2019年03月12日

はぴねす!2 Sakura Cerebration

 初代のはぴねす!は、なんだかんだで思い出補正の強い好きな作品だし、体験版でのプレイ感もその初代のイメージを踏襲しつつ、私好みに理路の整った物語に仕上げてくれていそうで、そしてなにより璃乃が可愛かったので購入。



シナリオ(22/30)

 幸せの在り処は?


★あらすじ

 主人公が住む、世界でも数少ない魔法特区の御咲市には、魔法使いを多く輩出する土壌となるパワースポットがあり、その影響なのか、十年に一度、自然現象の範疇を凌駕して、一月以上に渡って桜が満開となり続ける、通称桜の年と呼ばれる事象が存在します。
 街では毎年、桜のシーズンに式年祭というお祭りを開催していますが、桜の年のそれは例年よりも盛大になるのが常でした。

 そんな桜の年の歩調を合わせるようにこの街に戻ってきた、主人公と関係の深い少女が二人。
 一人はかつて、ほんのわずかの滞在の中で仲よくなり、そして危機から助けられたと強い恩を感じている、外からきた魔法使い・花恋。
 そしてもう一人は、二年の海外留学を経て魔法の腕を磨いてきた、主人公の双子の妹の片割れ・熾月。

 主人公はかつて魔法の才能があると評価されていたものの、それは長じるにつれて頭打ちとなり、今では魔法のクラスはD止まり、ただしそれを類い稀なる身体能力で補う異色の魔法使いに成長していました。
 しかしどちらかと言うと主人公にとってそれはコンプレックスのようで、いつしか何事にも深くはのめり込まず、大半の人間と距離を置いて接する在り方が普通になっていて、クラスメイトで委員長の璃乃はそれを見かねてちょくちょくお節介を焼いてくるものの、中々その気質を動かすには至りませんでした。

 けれど二人の少女の帰還と改めての出会いから、人の環が大きく膨らんでいき、これまでは接点の少なかった許嫁の楓子とも触れ合う機会が増えていって。
 それぞれの少女は、この桜の年にそれぞれの願いと想いを秘めて、精一杯に今を駆け抜けていきます。
 それに触発されたように、主人公もまたかつての熱情を取り戻し、積極的に様々なことに関わっていくようになる中で、時に街の裏側に触れたりしつつも、やがて桜の花びらのように恋の熱が心に色づいて。

 これは魔法の在り方と意義、そしてその先にある幸せの形を描き出す、思い出が紡ぐ絆と成長の物語です。


★テキスト

 全般的に、予想以上に棘がなく、現代において受けのいい類いのテキストになっていますね。
 やっぱりウィザコンが尖り過ぎていて、あまり評判宜しくなかったのを反省したのかしら?という感じで、正直このメインのライターさんの特色は相当に薄まってしまっているので、それはそれで個人的に物足りなさがなくはないのですけれど、けどその主義を抑えて職人的なライティングに徹した分、確かに読み口から感じる負の要素がほとんどない優しい仕上がりにはなっていると思います。

 初代はぴねす!と比較しても、あちらは土台の設定の突き詰めがかなり曖昧で、キャラ性も時代がまだ許していた、やや軽率な暴力的要素も含まれていて、そのあたりは読み手によって受け取りの振れ幅が広く出てしまう感じでした。
 それに対して、今回はその土壌そのものは継承しているものの、その設定をしっかり再定義して理路の中でも最低限筋道を読み解けるようにしてくれている事と、それを敢えて簡素な言葉で説明している部分が印象的ですね。
 勿論要所要所で少なからず哲学的な観念や小難しい解釈は顔を出すのですけれど、本当に過去作に比べれば最低限も最低限、精々物語のエッセンス程度に留められていて、わかりやすさ、という意味では高く評価出来ると思います。

 かつキャラ性においての棘の部分も相当にマイルドに抑えられていて、その分ダイナミズムや意外性は薄らいでいるとも言えますが、ここは個人的にもプラスの要素が大きかったなぁと見ています。
 基本的にメインの四人は、初代はぴねす!の四人のイメージをオーバーラップさせている部分も少なからずある中で、それぞれの好評だった部分をしっかり踏襲しつつ、今の時代にそぐわない尖った部分を綺麗に研いできた感じで、一番恩恵を受けているのは璃乃だったんじゃないかなと私は感じているのですけどね。

 ともかく、ややテキストとは関係ない話に脱線していますけど、総合的なつくりを社会性にアジャストしてきていて、テキスト面もそれを遵守する形で、特に凄味や奥深さは感じないですけれど、全体的に平易かつ明晰な読み口に仕上がっていてこれはこれでいい出来だと思いましたね。


★ルート構成

 地味にこの部分も初代はぴねす!を綺麗に踏襲しています。
 プロローグがバレンタイン前後で、本編が新学期からはじまる、という構図からしてそうですし、ヒロインルートにおいても、今回は初周花恋限定で、その後他三人が解放、全てクリアするとグランドルートが解放という流れですが、これも初代はぴねす!の相似形ですね。
 初代のほうは最初は春姫と杏璃のどちらか、と多少差異はあれ、構造としては全くのオマージュと言えますし、最後のグランドも、それまで攻略出来なかったサブの子ともイチャエロしつつハーレムっぽく終わる、ってあたりまで徹底しています。
 この感じだと、ママンズと男の娘が攻略出来て、麻雀がついてくるFDまで出てしまうかもしれません(笑)。

 選択肢はそれなりに多いですが、基本狙った子に寄り添う選択をすればOKで難しい事はなく、大枠の流れとしてはロックで限定されていますので、流れに沿ってクリアすればいいと思います。
 間の三人も特に順番は気にしなくていいですかね。敢えて言えば、根幹の問題へのアプローチ度で、璃乃⇒熾月⇒楓子が一番わかりやすいかな、という気はします。


★シナリオ(大枠)

 ひとつの作品としてかなりしっかり精緻に組み上げられた内容にはなっています。
 初代はぴねす!とは全く無関係ではないものの、直截的なシナリオで関わる部分はほぼなく、あくまでも初代を知っていると、諸々の名称の相似や、キャラの繋がりなどでくすっと楽しめる、程度に抑えている塩梅も悪くないと思います。

 物語としては、根底の部分で街の秘密にまつわる問題があり、けれどそれは主人公達が介入不可避の問題ではなく、というバランスの取り方が秀逸で、基本的にはそれぞれのヒロインルートで、ヒロインが抱える問題に主人公と二人で向き合っていく中で、結果的にその街の問題とリンクしてくる場合もある、というイメージでいいと思います。
 その介在度がシナリオの質と比例する、という事でもないですし、ただどうしても導入としての花恋ルートは、あくまでも表面的な事象と対症療法に徹する形の中で、嘘はついていないけど真実も語られていない、という微妙なラインに限定されてしまうので、その点は構造上仕方ないとはいえやや勿体ないです。

 それを踏まえた上で、それぞれのルートで少しずつ根幹的な問題に多角的なアプローチがあって、それを糾合して根治的な買い付けへの道筋を見出すのがグランド、という、魔法ファンタジーものとしてはかなり王道的なつくりではありますが、初代はぴねす!に比べるとドンパチの比重は相当に低く、その辺りは魔法、という概念に対する定義づけが再設定された事も踏まえて、になると思います。
 元々どみるは魔法がある世界をシェアワールド的に展開していた部分はあって、それは以前のワールプール程徹底してはいなかったでしょうけど、そのあたりを全て紐づけて、どみるというメーカーが考える魔法がある世界の正しい在り方、というのをこの作品で改めて方向付けしている感はあります。
 それは端的に言えば、魔法は誰かの幸せのためにある、という事に尽きると思いますし、それは基本善人ワールドが前提のどみるらしい考え方で、なればこそ、必要性の中で魔法を他者に向ける事はあれ、いたずらに人を傷つける魔法を振りかざさない、というのが、特に魔法特区の中では教えとして当然、とされているイメージです。

 この作品での学園の第一の目標が、魔法使いの育成ではなく保護、というのも、或いはその外側に蔓延る社会性、魔法に対する畏怖や反感から守る、というイメージにはなっていて、これは実のところ、ウィザコンと対になる部分なのかなとも感じます。
 あちらも象牙の塔の中では魔法の存在は守られている、けれどその外側では魔法犯罪や、魔法に対する偏見が跋扈しているというマイナスの部分を隠さず、むしろそれを突き詰めて考えた事で尖り・痛みを伴うストーリーにならざるを得ませんでした。
 それに対し、そこは仄めかす程度に留め、あくまでも魔法使いの正義感とノブレス・オブリージュに信頼を置く、という枠組みを確固たるものとしたのがこの作品のひとつのテーマ性、と言えるでしょう。

 面白かったのは、パワースポットの理念属性の定義の会話の中で、瑞穂坂と風城の話が出てきたのに、御久仁の話は出てこなかったところですよね。
 多分世界観として、ややウィザコンがスピンオフ的な特異設定を有しているから、というのもあるでしょうけど、ただそれを言うならウィッチズの設定も多少ならず差異はあって、やっぱりそこの差はシンプルに善人ワールドを徹底しているか否かにあるのかな、と思いました。

 もっとも、その善人の在り方の定義も時代性で少しずつ変化はあるというか、とりわけ近年ではその許容幅が小さくなっている感はあります。
 いわゆる暴力系ヒロインが受けなくなったのもその変化のひとつ、とは言えそうですし、そもそも初代はぴねす!にしても、あれだけドンパチやらかしておいて決して誰もまともに怪我しない、なんてご都合主義の半端な生温さに、なんら説得性のある定義づけをしていない、という、おおらかな時代性あってこそ許容された作品とも言えますので、そこもより厳密に定義する必要性があった、と言えるでしょう。

 その結果として、人対人はあくまで例外を除けば競技的な概念で処置し、対立項となるのは魔法を生み出す概念そのもの、という方向性に舵を切ったのは正しい判断だったと感じています。
 ただその分、どうしても白熱するバトル要素、血沸き肉躍る展開というのは影を潜めてしまいますし、物語の終息のさせ方にしても、テーマ性からすれば納得ではあっても、どこか肩透かし、というイメージも受けかねないものにはなっている、とは思いますね。
 まあそれに関しては、誰も傷つかない事とバトルもの、というつくりがそもそも矛盾してるのだから限界はある、とか言えないですし、トータルとして小綺麗に、風雅にまとまっている、とは思うものの、物語の盛り上がりとしてはもう一歩足りなかったな、という印象ではあります。

 勿論初代の続篇的な立ち位置であまり冒険は出来ないのはありますし、このつくりは確かに毀誉褒貶の振れ幅は小さく出る無難さだ思いますが、好き嫌いで言えば個人的にはウィザコンみたいに尖り切ったほうが嬉しかったかも、と思わなくはないです。
 正直なところ、もっとはぴねす!というタイトルの皮を被ったシニカルな作品が出て来ると思っていた節もあるので、予想以上に我を抑えて、はぴねす!という作品の在り方に寄り添ってきたな、と思いますし、それでこれだけの作品が出来るなら大したものではあるのですが、やっぱり根幹的な熱量の不足と言うか、語りたいことを言い尽くせていないもどかしさ、鈍熱に留まっているなにかは感じざるを得ないですね。


★シナリオ(ネタバレ)

 個別評価としては、グランド=楓子>璃乃>熾月>花恋くらいですかね。

 上でも触れたように、どうしても花恋の場合は導入編という所であらわに出来ない事情も多々ありますし、その結果として他のヒロインの助力も一切受けずにあくまでも二人で、という形になる事、それに結果的に言えば珠洲子+一人でも最低限なんとかはなる、というのは地味に璃乃ルートの主人公勢無介入で証明されてしまっているので、ここでの努力の意味はなんとも評価が難しくはなります。勿論最終グランドの共同詠唱の流れで必然に繋がるのは事実ですけれどね。
 それでも、このルートの場合は元々の目的である呪いを顕在化させてから対消滅させる、というプランに準じる形ですし、その先を見出すつくりではない事、またヒロインルートとしても強制的に入っていくのに、それを読み手に納得させるだけの積み重ねは薄く、恋愛モードに入るのがいかんせん早過ぎる感はありますよね。微熱のうちに会いに行っちゃえ作戦も顔負けですよ。。。

 ただ物語の導入としての総合的な価値はやっぱり高くて、特に花恋が外の魔法使いである、という所から来る魔法に対する理念や覚悟の差異をすり合わせていく流れ、それはその後の、内の魔法使いの前提としての説得性に繋がりますし、物語のステップとしては必要不可欠なピースだった、とは言えるでしょう。
 まあどうしても導入編、というのは割を食う宿命ではありますし仕方ない面もありますが、これだけの真っ直ぐさと素直さがあっても、この事態の収拾にあくまで他者の手を借りない、という不自然まで糊塗出来ているかと言うと微妙ですし、総合的にもう少し肉付けは欲しかったのが本音です。

 熾月に関しては、根幹の問題へのアプローチ度としては中、という位置づけですし、母親絡みの話で別ベクトルから、という部分価値はあれど、反面それ故に頑なで独り善がりになり過ぎる部分はややマイナスだったかなと思います。
 或いは、それは半端に外を見知った故のアンバランス、とも、両親の不審死を助長している可能性のある街そのものへの不信感の表れでもあるので、自分の殻に籠っている内は仕方ない、とも言えるのですけれど、私の場合先に楓子ルートをやってしまった事もあり、その融通の利かなさと視野の狭さは少し気になっちゃいましたかね。
 というかその辺、地味に師匠の悪影響受けてない?とか密かに思ってしまったり(笑)。杏璃も思い込んだら猫まっしぐらの暴走キャラだったですからねぇ……。

 まあヒロインとしてはそれが思い詰めるほどの一途さとエロ可愛さに直結しているので痛し痒しですけれど。。。この子の自慰シーンはCG力とセットで超可愛かったなぁ。
 シナリオとしても、きちんと全体の中での整合性はあって、あくまでなにもしなければ呪いの標的になるのは瑞月、そしてそれを知ってしまえばこの二人が居ても立っても居られないのはやむを得ない形ではありますけど、あの場面での主人公の軽挙も熾月の暴走も、やっぱりちょっと強引な気はしますね。
 結果として使鬼守の在り方を究明する、という部分でのヒントの提示に繋がっているのは事実ですけれど、そこはもうちょっと味方側に悪印象を残さない塩梅で上手く処置して欲しかったなぁ、とは思います。

 璃乃は逆に、裏側の呪いとの対峙とはまっっっったく無関係にラストまで進むのでそれはそれで拍子抜けなんですが、その分二人の過去や、それを踏まえての距離の縮め方、初々しい恋愛模様が誰よりも丹念に綴られていて、その点では満足度は高いです。
 この二人の場合は、互いに作っている表の顔と、本質的な部分の乖離を擦り合わせるのに時間が必要、というのもあったし、主人公の記憶が封印されている事を知らず、というすれ違いと意地が、二人の過去の繋がりを披瀝できない状況にも繋がっているので、全体像を踏まえた上で見るとよりわかりやすい心理の変遷にはなっている感じですね。

 そして、裏に介入しない分、表での魔法使いとしての本分をしっかり、というのは明快ですし、また一方で、花恋の立ち位置としてもルート毎の必然が垣間見えて面白いところではあります。
 元々花恋は珠洲子に弟子入りするためにこの街に来たわけですけど、彼女の評判があまりにあまりなせいで物怖じして、自分一人で訪問する踏ん切りを中々つけられない、という前提から、主人公が最初から寄り添ってくれるなら自分のルートになります。
 そうでない場合、主人公が熾月か楓子と結びつくと、花恋は璃乃を助ける為に自分の目的を一時保留して(ヘタレて、とも言えますが。。。)、少なくとも学園行事がひと段落するまでは璃乃の手伝いに終始しています。
 けど璃乃と主人公がくっついた時は、それをお邪魔しないように配慮してくるので、その結果遅まきながら本分に立ち返り、珠洲子への弟子入り志願までは漕ぎ着けるものの、彼女一人で呪い関連に介在させるのを憂慮してああいうテストとなった、と見れば、それは充分有り得る自然な流れだな、と納得できるのがいいですね。

 敢えて言うと、この魔法仕合で実力を認められた花恋は、その流れでハルと対峙したのかも?とも思えますので、そうだとすれば自分のルートでもその存在の必要性は担保されている、とは言えますね。
 グランドでも一応主人公が手伝った事でハルを返り討ちに出来ている、という流れですし、いかに珠洲子と言えど、自分一人で立ち向かっていたら失敗していた蓋然性は高く、それは=瑞月の喪失でもあります。
 これでこの物語が痛みを許容できる構造であれば、誰ともくっつかないノーマルルート、妹との平穏な日常が突如崩れて……なんて衝撃エンドがあってもですし、或いはグランドにおいての関係性を含めて考えると、それがあったほうがより説得性は強いとも言えるのですけど、流石にそれは許されないでしょうね。

 ともあれ、また璃乃の話から随分と脱線しましたけど、花恋の動きの自然さの中で最低限の悲劇は回避しつつ、その分全力で二人のイチャラブと頑張りを楽しめる、という視座で、他のルートとは少し味わいの違う清々しい物語になっているとは思います。
 個人的に璃乃が性格面で超お気に入りなのも手伝い、恋人モードに入っての甘えっぷり、愛らしさに一々萌え転がりまくって楽しめたので、正直このルートだけでも買った甲斐はあったぜ!と断言出来ちゃったりしますね(笑)。
 敢えて言うと異界の話、あの経験がなにかしら最後に繋がってくるのかと思っていたけど、そこはスルーされていたのが、総合的な必然性という意味で弱さになっているので、そこにフォローがあれば申し分なかったと思います。

 楓子は、ヒロインとしては中々めんどくさかわいい感じで厄介でしたが、その背景と、それに基づく呪い解除に向けての正しい方向性の発見の流れはかなり面白かったですね。
 その可能性の掘り下げの中で、熾月も自分の目的を踏まえつつ協力してくれるのもいいですし、最終的には全てを巻き込んで、本来なら有り得なかった可能性を見出していく、それをまずは二人の繋がりから波及して発見していくという構造が素敵でした。
 それは上で書いた、珠洲子と言えど一人で挑んでいたら実は失敗していたのでは?という解釈ともリンクするところで、勿論烏合の衆、という言葉もあるように、方向性の定まらない多人数が必ずしも有益ではないのが現実性ですけれど、その舵取りをする上に現実の中で必要な力、そして裏側の流れの中で求められる覚悟の両面を端的に示しているシナリオであり、一番グランドに深くつながる、完成度も申し分ないシナリオでした。

 ただ一方で、グランド自体は思いの外拍子抜けな着地点にはなっていると思います。
 それぞれのルートで得た知見を糾合して、という方向性はいかにもグランドなのですが、その出発点が最低限の対処をした後から、というのは意外で、楓子でああだっただけに、このグランドでは同じ地点で根治的な解決に至る道筋を見出せるのかと期待させておいてなので、そのあたりは評価の難しいところです。
 そこからハーレム的な空気に持っていく構成もやや強引ではありますし、それぞれのルートの記憶を擦り合わせて解決策を見出すというスタイルはいいにしても、その結論としての、より呪いを細分化して、魔法使いの存在そのものの業として処置するというものが本当に正しいのか、というのは気になるところではあります。

 単純に解決策としてスッキリ爽快、という感じではなく、どこか奥歯にものが挟まったような終わり方ではありますし、そこへの辿り着き方も、主人公の魔法の発動含めて手回しの良さはあれど都合の良さもあって、最後の真白の復活とかは完全にお約束ですけど、それを支える必然性は流石に弱いな、とは感じますね。
 犠牲の上に成り立つ幸せはない、という事、そして幸せとは、小さな不幸や苦難を跳ね除けたその先に得るもの、とい解釈も含めて、それは確かに「正しい」在り方とはいえますが、正しさを定義的に厳密に突き詰め、それを体現させる方向でシナリオを肉付けすると、不思議とダイナミズムは失われていた、というのが率直なイメージで、このあたりはどうせやるなら、もっとお得意の方向性で突き詰めても良かった気はしますね。
 そもそもその更なる分割と、多数での受け持ちという発想そのものが、こんな風に重ね合わせの世界を記憶できる状況下でないと発想出来ないものか?と言うのも微妙ではありますし、そこにもうひとつ、こういう魔法使いでなければならない必然は欲しかったと思います。

 総合的に見ると、完成度は中々に高いですが、色々と制約もある中で踏み込み切れないもどかしさや曖昧さもなくはなく、それはやろうと思えば多分出来たのに、敢えてやってない感じもするので、その意味でも職人的とは言えます。
 作品内でも魔法は誰かを守る為の力、というイメージに統一されていますけど、この作品もまた、その魔法を根幹とするどみるワールドの当たり前を「守る」事に遵守しているように思えますね。
 シナリオとして、攻めてもいいところを攻めていない分、やや盛り上がりや迫力に欠けるのはやむを得ない感じで、評価としてもそれに即した、平均点は高いけど総合的に見ると突き抜けたところはない無難な点数に落ち着いてしまう感じです。



キャラ(20/20)


★全体評価など

 シナリオで触れたように、あくまでもどみる特有の風土、善人ワールドの踏襲をモットーとしている作品なので、当然その中での登場人物たちは棘が少なくみんな優しく、毒見が薄いのが逆に物足りなく感じるほどに良い人が揃っているとは思います。
 私はそういうのも当然好きですし、どちらかと言えば毒があり過ぎるのは困るタイプなので高く評価しますけど、どちらかと言えば冷笑的な視点のライターさんだけに色々苦労したんじゃないかなぁとは思ったりも。

 断然好きなのは璃乃で、これは体験版当時からでしたが、本編プレイして更に加速してぶっちぎり、文句なしの殿堂入りですねー。
 はぴねす!シリーズで言うと杏璃の立ち位置ですけれど、杏璃から暴走気質や刺々しさ、意地っ張りをギリギリまで薄めて、思いやりやお節介、芯の強い真っ直ぐさとひたむきさなどを磨きに磨き上げた感じで、本当に絶品のバランスに仕上がっていたと思います。
 勇ましさもあるけど男勝りでは決してないし、気さくではあるけど女の子らしい気づかいや恥じらいもしっかり持っていて、好きな相手にはとことん尽くし、その分だけ素直に甘える裏表のなさも含めて全てが可愛過ぎて死にそうでした。。。

 次点はなんだかんだで熾月かなぁと。この子は逆にイマイチ素直になり切れない子ですけど、それを全然隠せてないのが可愛いですし、才能は確かでも、年下らしい張り詰めた部分と余裕のなさを包み込んで守ってあげたい、と思わせるところが良かったですね。
 花恋と楓子もそれぞれに魅力は有りましたし、他のキャラもみんな性格善くて可愛らしく、何処を切り取っても安心安全、という雰囲気でしたね。


CG(17/20)


★全体評価など

 一枚絵、立ち絵共にそこまで質量ともに素晴らしい、とは言えなかった印象ですかね。
 勿論随所にらしさは出ていて、特に璃乃熾月の正面にっこりとか相変わらずのえげつない破壊力でしたけど、ややバランスが悪いところも散見されましたし、評価としてはやや期待を下回ったかな、という感覚です。

 立ち絵では璃乃は全般超可愛くて、特にジト目とかにっこり笑顔が最高でしたねー。服飾は全般的にもうひとつずつくらい欲しかったけど。 一枚絵では璃乃の教室での幼馴染告白、過去の異界のロリ璃乃、教室での正常位、あと熾月の自室自慰がとても可愛かったと思います。


BGM(17/20)


★全体評価など

 全体的に悪くはないですが素晴らしくもなく、個人的に初代はぴねす!の音楽は今でも時折聴くくらいに思い入れ深く好きなので、それと比較すると少しスケールダウンかな、という印象です。

 ボーカル曲は2曲で、どちらもらしさが良く出たいい曲ですが、どちらかと言うとEDの爽やかさと涼やかさが好みです。
 BGMは23曲、全体的に春めいた華やかな曲が多いですね。お気に入りは『暖かな風に乗って』『広がる世界』あたりで、初代に比べるとバトル曲の魅力が足りなかったのはあるでしょうか。
 まあ向こうは完全に外向きで、こちらはどちらかと言うと自己との対峙・克服に重点が置かれているので、イメージが内向きになるのも必然と言えばそうなんですけど、やっぱりわかりやすい盛り上がりってありますからねぇ。


システム(9/10)


★全体評価など

 演出はどみるらしいコミカルさと独特さはきちんと出せていますが、最盛期のボリューム感と綿密さからするとやっぱり少しずつグレードダウンしている感は否めないんですよねぇ。
 まぁウィッチズガーデンほど頑張れとは流石に言えないですけれど、悪くはないものの期待以上ではない、というのが率直なところではあるでしょうか。
 ムービーも特にインパクトは強くなく、綺麗にまとまっていますけどそれなり、でしょうか。

 システム的にはいつも通り使いやすく軽やかでいい感じですね。


総合(85/100)

 総プレイ時間19時間くらいです。
 共通が4時間、個別がグランド含め、少し長短はあるものの概ね3時間前後という感じで、敢えて言えば花恋が少し短め、楓子がちょっと長めだったと思います。
 尺としてフルプライスに相応しい水準ではありますが、この物語をより深める為に出来る事はまだいくらかあるな、というのが率直な印象で、どうにもできるのにやってない、という感じは否めないのがもどかしいとは言えます。

 それは手抜き、というわけではなく、敢えて時代性、ユーザーの相対的な多数のニーズを踏まえての制限、メーカー色の厳密な定義の中での色付けとは言えるのですけど、じゃあそこを抑えて、シンプルにそれ以外の総合力、キャラの魅力や絵の美しさなどだけで勝負できるのか、となるとそれはそれで微妙なのが評価を難しくするところではあります。
 はぴねす!の後継ナンバリング作品というのも、方向性を狭めている一因ではあると思いますし、確かにあの作品を現代風にブラッシュアップしていけばこんな感じか、とは思えるのですけど、私としてはちょっと食い足りなさは残った作品ですね。

 上でも書いたように、はぴねす!未プレイでも問題なく楽しめる作品ではありますが、これそのものが単体ですごく面白いか、と言われると少し困ってしまいます。
 私はそもそも、はぴねす!自体がエロゲプレイ4作目くらいで、今とは比べ物にならないほど丹念にプレイした思い入れ深い作品でもあるので、そういう部分からの別ベクトルの楽しみ方もたっぷり出来ているのと、璃乃が超好きになれたのでそれで充分、という感じで、評価としてもそんなに悪くはならなかったのですけど、この無難さが世間的にはどう受け止められるのかはいずれ確認したいところですね。

 
posted by クローバー at 07:12| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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