2019年05月09日

リアライブ

 最近の紫は質の高い作品を作りますし、なかひろさんシナリオでもあるので楽しみにしてました。


シナリオ(23/30)

 過酷の先にある未来。


★あらすじ

 主人公は震災孤児で、過去の記憶を一部失い、国の支援を受けて今の街で家族と離れ、隣に住む幼馴染の咲月の助けを借りながら一人で暮らしています。
 それはなにかが欠落した、けれどそれなりに穏やかな生活でしたが、ある日主人公のスマホに、インストールした覚えのないアプリ・アライブがインストールされているのに気づいてから、少しずつ世界は変化していきます。

 アライブというアプリは主人公の通う学園で都市伝説になっており、曰く全ての課題をクリアするとどんな願いでもひとつ叶える事が出来る、という眉唾なものでしたが、咲月が主人公とは違う経緯でそのアプリを手にしていた事がわかって、二人は本格的な調査に乗り出すことになります。
 まずは同じようにアライブのアプリを持っている相手を炙り出そうとし、その上でそのインストールが実行されたと思しき、学園の聖堂を間借りして行われているカウンセラーのシスターに事情を聴きに行くことにしたのですが、そうして集ってきた同士たちである先輩の歌夜、クラスメイトの眠、後輩のみなとは、それぞれに癖のあるキャラで、更には彼女らにアライブのアプリを撒いたシスターの正体が、主人公の妹の一羽にそっくりなのでした。

 もっとも彼女は、自分は妹ではなくレヴィという存在だと頑なに主張し、けれどこれからは主人公の家に同居する、と中々に不条理な事を言って主人公を振り回して、それでもその提案を受け入れた主人公は、この6人の力を合わせて、それぞれに提示される段階ごとのアライブの課題をクリアしていく事になります。
 果たしてアライブというアプリの真の意味とその目的はどこにあるのか、そしてその課題をクリアしていく過程で、彼らに如何なる変化と成長がもたらされるのか、これはそれぞれが胸に秘めた重いものを克服していく為の勇気と祈りの物語です。


★テキスト

 いかにもなかひろさんらしい記号的口癖と、天丼をメインにした軽妙なやり取り、その隙間に紛れ込む程よいシリアスの塩梅がとてもバランス良く組み合わさったイメージですね。
 こないだの夢と色の時は、その特徴部分がより強く出過ぎていた感じですけど、こちらは日常の風景の中での肉付けも妥当なラインで、その意味で奇矯なイメージが強くは出過ぎない、それでも印象深い読み口にはなっているかなと思います。
 勿論相変わらず人を選ぶ感じなのはありますが、個人的には近年のなかひろさんの作品の中ではかなり好きな雰囲気だったかなーと感じています。


★ルート構成

 純粋な共通でのヒロインに対する好感度蓄積型で、選択肢でその心情に寄り添う選択をしていれば、という形ですが、個々のヒロインで確かひとつずつしかそれがないので、それ以外のヒロインには踏み込まない、という手順を踏まないと、狙ったヒロインのルートに入りにくい感じはありますね。八方美人するとほぼ強制的に、初期好感度の高い咲月か眠になるっぽいです。

 全員クリアするとグランドルートが出てきてレヴィが攻略できるようになり、様々な伏線も綺麗に回収されていきますので、そこまでの4人に関しては特に順番にこだわりはなくても平気だと思います。


★シナリオ(大枠)

 ある程度プレイしていけば気付く事ではありますが、この世界は空想科学的な要素によって下支えされた特殊な土壌になっています。
 勿論世界がそうだと勘づけても、何故そうなったのか、何故彼女らが選ばれたのか、という部分はクリアしてみないとわからないので、個別ルートではどうしても多少歯切れの悪い部分は出てきてしまうのですが、それでもそれぞれのルートでヒロインが抱える悩み・煩悶に向き合い、アライブの課題をクリアしていく事とリンクしてそれも解消していく、という構成は完成度高く仕上がっていますね。

 主人公自体もこの世界において、自己の恋愛を忌避する精神性をある程度克服していく必要性を有していて、それはどちらかと言えばチョロインが多い中で、一足飛びにそこに至らない歯止めの役割を果たすと同時に、シナリオの根幹も担っていてそれはいいのですが、やはり多少なりそのめんどくさ気質のせいで、遠回りしたり足踏みしたり、というやきもき展開は出てきますから、その辺は好き好き、またルート毎の温度差と完成度も少し差はあったかなと思っています。

 トータルで見ればやはりグランドの出来が抜けていて、しっかり伏線を回収しつつ、そこまででプレイヤーが予測していた展開のもうひとつ上を行くインパクトもきちんと用意されている事は評価していいでしょう。
 またそこまでで見せてきた、この世界特有の空想科学の論理の中で、きちんと複数の要因や発想を有機的に結び付けて、最終的な幸せ、と言い切っていいのかは悩ましいところですが、少なくとも決定的な喪失を回避する構造になっているのはらしい、とは言えますし、一見ベクトルの違う物事がきちんと連関していくカタルシスも保持しているので、完成度が高い作品、という点では異論は少ないかなと感じます。

 ただやっぱり、その土壌そのものが先進的過ぎる発想ではあり、確かに近未来的な視座で可能性はあるだろう、とはいえ、それを説得的なラインまで引き上げられていたか、となると難しいところではあって、またそこまでの個別で見せたそれぞれのヒロインの気質の構造もやや偏極的なイメージはあり、特に咲月などはそれが顕著だった気はします。
 その他にも細々と気になる部分はあったりで、名作、と呼ぶにはちょっと足りないかな、というのが率直な感想になりますね。


★シナリオ(ネタバレ)

 とりあえず個別評価でいくと、グランド>>歌夜>眠=みなと>咲月くらいのイメージですね。
 それぞれに個々のトラウマ克服、という課題があって、それはこのアライブがもたらす明晰夢の世界だからこそ成し得る、あくまでも本当の現実で可能かどうかはわからない、言ってみれば少なからず都合のいい夢、ではあり、またそれが、それぞれの深いところのトラウマと、同時に事故に遭遇した事による個々の後悔も含んでいて、その二重の仕掛けが、アライブ世界でも二枚底の構成を可能にしているのが特徴的ではあるのですが、その後悔の質に共感できるか、という部分で個々のヒロインへの移入度も違ってくるのかな、と。

 咲月の場合はナイト気質というか、自己犠牲を払っても誰かを守りたい、という気持ちの強さがややもすれば行き過ぎな感じはあって、勿論それは理由があるにしても、彼女の場合自分の失敗ではなく、ほとんどが外的要因でどうしようもなかった事に、それでも何かできたのではないか?と悔やみ続ける後ろ向きさを感じて、そこはあんまり好きにはなれなかったですね。
 勿論それ故の包容力や優しさも魅力にはなりますけど、同時に恋愛観としては阻害要因でもあるから、幼馴染ものとして(実際は違うのは置いといても)のめんどくささが主人公の気質と噛み合ってブーストしていますし、よっぽど妹ちゃんの方が色々わかってるなぁと。いやまぁあの世界の彼女を構成するのが想いだとするなら、それはある意味無意識の領域で咲月が了解している、けれど安易に飲み込めない真実とも解釈は出来るのですけどね。

 みなとの場合は嘘つきの在り方が相当に根深くて、そこからの脱却の過程がやっぱりめんどくさいのと、後半の展開も含めてガラッと変転する流れの中で、彼女の魅力を恋愛的な意味で引き出し切るのが難しい構成ではあったな、と感じますね。
 現実での彼女の後悔も、結果的に見ると家庭環境がもたらすものに起因しているとは言えて、ある意味負い目を感じるのは仕方ない、とは思うのですけど、小悪魔系ヒロインとしては微妙に私の趣味とずれていた感覚もあり、悪くはないけど、というあたりに落ち着きます。

 眠は実のところトラウマの程度としては一番軽い、とは言えるのですが、当事者としてはそれは重い、家族の関係の中での物語になっていて、他のヒロインが家族の喪失をメインになっている中では異色、とは言えます。
 ただ個別の構成自体は堅実で、かつ眠自身が恋愛感情には真っ直ぐなので、イチャラブ的な要素は一番楽しめた話かな、って感じで、こちらも悪くはないですね。しかしこの子だけ立ち絵で驚くと胸が揺れるのはなんなのか(笑)。

 しかし眠に関してはひとつ看過できないところはあって、元々彼女の明晰夢の在り方が、一羽の研究を完成に至らしめた部分はあるわけで、つまり仲間内にもその明晰夢や予知夢的な効用はそれなりに認知されていると思っていいのに、事故の予知を出来ていて、けれどその危険性を看過しているのはどうしても不自然には思うのですよね。
 無論その場の空気を壊したくなかったとか、彼女らしい引っ込み思案な面も出ているのでしょうけど、それでも一歩間違えば自分の命にも関わってくる部分で、それを飲み込んでしまうというのは流石にやり過ぎで、そりゃ後悔もするし、ある意味で一番責任があると言えばある、と感じてしまうのは致し方ないでしょう。
 少なくとも歌夜や咲月がその事故で背負った後悔と同列に並べていい質ではない、と思わせるのに、それを敢えて同列に並べてしまっているのは瑕疵だと思いますし、グランドの中での欠点だったかな、という意味で、眠というヒロインの個性をも少し歪め、残念なものにしてしまっている気はします。

 歌夜も素直ではない高飛車ヒロインとしての面白味はあるし、家族の問題としても本質的にはそこまで重くないので、その意味でスッと恋愛模様に踏み込みやすい、という点では面白かったと言えます。
 かつ疑似人格たる遥日の存在感が中々に印象的で、その鏡写しの中で少しずつ自分の心と、恐怖と向き合っていく過程の紡ぎ方も悪くなくて、シナリオとしてすごくいい、とは言いませんけど、他のルートに比べて完成度が高く、欠点も少なかったかな、というイメージですね。
 キャラとしても個性的で面白かったですし、アルケミストの前身タイツのエロさが最高だったので(笑)、印象には強く残っているところです。

 グランドに関しては、ポイントとしては双子の天才性に対する担保がない点にはなるかな、と思います。
 丁度Missing−X−Linkを終えたばかりなので余計に思うのですけど、あちらでは世界観の設計の中で、意図的に天才が生まれてくる土壌があり、結果的にその二人の天才の才能や想いがしっかり物語に反映した構図になっていました。
 この作品でも、そもそもの天才性ゆえの周囲の忌避が、二人の主人公に対する依存、禁忌な恋愛観の土壌になっていますし、またそれぞれの苦難、一羽の闘病や、二葉の事故との直面などで、その天才性が生んだ飛躍的な機能がその喪失を絶対的なものにしない歯止めになっているのは明らかです。
 故にその、二人の天才性に対する必然が物語の中でもっと強く出ていれば、より恋愛面にも、疑似現実へ至る流れにも説得性が強く出ただろうに、というイメージは持っていますね。

 ただ少なくとも、この流れの中でこの主人公と双子が少なからず狭い世界の中で生きる事を忌避しない、というのは自然に映りますし、またそれぞれの思いやりと覚悟もしっかりと裏打ちされていて、特に主人公にとってはあまりにも過酷な現実に立ち向かうための覚悟と勇気を手にするのに、この世界でのリハビリが必須だった、という意味での説得性は強く出ていると思います。
 二人がそれぞれに相手を立てて生かそうとする想いの崇高さも含めて、全般的にはすごく綺麗で心に響くいいシナリオでしたけど、ここまでで少しずつ触れてきたように細かい部分で気になる点がそれなりに多く、そこのフォローが出来ていれば名作ラインに乗せても良かったのに、という感覚です。
 また、グランドまでかなり情報を出し渋りしてはいるので、そのバランスの中で、個別は面白いけどどこか歯切れが悪い、というイメージにはなってしまっていて、やはりトータルで見ればこの位の点数が妥当かな、と考えました。
 ただアレですね、おまけのifでの妹ズを巻き込んだHシーンは超GJでした(笑)。特に明里が最高でしたよウフフ。



キャラ(20/20) 


★全体評価など

 なんだかんだでそれぞれ善意に溢れた素敵なヒロインや脇キャラが揃っていますし、勿論欠点もそれぞれにあって目立つものではありますが、それを含めて魅力、とプラスに解釈できるだけのバランスの良さと肉付けはしっかりされていたと思います。
 ただ惜しむらくは、それぞれに細かい部分でのマイナスがあって、その中で突き抜けて好き、と思えるだけのヒロインがいなかった点でしょうかねー。

 一応一番は、と言われれば眠になるのですけど、ただこの子の場合はストレートに可愛いだけで、克服していく課題も当人的には重くても、外から見るとそこまでに見えない、というのがありますし、そういう自分を表に出せない弱さが、結果的にこの世界を生む最大の契機にもなっているというマイナス点があるのがネックですね。

 次いでは歌夜で、やはりこの自信満々なお嬢様的気質と、裏腹な打たれ弱さのギャップが面白かったですし、見た目的にもロリエロ可愛くてとてもとても宜しかったです。
 後は妹軍団、特に遥日と明里はとても好きだったなぁ。


CG(18/20)


★全体評価など

 今回も概ねエロ可愛くて悪くはないけれど、いつも以上にチラリズムがあからさまだったり、エロさのベクトルも少し創意工夫したら明後日の方向に跳ねてしまった感はなくはなくて、中々こういう面での発想を枯渇させないのも難しいし、上手く行くとは限らない、と感じるところではありました。
 まあ個人的に私があまり変化を好まない、スタンダードの良さを愛する、というのはあるのでしょうし、刺さる人には刺さる構成だったとも言えますが、色々露骨すぎる部分は少し評価を下げたい要因にはなっています。

 立ち絵に関してはそれぞれに溌溂と活動的で、個性がしっかり裏打ちされていて良かったですね。
 服飾なども善し悪しはありましたが、かなり嵌るものもあって、特に歌夜のアルケミストや眠の私服、アイドル服などはヒットしました。

 一枚絵は全部で、通常95枚、SD12枚なので量的には充分、質としても原画力の差は否めないとはいえそれぞれなりにしっかり安定した出来にはなっていると思います。
 お気に入りは姉妹の別れ、歌夜告白、アルケミスト騎乗位、眠ロッカー、腕組みデートあたりですかね。


BGM(18/20)


★全体評価など

 ボーカルは3曲、BGMが29曲と量は水準以上でしっかりしていますし、質もそれぞれに高いレベルで安定していますが、今回は突き抜けていい、と思えるものがなかったのも事実で、その辺りを加味しての点数にはしています。

 ボーカルの中では『雛鳥の子守歌』が一番好きで、BGMだと『クラスタの断片』『落涙の比重』『I’ll miss……』あたりがかなり好きですね。


システム(9/10)


★全体評価など

 演出は全体的に効果的に仕上がっていて、いつものようにHシーンの演出の拘りや、後は情感が強く出るシーンでのカットの切り方など、やはりしっかり土台のあるプラニングが出来ているのは流石、というところです。
 ムービーはそれなり、とは思いますが、今回はそこまでインパクトはなかったかな、という感じで、総合的に隙は無いですけど、ここが特別に素晴らしい、とまで言い切れるところはなかったのが、最高点まで付けられない要因ではあるでしょうか。

 システムはほぼいつも通りの使いやすさで特に文句はないですね。


総合(88/100)

 総プレイ時間は21時間くらいですね。
 共通が4時間、そこからの個別が3時間ずつ、グランドが4時間くらいで、最後のおまけのif編が全部合わせて1時間、というイメージでしょうか。
 フルプライスの尺としては妥当なラインで、長くも短くもなく、読み口としても程よくバランスが取れていて、かつしっかり終盤にカタルシスを固めて堅実な構成になっているかなと思います。
 
 個人的にはそのグランドの細かい部分での引っ掛かりや、それを活かすために多少なり個別が犠牲になっている面を加味して突き抜けた評価には出来ませんでしたが、総合力の高い作品ですし、ヒロインで好きな子がいれば買ってみて損はしないレベルには仕上がっていると言えますね。

posted by クローバー at 13:00| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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