2018年01月02日

金色ラブリッチェ

 ヒロイン全員金髪という斬新なコンセプトも面白かったですし、絵やキャラ、シナリオにCVなどそれぞれの部分で期待値を高く持てるゴージャスな布陣だったので迷わずに購入。

シナリオ(27/30)

 巡り巡る、ゴールデンタイム。

★あらすじ

 主人公は幼い頃から曲がった事が苦手で、常に真っ直ぐカッコよくありたいと思っていました。
 しかしその正義感を発揮した結果、元々の学園の仲間たちに迷惑をかけ、その上なにひとつ物事がいい方向に進まなかったという現実に打ちひしがれ、逃げるように学園を退学して、先の当てもないままブラブラと日々を無為に過ごしていて。

 そんなある日の昼、目の前で豪奢な服を着た見るからにお姫様らしい少女と、幾人もの黒服が言い争っている場面に遭遇します。
 丁度その直前に更に気分を挫かせる事態があったからか、半ば自暴自棄に近い精神性の中でその争いに割って入り、あろうことかそのお姫様らしい少女を抱きかかえて町中を逃亡する、という暴挙に出ます。

 幸いにもお姫様自身はそれを面白がってくれて、彼女の目的地である学園に送り届けたところで御用になり、その処遇で喧々諤々しているのを、友達同士の悪ふざけ、という形で穏便に取りまとめてくれて。
 ただしその少女・シルヴィは正真正銘の王女様であり、そのまま無罪放免としても国の面子やらが関わり主人公はただでは済まない、という話になって、彼女が通うノーブル学園に主人公も共に通ってほとぼりを覚ます、という事になります。

 しかしその成り行きを面白く思わない面々は多く、シルヴィの傍にいる御付きのエルや友達の玲奈などそこそこ穏当に歓迎してくれる相手もいるものの、基本的には庶民・珍獣扱いで、しかも今はほぼ女子寮として機能している学園寮に住むという事で、ますます警戒され、忌避される事となります。
 特に同じクラスの委員長の絢華の、ギリギリの嫌味な言動にくるまれたあからさまな軽蔑と嫌がらせは主人公を萎えされるものでしたが、それでも他に行き場もない主人公は、少しずつでもこの学園に足場を作るべく努力して。
 その流れで明るく闊達な後輩の茜や、隣のゲストルームに住む、喫煙で停学を食らうような金髪の不良である理亜と仲よくなり、元々の人間関係も含めて色々と足掛かりにして、ちょっとした事件を契機にようやく領内に蔓延る誤解や不満を払拭する事に成功します。

 またその過程で、自分によくしてくれる相手、特にシルヴィが自分と過去に出会って仲よく遊んだ幼馴染なのではないか、という想いは強くなっていって、果たしてそれを究明していく事で、シルヴィのみならず理亜もその当時出会ってよく遊んでいた相手と気付いて、主人公は自身の記憶の朧さを不甲斐無く思いつつも、一先ず一定の関係性が確立した事で落ち着きを得て。
 そんな日常の中で、とりわけ自身の周りにいる面々が、この年でしっかり将来のビジョンを持ち、自分を磨いてカッコつけて生きているのに気づき、対して前の学園の諸々でその芯を失い漂流している自身の置き所のなさを情けなく感じます。
 理亜がたびたび口にするゴールデンタイム、世界が一番輝いている瞬間を大切にすべきだという心情にも触発され、せめて特に気になる相手に相応しいくらいの自分の在り方を見出したいと考えるようになっていくのでした。

 これは、外向きにもカッコをつけ、かつ自分自身にも嘘をつかないカッコいい生き方を体得し、永遠に続く金色の時間を謳歌するために走り続ける、愛と絆と勇気の在り方を体現した青春物語です。

★テキスト

 全体的に非常にバランスに優れた、テンポよくそれでいて情緒深い味わいのあるテキストだなと思いますね。
 それぞれのキャラの個性が、髪の色という部分で差別化できないのを踏まえてかより喋りに鮮明に表れていて、その差異とノリの良さだけでもかなり面白く、それが融合しての関係性の進化も踏まえて、非常に掛け合いに魅力のあるテキストにはなっています。
 その内容的にも非常に卑近な部分から高尚なところまで幅広くカバーし、その中でのお嬢様と庶民のカルチャーギャップ的なものを、決して嫌味にならない程度に面白おかしく綴っているのが特徴的かな、と感じます。

 その上で要所要所にそこそこ小難しい哲学的な会話も織り交ぜてきて、このあたりは基本的にエリートしか通えない学園だからこその知的水準を思わせつつ、それを決して言葉遊びに終わらせずに、日常の中に
実践的に落としこんでくるのが上手だな、と。
 特別ハラハラ感が大きい物語ではないですが、それでも全くダレることなくスラスラと読み進められますし、ささやかなところからの蓄積による緻密な重厚感、伏線の説得性も充分に保持していて、最後まで楽しく
読み進めることが出来ましたね。

★ルート構成

 基本的に共通で好感度を蓄積して、というパターンとは違い、ある程度平均的に好感を紡いだ段階でキャラ選択があり、そこから特定のヒロインに対して改めて恋愛に至るまでの感情を育んでいく、という、プレイヤーの恣意的な選択性がより強く裏打ちされるつくりではあります。
 かつ最初にクリアできるのはシルヴィ・玲奈・エルの三人だけで、このうち一人クリアするとサブの茜に進めるようになり、そして全員クリアするとグランドルートの理亜が開陳されるという、見せたい構造がはっきりと明示化された構成になっていますね。

 どうしてもこのつくりですと、どうしてその子に傾倒する事になったか、という主人公側の動機がちと弱く感じる、という弱点は出てくるのですけれど、その分共通をかなり長くて、誰に傾斜しても最低限の担保は感じられるように配慮はされていますし、構成面での意義がより強い仕組みの作風ですからまあこれはこれで、という感じです。

 最初の4人はどういう順序で攻略しても構わないとは思いますが、強いて言えばシルヴィはいっとう最初か、理亜の直前のどちらかがおススメかな、と感じます。
 シルヴィルートは基本的な伏線を全て網羅していますので、その驚きを最大限に楽しみたいなら最初が良いですが、そうするとエルと玲奈ルートは少し焼き直し感が強くなるかな、ってのはあって、最後にすれば驚きは薄いけど全てが綺麗に収束していく在り方になるほどお姫様特権パワーえぐい、って納得は出来るので、そのあたりは好き好きでしょうね。

★シナリオ(大枠)

 ざっくり見た時に、この作品の大切なイシューは「カッコつけ」と「バランス」になってくるのかなと思います。
 恋愛模様としてはそれぞれのヒロインの気質に沿う形で主人公も自身を寄せていって、その上で様々な形で追いかけてくる過去や、それに付随しての柵に苦慮・葛藤しつつも、最後には自分なりのカッコよさと、それを貫くために必要な立ち位置をしっかり見出していく、という流れになっていて、特別に派手な要素や不思議要素はほぼ一切ない分だけ、非常に地に足がついた説得性の高い内容になっているといえるでしょう。

 誰しもが外側に見せている、俯瞰的に見た時の自分と、自分だけが知っていると思いがちな本当の自分との乖離に悩んだことはある筈で、物語的にそのあたりが扱われるときに、どうしてもそれが一元的な視野でしか語られないことが多くなりがちですが、この作品はそのあたりのバランスが秀逸です。
 結局のところそれはどちらも大切な自己を司る要因であり、その外向きにカッコつける事と、自分が自分を恥じずにいられる、カッコよくある事、それが全く同一である必要はなく、どうやって折り合いをつけていくか、かつ刻々とそれが移り変わっていく中で、如何に中庸を見極め維持し続けていけるか。
 そしてそういう生き方が出来れば、人生は常に光り輝くものとなる、という思想性を、それぞれのヒロインの尺度で語っているのが非常に面白い部分だなと感じました。

 基本的に主人公は元々、その表向きのカッコつけと内向きのカッコよさがほとんど乖離していない、真っ直ぐ淳良な精神性があったと考えられます。
 それ故に過去のシルヴィや理亜との、それぞれに全く違うベクトルで特別な、その乖離を余儀なくされる二人に強烈な印象と影響を与えたと言えますし、ただしそれは、この学園に来た時はその直前の失敗が尾を引いて、自信を失いぐらついている状態と見て取れるでしょう。

 その自信をある程度共通の中で取り戻しかけて、かつそこで自分より先に進んでいる、と感じさせるヒロインズに触発されて、という構図故にこそ、その本質をある程度説明的に順々に置いていっても不自然さがないのが見事な構成であり、そしてその到達点において象徴的なのは、どのルートでも必ず開催されるクリスマスパーティーのシーンでしょうか。
 あのシーンは大袈裟でもなくシルヴィの理亜の悲願達成の場面ではあるわけで、そこにどのくらい主人公の想いが介在していたか、というのは、それぞれのルートの着地点、中庸の在り処を暗示的に示していると思えましたし、更にはヒロイン側の精神性の乖離の様を類比的に示しているとも言えますね。

 そういう部分での納得はしっかり用意して、かつ各ルートの内容としても、一部怪しい展開はあるものの、ある程度は内的動因で進んでいく形になっています。
 エルルートのSNS問題とか、シルヴィの似非婚約者とか、あのあたりは主人公が介在していなければ国歌権力パワーでなんとかしたんだろうな、とは思えるし、逆に上でも触れたパーティーの件の様な、内的動因で絶対的なものはゆるがせにせずきっちり組み込んでいる、そのあたりの、シナリオとしての盛り上がりと全体の整合性への気遣いのバランスもしっかり取れていました。

 その分全体的に奇を衒う部分や、急激なアップダウンなどは少なく、非常に王道的で筋道も予想し易い作品ではあると思いますし、その上で掲げたテーマ性に対する答えを敢えて一つに固定しない柔軟さもあって、精密に組み立ててありつつも最後は読み手の解釈に託す、という思い切りまで含めて、本当にバランスを意識しているのかな、と思わせますね。
 それはグランドルートの理亜シナリオの内容にも存分に波及していますし、総合的にどうしても永遠ではあれない一瞬の煌きの儚さを感じさせつつ、それでも、という力強さを滲ませた素敵な物語に仕上がっていたと思います。

★(シナリオ・個別ネタバレ)

 基本的な個別評価としては、理亜>>シルヴィ>エル=玲奈>茜くらいで、これはそのまま上で語ったヒロインの乖離度に比例しているイメージです。

 元々彼女達はそれぞれの立場で、カッコつける為の外面と、自分に嘘をつかない、裏切らないカッコよさに対し、その乖離度の差はあれしっかり折り合いをつけて生きてきた、と言えます。
 それが主人公の介在と、それに伴う状況の変化で大きく揺らぐ事となり、恋愛要素も絡んで改めて着地点を見出すまでふらついてしまう様が描写され、それを感得した主人公にしても、自身がどういう立場にあれば其の一番の支えになれるのか、というのを見出していく事になるので、その点のスケール度がシナリオの面白さにも率直に反映している気はします。

 なので、元々の主人公と同様に乖離度がゼロに近い茜ルートはいかにもサブらしくあっさりした恋愛模様と、支えの道の見出し方になっていると思いますし、社会的ステータスでは一番近しいところにいる玲奈も、その精神性の面での乖離があればこそ多少なり恋愛そのもののハードルが高くなっているとはいえ、結ばれる事でより高いステージを求められる構造ではありません。
 そして社会的な面、精神的な面でのハードルがそれぞれ相応に高いエル、精神的にはややベクトルの違うところで難しく、社会的にはより難しいシルヴィあたりになると、その外面的な矜持を支えるべく主人公の奮起と、より覚悟を決めた踏み込みが必要になってきて。

 逆に理亜に対しては社会的な要素は皆無に等しいけれど、将来性の部分、そしてなにより精神的な部分でのハードルが大きく聳え立っていて、それらを総合して一緒くたに乖離度、という言葉でまとめてしまうのは乱暴かもしれませんが、便宜的に整頓しやすいのでそれを物差しに細かく見ていこうと思いますね。

 まず茜に関しては本当にシンプルなボーイミーツガールというか、茜らしい思いこんだら猪突猛進で引くことを知らない求愛に絆されて、という面が強いですし、ある意味主人公が何もしなくても勝手に引っ張られていく話と定義できます。
 無論その中での茜の魅力は、どちらかと言うと恋愛面では煮え切らない部分を見せる割合の高いこの作品においては清涼剤的な役割を果たしていますし、これはこれでの良さがありますが、主人公が過去にはっきり向き合わなくてもいい、という部分も含めてやはりおまけ的な要素は強いと言えるでしょう。

 玲奈シナリオは、仲良くなるまでのハードルが低い分だけ、その居心地の良さに先に進むのが難しい、という、いかにもバランサー同時の臆病さが露骨に表面化した部分はあり、それを超越していく契機として
あんな飛び道具を用いてくるのはかなり変化球とは言えますね。
 絢華も含めて、身体の方から結びついて、その既成事実に心を追いつかせていく形は純粋な恋愛譚として綺麗とは言い難いところですが、ある程度等身大の、庶民的ななあなあさ、という意味では、手法はともかく頷けるところもありますし、その点できちんと差異化を図っているのかな、というイメージです。

 またこのルートでは、主人公の直近の過去、この学園に来ることになった根源的な原因の部分に対してのアプローチが丁寧に描写されており、シルヴィルートでのネタバレを上手く糊塗しつつ、この方面での支えならば、というやっぱり身の丈に合った物語にはなっていると言えます。
 ぶっちゃけシルヴィルートあたりになると、この点の問題はシルヴィが全力お姫様パワーで力づくでなんとかしちゃうわけで(笑)、流石にそれに情緒は薄めですし、こうしてしっかり過去に向き合って、今の自分の居場所がそこにはない、と納得して、新たな中庸的立場へと軸足を置き換えていく、その点は高く評価出来る内容でした。

 玲奈自体も庶民的な明け透けさ、気安さはありつつも、それでもヒロインとしての可愛げや愛らしさはしっかり完備していて、その上で主人公を支えてくれる精神的な強さと優しさが透けて見えるところに魅力がたんまりとあったと思います。
 他のルートでも存在感のあるヒロインでしたし、この子のバランサーぶりがあればこその架け橋、という部分、けれどバランサー故の弱点も応分にあると、そのあたりの配慮が行き届いたシナリオでしたね。

 エルに関しては一連のSNS騒ぎが他ルートであったとして耳に入らなかったの?的な違和感は少々ありますが、総合的にはそれを契機に彼女の内面に踏み込んでいく、という流れを上手に組み込めていたと思います。
 彼女の場合は社会的な立場もそうですが、どちらかと言えばかつての妹であるシルヴィへの負い目による、精神的な自己規定の窮屈さをどう解していくかが課題になっていますね。
 本当は違う本音を押し殺して、外面に無理やり合わせて生きようとするのを、シルヴィと二人掛かりで緩和させ、本当の自分を認めた上で、それでも当然大きな比重を占めるシルヴィとの関係にどう折り合いをつけていくか、その葛藤が一番はっきり見えてくる話ではあります。

 エル自身の立場としては、フェンシングの選手としての未来をどうするかという部分がファクターになると同時に、主人公もまた今の自分から脱皮して、彼女を近くで支えられる立場にならなければ、と奮起する要素になりますし、それは必然的にシルヴィとの距離も縮まることを意味していて。
 上でも触れたように、クリスマスパーティーでのシルヴィとマリアの共演に際し、その裏側をどこまで知り得ていたのか、という部分は、主人公の社会的立場の着地点の高さ(無論実証的に、ではなく、その時点で思い描く高み、という意味合いになりますが)と比例するのかなと思っています。
 当然それに見合う外面との折り合いをつけるのも難易度は高めであり、ただそれを、一旦覚悟を決めれば真っ直ぐ立ち向かっていけるひたむきさと淳良さがあるのは、やはりこの主人公らしい美点で、それでもまだあの二人の絆と、約束の影にある思いを知るに足りない、という作品的な割り切り方も好きです。

 実際このエルルートでは、まだ前もってマリアの正体を知る、というラインまでは至っていませんし、色んな意味でこの三人のルートに入った時の理亜の心情は複雑だったろうなぁ、と。
 好きな相手が幸せであってくれればいい、という健気な想いはあっても、その相手がシルヴィの時ほど純粋な祝福や、未練を残さずにもいられないでしょうし、そもそも主人公が理亜の性質を全く気付いてないから、平気で隣の部屋に彼女連れ込んでイチャエロイチャエロしてるわけで(笑)、その辺は本当に不憫だと思わざるを得ないですねー。

 シルヴィシナリオの場合は、ここまでのルートのトピックや伏線を全て糾合して、非常に綺麗に並列させて矛盾を要さない、というゴージャスなつくりにはなっていて、かつそれ以上の秘密の開示にも繋がるところに、表向きのメインヒロインならではの完成度の高さと魅力を感じさせてくれました。
 ルート構成で書いたように、このルートを理亜の前に持ってくると、大抵の謎はある程度解決済みでそれを別のアクションで解決しつつ、他ではそこまで踏み込めなかった三人の過去についてがメインになっていく、という感じで、驚きを最大限に得たいなら最初でもいいですが、筋道を追うならラス前がベストなのかなとは思います。

 あと恋愛面で、社会的なハードルの高さを一々示唆しつつも実際はそこに重みは薄く、互いの立場と想いを誤解してのすれ違いを強めに打ちだしてきたのはちょっとだけ間延び感はあり、無論その過程で開陳できる様々な伏線もあるので悪くはないのですが、恋愛ものとしては意外性は薄かったと言えそうです。
 ただ、元々示唆されるハードルの高さに怖気づかずに、それに見合う自分になる前向きな努力をする主人公と、それを眩しく眺めつつ全力で応援する理亜、という構図は、その想いの源泉を思えばやはり痺れるものはありますし、そこまでいくと玲奈の立ち位置では無理な、位相の違うバランサーとしての理亜の存在感が際立っていましたね。

 また当然ながらこのルートでは理亜の真実までは踏み込まずに、二人の将来を明るく見据える形で終わっていくので、この時点での盛り上がりそのものはそこまででもないのかな、とは言えます。その分だけ、理亜ルート攻略後の追加イベントの切なさと愛しさの破壊力は中々でしたが。
 こういうきめ細かい仕掛けは非常に印象的ですし、同時に避けえない一抹の哀愁も孕んでいて、かつ或いは理亜ルートの最終的な着地点もここにあるのかもしれないなぁ、と思わせるのが素晴らしい複層性、解釈の幅を生み出していて気に入ってます。
 敢えて言えば、このルートは理亜と対になって初めて真価を発揮するシナリオとも言えますし、個人的な解釈ではシルヴィの存在とその支えの示し方こそが、理亜をここまで生かしてきた最大の原動力とは思うので、その意味でも互いにその点に遠慮はない、という意味でスッキリ清々しさはあるのかなと思いますね。

 んでグランドルートの理亜に関しては、まずすぐ上で書いた理亜が生存するための原動力の部分の補足から
入りましょう。
 単純に見れば、理亜があの時点から10年生きてこられたのは、あの時点で空っぽに近かった自己を形成した主人公への恋心と、シルヴィとの友情&約束ではあったと言えます。
 そしてその比重がどうだったのか、と考える時、恋心の方に重きを置きたくなるところですが、私はむしろこれはシルヴィとの約束の方が、本人も明言しているように重かったと考えます。

 というのも、恋は恋として大切ながら、その時点で自身の境遇を嫌というほどわかっていた理亜にとって、恋とは成就して愛となるものとは信じられなかったでしょうし、それ故にその想いそのものは純粋で強くとも、どこか諦観があり、それを認めた上でシルヴィなら一番嬉しい、と自分の気持ちに蓋をしていた部分はずっとずっとあったわけで。
 かつそういう気持ちは、10年全く出会えない相手に対してどこまで鮮明に、色褪せることなく抱き続けられるのか、という部分でも担保がなくて、けれどシルヴィとの関係性にはそれを瑞々しいままで保つだけの仕掛け、すなわちシルヴィがくれた金髪のかつらの存在があります。
 理亜にしてみれば、毎朝それを目の当たりにする中で、常に新たな気持ちで約束を思い返す事になったでしょうし、当然それに付随して恋心も色褪せなかったでしょうが、やっぱりそれは従、ではあると思うんですよね。

 更に言えるのは、理亜が実際のところはすごく心優しく、周りの人間を傷つけないように自分なりの配慮を強く払う性質である、という部分です。
 父親の死と、それに伴う母親との決別は、確かに本人が口にするようにグレる契機にはなっているでしょうが、でも結局彼女のグレ方って、自分に近寄って傷つく人をこれ以上増やしたくない、という想いが源泉にあるとは思うんですよね。
 シルヴィと中々会おうとしない根源もそこにあるといえばそうですし、まして深い関係になればいずれ強く悲しませるとわかっていて、それと矛盾する恋という感情だけでここまで生きる力にしてこられた、というのは難しいかな、と感じます。

 そもそもシルヴィに至っては、ボケボケの主人公と違って当時の理亜の状況をきちんと受け止めて、ですから、その上で約束を果たす程度は今以上に相手を傷つける恐怖は薄くて済みますし、諸々の状況証拠からしても理亜を生かしてきたのはシルヴィとの関係性、より具象的にはその一部である金髪のかつらの存在に依拠するのかなと思います。
 同時にその想いの純度を守るために、外向きの顔と内面の乖離が一番大きいのも理亜、という事にはなっていて、その虚勢を張る必要をなくすためには主人公からの積極的に過ぎるくらいのアプローチが必要ではあった、という点で、社会的な壁とはまた質の違う飛躍が問われていると言えますね。

 理亜が理亜でいられるようにカッコよくあり続ける事――――それは間近に迫る死の匂いに向き合い続ける事と同義ではあり、非常に強い覚悟を問われるものではあるわけで、しかもその介在があればこそ、余計に理亜の心身に負担をかけた、とう面は確実にあります。
 身も蓋もなく言えば、どのルートでも近い内に理亜は死んでしまうのでしょうけど、少なくとも他のルートではクリスマスパーティーの歌が完全にラスト、と明言しない程度には余力は残していますし、このルートで本来報われるはずのない恋心と対峙する事で、より生命の炎を太く激しく燃やしたのは確かでしょう。

 ただこのルートの面白いところは、例えば共通で二人が見た映画のように、死の意味により価値を大きくフォーカスした物語ではなく、あくまでも生と死は対等な位置関係で、死ぬまで生きる、その刹那にして永遠の輝きの比類なき価値をより強調している点にあると思います。
 この場合の生きる、という定義は、自分に嘘をつかずカッコよく生きることが出来ている前提でのもので、そうあれる限りは世界は常に輝いている、けれどそれは決して永遠ではない、という儚さとの対比で語られているのでしょう。

 死をより強く印象付けるなら、最初のダンスの時点でという構造になってくるのを、敢えてそこからごくささやかな、ドラマ性の薄い幸せな暮らしを挟んでくるところにバランス感覚を感じますし、その上でそこで紡がれた幸せをきちんと継承していって欲しい、という想いもしっかり反映されているのが素敵なところです。
 それまでの関係性があればこそ、あのシーンでのシルヴィの求婚自体には全く違和感を感じませんし、理亜の為にもいつかはその死を思い出に昇華して、新たな幸せを目指していかねばならない、という点、そして伝承的に語られる永遠の相に対する複層的な解釈を可能とする見せ方など、敢えて明示的な結論、解釈を提示しないことでその死を美化し過ぎないことに心を砕いているわけですね。

 上でも触れたように、シルヴィルートの追加エピソードは、或いは理亜ルートからの派生でも成り立つように仕組まれていますし、更にはそこからエクストラに入った時のあの結婚式の一枚絵、あれだって或いはあり得たかもしれない可能性を、それこそ循環構造の中で示唆しているとも言えて(さりげなく普段のかつらより長くなっているのがより感じ入りますよねぇ)、こういうどっちつかずさが落ち着かない、という人もいるかもですが、個人的にはこのつくりはほとほと感心しましたね。
 どうあれ基本的にはビターエンドなのは確かですが、その中で死を重く捉え過ぎない事で独特の余韻を感じさせますし、なにより理亜が全力で生き切った、と言えるだけの納得を、様々な角度から照射してくれているのが良かったと思います。

 全体的にあまり急転直下の驚きなどはなく、普通に読み進めていけば着地点が見えやすい王道的な内容ですが、それを説得的に見せる為の思想的・状況的肉付けは充分に出来ていますし、名作と呼んでいいだけの仕上がりだったと思います。



キャラ(20/20)

★全体評価

 まあ序盤の学園生の主人公への風当たりとか、生々しいいやらしさも応分に含んだキャラ性ではありますが、それぞれの立場、視界の高さにおいての率直な人間性を丁寧に追いかけている、という意味では説得力自体はありますし、それをフォローしてくれる側のヒロインズの魅力を裏打ちしてくれる、という点では効果的でもありました。
 それも含めてキャラの内面をすごく丁寧に掬い取るつくりになっていますし、それぞれの個性の裏側にある純粋な優しさや高潔さ、一途さがすごく綺麗で、印象深い面々だったなと思います。

★NO,1!イチオシ!

 まあそりゃあ当然理亜にはなりますねー。
 基本的に個性そのものがネタバレってくらいの子なのであんまり深くは語れませんが、つっけんどんで人を寄せ付けない見た目の雰囲気の裏側に隠し持った思いやりの深さと芯の強さ、健気さやいじらしさなどは本当に素晴らしいもので、心情を切実に吐露するシーンや、仮面を打ち捨てて真っ直ぐに甘えられるようになってからの破壊力は凄まじいものがありました。

 元々見た目的にもCV的にもドンピシャすぎましたし、文句なしに2017年の殿堂入りヒロインと言えるでしょう。
 強いて言えば、スタンス的に仕方ないとはいえ、もうちょっとイチャエロなシーンあっても良かったのよ?

★NO,2〜

 ここもやはりシルヴィにはなりますね。この二人はどうあれこの作品の二枚甲板ですし、それに相応しいだけの魅力を存分に備えていました。
 シルヴィの場合は本質的に、立場として求められる上品さや朗らかさ、優しさも応分に持ち合わせていますが、けれどいざという時に顔を出す果敢さや真っ直ぐや、誠実さの部分の魅力が本当に素敵で、理亜ルートラストの屋上のアレとか本当に痺れましたよねぇ。
 ある意味で理亜をいちばん支え続けてきたのは、って考えてもその存在感は偉大ですし、純粋に何にでも好奇心を持って楽しく笑っていてくれるその空気感だけでも素晴らしく話を盛り上げてくれていましたし、メインヒロインとして非の打ちどころのない魅力を備えていたと思います。

 最終的にはそこまで届かなかったにしても、ミナの可愛さも心惹かれましたねー。
 色々複雑な立場ながらも心から姉を慕い、その共にも誠実に接して、その心映えの綺麗さと高貴さ、一方で見せる年相応の無邪気さと愛らしさも含めて物凄く好きでした。おにいちゃん、が可愛過ぎる。。。

 玲奈もすごく気さくで距離感に苦労しない、気の置けない間柄を一番早い段階で築けていて、間違いなくこの作品序盤の癒しではありましたね。
 その圧倒的なコミュ力でどの場面でも存在感がありましたし、ネアカな雰囲気とCV力もばっちり噛み合っていて、戸別のウダウダ感を除けば大概気に入っている子です。

 エルも苦労人、という感じながら、純粋にシルヴィの事を大切にしていて、その中で見せる様々な顔の魅力と、そこから離れての女の子としてのギャップの可愛さは中々でしたね。
 あと千恵華も可愛いんですよねぇー。ミナとの関係性で垣間見せるおにいちゃん顛末など含めて、コロッと騙された部分はありつつ、むしろこの点では主人公の贅沢ぶりに憤慨せざるを得ない。。。
 茜もストレートなバーニングガール、って感じで、他の子がどうしても立ち位置的に外面と内面に乖離を作らざるを得ないところはある中での、この屈託ない率直さは清涼剤ではあったのかなと思います。


CG(19/20)

★全体評価

 今回はやや全体の完成度にブレを感じる向きもなくはなかったですが、本質的に大好きな絵柄ではありますし、要所での破壊力は流石の一言で、質量ともに満足度はそれなりに高いですね。

★立ち絵

 ポーズはヒロインで2種類+α、サブで1種類とそこまで多くはないですかね。衣装面含めてこの点はもうちょいバリエーションあっても、とは思いますが、それぞれの個性はしっかり感じさせる可愛らしい出来ではあると思います。
 お気に入りは理亜正面、シルヴィ正面、玲奈正面、ミナ正面、茜正面やや斜めあたりでしょうか。

 服飾はヒロインで3〜4種類、サブも2〜4種類で、なぜかミナが一番服飾が多いというね。。。まあ一応シナリオの内容の中での必要最低限は完備していますし、デザインそのものはいつもながらに洗練されていて可愛らしく見事だったと思います。髪型が服に合わせて変わるのもやっぱり嬉しいですね。
 お気に入りは理亜私服、シルヴィ制服、私服、玲奈外出着、ミナ私服、メイド服、エル私服、マリアドレス、茜運動着あたりですね。

 表情差分もそれなりには完備されていて、それぞれに個性は感じさせて可愛かったと思います。遊びも多いですしコロコロ表情が変わるのは本当に素敵ですね。
 お気に入りは理亜笑顔、ふてくされ、怒り、ウインク、照れ焦り、ジト目、シルヴィウインク、笑顔、ふくれっ面、思案気、哀しみ、玲奈笑顔、苦笑、照れ笑い、><、ミナ笑顔、困惑、上目遣い、ドヤ顔、エル笑顔、真剣、眉顰め、茜笑顔、怯え、照れ困りあたりですね。

★1枚絵

 通常90枚にSD22枚、量的には充分水準はクリアしていますし、シナリオの長さの割にはしっかり必要な部分には用意されている感じで、この辺りもバランス良く感じました。
 出来も多少安定感を欠く印象はありましたが、その分インパクトの大きいものもそれなりにありましたし満足度は高いですね。

 特にお気に入りは8枚、かな。
 1枚目はシルヴィとお茶会、ここでのシルヴィの多彩な表情、特ににっこりと照れ困りの破壊力が凄いですね。
 2枚目はロリシルヴィ、もうこれは問答無用で愛らし過ぎて最高ですわ。
 3枚目はシルヴィ理亜の梳り、このシーンに秘められた二人の想いの深みと合わせて本当に染み入る美しさがあります。
 4枚目はロリマリア膝枕、この暖かで幸せな空気感と、ロリマリアの可愛さが珠玉。

 5枚目はシルヴィ屋上の語らい、このシーンの清冽な美しさは本当にインパクトがありました。
 6枚目は玲奈とお買い物、このシーンの玲奈の活き活きした雰囲気と笑顔の綺麗さはインパクトありますねー。
 7枚目は理亜水面に浮かんで、この心象風景の透明感と静謐な美しさは印象的です。
 8枚目は理亜とドレス、虚飾を剥ぎ取ってひたすらに儚い美しさを醸している理亜が素敵すぎます。


BGM(18/20)

★全体評価

 作品のテーマとしてもカッコよさが問われているように、楽曲も少しそのイメージが強く出た、いつもよりスタイリッシュなつくりにシフトしている感はあります。
 無論全体のバランスは整っていますし、安定して高い出来、量的にも充分ですが、情緒的なシーンでのガツンと破壊的な威力を秘めた曲は今回はあまり見うけられなかったのがちと残念、というところ。

★ボーカル曲

 全部で3曲。
 OPの『Golden Mission』はとても疾走感と迫力があり、ロックとジャズっぽさが融合したような雰囲気の中で気高く生きる様を激しく投影している素敵な曲ですね。
 メロディラインも中々完成度が高く、特にBメロが好きなんですが、しかしこれものすっごい早口の上にタイミング掴み辛くて、せっかくフルバージョンあるから完璧に覚えたいけど大変そうだ。。。

 EDの『shining!our life』は、理亜以外のEDですが、こちらはそれぞれのルートで手にした幸せの形を噛み締めつつ、それでも立ち止まらずに前に進んでいく、程よいスピード感とカッコよさ、一抹の哀愁が印象的ですね。 
 ただ曲としてはそこまで印象深くはなくて、淡々と流したまま終わってしまう感覚はあります。

 グランドEDの『あの輝きを忘れない』は、イントロが鮮烈なピアノ独奏で、まあそれだけでも感慨深いものはありますが、トータル的には一番この作品の中でしんみりしっとりした曲で、いかにも理亜というヒロインの在り方に寄り添ったイメージの曲にはなっていると思います。
 でもこちらも曲としての破壊力そのものはそこまででもないなぁ、ってのはあって、ちょっと曲として素直過ぎるイメージはありますね。

★BGM

 インスト込みで32曲とまず水準クラス、それぞれにスタイリッシュな雰囲気と高貴な印象が適度に敷衍されていて、それでいて明るく跳ねやかな点も強く打ち出せていて、作風にマッチしたバランスの良い配置だと思います。

 特にお気に入りは『Maria bishop』かなぁやっぱり。コーラス付きのBGM、といい意味でも味わい深くて好きですけど、やっぱりその背景、その歌声の輝きの意味まで考えて耳を傾けると心奮わせるものが大きいというか、とても気に入ってます。


システム(9/10)

★演出

 全体的な総合力も高いですし、かつ要所での情感演出、盛り上げ方が凄く丁寧で美しく素敵でしたね。
 日常のコミカルなドタバタもすごく躍動感があって面白いですし、対してしんみりとしたシーン、屋上の落日の演出を筆頭に、しっかり心情を汲み取っての光の遣い方、音のイメージ、絵の見せ方など計算し尽くされた雰囲気でとても好きです。

 ムービーもとても愛らしく細やかに動いて楽しいですし、曲の勢いに負けていないところが凄いですね。これはかなりお気に入りです。ちびダンス可愛い。

★システム

 なんかこの時代になるとこの元々の解像度だと物足りなく感じるってのは贅沢なんですが、それはともかくとしてさしあたり不備はない、けど特段に素晴らしさもない、ってのはあるかなと。
 一応サイドバーとか、ボイスセーブとか細かい部分で有難い要素もありますし、使い勝手そのものはそんなにスムーズさがないのはご愛嬌ですが総合して普通、というしかないかなぁ。


総合(93/100)

 総プレイ時間24時間くらい。
 共通が6時間とそこそこ長く、個別も茜は1,5時間くらいと短いですが、玲奈、エルで3,5〜4時間くらい、シルヴィと理亜は4〜4.5時間くらいあり、その他に色々回収プレイなど加味するとこのくらいにはなるかな、と。

 共通序盤のいたたまれなさこそネックではありますが、そこさえクリアしてしまえば後はすごく雰囲気のいい世界観の中での味わい深い物語を堪能できますし、色々可能性を示唆しつつも最終的には不思議要素はほぼ介入してこない、王道的なつくりに終始しつつも、その中で独自の思想性や色を出せているのはポイントが高いと思います。
 ガツンと刺さる、というより、自分の中でリフレインしているとじわじわ来るタイプの作品とは思いますし、そこまで緩急は激しくないのでもどかしさもあるかもですが、個人的にはこれはかなり好きな部類のシナリオでしたね。

 ヒロインの魅力も高いですし、よっぽどのハッピーエンド至上主義者でもない限りはまぁ受け入れられるシナリオとも思うので、好みの子がいるなら素直にプレイしてみてもいいんじゃないか、とは思いますね。
posted by クローバー at 10:13| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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