2017年09月26日

これにて後顧の憂いなし

 ブルーリフレクションは無事にクリアできました。
 まあダンジョンとかあるタイプの作品でもないから、ほぼステータスマックスにした上での終盤はさくさくとシナリオ進めるだけでしたし、それほど重みがあるストーリーでもないですからね。
 勿論ある程度予想出来たとはいえ、あの二人の境遇と思い入れには切なくも愛しいものがありましたし、それを受けて、そしてみんなの励ましを受けて前に進む日菜子の姿も凛々しく、王道的だけど非常に楽しめる、本当にキレイな作品だったと思います。

 戦闘とかは結局面倒でイージーで貫いた分楽勝過ぎたのはありますけどね。基本強力なフラグメントや、ステータスアップアイテムを趣味全開で全部ライムに投入していたので、適当にライムがぶん殴ってるだけでラスボスもあっさり撃沈するという。。。
 まあ当然こういうアイコン型のバトルシステムですと、自分達の手数を増やすためのバフと、相手のそれを削るノックバック・デバフの使い方は重要になってきますし、その辺の基本はアトリエシステムと似通ってるから問題なく使いこなした上で、ですけれど、難易度としてはそんなに高くない方だと思います。
 MPや体力も一戦ごとに全快するぬるま湯仕様ですし、まともに敵から攻撃された記憶がないからどのくらいダメージがあるのかも定かではないですけど、ある程度習熟がなくても気楽に楽しめてサクッと終わる感じですね。

 キャラはみんなとても可愛くて、澄んだキレイさに満ちていて良かったですね。やっぱりこの人の絵はアーランドシリーズ以来ですけど、独特の雰囲気があっていいですよね。
 隙あらばフェティッシュな際どいシーンを突っ込んでくるので、地味に地味に変なエロゲよりゾクッとする時があるのが困りものですけど(笑)、そういう変態紳士的な楽しみ方も堪能しつつ、基本は女の子同士の不器用な時もありながら真っ直ぐに心をさらけ出す青春友情ストーリーが楽しめて満足です。

 メインの三人ではやっぱりなんだかんだでライムがとびきり好みだなぁと。
 性格的には多少剣呑な時もあるけど、それだけ想いが純粋で一途で強い、とも言えますし、この見た目の可愛さは本当に反則レベルで素晴らしい。何気にシックな黒チェック下着なのもめっちゃ似合ってて最高でした。
 ユズの明るさも、日菜子のクールなようで情に厚いところも当然すごく好きでしたよ。

 サポーターもみんな個性豊かでとってもキュートでしたけど、敢えて一番を決めるならやっぱり更紗かなぁ。こういうライバルであり親友、そしてツンツンしているようで心優しく心配してくれるバランス感はすごくいいですよね!
 後は梨香と史緒、有理あたりもかなり好みでした。なんか見た目お嬢っぽい子ばかりだな。。。

 グラフィックや音楽も流石のクオリティで素晴らしかったですね。
 非常に多彩で心揺らめく繊細さ、儚さを一貫して宿しており、透明な世界観に非常にマッチしていたと思います。
 特に音楽でこれは!って思ったのは、私の中の壊れていない部分、ですかねぇ。この切なく悲しげな旋律の、凄絶な美しさはすごく初出シーンと共に印象に残っています。
 バトルだと振武関連とか、あと序盤のマップボスバトルとか好きでしたね。

 まあもう旧作の部類ですし、わざわざ感想は書きませんけど(といって今年コンシューマ感想サボり過ぎてる気もするけど。。。今更ながらイース[は書いとくべきだったなぁ…………軌跡は流石に書きますよ!)、思っていたよりは骨太で、すごく情緒があって素敵な作品でした。

 そしてフィリスアフター、最終話とあとがきを書いてこちらも無事に脱稿できました。やー、今日は一日に二つも、なんとか軌跡の前に、と思っていた事柄が片付いて気分爽快です。
 内容的にもっと煮詰めたり、膨らませる余地はあるだけの素材・構成でしたけど、あくまでもイチャイチャをメインに、シナリオ面は軽くを意識していたのでこれで限界かなぁと。正直私のイチャイチャシチュのネタはめっちゃ乏しいので(笑)、シナリオ的な面を膨らませて、その分に見合うだけイチャイチャを増量するのも無理だった気がするのだ。。。

 一応次の軽めのネタもざっくり下準備だけはしてあるのですが、今回のフィリスアフターが間延びし過ぎた反省も含めて、もう少し創作活動に対する姿勢の梃入れをせねば(もしくは螺子を締めていかねば)と思うので、しばらくは水面下で準備に入る程度に留めておきます。
 さしあたり閃の軌跡Vをクリアするまではそちらに出来る限り集中したい、というのもありますし、あと今回の軌跡は色々と面白いネタが転がっていそうで、クリアしたらこっちでなにか書きたくなるんじゃないか、って気がしてるので、そのあたりと上手く調整がつくように、って配慮ですね。
 いずれにせよ10月半ばから下旬くらいには、次の作品に着手したいとは思っています。

 さて、これで一応、軌跡の前に最低限為すべきことは為したかな、と思います。
 ここのページで語るゲーム趣味関連のみならず、お仕事や生活面での雑務も出来る限り前倒しで片づけておいたし、我ながらどんだけ軌跡に耽溺するつもりなのかって話ですけど(笑)、マガジンを読む限りでもいつも以上にポリューミーで骨太な予感はヒシヒシとしますからね。
 しっかり隅から隅まで、クリアを焦ることはせず堪能し尽くす予定ですので、どうしても本職エロゲの新作キックオフや感想執筆には皺寄せが行くと思いますが、改めてご了承ください、という所です。

 とりあえず残った時間で、ウブな処女のエッチなお願いと、忘却執事とお嬢様の回想録の体験版はやっとこうかなと思います。明日ゆらうかの体験版も出るらしいけど、今度のCUBEはあまり惹かれる要素がないんだよなぁ。前日に睡眠を削ってまでねじ込むべきかは迷いどころです。。。
posted by クローバー at 16:51| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

フィリスのアトリエ アフタークエスト あとがき

 ようやっとゴールテープを切ることが出来ました。
 はじめる時には、いくらフレームきちんと作ってなくても週2ペースくらいで書いていければ夏前には終わるんじゃないかな?なんて甘い目論見でしたが、とてもとても。
 今年に関しては他の要因も大きく、純粋に創作に振り分ける余力と時間をあまり捻出出来なかったとはいえ、それでもこの時期まで完結が伸びてしまったのは、ひとえに私の怠惰に尽きるところです。

 大枠の構成自体は元々の発想からさほど乖離せず、そして物語としてもあくまで隙間を埋めるものなので、決して重くなり過ぎず、基本はイルメリアとフィリスの仲良しっぷりを主軸に書こうとした、その目的はある程度達成できたかなとは思っています。
 逆に物語の完成度や細かい部分の整合性・説得力に関してはまだまだ詰める余地は充分にあったとは思いますが、箍が緩いと書くべきことより書きたい事にばかり筆先が進んでいってしまう、というのも、改めて気づかされたところで、これはこれで面白い試みだったと言えます。

 それに災い転じて、ではないですけれど、執筆期間が長くなった分だけ、常に頭の片隅にイルメリアとフィリスが仲良くじゃれあったり、喧嘩したりする光景が居座っていて、それは荒んだ現実を生きる中で心を和ませ、自然と笑みをもたらしてくれて、やっぱりこの二人の関係性は好きだなぁ、思い切って書き始めて良かったとは感じています。

 とりあえず現時点でまだ、不思議シリーズ次回作のリディー&スールのアトリエにどのくらい過去作ヒロインが出るのか定かではない状況です。
 まぁソフィーとリアーネが出てくる以上、プラフタとフィリスもセットで出番あるんじゃないかなー、とは思うんですが、戦闘システムが二人一組になる、なんてところからも、おいそれと昔のキャラを出しにくい雰囲気はあるので、イルちゃんが出てきてくれる可能性はなんか低そうなんですよね。。。
 別にそれを受けて、というつもりでもないですけれど、元々イルちゃんの内面の成長も描く中での着地点はこういう方向を模索していましたし、例え次の本編で出番がなくても、どこか同じ空の下で元気に頑張っている、と思える作品になってくれていればいいな、と思います。

 ともあれ、いつも以上に牛歩の歩み、拙い筆になりながらもお付き合いくださった方々には感謝の限りです。

2017/09/26 floraを聴きながら
posted by クローバー at 07:15| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

イルメリアのフィリス観察日記・三十九日目

 フィリス・ミストルートは、私にとって自由の体現者である。

フィリス
「ただいま〜、って…………あれ?まだ誰も戻ってきてないや」
イルメリア
「思ったより早くこっちが片付いたものね。丁度いいわ、たまにはゆっくり、二人きりでお茶にしましょ」
フィリス
「わっ、イルちゃんがてずから淹れてくれるのかな?かな?」
イルメリア
「どうせ自分でやる気なんてないくせにしゃあしゃあと。あんたそんな怠惰な事じゃ嫁の貰い手がないわよ」
フィリス
「えー、いいよ別に。そうなったらイルちゃんに養ってもらうから」
イルメリア
「いいわけないでしょっ、あんた何様のつもりよホント…………」
フィリス
「てへへ、いやぁ、だってさぁ〜♪」
イルメリア
「…………っっ」

 私の苦言など暖簾に腕押し、とばかりに、上機嫌のフィリスはにっこりと笑み崩れながら、キラキラと期待に満ちた目でじっと見つめてくる。
 その視線に籠められた敬愛と信頼を痛いほどに感じ、甘酸っぱい想いが胸中に満ちて、私は絡みつくそれを断ち切るように背を向け、お茶の準備を始める。

イルメリア
「フィリス、紅茶でいいわよね?」
フィリス
「イルちゃんが手ずから淹れてくれるものならなんでもいいよ〜♪」
イルメリア
「あらそう?じゃあどくだみ茶にでもしようかしら」
フィリス
「ふっふ〜ん、どうせイルちゃんてば口だけで、絶対にわたしが嫌がることなんてしないもん。だからお任せなんだよ〜だ♪」
イルメリア
「全く、衒いもない…………」

 いつも以上にフィリスが素直でご機嫌なのには、当然理由がある。
 それはつい先程まで、街の主だった人達と、この一連の顛末についての説明、並びに今後街を発展させていく為の方針の話し合いがあったからだ。

 以前に約束した通り、大よその説明は私がする事にしたけれど、それでもフィリスは自分の責任は全うするつもりだったのか、ずっと私の隣で背筋を伸ばして、時に険しい反応を見せる聴衆に真っ直ぐ向き合っていた。
 その誠実な姿勢に、元よりの人格に対する信頼もあってか、一連の経緯と現状――即ちエルトナが保持していた既得権益の破却――は一堂に衝撃を与えたものの、それを糾弾する声はついぞ上がらなかった。

 勿論今すぐに、新たな街の在り方について建設的に議論する段階までは進まなかったけれど、それでも試案として提示した私たちのアイデアに対する反応も悪くなく。
 なによりも、最後にかけられた温かい労いの言葉と、この街を良くも悪くも彩っていた閉塞性からの脱却に前向きな言質が得られたのが嬉しかったに違いない。

イルメリア
「はい、お待たせ。熱いから気をつけるのよ」
フィリス
「わぁい、イルちゃんのお茶だぁ〜、いっただっきまーす…………ってアツツっ!?」
イルメリア
「あぁもう言わんこっちゃない、あんた猫舌のくせにどうしてそうせっかちなのよ」
フィリス
「そういう性分なんだよ〜、む〜、イルちゃんフーフーして〜」
イルメリア
「馬鹿言わないの。あんたねぇ、キルシェが帰っちゃって寂しいのはわかるけど、その分までこっちに甘えて寄りかかってこないでくれる?」
フィリス
「またそういうつれない事言うんだからぁ〜、本当は嬉しいくせにぃ〜」

 語尾を甘く蕩かせながら、唇を愛らしく尖らせてお茶を覚ましている様は、本当に純真無垢な子供のように自由だ。

 けれどこの子はそれでいて、ちゃんと自由に伴う責任の重さを知っている。
 そして、その重さに押し潰されない為に、自分の心をどうコントロールすればいいのかも、きっと本能的に理解しているのだ。

イルメリア
「(…………そう、出会った最初からこの子はそうで…………だからこそ、私にとってあんなに眩しく映ったのかもしれないわね)」

 その生き方は、家の理念や思想に雁字搦めに縛られ、それと上手く折り合う術も、その重みに直面し過ぎないように息を抜くことも覚束なかった頃の、私が理想に描いた自由をそのまま体現しているように思えて。
 この子と共に歩むようになったきっかけは、まずその憧れに端を発しているに違いないのだ。もっとも、当時の私はそう指摘されてもムキになって怒り、頭から否定してかかっていただろうけど。

フィリス
「…………ふぃ〜、でも本当に良かった。街のみんながそれぞれに、この街の事を大切に想っている事を、今度の件で改めて理解できて」
イルメリア
「まぁ、まだ結構な温度差はあったけどね。とはいえ、今の街のまとめ役はあの人たちなんだし、そこは上手く擦り合わせていってもらわないと」
フィリス
「でも最初は眉唾、って感じだったのに、イルちゃんが滔々と理路整然な説明や提案を口にするだけであんな風に活き活きしてくるんだ!って、わたしはこんな性格だからあんまり深く考えられないけど、本当に言葉の力ってすごいね。イルちゃん、実は弁舌士とかでもやってけるんじゃない?」
イルメリア
「そんな口先だけで、実際的な救いの伴わない役目はどうかしらね?どの道錬金術士としても、その力を誰かの為に役立てたいと思えば、その相手の気持ちに寄り添い、意図を汲み取って適切な言葉に落とし込むスキルは必須なんじゃない?」
フィリス
「そうかもしれないし、わたしもそうありたいけど、でも適切な言葉に落とし込んで納得・満足してもらうってのがむつかしいんじゃんかぁ。だから自然にそれが出来るイルちゃんってすごいなって思うんだ」
イルメリア
「私からすれば、何の疑いもなく自分の力が誰かの為にあって、無意識的に相手に気持ちを寄り添わせられるフィリスの方が凄いわよ。私はただ、その顰に倣っただけだもの」
フィリス
「わ、珍しい。イルちゃんが謙遜なんてしてる!」
イルメリア
「今ここにいるのは私たちだけじゃない。今更何か飾っても仕方ないでしょ」
フィリス
「…………でへへへぇ♪」
イルメリア
「だからなによさっきからその気持ち悪い笑い方は?」
フィリス
「んーん、本当にもう、イルちゃんも家族同然だなぁ、って」
イルメリア
「っっ」

 確かにその言葉の選び方は稚拙かもしれないけれど。
 だけどその分だけ真っ直ぐ、相手の心にスルッと入り込む強さが、この子の言葉には宿っている。

 でもそういうやり方が、大人数相手に一概に通用するとは限らない事を思えば、これもまた互いに隣の芝生を青く見ている、という事なのかもしれない。
 そしてそれを認めてなお、変に背伸びも意識もせず、自然体でありのままの姿で隣り合っていられる事は、どこか奇跡めいた巡り合わせに思えて。

 けれど――――。

イルメリア
「…………確かに私たちは、合縁奇縁の仲でいられると思う」
フィリス
「アイエンキエン?」
イルメリア
「性格や気質は違っても、生涯馬の合う親友でいられるって事よ」
フィリス
「あっ、うんうんっ!ズッ友って奴だねっ!」
イルメリア
「あんたそんな言葉どこで覚えてくるのよ…………」
フィリス
「イルちゃんこそ、どうしていつも小難しい言葉を使いたがるのさ?かっこつけなんだから」
イルメリア
「別にいいでしょ、かっこつけだって生涯貫けばそれは立派な個性よ。それに今時の短絡的な表現より、ずっと奥行きや深みがあって好きなんだもの。そのついでに教養のないあんたの勉強にもなって、一石二鳥でしょう?」
フィリス
「教養、なんてララ〜ラ〜ララララ〜ラ〜♪」
イルメリア
「なんでそんな古い歌…………ま、まぁ雑学的な知識が結構あるのは認めてもいいけど」
フィリス
「イルちゃんもこれでわかるって地味に凄いよね。てっきり幼い頃から勉強漬けで頭でっかちっぽいのに」
イルメリア
「人のことは言えないけど、あんたも大概失敬よね…………」
フィリス
「でも生涯の親友なら、これくらいの言いたい放題で関係が崩れたりなんかしないでしょ?」
イルメリア
「わからないわよ、口は災いの元、沈黙は金雄弁は銀、なんて諺もあるわけだし」
フィリス
「まぁたそうやって煙に巻くぅ〜、人間なんてラララ〜の精神でもっとフワフワ生きれば楽なのに、絶対イルちゃん色々考えすぎて、自分から無駄に苦労抱え込むタイプだよね」
イルメリア
「そう、かもね。でもね、これだって性分、だから」

 頬杖をついてこっちを見ていたフィリスが、その私の諦観めいた物言いに苦笑する。
 確かにその意見にも一理はあるのだろう。想いのまま、感情のままに素直に生きられたら、それは間違いなく楽しいものだろう。
 
 でも、楽しい事と生き甲斐とは少し違うものでもあるのだ。
 フィリスの場合、その楽しさの源泉が他者の喜びに直列的に繋がっているから、きっとそれは生き甲斐と上手く折り合い、重なり合っていて、それ故にこそこの子はこうまで自由でいることに怖気づかずに済んでいる。

 けれど、私はおそらく違う。
 どちらかと言えば、私はキルシェに近い人間だ。筋道や理路を通し、そして固着した習慣の中に自分の生き甲斐を見出していくタイプだ。
 そんな私にとって、ただ純粋に自由であり続けることは、きっといつか楽しい以上に苦しさや怖さに苛まれるという予感は確かにあって――――。

イルメリア
「…………キルシェは本当に偉いわよね。あの年で自分の生き方をきちんと見据えて、等身大の自分で着実に歩を進めていく。それに引き比べて、私は今更に自分の道に迷う根無し草で、本当に年上の威厳もなにもあったもんじゃない、って思ったわ」
フィリス
「キルシェちゃんはちょっと特別だと思うけどなぁ。それにまだまだわたしたちは子供でいてもいい時期だって、イルちゃんも以前認めてなかった?」
イルメリア
「そうね、今は、まだ。だからこうして、想いのままにあんたの傍に居続けることが出来るけど…………でも、合縁奇縁があって、そのおかげでずっと竹馬の友であろうとも、それでも相生の松では在れないとも思うのよ」
フィリス
「…………それって、いつまでも一緒の道を歩むつもりはない、って事?」
イルメリア
「だって、あんたはこの先、より広い世界に漕ぎ出して、旅から旅の中で見聞を広めて、その驚きを友としながら誰かの為に生きていく、そういう道を選びたいんでしょう?」
フィリス
「それは…………うん、そうだけど。でもそれに我が儘を付け加えるなら、先生達やリア姉、それに勿論イルちゃんとも、一緒に進んでいきたいって…………それは許されない事?」
イルメリア
「そんな事はないわ。でもね、私はまだ、自分の芯をちゃんと見つけてもいないの。自分の生き方はこれだって、覚悟を決めて選ぶことすらしていないの」

 例えばプラフタさんやリアーネさんは、気質的には私に近い存在だろう。
 けれどもプラフタさんが、自由気儘なソフィーさんについていくことを厭わないのは、その過去を含めて、ソフィーさんの傍にいることが自分にとって為すべきこと、やりたい事だと納得できているからだ。
 リアーネさんにしても、その境遇が選択肢を狭めたきらいはあるにせよ、今の時点でフィリスに追随する生き方が血肉になっている限り、自分から離れる選択は決してしないだろう。

 でも、私は違う。
 まだ何物でもない私が、ただフィリスの傍にいたいという感情的な理由を優先して、ただひたすらにその驥尾に付すだけでいたら、きっと芽生えかけの私の芯はどこかで腐り落ち、何物にもなれないままの無為な生を歩むことになる――――なんて、フィリスに聞かせたらそれこそ考えすぎだって一蹴されるかもだけど。

 だからこそ、今言えることは――――。

イルメリア
「勿論、今すぐにあんたの傍からいなくなるつもりはないわ。この街の件もしっかり下地が整うまで面倒見るつもりだし、その後の旅にだって付き合うつもりはある」
フィリス
「な、なぁんだ、脅かさないでよっ!てっきりその言い方だと、キルシェちゃんみたいにどこかに居を構えてここからいなくなっちゃうのかって…………」
イルメリア
「でもね、そうやって色々な経験をしていく中で、きっと私は自分なりの生き甲斐を、本当に私が心から生涯を捧げるに値する在り方を見つけたい。そしてそれは、気質が違うフィリスのそれとは必ずしも相容れず、重なり合わないかもしれない」
フィリス
「っっ」
イルメリア
「これはあくまでも可能性、フィリスに言わせれば取り越し苦労、って事かもしれないけど…………それでも私にとって譲れない一線ではあるの。逆にずっとフィリスの生き方に追従していたら、それこそ竹馬の友ですらいられなくなるって、そんな確信があるのよ」
フィリス
「…………そうなった時に、イルちゃんはわたしにどうして欲しいの?」
イルメリア
「私が私の道を見つけたことを歓んで、祝福して、そして背中を押して欲しい。意気地のない私を叱咤して、道を違えても切磋琢磨するライバルで親友だと、信じさせて欲しい。…………ふふっ、これこそ私の我が儘ね」
フィリス
「そっ、か。……………………そっかぁ…………」

 こういう話をしながら、自分が自然に笑えている事に少しばかり驚きを感じる。
 けれどそれを見たフィリスは、同じ言葉を二度呟き、けれど二回目のそれは明らかに一度目とはニュアンスの違う、フィリスらしい前向きな納得に満ちていて。

 冷えかかった紅茶の残りを一気に飲み干し、その余韻を楽しむように鼻から静かに息を吐いたフィリスは、徐に立ち上がり、私の背後に回り込んできて――――。

イルメリア
「フィリス?どうかし…………きゃうっ!?」

 何の前置きもなしに、いきなり腋の下に手を突っ込んで擽りにかかってきた!

フィリス
「にっひひ〜、相変わらず敏感でいい反応だねぇ〜♪」
イルメリア
「ちょっ、やっ、あっ、あんたなにをっ!?きゃっ、あは、あははははっ!?ちょっやめっ、やめてぇっ!!」
フィリス
「ほれほれぇ、ここでしょ〜、ここが弱いんでしょ〜♪」
イルメリア
「やっもぅっ、ちょっ、んぅっ、へっ、変なとこ触んなぁっ!!」
フィリス
「んぅ〜?変なとこってどこかなぁ〜、具体的に言ってくれないとわっかんないなぁ〜♪」
イルメリア
「しっ、白々っ、んきゃっ、ちょっ、あはははっ、いき、くる、しっ、も、もうばかっ、イタズラ、っ子ぉっ!!」
フィリス
「そうだよ〜イタズラっ子だも〜んだ。こんな風に無邪気に子供のままで触れ合える機会が少ないって言うなら、思う存分今の内に楽しんでおかないとねぇ〜♪」
イルメリア
「あははっ、あひゃひゃひゃっ!たっ、楽しいのはあんただけんきゅっ!?〜〜〜〜っっ、いい加減に、しろぉっ!!」
フィリス
「へぶっ!?」

 苦し紛れに思いっきり頭をのけぞらせて振り払いにかかると、それがたまたま密着していたフィリスの顎にクリーンヒットしたらしく、くぐもった叫びをあげながら尻餅をつく。

イルメリア
「あ…………っ、ご、ごめんやり過ぎたっ。…………で、でもっ、いきなり奇襲を仕掛けてきたのはあんたなんだからねっ!」
フィリス
「アタタタ…………ふぃ〜目が回るぅ〜…………。あは、ははははっ!」
イルメリア
「ったく、箸が転げても笑う年頃かあんたは。そんなみっともない格好でケラケラと、ほんっとにもぅ…………」
フィリス
「わたしがついててあげないとダメなんだから?」
イルメリア
「っっ、か、勝手に人の心の声を盗まないでくれるっ!はぁっ、どうしてこう、シリアスが五分と続けられないのかしらねあんたは…………」
フィリス
「だって、それがわたしだもん。だからね、イルちゃんがこんなだらしないわたしをそのまま認めてくれる限り、わたしもイルちゃんがなりたいイルちゃんになるのをちゃんと認めてあげられるって、そう思うよ」
イルメリア
「っっ、そ、そう…………その、ありがとう…………」

 そのくせ、ふやけた空気の中でも言うべきことはちゃんと言葉にしてくれるのが、フィリスの本当に素敵なところなのだ。
 だからこそ私は、この子が好きで好きでたまらないのだ――――。

フィリス
「にひひ〜、イルちゃんが照れた、照れたぁ〜♪」
イルメリア
「ふんだ、ちょっと出し抜いたくらいで鬼の首を取ったようにならないで欲しいわ。ほら、いい加減立ちなさいっての」
フィリス
「まだ無理〜、目が回ってるもーん、イルちゃんが石頭過ぎるからいけないんだもーん」

 とか言いつつ、唇の端を持ち上げて手を伸ばしているのは、抱きかかえて起こせ、という甘えの催促だ。
 仕方なくかがみ込んで、その伸ばした手を肩に担ごうとすると、フィリスはそれを狙っていたかのように、私の頬にチークキスを仕掛けてくる。

イルメリア
「ん…………もう、甘えんぼ」
フィリス
「今だけ、いまだけぇ〜♪はぁ〜、イルちゃんのほっぺ、ふにふにできもちいー」

 それは同感だったので、私も諦めて、ゆるやかにその背を抱きしめながらしばらくしたいようにさせておく。
 ひとしきりスリスリと愛着を示して満足したか、最後にフィリスは私の耳元に唇を寄せて――――。

フィリス
「…………大好きだよ、イルちゃん。例え離れることがあっても、わたしの生涯で最初の、そして最高の親友なんだからねっ♪」
イルメリア
「――――っっ」

 その言葉は、私の深奥に潜むもっとも根源的な恐怖を、優しく慰撫し溶かしてくれる慈愛を孕んでいて。

 何の根拠もないけれど、あぁ、これで大丈夫だ、と思えた。
 きっと私は、いつか私の道をしっかりと歩んでいける、と。

 繰り返そう。
 フィリス・ミストルートは、自由の体現者であり、そしてかつての私の憧れだった。
 けれど、今はちょっと違う。その在り方に憧れは残っていても、自分がそのままそうなりたいとは思わない。

 それが自覚できた今、この観察日記も当初の役目を終えたと言える。
 この温もりと輝きの背中を追いかけるのではなく、その横に正しく並び立つために。
 書物の中でなく、現実で理想の自分を追い求めるために。

 一抹の名残惜しさは振り捨てて、ここで一先ず筆を擱くこととしよう。
 願わくばいつか、私がこの記録を読み返した時に、この拙くも瑞々しい過去を愛おしく、そして誇らしく思えますように――――。

<FIN>

 
posted by クローバー at 05:54| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年09月25日

足を溜める

 今日もあれこれ忙しくて帰宅が遅くなったし、他にも先に片づけておきたいことがあったのでゲームにはほぼ着手せず。まぁ明日全力で頑張れば大抵なんとかなると信じておく。。。

 fengはまた低価格路線かぁ、もう完全にそれが定着してるのはいいんだけど、夢と色はどうなった定期。
 そしてモア系列の少女〜シリーズも新作登場。ここもサイクル速いよねぇ。そろそろ私は騙されないモードに入っていいはずなんだけど、また絵が魅力的だったらぐらつきそうでこわいこわい。

 フィリスアフター更新。最後の最後に来ていつにない時間の投下だったけど、この辺は色々と実験も兼ねて。
 話的には最後すっ飛ばし気味に見えるけど、一応は当初の予定通りではある。まぁ余裕があれば膨らませても、とは思ってたけど、予想通り余裕はなかったので。。。
posted by クローバー at 18:48| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年09月24日

フィリスアフタークエスト <未来を彩る夢!それぞれの希望へと漕ぎ出そう!>

オリビア
「…………それでは、今より守護結界構築の儀式を執り行います。精霊王様、準備は宜しいですね?」
大地の精霊王
「あぁ、いつでも構わんぞ」

 鷹揚に構える精霊王様の様子を横目で伺いながら、オリビアさんは手にした懐中時計の針の刻みをじっと見つめる。
 あれはこの儀式の為に、寸刻のズレも無いよう精密に仕上げた特製品だ。今この時、他の三箇所でも指定されたタイミングを、息を呑んで待っているに違いない。

イルメリア
「…………ようやくここまできたのね。感慨無量だわ」
キルシェ
「ん、苦労した甲斐はあった」
フィリス
「うー、だけど本当にいいのかな、ここの守主をオリビアさんに任せきりにしちゃって…………」
イルメリア
「本人がそれを望んでいるんだし、いいんじゃない?まぁいずれ、何らかの形で引き継ぐ必要は出てくるかもしれないけれど」
キルシェ
「オリビアが、自分の責任を全うしたと納得できた時…………」
イルメリア
「そうね。…………プラフタさんや、あの二人もそうだけど、仮初の肉体で半ば永続的に魂を保ち続けることも、ある意味では世界の調和を乱す歪な事なのは確かだもの。それが前向きで善良な目的に向かっている内はいいけれど、ね」
フィリス
「うーん…………でもそっか、少なくとも本人がやりたいって望んでる内にどうこうってのは、今回の提案を持ちかけたくせに失礼な考え方だったかも」
キルシェ
「フィリスは優しいから、今までの功労者にはゆっくり休んで、自分なりの人生を謳歌して欲しい、とか考えちゃうのかもしれないけど…………でもきっと、為すべき仕事のない生は虚しいだけだと思う」
イルメリア
「えぇ、それには同感。…………ん、そろそろ、ね」

 少し離れたところでその様を見守っていたわたしたちは、一帯の空気に霊圧が増してきた事で、その時が間近に迫ったことを知り、誰からともなく口を噤む。

 あれから暫くは目の回るような忙しさだった。
 オリビアさんの素体作り(目も眩むような美女に仕上がったよ!)、システムの解体と遷座、その上で最終目標である四精霊王の守護結界を紡ぐため、他の三体の精霊王様や、その探索に力を貸してもらった錬金術士の皆に、改めてその目的を語り、協力を要請した。
 
 有難いことにそれはすぐに快諾を貰えて、同時に発動しないと効果が最大限に発揮されない難易度の高い儀式を成功させる為に、先生やプラフタさん、リア姉はそちらのサポートに回っている。
 ちなみに、リア姉は有無を言わさずノルベルトさんのところに派遣した。だってこういう理由でも付けないと、あの二人が二人きりで語らう機会なんて滅多に作れないだろうからね!

キルシェ
「…………?どうかした?」
フィリス
「んーん、なんでも。ふふふっ」

 姉としての尽くされる喜びを知ったからこそ、余計にお節介を焼きたくなったとも言える。

 キルシェちゃんはあの後も、この件が片付くまではとエルトナに留まり、率先してお手伝いをしてくれた。
 生まれたのはこちらが先でも、錬金術士としての実地的な経験は遥かに上なキルシェちゃんだけに、非常に実践的なアイデアや作業効率化の示唆をくれて、最後の方は専らイルちゃんも、わたしそっちのけでキルシェちゃんに意見を求めていたくらいだ。

 …………べ、別にそんな風に蔑ろにされたのが、モヤモヤッとするなぁんてことはなかったよ?ホントだよ?

オリビア
「…………はじめます」

 やがて、刻が来て。
 静謐な雰囲気を保ったまま、厳粛な手つきで、オリビアさんが祭壇に玉を捧げる。
 そしてそれに、祈りという形で能動的に魔力を更に注ぎ込んでいくと、いつかのように祭壇から玄妙な光が溢れ出し、それは中空に鎮座する精霊王様に吸い込まれていく。

キルシェ
「…………すごい。まるで後光が差してるみたい」
イルメリア
「えぇ。普段以上に神秘的で清冽だわ。こういうのを畏怖の念、と言うのかしら」
フィリス
「うん、背筋がピーンと伸びる感じ。でも決して近寄りがたいって感じでもないよね」
イルメリア
「そうね、畏れ多くも触れたくなる、そんな優しさもある、とっても不思議で心惹かれる光だわ」

 以前わたしたちが当事者となって玉を捧げた時とは心持ちや距離感が違うからか、その光景は一層荘厳に感じられた。
 しばらく注がれる光の奔流を心地よさそうに受け止めていた精霊王様は、おもむろに両の手を広げ、受け止めた淳良な力を世界に還元するように、波のようななにかを発する。

 それは目に見えず、耳にも届かないけれど、まるで空震でも起こったかのように空気がビリビリと逆立ち、それが心の襞のもっとも繊細な部分を撫でていくようで、生理的に背筋が震える。

フィリス
「すごい…………この波、大陸中に伝播していくんだ」
イルメリア
「えぇ。そして他の波とぶつかり、けれど決して打ち消し合う事はなくそれぞれの威力を高め合って、あまねく全土に龍脈の淀みを押し留める祝福の力を波及させるのね」
キルシェ
「すごく、感動する。私たちは今、間違いなく歴史の証人になったんだって、皮膚感覚でわかる」

 玉と本の返却に向かった際のパルミラちゃんの説明としては、かの邪竜が顕現する霊峰は、決して龍脈の中心点、というわけではなく、ただ全ての結節点である事と、下流に位置するために淀みが集中して流れ込みやすい、らしい。

 そして人が生を織りなす限り、その淀みの発生をとどめる事は決して出来ないものの、それでもその流れを分散したり、適度に妨げていくことで、結界を打ち破るほどの力を蓄えるまでの時間をかなり引き延ばせる、という事だ。

フィリス
「…………確かに、これが首尾よく成功すれば、次にこの儀式をするべきはまた数百年後、って事だもんね。一生に一度、ってレベルじゃないし、それこそ回想録でも作るべき?」
イルメリア
「まぁその辺はアンネさんやカルドさんがきっちりやってくれるでしょ。少なくとも簡単に読み解けるノウハウの形で現存していれば、私たちのように暗中模索で苦労することもないはずだもの。…………もっとも、数百年後に今の言語がそのまま通用しているかなんて、それこそ神のみぞ知る、だけど」
キルシェ
「人の身体と同じく、文明も動的平衡の賜物。変化していないように見えても、随時移ろっているのだから、それを見越して色んな手段は模索して損はない、と思う」
フィリス
「あははっ、じゃあやっぱり私的な回想録や口伝も必要だ!んじゃその辺、イルちゃん宜しくっ!」
イルメリア
「だからなんで全部が全部そういうのを私に丸投げしようとするのよっ!…………ま、まぁ既に似たような書き物はしてるっちゃしてるけど…………で、でもアレを人目に晒すなんて…………っ!
フィリス
「んぅ〜?イルちゃんなにぶつくさ言ってんの?」
イルメリア
「なっ、なんでもないっ、なんでもないからっ!!」
キルシェ
「…………愛のメモリー」
イルメリア
「ひぅっ!?」

 キルシェちゃんのボソッとした呟きに、陶磁器のように白いイルちゃんのつやつやの頬が可憐に赤く染まる。
 はて、愛のメモリー?よくわからないけど地味にこれってイルちゃんの弱みっぽい!今度喧嘩した時に使わせてもらおーっと。

 そうこうしているうちに、断続的に発せられていた波が鎮まっていく。
 けれど、その波及していった力の在り処は、はっきりとわたしたちの肌合いで、凪いだ心のありようで感じ取れる。
 おそらく精霊王様の御座所は、大陸の中でも一際龍脈の影響が大きい場所故に、人の身でもこれだけ明晰に、その祝福の効果を感じ取ることが出来るのだろう。

 間違いなく、儀式は成功に終わった。
 その認識が腑に落ちると、ドッと肩の力が抜け、安らいだ気分になり――――。

メクレット
「…………どうやら、無事に終わったようだね」
アトミナ
「とりあえずはおめでとう、と言っておくわ」
フィリス
「あっ!」

 いつの間に忍び寄ってきたのか、背後から投げかけられる、恬淡・飄然とした声に振り返る。
 果たしてそこにいたのは、いつものどこか人を食ったような笑みを浮かべるメクレットと、つまらなそうに唇を軽く尖らせているアトミナだった。

フィリス
「二人ともっ、ちゃんと来てくれたんだねっ!」
イルメリア
「やれやれ、登場が遅いから、てっさきり尻尾を巻いて逃げたしたのかもと思ったわよ」
メクレット
「ははっ、こういう時主役は遅れて登場するものだろう?」
アトミナ
「…………ま、あれだけ熱心に誘われたらね。それに、まぁ…………」

 どこまでも乗り気ではない、という体を見せつつも、その視線は自然と儀式を成功させて精霊王様と穏やかに語らっているオリビアさんに向かう。

アトミナ
「…………冗談みたいに、あの頃と同じ姿なのね」
フィリス
「ふふふー、凄い精度でしょ!まぁ勿論、ホログラムに正確に姿形が投影されていればこそ出来たんだけど、二人から見ても普通に生きてた頃とそっくりに見えるなら大成功、って感じ!」
メクレット
「そっくりそのまま、と言うには、多少スタイルは良くなりすぎてる気もするけど。でもある意味理想の体型になれる技術と考えれば夢があるね。ねぇイルメリア」
イルメリア
「ちょっ!?そ、そこでなんで私に話を振るのよっ!」
キルシェ
「大丈夫、イルメリアにだってまだ将来性はある」
イルメリア
「将来性しかないキルシェに言われても慰めにならないわよっ!!」
フィリス
「まぁまぁイルちゃん。いざとなればいつでも相談に乗るから安心して」
イルメリア
「それのどこに安心があるのよっ!ああもぅっ、この面子だとツッコミ役が足りないっ!」

 みんなからからかいの集中砲火を受けて、うがーっといきり立つイルちゃん。
 そうして騒いでいると、流石に未だ神聖な空気を纏う祭壇周辺にまで喧騒が届いたか、怪訝な顔つきのオリビアさんが優雅な歩きで近づいてくる。

オリビア
「無事に儀式は終わったぞ。それで一体、みんなでやんやと何を騒いでいるんだ?」
フィリス
「オリビアさん、お疲れ様ですっ!ふっふー、実はですね、オリビアさんを驚かせたくて、サプライズのスペシャルゲストを呼んでおいたんです」
オリビア
「スペシャルゲスト…………この二人が?いや待てよ、ふた、り…………?」

 傍目にはほとんどキルシェと変わらない年代に見えるメクレットとアトミナを前にして、潜めた眉は益々角度が釣り上がりかかるものの、その途中で以前の話との符号に気が付いたか、ハッとした顔つきになる。

オリビア
「…………え?ま、まさかこの二人が?い、いやでもそんな、これではあまりに…………っ」
アトミナ
「あらら、混乱してるわね。まぁ、無理もないとは思うけど」
メクレット
「仕方ないよ、僕たちだってあの当時の自分に、未来にこういう事になるなんて話しても絶対に信じなかったろうさ。でも、そうだねぇ…………」

 暫し思案したメクレットが、ちょいちょいとオリビアさんを手招きで近くに呼び寄せる。
 そして、その視線の高さに合わせて少しかがんだオリビアさんの耳元でなにやらごにょごにょと囁くと、刹那瞠目したオリビアさんの表情が柔らかく崩れ、泣き笑いを彩る。

オリビア
「っっ、ほん、とうに…………っ、本当に、お師匠様、なんですね…………っ!」
メクレット
「そうだよ、不肖の弟子。君の志望は薄々察してはいたけれど、まさかこんな形で今の時代にまで僕らの錬金術の痕跡を残してくれていたなんてね」
アトミナ
「血筋、よねぇ。そこの猪娘と同様、貴方も本当に思い込んだらどこまでも真っ直ぐで、貪欲に知識を求めていて、正直鬱陶しい、と思う時もあったけど…………」
メクレット
「それでも、僕等にとってただ一人、まともに同じ高みに登ろうと研鑽してくれた印象深い存在だ、まさかこんな、悠久の時を経て再会する事になるとは、運命とは甚だひねくれた筋書きがお好みらしいね」
オリビア
「はい、はいっ!こんな形でも再会できて、私、私は…………っ」

 感極まったように語尾を濁すオリビアさん。
 そんな姿は今の姿で復活してからついぞ見た事はなかっただけに、こちらもつられてもらい泣きしそうになる。
イルメリア
「…………積もる話もあるでしょうし、今は三人きりにしてあげましょう」
フィリス
「…………ぐずっ、ん、そう、だね…………」

 ツーンとする鼻を啜りながら、三人で示し合わせてそっとその場を離れ、洞窟の入り口付近まで戻ってくる。
 その間はみんな無言だったけど、決して気詰まりではなく、むしろそれぞれが胸に宿した充実と感激を、緩やかに共有しているような感覚がこそばゆくも嬉しく思えて。

フィリス
「…………大団円、って言っちゃっていいのかな?」
イルメリア
「単純に全てが、結果良ければ、とも言い難いけどね。それでも色々複雑に絡み合った糸を、上手に解きほぐせたとは思うわよ。なんだかんだで様々なしがらみからも強制的に解放される着地点にはなってるし」
フィリス
「んーまぁそうだよねぇ。でも実際、街の人にはどう説明するべきかなぁ?」
イルメリア
「そこはあんたが直接真っ直ぐ当たるより、私やプラフタさんの出番よね。全てを赤裸々に語る必要はないし、嘘にならない程度にあんたの家の立場を悪くしない説明をちゃんと考えてあげる。こういうのは外の人間の方が冷静に見られるし」
フィリス
「えへへぇ〜、悪いねぇいつもいつも」
キルシェ
「フィリスお姉ちゃん、ちっとも悪いって思ってなさそうな顔」
イルメリア
「ホントよね、こういう融通が利き過ぎるというかなんでもかんでも緩いところは、見習った方がいいのか本気で悩むわ」
フィリス
「ちょっとぉ、自分から振っといてそれぇ?」

 冗談交じりに肩で小突くと、大袈裟に身を捩って嫌そうな顔をする。
 でもそんなの――――。

キルシェ
「…………もう充分、似た者同士」
フィリス
「だよねぇー、自分だってちっとも嫌じゃないくせに、わざと嫌そうな顔するのばっかり上手くなっちゃってさー」
イルメリア
「…………はぁ、朱に交わればというか、腐った林檎と言うか、私も大概堕落したものよね」
キルシェ
「それでいいと思う。だってイルメリアは、今の自分を昔ほど嫌ってないでしょ?」
イルメリア
「…………それ、見抜いてたんだ。本当に侮れないわね」
フィリス
「やっぱりキルシェちゃんは、精神的に成熟してるよねぇ」
キルシェ
「けど、それだって善し悪し。私はたまさかこんな境遇で、はやく大人になりたいと思って、実際にそう振る舞うしかなかったけど…………それでもずっと、寂しいって、誰かに思い切り甘えたいって自分の気持ちに嘘をついてた。そんな風に自分の心を歪めるのは、やっぱり良くない事なんだと思う」
イルメリア
「…………その意味ではオリビアさんだって、歪なところがあったからこそ、こんなに遠く時代を超えた先で、ようやく会いたい人に会えた、って事にもなるのよね」
フィリス
「うんうん、やせ我慢も大概に、って事だよね。やっぱりそれって、わたしみたいにノーテンキな方が人生得、って話じゃんか」
キルシェ
「自分で言ってちゃ世話ない。…………けど、うん。おかげで踏ん切りもついた。私も、きちんと自分の心に正直にならないと」

 そう言ってキルシェちゃんは、わたしとイルちゃんの顔を決意の籠った瞳でじっと見つめてくる。
 そこから感じられるのは、深い信頼と親しみ、そして一抹の寂しさ。
 そうか、やっぱりキルシェちゃんは――――。

フィリス
「…………フロッケに、帰るんだね」
キルシェ
「うん。フィリスお姉ちゃん達と一緒に過ごせたこの二週間余りは本当に楽しくて、色んな事が新鮮で、ずっとこうしていたい、って思う部分も当然あるけれど…………それでもやっぱり私には、あの村が、故郷が大事。あの村のみんなの笑顔を守ることが生き甲斐だと思ってる」
イルメリア
「…………責任感、ってだけじゃなく、純粋に心の声に耳を傾けて、なのよね?」
キルシェ
「そう。それを理解させてくれたのもみんなの、とりわけずっと一緒にいてくれた二人のおかげ。それにもう、甘えたい時には甘えていいんだって、それを許してくれる相手がいるのもわかってるから、今まで見たいに張り詰め過ぎずとも、自然体で頑張っていけると思う」
フィリス
「そっか。キルシェちゃんがそう決めたなら、寂しいけど反対は出来ないよね。だけど――――」
キルシェ
「うん。いつでもどこでも心は繋がってる。私にも家族はちゃんといるんだって、その感動がこれからの私を支えてくれる。だから挫けそうになったら顔を見に来るし、今までよりももっと遊びに来てほしい。ダメ?」
フィリス
「ダメなわけないじゃん!むしろこっちからお願いしたいくらいだよ!」

 間髪入れずに断言すると、普段から表情の乏しいキルシェちゃんが、すごく自然に、綺麗に笑ってくれて。
 それは何物にも代えがたい、ここまで色々頑張ってきた事の素晴らしいご褒美に思えて、わたしは衝動的に、その小さくも頼もしい家族の身体を、許される限りに強く、その存在を刻み込むように抱きしめるのだった――――。

イルメリア
…………そう、よね。いつでも、どこでも、心は繋がってる…………
posted by クローバー at 19:30| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする