2018年10月20日

ケモノ娘の育て方

 お値段お手頃でしたし、ヒロインが可愛くてコンセプトも面白そうたったので購入。


シナリオ(17/30)

 色んな意味で軽い、かな。

★あらすじ

 田舎暮らしの主人公は、ある日山の中で罠にかかった女の子を発見します。
 その子は不思議なことに頭にケモノ耳、お尻に尻尾が生えていて、かつあまりまともに言葉も喋れない状態であり、どうやら十年ほど前にこの山で失踪し、行方不明になっていたいろは、という少女である事は判明したものの、連絡のついた親にはすげなくされ、しばらく主人公の家で暮らしながら人間らしい生活を取り戻していってもらうことになります。
 彼女の存在によって、今まで正妻ポジションをほしいままにしていた幼馴染の佳菜などはやきもきを募らせ、また狭い村の中で彼女の存在は決して望ましいものでもなくて。
 そんな様々な軋轢を跳ね除けて、主人公はいろはが人らしい生き方を取り戻せるように奮闘していくことになります。


★テキスト

 全体的にシャープでシンプルで読みやすい文章ですが、テーマ性に対する重みが少し足りないのをどう考えるか、というイメージです。
 まあコンセプトとして、ライト&カジュアルにケモノ娘の復帰譚を描きたい、という所はあるのでしょうが、テーマ自体はそれなりに重いだけに、それを裏付けるだけのなにかはある程度テキスト面や構成面でのフォローは欲しい所で、その意味では最低限のラインで済ませてしまっている感覚があり、あくまでもリズムと雰囲気重視なのがどうかな、といったところ。
 その分の流れの良さや盛り上がりの連鎖的な部分、細やかな機微にそっと触れる一文など見どころは当然それなり以上にあるので判断に迷いますが、個人的にはもう少し全体的にテキストそのものに肉付けがあってもいいかなぁ、と思いましたかね。


★ルート構成

 大筋としては一本道ですが、選択肢によってヒロインとのHシーンが発生するか否かが変わってくる模様です。
 元々の設定的に、佳菜の立ち位置がああなので、全スルーしたとして次につなげる要素としてどうなん?とは思うし、また主人公のヘタレっぷりや八方美人さを加速させている構成でもあるのでなんだかなぁですが、一応それを全うするとハーレムHまであったりするので、その辺田舎の大らかさと言うべきなのか?
 とりあえず構造としては、ワンチャンス次を見据えたややズルい構成、という感覚ですし、それを読み手が自主的に選択させられるところでの後ろめたさなどは若干尾を引く可能性はあるなぁ、という感触でしょうか。


★シナリオ

 基本的にこういう、人の手を離れて生きてきた存在の社会復帰譚というのは、もう少しヒューマンドラマ的な重みがあって良さが出る部分はあるんじゃ?とは思うのですが、流石にこういうお手軽価格でやってるだけあり、その補助線は最低限に留まっているのが善し悪しどちらに触れるか難しい所ですね。
 そもそもいろは自身が、ある程度神隠しの中でも幸せに生きてきた、人の生活様式そのものは少し遠ざかっていたけれど、きっかけがあればすぐに取り戻せる程度の欠落で済んでいますし、その過程に悲愴感や前途多難さはあまりない分、その存在が巻き起こす外殻的な問題も適度に組み込んでいるのが特徴的です。
 それはそれでアリなのですが、結局主人公がいろはに傾倒する根源的な部分の掘り下げや、村の人間が忌避する必然などに関しても、前提として最低限の説明がある程度で、既にそうある、という状況の中でしか動いていかないし、いろはの過去の人間関係の問題にしてももう少し色々言及があっても、と思う部分はどうしても出てきますね。

 その分シンプルにいろはというヒロインの素朴で純粋な愛らしさは際立っている、と言えばそうですし、そういう無垢で楽天的なありようが周りの人間にも救いになっている面はあるのでしょう。
 佳菜がある程度彼女の存在を大らかに許容できるのもそこに依拠している部分はあるでしょうし、妹ちゃんの小鳥の懐き方なども含めて普段着の状況での空気感はとても楽しく温かいだけに、もう少しシリアス面でのメリハリがはっきりしていても良かったんじゃないかというきらいはありますかね。
 また千尋との関係性にしても、それ以外の部分においても、結局のところ超常的な要因に解決の起因となってもらっているお手軽さ、ファジーさはどうしてもありますし、少なくともまだこの物語が続くイメージがあるとして、故に隠している部分があるかも、と仮定しても、現状の質量と内容ですとこの位の評価に落ち着いてしまう感覚です。

 尺自体も、いくらロープライスとはいえ少し短すぎる感覚ですし、ヒロイン選択の特異性も含めて存外癖がないようで癖の強い作品だった感はありますね。
 これはこれで嫌いじゃないですけれど、やっぱり主人公の優柔不断さや流されやすい生々しさなどは、もう少しオブラートに包む方法を考えるべきだったのでは?とは思います。ヒロインとしてはいろはの方が好きでも、やっぱりこれ普通に佳菜の立場からすれば不憫そのものですしねぇ。


キャラ(20/20)

★全体評価

 基本的にはシリアス成分をフラットに薄くまぶした程度なので、嫌な面とかも強くは表に出てきませんし、本質的な善良さや愛らしさがしっかり描けていて問題なく可愛いな、とは思います。
 個人的にはどうせ塗すなら薄く、ではなく、もっとメリハリが欲しかったという点はありますが、総合的にバランス良く可愛さを発揮してくれていたので割り引くほどではないかなと。


★NO,1!イチオシ!

 まあなんだかんだでいろはの純朴な愛くるしさには大変萌えさせていただきました。
 身体は既に成熟しかかっているのに、心は純粋無垢な子供に近しいという有り方はやっぱり破壊力がえぐいですし、最初からかなりの度合いで人らしさは残していて、聞き分けとかそういう部分においても変なネガ要素が薄かったのはその点ではプラスだったでしょう。
 どうしても大半の存在が彼女に対して二心を抱く形になるのは致し方なく、その上で真っ直ぐに彼女の今だけを心配してくれる主人公の在り方に一番強く寄り添うというのも納得は良く話で、うまく野性味と元々の個性を噛み合わせて素敵なヒロインに仕立てたな、という印象です。


★NO,2〜

 個人的には千尋がかなりお気に入り。
 クールなふりをしつつ常に主人公の動向を窺ってる乙女感とか、いろはとの関係性の中で見せる弱さとか中々でしたし、選択肢の出し方的にも一応まだ本格的には誰とも結ばれていませんよー、的な空気は醸してるから、ワンチャ人気出れば続編ヒロイン昇格あるやも?という所を期待しつつですね。

 佳菜も立場としてはもっと嫌な子になっても仕方ないと思うのだけど、それでもいろはの可愛さに絆されて結局あれこれ世話焼いてる苦労人感がとても染み入りますよね。
 それでも時折見せる嫉妬や執着はあるものの、その色も粘度自体は低くカラッとしていて、元々の性格の良さを窺わせますし、正妻ポジションとしての鷹揚さも含めて味のあるヒロインになっているかなとは思います。不憫だけどね!

 小鳥も妹として素晴らしく愛らしく、おしゃまで背伸びしている所とか、いろはとの関係性の中で相対的に浮き彫りになっていく様がとてもお気に入りでした。
 まあ流石に立ち位置的に攻略できる子にはならんでしょうが(笑)、家族として支え合う立場としての存在感はとても強くて良かったと思います。


CG(18/20)

★全体評価

 絵柄や質は全体的に高く、好み度も高いのでかなり満足ですが、まあ値段相応の量か、と言われると少し首をかしげたいところでもあって、総合的にはこのくらいの評価になるでしょうか。


★立ち絵

 ポーズはそれぞれ2種類+後ろ向きという感じで、それぞれの個性はそこそこ発揮しつつ、それでもあまり派手さはないかな、というイメージ。
 お気に入りはいろは正面、千尋やや左、小鳥正面とやや左あたりですね。

 服飾はいろはと佳奈だけは優遇されて4〜5種類、サブは2種類程度でしょうか。デザインそのものは可愛らしくバランス良く仕上がっていて良かったと思います。
 お気に入りはいろは和服、制服、私服、佳奈私服、エプロン、千尋制服、小鳥私服、パジャマあたりですね。

 表情差分はそれなり、という感じで、そこそこ遊びも含め、エモーションなどで躍動感は出しつつなので、組み合わせの中でしっかり魅力を引き出せていたかなとは思います。
 お気に入りはいろは笑顔、困惑、きょとん、膨れ、照れ、佳奈苦笑、ジト目、千尋困惑、微笑、照れ笑い、小鳥笑顔、半泣き、拗ねあたりですかね。


★1枚絵

 全部で25枚と、お値段考えるとギリギリ水準かな?くらいのラインですね。
 出来そのものは安定して高く、とてもエロ可愛いのでその点は満足です。

 お気に入りはいろは檻の中、ドライヤー、祠の前で、制服、旧友との再会、贈り物、はじめて愛撫、バック、お風呂対面座位、佳奈正常位、騎乗位あたりですね。


BGM(18/20)

★全体評価

 こちらはお値段相応にはしっかり完備されていますし、作品の雰囲気をすごく柔らかく包んでくれるBGMの質の高さが特にいい感じでしたね。


★ボーカル曲

 全部で1曲。
 OP&ED曲の『Happy Beat!』は、雰囲気として優しく健やかで悪くはない曲ですけど、あまりインパクト自体はなく最後までフラットなイメージのまま終わってしまう感覚はありましたかね。
 トータルとして導入編的な部分もある中で、あまり癖を強くしない無難なつくり、というイメージで、そこまでヒットしませんでした。


★BGM

 全部で18曲と、こちらはお値段の割に豪華なラインナップ。
 出来もひとつひとつにしっかり奥行きがあり、世界観を細やかに丁寧にサポートしてくれている感じで、かつとても流麗で美しい曲が多いのでかなり気に入っています。

 特に好きなのは『零れ落ちる星空』『宝物の小箱』『軌跡をたどる』『思い出の揺り籠』『記憶のピアノ曲』あたりですね。


システム(9/10)

★演出

 全体尺が短い分、キャラ演出はしっかり拘りが細部まで敷き詰められている感じで可愛かったと思います。
 それ以外の部分も総じて安定して質高く組み上がっていましたし、基本的に文句はないですかね。
 ムービーも曲調とマッチした柔らかさが印象的で、色使い含めてこれ自体は結構好きです。


★システム

 基本的なものはしっかり揃っていますし、特に使い難さもないですね。
 一応選択肢でルート分岐的なものもあるので、ジャンプ機能が軽いのは短い作品とは言え助かります。


総合(82/100)

 総プレイ時間4時間。
 一応3500円也、と考えるともう少し全体尺は欲しいですし、物語としても色々コンセプトを詰め込み過ぎて、テーマに対してのひとつひとつの要素の軽さが目立ってしまっている感じは否めないですが、純粋にヒロインの魅力は楽しめるので善し悪しでしょうか。
 少なくともキャラデザが好みなら損はしないと思いますが、主人公のスタンスやこの手のテーマに付き物の負の要素が皆無とは言えないので、そのあたり何も考えずに萌え転がれる作品、とまでは言えないですかね。そこそこ好き嫌いは出るかも、というイメージです。



 
posted by クローバー at 04:22| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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