2020年10月16日

<感想>鍵を隠したカゴのトリ

 本日の感想は、Cabbitの、鍵を隠したカゴのトリです。

 まあこの作品を語るのに、多大なる延期は触れないわけにはいかんでしょう。
 元々の発売予定から一年あまり、しかも小刻みに延期したので、その点で非常に印象が悪いのは否めません。

 元々メーカー的には、そこまで進行管理が杜撰なイメージはありませんでした。
 だからまぁ、内情含めて色々大変だったんだろうなぁ……と邪推もしてしまいますが、それはそれ。



 Cabbitブランドとしても実に6年ぶりになる本作。
 これまでも独自の切り口と味わいで、魅力的な作品を作ってきましたが、今回はどこまで「らしさ」が感じられたのか、見ていきましょう。


★超私的採点・一言コメント

・シナリオ(19/30)
  悪くはない。ただパンチは足りない。

・キャラ(19/20)
  可愛いけど、君たち隠し事多過ぎ。。。

・CG(17/20)
  質は期待通り。ただ枚数がね……。

・BGM(17/20)
  曲数は超少ない。ただEDの『一秒の窓』が神曲。

・システム(7/10)
  しょぼい。古めかしい。使いにくい。

・総合(79/100)
  売りになる強みがあまりなかった感じ。

★テキスト

 テキストはいつも通りの御厨さん、って感じですかね。
 特に煌きを感じる程ではないけど、丁寧だし優しい感じで、特に弱い者の心の機微を書くのは相変わらず上手です。

 若干デバックが甘くて、誤字脱字がやや目立つのは、これだけ延期した癖に、とはなるかな。
 ただ純粋な読み口としては、特に引っ掛かるところはなくサラサラと読めると思います。

 もっとも、文章構成が素直過ぎるので、ミステリー要素を高める、という面での読み口としては物足りず。
 特に伏線の引き方は上手くなく、全体的に隠し過ぎなので、そのバランスはもうチョイ考えと欲しかったなーと思います。

 まあこれは正直、同じ月にさくらの雲がある、という不幸もあるのだが、そこまで延期させたのも、だからねぇ。。。

★ルート構成

 共通が終わって、そこから一人を選んで個別に突入、という、好感度もへったくれもない簡素な構成です。
 透子だけはルートロックで、三人クリア後にプレイできる形ですね。

 正直ゲーム性としては皆無に近く、一応夜ルートだけ選択肢あるけど、バッドエンド分岐だから嬉しくもない、と。
 一応契機として、事件の真実に対するアプローチをどうするか、という面に対するヒロインのスタンスがあるから、どこに共感するか、というフックはあるけど、それでも構成としては粗雑、ですね。

 個人的にはみおん⇒伊鶴⇒夜⇒透子がおススメ。まあ大差はないけど。

★全体構成・設定考察

@ミステリーとしての「カゴのトリ」
 このタイトル、ぱっと見ミステリーとしての要素が色濃そうに思えます。
 ただ、ちゃんとプレイして見ると、そのミステリー要素はあくまでも状況を整えるための背景であり、メインストリームではなかった印象です。

 一応構成としては、透子以外の各ルートで、少しずつ側面から謎が解明されていく仕掛けにはなっています。
 その上で、全ての要素が透子ルートで繋がって、真相究明と、その先の未来へ、という彩りではあるので、ミステリーの体裁は整ってはいます。

 でも正直、ミステリーとして読むにはパンチが弱いです。
 その理由としては、テキストでも触れたように、伏線の引き方が上手くないのと、どんでん返し要素がほぼない、という点に尽きるでしょう。



 伏線に関しては、基本的にみんな役者過ぎると言うか、読み手にん?と違和感を感じさせるようなフックがあまりに少なく思えたんですよね。

 実際のところ、伊鶴と夜、そして透子には、事件とも関係してそれなりに大きな繋がりがありました。
 透子自身が事件の事を語るのを頑なに拒否している事もあるでしょうが、他の二人もそれを感じさせない振る舞いをしています。

 ただ、個別ルートに入ってもその姿勢がほとんど崩れない、というのも難しいところです。
 本当に一面的な繋がりしか読み手と主人公に開示されず、隠す隠さないの峻別が徹底し過ぎているのですよね。

 勿論全てを開示する必要もないですけど、それでもどこかしら、ほんのりとでも読み手に、あれ?この二人って……みたいに思わせるシーンはあって欲しかったなと。
 勿論私が見落としてるだけかもですけど、印象付けのメリハリが総合的に弱かったのは事実だと思います。



 事件そのものに対しても、夜ルートをプレイすれば大方の背景は見えてきます。
 ただ、透子があそこまで頑なになっているのだから、もう一段何かしらの謎や、どんでん返しはあるかも?と考えるのも不自然ではないはずです。

 でも結果的に、犯人もありきたりのところに落ち付き、透子の態度に関しても、正直そこまで?という内容に落ち着いていました。
 その意味でもやっぱり、これはミステリーそのものがメインではない、というのが窺い知れるところですね。

 ミステリーとしてもクローズド、あくまでも「カゴのトリ」という在り方の範疇で整えられている、と言えるでしょう。
 なので、ミステリー要素の奥行きを期待してプレイすると、そこは少し肩透かしになるかもしれないな、と感じました。

Aキャラの関係性と背景をまとめる
 この作品の主要登場人物は、誰しもが人間関係の傷を帯びています。

 主人公は、実の母に疎まれ、迫害され、透子の助けもあって祖母に引き取られて人間性を恢復するものの、今はその祖母の認知症に苦しんでいます。

 透子は両親を事故で亡くし、親戚との遺産争いで人間不信を拗らせ、特定の人間しか傍に近づけず、信頼できなくなっています。
 ちなみにこの設定、めっちゃハミダシのひよりんっぽいですな。ここまで延期したこっちが悪いとはいえ、何故に根幹的な部分で綺麗に上位互換とバッティングするのか(笑)。

 夜は現在進行形で母親に迫害され、その母の恋人からも危険な視線を感じて、一時期伊鶴の家に避難させてもらっていました。
 その状況の改善の為にあれこれ画策し、透子も絡んできて、けどその結果色々と追い詰められてしまう、というのは皮肉なものです。

 伊鶴も妾の子で、親族にも実の父親にも疎まれ、実の母親は彼女を残して出奔してしまって、人生に自暴自棄になっていて。

 みおんだけは、家族の愛情は普通に得ていますが、その代わり虐めにあった過去があり、その結果、助けてくれた透子以外、対人恐怖症のきらいがありますね。



 その辺りを見ても、シンプルにこの作品は、弱く傷ついた者同士の、羽を休める箱庭を作る事と、その中で寄り添い合い、共感し合って、傷を少しずつでも癒していく、というのが主題になるのでしょう。
 その中でも特に、主人公と夜の問題は今を脅かしていて、その解決の為の行動が、余計に彼女達を鳥籠に繋ぐ要素になっているのは不憫な話です。

 ただ逆に、そうやって余計な人間を介さずに、彼女達だけの生活を紡ぐことでしか得られない幸せや充足も間違いなくあって。
 この鳥籠館への透子の幽閉は、一応伊鶴の父親の意向らしいですけど、或いはそこも陰ながら、伊鶴がなにかしらアプローチしてくれていたのかもしれませんね。

 夜との深夜の邂逅は偶然かもしれませんが、意外とこの作品、伊鶴がいなかったらどうにもなってない、という部分は大きいです。
 あの時点で夜を保護しなければ、早々にもっと悲惨な状況に陥っていたかもしれないですし、透子の悩みも解消されず、主人公との関係性に決定的な亀裂をもたらしていたかもしれません。

 勿論そのお節介が、彼女自身を救うきっかけにもなっています。
 その点では、やはり能動的に変わる努力をしないと、物事は動いてくれない、という冷徹な真実を示唆しているとも言えますね。

 けれど、幼い時分に愛着を傷つけられた存在は、その能動的に変わる、というのが一番難しいわけで……。

B助けを求める事のハードル
 この作品のタイトルである、鍵を隠したカゴのトリとは、勿論一面的には、事件の秘密を頑なに守ろうとする透子の在り方を示唆しています。
 けどそれ以上に、自身が置かれた境遇に対して、自罰的、内省的に全てを捉え、人を信じる、頼る事が出来なくなっていた主人公やヒロイン達の生き様そのものを暗喩的に示している、とも言えます。



 正直な話、この作品の真相を垣間見て、意外性の薄さに拍子抜けすると同時に、君たちそれはあまりにも警察の捜査能力を信用してないね、とは思ってしまいます。
 ぶっちゃけあんな稚拙な陽動、ミスリードに警察は引っ掛からんだろ、と思うし、むしろ彼女達が鍵を隠してしまった事で、逆に操作を面倒にしてしまっているとは感じるのですよね。

 真犯人の夜ママにしたって、どう見ても用意周到、ってタイプじゃないし、むしろこれくらい攪乱があっても、いくらでも証拠なんて挙がりそうなものだけどなぁ、とも。
 それに実際のところ、夜にはアリバイ要素もきちんとあるわけで、その辺り透子くらい頭のいい子が想像しなかったのか?ともなるわけです。

 だからそれも踏まえて言えば、やっぱり事件そのもの、ミステリーの部分はあくまでも舞台装置なんだな、と。
 本題は、そういう追い詰められた状況で、誰かを頼る事が出来ず、自分だけの殻に籠って強引な着地点を導いてしまう精神性と、その解消にある、という事です。



 この作品では、みおんを除き、主要キャラがみんな、最も近しい存在から信頼を裏切られた過去があります。
 特に親子関係でそれが起きている面々は深刻ですし、その傷は、誰かを安易に頼ってもまた裏切られる、傷つけられるという恐怖心に連結してしまうのは必定でしょう。

 結局それは、一時的に共犯関係を結んでいた三人の間だけでも難しかった、とは言えます。
 透子が最初に門戸を閉ざしたとはいえ、それに対して、夜も伊鶴も不必要に踏み込む事はせず、曖昧な現状を良しとしていました。

 まあそれは、思いの外鳥籠館での生活が楽しかった、という面での後ろ髪もあったかもですが、根底的には、自分から相手の弱さに踏み込んで、カウンターを食らう恐怖に打ち勝てなかった、となります。

 ただ、互いの傷を暴くような踏み込みは出来ずとも、傷に寄り添い、共鳴していく事は出来て。
 そしてただ一人、その輪の中に主人公と言う男子がいた事は、おそらくヒロインだけだったら起きえない関係性の変化と化学反応をもたらしてくれている、と言えます。

 この場合も、一概に、共感する部分が大きいのだから恋に発展するのも簡単、とは言えません。
 ただ、頑なでからっぽであればこそ、そこに大切にしたいものが流し込まれると、一気に満たされて、飛躍的に変化する、という面もあります。

 特に夜と伊鶴はその辺の機微が上手くコントロール出来ていたな、と思います。
 かつ、プラスワンでの難しさを紡いで、本来なら最優先でそういう対象になりそうな透子の鍵、としていたのも秀逸で、その辺りの人間関係のバランスと心模様を活写するのは本当に上手なんですよねぇ。



 ともあれ、恋愛の開始を契機に、それぞれの心情の変化、状況の変化を及ぼす、という意味では、恋愛ADVの正統的な構図とも言えます。
 だから、繰り返しますけど、ミステリー要素よりはヒューマンドラマ要素の方が強い作品です。

 特にこの作品、救いのない部分は本当になくて。
 夜は最後まで母親と断絶したままでしたし、主人公の祖母にしても、きっともう主人公を思い出してくれることはないのでしょう。

 それでも、自分の過去を象った全てを受け入れて、分かち合い、痛みを携えながら未来に向き合っていく。
 少しずつ少しずつ、新たな家族の絆を糧に、鳥籠の中で傷を癒し、いつか飛び立つ日を夢見る。

 基本的に受動的で、自分の境遇を自己責任と諦め受け入れてしまっている彼らは、その変化の兆しを掴むのも並大抵の簡単さではありません。
 きっとそれは、一瞬だけ窓から差した光のように淡いもので、それを掴む事が出来たのは本当に奇跡的な幸運で。

 でもきっとそれは、少しずつでも彼らが運命に対して自分なりに立ち向かい、足掻いていた事の奇跡的な化学反応でもあるのでしょう。
 そういう運命論的な視座で考えると、このシナリオはかなり良く出来ていますし、それを踏まえてのED曲が抜群の出来で、個人的にはそこを最大限に評価したいかな、と考えています。

★個別ルート感想

@ルート評価序列・みおんルート
 個別評価は、透子>夜=伊鶴>みおんくらいですね。
 やっぱりどうしても、本質的な部分での傷の位相が違うみおんだけは、蚊帳の外、とまではいわないですけど、数合わせのイメージは強いです。

 勿論みおんの存在が透子の支えになっていた、というのも確かですし、その絡みでの面白さはありますが、同時にその色が強い分、主人公とコロッと恋愛に踏み込めるの?というのもあって。
 みおんが持っている鍵だけでは、事件の真相に対しての何にもアプローチ出来ない弱みもありますし、畢竟シナリオとしても、現状維持の流れの中での未来像、になってしまうのは仕方ないのかなと。

 しかし、透子の意地に付き合って離れ離れになるより、二人の生き方を大切に、という方向性そのものはいいですし、いつか透子の受け皿に、という姿勢も評価は出来ます。
 ただそれはあくまで思想的な部分であって、実際問題、リアルに10年も監禁されるのかよ、という話でもあるのですよね。

 他のルートはそこまで時間軸が飛んでいないのでまだしもなんですが(夜は違う意味でイタタタっ、ではあるけれど)、本気でこのルートは子供三人作って、みおんが肝っ玉お母さんになってしまってますからね。
 透子が鍵を掛けた秘密って、そこまで重い処遇を受け続けなくちゃいけないのか?ともなるし、そもそも10年、というスパンも中途半端。

 少なくとも殺人事件なら時効まで15年以上はかかるはずだし、大体透子がだんまりしただけで迷宮入りとか、確かに警察無能だなオイ!ってならざるを得ないですからねぇ。
 つまり、あくまで透子の覚悟を踏襲しただけで、どうしても現実性と照らし合わせてのリアリティが薄い部分を、そのまま愚直に墨守してしまったいるのも、この二人らしいと言えばそうだけどうーん、となったりするのでした。

A夜ルート・伊鶴ルート
 夜ルートに関しては、好き合う流れと心理のさやかな触れ合いは、凄く情緒があって好きです。
 実際に一番シンパシーを感じやすいヒロインだとは思いますし、見た目の雰囲気とはあまりに違う不遇に対して、守ってあげたいという想いが読み手にも浸潤しやすいな、と思います。

 まあ実際、伊鶴みたいに心の鍵が強いタイプにも通用した、庇護欲をそそる儚さがあるわけでね。。。
 なんというかこう、変な意味で人を惹き付ける魅力があるタイプと言うか、だから変な虫にも取り付かれると言うか。

 うーん、そう考えると、CVというよりキャラデザの方がズレが強いのかもしれませんな。
 まあヒロイン全体のバランスもあるし、むしろあえてそういうアンバランスさを意識しているのかもだけど。

 私の中の雪村とあさんって、このブランド系列で言うなら、はるとま2の星みたいなヒロインがど真ん中なんですよね。
 ただ内面的に言えば、そういう特定の層に刺さる儚さ持ち、という面ではフィットしているのかもだし、なんでこんな下手するとパリピ感まである見た目なのかい?とは思ったり。



 その辺りは余談だけど、ともあれそんな夜だから恋愛面では一番と言っていいくらい楽しかったですね。
 ガチャ廃人なのはともかく、基本的なスペックはすごく高いし、甲斐甲斐しいし、エロ可愛いし、普通に暮らしていく分には文句なしの恋人感だったなと。

 ただどうしてもシナリオの犠牲者的な面はあるし、唯一バッドエンドもあるように、後味が良くないのはどうしてもあって。
 まともな方のエンドでも逃亡だし、でもそこで堂々と戦えずに逃げるしかないのが、この二人だけでは打破できない精神面の壁、とも言えるのでしょう。



 伊鶴ルートも、全てにおいて捨て鉢な彼女を放っておけない、というスタンスからの関係性の変化、ギャップ的な魅力はかなりのものでした。
 普通に好き合ってからの可愛さは抜群でしたし、その中で少しずつでも周りに心を開いていく様は味わいがありましたね。

 ただ事件としては、このルートで開示される情報は限定的で。
 というか、結局恋人になっても、夜も伊鶴も事件前の関係性については口をつぐんでいるわけで、その辺りのバランスもやや強引と言うか不自然と言うか、ってのはある。

 秘密を持つことがそのまま壁になる、という構図の透子ルートの文脈を考えると、みおんはともかく、夜と伊鶴は幸せそうに見えても、どこかに屈託と爆弾を残したまま、という危うさは感じるところですね。

B透子ルート・まとめ
 透子というヒロインって、なまじ行動力も決断力もあるだけに、かえって余計に状況を難しくしちゃうようなめんどくささはありますね。
 根底には人間不信、特に大人に対する拭えない不信が強いが故に、余計に色々抱え込んでしまうし、大切な相手には逆に踏み込めずにうじうじと抱え込んでしまうし、うん、めんどくさい。。。

 もっとも、主人公との関係に関してはその危惧も正鵠を射ていて、だからこそどうしても誰かの助けが必要だった、というのをずっとわかってはいたのでしょう。
 だからこそ、夜と伊鶴に出会って、その苦悩を知った事は一種渡りに船だったというか、互いに対等に、ちょっとずつ弱味をさらけ出すだけなら、という踏み込みが出来たのは、透子らしい割り切りでもあったのかなと思います。

 でも結果的にその段取りが、かえって夜を追い詰めかねない状況をもたらしたことに対する同義的な責任を、彼女は重く感じていたのでしょう。
 ぶっちゃけ透子のやった事って、証拠の隠蔽に、嘘の自供による捜査攪乱ですから、結構現実的に見て罪に問われるラインの行動ではあるのですよね。

 だけど、夜が誰かに陥れられようとしているとわかっても、それでも夜自身がそれを受け入れてしまう弱さを持っている事もきっとわかってしまっていて。
 自分が手を拱いたら、本当に夜が犯人にされてしまう、そういう危機感と責任感も含めて、透子らしい頑なさと歪さではあります。



 けど、その証拠を主人公との絆の証に託した、というのが、乙女らしいと言うか、いじらしいと言うか。

 最悪、主人公になら暴かれてもいい、という想いは、心のどこかにあったのでしょうね。
 むしろ、自分の秘密を暴かれる事で、その時初めて、自分も主人公の秘密に踏み込む資格を得るとか、そんなめんどくさい事を考えてそうで。

 でも普段はそういう部分を全く見せずに、飄々と、泰然として見せているのが透子というヒロインの魅力でもあります。
 等身大の透子は、その印象よりも普通に愛らしく、弱さもあって、一途な女の子でしたけど、そのギャップも含めて素敵だったなと思います。

 彼女自身も、今回の件で反省すべき事、自分の在り方を見つめ直す契機は訪れたと言えます。
 どこか超越した立ち位置から、心の鍵を開けて降りてきた事で、きっとこのルートでの鳥籠館のみんなは、それぞれに相互作用の中でゆっくりでも救いを得ていくのだろうな、と素直に思えました。

 その点ではやはりグランドと呼んでいいルートですし、面白かったですね。
 まあもう少しミステリーとしての奥行きがあればなお良かったですけど、本質的なテーマ性はしっかり組み込まれていますし、綺麗な締めくくりだったと思います。



 総合的には、やっぱりどうしても透子がラスボス、と言う中で、他ルートは奥歯にものが挟まった様な色合いになってしまっています。
 その上でのラストも爆発力がある、と言う程ではないので、そこまで高い評価はし難いでしょう。

 ただ心の傷を支え合う、というスタンスの中でのキャラ像、関係性の機微は本当に好みでしたし、好き嫌いで言えば結構好きです。

★キャラ

 ミドルプライスでやや個別も短め、というのはありますし、どうしても弱さの方に踏み込みが偏るのはあります。
 半端とは言えミステリ要素との兼ね合いもあるので、キャラそのものの魅力、という点で踏み込み切れているか?というと、流石に絶賛できるものではないでしょう。

 個人的にも、そこまで悪くはなかったものの、思ったより透子が伸び切れなかったなぁ、というのはあり、あと一歩足りないくらいの評価にしておきます。

★CG

 通常39枚に、SDが7枚くらいですかね。
 質は悪くないですけど、流石にミドルプライスとは言え、枚数的にはちょっと物足りないですね。50枚くらいは欲しい。

 立ち絵は透子と伊鶴がお気に入り。パジャマ可愛い。
 背景はやっぱりかなり簡素に感じますな。特にお屋敷の豪華絢爛、ってイメージがあまり伝わってこないのが残念。

★BGM

 ボーカル曲2曲に、BGMは10曲。
 ボーカルはともかく、BGMはめっちゃ少ないなぁとは。まあこのブランドはいつもっちゃいつもだし、作風的に必要最低限はあるけど。

 ボーカルはどちらもかなりいい出来。というかそうじゃなきゃこの点数はつけられない。
 しかしOPは霜月さん、という事は、いつ収録したのやら……って話にはなりますね。。。霜月さんらしい透明感と神秘性が色濃く出ていて素敵な曲。

 ただそれ以上にEDの出来が秀逸。これは本当に情感豊かで、優しくも切なく、ボーカル曲も素晴らしい。
 柳さんってこのブランド以外であんまり見た事なかったけど、個人的にはリディー&スールのPrismが大好きで、すごくいい声だなぁとあの時も思ってたんですよね。

 今回も本当に鮮麗で、響きの奥深さが素晴らしく、噛み締めるほどに素敵な曲だなぁと聴き惚れています。この曲のおかげでシナリオ含めて3点は上乗せされてるね。
 ただきちんと調べてみたら別名義もあるのね。というか風の唄の人かい。耳馬鹿を露呈。いや今更だけどね、中の人とかも名義変わったら全然わからんですし。。。


★システム

 演出は流石に簡素で、目立つものは少ないですね。
 実際昔ながらのスカイフィッシュ演出だしなぁ、と言う所で、その中で唯一私が好きな、立ち絵のそわそわモードもあまり使われていなかったのが地味に残念。あれ可愛いのに。

 システムもかなり微妙。
 設定から戻すのに色々不便が多いし、行き届いていない部分も結構あるので、この時代では流石に評価出来ないでしょう。

★総括

 総プレイ時間は12時間くらい。
 共通が3時間くらいで、透子以外が2時間、透子が2,5時間ちょいと、後はおまけなど、って所でしょうか。

 ミドルプライスなので尺が短めなのは仕方ないし、その中で最低限のやりたい事は詰め込んである、という感じ。
 ミステリーとしては「可」程度の出来だけど、弱者救済と成長の物語としては結構味わい深いし、そんなに悪い物語ではないです。

 まあ長期に渡る延期に見合う程の出来か?と言われれば、流石にそんなことはないですし、点数通り総合的にも微妙な出来なのは確かで。
 少なくとも9月の新作、という括りでも、これを買うなら他にいくらでもいい作品はあるよ、となってしまうのですよね。。。

 なのでおススメ、とは言い難いですが、ただ点数以上に私の好みにはフィットした作品、とは言っておきましょう。


posted by クローバー at 07:03| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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