2019年05月03日

9−nine− はるいろはるこいはるのかぜ

 もう年一作ペースが確定してしまったナインシリーズですが、天編がいきなりブースト掛かって面白かったですし、春風先輩も面白そうなキャラでしたからとても楽しみにしてました。


シナリオ(25/30)

 運命を手繰り寄せる強さ。


★あらすじ

 この作品はナインシリーズの3作目になりますね。
 細かい概要などは1作目感想など参照して頂ければですが、今回は2作目の天ルートの途中、リグ・ヴェーダの正体を詳らかにするために、天が自身のアーティファクト能力を用いて潜入捜査をする!と言い出して、ものの見事に失敗したところからの分岐になっています。

 この対峙の翌日に、春風先輩から手紙とアドレスを貰って、天ルートでは天が直接やり取りする事で程よい距離感を保ったまま話が進んでいきますが、この作品ではその時点で一択選択肢が出て、主人公が自分で直接に春風と深く関わっていく事で、よりリグ・ヴェーダの内情や春風の心理などに肉薄し、またその影響で話の展開も大きく変化していく事になります。
 極端な二面性を持つ春風と心通わせるのに四苦八苦しつつ、それでもその中で彼女ならではの想い、弱さやダメなところが見えてきて、そして物語的にもより事件の裏側に坐する黒幕の姿もじわっと浮かび上がってきて――――と、序盤から盛りだくさん、急展開な内容になっています。


★テキスト

 今回もテキスト面の安定感、やり取りの独特な雰囲気と面白さは健在、というよりも、更に磨きが掛かっていますね。
 春風が思っていた以上に面白めんどくさキャラだったのも手伝って、二人きりのシーンでもやり取りの流れが読みにくく、時に斜め上に突っ走って楽しいですし、当然ながらトリックスターの天が全編的にいい賑やかし、盛り上げ役として君臨するので、およそ退屈だなーと感じさせるシーンがない、と言っても過言ではありません。
 また今回は敵方の懐に主人公自ら入り込んでいく中で、あちら側の面々の違った顔も見えてきたり、スピーディーな展開の中に密度たっぷり面白さが詰まっていて、それを簡明でリズムのいいテキストが綺麗にアシストしている感じですね。


★ルート構成

 今回も選択肢はそこそこ出てきますが、驚くべきことに全部一択選択肢という、あくまでもシナリオのスパイスとしての役割しかありません。。。
 その理由は作中で語られますし納得ではあって、例えばこれがフルプラでまとめて一作、とかだったら、手紙のシーンで追加選択肢、的な形になるのでしょうけど、ヒロイン一人ずつのオムニバスな分、そこはそういう処置をせざるを得ない、というのは仕方ない話ですね。

 そういう意味でゲーム性としては皆無に等しいですし、今回もある意味で不可避な強制バッド的シーンもあったりしていかにもこのシリーズ、って雰囲気は出しつつ、その痛みが選択を増やしていく、というつくりはやはり鉄板で面白い、と思います。


★シナリオ

 今回は更にブーストがレベルアップして、ここでこんなに面白くしちゃって、最終の希亜編のハードルあげまくりですけど大丈夫?と言いたくなるくらい、息もつかせぬ面白さだったなと思います。

 勿論それは、1作目、2作目の積み重ねがあってこその面白さではあり、特に天編で見せた様々な事実や隠されていた伏線が、序盤春風に直接アプローチ、引いてはリグ・ヴェーダの内情を観取しに行く過程の中で惜しみなく繰り出され、OPムービーに至るまでの流れだけでもすごい密度と緊迫感、盛り上がりがありました。
 そこまでで見せ付けられた敵陣営の強大さに抗するべくの、味方側の奮闘や想いの積み重ね、それに接触してくる謎の存在なども含め、細かい部分でおやっ?と思わせる引っ掛かりを残しつつも、前に進むしかない焦燥感が上手く組み立てられていて、その上でのあのバッド展開も熾烈極まりなく、本当にシリアス部分だけ切り取っても凄く面白い作品になっています。

 一方で、そういう本筋のシビアスさを緩和するべくの日常の面白さも当然健在で、春風という特異な個性を持つヒロインが身内側に加わることによっての影響が、他のヒロインズや主人公にも大きく波及していく、その流れもまた自然で緻密で秀逸でしたね。
 元々春風自身、例の二面性で奥行のありそうなキャラでしたが、それぞれの側でもまた違った顔が随所に覗いていて、決して強い人でも立派な人でもないのだけど、先輩なのに放っておけない危うさや儚さ、自虐的な中にも愛嬌がふんだんに仕込まれていて、ここまで多彩な魅力を放つヒロインになるとは実は想像の埒外ではありました。

 そういうキャラの濃さが明快になる事で、横の繋がりで生まれる面白さも多層的にはなり、安定してウザ可愛い天を軸に、すごくいい関係性が築けているな、とは感じましたね。
 ただアレですよ、天はまだ予想出来たとして、春風がここまで常識人側から外れたところを見せてしまって、希亜とて元々患っているものが強烈でキャラが濃い上に、春風との絡みでチョロ可愛いところまで見せ始めて、私のみゃーこちゃんの天使可愛さが埋没していくぅぅぅぅ!的な切なさは色々あったり。。。
 もう少しみんなのおかんキャラ的な活躍があればいいのですけど、基本自分から主張するタイプでもなし、また今作においては天や希亜は春風との直截的な絡みは多かったですけど、都は春風にとってのライバルキャラ的な視座を一方的に向けられている事で、それぞれが胸襟を開いて距離を縮める、というエピソードがなかったのも、影の薄さに拍車をかけてしまっていましたね。

 事件における、アーティファクトを用いての活躍にしても、やっぱり一番目立つところは春風、次いで希亜が持っていく構成で、都と天も重要な役割を担っているとはいえやはり地味、かつそれを自主的に発案したのではなく、世界観がもたらす外的要因によって、という所も含めて、日常ではいくらでもインパクトが付随できる天とも違い、印象度が弱くなってしまうのも致し方なかった、とは言えます。
 その点はみゃーこちゃん激ラブの私としてはやっぱり残念無念、と思う所で、最初から繰り返し言及しているけど、最終的にこの子のルートに戻ってきてくれないかなぁ、という希望はまだ持ち続けてはおり、けど、あのラストの予告的展開だと、どう見ても次の希亜編で全てが綺麗に片付きそうな雰囲気なんですよねー……ぐぬぬ。
 どうしても段階的になってしまうのはこういう構成の宿命ですが、結局それぞれの物語が一先ず終焉した段階での潜在危険度は明確に都ルートが一番大きいわけで、天もその点で言えば今回の春風よりはリスキーですが、そういう視座でも、結果的に二人がそのまま幸せになれる、と読み手が疑いなく信じられる着地点を用意するような仕掛けは期待したいところです。ぶっちゃけブリックヴィンケルなんだからなんでも出来るはずだろ!と言いたい(笑)。

 少し話が脇に逸れましたが、とにかく凶悪なバッドエンドの経験を経ての覚醒、そこからの真のボスとの対峙においての、敵キャラとの共闘などは非常に王道的な盛り上がりを有していて、アーティファクトの特性も存分に生かしたとても面白い展開でしたね。
 基本的にこのシリーズは、失敗を糧にするのと同様に、成功体験も次に繋げていく事が出来る仕様だから、その意味では希亜編で、どういうタイミングでその流れに持ち込んでいくのか、その先に何が待っているのかとても楽しみではあります。地味にもっと早い段階からゴーストが仲間側になってくれればすごく楽しそうですし。。。告白シーンの全力ダメ出しクッソ笑ったしね。
 勿論そういう部分も含め、春風の成長物語としての魅力も充分に備えていて、その組み立ての絶妙なバランスと淀みない流れは本当に手放しで褒められる素晴らしい出来でした。

 実質的なボリュームとしては過去作と大差ないのですが、それを踏み台にして、省略できるところは出来る限り薄くして、ひとつひとつのエピソードの密度をギリギリまで高めていますし、隅から隅までこのシリーズの面白さを堪能できる、という意味で、今回はまだ完全な解決編ではないとはいえ、名作判定出してもいいかな、と思います。
 これは文句なく最終編に大きな期待がかけられますし、来年の4月まで待たねばならないとは何たる苦行……っ!という感じですね。


キャラ(20/20)


★全体評価など

 個々のキャラ性の面白さと生々しさが改めてすごく活き活きと描写されていますし、特にここ2作は、天にせよ春風にせよ、ダメダメなところは結構目一杯持ってくる意地悪なつくりでもあるのですけど、それが読み手にとってマイナスの印象にならないギリギリのバランスをきっちり保てているのは本当に素晴らしいなと思います。
 まあ上でも書いたように、変人がどんどん幅を利かせてきた事で、常識人枠でツッコミ役にもなれない都の身の置き所ねぇなぁ、と切ない気分になったりもしますが(笑)、それでも着実にシリーズ重ねるごとにヒロインに愛着が湧いていきますし素晴らしかったですね。

 春風先輩は、ある程度事前情報が出ていたとはいえ、あそこまで色々はっちゃけた気質をお持ちとは、とびっくりさせられましたし、けどそれが一々めんどくさ可愛くて、これは絵の力も多大な貢献をしているのですけど、一々落ち着きのない小動物的な反応、そして感情の起伏の大きさがストレートに表に出る情緒の幼さが、成熟した女性的なスタイルとのギャップで異様に映えていたなと思います。
 実際それが、友達いないコミュ障らしいリアルさを丁寧にトレースしているからこその魅力ではあったと思いますし、それを揶揄したり、突き放したりする身内がいない所にすんなり入り込めた、という僥倖も含めて、その浮足っぷりが目立って可愛かったといえるでしょうね。しかしデスカレーのくだりは本当に面白かったわ。。。

 天はもう超安定のウザ可愛さではあり、天ルートの後だとそういう態度の裏側が、という一抹の甘酸っぱさはありつつ、春風との絡みでそれを醸しながらもきちんと背を押す、妹としての正しさに着地しているのはいじらしくていい感じです。
 希亜も今までにない顔を色々見せてくれましたし、次回作のヒロインとしての期待度はしっかり上げてきていて良かったですね。都は次こそもっと活躍してくれー、と切に祈る。。。

 あと地味にゴースト@小鳥居さんが大好きな私としては、今回の展開は中々にGJ!って感じで、ただあれ、所持者が変われば根本的な気質は違ってくるはずなのに、イメージ像がそうだから、といってそのままなのはちょっと落ち着かないものはありますね。
 勿論美少女キャラが多いのは大歓迎だし、次こそはちゃんとキラキラネームゲットして(笑)、このパーティーに溶け込むくらいの存在感を期待するのです。



CG(18/20)


★全体評価など

 基本的に安定して可愛いですし、枚数的にも普段通り、ですね。
 というか、これ書く前に改めて過去の2作の感想サラッと読んでたんだけど、よくよく見るとCG枚数数え間違えているような。。。

 ともあれ、今回もメインヒロインになった春風先輩には立ち絵がわんさか新規追加されて、特に左側横向きの立ち絵の可愛さが炸裂していた感じはします。あの角度での驚き目が最高に素敵だったし、あと全般的にデフォルメ系の脱力型表情が多いのも、トリップ癖がそのままアーティファクトに直結する春風らしい構成でしたね。
 服飾的にはやはり裸Yシャツの破壊力ヤベェ、って感じで一先ず。。。あ、私服も清楚で可愛かったです(取ってつけた感)。

 一枚絵は通常20枚のSD6枚だからまあ値段相応で、質的にもいつも通りすこーしだけ不安定さはあるけどとても可愛いです。
 お気に入りは能力全開と背中合わせお風呂、あとプリクラに目隠しバックかなぁ。


BGM(19/20)


★全体評価など

 追加分は前作と同じくらいの物量ですが、前作に輪をかけてボーカル曲の出来が良く、追加BGMも好みだったので贔屓目に採点です。
 新規ボーカルは2曲で、とにかくOPの『ハルトキ』が鬼のようにカッコいいですね。出だしのピアノのスピーディーなイントロからの迫力あるメロディーラインが、ボーカルの力強さともベストマッチで本当にこれは好き。今年プレイした作品のボーカルの中では、やはりさくら、もゆ。関連のボーカルに続いてか、或いは同等くらいにお気に入りです。
 EDの『そして愛になる』も、OPほどではないけれどすごくいい曲で、聴き込むほどに味が出てかなり好きですし、ボーカルの魅力自体も1作目から段階的に順調にステップアップしている感覚です。

 BGMは新規は4曲+アレンジって感じで、春風テーマ曲の『sidedness breeze』と、ボス戦の『Zepto EarnesT』が極めて秀逸です。



システム(10/10)


★全体評価など

 演出は極めて安定感があり、一作ごとに手間暇かけて作っているだけのクオリティがしっかり反映されていていつも素晴らしいのですが、今回は更に輪をかけて日常のドタバタ感や、コロコロ変化する表情の魅力がすごく良く打ち出せていたのと、あとOPムービーの出来が、今までもかなり良かったですけど、今回のが曲含めて個人的には断然好きです。

 システムも特にマイナス要素はないですし、元々満点つけてもいいレベルではあったのですが、ムービーの出色さで最後のピースが埋まった感じですかね。


総合(92/100)

 総プレイ時間6時間くらい。まあこのシリーズ相応の尺ですね。
 ただ本当に言えるのは、同じ6〜7時間でも、1作目、2作目と段階を経て説明的な部分をこなしてきた中、今回は殆どそれを必要としない、或いは道中の流れの中に自然に組み込める、という部分で、より春風にスポットを当てたヒロインルート、という色合いが強く出ていますし、同じ尺でも1作目と比べると密度が雲泥の差、とは言えます。勿論それは仕様上仕方ないのですけど、結果的に後出しヒロインの方が優遇されるのも仕方ない……のか?とそこは少しだけ切なく。

 まあともあれ、シリーズを追いかけている人なら勿論マストバイの最上級の出来・面白さと断言できますし、今からでも3作目まで一気プレイしてみる価値は改めて充分にありますよ、と言える仕上がりでしたね。
 勿論完結するまで待って、フルパッケージ版もきっと出るだろうからそれで楽しむのもアリかな、とは思いますが、本当に相乗的に面白くなっているので、逆に一気にプレイしてしまうのは勿体なくない?と感じるくらいではあります。
 ……とりあえずアレだ、フルパッケージ版にだけ、それぞれのルートの、解決編の枝の影響を受けての後日談付与、なんてのは止めてね?

posted by クローバー at 13:20| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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