2019年03月18日

夢と色で出来ている

 制作発表から幾星霜塩漬けにされていたのか、ってタイトルなので色々不安は尽きなかったのですが、まあそれでもなかひろさんの作品だし、ヒロインズも基本可愛らしくて好みに思えたので素直に購入。


シナリオ(18/30)

 時代の流れには……。


★あらすじ

 自分が万能であるかのように思えた幼い頃、かけがえのない仲間と野山を駆け回った記憶は鮮烈なもので。
 主人公とその幼馴染たちもまた、当時山の中にあった小屋を秘密基地と呼称し、世界の平和を守るという大層なお題目を掲げては集まって遊び、大切な思い出をいくつも積み重ねてきました。
 しかし、当時からリーダー格だった少女・姫色の転校や、その後に起こった諸々の影響で彼らは解散を余儀なくされ、そして今大人になりかかる途上においては、それはあくまでも良き思い出として時々振り返るもの……となっていくはずでした。

 そんな風に日常に埋没していった主人公達の生活ですが、けれど再び姫色がこの街に転校してきた事がきっかけで、彼らは再び絆を繋げていく事になります。
 解散後も常に主人公の傍にいたかもめと、大切な妹の恋、ひとつ上の先輩の紫織に、巫女をしている独特の空気感を背負う少女・雲。更に当時主人公以外で唯一の男だった涼介の妹も新たに加わって、今度は部活を隠れ蓑に、こっそりと世界を救うための活動、防衛部が始動します。

 ですが、彼らに取って救うべきは赤の他人ではなく、まずは自分自身と、そして大切な仲間たちであって。
 当時から彼女達が抱えていた苦悩や想い、それは時を経ても解決したわけではなく、むしろ大人になる途上の中で重く圧し掛かっており、そしてまた、誰にも告げられない事情を抱えているのは主人公も同様で。
 再び触れ合う事で、それぞれの絆の確かさに勇気づけられ、向き合うべき過去と今に対峙する覚悟を抱いていく彼らは、また当然年頃でもあり、それはどこまでも恋情と結びついていきます。

 それぞれの色に託した、それぞれの夢。それらを紐づけ、象る先にある世界はいかなるものか、そこには彼らが夢見た平和な未来が待っているのか?
 これはそんな、ノスタルジーを噛み締め、受け止め、乗り越えて、在りたい自己を見出していく成長と意思の物語です。


★テキスト

 実になかひろさんだなぁ、と思えるエキセントリックな言動と決め台詞の繰り返しが目立ちますねー。
 ただシナリオでも触れますけど、全体尺の制限がある中で、本来はそういうトリッキーな要素とシリアス要素、その上でのキャラの魅力を引き出す日常の三位一体のバランスがもっと取れている筈なんですけれど、どうしてもその中で尖った部分ばかりが強調され過ぎているきらいはあります。
 読み口としてもこれはこれで楽しめるのは確かですけれど、やっぱりどうしても少し物足りなさと性急さは感じてしまいますし、エキセントリックな部分が強く出て来るとそれだけくどさも感じてしまうのは勿体ないですね。

 元々テキストメイクとして回りくどい、勿体ぶっているところは強く出る人ですけれど、それを味にするには適度なバランスが必要条件なのかな、とは改めて感じるところで、その点は惜しいですね。


★ルート構成

 最初は姫色、かもめ、紫織の三人がクリア可能で、その後に雲、それらをクリアしていくと道中に追加選択肢がその都度出現し、それを網羅する事で最後の恋ルートに入れる、という構造です。
 その追加選択やコレクト的なイメージを積み上げる事でラストルートに全ての想いを糾合する、というのはいかにもらしい構造だなと思いますし、星メモを彷彿とさせる部分ではあります。
 選択肢自体はある程度ヒロインに寄り添ったものを選べば、ですが、恋に関してはそれに加えて、ラストルートで必要なアイテムコレクト的な意味も含めての選択が必要になるようです。

 ゲーム性としてその重ね合わせの想いの在り方は、時空列的な解釈とひっくるめて多少なり強引さは感じるところではありますが、一貫した流れとしては伝わりやすいですし、それなりに選択肢も多いのでプレイ感としては悪くないのではないかと思います。


★シナリオ(大枠)

 基本構造としては、それぞれのヒロインに主人公に取っても、過去から続く克服したいものがあり、けれどそれを自分一人ではどうにもできずに先送りしている、という面が画一的に存在します。
 かつて防衛軍を組織していた時は、互いの存在で、それ以外の世界の中での葛藤や苦悩を糊塗していた、子どもだてらにはそれしか出来ようがなかった、という中で、改めての防衛部においては過去に克服できなかったものも乗り越える力と意思、覚悟と勇気を持てるはずだ、という基本的な指針の中での筋立てなので、その骨組み、コンセプト自体はわかりやすくありがちなもの、とは言えますね。

 ただそれを、なかひろさんらしい一癖も二癖もあるヒロインが抱え込む事で色々難しくしているのがらしさとして捉えられるところで、その抱え込み方も決して外側に原因を求めるのではなく、あくまでも自身の内面的な要素が一番に来る、砕けて言えば誰しもが優し過ぎて、世界に配慮し過ぎて、自己の悩みを他者に背負ってもらう勇気を持てない、という事にはなるでしょう。

 勿論それ自身は過去作でも沢山見てきたお家芸的なものなのですが、でもそれを十全に生かすには、もう少しシンプルにボリュームは必要だったろうな、とは感じてしまいます。
 昔気質、というと多少語弊があるかもですが、あくまでもこの人の場合はぐらかしや強がりを段階的に細かく見せていく中で、そこに紐づけしてヒロインの本質や魅力をじわじわ引き出していくのが真骨頂であり、目覚ましい一つの事象で一足飛びにその魅力をガツンとぶつけてくるタイプではないのです。
 そうなると、この作品の様にその肉付けを最低限しか出来ず、骨組みの流れそのものを追いかけていくのが優先されるコンパクトなつくりでは、本領は発揮しきれないところは出てきて、結果的に奇矯な部分が突出して目立ってしまい、本来感得すべきヒロインの優しさの源泉やその価値、魅力に対しての読み手の洞察が深まらないままクライマックスを迎えてしまうのが残念なところでした。

 またどのルートでも基本的には似たような構図であり、抱えている事情そのものは別々でも、ベクトルとしては変化がないので、その点で少し面白みに欠けるところはあるでしょう。
 個々の事情も決して斬新さがあるわけではないので尚更ですし、それはロックの掛かった恋ルートに至る事情においても同様ではあるので、発想そのもので強いインパクトを残す事も敵わず、といって流れの中で強くヒロインに思い入れるだけの土壌も薄い、やや立ち位置として半端な構図にはなってしまっていますね。

 勿論個々のシナリオそのものはきちんと理路にのっとって仕上がっていますし、やりたい事は理解できるけど、となります。
 特にラストルートに至る上での諸事情と、それを阻害している要素に関してはかなりトリッキーというか超常的なので、それを幽霊譚の流れから飛躍的に解釈していって果たして説得性を強く有していたか、となると、正直そこも心許ない感覚は強いですね。
 想いの具象化、その先にある奇跡というのは王道ですが、それを読み手に説得的に見せる為の下支えは当然大切で、この作品はその路盤の部分がかなり脆いので、当事者の危機感や覚悟が最後まで上滑りしてしまっているきらいはあり、そこをどう評価するかが難しいかなと感じますね。


★シナリオ(ネタバレ)

 個別に関してはどれも一長一短で評価しにくいですね。
 上でも書いたように、大枠で括れば誰しもが家庭の事情で苦しんでいて、そこから絆を糧に脱却していく過程を、という話ですし、いつものようにその渦中においてもどちらかが一方的に理不尽、という事ではなく、共に優しさがあって、けれど求めるベクトルがズレてしまっている、という構図なので、その点であまりドラマチックとも言えませんし、どれも平均的にまとまっている、という凡庸なコメントしか出せない感じです。

 敢えて言うと、最初に攻略できる三人はそれぞれの家の事情が主ですが、その後のロックヒロイン二人は過去の主人公達の引き起こした厄災、と呼ばれる事態に対する諸々が主になってきていて、そのせいもあって雲ルートはめっちゃ歯切れが悪いです。
 全ての真相は恋ルートで、という構図の中で、本人はそこまで問題を抱えているわけでもない雲なので、どうしてもふわっとした外殻的な部分を互いにわかり合っているから、という、その時点で読み手に見えない所で結びついてしまうわけで、その関係を説得的に見せるのが一番難しかったなと感じます。
 恋自体も、その想いの在り方は過去の特殊な事情込みで、と納得できるラインですけれど、だったらもう少しその奇矯な淫妹推し一辺倒ではなく、もう少しラストのヒロインらしい重厚さは出して欲しかったですね。

 また、やはりその過去の転落事故、それを堰き止めて今に先送りし、その事象そのものの発生をなかった事には出来ないものの、みんなの力を糾合してその後の結果だけをすり替える、という発想は、まぁありがちと言えばそうですし、それを説得的に見せるだけの繋がりが担保出来ていたかは難しいところです。
 その根幹となるのが霊能力的な要素にはなるので、ミドリの存在でワンクッション置いて、というつくりはまぁ筋道としてわかるのですが、その方法論として事象の停止、というラインに一足飛びに至るのがやや強引で、実際にその可能性の制約というスキルはかなり飛躍的、超越的ではあるのですよねぇ。
 幽霊譚として、それこそその存在を感じ取れる、なにかをしてあげられるくらいのラインならまだしも、ですけれど、それだけを担保にそこに飛躍するのはちょっと厳しいか、と思いますし、一応カラーベルの存在もそれを補佐しているとはいえ、その淵源そのものも不明瞭、ましてや恋のそれは新たにつくられたものであったりと、あくまでも想いが乗っていれば効果を発揮する、という根底的な物語的奇跡感に繋げるにしてももう少し精緻な土壌はほしいところでした。

 あと、全体の流れとして雲が目指していたのは厄災の対象者のすり替えであり、主人公自身はあくまでも自身がいなくなる過去を一人で背負い、周りに迷惑が掛からない状況を積み上げればいい、という判断で、そのあたりを踏まえた時に最初の三人のルートってどうなるの?ってのはありますね。
 厄災そのものの再来が避け得ないものである、という事実そのものが、あくまで雲の考えのみに依拠しているのでやや眉唾な話ではあるのですけど、だとすると主人公が大切な相手を見出して、自分の生を諦めない、という道に乗った事でそれが解消される、とはいかないはずで、その意味では更なる先送り、とも取れるのが微妙なところではあります。
 雲ルートにしても、雲が代償者として飛び降りを敢行し、それを主人公が助けた事で事象そのものの再現、と定義していいとなれば、それはある意味茶番的な構図であって、勿論そこに本気の想いがなければダメかもですけれど、色々それでいいのかな、とも。

 それとやっぱり最後の恋の飛び降り、この子の場合子供の頃から少し視野が狭いというか思い込んだら一直線と言うか、勿論同情されるべき背景事情があったにせよ、元々の厄災の遠因も恋にある中で、それを主人公に肩代わりはさせないという覚悟そのものは良くても、やり方としては本当に無茶そのものだなぁとは思うわけで。
 それは自責の意味もあるし、より本来的にはかくあるべき、と思い込んでいるのは主人公共々似たもの兄妹、って話になりますが、記憶を取り戻して即座にそれ、というのは、互いにもう少し相手を信頼して寄り掛かれ、って話が極まっている形であり、仲間が助けてくれる、というシチュを作るにしてもあんな土壇場の修羅場を強引に演出する必然性があったのか、他のルートとの温度差を感じるところではあります。

 総合的に見て、面白くなかったわけではないですけれど、色々足りていない部分が多くて、ダイジェスト、とまでは言わないにしても、それぞれの要素を必然に感じさせるだけのファクターの盛り込みが決定的に浅かった、とは感じますね。
 評価としても流石にこの構造だけで高く、とはいかないですし、ヒロインルートそのものももっとイチャイチャは欲しかったな、と思います。
 かつHシーンだけ別ライターさんなわけで、そこでの温度差やキャライメージの差異も大きく、全体的に変態度の高いシーンメイクになっているのも個人的にはあまりお気に召さない部分だったりはしますね。



キャラ(19/20)


★全体評価など

 基本スペック的な部分でも残念なところは多いヒロインズですし、本来はそれを踏まえてもより本質的な魅力でカバーできるのがポイントなんでしょうけど、この作品ではそのリカバーがあまり上手くいっていない感じです。
 どうしてもシナリオの肉付けが薄めの中で、当面の問題を追いかけてのシリアスと、その誤魔化しでのエキセントリックがバランスを崩していて、より素朴な、本質的な魅力の部分が具体的なシチュエーションとセットで響きにくいつくりになっていて、変態的な方向性の色付けが余計にそれを糊塗している感じはしますね。
 勿論綺麗な善人ワールドの中でのそれぞれの在り方は悪くなかったのですけど、特に一番期待していた恋の書き方が極端だったのもあり、評価は少しさげたいなと感じました。

 まぁそれでも一番好きなのは恋なのですけど、流石にもうちょっと清楚にしてあげてー、と言わざるを得ない。立ち絵の愛らしさと淫妹アピールの粘着性のギャップが大きすぎますわ。。。
 元々良く出来た妹キャラにウサさんと素敵な要素てんこ盛りだっただけに、シナリオの方向性の中での頑なな部分、脆い部分の見せ方ももう少し工夫が欲しかったですし、勿体無かったです。

 雲にしても見た目は超好みだけどやっぱり立ち位置の独特さと重さによって、彼女自身の魅力が減損してしまっている、構造面で損をしている感じなのはいただけないですかねー。
 かもめも可愛いけど絡みがうざいし、姫色も可愛いけど奇矯さがうざいし、紫織は無難に可愛いけど殺人拳が怖いし(笑)、カレーはカレーだし。。。それぞれ面白くてインパクトはあるけど、そっちが強く出過ぎているのがやっぱり勿体無いですねぇ。


CG(17/20)


★全体評価など

 一枚絵は量は無難だけど質がやや微妙、立ち絵は質は高いけど量が決定的に足りてないと、土台のキャラデザはいいだけにこちらもなんとももどかしい感じですね。
 一枚絵は91枚にSDが13枚なのでまぁ水準ですけれど、立ち絵に比べると安定感がなくて、可愛いのもあるけどやや微妙なのも目立つな、というイメージですかね。

 立ち絵に関しては特に恋と雲、あと紫織も相当に可愛いのだけど、腕差分すらない1ポーズ、というのはあまりにも寂しいですし、服飾的にも表情差分的にももう少しメリハリは欲しいところかなと。
 でも本当に立ち絵だけは恋、なにもかも鬼のように可愛くて仄かにエロくて最高だったんですけどねー。


BGM(17/20)


★全体評価など

 ボーカル曲が2曲でBGMが24曲、量としてはギリギリ水準で、質はまぁ、いつもながらにボーカルは中々良かったですけど突出して、と評価出来るほどではなかったのでこの点が妥当かなと。

 OPも華やかで中々いいですけど、ボーカルはEDの『これくらいで』がより好きかな。こういう朴訥なリズム感と透明感、独得の雰囲気がある曲は好きで、このボーカルの人の声質もなんかかなりツボなんですよね。最近見るようになった人ではありますけど、パラレログラムのOPもこの声の質がかなり曲の神秘性と透明感を強く押し出している感じですしお気に入りです。

 BGMは量的にはそれなり、と書いたものの、ここはいつもながらにヒロインテーマ曲とそのアレンジでかなりの尺を取るので、それ以外のシーンでの幅の狭さはあるかなと。
 恋と雲のテーマ曲はかなり好きで、でもそれ以外だとEDピアノ版くらいしか目立って好ましいのはなかったかな、と思います。


システム(8/10)


★全体評価など

 演出は全体的にそこそこ頑張っていますし、背景演出が目立っていましたね。というかここってこういう、AXL的な演出が強く出てくるメーカーだっけ?と思ったのだけど、まぁこれはこれで面白かったと思います。
 ただ一方で、立ち絵のボリュームのなさとセットで単純な立ち絵演出はもう一歩、情感演出ももう少しシーンによっては頑張れそうな感じで、ムービーも普通くらいなので特筆して、という所はないですかね。

 システムもそこまで不便はないのだけど、基本ラストの恋ルートに入るのに最初から選択肢総当たりは必須なのに、次の選択肢にジャンプがないのは結構面倒かもなぁ、とは思いますね。
 そこまでの流れをちゃんと追いかけていけよ、って示唆かもだけど、シナリオの尺的には近年のスタンダード的なシンプル&スリムにしておいて、そこだけ利便性を差し置くというのもダブルスタンダードというか片手落ちと言うか。


総合(79/100)

 総プレイ時間17時間くらい。
 共通が4時間ちょっとで、個別は2,5時間ずつくらいと、フルプライスとして最低限のラインにはあると思いますが、逆に最低限しかないのが構想の面とは噛み合っていない作品ではあると思います。
 やりたい事はわかりますしそれ自体は嫌いじゃないけど、どうしてもそれを説得的に見せるだけの繰り返し、積み重ねと言う必須要素が、時代性も、メーカーの体力もあるのか削られてしまって、エッセンスの上澄みだけを切り取った半端な作品になってしまっているきらいは強いですし、他の面も含めてやや総合力的に物足りない作品ですね。

 最初に触れたように発表から発売までのスパンが異常に長い作品ですから、その過程で紆余曲折あったのはお察しですし、その不安感を払拭するだけの作品にはなれていない、またここだけは面白い!的なストロングポイントも特にない、評価に困る微妙な作品になってしまったかなと思います。

posted by クローバー at 05:23| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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