2021年03月07日

【感想】冥契のルペルカリア

 今日の感想は、ウグイスカグラよりリリースされた演劇を題材にした群像劇・冥契のルベルカリアです。
 体験版がめっちゃ面白くて、文字通り原点回帰+それまでのノウハウを全部詰め込み、最適の素材を選びました、ってイメージだったので、文句なしに今年発表されていたタイトルの中では断然期待していました。

 実際の内容はどんなだったか、期待に応える出来だったのか見ていきましょう。


★超私的採点・一言コメント

・シナリオ(25/30)
  構成は流石だが、バックボーンが過去作に依拠し過ぎかも

・キャラ(20/20)
  毒々しい感情も含めて、流石の造型としか言えん

・CG(17/20)
  なんだかんだで結構好き

・BGM(18/20)
  作風にはしっかり噛み合っている

・システム(8/10)
  相変わらず最低限

・総合(88/100)
  流石に紙の上は超えられず、だが充分名作

★早わかり・作品の長所短所

・長所
  1. 非常に泥臭く、感情揺さぶられる人間ドラマ
  2. 無駄なキャラがいない完璧な構成の群像劇
  3. ミステリ要素もそれなりに
  4. 演劇シーンがとっても面白く、声優さんの名演が楽しめる
・短所
  1. 負の感情の掘り下げがうますぎるので、本気で痛々しい
  2. 例の如く原点回帰でキャラルートはバッドエンド気味
  3. システムと演出は作品の迫力に見合ってない
  4. これリトバスじゃん、と言われそう
  5. ファンタジーの設定を過去作に求めているので、新規様への説得性が薄い

★テキスト・ルート構成

 テキストはいつも通り、回りくどく物々しい感じです。
 誰もがそれぞれの複雑な感情を抱えての物語なので、振り返ってみるとあの独白が、みたいなイメージはしっかりあって、本当に無駄のない構成ではあるのですけど、パズル度合いが高いのでそのあたりは丁寧に読んでいかないと、というめんどくささはあるかなと。

 勿論文章力は折り紙付きだし、「読む」ことが好きな人にはたまらない部類だと思います。
 ある意味でエロゲの中でも、「読む」楽しみの度合いが強いメーカーなので、その辺はいつも通り人を選ぶ感じで、パラレロでも隠し切れていなかった部分を今回は改めて開き直って、刺さる人に刺さればいいと割り切った作りですね。


 ルート構成もほぼ一本道で、ヒロインルートに脱落するとバッドエンドとかかりそめの幸せエンドとか、煮え切らない終わり方になるのは1~2作目を踏襲してますね。
 構成自体は結構シンプルで、それが複層的に多彩な要素を引きつけてから待って複雑に見せているだけなので、ひとつひとつ解いていく過程で後半は解決編が加速していくイメージです。

 多分ルートロックはないと思うので、最初からトゥルーエンド行けるとは思いますが、色々想いのエッセンスもあるので、出来ればしっかり選択肢毎にヒロインルートに脱落していった方がわかりみが深いと思います。
 特にナナルートはそのきらいが強いかもです。ナナルートを見ずに最後の叫びの価値はない、と言ってもいいくらい。。。

★シナリオ

・1~5章まで
 共通序盤に関しては、前作のパラレログラムにも似た青春群像劇、という色合いを強めに出してきています。
 勿論世界像としては、この時点でみんなが虚構に囚われ、その上で幾多の虚構認識によって世界が構築・強化されている状況ではあり、その中でそれぞれがある程度理想を体現する場所として、この世界で生き生きと活動している感じですね。

 また題材を演劇に置いているので、演技に仮託してそれぞれの複雑な想いや認識などをサラッと提示したりして、少しずつ不協和音、認識のずれを重ねていく、という構築も流石の丁寧さでした。
 それ故に普通に青春的な物語としても面白いけれど、そこにじわじわミステリ的な要素や不気味さが食い込んできて、本当に複層的な仕上がりになっているなと思います。

 まぁ多少突飛な流れ、と感じる向きもあったり、解釈の難しさはあるのですけどね。
 ちなみにランビリスって、ギリシャ語で蛍という意味らしいですが、蛍という要素が紙の上との連関性を感じさせると同時に、語感からはラビリンスのアナグラム、つまり迷宮的な要素も醸し出していて、このあたりの言葉遊びのチョイスもセンスがいいですよね。

 基本的に5章まででは、様々な虚構が剥がれ落ちて、つかの間の幸せから厳しい現実に立ち返るまでの、ひとつの集大成としての演劇を組み立てるまでのお話です。
 世界の構造が、それからの未来の為の演劇を求める意思の反映にも繋がっているので、最初見た時は演劇シーンが綺麗にそれぞれの想いとリンクするなぁと感心して楽しんでいたのですけど、まぁ結果的にはそりゃそうだ、ってところですね。

 個人的に演劇を題材にした作品で、ここまで演劇そのものを楽しめたのはあまりない、というくらいに、フィリア劇はお気に入りだったし、大袈裟すぎるくらいの中の人たちの熱演も心に響いたけれど。
 けど結果的にはそれ自体が、本当に率直な魂の叫び、それぞれの生きる道しるべを示していたんだなぁと思えば、確かにこの物語は、絶望から立ち上がる強さを得るための猶予と想いの整理の為に紡がれた、という事なのでしょうね。

・6~最終章まで
 6章からは、ヒロインルート脱落も含めて様々な切り口から、人の心の弱さと複雑さ、そしてそうならざるを得ない環境の在り方などを考えさせられます。

 この作品のキャラで、ある程度人生のバックボーンに問題を抱えていないのって、せいぜい理世と双葉とハナくらいでしょうか。
 それ以外はやっぱり家庭環境がもたらす、愛という概念に対する理解の歪みを多かれ少なかれ抱えていて、それ故にきちんと伝わらなかったり、すれ違ったり、破滅的に道を踏み外したり、まぁ痛々しさに満ち溢れた構図になっています。

 それでも、より不幸な現実に立ち向かうためには、自分の中から沸き起こる真実の叫びを、願いを、そしてなにより生きたい、いう渇望を掴み取らなくてはならなくて。
 それだけ思いつめたものを抱えた面々が、あの時にあの場所に集っているのもまた奇跡的なものとは思いますが、それはある意味では未来が呼び込んだ、という部分もあるし、一方では致命的な間違いとなる在り方が、他方では誰かの救いになっている場合もあるのですよね。

 未来が氷虎で在らざるを得なかった事が、二人の兄妹関係を完膚なきまでに狂わせてしまったけれど。
 一方で彼女がいた事で救われた琥珀、という存在が、この物語での、一元的な善悪で物事は語れない、人間の持つ感情の複雑さと両極性を、具象的に提示しているようなイメージです。

 世界像としては本当に、リトバスのリフレインを思い出しますよね。
 ただあの作品はもっと純粋な想いで構築されていたけれど、こちらは本当に愛憎や未練、執着など、負の感情山盛りの中で、それでも色々切り取って、虚心に見つめて最後に残るものは、という色付けになっているので、そこはやっぱりこのメーカーらしい独特の個性を体現しているなって思います。

 トリックとしては奇想天外というほどではなく、またその種も、白髪赤瞳という、アルビノの神秘性という部分に立脚した、過去作の設定を援用している形になります。
 なので正直ここは、特に御新規様には説得性が薄いだろうな、って思うし、このタイトルでも主人公と未来の外見の大きな違いは、それなりに関係性になにか因果をもたらしているのかな、と思っていたら、その辺スルーだったのでそれは肩透かしでした。

 まぁこの設定の場合、母親が狂っていて、二人も狭い世界の中でしか生きていないから、そもそも真っ当な意味での阻害や迫害とも自然に距離を置けていた、という見立ては出来ますが。
 ただ主人公は普通に黒髪っぽいのがえちぃCGからは推察できますし、未来の特異性、というものはもう少しクローズアップして欲しかったなぁ、ただその見た目だけで魔法使いになれちゃうのってどうなの?とはなりますかね。

 ラストは本当に、最悪ヒロインはみんな助かって、少しずつでも前向きになろう、という色付けは出来ていて。
 ルベルカリアという要素も、ひとつの区切りを終えて、新たな結びつきを胸に、とう意味ではピタッと嵌っていますし、これはこれで綺麗なまとめだったと思うけど、その後が見られないのは残念だなぁ、って素直に思ってしまいます。。。

 虚構世界でのあれこれをどこまで記憶しているのか、っていうのも、ナナの母親との関係のくだりを見ると、それなりに色濃く残っている感はあるわけで。
 琥珀のもらいものの演技の才能とかもどうなったのとか、気になる要素結構あるし、改めて誰とくっつくのかも気になるよね。。。個人的にはやっぱり正ヒロインはめぐりなのかな、って気もするけど。

・キャラルートざっくり
 ここに関しては本当にどのルートも切ないばかりの虚構、ではあるのでサラッとにしましょう。
 ただナナに関しては、母親との関係性や、自身の恋心の源泉の悩み、という部分をむき出しに語っていて結構面白かったし、その愛憎があればこその、最終幕での助けを求める叫びが光った、というのはありますけどね。
 個人的にこの作品で、あの「まだ、幸せになってないんだよーー!!」は一番好きかも。どうも全般的にナナに肩入れしてしまうきらいは強かったけど、他が強いキャラが多いだけに、一層その弱弱しさの中で時々キラッと迸る熱情が好ましかったのかも。

 理世はある意味で一番真っ当な恋愛像だし、だからこそ世界にそのまま受け入れてもらえない、というのも皮肉な話だなぁって。
 まあ彼女自身の抱え込み過ぎな責任感や贖罪意識の投影でもあるとはいえ、ある意味では演劇の残酷さを一番象徴しているキャラなのかも、って思わせる内容でした。

 めぐりに関しては彼女自身の逃避の色合いが強い内容だし、琥珀は逆に主人公の逃避のスケープゴートだから、それぞれ固有のヒロインの魅力が出ていたか、というとそうでもなかったんだよなぁ、って。
 勿論その中でも個々の愛情の在り方と向き合い方は色々思うところあったけど、物語の虚飾が剥がれてクライマックスに突き進む上で、そのレールから外れきれないつくりであるのも影響はしているのかも。
 まぁある意味では5章までで、この二人はこの二人なりに自分の想いを突き詰めて向き合い、吐露もしているから、バランスは取れているのかもですけどね。

・世界像&愛着論ざっくり考察
 世界像そのものは本当に都合のいい、空想をそのまま現実という認識に置き換えられるようなものでしたね。
 それだけの魔法を行使できるという論拠を白髪赤目だけに求めるのもやや強引ではあり、増して死して後に現実を覗き見て、大切な人の想いを救うために組み上げた、というのも中々飛躍した展開だな、とは思います。

 まぁそれだけ未来って想いが強かったと言うか、土台が虚であるだけに、そのエネルギーとなる感情の純度がめっちゃ高いんだろう、というのはあります。
 そのあたりをどこまで理解できるかが鍵ですけど、それはやっぱり土台として家庭環境がもたらす歪みを考えないと、とはなりますね。

 基本的な生物構造として、子供は親に無償の愛を注がれ、自分が愛されている、という自信を揺らがずに抱く事で、強く真っ直ぐ、少々の失敗でも折れずに、困難にも立ち向かう力を得る事が出来ます。
 この作品の場合の困難は本当に社会的にシビアな、近親相姦や同性愛が主軸なので、それはそれで難しい話なのですが、まぁそもそも近親相姦的な在り方って、本質的にはまともに愛着が形成されていれば中々発生しにくい、というのも事実なんですよね。

 この作品だとひたすらに二人の世界観の中で、兄妹という関係を根源的な結びつきとして絶対視しているきらいはありますけど、あくまでもそれは当事者的な主観です。
 物語的に言えば、本来親から得るはずの真っ当な愛着が形成されず、結果として絶対の信頼感を持って寄りかかれる家族が兄妹だけ、という構図の時に、本来の矩を超えた感情や、勘違いが構築されやすい、という事になります。

 実際物語的に、姉妹と、という構図を紡ぐなら、これが一番簡単ですし、シンプルに説得性があるのですよね。
 少なくとも瀬和家の母親は完全に親としては狂っていて、子供を自己愛の投影以外の何物としても扱っていないモンスターなので、その歪の中でお互いに過分な想いを醸成していくのは私としても素直に納得できます。

 しかしこの作品のえぐいところは、そこに演劇要素が絡んでくる事で、シンプルにその生活が辛いだけ、と規定されていない所なんですよね。
 特に主人公の場合は、最初にビギナーズラックで成功を収めてしまって、努力が報われる楽しさ、舞台で脚光を浴びる快感と、それに伴って母親を喜ばせる事が出来るという実感も得てしまって。

 それは元々兄妹愛だけで埋まっていた想いの中に、違う色が紛れ込んできた、と言えます。
 同時にある程度社会を知る年齢になり、その想いが異端であると気づけば、その比重は抑え込む方向に進んでいくのは普通で、けど未来の場合はそういう想いを醸成せず、純粋にその想いだけ抱えていたからこそ、二人の想いに温度差と序列の差異が生まれてしまったわけですね。

 まぁ正直ビギナーズラックに嵌ってギャンブルをやめられなくなった人、みたいな情けなさが主人公にあるのも確かで、そういう俗物的な要素が人の純度を下げる、弱くするというのは痛感するところです。
 だからこそ、純度の高い未来の想いを受け止められず、俗物的な歪な形でしか理解しようとしなかったのは確かで、まぁでもそれを主人公の責任、とするのも流石に可哀想な話ですからね。ある意味で、なにもかも噛み合わせが悪かった、という感じ。

 当然作品としては、狙ってそれを選んでいるのだから残酷にもほどがあるとは言えますね。。。
 本当に、色々こじれる前に二人の感情が素直に結びついていたならば、或いは社会的な成功を盾に、母親の支配から抜け出す生き方なんか摸索できなかったのか、なんて思ってしまいますし、このあたりの僅かなボタンの掛け違えが、ここまで救いのない破綻に繋がるというのも、やはり生育環境がもたらすバランスの悪さに起因しているとは言えるのでしょうね。

★キャラ・CG

 キャラは本当に、ただ可愛いとか愛でていられるわけもないえぐさ満載で、誰しもが抱えている心の闇を容赦なく抉り出してくるから、本当に痛々しいけれど、めっちゃ存在感はあって目が離せない、という感じですね。
 それぞれがかなり非道だったり、救いのない思想に染まっていても、それを極端に悪い方向に振らず、それぞれの価値観の中での正しさを求めて、という色付けに持ち込んでいる力技は流石の一言です。

 なので読み手としても、単純に好き嫌いの二元論で語りにくいところはあるけれど、少なくとも登場キャラのそれぞれの掘り下げはしっかり出来ていて、無駄な要素が一つもない、という意味では素晴らしい出来でした。
 勿論シンプルにもっとヒロインとイチャイチャさせろや!!って思いはなくもないけど、それが売りではない以上仕方ないのかな、とは思います。でもその辺りのボリューム、という部分でも、紙の上よりは簡素なので、そこは勿体なかったかも。

 ヒロインとしてはどれだけミーハーと言われようとナナは可愛かったし、めぐりも超好み。
 未来や琥珀も良かったけど、立ち位置が色々厳しいってのもあるしね。理世はある意味唯一の安全圏ではあるのだけど、だからこそインパクトに欠けたきらいはある。

 存在感、という意味では、実は双葉が一番強かったかもしれないですね。
 彼女の存在が、ある意味ではこの世界の不条理と、けれどそれに真っ直ぐ向き合って、強がって生きていく在り方の指針になっていたとも言えるし、朧あたりに理想の関係性、と評されるのも納得できるスタンスでした。


 CGは全部で85枚。
 立ち絵などもそれなりに差分はあるけど、服飾含めて多彩という程ではないし、まぁ値段からするともう一歩とは。

 出来は相変わらず癖はあるのだけど、時々ハッとするほど可愛い一枚絵とかあるし、結構好みではあるのですよね。
 この点ではナナと理世が安定していい出来だったかな、と。演劇での迫力あるシーンも良かったけどね。

★BGM・システム

 ボーカル1曲とBGM26曲なので、こちらも値段からするともう一歩、せめてED曲は欲しいよね、とは。
 まぁ出来は流石で、日常の楽しいシーンなんかもあるけれど、やっぱり真骨頂は哀切・慨嘆・諦念を色濃く出した、終末を予感させる方向性の曲調にあるかな、という感じです。

 システム的には本当に最低限。
 まぁ仕方ない面もあるだろうけど、演劇を題材にするならば、もう少しそのシーンでの演出を一枚絵頼りではないつくりにも出来なかったか、という面はあるので、そこは勿体ないかなと。

 なまじ作中演劇の出来が抜群だっただけに、総合力部分で引けを取ってしまうのは残念でした。
 ムービーの出来はいい感じ。相変わらず色使いが絶妙だなぁって思います。

★総括

 総プレイ時間20時間。
 結構設定としてコンパクトにまとまっているので、サクサク進めればもう少し短かったかもだけど、声優さんの熱演を無視できずにじっくり聴いてしまう、というのはあるよねと。

 特に今回は、奏雨さんと小波すずさんの熱演は光ってましたね。小波さんはこれまでの印象をガラっと覆されたタイトルになりました。
 全体的に期待していたレベルのものは見せてくれたけど、直前に紙の上リプレイしてハードルを上げてしまったせいか、捻じ伏せられた、という程の破壊力まではなかったかなぁ、という感じです。

 どうしてもメーカーファンでないとわかりにくい部分があったり、間口の狭いタイトルではあります。
 ただやっぱり今時にこういうタイトル作ってくれるメーカーは本当に貴重なので、少しでも悲劇的な物語に興味があるなら、是非紙の上の魔法使いとセットでプレイしてみてください、って感じですかね。


posted by クローバー at 08:22| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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