2019年02月14日

さくら、もゆ。-as the Night's,Reincarnation-

 Favorite信者の私としては、度重なる延期にやきもきはさせられつつも、それでも常にマストバイ・プレイ最優先のタイトルとして待ち焦がれていましたし、本当に一日千秋でしたね。


シナリオ(28/30)

 想像力の天秤を釣り合わせるために。


★あらすじ

 主人公の暮らす街、桜咲き誇る参禅町には、幾多の不思議な噂が転がっていました。

 曰く、我々が暮らす現実世界の裏に、全ての夢が等しく叶う夢の国がある。
 曰く、眠る前にそっと枕の下に願いを忍ばせておけば、小さな神様がそれを叶えてくれる。
 曰く、過去も未来も超越して、想いを繋ぐ夢の列車が夜の中を走り続けている。

 ……などなど、そういった話は枚挙のいとまが無いほどに巷間で囁かれていたのです。
 大人になるとどうしても眉唾として信じられなくなる荒唐無稽なそれらは、しかしこの町においては紛れもない真実であり、そしてそこは、想像力豊かな子供しか立ち入ることを許されない世界でもありました。

 かつて。
 その夢の国、通称夜の世界において、世界の命運を揺るがす大きな戦いがありました。
 想像力の豊かな少年少女たちは、この町の夜を司る魔法使いに導かれ、世界を滅亡に至らせると噂された存在である夜の王を打ち倒し、ひっそりと世界を救っていたのです。
 しかし、その見返りとして彼らに与えられた、現実に持ち帰る事の出来るただ一つの魔法は、それぞれの理由によって未だきちんと機能せず、そして当時の魔法少女たちはそれぞれに大人になって、夜に出入りする権利を失っていきます。

 主人公もまたその世界を救った一員でしたが、彼は他の子たちに比べて想像力という武器が乏しく、当時の戦いに役立てなかった事を未だに悔いていました。
 それゆえもあってか、彼はまだ夜の世界への出入りが可能であり、そしてそれが可能である内に、夜の魔法使いであるあさひから、魔法少女を行使する力を受け継ぐことになります。
 それは、あさひが人ならぬ存在ゆえに、どうしても踏み入る事が出来ず、当時の魔法少女たちが願ったものの、結実させてあげられなかった想いを改めて主人公に叶えてもらう為でした。

 しかしその為には、今まで以上に彼女達との関係性を強め、安心して心を開いてもらえるだけの信頼を紡がねばならず、それは未だ心乏しい主人公にとっては難題で。
 当時からずっと、幼馴染として傍で過ごしてきた千和に姫織。そして、折よくこの町に戻ってきたハル。
 幼い頃からずっと自分を支えてくれた、やはり人ならぬ存在であるクロに見守られながら、主人公は彼女達の心の奥底に秘められたかなしみと願いに触れる為に、辛く苦しい現実をハッピーエンドに置き換える為に奮闘することになるのです。

 心優しきものが、われにもあらず受難者となる、不公平性を抱えた現実世界の中に、果たして全てを解決してくれるヒーローはいるのか?
 いたとして、そのヒーローとはいかなる存在であるべきなのか?
 ヒーローとは、常に特別な力と特別な意思を有した存在であらねばならないのか?

 想像力を武器に戦う舞台の中で、彼らはやがてその答えを見出していく事になります。
 これは決して世界を救う物語にあらず、ただひたすらに、貴方の人生に寄り添う想いを紡ぐための物語――――。


★テキスト

 相変わらずに重厚で繊細で、そしてひたすらに大切な想いをくどいほどに強調してくる文体が特徴的ですね。
 昨今のADVゲームの風潮である、なるべくテンポよく簡素に、そしてメリハリを利かせた読み口とは真逆を行くような本格派の壮重さを備えており、無論要所にユーモアや、独得の掛け合いの面白さを引き出してバランスは取っているものの、本質的にはすごく内省的な色合いが強い語りになっています。
 とにかく想いの表現が大袈裟すぎるほどに密度が高く、また緻密に、精確に紐解かれて開示されていて、丹念に追いかけていくとその理路は本当に鮮明に見えてくる所に大きな価値があるのですが、当然それを追いかけていくにはそれなりの読み手の力量というか忍耐というか、しっかり読み込み、ひとつひとつの文章を丁寧に解釈する必要もあって、その点では敷居の高い、時代性に反したもの、とは言えそうです。

 また最序盤から多角的な伏線を物語に練り込んでいる分、初見ではそのセリフや内心の独白が何を指し示しているのかよくわからない、という弱点もあり、これは裏を返すと、全てクリアした後に二周目をプレイすればその意味が全て綺麗に理解できてとても心に染み入る、という利点にもなるのですけど、時間のない現代人にとっては中々に鬼門なつくり、とも言えなくはないですね(笑)。
 ともあれ、そういう部分も含めて、文章力としては極めて優れている、とまではいわないものの、本当に一文一節に至るまで神経を注がれている、というのがよくわかりますし、私にとってはやはり肌に合う、時間を惜しまず読み解いていくに値するテキストでした。


★ルート構成

 ゲーム性、という意味ではかなり乏しい作品になっていて、プレイ順もほぼ固定と思っていていいでしょう。
 一応最初で最後の選択肢でどこを選ぶかでルート確定するっぽいのですけれど、少なくとも最初は姫織か千和しか攻略出来ない模様です。
 二人をクリアするとハルルートに入れるようになって、その後改めて最初から、を選択するとクロルート(グランドルート)がスタートするつくりであり、それぞれにそこまでのルートを前提とした物語になっていますので、そのあたりは素直に流れのままプレイするしかありません。

 勿論そういう、前のルートの影響が波及する構成を説得的に補助するだけの世界観の仕掛けは、力技とはいえ完璧に機能していますし、元々ういうゲーム性の部分よりは物語性に特化したメーカーですから、そこを云々してケチをつける気もないです。
 強いて言えば、人間関係性的な部分で、姫織⇒千和のほうが理解が及びやすい部分があるかなってくらいですね。


★シナリオ(大枠)

 この作品は、想像力に端を発した不思議な要素も多彩に取り入れていますが、その淵源はしっかり現実の世界に依拠していて、非常にメッセージ性の強い物語になっています。
 それぞれの苦難を乗り越え、ハッピーエンドに導いていくという物語のお約束は踏襲しつつも、その苦難の質や想像性が非常に濃密かつ重層的で、ルートを重ねるごとにそれがより極まっていくあたり、いかにもこの人らしい作品だなぁとは強く感じるところです。

 特に序盤はとりとめのなさが目立ちますが、そういう多彩な設定やエピソードにひとつとして無駄なものはなく、最終的には全ての登場人物やそれぞれが背負う業、様々な要素が糾合して、世界そのものが背負った苦難に対してしっかりと回答を出す形になっています。
 その上で、本義的には結ばれる関係性に至れない存在であっても、しっかり代償を乗り越えていく事で返報性を保証している点と、そこに至る心理への導きの構成が非常に鋭利に、かつ鮮明に綴られており、非常に完成度が高く、心に響く名作に仕上がっていたと思います。

 基本的に何を書いてもネタバレの要素が強くなってしまうのであまりこちらで語れる事はないのですが、ヒロインとの恋愛云々というよりは、ヒロイン達が抱えている、根源的には密接な連関性のある問題を順番に解きほぐしていく中で、全ての理路を明快にしていくという機能性の面が強く出ていて、そのあたりはあまり期待しない方がいいです。
 まぁこれは、このライターさんの色とりどりのセカイも似たような構図ではあって、多分これもまたFD的な続編出してくるんだろうなぁ、と思うので、イチャラブ的な要素はもう少し待て、という感覚にはなりますかね。
 もっともそうなった時に、またあのラストの幸せそうな風景から、過去の何かが追いかけてきてあの子は苦悩の日々を送る羽目になるのか、と思うとそれはそれで切実なのですが(笑)、勿論最低限そういう部分は担保しつつ、それ以上にその素材を万全に生かして伝えたい言葉が、想いがある、という趣の作品なので、その点人を選ぶ面があるのも普段通り、と言えばそうなりますね。


★シナリオ(ネタバレ)

 基本的なシナリオ評価としては、プレイ順とイコールで、クロ>>ハル>千和>>姫織くらいになります。
 姫織シナリオでも水準のレベルは楽に凌駕している内容ですし、全体的な魅力としてはやっぱり、上でも書いたように苦難の腑分けやそこからの飛躍が斬新かつ丁寧で、ひとつそれを乗り越えればまた一つ壁が、という積み重ねの説得性と、それにハッピーエンドをもたらす想いの在り方の、物語らしい優しさに理路・感情の両面で納得できる、という点に尽きるでしょう。
 なのであまり細かく個別の掘り下げはしません。ある程度気になったところを拾いつつ、全体を通貫するテーマ的な部分にどう連関しているか、というあたりを上手く組み立てていければ、と思っています。

 まず姫織シナリオですが、これと千和のシナリオは、夜の住人の定義された在り方、人にやさしくせずにはいられない、その源泉的な部分と、それ故のかなしみの面を並行的に見せてくる事で、次以降の物語に説得性を寄与する役割も担っています。
 それを前提とした上で、なぜ千和シナリオと評価が乖離しているかと言えば、姫織シナリオが一貫した姫織にとってのシナリオ、としてはやや密度が低い部分にありますね。

 というか、初回プレイがこのルートだったのですけど、姫織ルート序盤から中盤にかけてはほとんど十夜がヒロインみたいな立ち位置なんですよ(笑)。おかげでまだ個別に入っていないんじゃないかと勘違いしてしまう程、特に姫織が強く関わってくるわけではない、十夜の夜に住む猫としての悲哀と、それでもそうせざるにはいられない優しさの在り処をじっくり見せてきます。
 その内容自体は非常に優れたものであり、そこで示唆された、人が大人になるとはどういうことか、大人になればどうしたって夜の存在を忘れざるを得ない事、それでも夜の世界と近しい死の匂いを漂わせた時に初めてそれを思い出す事も可能である、というあたりは、クロルートでの重要なファクターになっています。
 またそこで出てくる十夜と関係性の深かった女性の息子が遠矢となり、千和とハルのルートでそれぞれに重要な役割を果たすという意味でも、本質的には共通でやっておいてもいいような内容なのは確かですし、ひとつのエピソードとしてとても感動する内容にも仕上がっています。

 ただこの物語自体はどうしたって姫織には直截的には関係がないもので、その物語を最後ハッピーエンドで終わらせるための魔法使いとして主人公が姫織に頼った、それが姫織自身の物語を動かす契機になった、という以外での直接的な影響はないんですよね。
 けれど個別としてそちらに尺を割いてしまった分、姫織自身の心境や問題に対する掘り下げが他のルートに比較すると軽めになってしまっている事、恋愛観としても彼女なりにそうでしかあれない、という免罪符はあっても、それでもハルや千和の強烈なそれに比べてしまうと、お互いにそれが必要だから、みたいななし崩しの端緒にはなってしまっています。
 そのせいで、作品全体の完成度を高める為に、このシナリオのそれをやや犠牲にしているような雰囲気はあって、ナナちゃんの存在の掘り下げに関してももう少し踏み込んでおいた方が後々もっとプラスになったのでは、という面も含めて、これ単体としては少し評価を下げているところです。
 まあこの辺は考え方の問題で、十夜関連のイベントまで含めて評価するなら千和よりちょっと下、くらいのイメージにはなりますけどね。

 その点千和シナリオは、一貫して彼女の主人公に対する恋愛観が確固としてそこにあって、それに対し自己否定感の強い主人公がそれを受け止めるのに時間がかかる、という部分がメインで最初から進行していくので、ヒロインの物語、としての重厚感は強いです。
 あくまでも端緒をそこに置きつつ、その一度裏切った信頼を再び獲得していく中で彼女が抱える秘密を知る、とい流れも正統的ですし、その中で開示された、実は千和は過去世界の住人だったという真実も含めて、世界観の広さと奥深さを感じさせる内容でした。

 勿論その中で見せる夜の怪物の在り方や想いを、幾重にも多層的に、同じシーンを別の視点で見せることで感銘と説得度を高めているのは素晴らしい仕事です。
 誰もが自分の立場と役割に縛られ、一方その自負が自身の生きる価値を担保している中で、元々あったそれから逸脱してより大切なものの為に命の全てを賭ける、という在り方の美しさは際立っていたのと同時に、そんな風に葛藤してまで元々彼らが守ろうとしていたものの意味がどうだったか、というのを最終的な部分から逆算して考えていくとすごく切ない気分にさせられます。

 そう考えると、このルートで桜の延命に千和の魔法が投入された事は、千和の生き方を再定義する上では大切だったとしても、とはなりますし、このあたりのいびつさもまた、後々考える返報性の理想と現実、という観点でのひとつのリアルに繋がってくるのかな、と思いますね。
 あと、結果的にこのルートの代償の在り方も、それを経験したことで最終的にクロルートでのそれを可能にする筋道を立てている、という意味で複層的な説得力の源泉になっていますし、千和のヒロインとしての魅力の高さもセットですごく満足できるルートでした。

 ハルに関しては、それまでの前提をしっかり有効に用いた上で、より飛躍した解釈や展開が可能になった事で、非常にシナリオ構成が緻密かつ情念的で、苦難のリフレイン度合いも一気に膨れ上がっていましたね。
 ただそうしなくてはならない、というハルという少女の想いの在り方の紡ぎ方はすごく強烈でしたし、このあたりも総括的に考える流れにはなりますけれど、他のヒロイン同様、愛着の欠損によって傷つけられた心が、けれど自身も利己的になるのを律し、優しさを失わなかった場合は、自罰的な方向に転がっていくしかない時の痛々しさを鮮明に浮き彫りにしています。

 ここで少しテーマ的な部分で少しまとめておくと、現実と物語の決定的な違いは、優しさに対する返報性の在り方にある、というのが、この作品では殊更に強調されていると思っています。
 共通の最序盤にして、物語で最大のターニングポイントにもなる最初のクロとの邂逅シーンで出てくる印象的な箴言として、心優しきものは、われにもあらず受難者となる、という引用がありますが、結局これは、どんなに時代を遡っても、或いは未来に至っても、人間性の本質は変わらない一面を決定的に示しているとも言えます。

 要するに、物語でしたら自分が誰かに優しくした分、それは等しく物語のどこかで自分に返ってきて、そういう在り方が正しいのだ、と綺麗にまとめて読後感を爽やかに、説得的に紡いでくれるのが大半ですけれど、現実に置ける優しさの返報性は決してそうではない、という事です。
 誰かに優しさを向けてもそれが違う形で報われたり、当事者同士で同じだけの優しさを分け合えたり、なんてのはファンタジーで、全く報われない事も多いし、そもそも優しさの総和自体が減損していくのが今の時代だ、という透徹した意識が底辺に透けて見えます。

 そもそも絶対的な優しさの源泉というのは、幼い頃に親に大事にされ、その存在が安全基地として働いている愛着システムがきちんと存続している事が前提であり、そうであってはじめて、せめても減衰する事のない社会全体の優しさは担保されると思えます。
 ただ現代社会においては、様々な複合的な要因によってその愛着システム自体が綻びの一途を辿っている状況ですし、そして愛着が不安定だった子供は、やがて親になっても利己的に振る舞い、その子供がより愛着を持たない存在として再生産されていく流れが出てきてしまっているわけですね。

 この作品内に置いては、その端緒の理由の部分を、特殊な一族のエゴと、それによって積み上げられた呪い、という形でわかりやすく糾合していますが、その結果がもたらすものは大人の優しい心の崩壊、というのは、スパンの差はあるにしても現実と相関する視点です。
 他者を思いやる気持ちを持たない大人が増えれば、それだけ諍いの種も大きく膨れ上がっていく、それが積もり積もって社会は、歴史は崩壊していくという未来予想図は非常に怜悧かつ真理を突いていると感じます。

 その最終的な着地点を防ぐためにどうするか、というのはクロシナリオの課題なので一旦置いておきますが、ともあれこの作品のクロ以外のヒロイン、魔法少女たちが時代を隔てた存在なのには、そういう部分をより説得的に映し出す機能も求められていると思えます。
 物語としては、いくら裾野の広い一族と言っても、現代においてこれだけ何人も蔑ろにされている子供がいる、という設定もやや嘘くさくなるのはありますし、一方で長い歴史の中でどうしても克服できない業として、そういう振る舞いが許されてきた事、常に一定の被害者がそこにいたという面を強調する意味で、それぞれの時代がずれているというのは納得できる構成です。

 それに、各時代で最大級のかなしみを背負い、それでも優しさを見失わずにいられた存在というのはやはり希有ではあって、その強さと、それがもたらす想像力の大きさが特殊な力となって、いわば一般的なイメージとしてのヒーロー的な立ち位置を演じるのにも有益だったのは間違いありません。
 ただ、この作品においてそういう、自己犠牲を前提として他者を救う存在の特殊性そのものをヒーロー、と定義しているわけではない所はまた面白い一面で、どのヒロインも個別においては自己犠牲意識や、自罰的な観念からの脱却が大きなテーマになっていきます。
 それは、結局自分を苦しめる最大の敵は自分の心の中にいて、それを救えるのは自分自身が奮える勇気でしかない、という帰結と綺麗にリンクしたものになっていて、その一歩を踏み出せたものは押しなべてヒーローとして語り継がれる資格がある、という視点の置き方がまた独特ではあるのですよね。

 じゃあその勇気の源泉をどこに求めればいいのか?というのも一つの大きな問題提起になっていきます。
 一番シンプルなのは、ここまで見てきたように返報性を確信できる安全基地的な関係性を紡ぐことに尽きるのですが、ただそれは現実世界の中では決して平等にもたらされるものではない、というのも見てきたとおりです。

 この作品でも、遠矢という人物を通しての関係性の形がそれを示唆していて、それこそ十夜に関してはその存在がきちんと返報性として機能している、ひとつの物語として完結しているのですけれど、千和とハルにとってはそうではありません。
 千和にとって遠矢は、本来の魔法を行使する必要がなくなるほどに、求めていた愛着を、安全基地を、疑似的にとはいえ与えてくれた、本来の関係性からすれば不相応に大きな優しさを貰えている存在になります。
 けれど一方で、遠矢がこの千和との疑似家族関係と盟約にのめり込んだことで、本来の家族が置き去りになり、そこで愛着の欠損を帯びたハルの母親が、呪いの影響もあったとはいえより自分の娘に対して酷な仕打ちを繰り返して、その再生産を果たさんとしているのは見ての通りで、こちらとの関係においては大きなマイナスが生じています。

 それがトータルすればプラマイゼロになるかはまた別としても、少なくともここでは返報性の原理は非常に恣意的に働いています。
 そもそもそういう親子の安全基地機能が順当に働いていれば、必要以上の自己犠牲感や自己否定感を抱いて生きていく事もほぼなくなるわけで、特に最初からそれが与えられなかったものに関しては、それを求めろ、信じろと言うのが難しいのも間違いのない冷然とした事実なのですよね。

 だから、この作品はそれに対して、物語の中ででも、自分と同じような苦難を乗り越えてきた人の勇気をなぞれ、というのと、あと目には見えなくても、自分がこの世界に存在している事は誰かの祝福があって、命は消え去ってもその人はずっと見守ってくれている、という想いを信じていこう、という一応の答えを用意しています。
 勿論これは、本来の安全基地に対しては弱いファクターであり、瞬間的な劇薬的な効果しかないかもしれないものですが、それでも自分を責める気持ちに負け続けて生きていくよりは、その刹那に感じた勇気の力で一歩踏み出すことで何かが変わるかもしれない、その未来を信じる勇気と覚悟を持っていく、というのが、愛着の減衰していく時代においての処方箋になり得る、という信念の提起であるとは感じましたね。
 少し話は先走りますが、ましろが考えた夜の国の理想的な在り方、それぞれの個々人の小さな勇気の物語を残らず抱き留めて、それを必要とする人の傍にさっと届けるという観念は、きっと完成した暁には、色とりどりのセカイにおける図書館的な形に帰結するはずで、その意味ではライターさん自身の死生観というか、長年のテーマをより掘り下げていったのがこの作品、という見立ても出来るなと思いました。

 ともあれ、一度ハルルートの話に戻りますと、この話ではそれぞれの後悔の原点がとことんまで突き詰められて、世界観が紡げる自由度の高さ、特により強い代償を経ての時間超越が可能になった事で、今までにないアプローチでの関係性の形成が可能になっている点が特徴的です。
 ここまでの世界観は、まだ過去から未来への大きな流れはあるとしても、それが一本線である事が前提になっていましたけれど、ここではじめて世界線の重複という観念が出てきて、そういう部分は安易に使うと恣意的でご都合主義に思えてしまいます。

 ただこの作品においては、そもそもの前提として想像力の限界まであらゆることが可能になる、というのが夜の国の定義になっていますし、またそれが大それたものになればなるほど代償も重くなる、という等価交換の原理もしっかり機能しています。
 大切なのは、その等価の価値を他者が決めるのではなく、あくまでも自分自身の心が決める、という点で、結局なんだかんだで、特にまともな優しさを持つ人間ならば、他者に嘘はつけても自分自身の心に嘘はつけないものです。
 だから、大それた願いを求めるのに些細な代償で、という誤魔化しは通用しませんし、なによりそれを考える時に、自分自身がもっとも恐れているもの、自己の内面をしっかり見つめていかないと引き出せない、というのが、結果的に見ても大きな意味を秘めています。

 その契機になったルート、という意味で、ハルルートの意義は大きいと同時に、また全てと連関する兎亜姉弟の物語ともリンクさせつつそれを提示してきたのは、一面的には姫織ルートに似た構造になります。
 けれど、こちらは流石ルートロックされているだけはあり、尺的にもそれを内包してなおハルの精緻な心理模様を掘り下げ切るだけの余地を残しているのが凄味というか、労力を厭うていないなぁ、と感心しきりな部分です。
 この、物語において説得性を有するだけ、必要なだけボリューム感を持たせる、という作風は、今の時代では中々出来ない事ですし、いつも思うけどこのメーカーこれで採算取れてるのかなぁって感じちゃいますよね(笑)。

 余談はさておき、世界線の複層化とその全ての併存、そこに残る悲しみなどの問題も抱えつつ、その自己の掘り下げを、主人公とハルが共に実行することによって辿り着いた幸せな未来像は、一応この作品においては本線の物語、という扱いになり、ここでの主人公がその後の主人公に繋がっている、という解釈でいいはずです。
 ここまでの物語において、生ある限り主人公が本来の目的を忘却し、人生の苦難をなんだかんだで乗り越えて、愛する人と歩調を合わせて生きていけたのは、実のところクロという存在の大きな支えがある、というのは見ての通りで、本当にクロの献身性と自己犠牲感の強さ、そして主人公を愛する心の純粋さは、むしろ二周目をプレイしているとより強く響いてきてものすごく染み入るものがあります。

 けれど、ハルとの物語を全うした主人公は、夜の世界に戻ったところで本来の目的を思い出し、行き過ぎた自己犠牲の精神を思い出してしまって、それはましろが願った夢の続きを実現させるため、という免罪符と共に、クロの想いを置いて実行されてしまう流れに至っていきます。
 それは結局のところ、本質的にはこの主人公が自己否定感をそこまでの経験の中だけでは克服し切れなかった事と、またクロ自身もその気持ちを強く持っていて、本当は誰よりも互いが互いの傍にいたいと思っていても、それを認め、その為に向き合うだけの勇気がまだこの時点では足りていなかった、互いが互いの安全基地にギリギリのラインでなり得ていなかった、と言えるでしょう。

 そこからはじまる話も、実際のところクロ自身は脇役の部分が大半ではあって、特に本物の大雅とましろの話が長いので、ヒロインルート、というよりはやっぱりグランドルート感が強く出ています。
 その大雅の命のルーツや、ましろの在り方と夜の本質、そこからの脱却とそこに芽生える仄かな恋物語は確かに質の高い面白くも切ないものであり、その成就が間近に迫った中で閉されてしまった一部始終を見ていた主人公が、更にましろの手引きによって母親の壊れた心に直面してしまった事も含め、より自罰的・内省的な方向に自分を進めてしまうのは致し方ない事ではありました。
 その二人の想いを叶えるために、ましろが紡いだ現実と夜の世界、それぞれを救う方法を引き継ぐという意思と覚悟は確かにヒーローらしいものでしたが、そこに自己を取り落としていたことで、一番大切なものを振り捨てたまま存在の消滅の危機に至ってしまうというのも、いかにもこの作品らしいむごたらしくもかなしい流れになっていますね。

 そんな風にして夜の王の立場を受け継いだ主人公を救うために、その恩恵で一度は幸せな生を全うした本物の大雅がその道筋をなぞる、というのも錯綜的ではありますが、それでもそれだけの紆余曲折がないと、その連関をどこかで止めなくてはどうにもならない、という明白な結論に至れないあたりが、愛着の欠損した存在を回帰させる難しさと通じています。
 クロルートの冒頭のシーンに至るまでの回想だけで、普通の作品の個別ルート2本分くらい尺があるわけですが(笑)、あのシーンにしても、おそらく大雅が一度疑似的な自死の覚悟を抱けず、結果夜にまつわる諸々を忘却し、殺伐とした日常に倦んで、改めて死を意識するほどに追い詰められて初めて辿り着けたのでしょう。
 それは十夜の物語で定義された面を精神的なところから補完した観念ではあり、そこに至るまで待つしかなかったクロの焦燥と絶望を考えると本当に胸が痛くなりますね。

 でも、その在り方をなぞって失敗する経緯があればこそ、大雅が主人公を説得する中での実地に基づいた想いを発する事が出来たのも事実ですから、本当にどれだけ山を越えていかないとダメだったのか、という話になります。
 その上で、主人公が少しでも、刹那でも自己肯定感に包まれた時間はなかったのか、という探りの中で見つけたのがあの冒頭のシーンだったという構成は本当に見事としか言いようがなく、改めてそこを最初からプレイしても、ひとつひとつの台詞と想いが、嘘はなくともきっちり行間に、隠された想いが滲む形になっていて凄味があります。
 しかもそれをクロは、決してそこまで大それた影響を与えるとは思わずに最初は口にしているのが、いかにも不器用で、決して人たれない(と諦めてしまっている)かなしい存在で、けれど想いの一途さだけは誰にも負けないクロらしさ、なんですよね。

 結局のところ、二人の愛着が本当の意味で定着しなかった最大の要因としては、互いの想いそのものではなく、種族の違いと夜の国のルールがもたらす、遠くない未来に訪れる必然の別れにあった事は間違いありません。
 そのかなしみを今以上に大きなものにしたくないから、互いに好きで好きでたまらなくとも、その最後の一歩を詰める勇気が持てなかったというのが、おそらくぞれぞれに無自覚ではあっても心の底にあった想いなのでしょう。

 けれど、ハルルートからの流れで時間の超越、更には転生という在り方すら夜の国は許容できることを理解していれば、それを踏まえての向き合い方もあるわけで。
 存在そのものを作り替えるほどの代償は、それこそ人生ひとつを使い切るほどの必然が求められましたけれど、でもそれで心が納得するならば、夜の国はそれを叶えてくれるわけですね。

 また総合的に見ても、夜の王となった主人公があちこちで打倒され、その結果として御伽噺としての平和とささやかな幸せが全ての世界線でも最低限保証される形にはなっていて、それは上で触れた返報性の面でも同様ではあります。
 勿論全てが平等に、とはいかなくとも、全てにおいて不幸な在り方だけは排除された、という視座では公平ですし、幸せの観点など人それぞれ、という現実ともリンクさせるなら、物語における帰結としてきちんと帳尻を合わせた、と言えるでしょう。

 ともあれ、自分の為すべきことを最低限やり遂げた事と、大雅の説得が、主人公の想いをようやく自分の幸せに向けることになり、それはクロにも波及していっての、想いが通じるシーンの美しさは格別のものがありました。
 あず咲の病の罹患の引き取りも含めて、総合的に見ると明らかに主人公よりクロのほうが苦労してるよなぁ、とも思えますし、そこから本当の幸せに辿り着くまでまた長い長い時間と苦労が必要だったとはいえ、それでも弛む事なく、出来る限りの献身を続けた事も含めて、実に希有な淳良さを持ったヒロインだった、と思えます。
 ましてそのはじまりが悪意そのものから生まれた存在、というのも色々と示唆的で、復讐の連鎖の中にも救いの糸は生まれる、という証左なのかもしれません。

 この作品を通して思うのは、不幸の連鎖、復讐の連鎖、愛着崩壊の連鎖に加えて、自己犠牲の連鎖も、一度歯車が動き出すと留めにくいものだ、というところです。
 それが元々は善意や思い遣りから発したものでも、連鎖していく中で思わぬ負の側面を呼び寄せてしまう事もありますし、どういう形からであれ、それが機能しないのであれば変革する勇気がどの時代でも、どんな状況でもいちばん大切なのだ、というのが伝わってきます。
 幸福とて基本的には連鎖していくものでも、そこに安住していれば思わぬ悪意に足元をすくわれる事は多々ある、なんてのは、特に千和ルートで強調されていました。

 幸せを守り、最後の最後に笑って素晴らしい人生だったと思えるための努力を、その為の些細な勇気を奮う事も必要で、その意思を培養する上において、この物語そのものが読み手のきっかけになれば、という強いメッセージ性が滲むのは、抹香臭いと言えばそうかもですが、それだけ未来に対する危機意識が、想像力が優れている故の警鐘、とも思えますね。
 実際にそういう面は目立つものの、決してそれが本線ではなく、あくまでも物語としての完成度を極限まで高める中で、そういう面が必然的に出てきてしまう、というレベルまで至っているのが凄味ですし、細かい部分で不安やもどかしさ、意見の相違がなくはないですが、それでもこのくらいの点数をつけるには充分の威力があった素晴らしい作品でした。



キャラ(20/20)


★全体評価

 流石にキャラ性は一貫して素晴らしく、深みと生々しさが同居した仕上がりになっていましたね。
 まあ上でも触れたように恋愛ものとしての掘り下げはやや足りないですけれど、それを補って余りある各人の生き様の中での苦悩や葛藤、諦念や痛切をこれでもかと見せつけて、そこから幸せへの転換に置ける心情の華やぎをしっかり読み手に届かせる工夫が十分に出来ているのが流石の一言でした。
 世界そのものには悪意も相応に蔓延っていましたけれど、総じてそれは顔のない存在で一貫されており、登場人物たちを支える存在は全て優しさと、それ故の悲しみを背負った存在で終始していたのもやはり素敵なところで、満足度の高いキャラの作り込みでした。


★NO,1!イチオシ!

 そりゃあこれだけの想いを見せられればクロを愛さずにはいられないでしょうね、と。
 勿論元々見た目的にも性格的にも超可愛くて大好きでしたし、立ち位置的にきっと色んな苦労を背負ってるんだろうなぁとは思ったけれど、その想像をはるか超えてくるのが本当にすごい作り込みで、それだけの苦難を前にしても決して揺らがずあきらめず、ただひたすらに大切な人の為に懸命に頑張り続ける姿は、それでも時折自分の想いが制御できずに悶える姿が本当に可愛過ぎました。

 まあラインとしては当然殿堂には入ってきますが、あくまで個人的な趣味としては、流石に真紅には及ばなかったかなぁとも。
 ただ真紅の場合も、本編では極限まで好き、ってほどではなくて、ヒカリを経て爆発的に、となったので、この子も幼馴染編でのあれこれを是非期待しております。。。


★NO,2〜

 ヒロインとしてはやっぱりちわっこい子が素敵でしたねー。元々の思慕の強さに関してはハルもいい勝負だと思うけど、それを上手く表現できないもどかしさとか、空回りしがちな努力とか素敵でしたし、その生き方の特異さの中でもそういう可愛い人らしさをきちんと備えている、という意味では、精神的にどこか現実的には枯れている他の二人と比較しても清涼剤的なイメージはありました。

 ハルも勿論可愛かったです。
 クロまではいかずとも、最初の刷り込み的な想いを自分の中で練り上げて、最大の価値と輝きに昇華させていく在り方はやっぱりいじらしく、また表面的な明るさの裏の想いの暗さ・重さのギャップと、そこからの克服の過程もすごく丁寧で、それだけ彼女が心に抱えた傷の大きさを示唆していましたし、それらが報われて心から良かったと思えましたものね。

 姫織もこれはこれで可愛い存在ですけど、ただ他の二人に比べるとやや数合わせ感は出ちゃっているというか、ヒロインとしてもシナリオでの役割としても少し半端だった気はします。

 ヒロイン以外では断然十夜が可愛かったですねー、いやー幼女様最っ高ですね(笑)。
 ルートによっては出番が少ないのはさみしいですが、それでも要所で色々な助けになるなど存在感は抜群で、ラストシーンでもああいう立ち位置でいられるのは、それだけ主人公にとって支えになっていた大切な存在という証左なのでしょう。
 強いて言えばアレだ、なんで一緒にお風呂シーンのCGがないんだー!

 ましろもとても可愛かったです。どこかで彼女がお菓子を頬張れる未来があればいいのに、と切に願ってしまうわ。。。


CG(20/20)


★全体評価など

 今回も質量ともに素晴らしい出来で大満足でしたね。
 一枚絵はカットイン的なものも含めてですが通常が116枚、SDも12枚あって、どれも素晴らしい出来で物語を潤わせてくれました。
 立ち絵もヒロインズがとてもとても可愛くて、敢えて言えばもう少し服飾に工夫があればベストだったかなー、とは思うのと、出番の少ない衣装が多かったのが勿体無かったですね。
 クロの魔法少女服とかもっともっと見たかったですし、その辺は続編に期待しますか。。。

 とりあえずクロの正面向きは破壊力あり過ぎで死ねますなー。ムービーでもここ一番でクロの正面向きへにゃ笑いが連発してましたけど、あのクロらしい可愛さは史上でもトップクラスに好きかも、と言える入魂・奇跡の出来だと思います。
 一枚絵だとクロの添い寝に告白シーン、ハルのお着換え、天仰ぐ千和、ましろとデートあたりが特に気に入ってます。


BGM(20/20)


★全体評価など

 いつも音楽は素晴らしい出来ですけれど、今回はFavoriteの歴代でも最大級に好みな出来でしたね。
 ボーカル曲は5曲ありますが全てが珠玉の出来で、特にOPの『さくら、Reincarnation』と、通常EDの『終わらない物語』、そして挿入歌にして作品全体を編み上げるテーマ曲の『さくら、もゆ。』は、間違いなく殿堂レベルの仕上がりでした。
 その中でも最初に聴いた時からOPが好きで好きで、しかもプレイしてその歌詞の意味まで吟味していくと尚更に好き度が上がっていって、今の時点で歴代でもトップレベルに至っているのでは、って感じです。隅から隅まで大好きな曲ですけど、敢えて一番好きなところを上げるなら、ラストのサビが終わった後のサブタイトルのコーラス、あれが一番沁みます。

 勿論2ndOPも、グランドEDも素晴らしい出来で、普通の作品ならトップレベルに位置できるのですけど、あまりにいい曲が多過ぎて聴き込みが追い付かない始末です。。。

 BGMも、アレンジやインスト込みでも全部で65曲もあって大ボリューム、しかもそのひとつひとつが奥深い素晴らしい出来で最高ですね。これは絶対にサントラ出たら買おうと心に誓っております。
 好きな曲は多過ぎてとても書き切れないですが、敢えて一番を選ぶとしたら『さよならを言う前に』ですね。このタイトルと旋律の切なさ、そしてこの曲がはじめてかかるシーンの意味を知ると本気で戦慄しますし、わかりやすくインパクトがありました。

 後は『はるのあしおと』『失われた刻を求めて』『Reincarnation V』も確実に五指には入ってくると思います。
 けど個々の出来以上に全体の完成度と、作品の情景に対する噛み合わせの上手さがいつも以上に本当に際立っていて、拘り抜いて作ったというイメージがしっかり持てるのが本当に素晴らしいですね。



システム(9/10)


★全体評価など

 演出は本当に細かいところまで情感が浸透していて、いつもながらに本当に深みと奥行きがあり素晴らしいなと思います。
 そういう方向にブランドイメージが特化している、というのもあるので、やはり蓄積から来る洗練度も高いですし、求めていたものは十二分に見せてくれていてそこは大満足ですね。

 そして今回はいつも以上にムービーの出来が凄まじく良かったです。
 最初のOPも神がかった出来ですが、2ndOPの、クロの独白から入る流れの際立ちっぷりは文字通り鳥肌もので、そこからの流れ、作り込み、彩りなども本当に完璧、の一言でした。
 上でも書いたように、クロが間違いなく今回の立ち絵差分の中で最高に可愛い、へにゃんとした優しい笑顔で待ち構えてくれている、その情景がムービーを通して幾度もリフレインされるのも本当に心に訴えるものがありますし、ただ曲だけで聴くよりも、ムービーとセットで見ると断然素晴らしい曲に思える、それだけの威力がある強烈な仕上がりだったと思います。

 システム面は、以前よりも解像度が高くなって、美麗なビジュアル面がより映えるようになったのは良かったと思います。
 ただ細かい使い勝手の面は、以前通りに少し行き届かない面が残っていて、これだけ長い物語である事も踏まえると、やっぱりバックジャンプやシーンセレクトがあって欲しいなぁ、と贅沢は言いたくなりますね。
 正直この項目も、演出とムービーの究極的な仕上がりの良さで満点つけても良かったんですけれどね。でもこれだけ読み応えのある、解釈の難しい物語ですと、ただのバックログでなく、声付きでもう一回読み返したい、という熱望はあるので、敢えてその点で割り引いておきます。


総合(97/100)

 総プレイ時間は28時間前後ですね。
 共通が5時間くらいで、姫織と千和が4時間半ちょっと、ハルが6時間くらい、クロが8時間くらいです。
 勿論じっくり読んでいた分はありますが、少なくともさっさか読み飛ばして全体像が明確につかめるほど簡単な作品ではないと思いますし、それだけの時間はかける余地がある、密度の高い作品であるのは間違いありません。

 基本的に明るさはあまりない、辛い側面の方が道中は特に強く出てしまう内容ではありますし、色とりどりシリーズ以上にその辺は覚悟しておいた方がいい感じで、シンプルなハッピーエンドやテンポのいい物語を求める人にはやはり肌の合わない作品にはなるでしょう。
 やはりこういう重厚でテーマ性の強い作品は今の時代では廃れ気味にはなってしまうので、その中でも信念を曲げずにこういう硬骨的で完成度の高さを誇る作品を作り続けてくれるFavoriteには大感謝、改めて一生ついていきます!と最敬礼したくなる出来でした。

 文字通り想像力を限界まで駆使しての、「芸術」と呼んでいいほどの作品に仕上がっていますし、こういう作品を好きになってくれる人が今の時代でも一人でも多く出てきてくれれば、そして蔓延る時代性の流れに少しでも立ち止まって疑義を抱くような事になればいいな、とは思えます。
 私もこの作品で描かれた危機感においては同根の感情は持っていますので、ささやかでもここでお勧めする事で、誰かがじゃあ手に取ってみようか、と思ってもらえればありがたい限りです。

posted by クローバー at 10:07| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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