2020年05月09日

シルヴァリオラグナロク

 母体のlightが紆余曲折あって、中々リリースに漕ぎ着けられなかったシルヴァリオシリーズの第三弾ですけれど、ようやく発売したからにはやはり買わない選択肢はないですよね。


シナリオ(25/30)

 公正⇒強制⇒盲従。


★あらすじ

 シルヴァリオシリーズの第三弾は、これまでも名前は俎上に上がっていたカンタベリー聖教国を舞台にした復讐劇です。
 この国は、新暦が始まって以来の1000年間、ずっと不老不死の神祖による、宗教を基盤とした統治が続いていました。
 それはこの国の住人にとって、非常に安定した微睡みをもたらすものではありましたが、けれどそれでも人が暮らす社会である限り不満はそれなりに噴出し、神祖はそれを上手く懐柔しつつ、陰で彼ら自身の野望を果たすべく、この国を巨大な実験装置として機能させ続けてきたのです。

 主人公とその半身のような存在であるミサキは、その実験によって非業を背負い、それ以来神祖滅殺を合言葉に生きてきました。
 空のアマテラスと直結しているため、通常の手段では滅ぼせない神祖ですが、それを可能にする力を二人は備えており、その牙が届くようになるまで数年の鍛錬という至福を経て、更にはセシルとアンジェリカという心強い同胞を得て、カンタベリーの地に舞い戻ってきたのです。

 それは紛れもない復讐ではありますが、同時に彼らはその空虚さにも、危うさにも気が付いており、その為に神祖を殺害した後に起きる混乱を、動乱を最小限にとどめるべく準備もしてきました。
 復讐の先に花開く笑顔もある、その美しい世界を夢見て、強大な力を持つ神祖に果敢に立ち向かっていくのです。

 そして神祖の側もまた、長年の宿願を、この10年で一気に進化していった星辰光の研究の中で見出し、いざ実行に移そうと画策していて。
 双方の思惑が緻密に絡み合う中で、果たして主人公達はその神祖達の野望を挫き、人としての倫を大きく外れてしまった彼らに復讐の鉄槌を下す事が出来るのでしょうか?


★テキスト

 このシリーズらしい華美絢爛で重厚、時にまだるっこしいくらいに切々と理念と観念を説いて、というパターンは完全に踏襲していますね。
 いきなりこの熱量と密度に飛び込むとクラクラするかもですけど、まあシリーズ愛読者なら苦笑いしつつものめりこんでいけるでしょうし、読み応えのあるテキストなのはいつも通り間違いないです。


★ルート構成

 これもシリーズの流れを踏まえて、最初に攻略できるのはセシルかアンジェリカ、二人クリアすると本丸のミサキルートがプレイできる、という仕様です。
 ゲーム性は求めても仕方ないですし、普通に好きな順番でプレイすればいいかなと思います。


★シナリオ

 まあ内容としてはこのシリーズの普遍的パターンを踏襲しているというか、今回は敵方がより経験値豊富で強大なだけに、余計にねちっこくなっている、という感覚はありましたかね。
 基本線としてすごくざっくりまとめてしまえば、まだまだぁ!⇒それは知ってた⇒まだまだぁぁぁ!!!⇒それも知ってるのさ⇒うぉぉぉまだまだまだぁぁぁぁ!!!!!⇒なんだって!?と、相手が知らない所まで光の殉教者としての覚醒を続けて打破する、に尽きます(笑)。
 今までのシリーズよりその克服の過程がより大仰、という点で、それをきちんと段階的に、かつ不自然でない程度に分散させつつ構築するのは厄介だったろうなぁ、とその労苦はねぎらいつつ、流石に画一的、かつしつこい、と感じる向きもあったりなかったり、ではありますね。

 なので、そういう部分の熱血度はいつも通りの面白さでした、と定義してしまって、その上でこの作品におけるテーマを簡単にまとめるなら、人の尊厳を取り戻すための報復、という事になるでしょうか。

 カンタベリーは宗教国家であり、そして神祖が1000年の経験値を基に、傍目には非常に公正で穏当な統治を続けているので、国民はそれに慣れ過ぎて、あくまで難しい事は神祖の思うがままに、神の御心のままに、と思考停止してしまっている面が目立ちます。
 それはアドラーの在り方とはかなりかけ離れた、安寧という名の停滞を感じさせるもので、それは畢竟、神祖がいつまでも現役バリバリで働き続け、自身を高めていく努力をこの期に及んでも怠らずにることに起因しています。

 じゃあ神祖たちがなぜそこまでするか、と言えば、彼らが元々暮らしていた旧暦の世界に対する執着に他なりません。
 新暦が、かつての世界より科学的な面で言えば相当に退化した世界なのは間違いなく、その不便を解消するためには、今のアマテラスの在り方を変えねばならないというのが彼らの意向で、その芯があればこそ長年弛まずに、実験装置としての国を守り続けてきたわけです。
 ただいつしか、その統治には純粋に人の想いに寄り添う、という色が薄まってしまっていて、それは生体的にどうしようもなかった必然なのかもですが、結果として平然と、大を活かすために小を殺す、政治の普遍ではあれど意図的に用いていいわけではない方法論を、算術的な観念でしれっとやってのける人外の怪物になり果てていたのですね。

 その被害に遭った事で、神祖の歪みに気付いた主人公達は、当然復讐心が一番強いとはいえ、同時にこのままでは致命的にカンタベリーという国の在り方がおかしくなると直観していて、名もなき民の報復、という尺度で神祖を打倒する、けれどその先の未来もきちんと考える、というスタンスが取れています。
 それは総じて言えば、政治を人の手に取り戻す、という事に尽きていて、想いを受け継ぐことが人としての正しさであればこそ、どれだけ理屈が綺麗に聞こえても、一切自身たちの望みを人民に開陳せず、自分達の手だけで達成しようとする神祖の在り方は間違っていると突き付けていくわけですね。

 結局このシリーズって、先に進むほどに敵方の歪みが大きくなっていて、勿論そうであればこそ敵がより強く、バトル面におけるインフレと盛り上がりはレベルアップしていく面はあるのですけど、一方で敵方の魅力はどんどん減じていく面は否めないですよね。
 そういう意味で、本当にヴァルゼライドというのは良く出来た英雄だったのだと思うし、だからこそその意思を真っ直ぐに継いで戦うオーバードライブみたいな存在が生まれるわけで、人の意思と可能性を蹂躙しないほどの良さが必要、という話になるでしょう。

 トリニティの光狂いみたいに、力づくで自分達の信念に染めていこうとするのも性質が悪かったですが、神祖の場合はそもそもそういう選択がある、という観念から根こそぎ奪い取って隠蔽してしまう悪辣さが目立っていて、けれどそれは彼らが信じる幸福の為には必要な犠牲だと、正義感の名の下に4人の中で正当化されてしまうわけで。
 だからこそ、折々に話し合いでの解決を求めるなど、一見公正に見えるものの、けどその実態は、思考停止して神の恩寵を招くための手駒になれ、という事だからこそ、とりわけ強い信念を抱くものにとっては、生理的な嫌悪と拒絶を覚える存在になり果ててしまっているといえますね。

 そもそも論として、元々旧暦はエネルギー問題で致命的な状況にあったわけで、それが新暦になって、星辰光の存在により解消された面がある以上、旧暦の世界法則の奪還がある程度ゴールとして設定されている神祖の願いも危うさは尽きない所で。
 勿論彼らとしては、そうした上で星辰光の力も維持できるように、いいとこ取りを目指して努力はしていくのでしょうけど、どうあれ今を生きる人が世界の方向性を一切決められない、家畜的世界である事は疑いなく、それはどう取り繕っても人の尊厳を無視したやり口なのは確かでしょう。
 そこから更に一歩先を考えていたグレンファルトにしても、行き着く先は究極の馴致であり、望む世界を好きなだけ与えてやるから、世界の在り方には一切容喙するな、という傲慢さが色濃く出ているわけで、結局それが、本来の寿命を逸脱して生きた人の限界、どうしようもない人からの変貌なのだろうなと思います。

 そういう意味で、ヴェンデッタの時は敵方の信念にも共鳴出来るところは多々ある、けれど、という観念的な複層性と盛り上がりがあったのが、トリニティではかなりそれが縮小され、今回は本当に鬱陶しいだけ、というラインに至ってしまって。
 それは敵方の行き過ぎ、インフレを踏まえれば仕方ない帰結なのかもですけど、やっぱり敵方に魅力を覚えない、というのは、作品そのものの評価にも直結はしますよね。
 唯一シュウとリサの在り方、その戦いの様は面白かったですけれど、結局見ている地平が違うと戦いそのものもベクトルの違うイデオロギーの衝突にしかならず、という面はあるのでしょう。
 なので今回は、当然充分に面白かったですけれど、総合評価としては名作、ではあるけれど過去2作、特に最初のヴェンデッタには及ばないという位置づけにしたいかな、と思っています。


キャラ(20/20)


★全体評価など

 上で書いたように、敵方にほとんど魅力を感じなかったという残念さはあるものの、それでも味方側の魅力は流石でしたし、割り引くほどの部分はなかったですかね。

 ヒロインではアンジェリカが一番好きかなー。
 立ち位置的にヒロインとしては一段弱いのはあるけれど、彼女の抱える業と嫌悪は、本来この国に生きるものなら気付きにくいものだし、それを理解して尚立ち向かえる強さと高潔さ、不器用ながらの友情の厚さには微笑ましく可愛らしいものがありました。
 ミサキもセシルも普通に可愛いし、それぞれに味わいがあっていいですね。

 パティもウザキャラと思わせて、要所では非常に素敵な、人としての清廉さをまざまざと見せつける活躍をしてくれますし、とっても可愛かったですね。
 攻略出来ないのが残念、と思うくらいだけど、いつかこの子リチャードとくっつくのかな?とは思わなくもない。

 リチャードも本当に、人の弱さと清潔さをこれでもか、と浮き彫りにしてくるいいキャラで、だからこそ主人公の側も戦うことに強い覚悟と、託す思いがなければならなかったという意味で、すごく目立つ存在ではありました。
 結局この作品って、神祖の手駒にされて、思うままに在れない自己に対する悲嘆や鬱屈が色濃く出る使徒とのバトルの方が面白い、という矛盾は出てしまうので、その点をリチャードの存在は上手く補強していたのかなと思います。まあ立場としては本当に不憫に尽きるのですけどね。。。


CG(18/20)


★全体評価など

 CG登録としては150枚超え、勿論似通った構図やカットインなど厳密に分類すれば100枚くらいでしょうけど、物量としては充分ですし、質も中々良かったですね。
 基本的に立ち絵もバランス良く個性が出ていて魅力的でしたし、一枚絵も安定していて、このシリーズにしてはHシーンの出来が良かったのも意外だったけと嬉しいところ。
 特にアンジェリカ関連は好みの構図が多くてすごく楽しかったですね。パロスペシャルがやたら可愛い。。。


BGM(18/20)


★全体評価など

 ボーカル曲2曲にBGMは32曲+インストで、出来はいつも通り安定して高いレベルを保っていますね。
 ボーカル2曲は正直そこまで刺さらなかったのですけど、BGMはかなりいいものが多くて、5、12、19、24、27、32番あたりはかなりお気に入りです。


システム(9/10)


★全体評価など

 演出はいつものように多角的な要素を組み合わせて、非常にメリハリのついた迫力のあるものに仕上がっていますし、バトルの臨場感、戦場のひりつくような空気感まで綺麗に投影されていて流石でしたね。

 システム的にも特に不便なところはないですし、安定した内容だと思います。


総合(90/100)

 総プレイ時間24時間くらいですね。
 共通が6時間、アンジェリカとセシルが5時間、ミサキが8時間くらいで、ルート毎の尺の差は流石にメインとそれ以外、という所で差はありますけれど、何処を切り取っても非常に密度が高く、息つく暇も与えられない素晴らしい出来である事は間違いありません。
 ただ上で触れたように、敵側の信念や目的に対する共鳴が届きにくい、という面はあって、その点もう少し工夫の余地というか、方向性含めてここまで人から逸脱した存在として紡がなくても、という感覚はありました。

 まあそれ自体が、あくまで歴史は人と人の想いがぶつかり合って紡がれるべきものだ、という観念が投影されているからこそ、とも言えますし、そのへん好き好きは出てくるのでしょうけど、トータルで見るとやっぱりヴェンデッタが、スケール感という意味では一番控えめであろうと、一番面白かった気はしますね。
 ただシリーズ総括としての位置づけはきちんと出来ていて、過去2作の要素も上手く取り込みつつ破綻させなかった手腕は流石で、シリーズファンならプレイして損はしない作品でしょう。
 裏返すと、過去2作プレイしていないとチンプンカンプンでもあるので、そこは注意が必要ですけどね。

posted by クローバー at 07:24| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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