2019年03月28日

ネコ神さまと、ななつぼし−妹の姉−

 低価格だし、絵が好みだし、英莉歌も風子も可愛かったのでいそいそと購入。


シナリオ(19/30)

 それぞれの愛。


★あらすじ

 主人公はある日、妹と一緒に見つけて、一度は買う事を諦めさせた捨て猫を助ける為に雨の中を奔走し、その結果神社の階段で足を滑らせ転落死、したはずでした。
 しかし気が付いてみると生きていて、そしてそれを目撃したはずの妹はそのことをすっかり忘れ……そして、そこにいた猫がただのネコではなく、神の化身であり、その力を分けて自分を生かしてくれているのだと説明されます。
 荒唐無稽な話ですが、目の前で猫紛いのぷーちん(妹命名)が人型に変化するのを目の当たりにしてしまえば否応もなく、妹の記憶操作も彼女がしているそうで、その証拠に主人公の目だと、妹の頭に家の中で猫耳が生えているように見え、妹もまた、自分の事を姉と呼んでなんら不思議を覚えていないようなのです。

 ただそんな不思議神様パワーも長続きせず、風子の神としての成り立ちが七つの欠片に依存していて、それをいくつか分け与えている状態なので、それを安全に取り戻さない限り二人の運命は共倒れ、と宣告されます。
 不可思議な状況に巻き込まれつつ、その余命一月の宣言を受けて、二人はその方法を模索していくのですが、どうやらその為には大きなショックを覚え、それを乗り越えて生きる活力を手にして行けばいい、との事。
 果たして彼らの運命は正しい道筋に戻れるのか、そしてその異常事態を機に、二人きりの兄妹の関係はどうなっていくのか、これはそんな物語ですね。


★テキスト

 エッジが効いています。
 主人公の言動がともすれば頭のおかしな人になりがちですが、トータルで見るとそういう破天荒な言動の裏にも様々な思いがあるという、勢いだけに見えて意外と読み解きが難しいテキストには感じますね。
 ただ基本的には楽しい掛け合いを中心に、とはなりますし、サブキャラの個性も含めてすごくリズムよくは進んでいくので、時々ある意味深な台詞や述懐を同じペースですっ飛ばさないように、細かいヒントを拾っていけるかがより深く楽しむ鍵でしょうか。
 破天荒ですが文体としては整っていますし、これはこれでいい味を出していると思います。


★ルート構成

 基本的には一本道ですね。シーンの中などでちょっとの選択肢はありますけど、話の流れに影響を及ぼすものではないです。
 折角美味しいサブキャラはそこそこいるのだからと思わなくもないですが、低価格帯ですし致し方ないですかね。


★シナリオ(ネタバレ)

 萌えゲーの皮を被った、予想外にダーク&シリアスな内容だったかな、とは思います。
 根底にあるのは、主人公と英莉歌が見た目から明らかな異父兄妹であり、特にそれが英莉歌の生きる上での想いや在り方を強く驥足している、という部分からの、どこか歪な兄妹関係が、この事故でどういう変化を遂げていくのか、という部分に尽きます。

 勿論ぷーちんの正体と狙いに関してもかなりの驚きがある作品ではありますが、これに関しては完全にSFであり、その土台の部分の説得性はどうしたって、こうだからこう、としか言えない所なので、あくまでも二人の関係を動かすための契機、としての設定と考えておく方が無難ですね。

 私は良く兄妹もので、その矩を踏み越えて禁断の関係に至るには、ある程度そうであるための理由づけを求めるタイプですが、この作品の場合は本来ならそれを満たす、家庭環境の歪さからくる互いの距離感や想いがあって、けれどそれだけでは乗り越えられなかった、という節度の高さがあります。
 それぞれに大切な家族で、けれど見た目も違う、互いを大切に思う気持ちの垣根がわからない、そんな悩みに寸断なく襲われる思春期を迎えながらも、それでもそれぞれが良き兄、良き妹であろうとガマンと頑張りを重ねてきた、というのが切ないところです。

 けれどその枷を、風子の特殊能力が剥ぎ取ってしまって、逆に言えばそうまでしないとこの二人は結ばれる道を選べなかった、というあたりでは、そんじょそこらのエロゲの兄妹もの倫理観を遥かに置き去りにした部分はあるのですが、結局その想いがどこまで本物なのか、どうしようもなく不可分なのか、という問いには明確に応えていないのもまたズルいところではあります。
 どうあれ二人はそれぞれが大切で、その為に自分を犠牲にするのもいとわない、という信念の結実が、ラストシーンの風子の妥協を生み出したとは言えるのと同時に、最初は彼らの事を生きる糧としてしか見ていなかった彼女もまた、人外で有れどその想いの尊さに響くものは少しでもあったのか、それともあくまで便宜的にそれが成立するから良しとしたのか、そこもまた読み手の想像に託す形で、全体的にすっきりとした感覚が味わえる話ではなかったですね。

 物理的にも不可分、となった事での彼らの開き直りと、その人生の在り方にはやはりそれなりの苦難が付き纏うだろうと思えば、それは総合的に見ると現実の不条理や、常識の窮屈さと横暴さをほんのりと浮かび上がらせていて、その点ではかなり面白かった、とは言えますが、しかし当初の雰囲気からすると少し読み手が期待する大枠のベクトルからはずれた、挑戦的な作品であったともいえるでしょう。
 そこをどう評価するか、にはなりますが、結局こういう世界観は複合的に見せて説得性を高める、という面もあるので、よくこの尺でこれだけのテーマ性をまとめ上げたなとは思いつつ、それを読み手の胃の腑に落とし込むほどの強さはなかったと個人的には思っています。

 あと、地味にシナリオ構造の制約があって、えちぃシーンが極限まで集約されてしまっていて、それはそれで勿体無い感じではあったので、そこも少し減点材料になります。
 なので評価としても、標準チョイ上、くらいのイメージでまとめておきました。



キャラ(19/20)


★全体評価など

 基本的にヒロインの英莉歌がすごく健気で一途で素直で愛らしい良い子であるのですが、それを相対化する上で周りのキャラは意外と毒が強い、というのが特徴的ではありますね。
 勿論気持ちのいいキャラもいますけど全般的に出番少なめで、どうしてそうなのか、という説得力が現状では薄いのもあってインパクトがないですし、やっぱり風子の立ち位置がああだったのが、キャラ性としては中々にショッキングなのはありますかね。普通に可愛かったんだけどなぁ。

 英莉歌自身は特になんら不満のない素敵な妹でしたね。
 外ではしっかり者の優等生だけど、家ではすごく感情豊かで甘えっ子な部分も見せてくれるというのはやはり特別感を引き出す王道ですし、見た目の魅力もセットでとても潤うヒロインでした。
 風子も見た目だけならこっちの方が好み、ってくらいだったんですけどね、やっぱり終盤からの立場の変化の中で、どこまで想いを残すか、という匙加減が難しかったでしょうけど、もうちょっとなんとか出来なかったかなー、って。
 ぷーちんのウサボイスはやはり至高です。


CG(17/20)


★全体評価など

 一枚絵は全部で26枚、値段からするともう少しあっても、くらいですがまあ妥当なラインでしょう。
 立ち絵やなにやらは全体的に可愛らしく、女の子らしい細やかさやきらびやかさもしっかり出していて良かったと思いますが、もうワンプッシュ欲しかったところもありますね。
 お気に入りは英莉歌の浴衣とパジャマ、風子の制服とパジャマかな。後当然猫耳は正義。

 一枚絵だと隣の席、教室での愛撫、風子の変身辺りが好きです。


BGM(16/20)


★全体評価など

 ボーカル曲1曲、BGM14曲で、まぁ値段からすれば応分、といえるでしょうか。
 出来自体はそこまで個人的にはピンとくるところが少なかったかなぁ、という感じで、作風的に結構おどろおどろしい部分も多かったので、もう少し明るさとのメリハリが強ければと思いました。
 ボーカルのMr,sisterも悪い曲ではないですが、ちょっとふわふわしすぎていてもう少し軸が欲しかったかなぁと。


システム(9/10)


★全体評価など

 演出的にはそこそこで、やはり猫耳ピコピコは正義、というのと、結構細かく表情も動いて溌溂した雰囲気がある事、要所での情感演出も中々にインパクトがあったあたりが評価出来ますね。
 ムービーも曲に合わせて明るく愛らしいイメージではあり、地味に詐欺っぽさもあるのですがまあこれはこれでいい出来なのは確かですね。

 システムも必要なものは揃っていて特に違和感なく楽しめました。


総合(80/100)

 総プレイ時間5時間くらい。
 尺としては値段相応か、少し短いくらいで、ただ物語としては中々密度が高く、どんどん話が転がっていくので一気にプレイできてしまう感じですね。
 シナリオとしては見た目との乖離の中で評価が割れるところはありそうですけれど、その思想性と、兄妹恋愛の葛藤の在り方という点ではすごく深みを感じさせるところで、そのあたりを楽しめるようなら外れはしないのかな、という感覚でしょうか。
 しかし返す返す、風子が攻略出来ないって残念ですわ。この設定だと、例えばスタート地点の違う所からのIFにしても難しい、ってのはあるしね。


posted by クローバー at 12:50| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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