平成という時代を貫いたエロゲRPGの白眉・ランスシリーズの完結作ですから、それはもう何を置いてもプレイしなくては、という話ですね。
ただし私の場合、シリーズでプレイしているのはリメイクの1と3、それとY以降のタイトルのみですので、シリーズの総括的な感想は書きにくいですし、伏線の見落としなども多々あるとは思います。プレイ自体、一応各エンドは網羅したものの、CGもまだ完璧には埋まり切っておらず、食券イベントなどは半分以上見れていない状況での執筆になりますので、そこはご承知おきください。
あと今回はほぼ全てネタバレになるので、個人的にあんまり好きではないんですが記事を畳んでおきます。
一応私なりの攻略指南とか、プレイスタイルなども触れていきますし、ネタバレが嫌な人はスルー推奨です。
シナリオ(29/30)
それぞれの、愛し方。
★あらすじ
この作品は、前作ヘルマン革命から数か月後の世界を舞台に繰り広げられます。
ランスが復活したシィルを含めたお馴染みの仲間を引き連れて、世界に四体しかいない聖女モンスター探索に出ていく中、不慮の事故で数か月コールドスリープされることになって、その間に人間世界は魔物界の侵略に震駭していました。
長らく続いた魔物界でのケイブリス派とホーネット派の闘争が前者の勝利で決着し、すかさずケイブリスは美樹を殺して自分が魔王になるという野望を達成するために、美樹が隠れている人間界に全面戦争を仕掛けてきたのです。
その緻密に練られた戦略と奇襲に、各個撃破を食らった人間界は初手で大ダメージ、各大国も大きな被害を受けあっという間に滅亡の危機へと追いやられていました。
この危機を打開するには人類がわだかまりを捨てて結集するしかない、けれどそれぞれの国にも面子やしがらみがあり、中々意思を統一できない中、その各国女王クラスと懇意にしているランスが世界総統となることでその問題を解決、各国に出没する、魔剣カオスでしか退治できない魔人を征伐するための特殊部隊を作って八面六臂の大活躍をしていく事となります。
しかしこんな危機的状況でもランスはランス、あくまでも世界中の美女を抱くことを最大の目的に、時に道を踏み外しつつも東西を奔走して、果たしてその結果、人類に残された結末はどんなものとなるのでしょうか?
ランスシリーズ最終作、全てのキャラの切なる想いと意思が込められた物語を、どうぞご照覧あれ。
★テキスト
基本的にはシリーズものである為にキャラの特色なども含めて安定していますし、ADV部分がメイン、という作品でもないので、いつも通りある程度スピーディーに快刀乱麻、という感じで読み口としてはしつこさがなく面白いとは思います。
ただ一部、かなり不快な展開や状況なども出てきますし、無論そういう部分を回避しないのもこのシリーズならではでしょうが、例えば9の時にあった、凌辱的なシーンを見る見ないを選択出来るという安心措置などは一歳オミットされているので、そのあたりは注意が必要です。
あと地味にランス側のありようとしても、各国ルート別にイメージが違う部分はあって、個人的に今回はヘルマン絡みのイベントでうーん…………って感じるところは読み口としても多かったかな、と思います。
★ルート構成
最大16ターンのマップ攻略戦で、実績を見ればわかる通りに、実績がつくエンドは全部で14個用意されています。
それぞれひとつクリアするごとに、周回プレイ時にCPボーナスが1ずつ付与されていき、その蓄積でより難易度の高いエンディングにチャレンジする、という、基本的には周回前提の仕様になっています。
カード引継ぎなどはありませんので、プレイ時間的にも難易度的にも、かなり敷居の高いつくりにはなっていますね。
またその最初の舞台の中に、二部への解放条件が埋め込まれており、Aエンド達成時にそれを回収する事で、グランドエンドと言える二部に進むことが出来ます。
二部解放条件は以下の四つ。
<全地域生存>
解放、ではないので難易度としては一番低いです。基本的にはみんな心情的にどの国にも滅んでほしくない、と思うでしょうし、Aエンドに辿り着けば概ね必然的に付随する条件かなと思います。
<ホーネット生存>
これは6ターン目までに魔王探索、7ターン目までにシャングリラ攻略を済ませ、8ターン目冒頭でのCITY急襲でトッポス(レッドアイ)を撃破した時のみ入れるランス城浮遊ルートに進み、かつシルキィorハウゼルのどちらかのホーネット派魔人を仲間にしていないとイベント自体が出てきません。
ついでにこのイベント自体8ターン目までの時限イベントですので、やるならこのルートに目的を絞っていないと難しいかもですね。
<魂管理局との邂逅>
多分9ターン以降に出てくるイベント、ポピンズ連携の中で、ウィリスの忠告を無視して地下を掘り進み、天界の壁を撃破すると達成できるようです。
壁は制限装甲つきですので、ある程度火力を出せるパーティーが育っていないと難しいですし、心情的にも各国の窮状を捨て置いてここを選ぶのは敷居が高いので、やはり狙っていかないと難しいかもですね。
<法王特典未使用>
クルックーが保持している法王特典は、拠点イベントか、???イベントの勇者テオマンとの一騎打ち3回目を見てしまうとなくなってしまいます。
拠点イベントの方は本当に馬鹿らしいイベントなので普通にスルーでいいですが、勇者イベントは発生率が高く中々回避が難しそうです。
その際にウェンリーナー(大)がいると、特典使用の代役になってくれますので、繁殖期イベントをやらないでおく(見るだけ見ればシーン回収は出来るので、その後ロードするとか)のがベターな対処法かな、と思いますし、あと単純に???をなるべく踏まないのもアリです。
私の場合10ターン目で終わる強行突破エンドで下の三つは一斉に達成できたのですが、そのデータで魔人は1体ずつしか撃破してなかったので、強行突破での無回復四連戦がめっちゃシビアでした。。。
ともあれひとつずつ分散して取るならさほど難しくないですし、条件さえ満たせば一部のエンド網羅せずとも二部には入れますので、結末を急いでいる方はこのあたりを目安にどうぞ、という感じですね。
★ゲームシステム・攻略
上で触れたように、基本的には周回前提ですし、それでも難易度はかなり高めです。
システムとしては、世界各地の強者をカードという形で収集し、それぞれの陣営を強くしていく事で戦う事になるのですが、この育成がかなり運に左右もされますし、それなり以上に強さを吟味していこうと思うと相当な手間暇がかかります。
基本的にターン数とマップのマス目は決まっていて、ほぼほぼレベル上げのための周回プレイなどが出来ないつくりになっていますので、一回ごとの戦闘で如何に効率よく育てるかがポイントになります。
ベーシックなところで鍵になるのは、経験値取得ボーナスの吟味と、そして敵からの宝箱ドロップの確率アップで、特に序盤は少しでも戦力を分厚くするために、宝箱ドロップをしっかり獲得していくのが肝になるでしょう。
しかし最序盤は特に、舞台ボーナスでの宝箱取得率も低く、オーバーキルも出しにくいので、各マップごとにリセットされる初回トドメボーナス50%に賭けることになります。
これが思いの外落ちてこなくて中々ストレスになるのですが、ただ序盤にこれをやっておくと中盤以降の楽さが全然違ってくるとは思います。私の場合は初回プレイで、プロローグクリアした後にその仕組みを理解して、また最初からやり直し、通常敵でもドロップするまでセーブロードを繰り返し、を最後まで貫きました。
経験値の方は、3ターン以内クリアと1ターンキルを出来る限り狙っていく方針ですね。
これも序盤では、特に1ターンキルは火力が足りないので、せめて3ターン以内撃破を目指しつつ、属性や敵のHPなどで狙えそうな時には、50%の確率らしい弱点属性が3ターン目に出てくれることを祈ってロードロード…………という根気が伴う地道な作業を繰り返していました。
そこまでやって、初回プレイでAエンド海から、を見る事は出来たのですが、それでもかなりギリギリで、少なくともシャリオラがいなかったら勝てないなー、って感じでしたので、本来そこまでやることもないんでしょうね。。。
ただしある程度強くしておいたパーティーからなら、セーブデータ流用で色んなエンドに派生する事は可能です。
私の場合も最初のデータでCP7、二周目データで13まで稼げましたし、とにかく淡々と周回してエンドを潰していくか、ある程度強いデータからまとめてエンドクリアするかはそれぞれのプレイスタイルに拠るのかな、とは思います。
ゲーム性としては、とりあえず魔人を倒すと難易度が上がる、というイメージですし、何を目指すかによってはある程度難易度を上げないプレイスタイルも必要になってきます。
途中リタイアしても戦果などは獲得できる仕組みですので、最悪難易度アップマス手前までプレイしてレベルアップ、けれど難易度は上げない、なんて事も可能ですし、魔王ケイブリス撃破なんかではこのテクニックがとても有用でした。
1ターンで各国の魔人二人撃破も実績にはなりますが、それそのものの難易度も高く、収集できる宝箱の数も少なくなり、挙句難易度が2も上がってしまうので、本当にやり込み、或いはごく一部のエンドを見る為の手段位のイメージですね。
個人的な印象としては、ターンと難易度にもよるのでしょうが、自由都市とゼスはしっかり駒がいて戦略が組み立てられればそんなに難しくないかな、と思いました。
リーザスは難易度が低ければハウゼルは楽で逆にシルキィはまず無理、難易度上がってからだとハウゼルが厳しくなってシルキィは手駒の揃い方次第、というイメージですね。
ヘルマンはどうあれ夜のケッセルリンクがえぐいですが、バボラを時限イベントで削り切るのもそこそこタフなので、どちらかと言えば難易度低い方がマシっぽい、くらいですかね。
魔物界大侵攻をクリアするなら、出来れば序盤に2国くらいは二人撃破をしておいて、5ターンシャングリラで増援阻止(戦果で自由都市の大作戦も阻止)、6ターン魔王探索からの7ターン目二人撃破くらいはやっておいたほうが安定しますが、難易度がバカスカ上がるのでCPボーナスがたっぷりないと厳しいでしょうか。
カードに関しては確定ドロップも多いので、基本的にはそこを軸に戦略を組み立てつつ、それぞれのユニークキャラは面白い能力を保持していますので、それを駆使していく意識は必要かと思います。
まあ基本的にはAP0の殴り持ちをズラッと並べておけば安定はするのですが、常に力押しだけですといざって時に幅がなくなりますし、特にHPの多い敵には毒や呪い、睡眠などの搦め手、攻撃力や特殊攻撃が脅威の敵には手裏剣やバリア、四回防御などが非常に効果的になってきます。
一部の場合はキャラ数も多く、その幅も広いので絶対的な正解は少ないのですが、二部になるとかなり使える能力が限定され、かつレベル上げする余地自体も少ないので、まず力押しでは勝てない仕様になっていますし、そのあたりの創意工夫は一部の時点である程度しっかり吟味して慣れておくべきだろうとは思いますね。
成長戦略としては、エースアタッカーを育てる事と、各陣営それぞれの底上げをしっかりやっていく事を上手く両立させることと、後は出来る限り部隊ボーナスを早めに集めて、それを敵の条件などに合わせて効果的に運用する事が大切になってくるかなと思います。
マップ上で取れるものにはレア宝箱、勲章、食券、経験値アップ、アイテム★アップなどありますが、私の感覚では周回数が少ない段階では左から順に優先度が高いかな、と見ています。
あと宝箱は、直前セーブからロードしても中身が変わらない仕様なので、一応覗いてみて絶対に欲しいキャラがいなければ、勲章を優先するのはアリかもしれません。食券の場合は蓄積経験値が膨大になる終盤程重要度が上がりますので、裏を返すと序盤は勲章の方が絶対大切ですね。
経験値アップはエースアタッカーをより強くするために使うのがベターで、CPボーナスで一気に3レベル上げられるようになると価値が上がります。
より吟味するなら、なるべく次のレベルアップまでの必要経験値が多いキャラも選択出来ればベターですね。
アイテム★アップも10個集まれば強いですし、舞台ボーナスとも相性がいいので、序盤で強いアイテムが手に入っているなら積極的に拾っていくのもアリかもしれません。ただ半端に拾っても価値は薄いので、あくまで区切りの数を狙えるようなら、が良いかなとは思います。
キャラの成長戦略的にも、出来る限り区切りを狙っていくのが常套手段で、リーダー入れ替えが出来るようになっているなら、高レベルキャラでギリギリまで削って、最後のターンだけ交代して一気に経験値を稼がせる、というのは有用だと思います。
ある程度自動戦闘の吟味(二倍・三倍ボーナス)もやって損はないですが、どうしてもランダムにはなりますし、単純に費用対効果で意味があるかは悩ましいところです。
早い段階で運命の女マジック(ゼス魔人2のメディウサ撃破)があれば、自動戦闘を全部自主戦闘に変えられるので、それを利用しての効率的なレベル上げはありでしょう。ただその場合ガンジーとスケさんカクさんが悲惨な事になるのでどっちもどっちなんですが…………。
ともあれ、とりとめなくつらつら書きましたが、ゲームシステムとしては非常に緻密なバランスになっていて、かなり歯応えのある仕上がりになっていると思います。
上で触れたようにかなりレベルアップや宝箱回収を厳選しないと難しいところはあり、その辺を序盤から徹底しようとすると確率の不条理にストレスを溜める事にもなりますが(特にCPボーナスなしでの一部・二部序盤は苦行です)、そうして苦労して育てただけの回はっかり後半に生きてきますし、いろいろ工夫しないと勝てない敵なども沢山いるので本当に熱中度は高いと思いますね。
ただひとつ不満なのは、食券と友情システムを網羅するのが非常に面倒な部分でしょうか。
ここは正直、二部クリアで全キャラ食券イベント閲覧解放、とかの措置があっても良かったと思いますし、いずれその辺も時間を作ってやらにゃーなぁ、とは考えていますが、それまでにパッチが出てくれれば理想的ですね。
★シナリオ
シリーズ最終作らしく、色々な過去の柵や伏線などもしっかり回収し、その中でこのシリーズらしいえげつない展開なども多々用意しつつ最後にはきちんと大団円で締めてきたのは高く評価出来ると思います。
今回は残虐・凌辱イベントも強制的に見せられてしまう仕様なので、そのあたりが苦手な人には結構苦痛な部分もありそうですが、少なくともその流れは戦争に負けた以上当然、という冷徹な部分に裏打ちされていますし、全体的に不必要な残酷さはなかったとは思います。
まあそれでもわざわざ見たくないものは多かったですし、イベントCGがないのでスルーしたバッドもそこそこありましたかね。もうね、絶対二部の闘神大会の二戦目バッドなんか見たくない。。。
でもそういう悲しみがあるからこその、徹底抗戦の価値とその中で懸命に生き、戦う人々の姿は心震わせるものがあります。
まぁランスが絡むとどうしてもある程度女女女ーーー!って面が出てくる分シリアスにはなりきらず、それが良い影響に出る場合もあるのですが、個人的にヘルマン編のランスだけはなんか嫌だなぁ、というイメージでした。
特にケッセルリンク編、解放編とその後のクリームとの情事は気に入らなかったし、あぁあと恋人美樹もなんだかなぁ、って感じでした。
なんでしょうね、卑怯は常套手段でも、それの用い方と状況の組み立てが上手くないのかな、それをランスだからねぇ、と苦笑いで済ませられる境界線を踏み越えてしまっているなぁ、と感じたのが一番多かったのがヘルマン編に集中していたイメージで、ここは数少ない減点材料になりました。
なので、あくまで個人的な感想として、一部で一番面白かったのは各国が自主解放に至る最後の戦いのシーンですね。
この解放イベントは、魔人を二人撃破し、かつ味方の戦力が敵に対して圧倒していないと発生しないので、狙ってそれを見るのは中々大変ではあるのですが、その苦労をする価値はある、非常に純烈な戦記物としてのカタルシスを味わえる内容になっています。
特にリーザスとゼスが好みでしたかねぇ、リーザスの大戦略と真っ向勝負の白熱感も最高ですし、ゼスはゼスで様々な軋轢を乗り越えて結束した国の力の集大成的な陥穽、そこからのウルザの颯爽とした活躍にときめくしかなかったですわ。
ヘルマンもランスが絡まないとなんて爽快なんだ、って感じですし(笑)、自由都市もそれぞれのらしさが存分に生きていて本当に素敵で、このあたりは本当に、ランスはあくまで魔人退治、その上でそれぞれの国の解放はそれぞれの力で、って棲み分けがなされているのがあるべき姿、ってイメージを投影されていて本当に素晴らしかったと思います。
逆に個々のエンドに関しては、この時点ではもやっとするものは多いんですよね。
なにせAエンドでもシィルが死んでランス魔王化が確定的ですし、それ以外のルートはもっともっと悲惨で、あくまでも二部への繋ぎとは言え、特に一周目、超苦労してケイブリス撃破してのAエンド到達の達成感が、まさかのこのエンドでえぇぇぇ…………ってなったのはあります。
まあ多分どんなに頑張っても、一周目で全てを救う事なんて出来ない仕様にはなっている感じですし、二部にしても犠牲、という面では、語られなかった部分で結構辛いものもありそうな雰囲気で思う所はあるのですが、それでも最後への繋ぎ方としては中々面白い仕組みになっていたなと感じますね。
二部は結局子供たちの物語、ではあるものの、成長限界のないランスの子供という特色を上手く利用したつくりで、一部とは違い戦略性もかなり限定された一本道ではあるので、尺的に見てもある意味ではこれ自体がエピローグ的な役割ではあるのでしょう。
しかしこれ、一部5ターンでのシィルの魂離脱イベントや、あとパイアール編でのルートイベントがちゃんと伏線になっていたのは気付けなかったですし、その上でクルックーの執念というか、周到な準備の果てに辿り着いた結末のありように中々震撼させられました。
結局のところ、この世界は神様のおもちゃであり、魔王と勇者システムもその残虐な精神性の一貫であるからには、マグナムのifみたいに神に反逆するルートが最後に来るのかな、と思っていたのですが、そこはちょっと予想を外れて、クルックーがある意味で創造神を懐柔しているような格好なんでしょうねこれは。
少なくとも彼女の謁見がその後の神異変に繋がっているだろうことは想像に難くないですし、それ以上の干渉を阻害した上で現状を改善し、かつ神の気紛れを封じ込める舞台を整えた、というあたりは本当に気の長い戦いを繰り広げたものだと感じます。
神異変の副産物としてのクエルプランまでを想定していたとは思えないのですが、どうあれランスの意識を保つ、という視座のみでなら、もっと早い段階で本物のシィルを蘇らせていれば問題はなかったはずです。
ただそれではまたいつ神の気紛れに翻弄されるかわからない、というところで、これ以上ない冒険譚を用意する事で神の退屈を紛らわせるという方法論と結びつけているのはいかにも、という感じで、その辺を二部出だしの、ドラクエ3かよ!?的なテンプレツッコミの中に上手く真意を塗して進めていっているのが見事なバランスです。
多分これ、この主人公はランスの子じゃないんでしょうねぇ。
傍証的には、その種が必要なら少なくともクルックーの護衛イベントが二部解放条件になっていなきゃ辻褄が合わない、というのと、ランスの血を判定する鏡みたいなの、結局自分に向けてはかざすシーンがなかったですからね。
イメージとしては極限まで力を削ぎ落とした創造神の現身なんでしょうし、それでも一部現存する力が、クエルプランとの会話や、勇者の解放など要所での特別な力の発現を裏付けている、と思うべきなんでしょう。
どうあれ、その冒険の果て、クルックー的にはシィル解放で落ち着いてくれればまず万々歳だったのでしょうが、そこにクエルプランという要素が加わる事で、この世界を根本的に、かつ永続的に混乱に陥れていた元凶の力との乖離、対決に至れたというのも非常にバランスの取れたつくりで、それをランスとその子供たちの力で打破していく展開は実に王道的でした。
それはある意味で、どれだけランスが変わってしまってもその愛を揺らがせずに、その子供を強く正しく育てていったそれぞれの母親の愛し方の価値を裏付けるものでもあり、クルックーにしてもあくまでランスにとっての最高の幸せを追求する中で、ある意味で世界全てを敵に回す決断をしていますからね。
少なくともこれだけ宗教の力の強い社会で、神の力がなくなるというのは大きなパラダイムシフトですし、そのトップでもあるクルックーにしてみれば、自分の代でその信仰を滅ぼしてしまった事でかなり糾弾される立場にもなったでしょうに、それでも大切な相手の幸せのためならやってしまう、というところが、クルックーのわかりにくい愛し方なんだろうなぁと思うのです。
魔王が現存している限りは、どれだけ魔人の面々が人に対し同情的で理性的であろうとも、その闘争と殺戮を根本的に阻止できないのは、それまでの15年、ホーネット派の面々が傍にいながら戦争が起こってしまっている事でも明白ですし、それを根治的に解決する流れ、かつその後の世界にも不用意に神の気紛れが容喙できない世界を説得的に築けた事は、このシリーズの結末として申し分ないつくりだったと思います。
総合的に見てもほぼ文句のつけようのない大作ですし、ロングランシリーズのラストとしても概ね納得のいく見事な内容でした。
少し巨視的な話をすれば、平成という時代は間違いなく未来から見た時に、コンピューター隆盛の時代、という歴史的な評価が与えられることになるでしょう。
エロゲという文化もその恩恵の中で、その価値の一翼をひっそりと担うものではあったわけで、そして現状を鑑みても、これからの時代に据え置き型のPCゲームで、これだけ長い期間を経て紡がれる架空のファンタジー戦記がこの媒体で出てくる可能性は皆無に等しいと感じます。無論それは長年このエロゲという媒体を愛し関わってきた私としては忸怩たるものですが、それが時代の趨勢なのは間違いないですからね。
なので、後の時代に文化史的な観点でエロゲというものが語られると考えて、その時にこのランスシリーズというのは、間違いなくその代表的なものとして歴史に名を刻んだ、と言えるでしょう。
これでもしもラストがどうしようもないオチだったりしたらアレですし、その辺の危惧をハウゼルルートのドエススキーイベントで暗喩的に語っているのが笑えたりもしますが、少なくともこの完成度でこの結末を迎えてくれたのなら、平成という時代を貫いたエロゲの金字塔・大傑作という評価は揺るぎなく後世に残っていくのではないか、そう思わせるだけの力作に仕上がっていたと思いますね。
キャラ(20/20)
★全体評価
基本的にはシリーズ総決算で、過去作の人気キャラや主要キャラを中心にしっかりとしたエピソードや個性が綴られていますし、新キャラも含めてみんな印象深いものがあり、この点では正直シナリオ以上に満足できたかな、と思います。
★個別キャラ評価
とりあえず私の認識でほぼ新規キャラ、という観点ですごく好みだったのはハウゼルとシルキィの二人で、本当に魔人なのにすごく淳良で真っ直ぐで、どちらかしか獲得できないのも、死滅率次第では勇者に狩られてしまうのもあまりにも忍びない、というくらいに好きですねぇ。
あとガラッと雰囲気が変わったという意味ではスーがすごく好きでした。
過去キャラとしては当然シーラとかなみは超お気に入り、メインヒロイン級ではないところでは、アールコートにカロリアがやっぱり超好きで、改めてウルザも今回は活躍の場が多くて非常に可愛かったなぁと思います。アギレダも地味に一周目の変身モードで大活躍だったりと超嬉しかったね。
野菊なんかもほとんど使ってあげられなかったのが無念ですが相変わらずとっても好みですし、本当に世界のどこに行っても好みのキャラがぞろぞろ出てくるので、もはやだれが一番とか選べないレベルではありますねぇ。。。
シナリオ面で株を上げたのはやっぱりクルックーかな。この子の一途さというかいじらしさはわかりにくいけど本当に深いなぁと。
どうしても食券イベントなんかはメイン級に集中してしまっているし、色々面白いエピソードや魅力は取りこぼしているとはわかっているので、その辺も改めていつか、とは思いますが、最低限の現状でも大満足ではありました。
CG(19/20)
★全体評価
出来は安定していますし、それによくもまぁ一人でこれだけの立ち絵を全部描いたなぁ、という部分での評価はしたいですよね。
本当にみんな立ち絵は可愛くて最高でしたし、それぞれの個性もしっかり反映されていて、そのあたりはシリーズものとしての蓄積の強みを存分に生かしているイメージです。
新規キャラも含めて本当に満足感ある仕上がりだったなと。
★1枚絵
全部で96枚と、決してポリューミーとまでは言えませんが充分なところでしょう。
どうしてもこれだけキャラがいると、誰のシーンを組み込むかですら難航したでしょうし、1シーンに1枚しか使いようがないのでその辺は仕方ないと言えばないですが、それぞれに味があって充分に楽しめましたね。辱いシーンも含めて安定感は高かったと思います。
特に好きなのはシルキィと魔人姉妹丼、あとクエルプランにアギレダあたりは良かったなぁ。
BGM(20/20)
★全体評価
シリーズの特色通りにボーカル関連は一切ないのですが、それを補って余りある膨大なBGMとその出来の良さ、そして過去作から連なる恒例のBGMの使い方なども含めて、ラストに相応しい素晴らしい陣容だったと思います。
特に今回はギリギリまで我が栄光を温存していたりと、音楽面演出での配慮も素晴らしかったと思いますし、日常にしてもバトル関連にしても本当に出来のいい曲ばかりですごく耳に残っていますね。
★BGM
全部で76曲収録、無論過去作からの収録やリメイクもありますが、純正新規でも60曲はくだらないので量的には充分、質としても大満足の素晴らしい仕上がりです。
特にプロモ曲、ひとときの安らぎ、リーザス、中ボス、魔人ボス、魔物界、ニューセンセーション、決戦あたりが耳に強く残っていますね。
システム(10/10)
★演出など
全体の演出は要所要所ですごく凝った造りにはなっていて、作品の見せ場を意識したしっかりした出来でしたし、それを踏まえての迫力も出せていて良かったと思います。
一連のムービーの出来がまた本当に素晴らしく、疾走感と危機感、ワクワクを煽る適確な組み立てで本当に見ていて楽しかったですし、プレイクリア後に改めて見ても新発見がある奥行きなども含めて高く評価したいですね。特にプロモ編が超好きです。
システムも基本操作の部分ではしっかり必要なものは揃えていますし、ゲーム操作性の面でもかなり簡略化、わかりやすい構図にはなっていて、勿論プレイスタイルに拠って相応の面倒さは伴うものの、カスタマイズ機能なども含めて使い方がしっかり理解できれば気持ちよく使える、プレイできるものだったと思います。
戦闘もスピーディーで、かつ視覚的にもわかりやすいつくりになっていたと思いますし、この辺りの完成度も流石の一言だったとは思いますね。
総合(98/100)
総プレイ時間は120時間くらい、でしょうか。一周目で55時間、そこからのエンド回収プレイなどで50時間、二部が15時間くらいのイメージです。
まあ延々2週間以上、空いた時間の全てを費やしてもなかなか終わらない大ボリュームでしたし、それでもまだまだ網羅していないイベントなど山盛りですから、費用対効果としても本当に素晴らしい作品ですね。
勿論流石に最終作だけあり、色々なキャラの背景などはすっ飛ばし気味ではあるので、あくまでもある程度シリーズをたしなんできた人向け、ではあると思いますが、その長年のシリーズファンでも歯応えがあると感じる難易度と熱中度、そしてシナリオの完成度で、その期待に十分に報いるだけの内容になっていました。
これで本当にランスシリーズが終わってしまうのだ、と思うと実に残念の極みではありますが、足掛け30年近くもかけての制作となった中で、きっちり大団円に漕ぎ着けてくれた、というだけでも奇跡的とは思いますし、本当に感謝しかないですね。
2018年04月03日
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