2018年05月15日

9−nine− そらいろそらうたそらのおと

 一作目は不完全燃焼な終わり方でしたし、製作期間も長くなりそうで中々難儀ではありますが、やはり物語やヒロインの魅力の高さは折り紙付きなので頑張って追いかけようと。


シナリオ(23/30)

 解決と謎のバランスの妙。


★概要

 この作品は、2017年4月に発売されたナインシリーズの第一作、9−nine− ここのつここのかここのいろの続編、二作目になります。
 舞台設定や状況などはほぼ一作目の序盤を引き継ぎつつ、今作では妹の天がメインヒロインとなって、一作目とは違った角度で事件に肉薄していく中で、一作目では見えてこなかった部分の解決と、それを踏まえて新たに派生する謎をふんだんに織り交ぜた意欲作ですね。
 勿論続きものですので、一作目をクリアしていないとなんのこっちゃ?って部分が多いですし、今からはじめるなら一作目からのプレイ推奨になります。


★テキスト

 こちらも一作目に続いて安定した面白さではあるのと同時に、メインヒロインが主人公にとって一番身近で気の置けない相手である妹の天似なる事で、普段からの軽妙で洒脱な、遠慮のかけらもない痛快なやり取りの出番が格段に増え、かつ前作よりも関わってくるヒロインズの密度がグッと高くなるので、そのあたりの状況がもたらす引き出しを存分に使いこなしている、という意味で、テキスト的にも一作目より面白い、と言っていいでしょう。
 特に今回は主人公と天のぶっ飛んだやり取りと、女子会的な空気感でのヒロインズの会話が楽しかったですね。


★ルート構成

 一応ある程度選択肢は出てきて、ただメインの分岐に関わるターニングとなるのはひとつだけなのかな?という気はしています。
 冒頭に出てくる敢えての選択肢の意味も踏まえると、この物語自体が回想的なスタンスなのか?と疑わせるところはありますし、そういう意味深な演出的な部分でもいい味を出しつつ、どちらのルートでもシーンなどはあったりするので一応は網羅しておくべきでしょう。
 ただし前作に続き、選択を間違えるとあっさりバッドエンドではありますし、そのあたりの耐性は必要ですね。まあ一作目の場合一周目強制バッドエンドだったわけで、それに比較すればマシとは言えますが、引き続きヒロインに対しても聖域的な扱いはないシビアさは世界観に埋め込まれていて、その意外性が作品の不気味さというか奥行きがありそう、って幻想を強く持たせる武器にもなっているので、このあたりのバランス感は流石だなと感じます。


★シナリオ(大枠)

 基本的には一作目と違い、より天と密接的に事件を追いかける事で違った視野やアプローチが可能になる事と、また天というキャラクターの特異性、平たく言ってしまえば調子の良さで、危険な事に周りを巻き込んだりとか、そういう倫理的な部分で都みたいに悩んだり抱え込んだりしないから、軽率な失敗もするけれど結果として力を貸してくれる相手が増えていく、という部分の噛み合わせが良かったですね。
 人間性としてはそりゃ都のほうが高潔、という評価にはなるのだろうけれど、そういう拘りが、手段を選べない相手に対しては足枷になるし隙にもなる、というのが、結果的にこの物語で示された、都編のグッドエンドの結末が蜥蜴の尻尾切りでしかなかった、という部分に冷徹に連関してくるのでしょうし、その意味では同じくらい正義に拘っていそうな希亜の場合どうなるのか、ってのは興味深い観点になりそうです。

 加えてポイントになるのは、あくまでも主人公主観ではこの物語は唯一無二ですが、ソフィーティア主観では決してそうではなく、彼女の主観内での時系列においては、少なくとも都ルートの両方の物語の結末を踏まえてこのルートに容喙してきている、というのが明確に浮き彫りになっています。
 結果的に各ルートで、それぞれの能力のより効果的な使い道を模索する場面が出てくるのを、ソフィの示唆があれば網羅的に用いる事が出来る、という事になり、それはこのルートでも最後の最後に都がそうした部分からも確かですし、今後においてはより強力な武器になるのだろうとは感じます。
 一方でそれは、大枠的なつくりの中で、ソフィという存在の不気味さ、不確かさをクローズアップする部分にもなりますし、新たな謎を提示する事にもなっていますが、一方で都ルートでは不完全燃焼で終わった魔眼ユーザーとの鬩ぎ合いの中で、しっかりカタルシスを内包する形での結末まで至れる組み立てになっていたのは、今作単独の評価としては明確にプラスだったろうと思えますね。

 またこの力を保持した事によって発生するパワーバランスの崩壊と、そこから派生する関係性の変化、という部分は、いざ実妹がヒロインとなった時に、倫理的な葛藤を超克する為の大きな武器にはなりますし、それがなければ隠し通していたのに、という部分も含めて説得的な構図を構築するのに成功しています。
 アーティファクトユーザーが力を濫用した時の顛末、という部分もしっかり一作目から一貫して担保のある部分ですし、特に精神面にもたらす影響を、細かく段階的に紡いでいく構成の丁寧さは流石ですし、けれどそれをもどかしい、と感じさせないほどに二人のやり取りそのものが面白い、というバランスの取り方も含めて、これは本当に手放しで賞賛できる部分です。
 後半の展開はセカイ系というか、状況としてはフィクションとしてそこそこありがちでありつつ、そこでもしっかりらしさを貫くつくりで差異を感じさせますし、なによりはじめてのシーンで大爆笑できるとか、そこまでの振り切り方が素敵ではあって。

 かつこの物語のズルいところは、このルートではまだ大団円ではない、というのが明確な部分なんですよね。
 結局二人の気持ちの上でさえ、その異端の関係性がどこまで保てるのか、明確なビジョンや覚悟がないままにラストを迎えていて、これは普通のADVのラストだったら肩透かしになりかねない要素です。
 ただこの作品の場合、あくまでも倫理的に実妹との禁忌の愛は正当ではない、というスタンスはありそうで、少なくともエピローグでの危険な示唆などから判断しても、このルートの流れで先行き誰しもハッピーエンド、二人の関係も祝福されて、という未来図を予想するのは難しいわけで。

 その点で気掛かりになるのは、果たしてソフィがこのルートの流れを構築するのにどういう手段をもって介入していたのか?という点です。
 少なくとも都編においては、天がアーティファクトを手にし、それに主人公が気付いたくだりはスパっと省略されているので、それがこの天編と同じであったか、となると絶対ではないんですよね。
 ただアーティファクトの現状解説されている特性を鵜呑みにするなら、アーティファクト自身が勝手にユーザーを選ぶので、それを手中にするタイミングには容喙し辛い、とは考えられます。

 ただし、この天編の終盤で、恣意的にソフィが主人公にアーティファクトを与えているように、管理していたものを分け与える事は普通に可能だし、また力を譲渡する事も出来る、逆に強制的に排除する事も可能なのも見えてきました。
 そのあたりの流れからしても、そもそもの大前提である、神器が壊れた事で異世界の門が開き、アーティファクトが流入してきた、という説明自体が眉唾な印象は出てきますし、少なくともなんらかの手段を使って、ソフィが天を早めに動かし割り込ませ、都ルートの流れに入る前に二人の関係を強めていった事で大きく枝分かれしたのは確かなのだろうと思います。
 無論それだけの容喙でここまで変化したのはソフィにとっても意外だったというのは言動からも推定できますし、そこに明確な悪意を汲み取るのは穿ち過ぎでしょうが、少なくとも裏側の部分でまだ主人公=ユーザー側に披歴していないなにか、は確実にあるだろうとは感じさせますね。

 また、今回のボス格であるゴーストの存在についても謎は多く、それこそ神器破損のタイミングで一斉にアーティファクトが流布したというなら、それを既に最低二つは所持し使いこなしている事、更に譲渡された力をも本体並みに使いこなし、かつそれで人を傷つける事をまるで躊躇わない精神性が完成しているあたりも含めて、それが全て偶発的に発生したと考えるのはなかなか難しい話でしょう。
 勿論彼女なりの背景などはあっての、という点は今後明らかになっていく可能性は高いですが、やはりどこか意図的に作り上げられた存在、引いてはアーティファクトを利用しての実験台的なイメージは出てきますし、この天編ラストの敵役側の会話などからも、果たしてその糸を引いているのは誰か?という部分で錯綜する情報を小出しにし、ミスリードを誘う意識は感じますね。

 多分次は春風編だと思いますが、まだ味方側(と絶対に限った話ではない可能性すらありますが)残りの二人の力の本質も隠されていますし、その辺と連関する事で、次作では大枠の事件そのものの見え方がガラッと変わってくる可能性は高いと踏んでいます。
 そもそもからして、今回で示唆された部分だけでも、石化事件の実行犯が複数いるのは見えてきますし、またその相手が本当にアーティファクトユーザーだったのか、天編で第二の殺人が起きなかった理由は何かなど、非常にきめ細やかな伏線は残したままなのが心憎いですし、それでいてしっかり一応この物語としては高いレベルでの完成度と読後感を誇っているのは大したものだと思います。
 どうしても流石に一作目ではそこまで出せない、という部分も結構大胆に踏み込んできたと思いますし、個人的にはレイラインシリーズの二作目のステップアップ感に比類する期待感と満足感を得られました。

 ただ流石に名作ラインに乗せるほどではないですし、最低でもあと二作は出てくるはずなので、それを起承転結になぞらえるならば次の転の面白さがどこまでか、そして結末の完成度がどこまで達する事が出来るのか、シリーズ全体としての期待感は充分に持てるものの、これ単独で突き抜けた評価には出来ないですかね。
 とりあえず二作目が出るまで一年かかった、というのは、ロープライス作品としては結構のんびりしたスケジュールですし、まあそれだけの価値がある総合的なクオリティ、とは思いますが、やはり出来れば半年以内、せめて今年中くらいには次作をプレイさせてほしいな、と思います。


キャラ(20/20)

★全体評価など

 基本的には登場人物が一気に増えるタイプでもないですが、以前は見えていなかったヒロインズの個性の幅がしっかりアピールされているのは次への布石としてもいい味を出していますし、相変わらずみゃーこちゃんが大天使で、天も期待以上にウザ可愛く満足できました。
 とにかく会話の中で滲むそれぞれの人間性の面白さが抜群ですし、天がメインの分なだけ弄りに回った時の執拗さなどが実にらしく、結果的にきちんとみんなの魅力を引き出す契機になっているのがある意味で主人公形無し、って思えます(笑)。

 天自身の想いの根源的な部分では、かなり恵まれた普通の環境の中で、だけにやや特異な印象こそありますが、それを今まではしっかり分別して自分の中にだけで留めていたというあたりのバランス感と、それが崩壊していく流れの説得性と積み立て方、それを受けてのぶっちゃけモードの可愛さなど最高でしたし、またHシーンが無駄に面白いのがこの二人らしいよなぁって。
 一作目ではまだそこまで演技の幅を問われなかったけれど、ここではかなり感情の幅も大きく、演技力が求められる中でのCVのはまり役っぷりも流石の一言でしたし、本当にウザ可愛い、の模範的なバランスを保持した素敵な妹ヒロインでした。


CG(18/20)

★全体評価など

 量的には1枚絵25枚でSD7枚と、値段相応には揃えていて、質や雰囲気も安定して高いと思います。
 立ち絵は特に天に関しては一気にポーズや表情差分、髪型や服装に至るまで増えていて、都も前作の質を踏襲はしていますので、日常シーンの華やかさは一気に増したイメージですね。基本的にこの話の流れだとこの3人、ってのが一番多いですし。
 特に天の部屋着と、その時の降ろし髪は可愛かったなー、と思いますし、ウザジト目とかの遊び要素でも特色が強く出ていて可愛かったと思います。

 1枚絵では背中の紋章見せびらかし、キス、背面屈曲位あたりが魅力的でした。


BGM(18/20)

★全体評価など

 新規分はボーカル2曲にBGMは4曲ですね。ボーカルは当然として、きちんとBGMもヒロインの雰囲気に合わせたものを積み上げてきたのは評価していいと思いますし、全体のクオリティの高さも流石の一言ではあります。

 特にOP曲の『ソラノキオク』が素晴らしくいい曲で、切迫感と緊張感があり、どこか幾何学的なようで不協和を醸す独特のメロディラインの完成度の高さが非常にインパクト強く、ボーカルの力強さとセットでかなり好みですね。
 EDの『ここにある空』も透明感と伸びやかさが強く出ていつつ、メロディラインのスタイリッシュさがこのシリーズらしいスタンスを維持していて、こちらも結構お気に入りです。

 BGMでは、新規分では『never forget』が断然好きかな。既存曲ではやっぱり『under the moon』の切なる雰囲気は最高だと思います。


システム(9/10)

★全体評価など

 演出的にはより細やかで躍動感あるつくりになっていたと思いますし、ムービーの出来もレベル高く、前作同様か上回った仕上がりだと思いますね。
 システム的にも抜群、とまではいいませんが安定して使いやすいですし、個人的にここの回想モード好きなのでそのあたりも含めて高評価、ただトータルで満点まで上げるには少し足りないかな、と。


総合(88/100)

 総プレイ時間6時間くらい。分岐までが4時間ちょいで、バッドはそこから30分弱、メインが1,5時間くらいの塩梅でしょうか。
 ある程度土台の説明を省いてポンっと本筋に入る分、1作目よりは少し短いかなと感じるところはありましたが、その分物語の密度の高さは素晴らしく、刻々と移り変わる状況の緊迫感に並行してのほのぼのした日常のおかしみ、温かさなども存分に楽しめて、もっとこの世界観に浸っていたいと思わせる程度には出来のいい内容でした。
 1作目と違ってキャラの絡みも複層的になってきましたし、どうしても都とのマンツーマンが多い条件だと真面目さが強く出てしまうところは多かったので、その点でも天という潤滑剤がこの時点でこの立ち位置にいるのはプラスファクターだったのかなと。

 無論まだまだ謎は多く残され、その辺で完璧にスッキリするとは到底言えないですが、一応この作品の中で出しうる最大限のカタルシス、みんなの力を合わせててきなお約束からの逆転劇の醍醐味は楽しめると思いますし、その点は確実に1作目より上だと断言できます。
 総合的にも様々な角度からいろんな話が飛びこんできて、結果的に物語の密度はグンと上がりましたし、シリーズものとしては順調にステップアップしていると思っていいでしょう。少なくとも天と中の人が大好きー、って人には垂涎の内容だと思います。
 とにかく今後の進展が非常に楽しみですし、実に待ち遠しいですね。
posted by クローバー at 08:00| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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