2018年09月13日

未来ラジオと人工鳩

 前作ニュートンがかなり面白かったし、今回も体験版がとても楽しかったので素直に購入。


シナリオ(21/30)

 失敗の先にあるもの。


★あらすじ

 人工鳩――――それは次世代インフラとして華々しく登場し、あっという間に世界中の利便を塗り替え、そして大きな悲劇を呼び起こしました。
 電波喰い、そう称される人工鳩のインフラの途絶により、15年前のある日、世界は混沌に突き落とされ、一気に生活水準が巻き戻されるほどの被害を受けました。
 そして局所的にもその影響で大きな事故が多発し、主人公も空港で多数の航空機が同時に墜落した悲惨な事故で大好きだった両親を亡くし、一連の事故の唯一の生存者として、今も空を支配して止まない人工鳩への大きな恨みを抱えて生きてきました。

 人類から空が奪われて幾星霜、そんな閉塞的な時代に風穴を開けるべく、主人公は友人の家がかつて経営していた電気屋の倉庫から特殊な部品を見つけ、それを組み入れることによって、過去には当たり前のように動いていた「ラジオ」を、電波妨害の影響を受けずに稼働させることに成功します。
 主人公はそれを妹の水雪、親友の石丸、そしてかつての事故現場の忌日に姿を見せた事故の関係者である秋奈と、その事故に関わりを持つ科学者の椿姫に手渡し、細々と、けれど確かにかつてはあった距離を隔てての繋がりを取り戻そうとするのです。

 しかし、自分でも全ての機能を把握していない謎のパーツを使った影響なのか、そのラジオは予期せぬ事態をもたらします。
 主人公が放送した時間とは別に、深夜の一分間だけ謎の未来の放送を受信し――――そしてそこでは、遠くない未来に主人公がかつての事故現場で再び起こる事故に巻き込まれ死亡する、という不穏極まりない告知が流れてきたのです。
 その予言に慄きつつ、主人公はその仕組みや事故の謎を調べる為にかつての事故現場に潜入し、そしてそこで運命的な出会いを果たします。

 白衣を纏った、どこまでも純真無垢な少女・かぐや。
 主人公が嫌う人工鳩を好きと公言する彼女の下にも期せずしてラジオが届けられることになり、そしてその出会いは主人公にどうしようもない焦燥や気掛かりを感じさせて。
 期を同じくして、未来に起こるとおぼしき事故の詳細が見えてきて、そしてそれを防ぐための手段も確立するのですが、それはかぐやが最も悲しむ状況を伴うものであり、またかぐやは、方法は口に出来ないものの自分なら電波喰いを止められるとも公言しており、その二律背反の状況に主人公は苦しめられつつも未来を選択していく事になります。

 果たして謎のラジオが告げる予言は本物なのか、そしてそれを回避する術はあるのか?
 またその状況にかぐやはどのように関わり、彼女の決断はどのように未来に干渉してくる事になるのか?
 そして、その先に誰もが笑顔でいられ、空との繋がりを取り戻した世界はやってくるのか?

 これはそんな近未来の、情熱と希望と哀切が交差するSFファンタジーです。


★テキスト


 前作同様にテキストのテンポの良さと歯切れの良さ、斜め上の発想力は健在で、まあ相変わらずシモいネタは多めですが大層笑わせてくれますね。
 それでいて最低限必要な伏線や情緒的な記述においても味わい深さは見受けられますし、全体として悪くはありませんが、総合的に肉付けが薄いのは変わらず、全体のリズムも一定に過ぎる感じでその辺は課題でしょうか。
 まあカジュアルに心に染みる物語を楽しむ、という意味ではいい出来なのでしょうけど、じっくり行間やテキストの深読みなどで楽しみたい層にはちょっと物足りない、というのはどうしても出てくる読み口だと思います。


★ルート構成


 つくりとしては結構特殊で、かなり長い共通の中で選択肢はあるのですが、そこでのかぐや分岐は最初は選べずに、その選べなかった結果を踏まえての続きで残りのヒロイン三人のルートが階段分岐、脱落型で展開されます。
 基本的にかぐや以外のヒロインは正直ちょっと敗者復活的なイメージは出てきますし、恋愛的な面を補完する上での選択肢が足りているか、と言われると微妙なところですが、少なくとも状況の中でそういう風に流される可能性、という意味では一応の説得性は有している構図ではあるのかなと思います。

 多分かぐやルートクリアの為には全員クリアか、最低でも椿姫クリアが必須なのだろうと思いますが、その階段の流れでもより世界の真実に肉薄する、というレベルがそのまま反映されていますので、ここはそれに従って水雪、秋奈、椿姫の順でクリアし、最後にかぐや、というのが王道だろうと思います。
 かぐやルートとおまけシナリオを全部クリアするとお決まりらしい強くてニューゲームが楽しめて、一応それが大団円、という形にはなっていますね。


★シナリオ(大枠)


 基本的に一本道に近しい構成で、そのそこまでポリューミーでは無い物語構成の中でもしっかり心を打つ波瀾に満ちた物語が提供出来ている、という点では高く評価出来ますが、一方で場面ごとの肉付けの平易さや不足によっての説得性の薄さ、構成の妙を補強する上での細かい部分の整合性の雑さは結構目につき、そのあたりが気になる人は手放しで賞賛は出来ないのではないかな、と思います。

 人工鳩というインフラの特異性とその反乱的な状況、そしてそれをもたらした原因や理由などの組み立てにおいては素晴らしいものがありますし、その事情に少しずつ主人公が肉薄していく過程のヒューマンドラマ性も見事ではあります。
 特に共通序盤から中盤にかけての、基本面識がなかった面々とラジオを通じて心を通わせていく過程や、その中に孕む緊迫感がぐっと距離を縮める手助けをしていたりするところはすごく好きですし、言葉は悪いですけれど今回も体験版部は本当に面白かったと思います。

 一方で個別の簡素さは相変わらず、という所でしょうか。
 かぐや以外の3人の場合は、どうしても立ち位置的に敗者復活というか鬼のいぬ間にというか、とりわけ主人公の状況を利用しての水雪の立ち回りとかは誠実か、と言われれば難しいところですし、そのスタンスで各人の個性が生かされているのは確かですが、やはり総合的に見ると全体のシナリオの補完、的なイメージは強かったですね。
 勿論その中でも秋奈の父親のエピソードとかしっとり出来る話もあったとは思いますが、その3ルートに少しずつ伏線を散りばめさせて、椿姫ルートで真実に至り、その知見とそこからの努力を経ての過去への介入、という部分の発想に全てが集約する、という中での最低限の個別、という色合いはあるでしょうか。

 じゃあその分かぐやルートはボリューミーか、というと決してそうでもなく、こちらも最低限のサポートを受けての状況変化から、あたらしい未来を構築するに足る説得性は有していますが、それはあくまで状況的なもので、情緒的な面ではかなり物足りないな、と思います。
 百歩譲って他3人は繋ぎ、というスタンスの中であの最低限でも成立する部分はありましたけど、かぐやというヒロインの特異性や立ち位置などを踏まえた時に、他ヒロインと同じテンポや思考の流れで恋愛をされても、という部分はあるし、また二人が直面する苦難に対するアプローチにおいても、かなりウルトラCを使った上でのショートカット感が強いのでそこもうーん、とは感じます。

 そもそも総合的に見た時に、科学技術的な部分においてのブラックボックスが多過ぎるのは確かですし、今に至る状況を作った理由的な部分においても、幹は説明されますがその枝の部分はかなり蔑ろにされていると感じます。
 また事故の影響の幅や、それに伴う主人公とかぐやのありようについても、かなり恣意的な操作にはなっているので、そのあたりもう少し細やかに、違和感を感じない配慮はあってしかるべきだったかなと感じますし、それがあれば名作ラインに乗れるだけのアイデアだったと思うだけに勿体無いですね。


★シナリオ(ネタバレ)


 今回は個別それぞれでどうこう、というより、全体の中で一応辻褄や整合性は最低限用意されている、けれどそれはかなり読み手にとって違和感があるけれど、という部分において、ある程度の考察と改善イメージを触れていこうかなと思います。

 まず基本的に、主人公の年齢で事故が15年前である必然ってあるのかな?とは感じました。
 一応こういうゲームの建前ですから、水雪で18と考えた時に、それでも主人公は精々20歳がいいところでしょう。となると事故当時は5歳前後になるわけで、その年頃で事故のトラウマはともかく、それから長く憎悪を抱き続けるほどの確固たる自我を確立できていたのか?というのは疑問が残る部分です。
 多分ゲーム的に、あのハレー彗星到達は歴史的事実だけに揺るがせられない、なのでそこに合わせての設定はしていると思うのですが、でも少なくとも話のどこを切り取っても、その過去の事故自体がそのタイミングである必然性はないとは思うんですよね。

 椿姫にしても、如何にデザイナーズチャイルドとはいえ事故当時で14歳かそこらの計算になるわけで、その数年前からかぐや母の右腕として大活躍していた、となるとやっぱり違和感は出ます。
 そうなると普通に事故のタイミングを10〜12年前に繰り上げてもいいんじゃない?とは思うし、その方が精神的な部分においても説得性はあったと思うのですけれどね。
 もちろん主人公はあの事故で基本一度死んだも同然になっていて、そこから人工鳩の疑似脳ネットワークの恩恵を受けて、という特異な存在ですから、その機能がそういう精神性の構築、特に忘却に対する適性の「低さ」として発露していて、だからこそ、という解釈も出来るのですが、どちらにせよ事故のタイミングはそこが必然だった、と言うなら、それは事故を発生させた理由であるかぐやに起因するのでしょうから、そこはしっかり掘り下げるべきだったでしょう。

 というより、建前としての18歳以上ですを遵守する場合と、あくまで建前としてスルーする場合で条件も違ってくるのですが、そもそもかぐやはいつ、どういう状況で生まれたのか、その点を示唆する要素が作中にほぼほぼ存在しないのが違和感でもあります。
 そもそもいざな(変換めんどいのでひらがなで)という女性が、普通に恋愛して子供産むタイプか、ってところで疑問符もつきますし、なぜ子供を作ろうとしたか、或いはそれは椿姫を見ての、自分の遺伝子をより濃密に引き継がせたデザイナーズチャイルドではなかったか?なんて疑問も出てきて(椿姫のそっくり発言が傍証)、一方で晩年に見せた愛情の様からすれば、単純にそうでもない背景も想像は出来るわけで、その辺が全く触れられていないのは読み手に対し不親切で、共感性に陰りを生む要素だとも思います。
 少なくとも地下の機材の中に自分の人格を模した教師的なデバイスを作れているのだから、そのあたりを利用してのいざなの過去とその想いの変遷を、それこそ椿姫ルートでもいいから辿る、という過程はあって欲しかったなと感じます。

 そしてその前提があった上でなら、どういう経緯であれ生まれたかぐやは生まれつき障害が備わっており、まともに生きていくのも難しかった、という設定により箔がつきます。
 多分その時点では元々の人口鳩インフラ自体は完成していたはずですが、それを流用してかぐやを生かそうと決心してから実行までにどのくらいの期間と葛藤があったのかなども含めて完全にブラックボックスですし、そもそもいざなの作り上げた技術の大半がそうであって、極めつけが未来のラジオを受信できる装置になるわけですから、その辺の恣意性極まれり、というつくりはもう少し誠実な説明責任があったんじゃない?となるわけですね。
 少なくとも時間軸的な意味で15年前が必然であるなら、当然それはかぐやの生誕が端緒なのは揺るがない事実ですし、けれど年齢的制約を加味するなら最低でも3歳までは生きる事は出来ていた、と見做せるのですから、そこに幅を持たせることも不可能ではない、より主人公側の事情に説得性を寄せたつくりにも出来たのでは?という解釈です。

 後はやはり、かぐやルートの簡素さは良くないですね。
 他ルートの個別はまだスタンス的に、ああいう突発的な想いの発露からスタートして、というのも有り得る状況ですし、それぞれのヒロインの背景からしても頷けない事はないですが、かぐやの場合主人公と疑似脳で繋がっているというその無意識的な一体感、共鳴そのものだけで突っ走るには如何にも勿体無いヒロインだろうとは思うんですよね。

 多大な犠牲を背景に生きてきたかぐやは、けれど他者と触れ合うことがほぼなかっただけにどこまでも純粋で無垢で、それと同時に
生きる喜びも、そして死ぬことの怖さの本当の意味も全く知らない境遇に置かれていたわけで。
 そうであるのに、主人公と歩調を合わせて進む中であんな簡単に情緒を発展させて、心も身体も、という関係にスムーズに踏み込めるのはやっぱり違和感はあり(そーゆー知識がまるでないはずの子が、はじめてのセックスでいくいくぅ〜言われてもちゃうやろ、って話ね、下種く言えば)、もったいないとも思っていて、そのステップの機微においてもっと丁寧な記述、イベント展開を組み込むだけでも全然イメージは違ってくるとは思うのですね。

 加えて、この二人の覚悟に至る上でのキーになる死生観の部分、ここもやっぱりあんな簡素に、主人公の記憶を繋げて、するとそこから類推できましたよ、的な借り物の感覚で積み上げてしまうのは、ぶっちゃけショートカットというかズルというか、風情がないですよね。
 古い作品ですけどそして明日の世界より――――の水波シナリオなんかを思い出す所なんですが、生の楽しみを知ってはじめて死に対する単純な怖さだけでない、失うものの重みを知っての悲しみが宿るという構図は、その状況証拠的な蓄積が重たいほどに読み手の心にも響いてくるのは間違いない所で、このかぐやにしてもそういう部分をもう少し正攻法で積み立てるべきではあったと思うんですよね。
 その積み立てによって心に生じた言語化できない違和感や悲しみが、主人公の意識と明確につながる事で具現化し、という段階的な構図で、その脳機能のリンクが最後の一押し程度ならまだ良かったんですが、このつくりだとそれだけでその死生観の感覚を網羅してしまっているイメージであり、やはりそれはかぐや、というヒロインに対してのイメージをあまり良くはしない条件ではないかと思うのです。

 ましてその結果として、一時的にせよかぐやは主人公の人生を凍結させてしまう業を背負うわけで、その決断を借りものだけで済ませてしまうというのは、単純に情緒が幼い故の根源的恐怖に打ち勝つ強さがない、というイメージに向かってしまう懸念があり、少なくとも私はそういう風に見えてしまって、純粋にかぐやの生きたい、という気持ちを認めにくくなってしまいました。
 しかもそういう葛藤なく状況だけが進んだところで、個人的にはあのエピローグ、主人公の友人たちにかぐやが主人公は自分の中にいる、と告解するシーンで、とりわけ水雪あたりはそれをすんなり認めて赦すかなぁ、って感覚はあるんですよね。何しろその時点では、いずれ復活できるかも不透明なわけですし。
 そういう意味ではどこまでもこれは主人公の物語だった、とも言えて、そうなるとかぐやという本来並立すべきヒロインの立場がどうしても弱く、守られる位置付けに固着してしまうわけで、それは物語の全体の枠組みとしても良くないとは思うのですよね。あくまでも二人が一蓮托生なら、その覚悟の重みにもしっかり追いつくだけの、かぐやなりの積み上げが欲しかった、というのが素直な気持ちですし、単純にかぐやルートは短すぎると思います。

 この辺はテキスト面でも書いたけど、リズムが徹頭徹尾同じなんですよね。
 共通や他の個別はそれでもいいかもだけど、あくまでもメインであるかぐやはもっと重厚であって然るべきだと思うし、そのメリハリ、一定の贔屓感があればこそ、読み手にもこの子が揺るぎなきメインヒロインだと強く実感させる手助けになるわけで。
 そしてこのルート、それをやろうと思えばある程度できる余地は十分あるわけで、なのに結構早い時点で決意を決め、椿姫の協力を得て、そして8日後…………みたいなつくりなのですからねぇ。
 少なくともいざな絡みでの技術面の恣意性を踏まえれば、椿姫の準備期間にしたっていくらでも、とは言わないまでももっと縮める事は絶対に可能なわけで、そうすることで活写できる様々な要素も上で触れたようにいくらでもあるのだから、このルートまでその最低限のテンポを遵守したのは個人的には納得できませんね。

 無論メーカーの方針としてのカジュアルさはあるのかもだけどそれも善し悪し、それに全体尺としてもかなり短い、コスパがいいとは決して言えない作品なのは間違いないのだから、せめて重要な部分だけは濃密に、というプラスアルファを今後は考えて欲しいなと感じました。
 まあニュートンの時も同様ですし、制作スパンなども含めると難しさはあるでしょうが、そのひと踏ん張りがあるだけで絶対にもっともっと作品評価は伸びる素地があるとは思うだけに残念ですし、今回の評価としても発想を最大限プラスに見てこのくらいになるかなと思います。



キャラ(20/20)


★全体評価

 
 結構キャラの個性はシナリオ性に依拠しているし、恋愛面においてもそれぞれに強烈なフックを持っているから、純粋な成長とか献身とか、そういう部分での魅力を強く感じられるか、っていうと微妙なラインではありますが、土台の造形は非常に魅力的ですし、それぞれの個性の尖り方がきちんと可愛さに繋がっている部分、またかなり奇抜な台詞回しなどもありつつ、それを悪徳に見せないバランス感覚も含めて評価出来るかなと思います。


★NO,1!イチオシ!


 まあなんだかんだ言いつつ一番好きなのはかぐやなんですけれど、ただこの子の場合は上で書いた通り、もっともっと、もーーーーっと魅力的に仕上げるだけの余白はあったと思うだけにそこが非常に残念ではありますね。
 純真無垢であり、またあんな境遇の中でも他者を善意的な生き物として疑わずに触れられる危うさも含め、非常に特異でありつつ神秘的な可愛さを持っていて、見た目やスタイル的にもストライクでしたし総合的にやはりこの子はとても好きなので、より明快な成長要素を丁寧に盛り込めていれば殿堂級に至れたのですけどねー。


★NO,2〜


 次点はやはり私の趣味的に水雪が順当に来ますね。
 チャンコンクンネタがややしつこいってのはあれど、普段の下ネタバンバンのスタイルから、実際の恋愛モードでのしおらしさまで幅広くニーズをカバーしていますし、どうあれ土台には兄を思い遣り、重んじ、慕う気持ちが流れているという部分で筋が通っていて可愛い義妹でした。

 秋奈も気さくで真っ当で、すごく立ち位置としてはバランサー的な感じではあり、それでいて一番事故の被害者としてのフックを強く持っている事で、主人公の特異性もそれこそあばたえくぼ理論的に転んでいく様などは好みでしたねぇ。
 タイプ的にきちんと自分に自信を持っていて、変に角張っていない部分も含めていい味を出していましたし、もう少し本筋の中でも
しっかり絡ませて、主人公達の気持ちの支えになって欲しかったなぁとは思います。

 椿姫もそりゃヒロイン造形としては中々にエッジが効いていて私のストライクゾーンでは間違ってもないですが、ただ生まれが特異でその後の生き方もバランスが著しく悪いものだけに、その影に潜めた乙女性がたまにチラッと垣間見えるところでのギャップ的な可愛さは中々良かったのではないかなと思います。


CG(18/20)


★全体評価

 絵柄がすごく写実的で、ちょっとレリーフを思い出しましたね。
 画風として好みか、と言われるとそこまでストライクではないのですが、単純に絵としての完成度の高さ、塗りの質の良さなども含めて本当に見栄えはしましたし、精緻でありつつ肉感的でしっかりエロい、というのは普遍的な好みの幅としてはかなり鋭い部分に食い込んでくる感じはします。まあ私はもちょっとキュートさがあざとくても明確な方がいいですし、もう1点上にしようか迷いましたけどその点でここ止まりにしました。 


★立ち絵


 ポーズはヒロインで2種類かな、腕差分などはそこそこありますし、ポーズ的な個性もかなりしっかり出ていていい感じですが、大きな躍動感とか意外性はそこまでない、どちらかと言うと堅実な構成かなと思いました。
 お気に入りはかぐやのやや左向き、水雪の正面、秋奈正面あたりでしょうか。

 服飾はかなり乏しく、ヒロインでも多くて2種類、椿姫なんかは基本1種類+着脱という感じですから、シナリオの流れの中での必然がないとはいえ少し物足りなさは募りますかね。
 デザイン的にもそこまでピンとくる感じもなくて、敢えて言えば水雪の私服と秋奈のバイト服あたり、全体的に実用感により過ぎていたきらいはあるのでそこはもちょっと工夫が欲しかったですかね。

 表情差分も極端に多くはなく、その中でしっかり特徴や遊びは踏まえていて悪くはないですけどインパクトもそこまではないかな、と。
 お気に入りはかぐや笑顔、きょとん、哀しみ、水雪ニヤリ、不満げ、寂しげ、秋奈笑顔、苦笑、ジト目、椿姫驚きあたりかな。


★1枚絵

 
 登録は全部で86枚ですが、カットインに近いものもあるので実質的にはもうちょい少ない感覚ですね。
 ただ差分はそれぞれで結構用意されていますし、ひとつひとつの出来は凄く洗練されていて迫力があるので、その点は高く評価出来ると思います。こういうのが好みなタイプにはドンピシャかなあと。

 お気に入りはかぐや大泣き、はじめて正常位、背面座位、椿姫とかぐや、水雪背面屈曲位くらいですね。


BGM(19/20)


★全体評価


 しっかり世界観を投影して、どこか閉塞的・退廃的な色合いを強く出しつつも、その中から希望を見出していく力強さも感じさせるつくり、というのが全体的なイメージですね。
 また曲数も前作からすれば大分増えてバランスが取れていますし、ボーカルの充実含めて満足度高く、その作品の中で一番手放しで評価できる項目かと思います。


★ボーカル曲


 全部で5曲。
 OPの『栖鴉の綿』は透明感と抒情感、無知ゆえの安らぎとその悲しみを内包したような神秘的な曲想で、伸びやかなボーカルとのバランスも良く仕上がっていると思います。
 またこの曲はグランドEDでも使われますが、伴奏の雰囲気が大分地に足がついて、その上で一歩ずつでも前に進んでいく力強さが増していて雰囲気良く、作品全体を象徴する曲として十分な存在感を放っていると思いますね。
 流石にニュートンのOPほどの破壊力はないですが、これもかなりの名曲と呼んで差し支えないと思います。

 後は第一部EDとかぐや以外の個々ヒロインEDですが、その中では一番好きなのが椿姫の『Never Too Late』ですね。この大人びたシュールなメロディラインと、そこに滲む悔恨と寂寞の味付けのバランス感がすごくいいです。
 その他もかなりいい曲だと思いますし、総合的に質が高いですね。


★BGM


 作風に合わせて非常にコミカルなものからしっとり切ないものまでバランス良く配備されていますし、曲数としては23曲なのでまだ標準レベルギリギリ、というラインですけれど、ひとつひとつの質の高さは見事だったと思います。
 お気に入りは『cheese on the toast』『New Tone to the Radio』『やがて朝陽が』『眠れない心』『真実の在り処』『Nuts dish』『久遠の果てに』『親愛の刻』『智覚の刻』『★てぃんくるもんすたー★』あたりです。


システム(9/10)


★演出


 全体的にはコミカルに動くし斬新さもあって面白く、またしっかり情緒的な場面ではそれに見合ったものが用意されていて、バランスのいい演出になっていると思います。
 ただ前作までのキャラ別ムービーがなくなっちゃったのは勿体ないですねー、ニュートンの特に四五とかめちゃインパクトありましたし。
 OPムービーやEDムービーなどはそれぞれに味わい深く丁寧なつくりで、すごく綺麗に仕上がっておりお気に入りです。特にOPはいいですね。


★システム


 基本的にはどみるエンジンなので使い勝手よく安定していたと思います。
 逆に特にこれといって特別なものはないですが、まあ評価としては割り引く事もなく、という感覚ですね。
 個人的にBGM回想できちんと絵の枠が変化するのは目にも楽しくて好きです。


総合(87/100)



 総プレイ時間14時間くらい。共通5時間、個別がヒロイン毎に2時間くらいで、あとおまけなど諸々含めて、ですね。
 正直ボリュームとしてはかなり物足りないですけれど、それでいてきちんと物語としてはドラマチックにまとまっているのが凄いな、とは思います。
 それこそコンセプト的なカジュアルな感動、という視座ではかなりしっかりした出来なのかもですが、やはりそこからもう一段脱皮して欲しいというか、どうしても表層的な感動に留まる感じは否めないのですよね。
 せめてメインのルートくらい、あと1時間ちよっとでも肉付けが的確に割り振られていればもっともっと面白く、心に深く染み入る作品になりそうなんですけれど、結局最初から最後までスピード感豊かに走り切ってしまうのも善し悪し、という好例ではないかと思います。

 ただ作品の総合力としては前作から順当に積み増ししていると思いますし、今後も楽しみですね。

posted by クローバー at 13:47| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: