評判の良さは知りつつも、コンセプトや絵が微妙に肌に合わないかなー、と思って食わず嫌いしてたけど、主にCV絡みでやっぱり欲しくなったので2とセットで購入。
シナリオ(26/30)
トラウマを乗り越えた先の道。
★あらすじ
日本列島の遥か南に浮かぶ常夏の島・青藍島。
年々過疎が進んでいたこの島は、その画期的な対策としてセックスフリーを採用し、全国でも類を見ない条例、「ドスケベ条例」によって、常日頃からの変態的交尾が推奨されていました。
むしろそれをしないものは異端者と見做され、島の自治的な治安組織であるSHOによって指導を受けてしまうという徹底したもので、けれどそのおかげでこの島は過去にもない空前の盛況を享受してもいました。
元々この島の生まれだった主人公と、その妹の麻沙音は、2カ月前に両親が揃って交通事故死したことで寄る辺を失い、祖父母の実家があるこの島に戻ってくる事を余儀なくされました。
しかし主人公はかつてこの島で受けた仕打ちなどが影響して生粋の処女厨となっており、麻沙音は麻沙音で同じ女子が好きな性的マイノリティで、この島のセックスを強要してくる風土には嫌悪感と、そしてそれ以上に身の危険を感じる事になります。
実際に二人が通う学園でも、SHOの下部組織であるSSが常に生徒たちのセックス動向に目を光らせ、性産的活動に消極的な輩には性的な誅罰を加える強権政治がまかり通っており、二人はその魔の手から日々いかにして逃れるかを摸索しながらの生活を余儀なくされるのです。
来る日も来る日も逃亡生活、しかしある日主人公は、学園の地下に秘密裏に作られた基地の存在を知ります。
そこは島の条例に反逆心を抱く有志を集う場所であり、そこで反骨心をくすぐられた主人公は、反交尾組織NLNSを立ち上げ、条例そのものを打ち破る事を最終目標に、仲間を集いながらその為の道を模索していく事になります。
学園一のギャルビッチと崇拝されつつも、本音ではそういう行為を忌避している奈々瀬。
あまりにも実年齢に見合わないロリロリしい容姿をしている事で、誰からも相手をされないヒナミ。
生まれながらに影が薄く、また自身の体型を気にして人前に積極的に出られない美岬。
主人公と妹を加えた5人のチームは、試行錯誤を重ねながら戦うすべを身につけていき。
そしてその過程で、この場所を提供してくれたスポンサーの要望である、条例を突き崩すための鍵になる少女・琴吹文乃を探す事になります。
しかしやがて見えてくるこの島の裏の顔、決して敵はSSだけではない、という中で、果たして主人公達は真の目的を達し、平和な世界での自由恋愛を謳歌できるようになるのか?
これは偏狭な価値観に彩られた島で植え付けられたトラウマを、お仕着せの幸せを乗り越え、真の絆と愛、そしてあるべき世界像を手にするための物語です。
★テキスト
全体的にエロテイストが強いのですが、ただ実際のところ、これは本当によく考えられたテキストだなぁとは思います。
自分でもごくたまにエッチなシーンとか書くので思うのですけど、ああいうシーンで直感的に読み手に伝わる、ウィット溢れる言葉遊びをひねり出すのってすごく難しいんですよね。
でもこの作品は、まず日常=セックスみたいな色合いがありますし、その中でもそれぞれの個性、多彩性を引き出すために非常に精巧な工夫がなされていて、しかもそれを惜しげもなく、スピード感満載で矢継ぎ早にぶっ込んでくるのですから、ある意味で読み手を麻痺させ、中毒にさせる特異性があるのは間違いないと思います。
実際にサラッと読み進めてもニュアンスはスッと噛み砕ける文章をひとつひねり出すのに、どれだけの呻吟が裏にあるか、と思えば、それだけでその労力、そしてそれを人作品丸々で通底させた持続する意思に頭が下がりますね。
そして無論それだけでなく、地味にこの作品は語彙も豊富で、シリアスなシーンなどでの言い回しの大仰さなどが逆に舞台装置の突拍子もなさに噛み合っていたりもします。
個々に特徴的な言い回しもきっちり用意されて印象度も強く、無個性すらも個性にしてしまうようなアクの強さが絶妙の塩梅で配置されていて、全体として本当に良く出来たテキストだと感心しましたね。正直タイトルやぱっと見のイメージからは予想しにくい意外性でした。
★ルート構成
ここはヒロインルートに入る為の選択肢がひとつだけと、ゲーム性という意味では若干物足りなさはなくはないですかね。
この作品は、それぞれの個別ルートにおいて、どのヒロインの考え方をより強く尊重していくか、敵な部分が端緒になり、その因果として最終的な敵役の配置が変わっていくという、質のいいバトルゲーみたいな要素すら兼ね備えているのが恐ろしいところなのですが、ただその分岐の必然性をより明快にするのであれば、もう少しヒロインの内面に踏み込むなにか、はあっても良かったかなと思います。
それこそ選択肢でなくとも、共通の中で後の派生に繋がる伏線がより可視化していれば、という感覚ですね。
そして、NLNSの3人を攻略すると追加選択肢が出て、トゥルーエンドと言っていい文乃のルートが開陳されます。
その他にも、ルートをクリアする事で見られるようになる追加Hイベントなどもあるのですが、ストレートに回想モードに、でなく、シナリオモードに追加搭載されるのがちょっとわかりにくいですね。
★シナリオ
一応旧作ではあるので簡便に、サラッとまとめていきますが、大枠としてはコメディにシリアス、バトルにエロスと、いかにも18禁ゲーならではのごった煮感はありつつ、しかしその全ての要素を高いレベルでまとめ、総合的なバランスも取れている、という意味で、非常に希有な作品だと思います。
特色としては大きく見てふたつあります。
一つ目は、タイトルイメージや実際にプレイしてみての性に奔放なイメージとは裏腹に、主人公側の在り方は、自分達の信念に殉じた形でしっかり純愛を貫き、それに応じてシーンの雰囲気もサラッとしているメリハリの良さですね。
そして二つ目は、変態的交尾が推奨どころか半ば強制される島で、武器をエログッズに擬態して戦う、という頓狂で非常識な設定でありながら、それを支える意思、思想性の部分では非常に生真面目なつくりをしている点です。この辺は半ば上の特色を内包する点でもありますね。
思想性に関しては、公私を切り分けて考えるとすごくわかりやすいと思います。
公の部分に関しては、民の幸せを一元化し押し付けてくる、半ば共産主義的な世界像の中で、その歪みを正しより民主的な思想の自由を回復する、という点が基本線になってきます。
対して私の部分では、復讐心やトラウマの克服、その先にある幸せの形の摸索、という面が強く出ていて、これは勿論主人公が一番強く出ていますけれど、ヒロインや、それぞれの個別で対になっているSS三人衆にも見て取れる部分です。
その上で、この作品の個別ルートにおいては、文乃以外の3人まででは、自分達のトラウマの克服とその先にある幸せを手にするので精一杯であり、公の部分ではどこか煮え切らなかったり、後味の悪さが微かにでも残る展開になっています。
それをトゥルーエンドの文乃では、きっちり公的な部分でもより高い次元での幸せが得られるように配慮されていて、そういう段階的な組み立ての中でどうしても犠牲になるものがあるので、そこを読み手としてはどう捉えるかはポイントになりそうですね。
このあたりを前提としての個別評価は、文乃>ヒナミ>奈々瀬>美岬になるかな、とは思います。
ただ美岬にしても高いレベルでまとまっており、並の作品の個別の水準は楽にクリアしていますので、個人的な展開の好き嫌いと、トラウマ克服の過程の丁寧さや美しさを重点的に考えての評価ではありますね。
まず美岬の場合は、全般的にエロギャグ度数がどうしても高くなるルートでもあり、他のヒロインに対して彼女を決定的に好きになる為のアドバンテージが薄い、というのは感じます。
ルート構成でも触れたように選択肢はひとつだけ、かつ横並びなので、元々の気質や過去に主人公を惹きつけるものを持っている面々に対しては、やっぱりもうワンパンチ土台の部分に何かが欲しかったかなとは思っています。
あとこのルートではラスボスがヤクザになるわけで、彼らが他の勢力を出し抜くための必然性をこのルートの動向だけで担保出来ているか、となると、そこは少しファジーに感じました。
あとトラウマ克服に関しても、このルートの場合は結構な力技だな、という感はあります。
元々作中ではたびたび、今のこの島の現状の中で、主人公のトラウマの原点である巨大な逸物は大きな武器になる、と言及されるのですが、その威力を実際的に振るっているのはこのルートだけ、という部分でもそれは伺えます。
無論状況がそうせざるを得なくなっていて、またそれを可能にする免罪符も手にしている、という意味では、二人が結ばれた事で回復しかけていた過去の傷に対し、最後の一押しをショック療法的に講じた、という見立ても出来るはずで、その辺りはノリと勢いで生きている美岬のネアカさに影響された部分、とも言えるでしょう。
そういうノリであればこその面白さ、破天荒な勢いがあるのも間違いなく、バトル的にも一番荒唐無稽さはありつつ、これはこれで非常に楽しめたかな、とは思います。対になる郁子の在り方と、それがこの二人に充てられて変わっていく過程なんかはとても綺麗で優しく仕上がっていて好きです。
ただこのルートは、文乃と絡むシーンが他に比べて断然少ない、という面で個人的な物足りなさはありますし、最終的にはある程度文乃に犠牲を強いて、そして勿論本願は達成しているものの、その先に至っていない刹那的な色合い一番強く出ていますので、その辺りを割り引いて考えています。
でもこの感想とは直接関係はないのだけど、こういう在り方と着地点ゆえに、2のアフターであれだけかっとビングな話に出来た、という面もあるのですよね。丁度昨日の夜クリアしたんだけど笑い死ぬかと思ったし。。。
奈々瀬に関しては、トラウマの克服、という観点では文字通り当事者なので、そこの誤解が解けていくまでの二人のすれ違い、そうならざるをえない二人の精神性の地道な歩み寄りがとても丁寧で良かったなと思います。
トラウマ克服としては王道であり、だからこそシナリオ展開としても決して極端な無茶はし過ぎず(他のルートと比較して、の程度問題ですけれど)、奈々瀬の気質に寄り添った形になっているのは魅力ですね。
またこのルートは文乃の保護が一番早く、その分だけ文乃とむべむべ出来るシーンが多いのでそこも魅力ですし、また対になるSSが桐香で、彼女の思想性をぶつけられる事で、より明快な答えに辿り着く事こそないものの、後々の伏線としても、このルートにおける心情の変化の助けとしても有益に機能しているのは評価したいところですね。
このルートの不満点としては、やはりトゥルーと比較した時の着地点の差異性にはなるでしょうか。
トゥルーでも同じようにスポンサーに文乃を引き渡す展開になっていながら、ここではその先の強烈な揺り戻しが掛かれないまま半端に収束してしまっていて、でもそれが発生する理由はひとえにスポンサー側の内在要因だから、この時点でその歯止めになるなにかはあるのか、っていうとそこは心許ない気がします。
ひょっとするとこれも2のアフターで補完されているかもだけど、少なくともこの時点で、1をトータルして見るならば、トゥルーの文乃のありようを考えても、色々スッキリしないものが残ります。
条例終息の在り方としても、この文乃引き渡しからのスキャンダル発覚展開は漸進的な変化に留まらず、実際に島全体が、美岬やヒナミルートとは違って一気に消沈している情景が描かれますし、そのあたりは展開上やむを得ない仕儀とは言えやはりなにか、歯止めになる要素を上手く組み込めていれば(私が読み解けていないだけかもですが)良かったのにとは思っています。
ヒナミは、身体はちっちゃいけど心は誰よりもおっきい、という、包容力的な面が一貫しての魅力になっていたなと思います。
この作品のヒロインとしては、ヒナミは間違いなく一番真っ当な社交性と安定した愛着を保持していて、その揺るがない部分が主人公の弱さに徐々に染みていく、その過程の書き方がとても綺麗で良かったですね。
勿論ロリじゃないですけど!に象徴されるように、また島の制約上自分が条例違反者でありつづけなくてならない葛藤や屈託もあるにせよ、それもみんなで活動していく中で上手く租借できるようになっていきますし、人とのつながりを大切にするヒナミの想いが、主人公をSSと結び付けていく契機にもなっていると思えば、内在性という面でも一番スッキリ理解できると思っています。
そこでの裏切りと葛藤、礼との関係性の痛々しさはありますが、それでもいつか分かり合えると信じて自分の道を貫き、最後までヒナミがらしく在り続ける事でその凍り付いた心を溶かしていく流れは、この作品で一番心を打つシーンだったといっても過言ではないでしょう。
まあ敢えて言うとヒナミルートとまた個人のスキルとして考えた時に、椅子の加護、という付喪神的な考え方がちょっと都合よく使われ過ぎている感じはしますね。
文乃も豊玉の瞳、という射撃スキルに有益そうな加護を持っていると暗々裏に語っていますけど、これはその恩恵だけでなく個人のテクニカルな部分もちゃんとある、とは見做せます。
けれどわたちゃんの椅子ぶん回しがあれだけ運の良さを引き寄せまくるというのは、やっぱりバトル展開の中であまり多用しない方がいい要素ではあり、けどヒナミが主人公である以上はそれが強調されるのも仕方ないですから、その辺は眉唾で考えておきたい部分です。
ラストの着地点としても、まあ文乃の怪我と加護の喪失、という部分では美岬ルーと同様に犠牲を強いてしまっていますが、ただ条例の撤廃と、SSの面々の生活面での補助を明確に両立できているのはここだけですし、よりトゥルーに近しい着地点を見出せているのかな、とは思いますので、最初の3人の中では一番読後感が清々しい話だったかなと感じています。
文乃ルートに関しては、今までよりも早い段階で文乃に出会う事で、より関係性を密なものとし、同時に彼女の緊迫した生き方を支える事で、彼女自身の思想性と生い立ち、在り方などにしっかり触れる機会が作れる、という所から、主人公の思想性にもより明確な芯を作っていく流れが丁寧でしたね。
実際のところ、条例に対する考えを問沙汰するシーンは奈々瀬ルートでもあるのですが、あのルートだとまだ文乃自身の遠慮や緊張が解け切っていない中で、より踏み込んだ問答も出来ず、その答えを知らないが故に、桐香との問答の中でも、それがどこか間違っているという確信はあっても、それを言語化する事は出来ないというもどかしさに留まっているのですよね。
でもここではそれが解消され、文乃から明快に共存のキーワードが出てくる事で、それを目指すための道筋というものを主人公が意識的に考える、つまり私の部分のみならず、その先の公の幸せの落としどころがどこにあるのかまで視野に入れての行動になる、というのが違いを生んでいくわけですね。
それでもすぐにそれが見えるわけではなく、文乃を引き渡してしまって、その先に訪れた騒動と揺り戻しの中ではじめて見出せる真実、というあたりは重厚な構成になっており、そこに至るまでの悲嘆も深く、山谷の大きなダイナミックなシナリオになっているとは思います。
公、の思想性で言うなれば、共産主義から独裁主義への極端な揺り戻しがルート終盤の有り様とは言えて、それはどちらにせよ思想の自由を許さない強権的なやり方であるのは間違いなく、そのあたりは少し過激に走り過ぎているきらいはなくはありません。
その分中庸の価値と、それを為さしめるための許容、黙認という概念を明快に浮き彫りにしているので、それはシナリオとしては正解とは言えますが、文乃の扱い含めてもうちょっとマイルドでもいいのに、と思わなくはなかったですかね。
あと、文乃はとっても可愛いのだけど、ヒロインとしての魅力はもうちょっと押し出してくれても、という感はありました。その辺も2で補完されるとは思いますが、シナリオ性が強く、特にこのルートはよりメッセージ性も重く打ち出さないとならなかった中で、もう少しバランスを整える余地はあったかも、とは思っていて、トゥルーとして突き抜けて素晴らしい、とまでは言い切れないのが惜しいところですね。
ただそれでも総合的な完成度は非常に高く、満足度も素晴らしく、名作、と素直に読んでいい水準にあるのは間違いないでしょう。
勿論以前から持っていた、肌合いが悪いのではないか、という面も実はまだ少しはあって、その辺りも含めて絶賛、とまでは言えないのですが、純粋なテキストメイクの労力だけでも感銘を受けましたし、点数としても最低限このくらいは、という感じですね。
キャラ(20/20)
★全体評価など
個性としては誰もが濃すぎるほどに濃いつくりではありますし、けれどきちんとそれぞれに信念や矜持があって、敵対していても生き方の中に分かり合えるものがある、というバランスは良かったですね。
純粋に悪寄りのキャラもそれなりにいつつ、それでも雰囲気を悪くしないあたりは卓越した手腕と思いますし、そのあたりは主人公の個性の強さが影響している部分も多く、自己投影型のプレイヤーには悩ましいところかもですが、客観視型の私としてはとても評価出来るポイントです。
ヒロインで一番好きなのはやはり文乃でしょうか。
彼女の凛然とした雰囲気とふるまい、その陰に隠れた少女らしさや世間ずれしていない部分など、とてもとても魅力的ではあり、ただ惜しむらくはシナリオ性の高さゆえに、彼女自身の魅力の幅を限定的なものにしてしまっている面があるところでしょうか。
ただそれを差し引いても本当に可愛く、特に忠犬モードの破壊力は素晴らしくて、その先の文乃らしさに2で出会えることを心から楽しみにしています。
ヒロインで次に、となるとやはりヒナミでしょうかね。
ロリネタが強すぎるけど、本当にいざって時の精神性の成熟と安定は素晴らしかったですし、誰もを優しく包み込むその在り方は文字通りこの作品の癒しでした。
敵方では断然桐香様が大好きなのです。
超然とした雰囲気なのにそこはかとなく愛嬌があり、支えてあげたい、という想いを生じさせる在り方は素敵で、この作品内では相容れる点は少なかったにせよ、そこを2で補完してくるのは本当にありがたい限りではありますね。
CG(16/20)
★全体評価など
うーんまぁ、悪くはないけど元々あまり好きな絵柄ではないってのもあるし、この完成度の高い作品の中では相対的に弱点にはなってしまうのかな、という感じですね。
全体的に立ち絵の方が出来がいい感じで、ちょこまか動きがあるのも含めて躍動感と感情の機微の拾い方は魅力なのですが、一枚絵は質量ともにもう一歩食い足りなさはあります。
一枚絵はカットイン含めて80枚なので悪くはないですが、他キャラのHシーンなどに食われてヒロインの日常的なCGが少なめなのもあり、そのあたりもう少し頑張れれば、という感覚ですね。
BGM(19/20)
★全体評価など
逆に音楽面は非常にクオリティ高く、量的にも楽に水準はクリアしていて、満足度の高い出来ですね。
ボーカル曲は3曲で、コミカルな1stOPにスタイリッシュな2ndOP、しっとり雰囲気のあるEDとそれぞれ悪くない出来です。
特に2ndOPのスピード感と歯切れの良さは好みで、メロディーラインもカッコよくていいですね。
BGMは全部で33曲とこちらもなかなかに豊富、舞台設定を踏まえての曲層も幅広く、それでいて要所要所で耳に残る素敵なメロディがあるのでとても良かったです。
特に断然素晴らしかったのが、文乃のテーマ曲っぽく使われる『Sentense know』で、非日常の世界観の中に、また別個の気高い非日常が花開く、という風情の大変美しい曲で大いに気に入っています。
それ以外では『ケツ路を開け』『胸憶の扉』『連鎖』『湖面の月』『心の文』あたりが良かったです。
システム(9/10)
★全体評価など
演出は全体的にコミカルかつスピーディーに仕上がっていて悪くないと思います。
洗練されている、とまでは言わないですが、独特のバトル風景やシステム機動演出などは目を瞠るものがありますし、キャラもすごく細かく動いて躍動感があり飽きさせません。
そしてムービーの出来が二つとも凄くいいですね。特に2ndOPはかなり気に入ってます。
システム的には悪くないけどもう少し、でしょうか。
シナリオセレクトがあるとはいえ選択肢ジャンプは欲しかったな、ってのと、回想シーンの使いまわしの悪さ、特に音楽鑑賞でリピートできないのとかは改善してほしい点です。
総合(90/100)
総プレイ時間24時間くらいでしょうか。
共通はかなり長めで7時間くらい、そこからそれぞれの個別が4時間ずつくらい、文乃だけは5時間くらいのイメージですね。
尺自体はフルプライスとしても長めでありながら、道中にいささかも冗長さがなく、奇抜な語彙や言い回しを多発して読み手の意識を釘付けにしていく作法は本当に際立っています。
舞台設定を奇矯に施した分だけ、現実味の薄い鍔迫り合いなども楽しみやすく、それでいて背景にある思想性は非常にリアリティのある切実なもの、というバランス感覚も見事でした。
細かい事を考えずともすごく面白く、けれどしっかり噛み締めて奥深くに分け入っていってもちゃんと味わい深い、というのは中々ないですし、伊達に大評判になっただけのことはないですね。
まだ2はクリアしていないのでそこはなんともですが、普通に今からプレイしても全然遅くない、とても面白く興味深い作品でした。
2019年08月30日
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