡さを発揮し、普段はどこか俯瞰的にそのセックスをこなせる主人公も思わず引きずり込まれそうになるほどでした。

 そんな濃密なセックスをこなした後、火照った頭と身体を冷やすために日課の夜の散歩に出た主人公は、突然正体不明の電話を受け取る事になります。
 のっけに、かつて殺してしまった少女の声音を使って心を揺さぶってきたその相手は、自分の事を悪魔と名乗り、そして主人公に宿る力が悪魔にとっての救世主の力、文字通り世界を滅ぼす事すらできる途方もない淵源を持っているものだと告げます。
 反発しつつもどこかその言説に納得のいくものを覚えた主人公ですが、今の今まで接触がなかったことを訝しむと、どうやら今日突然、この結界に守られた地に魔の力によって小さな穴が開いたと説明されます。

 電話を切って、いつもの彼岸と此岸の境界線まで足を進めた主人公は、もうすぐ冬なのに咲き狂う桜、という不思議な光景を見る事になります。
 どうやらそれも、魔の力に連なるなにかの仕業のようで、そして棲み処である礼拝堂に隣接された屋敷に戻った主人公は、その中心に設えられた温室に誰かの気配があることに気付きます。

 温室の真ん中に植えられた桜もまた季節外れに狂い咲く中、ふと漏れた声に空を見上げれば、そこには幻想的な景色がありました。
 冴え冴えと澄み渡った月夜をバックにした、天使のように儚げで美しい少女。けれど、その背中に生えた羽は漆黒で、彼女こそがその魔の存在であることを裏付けていて。
 互いに慌てている中で踏みつけにされたりとハプニングもありつつ、その少女はメアリーと名乗り、自分が吸血鬼で、かつてこの土地に住んでいた存在である事、長い時を経て里帰りを果たしたことを告げ、かつての自宅であるこの家に住まわせて欲しいと願い出てきます。

 強く反対する理由を持たなかった主人公は、かくしてメアリーとの奇妙な二人きりの生活をはじめますが、やがて彼女が吸血鬼らしく陽の光に当たることすらできない事と、そして未だに吸血鬼としての本分、人から血を吸い眷属を作ることを為しておらず、人の心を抱いたまま、生まれ育った地で死に逝くことを決意していることを知ります。
 かつてのトラウマから、どんな崇高な理由であれ目の前で死に逝かんとする少女を見捨てられない主人公は、禁断の悪魔の知恵すら借りて、彼の血に流れる本来の力を用い、文字通り自分の血を啜らせることでメアリーの体質を改善する事に成功して。

 人らしい生き方を取り戻したメアリーは感動の涙を流し、そして翌日からは溌剌と、失った人間の生活を謳歌すべく学園へも通い始めて。
 人懐っこく見目麗しいメアリーはすぐに人気者となり、その関係で主人公も人の中にいることが増えていって、その中にはつい最近ベッドの上での印象的な邂逅があった少女・あかりも含まれていました。
 更には悪魔の手引きで、主人公がずっと無意識的に求め続けていた血の繋がった家族・双子の妹の小夜もこの館に引っ越してきたり、かつて主人公のはじめてを奪った女性である理沙が、臨時教師として学園に戻ってきたりと、それまでの閑散とした日常が嘘のような賑やかさに囲まれるようになります。

 一方で、主人公と悪魔との関係も続いており、メアリーも交えての会話の中で、主人公の力の本質は人を幸せにすることではなく、それ以外の負の感情を根こそぎ奪い去るもの、そしてそれを蓄積して力を溜め込めば、いずれ主人公は悪魔の救世主として覚醒し、今の人格はその強大な力に飲み込まれてしまうことが発覚します。
 それを防ぐためには、主人公が今のように博愛精神のみで生きるのではなく、誰か一人を好きになる、すなわち恋と愛を知ればいいのではないかと結論付けたメアリーは、演劇という舞台の上で強制的に誰をヒロインにしたいか選んで、能動的に恋をする努力をすべきだと訴えてきて。

 かくして歪な形で始まる主人公の恋物語は、果たしてそれぞれにヒロインを迎えて如何なる帰結を得るのか?
 果たして彼らはそれぞれの身に巣食う魔を祓い、今の自分を保った上で輝かしい未来を手にすることが出来るのか?
 これは、大いなる力に翻弄されつつも、その渦中で生と死の意味を知り、確かな幸せの在り処を見出していく、絆と再生の物語です。

★テキスト

 全体的には非常に洒脱で軽妙でありつつ、感情の表現に関しては多彩で時に粘っこく、気味悪ささえ湛えるくらいの奥深さを見せたりと、とてもメリハリの効いたおかしみの強い読み口になっていると思います。
 基本的にキャラの個性付けが汎用的な作品に比べるとかなりエッジが効いていますし、それを十全に引き出しての辛辣さや皮肉ぶりなどいかにも、という感じではありつつ、そのやり取りの中にしっかり信頼や愛情を感じさせるのが見事ですし、また仕草の言及なども含めて、ヒロインの可愛さを文章面からもしっかりフォロー出来ているのがいい味わいですね。

 人間関係や舞台設定的にはかなりギュッと煮詰まった、箱庭的な作品でありながら、そのやり取りが画一的にならずに常に新鮮味と驚きを湛えているのは流石ですし、別ライターのルートにおいてもそれがさほど違和感なくコントロールされているのも中々だな、と感じます。
 舞台設定的に西洋的な宗教観や引用なども程よく折り込まれていて、それは例えばアマツツミの東洋的な観念よりも皮膚感覚でスッと理解し辛いところはあるはあるのですけれど、その隠喩的な示唆の面も含めてとても読み込み甲斐のあるテキストではあると思いました。

★ルート構成

 基本的に選択肢はかなり少なく、構造的にも包括的な視点で言えば一本道に近いものはあるのかなと感じます。
 これは普通の恋愛ADVとはかなり趣が違い、選択肢での選択の蓄積で好感を積み重ね、いつの間にか惹かれ合って、なんて生温いものではなく、主人公がそもそも普通の恋愛観を一切持たない中で、それでもその在り方から脱却するために恋をすべきだ、と結論ありきで進行していく物語です。
 故に選択肢が、共通を経て誰を選ぶか、のみに集約されても特に違和感はなく仕上がっていますし、そもそも大概のヒロインとはその時点で身体の関係は構築済み、という点も含めて気になるところではないですね。

 そしてあかりだけは最初の選択から外されていて、他の3人のルートをクリア後に開陳される仕掛けになっていますが、その除外の理由づけにしてもまず納得のいくところではあり、構造的にもそれが上手く成立するように作られています。
 後でもう少し詳説するとは思いますが、とにかくあかりは逆説的なメインヒロインって感じで、本来は能動的な意味で選べない高みにいるのがその立ち位置のはずなのに、逆に低いところにいて、他の相手が選ばれない状況を組み立てないと結ばれ得ない、なんてところは非常に挑戦的だなぁと感じます。
 その功罪についても後で触れますが、ともあれゲームデザインとしては選択肢を最小限に留めてドラマ性、一貫性を強化しつつ、それを物足りない、不自然と感じさせないものに仕上げている手腕は大したものだと評価すべきでしょうね。

★シナリオ(大枠)

 枠組みとしてはある程度あらすじでも触れた通り、恋をする事で自我を強化し、悪魔の救世主の意思に抗いつつ幸せの道のりを見出していく、という事になります。
 この、メアリーと考えた恋をすれば、という結論は、およそ方向性としては間違ってはいないものの、それだけでは掘り下げが足りなかったり、見込み違いの部分もいくらかはあって、そういうものが各々のヒロインと交流する中で浮き彫りになっていく、というのが、作品全体を俯瞰的に見た時のあかり以外のルートの目的となっていると思います。

 個別の構造的には、主人公がヒロインを決めた段階で、そのカップリングに相応しい形の物語をメアリーが著する、という流れからスタートします。
 なので基本的に、その演劇の練習での触れ合いをきっかけにして、目的のヒロインとの距離を縮めていくということにはなり、その点はやや画一的と言えばそうですが、きちんとそれぞれの個性に合わせた物語展開を踏まえてくれるし、その行き着く先もバラバラではあるので、そこまで単調に感じる事はないと思います。

 そして、こういう構造のお約束的な展開ではありますが、前半はある程度順風満帆、互いを良く知ってより仲を深めていく過程でのイチャラブもしっかり密度・濃度共にそれなりに紡がれています。
 それをしっかり堪能した上での後半パート、主に主人公の力が淵源となっての問題が発覚して、それに対処するためにどうするか、というシリアスが展開され、ここのルート全体としては実に王道的なドラマツルギーを踏襲していると言えるでしょう。
 そういう基本的な要素はしっかり押さえた上で、この作品ならではの独自性・特異性もきちんと色濃く打ち出しているのは流石と言えますね。

 この作品のシリアスというのは、ある意味では解決そのものは難しくない、という所に特色があります。
 ここで問題になる悪魔の救世主の力、その本質が如何なるものかという考察は後回しにしますが、少なくともそれを十全に揮えるならば、この世の如何なる不条理、いかなる摂理ですら覆しうる威力があって、それは奇跡の本願である死の超越、という観点においても例外ではありません。
 ただ、それを不用意に揮ってしまえば、完全に救世主を目覚めさせてしまい、今の主人公の人格そのものは消し飛んでしまう危険がある、という部分にのみ葛藤は存在するわけですね。

 元々この主人公は特異で歪んだ生まれつきから、狂的な博愛主義と自己犠牲精神を持っているのですが、少なからず恋を知り、自己を強く意識するようになって、そこに躊躇なく踏み込めなくなっていく、というのが、ある意味で人間的な成長を示唆する部分になります。
 その上で、それでもその愛する相手を救えなければ意味がない、という中、自己保全と奇跡の力の行使の折り合いをどこでつけるか、どうつけるか、というのがルート毎、ヒロイン毎に差異はあり、そのあたりが醍醐味と言えますね。
 無論あかりルートはそのテーマ性を更に煮詰めた内容にはなっていますが、イデオロギー的な面が強く出過ぎていて色々わかりにくかったり、立ち位置としても挑戦的に過ぎたりと中々に評価の難しさはあり、ただそれでも枠組みとしての完成度の高さ、結論としてはありきたりでも、それをより説得的に見せる仕立ての上手さは確かなものだと思います。

★シナリオ(個別・ネタバレ)

 個別の内容を考えていく前に、前提として、世界観の私なりの解釈を下敷き、補助線として組み上げておきましょう。

 まずこの作品は、主人公が神父という立ち位置である事に象徴されるように、西洋的な宗教観、とりわけキリスト教・カトリックのそれをベースにしているとは思っています。
 まあぶっちゃけその辺、本来神父って生涯独身を教義で強いられている筈なのに、平然と誰かと付き合うことが問題にならないとかあかりルートで言い放っているので、正統的なカトリックとは言い切れないというか、悪徳神父的な印象も強いんですが、少なくとも牧師、と書かなかった以上思想性はカトリック寄りだと思いますし、そこから敷衍しての終末論的な観念を希釈して盛り込んでいる、という感じはあります。

 ベーシックなキリスト教の終末論というのは、世の中が退廃し末世を迎えた中で、いずれ救世主が再び天から降臨し、世界を終焉に導くと同時に、選ばれた魂だけを天上の理想郷に誘ってくれる、という解釈で概ね狂いはないと思います。
 これはいわば、善的な解釈で、苦に満ちた現世を脱却する救いの手を差し伸べてくれる存在を救世主と理解しているわけで、後で触れますがあかりが特別な理由もなく、それでも敬虔な信者となっている背景には、このあたりの教義に対する憧憬があるんじゃないかな、と見ています。

 そこで問題になってくるのが、この作品における「悪魔の救世主」という謎の立ち位置なんですよね。
 それは悪魔にとっての救世主、という観念なのか、それとも悪魔的な精神性を孕む救世主という立ち位置なのか判然とはしませんが、私の結論としては、根底的な善悪はともかく、救世主とは最終的に世界を滅ぼす力を有した存在、と考えます。
 主人公が聖書に抵抗感を有しているように、その根源は善的な信仰ではなく、この生きづらい世界への呪いではなかろうか、とは思っていて、それを象徴的に示しているのが、世の中の不幸を具象的に体現していた主人公の母親の処女懐胎なのでしょう。
 あかりルートのラストで語られる諦念に満ちた世界の捉え方、あれ自体はどんなに前向きな人間であっても、心の片隅では頷ける部分はあるとは言えますし、その集合的無意識が煮詰まって、この世界に悪魔の救世主の力を生み出した、と言えるのではないでしょうか。

 ただ一方で、小夜の存在にも象徴されるようにその力に対するカウンターも確かにあり、どれだけ苦界であっても、その中に楽しさや幸せを能動的に見出だしていく人の強さ、綺麗さもまた、人の確かな有り様となります。
 故に、その性質を負の方向に揺さぶる為の電話の悪魔、なんて存在も同時に派生したと言えますし、それが肉体を持たない精神性だけの存在で、だからこそ数多の可能性世界を渡り歩くなんてチートな性能を身につけていると考えればある程度筋道としては納得がいくかなと感じますね。

 一先ずそこを押さえた上で、個別評価としてはあかり>共通メアリー>小夜=メアリー>理沙くらいの評価になります。
 全体としての水準はとても高く、一番低く見積もった理沙でも平均点はクリアしていると思いますが、一方で満を持してのあかりルート自体は、出来そのものは素晴らしくいいのですけれど、感情的な面で読み手にクリティカルに嵌りにくい構造と精神性がベースになっている感じもあり、私の評価としてはあまり突き抜けたものにはならなかったな、と感じています。
 そのあたりはまた後々、アマツツミのほたるとの比較も含めて触れていくので、まずは最初にクリアできる三人の話から見ていきましょう。

 まず理沙ですが、こちらは主人公のはじめての相手という思い入れと、理沙の方も自身の境遇を含めての主人公に対する思慕が明確な分、演劇面で頼りになる、という要素も組み込みつつ順調に関係が深まっていくのはいい感じですね。
 このルートに関しては妹の美可子も重要なキーキャラになっていて、彼女は彼女である意味どこか人を超越したような天才性の持ち主でありつつ、だからこそ真っ当な人の愛を理解できない哀しみを内包していて、それでも一番大切と感じる姉に対しての真っ直ぐさがシナリオに奥行きを与えているなと思います。

 もっとも、理沙の閉塞感の原点である家族の問題にはほぼ踏み込まず、あくまで直近にある理沙にとっての切実な問題、不治の病の存在が後半はキーになってきて、そのあたりのポッと出ぶりはあまり感心できないものの、そこからの解決編での手法や、そこでの示唆は全体の構成にも大きく関わってくるなと感じさせます。
 まずここで、悪魔が並行世界を管理するのは面倒、とは口にしますが、それは後の構成を見ても明らかなように、面倒なだけで出来ないわけではない、という面を示しています。
 加えて、現時点での主人公の力では、ここまで進行した病を根絶する力はない、というのも、十全なパフォーマンスを発揮すれば不可能ではない、と暗に語っていて、けれどここでそれを選ぶのは自我の壊滅に繋がる為に、より迂回した、今の力で為せる可能性を見出して、となるのが面白いところです。

 ただここでのタイムパラドックス的な部分は解釈が難しくて、この場合理沙の生死に関わる問題の分岐点は過去のはじめてのシーンにあるわけですけれど、じゃあこれを今の理沙との関係の流れに結び付けた時、この底流は全て他のルートの分岐前ともリンクするのか?ってのはありますね。
 具体的には、この作品はメアリーがここにきて、悪魔が主人公と連絡を取った時点から世界の分岐がはじまる、という見立てになりますから、理沙ルートの快癒展開が、二人のはじめて、というどのルートでも歴史的事実となる時点から、その分岐開始までの部分に上書きされるのか、それとも個々の可能性として独立した時点でその上書きから免れるのか、って事です。

 要するに上書きされないなら、メアリーと小夜のルートでは近い内に理沙は癌に蝕まれて死ぬ、って話になっちゃいますし、どうでもいいっちゃいい話ですけど気にはなります。
 最終的には、完全に救世主の力を奮えるあかりが一度理沙も殺して蘇らせる、という奇跡を行使し、その時に小夜やメアリーと同じように巣食う魔の力を祓った、と解釈出来ますから、その意味でどの世界線でも救われない、というわけではないんですけれど、これまた最終的に、あかりルートの底流に絡めて小夜ルートの主人公にも救いの契機がもたらされているあたりから見れば、どこでも救われる流れになっている、と見立てた方が自然なのかもしれませんね。
 ただこのルートは、結果的に救世主の力を完全に折伏したわけでもなく、色々先送りって感じはあります。
 あかりルートで二人いるから生命力の枯渇も先延ばしになっているなんて書かれ方もしていましたし、他のルート以上に不発弾を抱えたまま、ってのはありそうなんですけどね。

 メアリールートに関しては、まずメアリー自身もそれまで百年近く孤独の闇の中にいた、という境遇から、恋だの愛だのという話には無縁で、それを自身に重ねていく事が中々出来ない、という点に面白味がありますね。
 最初の選択肢直後のやり取りでもそれが露骨に浮き彫りになっていますし、けど根底的にはそれをずっと希求し続けてきた二人だからこそ、二人三脚でそれを求める中ですぐに順応し、こそばゆい好意をしっかりと育んでいくという色付けは素敵だったと思います。
 単純なイチャラブでは、元々のキャラの好みもあるにせよメアリールートが一番楽しかったかなという気はしますし、そして身も心も結ばれて、はじめてメアリーの止まっていた時が動き出すという仕掛けもいいアイデアだと思います。そのせいで今更の初潮到来とかその辺の背徳感も含めてね(笑)。
 
 ともあれ、その関係が進展する事で否応なく吸血鬼らしさを発芽してしまう有り様は必然を孕んでいますし、他の面々とは質の違う形での死の彩り、いわゆるそれまで育んだ人間的な健全なる精神の死を互いに意識しつつ、それをどうにか回避していく術を探っていくわけで。
 結果論的に、吸血鬼の力を取り込みつつもそこに滲むメアリーの人間としての精神性、魂との混交で救世主の意識を克服するというのはなんだか都合のいい話にも聞こえますが、この二人ならではの困難と、それの克服といえば思想的には頷ける面も強いですし、力を受け入れつつも歯止めが効いている、という意味ではまだ理沙ルートよりはしっかり担保があるのかな、という気はします。

 小夜ルートに関しては、本編でもこれが正史、と書かれているように、悪魔の介在が一番明確に意図するところに繋がっている話でもあり、あかりのラストとも婉曲に繋がっていて、結果的にどちらにもウィンウィンのハッピーエンドをもたらすという意味でも、構造論的に見所がある内容と言えるでしょう。
 小夜を孤高で特別としてあらしめていた力は、元々主人公から枝分かれしたイレギュラー、概念的に言えば人間の良心の発露とも言えるので、同質のものが相克した時に、より強い方に糾合されていく事は避けられないというのは頷ける所ですし、それを兄と妹、という禁忌的な関係と並行的に見せて、より深くひとつになる、という観念と噛み合わせていくあたりが面白いですね。

 小夜自身の性格や、恋愛の中での可愛らしさも存分に発揮出来ていますし、その上での虚無的・刹那的な色合い、このまま愛されて太く短く生きたいというありようは、いずれあかりのそれとも敷衍していく部分ではあります。
 個人的に言うならよほど小夜の方がその生まれ育ちと表面化した性格の部分から、そういう退廃的な素養を納得的に受け取れる要素は強くて、けれどそれを甘んじて受け入れられない主人公に、あくまでも悪魔的な手法で解決策を提案する悪魔と、その筋道としては非常に示唆的なものも多く楽しめました。

 ここはメアリーの高潔さも含めて本当にらしさが生きていると思いますし、その上での最後の選択もいかにもこの主人公らしい狂い方ではあります。
 これをただ自殺しただけ、と考えると間違いで、そもそも彼はその生き様の全てを宗教観に固められているところがあるわけで、キリスト教が教義として自殺を絶対的な罪と位置付けている以上、それを踏み越える事は、死後の魂全ての救済の放棄と、救世主の意識に乗っ取られるのとは別の次元での自己の変革を必要とするので、だからこそそれだけはすまい、と悪魔もメアリーも高をくくっていた部分はあると思うんですよね。
 
 そういう意味では、小夜と結ばれその精神性に少なからず染められたが故に可能だった決断とは言えますし、実際ルート中で小夜の苦しみを目の当たりにして悪態を突いたり、悪意的な言葉を用いるようになった主人公に対して、メアリーやあかりが違和感を感じるシーンをちょくちょく挿入されます。
 けれどそれを結局直接的な言及、言説にはしないで流す、というバランス感覚が、前座としての正史、という位置づけの中では完璧だったと思いますし、その時メアリーは上で触れた意味的に、でいいとして、あかりが何を考えてそれを忠告せずにスルーしたかは、しっかり考えてみると中々にえぐいものにはなるんじゃないでしょうかね。

 ともあれ、最終的にあかりルートでハッピーエンドへの道程は見えるようになるものの、基本的には悲劇的な結末にはなっています。
 そしてこの3ルートは、最終的に悪魔とあかりの語らい、という形でそれを俯瞰的に判断するシーンがラストに挿入されており、その構造的な意味はまた別の話として、この悲劇をあかりがこの程度、と笑い飛ばしているのは中々の迫力ではありました。
 加えてその失敗の中から、成功の為のヒントを探っていく中での思想性も、明らかにこれまでのやり方とは違うものが示唆されていて、それがこの作品の構造的に最も面白く、けれどあかりを逆説的なヒロインにしている根源的な理由にもなっているなと思います。

 というのも、少なくともこのラストの俯瞰的な視座の配置によって、あかりがラスボス的存在であることは明確になっているにせよ、少なくともそれまでの三人分の話を追いかけていって、その中で誰がメインヒロインだった?と印象を問えば、それはきっとメアリーだと思うんですよね。
 出だしのメアリーとの邂逅を描いたシーンも充分ひとつの個別として成り立っているという点もありますし、結果的にメアリーの善良さとお節介が発端となって、主人公が恋をして救世主の立場を克服する、というのがここまでのルートの前提ではあります。

 そこでのあかりは、本人が特別と普通、と腑分けするほどに乖離しているとは思わないものの、それでも意識的に二人の意見として、この超常的な力に肉薄させないという合意は出来ていたり、半ば意図的に存在感のない脇役、傍観者に追いやられていたとはいえるでしょう。
 それはやっぱり根本的には特別な力と特別な関係性が前提にあっての恋の取っ掛かり、という常識的な意識を主人公が抱いていた証左にもなりますし、またその中で、あくまでも主人公とメアリーは誰も犠牲にしない、或いはそれで出来る限り最小限にしようという、善意に裏打ちされた方法論でアプローチしていればこその措置とも言えます。

 けれど結果論的には、二人の考えの誤算というか、どうあっても救世主の力そのものを折伏は出来ず、それがあることをあるがまま受け入れるしかない、という絶対的な真理の前に限界を突き付けられるのが他3人のルートの内容とも言えて、やはり結果論的に、それを超越するためにはあかりのような、犠牲を顧みない悪徳に親和的な感性で対峙しなければならなかった、という事にはなっています。
 悪魔としても、特別な三人では目的に届かない半端な形に終わってしまった、という結論を踏まえて、とりあえず一番傍にいるあかりを嗾けてみるか、くらいの軽い気持ちで、自身の偏在的な有り様と、それぞれのルートでの展開を教えるなんて粗忽な事をしたんだろうとは思いますし、そしてあかり自身も最初の目的としては、メインヒロインなのにある意味で悪意100%スタートなんですよね。。。

 全ての事象の展開を知り得て、その中で主人公に対する影響力を最小に留めるために、あかり自身が本来はただ抱かれて帰っていくだけだったあの日からやり直す、それを突き動かす信念は、どこまでも特別を貶め、踏み躙りたいという悪意的な渇望ではあった、それは確かだと思います。
 けれどそれが、主人公にたびたび抱かれる事で少しずつ薄らぎ、善的な観念、一般的な愛の意味を知る中で目的そのものが変化していく、その過程がちょろ可愛いところであるのと同時に、たまたま最終的な目標を達成するのに、元々用意していた手段を貫徹する事でも成り立つことに気付いて、それを演技で上書きするというのはなるほど、と思わされますね。

 あかりにとって最大限に貶めたい悪魔に関しては、そこから情を寄せる余地はなかったからそのままに、けれど主人公や周りの友人たちに対しては、貶めたい、から、救いたい、にシフトする中で、結果的にその特別の根源たる力を奪うのが一番確実だったわけで、その為には結局主人公から救世主の力を奪い去って恣意的に用いるのが一番確実で。
 それをすれば自分が崖の下に転げ落ちる、というのをわかりすぎるほどわかっていたのに、それをそうするしかない、と言い切れるほどに渇望する、その信念と意思の強さはある意味で別ベクトルの特別、だと思いますし、その意思の持続性こそが、という言及も作中であったように、誰の目にも見えにくいだけであかり自身も特別の資質はあった、という事ではあるでしょう。

 ただ結局のところ、そういうあかりのありようが如何なる背景で育まれたか、という部分で、決定的な要因を見出せないのがこの作品解釈、あかりというヒロインの解釈の難解なところです。
 最後に語ったあの情けない、だけど誰しもが一度はそういう事を考えずにはいられない、弱い人間の普通、としてのありようの象徴的な意味が強いくせに、危険に自ら飛び込んで、一瞬のスリルの為なら命を懸けても惜しくないと思える冒険性はどこか逸脱したものがあって、けどそれを親との淡い確執や閉塞感などだけで説明するのはちょっと難しいんですよね。
 結局あかりのその偏執的な特別への執着は、生得的なものと見做すしかないなぁ、ってのが結論で、そうなるとやっぱり物語の為に用意された記号的な存在、という違和感がどうしても出てしまうわけです。

 そういう物語の構造や、その中での位置付け、という意味で、アマツツミのほたるってヒロインはすんごくわかりやすかったと思うんですよね。
 それまでのルートでしっかり主人公をさりげなく支えるポジションにいて、その蓄積の上でやっぱりこの子なら、と見込まれて、その上で自身の背負う業と、それにより二極化された善と悪の性質の明確さ、それを見せる順番の的確さなど、諸々鑑みても、どこまでもこの子がこの作品の主題の象徴、と納得できる流れが出来ていました。

 あかりの場合、敢えてそこを全部外してきている感はあるんですよね。
 それまでのルートでの存在感はかなり希薄で、介入する余地はあっても傍観者に徹している、というのは小夜ルートのありようでも触れましたし、自己の中にこれがきっかけ!と物語的な解釈として明晰な淵源があるわけでもなく、そしてルート中でも自身の中に悪意と善意、愛情と嫉妬が混在し続けて極めて分かりづらいヒロインで、少なくとも一周目だけでこの子を手放しで好きだ!と言い切るのは、よほどこの子の精神性に共感できる人でないと無理なんじゃないかと感じます。

 見方を変えると、このルートではあかりが、メアリーの思想性の足りない部分を早めに補って、言葉として明確に突きつけるシーンがあります。
 すなわち愛や恋を確かなものにするために一番必要なのは自己愛、自分が幸せと思わなくては相手を幸せに出来る筈がない、という、博愛主義の落とし穴のような観点であり、それを納得して体現する中で、主人公の体質は加速度的に変化していく事となります。

 それは目的を果たす意味で必要な措置であったのですが、ここで皮肉なのは、他ルートを俯瞰的に観察してその答えを導き出したあかり自身が、実はその考え方を心では受け入れていなかった、という部分なんですよね。
 最終的には悪魔に対する悪意以外を切り捨てて、主人公達全てを救うために芝居を演じるあかりですが、そこで髪が伸びているのに象徴されるように、心の奥底では生きたい、という渇望は確かに根付いていて。
 それでもこんな自分が誰かを幸せに出来る筈がない、という諦念と絶望が、似合わない自己犠牲の美徳に酔い痴れて思考停止をもたらしていて、そこから目を覚まさせるために二人の子供が救世主の力を用いて、あかりトゥルーの世界を紡いだわけで。

 そうされてようやく自分のありようが、性質が、なんら他の特別と変わりない神からのギフトであったと納得する事で、ようやく、主人公よりもなお遅く、あかりの人としての、人らしい精神性の獲得に至ると考えれば、これはいじけたあかりの成長譚でもあるわけなんですよね。
 ただ構造的な謎としても、そういう部分を明確に読み取り切るには一周だけのプレイじゃ中々難しいと思いますし、私も二周目やってみてようやく色々と腑に落ちて、その中であかりというヒロインの魅力をある程度理解することが出来た気はしています。

 ただ結局、そのメインヒロインに対する思い入れを持ちにくい構造が、物語そのものに没入する度合いを控えめにしてしまう弊害は避けられませんし、思想的な面ではとっても面白い試みだし、それをこういう構造で見せてくるか、って挑戦的な部分は評価しますが、やっぱり突き抜けた名シナリオだった、と言い切れない事にはなってしまいました。
 未だ自我のない赤ん坊に救世主の力を移す事で、それを代理人として十全に揮える、というあたりも恣意的な解釈が強いですし、小夜ルートの「俺」の介入も含めてとても考え抜かれたつくりだとは思いますけれど、やっぱりかなり強引さは感じますしね。

 最終的に赤ん坊を真っ当に育てれば、救世主の力を折伏できる可能性を見出せるというのも希望的観測にはなりますし、主人公以上にあかりの成長譚としての完成度は高いですけれど、スタートラインがああってのもやっぱりあかりに無条件に思い入れるのが難しいところで。
 総合的な評価としてはここがギリギリ、名作と呼ぶのはちょっと憚られるかなぁ、というところです。



キャラ(20/20)

★全体評価

 相変わらず非常に尖った独特の個性の持ち主が多いですし、その好き好きはともかく印象度としてはとてもインパクトのあるキャラ達だったなと思います。
 それぞれの持ち味をあらゆる局面で日寄ることなく矯激に表現しているような部分もあり、その中で納得は出来なくても理解は出来る、それぞれの生き様の凄みやいじらしさははっきりと見て取れて、全体として割り引く必要性は特に感じないですかね。

★NO,1!イチオシ!

 ただし、ここに出てくるのがメアリー、という時点で、私の好みと噛み合い切らなかった作品ではあったのが顕著に出てしまいます。
 無論見た目的な好みもそうですが、メアリーの場合吸血鬼として長年生きながらも、その悪徳に溺れずに人としての高潔さを保ち続けた清廉さと無垢さが最大のチャームポイントであり、けれどこの物語のトラブルを克服するという視座では、その美点が限界ともなっている、というのが実に皮肉なところです。

 その点で最終的にはほぼ蚊帳の外、となってしまうのが勿体無いですし、本当に見た目や性格、キャラデザインにCVまで素晴らしい出来ながら、それでも殿堂ラインに乗るか、と言われるとそうならなかったのが残念なところですね。
 でも本当に日常を明るく愛らしく彩ってくれましたし、概ねはメアリーが一番目立つ展開も多かったですし満足はしています。

★NO,2〜

 あかりに関しては、表面的な部分での愛らしさと可愛らしさでバランスを取っているのはあるのでしょうけど、やっぱり根本的な部分、危険に誘蛾灯に飛び込むように引き寄せられてしまうその偏執的で狂気的な気質に対して、危険は全て避けて通るスーパーチキンな私が微塵も共感できなかったのは痛いですよね、と。。。
 この子はキャラ造型含めて、アンバランスさ、危うさが魅力の全て、という感じに全振りされている感もあり、けどそこも私の好みとは微妙に噛み合わなかったりと、好きだなー、可愛いなーと思える部分も、人臭いみっともなさもいいなって思えるところはあるんですけど、差し引きで突き抜けて好き、と言えるまでは至らなかった感じですね。

 小夜もこれはこれで可愛いけどやっぱり出番やスタンスとしてはかなり幅が狭いですし、とりあえず名前的に明日君を思い出して、毒舌キャラとして無意識的に比較してどうこうとか思ったのはあったりね。。。
 赤錆姉妹はまぁ、理沙とか年甲斐もなく可愛いけどふーん、って感じだし、ゆきちゃんは出番少ないし、それにやはり絵の力って偉大ですよね、ってのはどうしてもある(笑)。


CG(18/20)

★全体評価

 今回も非常に情念に満ちた、耽美で優麗な素敵な絵が揃っていて、質量ともに素晴らしい、とは思うんですけど、やっぱりアマツツミとは違って別の絵師さんが混じってるのは少し統一感という観点でも首を傾げるところだし、純粋な絵の出来としても雲泥、とまではいわないけどやっぱりね、ってなります。
 その辺踏まえるとこのくらいが妥当かな、って思いますし、それにここ一番の破壊力も、世界観のイメージの差はあるにしても、ほの昏い色合いのものが多くてあまりガツンと来なかった、ってのはありますしね。

★立ち絵

 ポーズはヒロインで3〜4種類、サブで1〜2種類とまずまず、腕差分なども多いからそれなりに動きが活発に見えますし、演出とコミコミで躍動感があり可愛いです。
 お気に入りはメアリー正面、やや左、見返り、あかり正面、前かがみ、やや左、小夜正面あたりでしょうか。メアリー見返りの時に黒スト装備だと、お尻の艶めかしさが最高だよね。。。

 服飾はヒロインで3種類、サブで1〜2種類と、設定的に最低限、という感じでしょうか。ただそれぞれに個性は感じさせて可愛いですし、デザインも素敵ですね。
 お気に入りはメアリー制服、私服、コート、あかり制服、メイド服、理沙私服、ゆき制服あたりですね。

 表情差分はかなり多彩で、細かい感情の機微までしっかりフォローしていて基本的に素晴らしく可愛いと思います。
 特にメアリーの半泣き、感激、ほっこり、照れ困りや、あかりの赤面、上目遣い、照れ拗ねあたりは破壊力抜群でしたね。

★1枚絵

 通常が109枚、SDが8枚の計117枚。
 全体量としては充分過ぎるほどですし、出来も基本的には安定していて、非常に優美で色気があり素晴らしいとは思います。まぁ赤錆姉妹はやっぱりどうしてもちょっと落ちますけれど。

 特にお気に入りは4枚。
 1枚目はメアリーうたた寝、この無垢で純粋な寝顔の愛らしさは最強だと思います。
 2枚目はメアリー膝座り甘え、イチャラブの殿堂的なシーンではありますが、メアリーに似合う事に合う事、本当にとびきり可愛いですね。
 3枚目はメアリーの初潮、これは背徳的な意味での興奮と美しさを兼ね備えていてすごく好きです。
 4枚目はあかりメイド窓拭き、この献身的ながら愉しげな雰囲気と、困り顔の愛らしさは素晴らしかったと思います。


BGM(19/20)

★全体評価

 こちらも質量ともにほぼ申し分ない出来ではあり、ただ満点をつけるにはややBGM面でガツンと来るものが足りなかったかなー、って感じですね。
 全体的にはとにかく非常に広さを感じさせつつ、それに憧れや妬みを上手く絡ませた奥行きのあるものが多くて、それが荘厳なイメージで統一されていて素晴らしかったとは思います。

★ボーカル曲

 全部で3曲ですね。
 OPの『アオイトリ』は超名曲でした。出だしのイントロの哀愁を誘う彩りも素晴らしいですが、個人的にはBメロからサビに渡る時の繋ぎ方が凄く好きで、あのメロディラインに秘められた切なさ、憧れの色合いと、そこからのサビの伸びやかさのギャップが物凄く気に入ってます。

 EDの『タビダチノトリ』も切々とした雰囲気と疾走感、焦燥を伴う色付けが中々面白く、メインルートではないラスト、という雰囲気に噛み合う味わいの曲だなと思います。
 挿入歌の『二人だけのカーテンコール』はこういう場面で必須の透明感と染み入るような情念がしっかり裏打ちされた素敵な曲だと思いますが、個人的にはもう一歩ガツンと来るものがなかったな、とは思いました。前作の挿入歌が好き過ぎたからかもしれません。

★BGM

 インスト込みで全部で36曲と量的には水準はクリアし、ひとつひとつの出来に全体の統一感も高いレベルで仕上がっています。
 特にお気に入りは『THEME−朝日の向こう側へー』ですね。OPアレンジではありますが、このざわざわとする期待感と煌きの示し方は凄く好きですし、シーンにも凄くマッチしていて印象深いです。


システム(10/10)

★演出

 今回も非常に緻密で奥深い演出には仕上がっていますね。
 通常のキャラの仕草や動きも非常に丁寧な仕上がりですし、1枚絵のシーンイメージの構築、情感を盛り上げる映える見せ方の巧みさなど、総合的に素晴らしい仕上がりですし見ていて楽しかったです。
 ムービーも非常にテーマにリンクした色合いと雰囲気をきっちり組み込んできていて印象的ないい出来です。

★システム

 こちらもいつも通り独特ながら使いやすく、ゲーム性を阻害しないつくりでもあって文句なく、ですね。


総合(91/100)

 総プレイ時間22時間。共通が5時間に個別が3,5〜4時間ずつ、あかりトゥルーやシーン回収なども含めてこのくらいの塩梅でしょうか。
 つくりとしては基本的には無駄なく、テーマに噛み合った構成の中でしっかり必要なものは備えつつ、端々に独自の色や工夫を凝らした内容にはなっていて、そこはかとなくお約束を外した部分や挑戦的な部分も含めてしっかり組み立てられているなと感じます。

 個人的にはアマツツミが嵌り過ぎた分期待値を大きく持ち過ぎた面もあり、その中でどうしてもあかりのありようとのシンクロが上手くいかなくてうーん、ってところはありましたが、それを除いても物語りとしての完成度は高く、やや恣意的な面は除くとはいえ面白い試みだったなと感じます。
 名作、と言い切るにはやや躊躇はありますが、独得の味わいを歩みながらもしっかり面白さは担保してくる、全体としての総合力もかなり高い内容だとは思いますので、プレイして損をする事はないでしょう。

 特に体験版やってみて、あかりの危うさに触発されるもの、共鳴するものがあるのなら、突出した傑作と感じられる要素も備えているとは思いますし、そうでなくてもそれなり以上のいい作品とは思えるはずですので基本的にはおススメです。
 ただし主人公の設定とは裏腹に性模様は大人しめではあるので、その辺で無為に期待を持ち過ぎるとアレかもですね。あくまでもシナリオを一番に楽しむ作品ではあると思います。
posted by クローバー at 11:10| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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