基本的にユロットの池上さん原画作品はなんだかんだ全部買ってるわけで、地味に好きなんだよなぁと。今回もキャラデザが最高に好みだったので、体験版で感じたシナリオの粗さには目を瞑って。。。
シナリオ(17/30)
熱量だけでは物足りない。
★あらすじ
主人公は、かつて自分の目の前で妹の桜良が交通事故に遭い、今も後遺症が残っている事を、自分のせいだとずっと気に病んでいて、その為に青春を十全に全うできない桜良を差し置いて、自分が今を精一杯楽しむような生き方が出来なくなっていました。
そんな何にも身が入らず、深入りせずの漫然した日々を過ごす中、ある日主人公は街中で不思議な出会いを果たします。
占い師然とした格好の透明感ある美少女・白亜に声をかけられ、振り向いた時、ふと気づくと周りの時間が一切合切停止しているという状況に出くわし、狼狽するものの、白亜の胡散臭い言動からそれが彼女の持つ不思議な時計、通称アトロポスウォッチがもたらすものと知らされ、そしてこの、5分だけ時間を止められる時計を使って人生をもっと楽しいものにして欲しい、と半ば無理やりにそれを押しつけられて。
狐に抓まれた様な気分で学園に着いて、半信半疑ながらもその時計のスイッチを入れると、やんぬるかな、やはり先程と同様に世界の時間は完全に停止して。
となればその時間は自分が絶対の支配者であり、なにをしても大丈夫なのだ、という認識がしみ込んできた時に、いの一番に発想したのは、それはもう年頃の男子らしい下世話な、時間停止もののAVの真似事でした。
実は主人公はずっと、隣の席のそこそこ可愛く気立てもいい瑠璃の、程よく弾む形のいい胸が気になっていて、この際その触り心地を試してみようと思い立ったのです。
しかし実際に服の上から触れてみても、時間停止の世界ではただ硬直しているだけで触り心地が違う事、そして自身が直接触れたものだけはほんのわずかな間時間停止の頸木から逃れることに気付き、とはいえここまでやってしまった以上せめて見た目だけでも楽しもうと考えたものの、その渦中でうっかり手が滑って直接瑠璃の柔肌に触れてしまって、刹那だけ時間を取り戻した瑠璃に強烈なビンタを浴びてしまうのでした。
再び硬直した瑠璃を前に、慌てて服を着せ自分の席に戻って素知らぬふりを決め込んだものの、ずっと瑠璃は疑いの目つきを向けていて。
その日の放課後、改めて呼び出しを食らい、お触りを不問にする代わりに真実を教えろと迫られて、主人公は降参とばかりにその時計の存在を瑠璃に知らしめ、すると瑠璃は目を輝かせて、それを使って色々遊びたい!と提案してくるのでした。
ただし瑠璃にも事情があり、一先ずはまた翌日、となって、家に戻ってみると、そこには何故かあの占い師の白亜が、ごく自然に実家に住み着いていて、妹の桜良の認識でもそれが当然だとすり替えられていました。
超常的な力が働いている事は承知しつつ、そこを深掘りしたら負けとばかりに適当に白亜をあしらいつつ、改めて瑠璃とともに楽しむなら、と時計の使い道を模索していく主人公。
その繋がりが出来た事や、時計の効能などで、SF小説好きの先輩である花音と仲良くなったり、今までは妹の親友、というだけのスタンスだったノアの危機を救って、元々オカルト好きな彼女に強い興味を抱かれたりと、今まで色褪せていた日常が華やかに、けれど一抹の危うさを孕んで動き出します。
果たしてこの不可思議な時計はどういう経緯でもたらされたものなのか?
その真意と、それを用いる事で運命はどのような変転を遂げていくのか?
その中で主人公はいかなる出会いと運命を辿り、どんな相手と結ばれていくのか?
これはそんな、超常的な力がもたらす運命の歯車の変化の中で紡がれる、SF的な要素をエッセンスにした青春ラブストーリーです。
★テキスト
基本的にはエロゲらしい、出来るだけ簡潔で、言葉のやり取りの中に状況もさり気なく埋め込むような、テンポと勢いに長けた読み口ですね。
全体的に急ぎ足な面は強いので、行間の深みやテキストそのものの豊潤さは当然期待出来ませんが、少なくとも理解はしやすく筋道も連関性も最低限は保証されていますので、まあ可もなく不可もなく、というイメージに落ち着くでしょうか。
ヒロイン視点への切り替えも頻繁に行うので、読み手の側が特に主人公からは見えない部分の心情の想像をしなくてもいい、という部分と、恋愛要素に関しては本当に淡泊というか、最低限のきっかけで坂を転がり落ちる岩の如くにあの人が気になるー、とヒロイン側がぞっこんラブになってしまうので、そのあたりの機微を楽しみたいと思っているならお門違いにはなそうです。
総じて単純に読み物としては物足りなさはあるものの、可愛い立ち絵と音声との組み合わせで総合的に楽しむ、という意味では完成度高いのではと思いますね。
★ルート構成
シンプルに好感度を蓄積して、最後の選択肢だけヒロインの中からだれを選ぶ?みたいな構図ですので、ある程度同時攻略も可能な一般的なつくり、と言えるでしょうか。
ただ白亜だけは、メインの4人攻略後に新たな選択肢追加でという形になっていますし、サブの二人は白亜ルートの内容に関わってくる、という意味合いもあってか、白亜クリア後に完全に独立したおまけルート、という扱いになります。
一応それぞれのヒロインに好感度選択がふたつはあって、そして最後に選ぶことでホップステップジャンプと綺麗な最低限の構図にはなっていると思いますが、この作品の場合選択肢と選択肢の間隔がかなり短く、その辺はシナリオ面でも触れますが必要最低限のイベントを数珠繋ぎにしただけで、物語の膨らみや余裕があまりないのでその点はマイナス、あと白亜追加のやり方としても、単純な選択肢の出し方としてはともかく、という感覚は強くある内容ですね。
★シナリオ(大枠)
基本的には体験版で感じた通りに、性急で粗雑な面が目立ち、それこそ結構往年の名作SFに言及してそれと比類するようなスタンスを提供したい意図はあるのかな?と思うのですが(ついでにウィズリボンネタが並列して出てきたのには苦笑せざるを得ませんでした)、この完成度では考察好きの面々を唸らせるのはまず無理だし、むしろツッコミどころ満載だなぁ、というイメージです。
また恋愛ものとしても、如何に時計の効果をきっかけとしてそれぞれのヒロインのツボを的確に刺激しているとはいえ、本当に最低限のイベントの蓄積で好きー、ってなってしまうので情緒的な面では食い足りないですし、主人公側のトラウマ克服や、その後の道行きの選択、そしてそれが大枠の世界観の中でどれだけ本義的な目的に適っているのか、という部分での曖昧さもかなり目立っていたなと思います。
無論最低限のシナリオ要素やその中でのドキドキハラハラ、恋愛模様の甘酸っぱさなど、目立った破綻なくお手軽に楽しめるという意味では悪くはないですが、結果的にその契機になるSF的な要素の下支えや紐づけが後出しになっていたりするので、やはりせめてもう少し共通は分厚くして、その中で一定のSF的な要素に対する説得性や有機性、ついでに言えばルート毎の細やかな擦り合わせ・整合性にも気を払うべきだったかなとは思っています。
その上での全体の構図に関わる白亜ルートまでの積み上げと、その開示に関しても少し曖昧で踏み込みが足りないものが目立ち、このつくりでは敢えてルートロックにした意味がそこまで強く出ていないな、と感じました。
ポイントとして結局のところ、白亜自身が意図していたものが、その立場からの責任感なのか、それともあくまで自己の意思そのものなのか、そのバランスの読み解きによって認識も変わってくるとは思いますが、少なくともそのあたりはもう少し掘り下げるべきで、如何に世界の制約の中で主人公側からのアプローチが出来ないにしても、幾ばくかのやりようはあったと思うんですよね。
そのあたりはネタバレでもう少し細かく見ていきたいですが、折角SF仕立てにしようと発想し、大元のギリシャ神話からのエッセンスの引き出しと、それを換骨奪胎しての物語の骨格構成そのものは結構面白い発想だったなと思うだけに、総じて詰めの甘さが目立つ作品になってしまったという認識です。
★シナリオ(個別・ネタバレ)
一先ずは個別評価を追いかけていく中で、個別としての仕掛けの甘さや面白さを見ていきつつ、それらを総合して白亜ルートの評価、特にその構造的な意味がどこまで体現できていたのか、何が足りなかったのかを探っていこうと思います。
差し当っての個別評価は、ノア=花音=白亜>桜良>瑠璃=サブ二人くらいの感覚です。
正直水準としては高いレベルでの混戦、という感じではなく、上位のシナリオでなんとか水準はキープ、ただ一部シナリオはその設定の粗さや強引さで微妙さが際立つ感じで、サブもおまけ扱いとはいえかなり状況の野放図さに拍車をかけているので個人的にあまり高く評価は出来ないな、というイメージになります。
まずそもそもとしての共通からですが、アトロポスウォッチを使用しての関係性の蓄積の中で、瑠璃にせよ花音にせよノアにせよ、本当に都合よく彼女らの渇望するツボを綺麗に刺激していて、その単一要素だけで一気に恋愛感情まで昇華してしまっている事、そして元々ぞっこんラヴの桜良にしても、そのライバル出現の中で心穏やかにいられず、という単純な契機だけで我慢が堰を切るような流れにはなっているので、総合的にヒロインズの薄っぺらさが目立つといえば言えます。
更にその程度を選択肢による蓄積の程度でコントロールする構図ではあるのですが、結局このつくりだとある程度以上同時攻略可能なので、好感度の明確な差を意識しにくいですし、理想としてはいくつか好感度選択を採用したら、その子固有のイベントを用意してそれを強化する、くらいの余裕は欲しかったところですね。
さらに言えば、特に瑠璃の想いの差異についての扱いが超適当です。
結局共通の時点で、あのプールイベントで選ぶか否かが分水嶺になる事自体が軽いのですが、その後あの母親との確執が露呈するイベントで主人公の助けを得ているわけで、瑠璃に関してはその時点でやっぱり相当に主人公に傾斜して然るべき状況ではある筈なのですよね。
なのに、そのプールで選んだか否かでその好きの気持ちが大きく幅を持ってくるというのは、いくらバタフライ理論でこじつけても無茶だろ、と思うし、結果的に転校の話やそれに伴う御稽古事の状況までが変化してくるわけですから、せめて瑠璃だけはもう少し、他のヒロインと横並びではない要素がないとなぁ、と思います。
せめて自分のルートで、母親との問題が即解決して、それも主人公のおかげ⇒あれっ、もしかして私、あいつの事大好きなの!?という気付きに至るまでの単調さにワンクッションでも挟んでいれば印象は少しはマイルドだったんですが、あまりにもすぐに好きを自覚してラブコメ一直線になってしまうため、他ルートとの温度差半端ねぇー、って感じになっちゃうんですよね。
ついでに言うと、胡桃ルートではその状況を逆巻きし、因果の因の部分を完全無視して、転校そのものすら話がついていないよー、ってのをフックに二人の関係性の契機にしているので、もはやその辺何でもありだなー、って苦笑するしかないのは仕方ないところでしょう。
あとやはり、せめて共通でもう少し触れておくべきというか、そもそも要素としてそれはアリだったのか?と疑問視する部分として、瑠璃と桜良ルートでだけ顕著に出てくるアトロポスウォッチの回数制限の話は、もうちょっと全体的な擦り合わせが決定的に必要なものだったと言えると思います。
最初にそもそも論として考えてみると、その回数制限の存在意義って何なのか?って事になります。
ぶっちゃけアトロポスとしての白亜の在り方として、彼女自身がそんな制約を提起する理由は、主人公への思いからしても有り得ない、それこそ単なる悪戯気分とか碌でもない話でない限り全く意味がないとは言えるわけで、となると可能性としては、このモイライ・運命の三女神の本義的な存在意義と、その不可思議を許容した世界そのもの、或いはより上位の神的存在が加えた制約、という見立てにならざるを得ません。
少なくとも白亜という個人の意識を脇に置いてのアトロポスとしての存在意義は、主人公の先行きによって世界や主人公そのものが不幸になるのを回避するためのセーフティー、運命のすり替え的な要素と言えるでしょう。
となると、総合的に見た時に先の悲劇を回避する中で、キーマンとなる主人公の人間性そのものは当然重大なファクターになるという認識でいいと思いますし、現時点においても、この時計の力の万能感に溺れて、むやみやたらに悪戯な事に濫用するような人格なら、その時点でその発明もろとも全てなかったことにした方が、現状維持的な観点で安全と判断される、という可能性は想定する事が出来ると思います。
ただ白亜自身はもっと明確に、今この時の主人公の幸せを祈ってその立場を全うしていると思えますし、当然この子もぞっこんラヴなのだから、敢えて言及しなくてもそんな制約に引っ掛かるような軽率な人柄じゃないと信じている節はあります。
どちらにせよ、その時計を使う事でお手軽に運命の針路を捻じ曲げられる、という効能自体は破格のものですし、制限があるにしてもある程度使ってもらわなくてはその効果が望めないとなれば、序盤のその態度も納得はいきます。
そして主人公がそれに対してあまり踏み込んでいかないのも、世界の修正力の影響下にあるから、という見立ては出来ますが、それでもせめて本当に危険性はないのか?くらいの質問は共通であっていいし、それを程よくはぐらかしつつ否定しない白亜、みたいなシーンを挟んでおけば、いざその問題に直面する場合に後出し感が強く出なくても良かったのに、とは思いますね。
あと気になったのは、その回数制限の話が全く出てこないルートでの扱いと、読み手の主観的感覚との乖離についてです。
とりあえずある程度主人公は自分の使用記録を取っていて、カウンティングも出来る状況ではある筈ですが、桜良の覗き行為が例えば共通で他のルートに入った時はもう沙汰止みになっているのか、それとも明確に誰かとくっつくまでは続けていたのかなど不透明さも大きく、またこの作品は明快な日付の指定がないので、大雑把に何日くらい、という部分でしか類推できないのも面倒さに拍車をかけます。
その上で、花音ルートのようにある程度の段階で自主規制を効かせているなら問題が表面化しないのも不自然ではないのですが、ノアルートだと危機回避の名目でバンバン使ってるんですよね(笑)。
瑠璃ルートは最後の白亜捜索での一気の加算が、という見立ては出来るにしても、読み手の主観的な感覚では多分一番個別でウォッチを使用しているのはノアルートだし、なのにそこでは回数に言及されない、というのはやはり不自然な状況には思えて、増してその時は一応必要に応じての使用なのだから、濫用による時間の狭間への閉じ込め、という着地点を望まない白亜が手を拱いているのは総合的にはバランスが悪いな、とは思うわけです。
そもそもその回数制限なぞ、瑠璃ルートの終盤の展開を強引に作りたいから持ってきた、くらいの軽率さを感じる設定ですし、最初から組み込まずに、もうちょっと瑠璃と桜良を地に足の着いたシナリオにしておけば万事解決だったのに、とは思うのですけどね。。。
ともあれ、前提が長くなったので個別は超サラッと進めます。
胡桃は上で書いたように取っ掛かりの状況が恣意的過ぎるのが気に入らないものの、それ以外の胡桃の頑張りや可愛さはとても良かったです。
梓は立場上白亜と一緒にいずれ消える運命に、と思えばの部分はありますが、主人公と関わっていく構図の中での強引さは否めず、また他ルートでそういう想いが微塵も表層化しないあたりも含めてやはり恣意的なのは否めませんね。まあシナリオとしては結構楽しかったですけれど。
瑠璃は上で書いたように、好きを自覚するまでの温度差が他ルートと乖離し過ぎていて良くないのと、回数制限がもたらす最後のハラハラ劇を演出したいがための強引な展開が良くないと思います。
合間のラブコメやイチャラブ自体は悪くなかったですが、彼女と違う形で、本当に愛を持って結ばれたからといって、それで白亜が退場する理由になるのか?というのも恣意的だと思いますし(実際他のルートではその描写はないわけで)、自己犠牲によるお涙頂戴からの大団円というのも安直すぎてなんだかなぁと。
このルートならもう少し、後の研究者としての地に足の着いた歩みを紡ぐ物語で良かったんじゃね?と思いますし、回数制限設定の矛盾や無茶も含めて癌的な要素が強い話だと思いました。
桜良ルートもその回数制限の厄介さに引っ掛かったというか、そもそもとしてのあの覗き行為の継続がどこまでなのか、というところから恣意的ですし、基本的に瑠璃と桜良のライターさんは一緒だと思うのですけど、総じて出来が悪かったと思っています。
覗きがばれてふさぎ込むのを、こっちも覗きをしたから御相子だ、なんてのもどうかなーと思うし、同じ侵入でも花音ルートのそれと比較して切羽詰まった感じが足りないというべきか。
見どころとしてはノアの出番がとても多くて心和む事と(笑)、箍の外れた桜良が大変にエロ可愛いくらいでしょうか。CGの質としても、瑠璃が結構微妙だったのに対し、桜良は大変に好みだったのがポイントではあります。。。
花音ルートはぶっちゃけこれだと主人公研究者になるの?的な疑問は多少ついてくる流れですけれど、ただお互いを思い合う過程、その渦中での桜良の後押しによる主人公のトラウマの氷解、二人の出会いからのテーマでもあるSF的な要素が違った形で生きる話であり、トータルとしての完成度は一番高かった気がします。
勿論今まで文章を書いたこともなかった花音が、ポッと出で雑誌デビュー出来てしまったりとか都合の良さは散見しまくりですけれど、それを軸としての二人の関係性の進展の自然さ、恋愛要素としてのらしさと可愛さ、そしてそれまで他人との付き合いが薄い故の精神性の露呈からのトラブルと、総合的にキャラと設定を無茶には使わず、自然に組み込みつつ優しい話に着地させていると思いました。
花音も年上ボインヒロインの割に可愛らしさ満開でしたし、やっぱり歩サラちゃん大変宜しいですな。
ノアルートは、どうしても単純に私が断然ノア贔屓という前提、色眼鏡はありますが、それでも総合的に見て少なくとも瑠璃と桜良よりは面白かったと思います。
こちらはある程度桜良が仲立ちになって、ノア側と主人公側、両方の葛藤やしこりを上手く解していく八面六臂の大活躍で、これを見ると自分のルートの変態性と暴走ぶりは何だったのか?って思いたくなるのですけれど(笑)、その親友同士の友情譚的な要素の素敵さと、それを受けての真っ向勝負で愛らしさを振りまくノアの破壊力が最高に満足させてくれる話ではありました。
一応シナリオの変転としても、ノアがより主人公を気にかける事でその存在性が外部に流出し、それず波及して危機に至るという内在性は確保していますし、その中で時計を多用せざるを得なかったのは上で書いた観点から少し不自然ではあるものの、最後のみんなの力を糾合して助けに、というシーンのお約束的な盛り上がりも含めて良かったと思います。
あと金髪ロリっ子としての、シーンの構図の組み立てが非常にわかっている!と膝を打ちたくなるほど私好みで、大変にエロ可愛かったのでその点も大満足でした。強いて言えばパジャマHも欲しかったけど。。。
白亜の場合は、彼女自体のシナリオとしてはそんなに悪くないのですけれど、ただ作品の全体像をまとめるシナリオとしての奥行きの薄さと整合性の部分にあまり気を払っていないのがどうかな?というイメージで、わざわざロックかけた割には突き抜けた面白さではなかった、というう評価になります。
まずは外縁的な部分から考えていきますが、結局白亜にとっての最終目的はどこにあったのか、或いはどのレベルで並行世界の可能性を認識していたのか、そのあたりの定義が曖昧なのが気になります。
そもそも未来を司るのはアトロポスの領分でないのでは?という神話原本的なツッコミは流石に揚げ足取りが過ぎるとしても、少なくとも白亜は、自分が一切介入しない未来では、主人公が桜良の為に画期的な新薬を開発するものの、それが世界を戦乱に陥らせる契機になり、その不幸を回避するために運命を変える役割を抱いている、という言及はありました。
ぶっちゃけその前提としての未来像が、アトロポスウォッチなしに主人公が復元細胞の何たるかを詳しく知ったり、瑠璃とその絡みで距離を縮めたり、それ以前にその世界線での瑠璃は転校させられていないのかい?などとツッコミどころ満載で、設定の突き詰めが甘いにも程があるとは思うのですが、そこはまぁそういうものだ、と納得して話を進めていく事にしましょう。
少なくとも白亜の認識としては、その世界線では主人公も幸せにならないし、世界も不幸になる、とわかっているわけで。
アトロポス、という立場としては当然世界の幸せ・平穏に比重を置いて考えるべきであり、だからこそ回数制限のような制約も世界から課せられていると見做す事が出来ますが、一方であくまでも白亜個人としては、主人公の幸せを第一義に考えている節は強く出ています。
その想いの源泉としての、幼馴染としての過去の関係性だけであそこまで献身的になれるのか、という底の浅さも気にはなりますが、ともあれ出会いから白亜が剽軽で、かつ性的なニュアンスの強いからかいを続けるのは、照れ隠しと、或いは自分が本当にそういう関係になってもいい、という覚悟の発露であったとはいえるでしょう。
ただ自分が無策で想いのままに結ばれる事が、主人公と世界ににとっての幸せに繋がるという自信は持てなかったはずで、なればこそ他のヒロインと結ばれる未来もきちんと歓迎していた、基本的には終わってしまった自分でなく、しっかり共に未来を歩めるパートナーを見つけて欲しいと誘導していたとは思います。
その上で気になるのは、白亜はその、それぞれのヒロインと結ばれた先の未来もしっかり見通せていたのか?という点です。
まず言えるのは、白亜個人としてもアトロポスとしても、主人公が幸せになって、かつ世界も平穏に、けれどその発明を享受して進歩していく、という着地点が最善の結果であるわけで、ただしその破格の発明を巡っての奪い合いが大きな戦争にまで発展する、という軽率な設定を付与してしまった事で、その両面が本当に達成されているのか?という部分で読み手の納得を得るのが難儀になっている面があります。
といって、もし主人公が今を出発点として幸せな生き方が出来て、その流れの中での発明に至れば、それがそのまま世界の平穏に帰結するかというと、正直その連関関係はかなり薄く、人の業としての浅ましさが付き纏う以上、そんな発明をしてしまったら色んな意味でシンプルに幸せな生き方は難しくならないか?とは思うのですよね。
白亜の意識としての連続性がどういう条件で成立するのかなどあやふやな部分はあるにせよ、だからあくまでも白亜ルートに入る前に、白亜視点でそれぞれのルートの未来を見通す、みたいな場面はあっていいと思うのです。
それぞれのヒロインと、今の時点では幸せになって、そこにしっかり後の天才研究者としての萌芽もある、けれどそれだけでは後々、発明が大成してからの平穏までは約束されないという世界像を垣間見て、それは誰と結ばれても不可避だったとなれば、白亜としてはやはり考えるところはあるでしょう。
当然ですが、主人公の幸せは、あくまでも世界そのものが平穏でなければ十全には成り立たない構図になっていますし、世界が危険に陥れば当然主人公の幸せも脅かされるわけで、その構図を断ち切る可能性はどこにあるのか、と模索した上で、もしも未来の成り行きを明確に知る自分が傍にいれば、と決心を強める、というイベントがあれば、それは明快に白亜ルートへの展開の契機として説得性が強いものになると思うのですね。
少なくとも現状の追加選択肢の出し方ですと、あくまでも主人公の意識として白亜にアプローチしている形になり、でもそれは本来的には世界の制約を受けて発想出来ない、しにくい部分ではあり、それを特に何かの要素なく超越する、というのは虫のいい話ではあります。
けれどそれを白亜側からある程度アプローチ・誘導し、そういう疑問や関心を持てるように慎重に仕向けるくらいは、クロートーの制裁を受けずにすり抜けられる要素だと思いますし、白亜の意識として、他のヒロインとのその後を知った上でならば自分が、という想いの強さの差異を提供出来るなら、その追加選択肢という構図が、世界像の流れと意思の介在に綺麗にマッチングする、と思えるので、このあたりはもう少し作り込んで欲しかったなぁと思います。
大分大回りしてやっとこ白亜ルートに戻ってきましたが、上で触れた部分を前提として、一先ずシナリオの流れと仕掛け、すなわち主人公と結ばれて、その愛の結晶を身に宿す事で、アトロポスとしての存在から逸脱し、皆の認識の力も借りて現界に再復する事を許される、という構図そのものは決して悪くないと思います。
ただこのシナリオのつくりですと、あくまでも白亜が自分の想いに素直になっただけで、その裏側にその後の世界の事とか、主人公の本当の幸せとかちゃんと考えているのかわからん、って事になりますし、最悪の未来の可能性を言及してしまっている以上、それを全て回避できるだけの秘密兵器的ななにかがそこにないのに安直に踏み込んだの?って感じにはなっちゃうんですよね。
ですのでその点を、上のような土台を作った上で、主人公の今の幸せも、未来永劫の幸せも、自分の全てを尽くして守ってみせるという意思と覚悟を白亜に持たせるように仕向けていれば、白亜というヒロインの包容力や持続する意志の強さ、なにより誰よりも主人公の事を思い続けた結実としての大団円として、白亜ルートがちゃんとルートロックに相応しいだけの格を抱けたと思うので、その辺が蔑ろになっていたのがとても残念です。
結局そういう、SF的な設定の突き詰めが総合的に甘いのが、トータルで見てヒロインのスタンスや想いの密度、説得性にも影を落としていると言えて、ただそれは要所要所に細やかに肉付けするだけでも結構ちゃんと紡げる程度のものなので、非常に勿体ない作品になったな、というのが正直な感想です。
その点で、土台の発想も大事だけど一定以上の肉付けも大切だと思わせるつくりでしたし、最近はエロゲそのものもスマホゲーの隆盛に対抗するように簡素化が一定の潮流として容認されつつある状況ですけれど、それでもこういうワンパッケージの作品でしか表現できない重厚感、一点突破の破壊力というものは、きちんと具象化できれば今の時代でもきちんと評価されると思うのですよね。
増してこの作品は、販促的な試みとして最近時々見かけるようになった、マスターアップしてから予約開始、という軌跡をたどっているわけで、作品の完成をその為に急いだ部分もありそうなので、より個人的には切なくなる状況ではあるのですよ。
それこそあと二ヶ月クオリティアップに専心していればなぁ、と思うし、最悪その時点のマスターデータ残しておいて、クオリティアップの結果上手くいかなかったら元データで出せばいいじゃん、なんて思いますが、まぁ人件費的な側面からもそんな余裕が持てないのはわかっちゃいますので、色々世知辛さを感じてしまう作品にもなりましたね。
ま、私としてはぞっこんラヴだったノアのシナリオがそこそこまともで、イチャラブエロスも素敵だったので結構満足はしているのですけれど(即物的ー)。
キャラ(20/20)
★全体評価
基本的には嫌味なキャラもおらず、善人ワールドの中での成長物語という構図で、しっかりそれぞれのヒロインの魅力も最低限とはいえ引き出せていました。
土台のキャラの性格付けとかキャラデザも秀逸ですし、この作品ならでは!みたいな加点要素はないのですけど、非常に平均点の高いキャラ像を提供してくれていますし、特に割り引くところはないかな、という評価です。
★NO,1!イチオシ!
体験版から君に決めていました!って感じでノア大好き―!超可愛いのです。
見た目の金髪ロリの破壊力もさることながら、真っ直ぐで純真で愛らしく、喋りの特徴もしっかり愛嬌に転化出来ていて、本当に出てくるだけでテンション上がる素敵な子でしたねー。
桜良との親友同士の関係性も随所ですごくいい味を出していましたし、恋愛には疎くてウブさ丸出しでも、自分の気持ちに嘘はつかずに常に真っ向勝負で頑張る健気な様にも心打たれましたし、殿堂入りラインに乗せてもいいかなぁ?と思うくらいにはトータルで大好きなヒロインになりましたね。
シナリオもそつなく可愛さを引き立ててくれて、ついでにHシーンの構図とCGの出来も最高に私好みで、ここまでどこにも瑕疵がない、というのは本当に珍しいので、その点だけでも大満足させてくれましたし、あいきゃんねばーさんきゅーいなふ、って感じですハイ(笑)。
★NO,2〜
なんだかんだで次は白亜かな。ロリ最高だぜー(笑)。
まあもう少し好きの土台とか、自分のルートに至るところでの決意とか、もっともっと光り輝くヒロインに出来た要素は零れ落ちているので
勿体ない事この上ないですが、キャラデザといざ受け身になった時の愛らしさなど実にいい味出してましたし満足です。
桜良も相当に好きですが、こういうタイプはやっぱり脇でサポートに回る方が輝くってのはありますね。
もう少し自分のルートの情動にバランスがとれていれば、と思いますし、見た目もエロ可愛さも最高だっただけに惜しいです。
花音も地味にかなり好きで、素朴で優しい性格ですが自分の拘りはあって、時にそれが経験値不足から変な方に転がったりするのもこのひとらしい愛らしさだなーって、CVの良さとセットで楽しめました。
瑠璃は正直好きの分水嶺のあまりの適当さにうわぁ、ってなったのと、個別ルートの出来の悪さで損してるなぁと思います。この子も見た目・CV共に超好みだったのですけれど、最終的にはあまり目立たない位置になっちゃいましたね。
胡桃も天真爛漫くすはらゆい最高だぜー、とは思いつつ、せめてもう少しシナリオの取っ掛かりに配慮があればね。。。
CG(19/20)
★全体評価
単独原画ながら質量ともにしっかりしていて、今回は多少瑠璃に粗さを感じた面はありましたが、逆にノアと櫻井桜良の出来が抜群に感じたので総合的にはかなりの満足度です。
立ち絵の可愛さや細部に至るまでの配慮も含めて高いレベルにあると思いますし、個人的な趣味を相当に満たしてくれたお礼も含めてこの点数まで引き上げました。
★立ち絵
ポーズはヒロインで2種類サブ1種類、腕差分もありつつと平均的な素材量で、それぞれ冒険的なところはないにせよキャラの気質に合ったポーズになっていて良かったと思います。
お気に入りはノア正面とやや左、桜良正面、白亜正面、やや横、花音正面、瑠璃やや横向きあたりですね。
服飾はヒロインで4〜5種類、サブで2〜3種類とこちらも学園ものとして平均的で、欲しい要素はしっかり取り込んでいますね。ただ折角パジャマが基本完備なのに、それを利用してのHシーンが少なめだったのは勿体なかったと思うのだ。。。
お気に入りはノア制服、私服、パジャマ、白亜占い服、私服、制服、桜良制服、水着、パジャマ、花音私服、水着、瑠璃制服、私服、パジャマ、胡桃制服、水着、梓ナース服あたりですね。
表情差分もボリューミーではないけれど、個々にそこそこバラエティがありつつ遊びの要素も多く、総合的に凄く愛らしくて良かったです。
お気に入りはノア笑顔、照れ笑い、拗ね、ジト目、ギャグ慌て、桜良笑顔、苦笑、焦り、白亜にっこり、慌て、照れ目逸らし、拗ね、花音微笑、哀しみ、照れ焦り、瑠璃笑顔、驚き、怒り、胡桃きょとん、笑顔、不満げあたりですかね。
★1枚絵
1枚絵は全部で90枚、SDはないですが質量ともに水準はキープしていますね。
やや角度によってムラがあったり、ヒロインによってばらつきがあるなどご愛嬌ですが、総合的には完成度高く、ロリ寄りの絵柄でありつつしっかりとエロ可愛いというバランスが本当に好きですねー。
特にお気に入りは、桜良騎乗位、立ちバック、屈曲位、ノア親友との電話、対面座位、パイズリ、騎乗位、白亜と子供、立ちバック、胡桃正常位あたりかな。
BGM(17/20)
★全体評価
特に目立った部分はないけれど、安定して完成度の高い出来ですし、ボーカル含めてのトータライズがきちんとしているのでイメージとしての取っ掛かりがわかりやすいですね。
曲想としてもそれを踏まえたものが多く、もう一歩踏み込んだものがあればベターでしたが一先ず総合的には無難と言えるでしょう。
★ボーカル曲
全部で2曲。
OPの『Time is』は今の変転するスピード感を示しつつ、その先に待つ健やかで賑やかな未来を示唆していてバランス良く、爽快で耳障りいい曲ですね。
まあ曲としての完成度とインパクトはそこまででもないですが、流麗でサビへの繋ぎなど結構気に入っています。
EDの『Time for』は、OPと対になるタイトルネーミングで、OPよりもしっかり地に足の着いた未来像を提示しつつ、そこに含まれた幸せをかみしめるような曲調が素敵ですね。曲としてはこちらの方が若干好きです。
★BGM
全部で25曲とギリギリ水準ライン、出来も特段目立つものはなかったですが安定して少しだけ不可思議な空気感を付与しつつ穏やかな構成で、しっかり作品イメージの固着化に貢献していたと思います。
特にお気に入りは『雨の中で』『ぬくもり』『白亜のテーマ』あたりですね。
システム(8/10)
★演出
全体的には今一歩、というイメージでした。
地味に立ち絵同期がほとんど機能してなくて、ひとつの台詞でひとつの表情という中での躍動感の薄さは結構目立ちましたし、それ以外の情景演出やSEの使い方などもちょっと違和感のある部分があり、過去作と比較してもパワーダウンしてない?とは思いました。
ムービーの出来はかなり良く、キャラの個性とシナリオとの連関性を上手く明示しつつテンポよく組み立てられていて好きです。
★システム
プレイする上での要素は最低限完備されていますし、ショートカット機能も充実しているのでプレイ感としてかなり利便性があってそこは良かったと思います。
音楽回想にリピート系の仕組みそろそろ入れて欲しいな、ってのと、あと今回からDMM紐づけになったから起動がめんどくさいのはネック。動作的にえらく重い、って事はなかったですけれど。
しかもそのDMMゲームで起動すると、実際のゲーム画面が起動するまでに、プレイヤーのゲーム紹介でまだ見てないヒロインのHシーンCGを強制的にネタバレしてくるというね。。。あれはマジ止めれ。
総合(81/100)
総プレイ時間16時間。共通がかなり短くて1,5時間くらい、個別も一人2,5時間から長くて3時間あるかで、サブ二人は30分ずつくらいの感覚ですね。
全体としてヒロイン数が多いのはいいのですけれど、トータルの尺がそれこそヒロイン4人ポッキリくらいの作品のものなので、一人頭の密度がちょっと足りないな、ってのと、更に共通での蓄積や奥行きがほぼないせいで、それがラストまで薄っぺらさを払拭できない誘因になっている感覚で、このヒロイン数で作るならやっぱりもう2〜3時間の肉付けは欲しかったですかね。
作品としても、色々最低限の破綻ないラインでギリギリ組み立てているので、テンポがいいと言えば聞こえがいいですが中身スカスカ、と思える部分も多く、特にSF設定は色々ガバガバなのでその点実に勿体ないです。
土台の発想自体は結構いいので、もうちょっと本腰入れて作れば名作、とまではいかないにしても良作・力作くらいにはなれたはずですが、ちょっと折角の面白要素を持て余した部分や、粗雑に扱い過ぎたきらいが強いですね。
でもまぁ基本的にヒロインは可愛いし、プレイして損はしないかな、と思います。ただ体験版で瑠璃が一番好みだー、ってなると微妙かも。ノア派の私は大勝利でしたが(笑)。
2018年11月06日
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