2018年03月08日

ロスト・エコーズ

 あまりにも発売に向けての流れが立て込み過ぎていて怪しかったから買わないつもり…………だったんだけど、体験版やってみたら思った以上に面白かったので、清水の舞台から飛び降りるつもりで(笑)購入。


シナリオ(23/30)

 時を駆ける想い。

★あらすじ

 主人公は若くして両親を亡くし、家業の写真館とそこに併設された喫茶店を、妹の晶穂と二人で営んで暮らしています。
 ある日練習がてらあちこちで写真を撮っていると、海辺で不思議な雰囲気を持った少女を見かけ、思わず許可も取らずにシャッターを切ってしまいます。
 しかしその少女は怒るでもなく、いずれの再会を予感させる言葉を残して去っていって。

 そして近頃、主人公は隣に住む幼馴染の結佳の様子がおかしい事を気にかけていました。
 まるで人を寄せ付けない頑なな雰囲気を纏っていて、それは誰に対しても変わらず、主人公達を介して知り合った考古研部長の琥珀などは、自分が嫌われていると考えてしまうほどで、その挙措が朗らかなはずの日常の中で重い色を湛えていたのです。

 そんなある日、主人公は仕事で付き合いのある御筥宮の筆頭巫女(だけどポンコツ)の雛緒に連れられて宮に趣き、そこで件の写真少女と再会します。
 そして雛緒の話によると、彼女はこの宮の隠し神であり、この度雛緒の信仰を獲得して力を取り戻したらしく、半信半疑の主人公もその不可思議な力を実際に見るに及んでそれを納得し。
 その上でその卯実と新たに雛緒に名付けられた少女は、自らの積年の宿願である、自身の分霊である結佳が、過去からの因縁によって祟り堕ちしかかっているのを防ぎたい、と考えていました。

 最近の結佳の不自然な挙動の原因がそれだったと知って腑に落ちるところもあった主人公は、大切な幼馴染を守るために、卯実の手引きで400年もの昔、戦国時代の彼女の前世・立花ァ千代に降り掛かった惨劇と悔恨を回避するために奔走する事になり、その過程で家族や考古研の友人達の力を借り受ける事となります。

 過去と現在、それぞれが因果で繋がる二つの時代を行き来する中で、現代にもちらされかねない破滅を回避し、無事に本願を果たすことが出来るのか?
 そしてその過程で、いかなる絆を育み、それがどう未来へと波及していくのか?
 これはそんな、大切な人を守り、思う気持ちの強さと大切さを滲ませた、歴史SF青春ストーリーです。

★テキスト

 読み口としては思った以上に全体的に堅調で、かつやり取りのコミカルさとテンポの良さが目立っていましたね。特に晶穂との会話が楽しい楽しい。
 一方で歴史や過去改変の流れにおいては、しっかりと史実を踏まえた上で、作品として都合のいい最低限の解釈の幅を持たせつつ、出来るだけシンプルにまとめており、その緩急のつけ方とひとつひとつのシーンの盛り上げ方は中々に上質だったと思います。

 無論個別ルートでは多少なり味わいが変わってくるところはどうしたってありますが、それでも最低限の統一感は完備していて、徹頭徹尾読みにくさは感じずに面白おかしく進められたかなと感じますね。

★ルート構成

 これは最近のゲームとしては中々骨太に出来ていて、基本的には過去と現在、そのどちらにおいても同一の魂を持つヒロインを優先的に選んでいけばいい、とはなりますが、ひとつ選択を間違えると一瞬でバッドエンド、ノーマルエンドなんてものもあって、比較的シビアな部類です。スピーディーなジャンプ機能は搭載しているとはいえ、こまめなセーブ推奨ですね。
 そして最初は結佳と卯実以外の三人が攻略可能、三人クリア後に結佳が解放されて、その後タイトル画面から卯実ルートに入れるという仕組みになっています。

 このあたり、ゲーム性と物語性をしっかり両立させた部分は褒められますが、流石にその全ての選択肢による変遷をその後の内容でフォローし切れていない部分、細かい齟齬はあったかなと、そこは勿体ないところです。

★シナリオ(大枠)

 共通の骨子がかなりはっきりしていて、過去と現在を行き来し、結佳の魂の祟り堕ちを防ぐ、という目的をある程度しっかり完遂しつつ、その過程で起きた微妙な揺らぎを個別ルートの課題として持ち込む、という二段構えになっていて、恐れていた共通に力を注ぎ過ぎて、個別がえらく簡素になってしまうのでは、という懸念はお門違いだったのがまず評価できる部分です。

 世界観としては、八百万の神様がいて、その中でも当然力のある神、ない神と色々おり、その力を行使すれば過去改変のような不可思議な事も出来るけれど、基本的には人間世界には不干渉・無関心を貫いている、という前提があります。
 その上で弱い神様である卯実は、その弱さと出自もあって人の世に交わる数少ない神であり、自身の分魂を慈しんでいる事もあって、本来掟破りに近い改変をより偉い神様から限定的に行使することを赦されている、という構造です。
 よって歴史をダイナミックに変貌させる、という事ではなく、あくまでも結佳が祟り堕ちしかかっている根本的な原因、ァ千代の痛恨を回避する事にのみ特化したものになっています。

 そしてここでのSF的な概念に関しては、いわゆる並行世界ではなく、一定の振れ幅の中で時に揺らぎは生じるものの、最終的には一番太い歴史線に収束していく、という感じで、なんとなくシュタインズ・ゲートのアトラクタフィールドを彷彿とさせます。
 だから基本的にタイムパラドックスとかそちらの問題は起きないけれど、ただその揺らぎが完全に固着化するまでは些細ながらも問題が起き得るし、また同一の存在が同時に存在する事も許容される、というような解釈でいいのだと思います。
 このあたりはどうしたって恣意的な部分は出てきますが、かなり綿密に理論を積み立てていますし、かつそれを物語の展開の中でより恣意的に都合よく用いていないのは好感が持てます。

 また過去編の物語としては、1586年の島津侵攻を目前にした立花家と、その他周辺勢力のありよう、というのがベースになるのですが、ここでの歴史実証性はかなり高いです。
 基本エロゲで戦国モノ、となると、主要な登場人物がこぞってヒロイン化、というのがひとつのお約束ではありますが、この作品にそれは基本なく、あくまでも元々女子だったァ千代や加耶姫などがそのまま出てきて活躍する、という点でも特殊性はあります。
 流石にそのヒロインズ、本来はこの時点で婚儀を交わしている筈だけど、程度の恣意性はありますが、大まかな歴史の流れ自体には決して手を加えず、その隙間の部分に挿入できる物語をしっかり精緻に構築しているあたり、歴史に対する畏敬と郷土愛的なものをヒシヒシと感じさせますね。

 ともあれ、そういう土台の部分がかなりしっかり説得的に紡がれているので、その改変がもたらす影響の際についてもヒロイン毎にそれなりに差異化出来ており、個別としてもそれなり以上に盛り上がりのある内容に出来ているのは悪くなかったと思いますね。
 強いて言えば、どうしても状況の変化に対する対応がメインになってしまうので、純粋なイチャラブ的なシーンがもっと欲しかった、なんてのはありますが、エロス自体はそこそこ豊富ですし、なんだかんだこじつけて過去編のヒロインともそういうシーンを用意しているあたりは意欲的かな、と感じます。

 ただ全体像として見た時に、当然メインは結佳⇒卯実の流れにはなるのですけれど、そこで得られるものに特別感を要していない、という部分は終わってみると気になります。
 その辺はネタバレで分析しますが、確かに物語としての緻密さ、盛り上がりは結佳が一番だと断言できるものの、それをより価値的に見せるだけの擦り合わせが微妙に足りていない感じはして、その他諸々細かい部分の物足りなさも併せて考えると、名作レベルまで引き上げるのはちょっと苦しいかな、という印象になりますね。

★シナリオ(個別・ネタバレ)

 一応の個別評価としては、結佳>卯実>琥珀>晶穂=雛緒くらいになります。ただ高いレベルでの差ではあり、晶穂や雛緒あたりでも水準的な面白さはクリアしているかな、と感じます。

 上で触れたように、過去改変の中でよりどのヒロインに傾斜するかで、その魂に与えた影響が、収束に至るまでの揺らぎの中で顕現して、現代のヒロインもまた主人公により昵懇となり、執着を抱くという構図は明確です。
 晶穂と雛緒に関しては、その想いの強さによって波及した問題などを解決していくのがメインになりますし、それぞれにやや一足飛びな部分、間の取り方が微妙な部分はあれ、大まかな流れとしては悪くないつくりではないかと感じます。

 まあ晶穂というか加耶姫様がかなーりヤンデレっぽいので(笑)、それを受けての晶穂の変貌や揺らぎの部分は、他ルートの快活で気配り上手で仲良し兄妹、って感じの雰囲気からは大分一線を画してくるので、そこんとこ好き好き、って感じで、いわゆる普通の妹ルートとはちょっと雰囲気は違います。
 晶穂自身にとってみれば、自分のあずかり知らぬところで育まれた外的な情念に翻弄されて、って部分もありますし、その中でもしっかりインセストの問題などは浮上してくるので、そのあたり一番めんどくさいルートとは言えるかもしれません。

 解決への道筋も一番地に足がついているというか、決して無茶はせずに丁寧に過去の流れを覗き見る事で、その想いの核を鎮める手続きを淡々と進めていくイメージになりますし、悪くはないけれどもう少しキャラデザインのイメージからくる清冽さや健やかさは維持して欲しかったかなぁ、と贅沢を言えば思いますかね。
 あと厳密に言うと、このルートではもう改変済みなわけで、そこで琥珀を主人公が起こしに行く必然ってあったの?って部分に疑問符は尽きますが。その辺は琥珀の項でも検証します。

 雛緒ルートに関しては、元々彼女が持っている魂の特殊性と、卯実との関係性が軸となり、また過去との行き来に上司の神様をあまり介在しない形で、となるので、結果的に結佳ルートばりに卯実に無茶させてしまう、という部分の評価が難しいところです。
 晶穂ルートに比べるとかなりそこの解決にダイナミズムを要しているというか、折角の超神様パワーだけど大切な人の為に使うよ、って心根の清らかさはいいにしても、かなり強引さを感じさせる大団円ではありましたね。
 ある意味ではこの筋道は卯実ルートでも繰り返されるわけで、そことの対比的な意味ではアリなのかもですし、実際主人公と結ばれる事でその意思や想いが強化された、という部分もないとはいえなさそうなので判断が悩ましいですが、あのルートであれだけ苦労する事がこうも簡単に、ってのは、この作品の全体像に含まれる微妙さではあるのです。

 ちょっと先走った話になりますが、結局結佳ルートというか、この祟り堕ちの問題を解決するために誰に寄り添うか、という過程で、実は一番解決から遠いところにあるのが結佳=ァ千代に思い入れる形、ってのがなんとも、なんですよね。
 結果的にその中で、様々な伏線が実証的に解決される、という視座ではすごく良く出来ているのですけど、結果として見るとこのルートで「だけ」卯実が消滅して忘れ去られてしまう、という一抹の悲しさは付き纏っていて、もしもこの作品がこのルートと卯実ルートだけならそれでいいんですけど、実際のところ無自覚的に、他のルートでは卯実も無事で祟り堕ちも防げている、という状況は紡げてしまっているわけで。

 これが例えば、最初の三人のルートでも卯実消滅は免れなくて、という構図なら、卯実ルートの有難味と特別性は際立つのですけれど、そうではない上、あまつさえこの雛緒ルートではより簡易で力技な形でその解決が為されてしまっている、というのはなんかなぁ、ってのはあるのです。
 そういう総体的な観念の部分は脇においても、展開としてはやや雑駁な感じはあり、悪くはないけど手放しでは褒められないかなぁ、という印象ですね。性格七変化的な味付けなんかは結構好きなんですけどね〜。

 んでこの作品、実はかなりキーになるのが琥珀絡みの話ってのは結佳をやればはっきりわかるわけですけれど、そこを踏まえてみた時の琥珀シナリオは色々難しいんですよねぇ。
 サクッと前提を踏まえておくと、元々は琥珀の前世である千羽耶は幼少時に病死していて、そのままだったらァ千代が祟り堕ちに至るだけの感情を抱える理由はなかったのですが、その無念を汲み取って竜珠の中にその意思を留めた過去の卯実(当時は名前違うけど便宜上卯実で通します)がおり、それが琥珀によって発掘されて、想いに触れて過去に引きずられていって。
 そして過去で千羽耶として生きていく中でかの不幸が生じる事で世界が多様化し、400年という長いスパンの上での揺らぎが一向に収束しないまま現代に至っている、という事になっている筈です。

 結果として、ァ千代の祟り堕ちを防ぐためには千羽耶を殺させない、というのが大切なのですが、それは同時に千羽耶が自然に歴史の斥力で収束の過程に囚われる事を意味していて、他のルートではそれが無自覚的に達成されているわけです。
 ただ主人公が現代に戻ってきて直ぐは、まだ揺らぎの余燼が燻っている状況なので、その結果として竜珠に触れたこの世界の琥珀もまた、向こうの琥珀同様に過去に引きずられてしまった、というのが私の解釈です。

 だから、過去に戻った主人公が肉体的な特徴や反応を踏まえて、あの千羽耶は琥珀だと断定しますが、実際のところは厳密に言えばあれは重ね合わせの琥珀なんだろうと思います。
 その傍証というか、元の琥珀の方があの時点では色が強く出ていると感じさせるのは、過去で千羽耶とはじめて交わった時に処女であった、という部分ですね。意識と身体の乖離がまだそこにはあって、けれど肉体的に結ばれる事でどちらかと言えば後から融合し、従的な存在であったこっちでの琥珀が表立って浮上してきた、という見立てをしています。

 まあそういう細かい部分での擦り合わせ、設定の整合性は中々しっかりしていて良かったのですけれど、それはそれとしてこのルート自体はもう少し機微というか情緒を膨らませる余地はあるだろう、って感触はありますね。
 そもそもこのルートの場合、共通終盤で間違って千羽耶がァ千代に鉄砲で撃たれてしまって主人公が錯乱するシーンで、一度その存在の不安定性を示すように琥珀が消えて、花蓮に糾弾されるシーンがあります。
 そして少なくとも主人公はその一連の流れを、改変の影響を受けずに覚えていられるわけで、なら戻ってきた直後に琥珀の安否を心配するシーンがないのは絶対的に不自然です。

 敢えて言うなら、そこで安否を確認して安心して、そこで自分の気持ちに気付いて告白、そのまま情熱に任せてHしちゃう、って形でも説得性はありますし、そうした方がその後の展開の説得性にも繋がります。
 というのも、過去に戻って千羽耶が現代から飛んできた琥珀と断定するのに、その身体の特徴や触れた時の反応を根拠にしてるわけですが、オイオイ童貞くんがはじめてのエッチを済ませただけで、そんな隅から隅まで全てを知り得るだけの経験値を稼げるのかよ、って話になりません?
 しかもそのシーンが終わった直後に琥珀は過去に飛ばされているから、語られない所で幾度も身体を交えていました、って言い訳も通用しないわけで、その点でももう少し早い段階で、ってのはあって良かったと思うのです。

 そうした取っ掛かりの部分の機微の積み立てが軽いせいで、その後の展開にもやや強引さは滲んでしまうんですよね。
 上で触れた、向こうでのHで血を流している事に関しても、そこではじめて疑義を感じる主人公に対し、逆に貫かれた事でこっち側の記憶が表層化した琥珀が、どうしてかは仕組みはわからないけど、心と身体はきちんと貴方を覚えてる、的な情念的解決に至ればいいと思うし、勿論この理由が結佳ルートで開陳される事での、よりおおっ!という読み手の興奮を煽れるのになぁって、些細ですが惜しい部分が目立ちましたね。
 それでも全体像との絡みの精密さなど含めて、他の二人よりは上においていい話かなと思います。

 んで説明の簡便さ的な部分で先に結佳を書きますが、少なくとも単体的に見たシナリオの出来という意味では、この作品でこのルートが突出して面白いです。
 他のルートよりも祟り堕ちを防ぐための解決に至る道筋が複雑かつ困難を極めて、その中でひとつひとつ問題を解決していく中での気付き、そこからの世界観の膨らみと転換の構成力なども本当に緻密で、またその引き延ばしと並行して進む結佳との恋愛要素、それが複合してもたらす更なる弊害など、最後まで息詰ま白熱の展開で、非常に面白かったし粗もほとんどなかった、と言えます。
 
 ただしそれは、あくまでルート単体として見た場合で、作品全体で見ると少し様相が違ってきます。
 何故かというと、実のところこのルートだけが、卯実が結佳を祟り堕ちから救う過程で消耗し、消滅してしまって忘れ去られてしまう、という悲嘆を孕んでいるからで、それ自体は卯実ルートでの救済へのステップとしてなら有効です。
 けれどそれ以前、他の三人のルートでは期せずして本来求められる大団円が、どのヒロインと結ばれるかの差異はあれ達成されていて、そうなると盛り上がりの階梯として、わざわざこのルートでだけ一段踏み外したような印象になってしまうのはやっぱり引っ掛かります。

 作品構造的に、実のところより大枠で歴史の収束・斥力の鍵になっているのは琥珀=千羽耶の方だった、という事実があり、その為には実際的にはァ千代により肩入れし、その意を汲んだ方法論でアプローチするより、より外側から俯瞰的に状況を捉えていった方が有益だった、というのが皮肉な部分であり、それ自体が失敗とは言わないのですが、そこはもう一工夫あってもな、という感触はありました。

 卯実に関してはグランド的扱いではありますし、そこに至るのにみんなの思いと力を結集して、というお約束的な展開でいいんですが、ある意味では雛緒ルートの焼き直し的な色合いもありますし、加えて主人公が卯実に恋愛的な意味で傾斜する必然性をあまり上手く担保出来ていないのも惜しいところです。
 勿論後付け的な意味では、彼女の出自、紅姫としてのありようや、そこからの救われ、それによって抱いた信念の表出という意味での結佳ルートからの流れは理解できるのですが、結局やっぱり他三人のルートがある分だけそこにオンリーワン的な特別感、ようやく辿り着いた的な達成感が足りないんですよね。

 そのあたりの工夫や見せ方の順番がより緻密であれば、より感動的な名作になり得るポテンシャルはあったと思うのですが、といってどのルートでも卯実消滅させとけ、っていうのも暴論ですし、その辺は難しいところかなぁと。
 ただ、このルートに関しては卯実復活に際して、より明示的な代償も払っているわけなので、そのあたりも含めてスッキリ余念の混じる余地のない爽快感、というイメージに至らなかったのは致し方ないところではないかと思うのです。本当に結佳と卯実ルートだけで完結しているならそれでも良かったんですけどねー、それでも構造的に琥珀の存在は外せない部分もあるし、ちょっとすぐにこうすれば良かった、とは言いづらい難解さはあります。

 そんなこんなで、細かい部分での不満や引っ掛かりが蓄積する形で、トータルで見て名作にはなり得なかったかなぁとは思うのですが、ただ作品に籠めた想いはヒシヒシと伝わってきますし、これはあたら無為に延期しまくったわけではなく、きちんとその時間をブラッシュアップに繋げてきた作品ではあると断言はできます。
 あまり細かい事を気にしなければ普通に面白いとは思いますし、どうしても発売までの経緯、体験版リリースのタイミングからして前評判が上がる理由はない、という販売戦略的なまずさはあるのですけれど、気になっている部分があるなら今からでも是非プレイしてあげてください、って言えるくらいの作品ではありますね。



キャラ(20/20)

★全体評価

 基本的にヒロイン皆すごく気持ちいい性格をしていますし、その上で恋愛的な部分ではかなり最初から好感度たけーな、ってのはあるにせよ、その上での各々のアプローチのあり方や、事態に際しての協力の姿勢などすごくらしさが出ています。
 また主人公と、のみならずヒロイン同士の横の繋がりでの掛け合いや想いのぶつかり合いなど中々に濃いものがあって、全体的に非常に個性豊かで印象深いキャラ性を紡ぐことに成功しているとは思いますね。

★NO,1!イチオシ!

 やや個別が危ういんですけれど(笑)、総合的に見ると晶穂が素晴らしく可愛かったなぁと思います。
 まあ妹としてはかなりざっかけないというか、性的な部分までずいずいと踏み込んでくる度量も含めて中々特殊ではあれ、その気の置けない雰囲気と甲斐甲斐しさ、見た目の愛らしさなど総合的に見てものすごく好みでしたし、どのルートでもしっかり活躍してくれるので存在感も抜群で素晴らしかったですね。

 強いて言えばもう少し個別はあんな悲愴感に溢れる交わりばかりでなく、素直なイチャラブもあって欲しかったなぁ、って感じはしますが、まず文句なく可愛かったです。
 ついでに前世の加耶も鬼のように可愛くて魅力的で、そこをセットにすべきかは考え物ですがともあれ良かったです。

★NO,2〜

 そこから下も混戦ですけど、地味に琥珀が好きなんだよなぁ私。
 露骨に誘ってくる痴女ではありますが(笑)、その一方で好きな事には一途に情熱を燃やす誠実さや強さもあり、物語的にも色々キーキャラではあって、その存在感も含めて魅力的でした。

 卯実も神様ながら愛らしく身近で気さく、けれどなりは小さくともその母性は圧倒的、という感じのキャラ付けがバランス良くて、強いて言えばそういう部分をもっと前提的に押し出してもいいなぁと。結果的に陰徳的な部分が強くて、想い入れを強めるだけのタイミングがないままラストまで行ってしまった感はなくもなく、多分2周目やるとより魅力的に感じられる気はするんですがね。

 結佳も悪くないですが、ああいう真面目そうでいてめっちゃ妄想キャラというのはなんともめんどくさい、ってのはあるし、個別自体も当然めんどくさいのでね。。。
 どっちかというと性格的にはァ千代の方が好きなくらいだし、メインとしての存在感は確かだけど他ルートであまり役に立たないし、そのあたり含めて扱いの難しいヒロインではあります。

 雛緒は流石に軽剽に過ぎる部分はあって、武緒とのギャップを狙った部分はあるだろうけどそこは微妙かな、と。武緒さんの方が圧倒的に好きだしなぁ、まああの弄られキャラっぷりはいいムードメーカーではあったし、要所で神懸かり強キャラになるのがズルいけど。
 花蓮もかなり可愛いので地味にルートがあれば嬉しかったんですけどね。過去の夕月なんかいつでも落とせる感じなのに勿体無い(笑)。


CG(17/20)

★全体評価

 量的には流石に微妙で、質もいいものはあるのだけど安定感に乏しく、正直に言えばすごくいいとは流石に思えません。
 ただ本当にピンポイントで可愛い!と思えるところはあって、特に晶穂と卯実の立ち絵が凄く好みだったので、そこでおまけしてこの点数ですかね。

★立ち絵

 ポーズはヒロインで2種類サブ1種類。ある程度キャラ付けに合わせた部分はあれ、そこまで細やかって感じでもなくまずは無難にでしょうか。
 お気に入りは晶穂正面、やや左、卯実正面、左、結佳正面、花蓮あたり。

 服飾はヒロインで3〜4種類、サブで2〜3種類、ただし過去編も含む、です。
 いわゆる学園ものとは違うので必要最低限、って感じですが、それぞれのらしさは出ていて悪くなかったですね。
 お気に入りは晶穂制服、私服、着物、卯実私服、和装、琥珀私服、結佳私服、和装、花蓮和装あたりですね。

 表情差分もそこまで多くはないけど、そこそこ細やかな機微は捉えているのと、全体的に妙にジト目が可愛いのが印象的でしたかね。
 特に晶穂と卯実は全般的に可愛かったと思いますし、悪くはなかったです。

★1枚絵

 全部で73枚と流石にフルプライスとしてはやや少なめ、出来も悪くはないですけどあまり安定感はなく、良いものとイマイチなものの差が大きいですね。
 構図的には悪くないですが、塗りも今一歩ではあり、あと個人的には折角の黒スト的なシーンがすっ飛ばされているのがぐぬぬ、といつもの話ですが言っておきましょう。


BGM(18/20)

★全体評価

 幻想的な彩りは強く、その上でしっかり個々のイメージやシーンイメージにマッチした雰囲気を丁寧に紡げていて、質量ともに中々良かったと思います。
 ただ回想がオールクリアでも埋まらないバグと、作中でその曲流れた?ってのがあるのは勿体ないところですね。

★ボーカル曲

 多分全部で7曲あるんですが、イメージソングとか特に作中で流れたっけ?ってなるし、OPも回想で聴き込めないのはあれ?って感じ。
 ただそのOP曲の雰囲気はすごく好きで、あの悠久の距離を超えての因縁の表裏一体なイメージをしっかり曲に投影している部分はかなり気に入っています。

 EDもそれぞれキャラ別になっていて力は入っていますが、こちらの出来はもうひとつだったかな。強いて言えばひとひらの花びらが好きかな、くらい。

★BGM

 全部で29曲と量は標準で、出来としては私好みの繊細で透明感と悲愴感のあるピアノ曲が結構多くていいな、ってのはありますし、総合的にも和テイストを出し過ぎない程度に丁寧に絡めた印象で気に入ってます。

 特に好きなのは『トドカヌコトノハ』『ずっと側で見ていた』『和重霞なる旅人』ですかね。


システム(8/10)

★演出

 基本的には悪くはないけど良くもない、という感じで、最低限頑張ってはいるけれど間の取り方とか、情感演出の溜めとか、もっといろいろ工夫できる部分はあったなぁ、とは思いますかね。
 ムービーは曲に合わせての出来がかなり良く、これは印象深いです。

★システム

 こちらも可もなく不可もなくですね。
 かなり序盤の選択肢からルート分岐するので、スピード感あるジャンプ機能が使えるのは助かりますし、最初のボリュームバランスが微妙ですがまあそこは調整できますしね。


総合(86/100)

 総プレイ時間21時間くらい。
 共通が7時間くらいとかなり長めで、個別は1人2,5時間前後、ただ結佳だけは3,5時間くらいと少し贔屓されている感じですね。
 全体的にはやや先を急ぎ過ぎるきらいはなくもなかったものの、話の骨格はかなり完成度が高く、また過去と現在を行き来するという設定の中でのバランスのいい緊迫感があって、勿論いくらかご都合的な要素はありますけれど、それでも歴史に対する真摯な紡ぎ方、根底に置いたテーマ性など、中々に意欲を感じるいい作品でした。

 上でも書きましたが、どうしても販促の過程で毛嫌いされてしまう要素が山盛りだったのは本当に勿体ないですね。
 実のところ作品概要が発表された時点ではかなり気になっていたものの、延期に延期を重ねていく内に大分興味が薄れていたのはあって、体験版やってみなかったらまず買わなかったので、その点で拾い物をした、という感覚はあります。
 流石に新規メーカーさんで総合力的に力及ばず、って部分はそれなりにありますが、このストーリー設定に興味を引かれ、ヒロインをそれなりに可愛いと思えるならば、プレイして損はしない作品だとお勧めしておきたいところです。

posted by クローバー at 11:02| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: