シナリオ(25/30)
コンセプトの大々々勝利(笑)。
★あらすじ
主人公はもうすぐ不惑の年を迎える寂しい独身貴族。
子供の頃のトラウマや、その後の人間関係などで、誰か特定の相手に深く踏み込むのを苦手にしており、一人が気楽だと思って生きてきたものの、人生も折り返しを迎えるこの年頃になって、知らず寂しさを感じる事も多くなっていました。
そんな中で救いになっていたのが、従姉妹の臨との関わりと、その一粒種である水香との触れ合いで。
それでもそんなに深い関わりは避け、水香の前でも外向きの、剽軽な仮面をかぶって接してきていたのですが、ある日臨が仕事の関係上、時折数日家を留守にするという事情を聞き知り、その中で口には出さないものの水香が寂しがっている事が、かつての自身の境遇を踏まえて切実に感じ取れて。
寂しいオジサンと、寂しい年頃の少女、そのシンパシーが少しずつ二人の関係を深めていき、共依存への道に進んでいく、これはそんな甘く切なく純粋な物語です。
★テキスト
このライターさんの作品は、できない私、生命のスペアに続いて3作品目なのですが、作を重ねるごとにテキストの洗練度は上がっているな、と感じます。
正直できない私、のときなんかめっちゃくどくて、あれもこれもテキストで語り過ぎていたんですけれど、今作ではそういう部分はほとんどなく、ちょっとした所作や画面効果などで上手く感情の機微を表現しつつ、地の文や会話のテンポは出来るだけシンプルに構成する、という意識がしっかり見えて、スラスラ読みやすく、その上で二人の思いの変遷がスッと読み手に染みてくる、派手さはないけど丁寧でいいテキストだと思いました。
全体の構成やテーマ性の中で大切な伏線も、バランス良くくどくなく配置されていて、その上でかなり濃密にイチャラブ展開を丁寧に進めてくれるので、これは正直思った以上に楽しめたな、と感じますし、テキストの良さがその一助をしっかり担っていたなと思いますね。
★ルート構成
選択肢は一切ない一本道です。
母親と焼け木杭ルート(実際どこまで踏み込んだ関係だったのかはぼかされてますけれど)なんてものはございませんし、親子丼もない、真っ直ぐにロリっ子清純派少女と向き合う純愛まっしぐらの構成です。
ゲーム性という意味では皆無ですし、上の様な余禄を期待していたなら残念、としか言えませんが、そもそも公式の時点で非攻略明言してますしね、あくまでもコンセプトを十全に生かすためのドラマ性重視の作品と割り切って見るべきでしょう。
★シナリオ
非常にコンセプトに忠実で、このシチュエーションが刺さる人には確実にプレイしながらブーストがかかっていく良質な出来です。
まず年の差、ふたまわり。というタイトルからしてすごくいいですよね。
主人公をアラフォーに設定する事で、字面の意味でのふたまわりを、十の位の数字が二回転するんですよ〜、と、建前上は18禁を貫きつつ、しかし日本人なら当然干支を意識するので、ふたまわりとなると…………と、ロリコン紳士各所の妄想力を全力で刺激してくれる絶妙の言い回しをチョイスしていると思います。
無論実際的には裏側の意味での年頃を意識させる部分が全力で展開されますし、その上での水香というヒロインの造型も実に考え抜かれていて素晴らしいです。
この手のゲームのヒロインとしてはかなり地味目のデザインにはなるのですが、それが逆に、オシャレに目覚め切っていない純朴な少女感と、一方で家庭環境から生育された、ある程度自立して大人びた部分の清冽さ、恬淡さを意識させる面を見事に両立させていて、本当にそこが抜群にシナリオと嵌り切っているのが最高なんですよね。
時に年相応の可愛らしさにときめき、意地っ張りを微笑ましく見つめて、けれど時折見せる大人びた横顔や所作、使命感や責任感の強さを感じさせる怜悧な雰囲気に感じ入り、その二面性の深みに嵌っていく、その共鳴感、主人公とのシンクロニティが、特にロリぃ趣味の諸氏にはたまらんものがあるといえるでしょう。
そういう土台の構成が非常にしっかりしている上に、シナリオとしても特別感はないものの、非常に丁寧に2人の距離の接近とその下地、そこから生じる葛藤などを追い掛けていて、日常の穏やかで心休まる生活の隅っこにそういう心情の重さがチラッと垣間見られるのが凄くいいバランスです。
作品全体としては結構タブー色の強い部分はありつつ、決して重くはなり過ぎず、あくまでも二人の触れ合い、日常のささやかな喜びと一緒にいる事で得られる安寧をメインにしているので、そういう部分でのゴタゴタが苦手な人でもそんなに躊躇いなく手に取れると思いますし、かつエロスも比較的充実しています。
分割とかもあるにせよ、全部で10シーンもあったのはちょっと意外で、最近のあかべぇ3のエロ特化路線の一環ではあるからそれはそうか、と思いつつ、これも嬉しい誤算ではありました。
それだけシーン数があるので、しっかりはじめての契りから順々に、性感を開発され、その悦びに嵌って溺れていく流れを一通り網羅してくれますし、前戯や体位なども好奇心の赴くままに一通りチャレンジしてみる、みたいな感じでのほのぼの感はありつつしっかりエロい触れ合いが楽しめます。
その分1シーンずつのねちっこさや、アブノーマルな方向性は薄く、あくまでも純愛の範囲での交わりにはなるので、そういう仕組み自体が合う合わないはあるでしょうが、絵の出来の良さともセットで私には実に刺さるつくりでしたね。
実にロリコン魂を擽る、成長期の膨らみかけのスタイル指定や、絵の構図の中で必ずさりげなく水香の「小ささ」を意識させてくるところなど、細やかな配慮の積み重ねが絶妙な背徳感と結ばれて感じる幸福感・一体感を両立させていると思いますし、本当にこの辺りはコンセプトの意義をとことんまで突き詰めてくれているなぁと感心するところです。
全体尺としては6時間前後、という所で、お値段3800円也、と考えれば、ポリューミーとは決して言えませんが水準のシナリオ量だとも思いますし、その中に萌え、エロス、シナリオの面白さを全部コンパクトに、それでいて破綻しないように綺麗に詰め込み切っているのは中々ですね。
寂しさから来る共依存と、そこを起因に深まる関係性、その背景にある水香の母親・臨と主人公の過去の関係性や、親子ならではのリフレインなど、細やかな伏線が糾合されて、本来許されない、道ならぬ関係の二人が優しく幸せな未来を切り拓いていく力になっていく流れは、そりゃあ綺麗事と言ってしまえばそうだけどそれなりに説得力はあったと思いますし、私としては予想以上に完成度と満足度が高くてびっくりしていますね。
そりゃまぁ、流石にこの尺ですからどうしても拾い切れない部分はありますし、想いが通じてすぐ覆い被さっちゃったり、水香の将来が第一だ、とか言いつつバンバン向こう見ずに中出し連打してたりとか(笑)、この辺はいかにもエロゲらしいご都合主義全開ではありますけどね。
あくまでもシナリオ性を追求するなら、しっかりラストまでは避妊を心がけて、二人の関係性が確定したところでご褒美的に、みたいな焦らしプレイも嫌いじゃないんですけど、まあこのシーン数だとその両立は無理か、って感じで、そこまで求めるのは流石に贅沢というものでしょう。勿論これはこれで実に淫靡で背徳的でたまらんのでね(笑)。
以上、簡素にさっくりまとめる形になりましたが、大枠の流れはもうタイトルの時点である程度プレイヤーに予測できる作品ですし、けれどそれを予想の2段くらい上の丁寧さでしっかり組み上げてくれた、というイメージです。
ロリコンの自覚がある人、水香のキャラデザインが好みだった人は是非ともプレイして欲しい作品ですし、点数としてもこの手の作品としては最大限に評価して名作ラインに乗せてしまおうと思います。まぁ今日は冷却期間なしで書いてるので、その辺で甘さはあるかもですが、この水香の可愛さはその価値が充分にある!と断言しておきます。
キャラ(20/20)
★全体評価
基本的に出てくる人数かなり少ない作品ですし、その分だけそれぞれの人間性や個性、生き様の部分をしっかり深掘りして、けれどそれを言葉で語り過ぎず、或いは言葉に出来ずにいる中での感情の擦り合わせの過程が本当にいい味を出せています。
主人公も臨もそれぞれに面白いキャラですし、地味に不憫な竹ノ内さんとか程よい箸休めもあったりで、全体的にほっこり優しい気分にさせてくれるキャラ群でしたね。
★NO,1!イチオシ!
そして勿論、我らがロリコンの希望の星、大正義天使の水香の可愛さは最強なのですよこれが。
基本的にはクールを装っていて、生育環境的に誰かに甘えたり頼ったりも苦手で、大好きな母親を助けるために出来る限り家事などの面で自立していきたいと強く思い、その役割を取られそうになると背伸びして怒り出すとか、いかにもな造型ではあるのですけど、でもそのテンプレっぷりとキャラデザイン、日常の掛け合いでの反応が一々抜群に可愛いんですよねぇ〜。
そういう子が徐々に遠慮を脱ぎ捨てて甘えてくれたり、頼ってくれたりするのはやっぱり冥利、って感じになりますし、その感情が少しずつ違ったものになっていく、その機微の乙女らしい繊細さも、それを助長する主人公の寄り添い方に対する反応もまた素晴らしく、そして好きを自覚してからの距離感もまた実にこの子らしいもので。
どうしても言葉では素直になり切れないのに傍にいたがるアンバランスさがすごく愛おしく、性の交わりもどこかその延長線の中での喜び、って部分が最初は強くて、そこから順々に結ばれる快楽そのものに傾倒していく様とかも最高でした。
キャラデザそのものもど真ん中ストライクでしたし、性格面や能力面、特に家庭的な部分の性能は本当に素晴らしく、まあこんな子と四六時中傍にいて懐かれ慕われたら、ロリコンの気が無くとも流されちゃうんじゃね?と思うくらいには素晴らしい子だったと思います。
ぶっちゃけ殿堂ラインに乗せてもいいと思うくらい好きになれたなー、と思いますし、折々に触れてちょい起動してはニマニマする怪しい人になりそうです。。。
CG(19/20)
★全体評価
質量ともに中々のものなのですが、それ以上にコンセプトの意図をしっかり理解しての構図の取り方、角度、表情のバランス、服や下着のデザインのチョイスなどが本当に秀逸で、1枚絵が出てくるたびに「かわかわかわかわ…………!!」と狂喜乱舞していたほどです(笑)。
流石に満点まではどうかと思ったのでここに留めましたが、ツボにはまったという意味では近年でも屈指かもしれませんね。
★立ち絵
水香と臨の立ち絵しかないので、その辺は流石にポリューミーとは言い難いですが、少なくとも水香に関しては差分などもそれなりにあって、年頃らしい可愛らしさを存分に見せてくれたと思います。
ポーズは2種類で、どこか愁いを帯びた横向きと、年相応の愛らしい反応が多かった正面向きで、シナリオにも通じる二面性を上手く表現しているのかなと思いますし、どっちも可愛かったです。
服飾は制服、私服、部屋着、借り物パジャマの4種類で、どれもこの子の清楚さや可愛らしさを引き立てる良いものでしたね。やっぱりこういうシンプルな制服だからこそ映える、という逆説はあると思う。最近の可愛い萌え路線の制服は拘り過ぎなきらいがあるので。
表情差分も幅広く、デフォルメ系の遊びもそこそこあって、見た目より感情の幅が広いこの子らしさを上手くバランス良く出せていたと思います。ジト目が全体的に超可愛い。
★1枚絵
全部で30枚ですね。
基本的に水香しか出てこないですが、どれも非常に出来が安定して素晴らしく、かつ上でも触れたように構図の工夫がコンセプトにバッチリマッチしていて素晴らしかったと思います。
特にお気に入りは、うたた寝、紅葉狩り、お風呂バック、対面座位、脚舐め正常位あたりかなー。どれもこれも本当に可愛くて甲乙つけがたいんですけどね。
BGM(17/20)
★全体評価
昨今の作品としては非常に珍しく、OPEDのボーカル曲なしという
ただBGMの出来はかなり良く、幾分か物足りなさはあるにせよそこで補完されたところを踏まえてこの点数です。
★BGM
全部で12曲と、値段踏まえれば水準はありますね。
でもその分ひとつひとつの出来はかなり良く、ほのかな哀愁と寂寥、それを乗り越えての繋がりがもたらす喜びの在り処を、しっすり曲の上でもサポートできていたと感じます。
特にお気に入りは『こころみずおと』『隣』『きもちゆらして』あたりですね。すごくピアノの旋律が映える曲が多かったです。
システム(8/10)
★演出・システム
演出としては、そこで勝負する作品でもないので簡素に、勿論最低限の演出はありますが特段優れているとも言えないでしょう。ムービーもないですしね。
システムもいつも通りで不足はなく、といって特別優れているとも言い難いので平均点、という着地になります。
総合(89/100)
総プレイ時間6時間。
リアルでやらかしたらそれこそ通報まっしぐらなコンセプトだけに、ロリコンのロマンがギュっと煮詰まった作品になっていますし、それをここまでバランス良く、物語性ともエロスとも鼎立させて仕上げてきたなぁとかなり驚きました。
コンセプト的に刺さらない人にはふーん、で終わってしまうかもですが、刺さる人には相乗効果的にとことんまで刺さる特化的な作品ですし、このシチュにときめきを覚える人ならプレイしてみて絶対に損はないと思います。これは本当に面白かったです。