2019年06月20日

ガールズ・ブック・メーカー ー幸せのリブレットー

 設定が中々面白そうで、体験版は微妙っちゃ微妙だったのだけど、アンとアリスとかぐやが可愛かったので、買うものも少ないしまぁいいかな、という感じで購入。


シナリオ(18/30)

 英雄譚には必然が欲しい。


★あらすじ

 主人公は昔から読書好きで、物語の世界に没頭してそこに自己投影するのが趣味にもなっていました。
 ただ現実の中では受験という、自身の生き方を選択する岐路が迫っていて、単純に物語の世界に埋没しているわけにもいかないともわかっていて、それでも簡単に進むべき道など定められないと悩んでいました。
 しかしそんなある日、いつものように図書室に立ち寄った主人公は、キラキラと光る不思議な本を発見し、それを手に取るといきなり謎の世界へと飛ばされてしまいます。

 最初に辿り着いたのは白一面、所々にひび割れがある寂しい世界で、その中を彷徨ううちに、中空で眠りにつく不思議な女の子を発見します。
 なにもない世界での数少ない手がかり、とばかりに揺り起こすと、彼女は主人公の事を王子様と呼び抱き着いてきて、そのタイミングでまたも世界が一変します。
 そして辿り着いたのは、永遠にも思える広さの中に本が犇めく大図書館でした。

 そこで出会った館長のイストリアと、先輩司書の香織の話では、ここは現実のあらゆる物語を収納している仮想空間で、現実の時間の流れとは切り離された特殊な場所であり、そして物語世界に没入する想像力が一際大きい人間が、この場所の維持と保全のために時折主人公のように召喚される、という話でした。
 しかしそんなあらゆる物語を網羅している場所の館長でも、共にやってきた無邪気な女の子の正体は掴めず、増して彼女は記憶喪失でもあり、一先ず主人公が彼女にテイル、という名前を与えて、二人で一緒に司書の仕事をこなしていく事になります。

 この世界での司書の役割とは、忘却、という名の虫食いから物語を守り抜く事。
 膨大な物語群の中で、頻繁に巻き起こるトラブルに対処していき、それぞれの物語世界のヒロイン達とも交友を深めていって、しかしその内に、このリブレット世界そのものを脅かす、虫を使役する存在の影が見えてきます。
 果たしてこの世界を付け狙う影の正体とは何なのか、そのトラブルに、様々な主人公やヒロイン達の力を借りて、彼らは無事に幸せな世界を紡ぎ上げる事が出来るのか?これはそんな、ファンタジーな世界観の中でそれぞれの存在意義と価値を改めて照らし出す、絆と想いの詰まった物語です。


★テキスト

 かなり多くの人数がライティングしているっぽいので、その点一貫した特色、というのは見出しにくく、敢えて言えば無難に、プレーンな構成にはなっているとは言えるでしょうか。
 それぞれの物語世界の特色をある程度敷衍して、という色合いもあるので、その点で雰囲気に差異が出るのも当然と言えばそうですし、特に読みにくい、と感じる部分はありませんでしたが、その分総合的な面での重みやプラスアルファは見出しにくく、ともすればやや言葉だけが先走って空疎に感じる面もなくはなく、さほど褒められる感じではないですかね。


★ルート構成

 基本的には一本道ですね。
 メインのルートをクリアしていくと、段階的にそこまででクリアした物語世界のサブストーリーが開陳されるので、随時それを先に追いかけてから本編を進める、という形で問題ないとは言えるのですが、裏を返すとそのサブストーリーは敢えて言えばなくても本筋は成立する、というつくりでもあり、その辺りの曖昧さも含めてどうかな、とは感じます。
 選択肢自体もほぼないですし、ゲーム性という意味でも貧弱ですね。


★シナリオ

 面白くない事はない、のですけれど、総合的に見ると引っ掛かりは多い作品かな、って思います。

 上でも触れたように、基本的には本筋が全てで、その流れの中で選ばれるヒロインは当然テイル、という形であり、それ自体は首尾一貫しているのですけれど、その流れと、サブストーリーでのハーレム的な展開が噛み合っていないというか、正直言えばエロゲでやるシナリオでもないなー、ってのが個人的にはあります。

 理由のひとつとしては、主人公の在り方が挙げられます。
 元々普通の世界で普通に生きてきた主人公であり、物語世界への憧れは強く、自分が異世界転生の主人公になって、不思議な力も手にしてやたら張り切る、というのはわかるのですけど、基本真面目で誠実なタイプに本筋では構築しているのに、サブルートでの女性関係のだらしなさというか、据え膳食わぬは男の恥的な流されっぷりはそれでいいのか?と思う向きはどうしても出てきますね。
 こういう英雄譚的な構成になると、やっぱり主人公の土台にそれを説得的に見せるだけのなにか、は欲しいのですけれど、普通に生きてきて、普通の倫理観を持っている筈の主人公が、物語の中で、いずれ自分はいなくなる、とわかっているとはいえ、だからこそそういう役得的なものを一々拾っていく、というのは、職権乱用の感覚はありますし、立場にそぐわない、とは感じてしまいます。

 そもそも論としてリブレット世界の登場人物が女の子ばかり、本来は男性主人公の物語すら女性化している、というご都合は、勿論エロゲワールドの中では不文律的に容認されているものですけれど、今回は中途半端に現実の色を残している分、その特殊性がよりご都合主義に見えてしまう向きはあったのかなと思います。
 その上で、それぞれの世界毎に倫理観や常識は違う、というのが目に見えるのに、ヒロインの大半が主人公の乱痴気ぶり、女性関係のだらしなさを容認して、特に嫉妬も見せないというのはやっぱり都合がいいですし、敢えて言えばテイルがほんのり、後はアリスあたりも少しは、って感じですけれど、そういう英雄色を好む、的な立ち位置を納得させるだけの活躍を主人公は果たしてしているのか?ですよね。
 そこはひとつひとつの物語の底の薄さともリンクしていて、少なくとも読み手にとっては、ぽっと与えられた力で主人公がサクッと事件を解決、そしたらその世界のヒロインに惚れられました、という文脈ですと、その説得性にはまるで足りない気はしてしまうのです。

 そういう構造面での不備がまず大きく作品全体の違和として残るのと同時に、本筋そのものも悪くはないのですが、やっぱり都合の良さや雑然さは目立ちます。
 まずなんで主人公が最初にあの世界に召喚されたのか、というのもありますし、テイルとグリモワールにまつわる諸々の謎もやがて解明されるのですが、それに関しても香織の在り方がイストリアを変えた、というのはあるにしても、些か急激にすぎないか、という色合いは強く、同時にそれを完全に二人して忘却している在り方も都合がよく感じます。
 まあイストリアはこのリブレット世界そのもの、とも言える存在だけに、より忘却の影響を受けやすいという面もあるのでしょうけど、その世界の成り立ちと悲しい経緯なども含めて、もう少し丁寧な伏線は欲しかったな、と思いますね。

 かつ、それを解決する決め手が、テイルの主人公と共に歩んだ経験に帰依するというのも、構成として悪くはないですが安直と言えば安直にも思えますね。
 テイルというヒロインがまた絶対的な天真爛漫さで描かれているので、そこに生まれるべき深い葛藤や苦悩などをほとんど見せずに終盤まで辿り着いてしまっている、というのもあり、その単純さ、一面性も物語世界の住人ならではの特色と言えばそうかもですけれど、構成的にはここまでサブの物語を広げるならば、もっとメインの方に注力してもいいんじゃない?という気はしてしまいますね。
 正直それぞれの物語世界で二人も三人も関係を持つ不実さはより強く感じますし、せめてひとつの物語世界に結ばれるヒロインは一人にして、その分テイルとの物語に深みを作ったり、その一人のヒロインとの関係性の質を高めたりした方が良かったな、と思っています。

 終盤も気持ちのいい流れではありますが、それをもたらす能力的な部分においては館長チート丸出しではありますし、また現実とファンタジーをここまで明確にリンクさせてしまうのは許されるのか、そういう部分でも甘いご都合主義、という評価にはなってしまうでしょう。
 結局のところ、ひとつひとつの物語性にそこまで深みがなく、手広く沢山の女の子をつまみ食いできる、というだけのゲームになっている、と断じても過言ではないと思いますし、そうなると一人一人のシーン数も少ないですから、その流れも画一的になってしまう、というマイナス要素が強く出てきます。
 骨格の発想そのものは悪くないと思えるのですが、その肉付け、味付けが良くなくて、もう少しひとつひとつの物語の下ごしらえをしっかりとし、ヒロインもある程度絞っての構成にした方がシナリオ、としては盛り上がったように感じますね。


キャラ(19/20)


★全体評価など

 一人一人のスペックそのものは全体的に悪くなく、御伽噺の住人らしい特色と、総体的な善性がそれなりに上手く噛み合っていてそこは悪くないのですが、登場人物が多岐にわたる上、あまり濃淡をつけずに扱っているので、結果的に本来もっと掘り下げるべき個性や魅力を置き去りに、上澄みだけ切り取って、というパターンが目立ってしまっています。
 正直わざわざ好いた惚れたを結び付ける必要のないキャラもいたと思いますし、その分メインの立ち位置になり得る存在が割を食っている事、結果的に物語の奥行きとキャラの個性の確立をやや妨げているあたりを踏まえて、少し割り引いておきたいところです。

 一番好きなのは迷うところですけど……まぁアリスかな。
 典型的な素直になれないタイプのヒロインですけど、その立ち位置と生真面目さ、思慕と立場の間で揺れ動き、情念的にも数少ない嫉妬を感じさせるヒロインではあり、十把一絡げの中では相当に優遇されていたと思います。
 見た目とCVの魅力も込みでやっぱり私好みではありましたね。

 あと地味にかなり好きなのはアンデルセンで、まあロリ巨乳なのはそこまででもないけど、ですのキャラですごく愛嬌と誠実さが透けていて、それでいながら色んな意味で頑張り屋なのもポイント高いですねー。
 かぐやもお調子者ではあるけど、自分のやりたい事に邁進する輝きは魅力的でしたし、あとゲーテの特殊な性向とひたむきさも結構好きです。
 勿論テイルも可愛いとは思うけど、ただこの子の場合色々物分かりが良過ぎるというか、真っ白からスタートした分みんなで仲よく、の範囲が広すぎるというか、もう少し自分なりの色を強く出してもいいのに、とは思いましたね。それに基本、食べるか遊んでるかだし。。。


CG(16/20)


★全体評価など

 原画さんもかなり多数参加していて、塗りの統一感でそれなりには一貫性はあるものの、やはり世界毎の雰囲気の差とリンクしつつの善し悪しは出てきてしまう感じですかね。
 正直なところ、私好みの方向性の絵師さんが少ないというのもあり、ピンポイントで可愛いと思えるのはそれなりにあったのですけど、全体で言うとそこまでグッとくる面は少なかったかなと思います。

 立ち絵はメイン格のヒロイン中心にそれなりの数は用意されていて悪くないですけど、舞台設定がこうであるだけに服飾的には物足りず、もう少し遊びも欲しかったなとは思います。
 立ち絵ではアリスとゲーテが可愛かったかな、あとアンデルセン。

 一枚絵は全部で85枚で、SDなどもないので値段からするともう一息、とは思いますね。特にこれだけ原画さん投入しているなら、余計にそれぞれもう少し日常的な一枚絵は用いてもよかったなと思います。
 お気に入りもうーん、特には……って感じですかね。強いて言えば横ピースのかぐやと、アリスのはじめて愛撫くらい。


BGM(17/20)


★全体評価など

 音楽的には全体的に質量ともに無難な感じで、それぞれの物語性を踏まえての色合いをしっかり出しつつ、要所では総合的な神秘性を上手く引き出している感じでしょうか。

 ボーカル曲は2曲ですが、OPED共に悪くはないけどそこまでインパクトもない、くらいですかね。というか、このOPを聴いているとなんとなくアトリエっぽい雰囲気だなーって思うし、その意味でも素材的にエロゲ向きでないのはあるのだよなぁと。。。
 BGMは全部で30曲と量は水準、質も安定して悪くないレベルにあるとは思います。
 特に良かったのが『最後にひとつ、残されたもの』で、それ以外だと『淡雪を照らす灯火』『どこにも書いてない気持ち』『わたしたちを待っている世界へ』あたりが好きでしたね。


システム(8/10)


★全体評価など

 演出は細かい部分で工夫や意趣が凝らされていて悪くはなかったですが、全般的な視座では少し勢いや迫力が足りないイメージではありますね。
 リブレット演出なども力は入っていますがそれなりで、躍動感もあるのですけどどこかしらちぐはぐな感じもして、もう少し作りこめればもっと良くなる余地は沢山あったように思えます。
 ムービーも特に目立った感じではなく、世界性を朴訥に意識させる丁寧なつくりですがそこまでインパクトはなく、ですね。

 システム的にも取り立てて悪いところはないですが、使いやすいというほどでもなく、もう少し痒い所に手が届く感じでも、とは思います。
 あと一々クリックするとキラキラするの意味あるんかい、という気はしてしまう。。。


総合(78/100)

 総プレイ時間20時間ちょっとですかね。
 メインストーリーは10時間くらいで、サブがやっぱり10時間くらいと、配分としては正直サブに寄せ過ぎている感じで、しかもそれでかなりのヒロイン数を網羅しているので、それぞれの密度が薄くなるのも当然、という感じです。
 正直結ばれるヒロインはもっと少なくていいから、それぞれの密度、特にメインストーリーの密度と説得性を上げてくれ、という感じではあり、この方向性でやるならもっともっと尺を付け加えないと、とは思います。
 単純にゲーム性が高いわけでもない普通のADVで、主人公モテモテの英雄譚をやろうとすると無理がある、というのを如実に見せてしまっている作品とは言えますし、面白くない事はないですけど、正直あんまりお勧めは出来ないかなー、という感じですね。好きなヒロインがいたとしても、それを目当てに、というのはコスパが悪すぎる作品ですからね。

   
posted by クローバー at 05:45| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: