2020年06月02日

月の彼方で逢いましょう SweetSummerRainbow

 月かな本編は全体的にハイレベルな作品でしたけど、その中での頭一つ抜けて評価していた雨音にフィーチャーしたFDという事で、お値段も手頃ですしこれは買うしかない!でしたね。

シナリオ(23/30)

 繰り返されて、癒されるもの。


★あらすじ

 この作品は、月かな本編の雨音ルートの、それぞれスクール編とアフター編の更にその後を補完したFDになります。
 当然ですが本編をプレイしている事前提で、一応これ単体でも雨音ルートダイジェストは搭載されているので、最低限「雨音」の物語としては楽しめますが、やはりこのルートはエンデュミオンの謎やその力の部分を多角的に作品全体で示した蓄積があってこそ、なので、私としては断然本編からのプレイを推奨します。


★テキスト・ルート構成

 テキストは本編雨音ルートと当然ながら同一のライターさんで、非常に細やかな感情の機微を丁寧にバランス良く掬い取ってきているな、と改めて思いますし、スピード感、という点ではややもどかしさはあるかもですが、じっくり楽しみたい人には親和性の高い読み口に仕上がっていると思います。

 ルート構成としては、いくらか選択肢は出てきますけどその後の展開が少し変化するくらいで、大枠の流れは当たり前ですが一本道です。あくまでもゲーム性の部分はおまけ程度で考えておきましょう。


★シナリオ

 大枠で見れば本編の焼き直し、補強ですが、そういう細かな段階と、切所での踏ん切り、前を向くための活力と勇気を得る、という意味で、雨音というヒロインにはそういう過程が必要なのだ、というのをきちんと理解してあげることが必要であり、それがわかっていればこのシナリオの価値も大きく感じられるでしょう。

 前提として、雨音の中二病は現実からの逃避であると同時に今の自分を守る殻でもあって、それはなまじ幸せな家族の形を知っていて、けれど突如それが奪われた滑落の経験がもたらすトラウマ、恐怖の裏返しでもあります。
 一度植え付けられた傷は、どうしても瘡蓋になっては剥がれ、また瘡蓋になって、という段階的な治癒を必要としますし、雨音にとってのそれは、どれだけ主人公が献身的に支えていても、畢竟過去の親子関係に依存してしまうのは止むを得ないところです。

 まあそういう視座で言うと雨音はとっっってもめんどくさいヒロインではあるのですが、普段の奇矯な振る舞いと愛らしさがそれを綺麗に糊塗していますし、主人公もことさらそれを意識せず、自然体でその傷に寄り添っているのずこの作品の魅力です。
 それは当然ながら、出会いからラストまでそれこそ15年近くの歳月を共にして、という蓄積を前提に出来るからのやり方で、故に無駄にめんどくささアピールする必要がない、というのもありますね。
 ただやっぱり雨音は、いざ幸せが手に入っている中で、常に自分の立ち位置を確認し、踏み固めてからでないと前に進めない臆病さは見せていますし、そのくせ生きる事に生真面目だから、所々で感情がねじれてしまうわけです。

 スクールアフター編での中二卒業?のくだりとかは、ある意味幸せを手にした自立した存在のテンプレとしての当たり前と、自己の自然が錯綜した中での困惑、苦衷であったと言えますし、だからあそこで、雨音はそれでいい、と主人公がまるごと認めた事が後々に向けての大きな支えになっているのは間違いありません。
 まあその分いつまでも稚気が抜けないと言うか、子供が出来てアラサーになっても、はにゃっ!?とか可愛さ満載の反応が持続しているのは苦笑いにはなりますけれど、それは裏返せば、家族関連でまだ凡ての棘が抜けていない証左、でもあるのですよね。

 このルートにおいては、主人公の小説家としての才能そのものはそこまでマルチなものではなく、あくまでも強い想いを抱いたものを投影する、という形でのみ開花する様相を見せています。
 それはある意味、雨音と人生を寄り添って生きてきたからこそ獲得した特質で、実際この作品では苦労するイメージは薄いのですけど、本義的にはこういう愛着がやや不安定なパートナーを支えていく、というのは大変な事のはずなのですよね。

 主人公にはそれを支えうるだけの愛着の強固な土台があったのは確かですし、逆に言えばその渇望の薄さが小説家としての真っ当な形での体制を妨げていた、と見做す事も出来ます。
 まあうぐいすルートの立場と相反する事にはなるので、軽々には断定できませんけれど、あのルートにしても、うぐいすというヒロインが醸し出す無常観に触発されて、という色付けは出来ますし、どうあれ雨音ルートの世界線に置ける主人公は、いわば雨音の想いに少しずつ寄り添う事で、自分が当たり前に享受していた幸せの本当の価値を一歩ずつ噛み締めて成長していった、と言えるでしょうね。

 物事には時間が解決する、或いは時間の経過が痛みを風化させる、という効能が確実にありますし、この作品のスタイルは、その時間の幅を目一杯有効に使って、決して想いの一本槍で力任せに解決に導いていない、そういう優しい手触りとバランス感が魅力ではあります。
 そしてその中でもその武器を一番有益に組み込めていたのが元々の雨音ルートではあり、それをきっちり更に細分化・段階化する事で、何かを間違えると踏み外してしまう雨音の幸せを着実に手繰り寄せています。
 そういう視座で言えば、展開としては焼き直しであっても、それは雨音にとって全てが必要な過程だったとなるわけで、この話は雨音の境遇や回避的な思想性に親和度が高い読み手ほど、うんうんと頷きながら共感して読み進められるのではないか、と感じますね。

 ついでに言えば、きちんとこの家族の幸せが、丁寧に蓄積され膨らんでいく事で、周りの人間にもいい影響を与えていく、というのは理想的な形ですし、それをある程度しっかり組み込めているのも素敵です。
 まあ既存のヒロインは、政治的配慮からどうしても自身の夢を叶える、という部分はさておき、女性としての幸せはぼやかされてしまうのですけど(笑)、この手の作品で男の親友キャラのその後までしっかり補填しているのは珍しいですよね。
 それは二人が他ならぬこの道を、堅実な歩みと苦難の克服を選んだからだ、というのも本編アフターラストのifが示していて、その延長線で更に、と見せてくれるのはやはり流石の丁寧な仕事でした。個人的に、栞菜が楽しそうに漫画を描けているのは嬉しい光景でしたねー。

 外殻的なシナリオ解釈としてはこんなところで、それはそれとしてのストレートな家族の幸せ、雨音とつきこの可愛さ堪能ゲーとしてもやはり中々の性能です。
 尺自体も結構ありますし、シーン数も特にスクールアフター寄りでポリューミーに織り込んでくれたのは、ロリィコンシャスたる私としてはGJ!と褒め称えるべきところです。。。まあアラサー制服コスプレもそれはそれでアリですが(笑)。
 総じて、雨音のやや癖のあるキャラが気にならず、本編のシナリオのテンポが趣味に合った、というならば、今作も最大限に楽しめると思いますし、満足度の高いFDに仕上がっていますね。


キャラ(20/20)


★全体評価など

 基本的に雨音ちゃん大好きー!なので、そのFDで減点があろうはずはないですね。
 むしろ本編より更に甘々度に磨きがかかって、途方もなく可愛い雨音を存分に堪能できましたし、娘のつきこの愛らしさ、素直な可愛らしさも抜群で、一粒で二度おいしい!という感じでした。

 本当にいつまでも若々しくある雨音ちゃんであって欲しいですし、それでいて仕事ではきっちりキャリアウーマンという面も素敵で、強いて言えば今回はそっちの顔が薄かったので、もっとAI絡みの頑張りは見てみたかった気もしますけどね。
 脇を支えるキャラもやはりみんな魅力的で、優しい世界観の中でとてもゆったり楽しめたなと思います。


CG(17/20)


★全体評価など

 完全新規はCG23枚にSD5枚なのでまあ値段相応、立ち絵は服飾が少し目新しいくらいですし、追加要素としては最低限なのではないかと思います。
 勿論それはそれで悪くはないですし、基本可愛いのですけど、しかしアラサーにもなってその猫パジャマかよ!とは突っ込みたかった。。。
 一枚絵も、存外シーン数が多いのでそっちに結構枠を取られていて、もう少し家族の団らんとかプッシュしてもいいのよ?とは思ったけど、妥当なラインではあるでしょう。出来も先ず先ず安定していますしね。闇姫様コスHが大変エッチでよろしい。


BGM(17/20)


★全体評価など

 新規はボーカル曲が3曲のみで、BGMの追加はないようですね。
 ボーカルはどれも本編より少し明るさが増して、よりつく強い未来像を投影した前向きなものになっているかな、と思いますし、その意味で個人的にさほど奥行きを感じなかった面もあるのですけれど、どれも悪くない出来だと思います。
 敢えて選ぶなら挿入歌が一番良かったかな。元々の楽曲がいいので上手くバランスは取れていましたしね。


システム(9/10)

 
★全体評価など

 演出・システム共にほぼ本編準拠で、丁寧で情感が画面からじわじわと溢れてくる素敵な彩りを提供してくれたと思います。


総合(86/100)

 総プレイ時間8時間くらいですね。
 スクールアフターの方がチョイ長くて4,5時間くらい、アフターアフターが3,5時間くらいのイメージでしょうか。
 ダイジェストもそれぞれ1時間くらいあるので、全て網羅すると10時間くらいで、値段の割に尺自体は結構しっかりしている、このシリーズらしい丁寧さが魅力ではあります。
 逆にダイナミズムとかは薄いのですけど、それは本編の流れを踏まえれば当然ですし、雨音のFDとしては十全に近い出来だったと評価していいのではないでしょうか。益々可愛さを増していく雨音ちゃんをたっぷり堪能出来て大満足です。

posted by クローバー at 06:36| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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