2017年09月22日

FLOWERS 冬編

 突貫でプレイした春〜秋編が非常に耽美で幽玄で面白かったので、解決編となる冬編も楽しみにしていました。

シナリオ(23/30)

 その虎の尾は、どこまで…………。

★あらすじ

 秋にニカイアの会の会長選挙に名乗り出て、見事その難関をクリアした蘇芳。
 前任である譲葉からの文言の引継ぎも済ませ、そうしてそのヒントを元に風雪の中向かった場所に待っていたのは、ひとつきりの簡素な墓でした。
 その墓碑に刻まれた名前や墓碑銘には、一連の事件に関わりのある人物の姿が否応なく浮かび上がり、また譲葉からの忠告で、この件が学園の闇に通じる危険なものだと認識していた蘇芳は、周りの友人を巻き込まずに済むようにひっそりと一人で調査に取り掛かることになります。

 しかしその目論見は二重の意味でついえていきます。
 まずひとつは、純粋にニカイアの会の会長職が忙しく、中々私的な調査に時間を割くことが出来ない事と、また調査を進めても遅々として問題を紐解くカギが見つからないこと。
 そしてもうひとつは、蘇芳の周りにいる友人たちは、あからさまに何かを隠している蘇芳をいつまでも放っておけるような性格ではなかったこと。

 少しずつ、少しずつ。
 冬の雪景色の中でも花が綻ぶ準備を始めるように、ひとり、またひとりと友人たちにその目論見は看破され、半ば強引に助力すると宣言されて、けれどその多角的な視野を得ることで、どうしても手が届かなかった闇の奥の真相が見え隠れするようになっていきます。
 その中で、実際に顔を合わせることは出来なかったものの、確かに学園に未だまゆりが存在する確信も得られ、春からのこのアングレカム学園の生活の中で、強く逞しく成長した乙女たちの友情の絆が、最後の鍵を手にするために必須の力となって。

 果たしてこの学園に隠された最大の謎とは、アガベのタルパの正体とは何なのか?
 陰に陽に妨害が為される中でも、彼女達は挫けずに真相に辿り着くことが出来るのか?

 これは、閉鎖された狭い学園の中で、長い季節を剥き出しの心で向き合ってきた友情や愛情の育む絆が織りなす、優しさに溢れた春に至る為の物語です。

★テキスト

 今までのシリーズ同様に、今作も多数の引用や印象的な比喩、文飾がちりばめられ、美しくふくよかな文体として確立しています。
 これまでのシリーズを楽しく読めてきたなら当然文句の出ようはなく、と言いたいところですが、構成的な部分も含めて意図的に答えそのものを書かずに読み手の想像に任せる、なんて部分がいつにも増して多かったのは、情緒的な部分ではいい味になっていますが、多少スキップし過ぎて難解になっている部分もあるので痛し痒し、という印象です。

 それでも、ここまで共に学園生活を歩んできて、心がこなれた面々での心置けない会話の愉しさや温かさは、冬という季節を背景に一際鮮やかに輝いていて、とても心が豊かになったように感じられましたね。

★ルート構成

 基本的に過去シリーズ同様、ウィンドゥ右上の百合の花の反応である程度善し悪しが判別されるものの、大枠としての攻略順はしっかり決まっている、というイメージですね。
 春と秋は先にトゥルーが開示されてから派生エンド、というパターンでしたが、今回は夏編同様に、周を重ねるごとによりトゥルーに近づいていく、最後に大団円を迎えるスタンスを取っています。

 選択肢や謎解きは相変わらず簡単ではないですし、特に今回バッドエンド以外のルートを見るにあたっての制約条件が結構厳しく思いました。
 一方で特にGOODエンドあたりは、一周目の終わり方と比べてどこに変化がついているのか、それが選択肢の中から汲み取れない構成でもあったりで、その点はもう少し繊細な一工夫はあっても、と感じます。だって普通これ、最初にあのエンドに進んだら、とりあえず一通り逆サイドの選択を試してみるでしょうに。

 そのあたりですんなり進められない引っ掛かりはありつつ、一定条件を満たせば追加選択肢なども出て、ラストはしっかり大団円で終わっており、構成が読み手のプレイ感にそのまま立脚し過ぎているきらいはあるものの、まぁ綺麗にはまとめていると思いますね。

★シナリオ(ネタバレ考察など)

 今回は完全に新作のタイミングですし、過去作も含めてあれこれ行き来しながら検証すべき問題も沢山あるので、上手く切り分ける自信もないために最初からネタバレ白抜きで進めさせていただきます。

 まず純粋なシナリオの枠組みとしては、まゆりを取り戻す決意を固めていて、けれどそれには危険が伴うから仲間から一線を置いている蘇芳に対し、周りがやいのやいのとお節介を焼いて、最終的にはみんなの力を糾合して謎解きに挑んでいく、という王道的な構造であり、それ自体は文句はありません。
 他のヒロイン達をそういう風に駆り立てるだけの思想的な補助線は、当然春〜秋編の間でしっかり醸成されていますし、その精神的な成長と視野の広がりが、今回の難問を解きほぐすに際してもしかりヒント、きっかけづくりに寄与しているのははっきりわかります。

 まぁその辺のつくりに際して、今更ながらに苦言を呈するとすれば、相変わらず最終的には不法侵入と窃盗しか手段はないのかい、っていう画一的な構図と、それに対する罪の意識の一貫した薄さに対する部分は出てきます。
 それは本当に今更なのである程度飲み込むにしても、そういう非常手段に対するカウンターの在り方や、謎を解き明かすヒントの在り処など、全体的に序盤から中盤にかけて、わざと物語の着地点が殊更に暗く歪なものであるような印象にミスリードさせるパターンが多かった気はします。

 特に譲葉とネリネの再登場自体はあるかも、とは思っていたけれど、あんなあからさまに敵の尖兵的な立ち位置で冷徹に振る舞う、ってのは中々に心が痛いところですし、またそういう展開のバックボーンに対する説明や説得付けもかなり薄くて、色々とすんなり納得できない点は多くあります。
 それこそ謎は謎のまま、或いは言わぬが花、的な扱いで流されてしまった細かな謎もかなりありますし、その上で更に思うのは、そうまでして秘匿され続けてきた謎が、果たして本当にそこまで躍起になって隠さなきゃいけないものだったのか、それとも隠す意図があったのか、って部分の読み解きの難しさがあって、最終的な着地点としては確かに綺麗な大団円だけど、それで納得していいのか?って感じは出てきますね。

 その辺の謎に深入りする前にもうひとつシナリオ全体として思う所は、ズバリ百合成分が足りない!というところ。
 勿論それぞれのカップリングは健在ですけれど、あまり今回はそういうイチャラブ仲良しモードは強調されないのと、あと春〜秋はなんだかんだでそれぞれに新たな恋の芽生えが語られ、それと並行して謎解き、というスタンスだったのに対し、今回はどうしたって謎解きがメインになります。
 上で触れたようにその謎解きの秘密自体が結構拍子抜けなくらい軽いものではあり、けれどそれに比して、その謎に肉薄するためのアプローチの多彩さや苦難ぶりはかなり重く描かれており、それは今までに比べるとバランス的に冗長に思う部分も無きにしも非ず、とは感じました。

 当然その過程で、改めて蘇芳と、成長した他ヒロイン達が心をより深く通わす展開に愉しみを見出すことも出来ますが、でもそれはどうしても予定調和なところではあり、その心境の本意が中々垣間見えずにやきもきする、情動に満ちた三角関係の謎に比べるとサラッとした手触りになってしまうのは仕方のないところでしょう。
 トータルで見た時に、その謎解きにかける比重の重さの割にその真相が、というカタルシスの薄口さ、そしてようやく再会出来た、とはいえ、そこでグランドエンドに近づくほどに、ここまで辿り着けた原動力、蘇芳たちが直面した新たな三人のアミティエ制度の功罪の総括的な方向に進んでしまい、蘇芳とまゆりのイチャイチャはやっぱりほとんど見られなかったじゃんか!って憾みがちょい残ります。
 或いはその辺FDでたっぷり補完してくれますかっ!的な想いもありつつ、特に夏秋と謎を謎のままに残しての甘美さが際立っていて非常に面白かっただけに、ハードルが上がり過ぎていていざ解決編に辿り着いたらちょっと食い足りなかった、という贅沢な悩みは付き纏う印象ですね。

 さて、ここからは非常にざっくりですが謎の考察に入ります。
 論点として取り上げたいのは、大きく分けてみっつでしょうか。それは、

 @この学園の建物の構造面での秘密
 A譲葉とネリネの立場の謎
 Bそもそもアリウム=タルパの真相を隠匿していた真の理由

 という所で、上から順番に自分なりの考えを提示していこうかなと思います。

 まず@ですが、なんでこの学園、あんなに隠れ家的なところや、隠し部屋・隠し通路みたいなのが山ほどあるんだい?って話ですね。
 そのあたりは、最後の蘇芳の謎解きで、元々ここが保養所のような役割を果たしていた、とありますが、実体的にはもう少し陰惨な、一種の監禁・監視施設的な暗い役割も担っていた可能性を思わせます。
 多分あの図書室の隠し部屋はダリアのお父さんの書斎的な位置づけだったと思いますし、またマユリが美術室の隠し部屋に自然と行き来することが出来たのも、蘇芳たちが解明したルートとは違うところからの道行きがある、と考えられて、その辺の理由は明確には解析する余地はないものの、そうである、という現実は確かにあるはずで。

 それは現状、学園の運営を委ねられた一族であるバスキア家の謎でもあり、その効用的な部分はともかく、思想性としてもそういう閉塞的・隠蔽的な気質がこの場所には蔓延っている、と暗喩する上での装置的な征く割を果たしているのかなと感じますね。
 実際、ダリア先生はアリウムの住む家と学園を細やかに行き来している感はありますし、そしてそれを少なくとも大々的に表沙汰にはしたくなかったはずですから、そのあたりで一族しか知らない通路などを有効利用している可能性は高いです。
 そしてそれが、第二の謎にも少し繋がってくるのではないかと思っています。

 次いでAですが、そもそも譲葉はニカイアの会の先代会長として、どこまで謎の実態に肉薄していたのでしょうね?
 まず一つヒントになるというか、正直作中で正確に語られていたかうろ覚えなのですけれど、譲葉の代の級長や聖母役は誰だったのか?って点があります。

 譲葉がアガペのタルパの文言を耳にしたのは先代の会長から、という言質はあったと思うのですが、譲葉の代に真実の女神による失踪はあったのかなかったのか、そのあたりの関わり方で違う視点は持てるのかなと思います。
 少なくとも秋編が譲葉視点で、全てを理解して口を噤んでいる、というまでの気配は感じなかったですが、最低でも真実の女神を模する存在は認知していたようですし、それが春の殴打事件の謎にも繋がってくる、という示唆もあったので、そのあたりははっきりしないところです。

 とりあえず殴打事件に関しては、結果としては蘇芳の推理通り事故だったとしても、そのきっかけになったのが、この学園の謎にまつわるもの、いるべきでない人を見かけた、或いは不思議な場所から現れるのを見た、などの驚きに端を発していると解釈すればある程度まとまった話にはなります。
 その辺の状況証拠も含めて、逆にそれが二人が秋編で心を通わせた後、敢えてその謎の懐に飛び込んで協力している理由にも関わってくるのかもしれません。

 もっとも密接に考えれば、ネリネ自体が先代の聖母役で、実際にアリウムの娘としてシオンも演じた過去がある、という可能性もありますし、そこまで行かずとも、そういう役に選ばれればその後の便宜が図られる、という実情を想定していれば、先行きのない駆け落ちになるより、取引の上でその庇護に縋ろう、と思う向きもあるのかもしれないなと。
 家族関係で全てを捨ててより大変なのはネリネですから、そのあたりの対策でもあるでしょうし、そして現状で秘密を秘密のままにしておきたいと明確に願うのは誰か、その主体的な部分が最後の謎に関わってくると見立てています。

 最後にBの、そもそもこれは絶対的に、組織的に隠蔽された謎なのか、というところです。
 実際これはバスキア家にとって外聞を憚る問題ではありますが、ただ実際にプレイしてそれを告げられた時の印象としては、あれ?それだけ?って感はあったんですよね。
 聖母役を務めた内の幾人かがシオンだと誤認されて、その後シオンとして振る舞い病んだアリウムの心を慰める、それ自体は確かに大々的に噂されていいものではないにせよ、ここまで恐怖を煽って妨害しなくちゃいけないほどか?となると難しく感じます。

 それに、そういう役割が必要だとしても、それは普通に学業と並行して行う事も決して不可能ではないでしょう。
 勿論そうなると、同室のアミティエの理解くらいは必要になるでしょうが、みだりに言いふらさず協力させることで便宜の枠を広げる、くらいの処置でもなんとかなりそうですし、むしろわざわざあんな不自然な退学を装って疑念を燻らせるのが得策なのか?って話です。
 それに、本気で隠蔽するつもりなら色々脇が甘いのは確かで、まゆりが普通にあちこちに出入りしている事や、シオンの日記が標本なんてあからさまな証拠となる形で堂々残っている事などは、些か恣意的と見られても仕方のないところです。

 ですので、私の解釈としては、あくまでもこれは心の傷の問題に終始する構造なんだろう、と考えます。
 ダリアが未だに過去の傷を引きずり、それと出来る限り直面したくない故の措置で、それだけにいざ露呈しそうになった時に行き当たりばったりに糊塗してみたり、そういう部分は少なからずあるのだろうと思います。
 監視云々は譲葉のはったりっぽい気もしますし、実際のところダリアの心の問題の方が大きかったと見たいですし、それに対してまゆりも同調してしまった、と思うべきなのでしょう。

 アリウムの温かさに母の存在を思いだした、という示唆、そしてそれが蘇芳と想いが通じたばかりで、総室の恐怖を伴う中での逃避として機能してしまったと見れば、二人が暗黙の中でなるべくそれを糊塗し、自分の弱さと直面しない為に誰も近づけないように、と考えたのはありそうです。
 そう考えた時に、その為の妨害者として雇われた形の二人がああまでシニカルに演じる必要性はあったの?と、その辺はいかんせん誇張を感じてしまいますが、ある程度裏も表も知る中で、その時点では自分達の未来も確定していないし、慮るべきは、という冷徹な判断があるのも致し方なかったのかもしれませんね。

 それに穿って見た時、まゆりが異例の形で聖母役に選ばれたのは、その外見から最初からシオンの変わり身として立ってもらう、という忖度があるようにも感じますし、アミティエ制度が三人制になった自体は、ベッドの入れ替えとか実利的な部分ですぐにとはいかないから前もってだったとしても、お誂え向き、だったのはあるでしょうね。
 結局あの時点で女の子同士の恋愛をとどめられたのも、まゆりだから、に尽きるわけで、その意味ではやっぱりダリアの立ち位置は色々とうーん、ってなりますよね、えりかには悪いけど。逆にそういう後ろめたさがあればこそ、必要以上にその他の場面で徹底的に博愛主義を貫けるのかもしれませんが。

 そのあたり諸々考慮した上で、敢えてまゆりエンドとGOODエンドを切り分ける意図など、色々道中の選択に決定的な意味を感じ取りにくい構造での牛歩的な謎の開示とスタンスの変化が、それもやはり恣意的に感じる向きはあり、思想的な筋道として立花エンドの位置も含めてなるほど、と理解は出来るけれど、すんなり納得しがたいところはありました。
 色々考察を重ねた上で、こうであればそうか、という見立ては出来たものの、やっぱりその辺最初にストンと感情に落ちてくれないと心のざわめきに繋がらない感もあって、総合的に見ると夏・秋に比べて少し落ちるかな、というのが率直な評価ですかね。



キャラ(20/20)

★全体評価

 結果的に誰しもがそれぞれに大小はあれど心の傷を抱えていて、それと真っ直ぐ向き合う怖さゆえに誤った考えや行動に陥ってしまう、という人の弱さを追求しつつ、それを沢山の友で互いに支え合う事で前に進む強さを得る、という、王道的な関係性をしっかり最後まで紡いできた作品だと思います。
 その意味では作中に悪い人はどこにもいないし、結果的に苦しめられたり傷つけられたりするのも、その相手を理解するための一里塚、というスタンスはしっかりあって、それ故の赦しの尊さ、美しさがキャラ性にもはっきり投影されているのが素敵なところですね。

★NO,1!イチオシ!

 結局最終的にはえりかが一番好きかなぁと。
 というかこの子、最初から人嫌い人嫌いと予防線バリバリに張ってるくせに、実のところ一番絆されやすいというか惚れっぽいというか、見た目からハンデを負ってるところも含めての意地の張り方と素直になれなさのバランスが非常に良かったですね。
 物語的にも蘇芳と並ぶ探偵役として大活躍でしたし、基本あまりカップル成立後のイチャラブを堪能させてくれないこのもどかしい作風の中で、唯一素晴らしい百合感、夫婦感を千鳥との間で醸してもくれて、色んな意味で貴重なヒロインでしたし、本当にこの蓮っ葉な喋りと裏腹の乙女感が素敵でしたね。

★NO,2〜

 次点は当然蘇芳ですが、でも最後まで蘇芳は蘇芳だったなー、ってのはありますね。
 冬編でもなんだかんだ周りを思いやり過ぎて遠回りや勘違い、足踏みも沢山するし、その人間関係スキルの低さは一周回って愛らしいというか、それでも春編から比べれば長足の成長で、最後もしっかり自分のあるべき地歩を踏み固めていて、よく頑張りましたと褒めてあげたくなるのは確かです。
 見た目は一番大人びているのに愛らしいというギャップの強さもあり、シリーズ全体の主人公として相応しい存在感・魅力を放っていたと思います。

 次いでですと林檎、かなぁと。
 双子は結構性格が違うので、全編通していくと大分印象にもずれが出ますし、どうしても私としてはこういう性格の方が好きになりやすい、ってのはあります。
 当然双子は見た目もキュートですし、賑やかしとしても活躍度は高くて、その上での林檎の恋愛観、そこを克服した上での自然体が今回は特に気に入りました。

 そして千鳥は本当に夏からは考えられない表裏のなさ、真っ直ぐ気持ちのいい性格で、色々隠微な空気が流れるところもある舞台で、素晴らしい清涼剤として機能していましたね。
 エリチドの素晴らしさもありますし、嫉妬すら真っ直ぐで清々しくて、基本えりか至上主義ではあれ、徐々に周りとも打ち解けて真っ直ぐな心配を向けてくれるのがすごく心に沁みるところがありました。

 それに引き比べると、どうしてもやらかした感のあるヒロインは一歩引いてみちゃいますけどね。
 苺なんかも春のアレはこっちの主導でしょ?ってなるし、立花の黒歴史も当然、譲葉とネリネも多少悪ノリもあったとはいえ結果的にえりかにああだからうーんだし、ダリアはやっぱり最後まで胡散臭さは消えなかったしで、嫌いではないけど積極的に好き、と言うにはちょっと、ってのは私の心が狭いからでしょうかねぇ。。。


CG(18/20)

★全体評価など

 今回も量的な面ではシリーズの枠を踏襲し、全体的に非常に繊細で儚げで優美な絵柄でまとめているのも変わらず、とても綺麗で印象的な出来ではあったと思います。

 立ち絵に関しては新規は冬制服、あとまゆりのポーズくらいですけど、個人的に秋制服大好きだった身としてはちょっと衣替えが寂しかったりね。。。まあ冬制服も黒スト完備だからそこはGJ!なんですけど(笑)。
 そして千鳥には悪いけど、やっぱり冬制服の着こなしがベストなのは蘇芳だと思うなぁ。

 一枚絵は全部で45枚といつも通り。小物差分などもあるのでポリューミーとは言い難いですが、色々美麗でインパクトのあるものが揃っていましたね。
 特に最初の、鏡写しのようなまゆりとさゆりの使い分けとか、みんなで雪遊びとか、グランドの朝食準備とかがお気に入りです。


BGM(19/20)

★全体評価など

 楽曲もすべからく透明感と儚さ、そして今回は冬と言う季節感を踏まえての孤独感も踏まえての構成が目立ち、その上で心温める絆の在り処をそっと示すようなイメージが強かったですね。

 ボーカルは2曲+αというところです。
 OPの『Fairy Wreath』はすこぶる透明感に溢れ、冬の清冽な空気感を纏いながら手を取り合って、新雪を踏みしめて歩む力強さも兼備した素敵な曲ですね。ツインボーカルならではのサビの膨らみ、木霊のイメージがすごく鮮烈でもあり、かなり好きな曲です。
 EDの『Love in Bloom』も優しく柔らかく、雪の下からひょっこりと春の新芽が顔をのぞかせたようなほっこりする色合いに満ちていて、こちらも輪唱の効果がそれを上手く増幅させ、ゆとりのある安らかなイメージに調和させているなと思います。

 後は最後のグランドの、春編OPの『FLOWERS』のアミティエ三人での唱和バージョンも、シリーズの締めくくりとしてとても印象深いですし、やはりこれもしみじみといい曲だな、そしてまた出会いの春がやってきたんだなと、未来の明るさを思わせるところが素敵な演出でしたね。

 BGMはアレンジ含めて22曲、無論いくつかシリーズを通してのアレンジもありますが、相変わらずしっかりひとつひとつにマッチする楽曲を作ってきて流石です。
 出来も当然非常に高いレベルで安定していますし、耳に優しく、印象深く残る曲が多かったですね。
 特にお気に入りは『シオン』、かの少女の謎に秘められた哀しみと愛おしさ、温もりが非常に繊細かつ優麗に重ねられていて、すごく耳に残る上に淡い切なさの余韻を残してくれて、すごく気に入っています。


システム(8/10)

★演出など

 演出に関してはシリーズを重ねていく中で培われた、この作品ならではの素敵な演出効果をふんだんに投入して、時に楽しく、時に切なく、しっかり場面ごとの雰囲気を下支えする丁寧なバランスで組み立てられていると思います。
 今回はOPとEDムービーの美しさも出色で、特にOPの文字通り冬に妖精が舞うような神秘的な美しさは一見の価値がありますね。

 システム的にも元々そこまでがっつり細かく準備はされていない、雰囲気を楽しむ上でのギリギリのラインをしっかり意識しているところですので、便利、とは言い難いですけどこの作品にはこれでいいんだろうと改めて感じましたね。


総合(88/100)

 総プレイ時間は13時間くらいですね。
 大体最初の一周で8時間くらいはかかって、そこから全てのエンドやイベントを浚うのにかれこれ5時間くらい要していたと思います。結果的に4周する必要があるっぽいのですが、その為の分岐や手順が結構複雑なのが難儀と言えば難儀です。

 物語としても百合恋愛とミステリー要素のバランスが抜群だった春〜秋に対し、どうしても謎解きの比重が高くなる分間延びする印象も受けますが、それでも充分に耽美で優雅な雰囲気は味わえますし、面白かったとは思います。
 ただそこまでに煽られた期待値に対してのカタルシス、という意味ではあまり決定的な破壊力はなかったと思いますし、どこまでもしっとりと、その傷や想いに寄り添って楽しむべき物語で、でもその割には少し演出家上に危機感を煽ったりと、やや手つきに強引さが見られた分だけ、突き抜けた評価にはしづらかったと言えます。

 でも本当に、いざはじめてみたら期待以上に素晴らしく楽しいシリーズでしたし、百合模様の甘美さもしっかり堪能出来て、新たな扉を開いてみて良かったです。
 願わくばこれ、本当にそれぞれのカップリングがただイチャイチャしてるだけでいいですから、FD作ってくれたら喜び勇んで買っちゃいますねぇ。こっそり待ってますはい。。。
posted by クローバー at 17:29| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年09月14日

FLOWERS 春〜秋編

 元々結構興味はあったんですけど、タイミングとか色々あってプレイできておらず、でももうすぐ完結編の冬編が出る直前にたまさか上手く時間が作れたので、これ幸いと旧作まとめてプレイしました。
 本当はひとつずつ感想を書くのがいいんでしょうし、それだけの質の高さはある作品ですけれど、旧作ではありますしそこまで感想を練り込んでいる時間もないので、簡素に駆け足に三作まとめて、という形にさせてもらいます。

シナリオ(25/30)

 もつれあう恋情の糸の先に。

★あらすじ・概要

 春編の主人公である蘇芳は、見た目楚々として近寄りがたい美人ながら、それまでの生活環境によって引っ込み思案の人見知りでした。
 けれど決して人嫌いなわけではなく、むしろ友達を作りたいと心の底では熱望していて、その為に入学時に学園の側からアミティエという疑似友人を組んでくれるという、全寮制の聖アングレカム女子学園に進学する事を決めたのです。

 学園に来て早々に出会った委員長気質の立花や、幻想的な夜桜の下に佇んでいた美少女のマユリなど、知り合いは出来るものの、生来の臆病さが顔を出してスムーズな交流などは中々に覚束なくて。
 また今年から、それまで二人一組だったアミティエが三人一組に替わり、希望通りに立花&マユリとアミティエにはなれたものの、すぐに打ち解けた雰囲気を醸し出す二人に対し、どうしても壁がある態度になってしまって自己嫌悪を募らせる毎日。
 それでも一念発起してここに来たんだから、と、自分なりに少しずつアミティエやクラスメイトと打ち解けていき、その中でちょっとした事件などを解決したりすることで、元々見た目で一目置かれていたのが、近しい存在から強い信頼を置かれるように変化していきます。

 けれど、そんな彼女達の関係は、時を経るにつれて少しずつ歪みが生じていって。
 それは今までの慣習を覆す三人一組、というありようがもたらす、どうしようもない人の業を孕んだもので、蘇芳もまた人間関係の荒波に翻弄されながら、少しずつ自分の想いに向き合い成長していきます。
 これは女の園で繰り広げられる愛憎と不思議な事件、その経験を経て成長していく純粋無垢な乙女たちの絢爛優美な物語となります。

 当然ながら夏編は春編の続き、秋編は夏編の続きとなります。
 それぞれの話のトゥルーエンドを下敷きに連綿と話は続き、夏編はえりか、秋編は譲葉と主人公格を入れ替えながら、どちらも同じように人間関係や恋の悩みを抱えつつ、同時に学園に跋扈する不可思議にアプローチして、自分たちが望ましい形での解決策を模索していく、ということになります。
 作品全体を包み込む大きな謎は、全編通して見え隠れしつつもまだその尻尾を掴ませず、それぞれの物語が独立した終わり方をきちんと用意されていつつ、大枠ではしっかりミステリーとしての引きを残している、絶妙な塩梅の作り込みになっていると思いますね。

★テキスト

 非常に典雅な日本語と言い回しを好んで用いており、世俗を離れた乙女の園の独特な雰囲気とも上手く親和していて、非常に素敵な読み心地です。
 言い回しには雅飾がそれなりに目立つものの、理路としては比較的筋道が綺麗に通っていてわかりやすく、それでいてきちんと揺れる不条理な乙女心のありようも丁寧に投射していて、特に伝わらない想いやすれ違いの切なさを引きだすのが上手いなぁ、と感じています。

 古典文学や童話、映画からの引用がかなり多いので、私のように無教養な人間にはへぇー、そんな台詞があるんだねぇ、くらいにしか思い入れられない部分も多く、その辺はもったいなく感じるところですが、そのあたりも作風の格調高さに一役買っていて面白いですね。
 まぁいかんせん蘇芳やえりかあたりは、その年で博識すぎるだろう、と思う向きもないではないですがそのくらいはご愛嬌、という事で。

★ルート構成

 最近の作品としては圧倒的に選択肢が多く、しかもそれが即座にどの相手に好感を与えたのか、というのがとってもわかりにくいつくりになっていて、攻略は比較的難解です。
 ただ春編と秋編は、最初はどうやってもトゥルーに進むようなつくりっぽかったですし、トゥルーが最後に出てくる夏編にしても、その追加選択肢自体は簡単なので、面倒なのは派生ヒロインエンドとか、ヒロイン別エンドとかですね。
 バッドエンドも多数ありますが、基本的に推理を間違えた時に、という形ですし、特に踏んでも痛々し過ぎないマイルドな終わり方ですので気にせず進められるでしょう。

 正直推理パートに関しては、特に春編が難解でした。
 トータルで見た時に、蘇芳というヒロインの思考経路の特質をそう位置付けているなら、これだけ基本ノーヒントに近い謎でも解けるのだろう、とその点で納得は出来るのですけど、プレイヤーがそこを読み解くのは、本当にごくごくかすかなヒントを見逃さずにいないと無理なので厳しいですよね。
 夏編からはそこがより論理的かつマイルドになっているので、ある程度しっかり読み込んでいればこうだろう、と推測でも外しにくくはなっていると思います。春編は純粋に豆知識すら試されるからなぁ、最初の二つは特に。

 基本的に最初から誰狙い、とか考えて上手くいく雰囲気はないですし、想いのままに進めて、その上でもう一度回収プレイがてら他の選択肢も拾って楽しむくらいで充分でしょうか。
 結構選択肢次第で、道中誰とつるむかとか変わってくるので、周回プレイ前提のつくりですしそれが楽しいところもあるので。

★シナリオ(全体)

 イノグレというメーカー自体はじめてのプレイだったんですが、このシリーズは元々かなり重いシリアスが売りだった作風を一変して、ミステリィ要素は多分に残すけれど残酷な事にはならない、というのがポイントらしいですね。
 まぁ初見のわたしとしては、え、これで?って思う向きもなくはなかったですが、確かに結果的に誰も酷い目にはあっていないし、それぞれの幸せを得る過程での試練や苦難はあるにしても、そこにはしっかり個人の精神性や状況に伴う必然を用意していて、わたしとしてはすごく納得しやすい構図の作品ではありました。
 勿論未だにいくらか重い謎は残っていますし、冬編はその季節感に見合う辛い展開もかなりありそうではありますが、全体としての方針が明確な分安心して触れられる、と思いますね。

 また、作品全体として、この聖アングレカム学園に流布する七不思議が暗躍しますが、それぞれの物語で紐解かれていったように、あくまでも七不思議は人のありようを比喩的に投影したもの、或いはそれを盾に利用したものであり、すべての事件は人為的な要素で発生している、というのが軸として守られていますので、その点でも私好みの堅実さを感じます。

 基本的にどの話でも、その形に多様性があったりもしますが、三角関係は必ず物語の動因として絡んできます。
 女の子同士の、どこか恋に恋焦がれる危うさも感じさせる一途で純粋な恋模様は、直情的で強い思い込みに繋がりやすいからこそ怖くもあって、そういう駆け引きの面白さや、複雑な関係性の紐解きを楽しみつつ進められるのもこの作品の醍醐味ですね。
 例えば春編なんかは、三角関係のベクトルが普通の恋愛ADVとは少し違うものになっていて、こういうのも百合物語であればこそ許容できるところですし、秋編なんかも男女でアレをやるとドロッドロになりかねない所を、純粋な思慕、プラトニックな関係性に留めることで綺麗事をすごく綺麗に、説得的に見せることに成功しています。

 全体的にはその百合イチャとミステリィのバランスが良く、強いて言えばイチャラブゲー、というより古き良き純愛ゲー、の趣きが強いので、そのストーリーの最後まで本当に結びつく事はなく、その一歩手前での葛藤やときめきを楽しむ方に比重が置かれているので、もっとイチャイチャ堪能させろや!ってきらいはなくはないです。
 特に春編の二人はラストあぁですし、秋編の二人もトゥルーだとそのままフェードアウトっぽいので、夏編のエリチドの順調さがすごく微笑ましく感じられるというか、その点での餓えを辛うじて糊塗してくれている感じですかね。まあ蘇芳ちゃんに関しては最終的に、って期待は持てますけれど。

 以下各季節編ごとにつらつらと。
 旧作ですので特にネタばれなど神経質にはなり過ぎずサラッと進めていきますので、その点含み置きください。

★シナリオ(春編)

 これ単独ですと22点、ってところですね。
 どうしても導入部だけあり、色々学園の特殊性の説明や、脇のキャラ含めてのイメージ付けで尺を取られますし、かつ最初期の蘇芳はすこぶる引っ込み思案で踏み込んでいけないヘタレな子ですので、関係性の進展のもどかしさにうぬー、となるところはあります。

 もっとも、そうだからこそ心が通った瞬間の喜びも大きいし、それが嵩じて、っていうのも納得のいく構図で、けれど本当になんで今年から三角関係を助長するようなアミティエ三人制になったのか、っていうのも、未だに解けない大きな謎ですよね。
 ともあれ、元々のマユリの想いなどの関係もあり、三人の関係性は非常にねじくれた難しいものになっていきますが、そのコンプレックスの部分で共鳴する事で、最終的には蘇芳とマユリの心が通じ合うという事になります。
 ある意味で立花は当て馬と言うか、不憫な役回りではあるのですが、しかし同情を買わせないためなのか(笑)、一時盲目的に自分の恋情に振り回されて、あんな強引で卑怯な手段を講じてしまったのは、いかにも公明正大な立花らしくはなかったわけで、それが恋の持つ怖さだとも言えます。

 蘇芳は蘇芳で人情の機微にはとことん疎いところはあるので、そこから少しずつ成長していって、という部分を見守っていくのは楽しかったですが、謎解きの理不尽さや恋愛関係のいざこざの後味の悪さ、なによりラストの展開の唐突さと不条理さは明白ですので、その点で突き抜けた評価にはしづらいですかね。
 特に二人の関係性に終焉をもたらすべく通告された言い分は、その後のえりか×千鳥の関係性が何のお咎めもなく順調に進展していることを踏まえれば露骨に取ってつけたものだとわかりますし、そこの謎は冬編のお楽しみではありますが、それにしてもそこに肉薄するために蘇芳は夏・秋と水面下で粘り強く頑張って成長してきているんですよねぇ。

 秋編の蘇芳視点なんかで顕著なように、その想いは未だに燻りつつも熱を全く失っておらず、というのは明らかですし、当然マユリの再登場は約束されているわけですが、あらすじ見てる限り一度は突き放されて失意の底に、ということらしいですし、その心の隙間を狙ってまたぞろ立花がアプローチしてくるのかぁ、と思うとそれはそれで微妙ではあったり。。。
 立花も夏秋で大分印象を回復させてきたけれど、なんかあれだよねぇ、この三人の関係ってホワイトアルバム2を思い出すというか、離れてしまった一番好きな人と、常に傍にいる二番目に好きな人的な切ないイメージが濃厚に付き纏います。ホワルバだと雪菜派だったけど、こっちは蘇芳の気持ちもより明白だし、すんなりマユリと結ばれて欲しいんですけどね。。。

★シナリオ(夏編)

 点数としては27点、今のところ夏編が一番好みですね。
 全体として大きく物語の底流が蠢く感じではなく、夏の爽やかな気配の中で、新たな転校生の千鳥と、気難し屋のえりかが織り成す、角突き合わせるところから始まる優美な関係性の進展は本当に微笑ましいものがありました。
 恋の鞘当て役としてのバスキアも存在感はありましたが、春編の時点で彼女は何か隠してる、ってのが明白なだけにあまり心が寄り切らず、やっぱり基本的には千鳥との喧嘩するほど仲がいい、を地で行くような積み重ねが見せどころだと思います。

 夏らしいイベントも多彩にある中で、春の続きとしての蘇芳との関わりも非常に多いですし、他のキャラとも関係がこなれてきての自然さ、雰囲気の良さがより加速度的に上がっており、その上での謎解きも春ほど悲愴感や不条理さがなく、かつえりかの気質を有意に用いての着地点を丁寧に模索しているので、そのあたりでも好感が持てました。
 ともあれ、人をからかうのは好きだけどぐいぐい来られると弱いえりかの可愛さ、真っ直ぐすぎる気質が誤解を招きながらも、本当は心優しいところを徐々に見せていく千鳥との結びつき、愛の育み方はすごく丁寧で綺麗でしたし、それを千鳥のトラウマであるバレエを通じて、というのも素敵でしたね。

 終盤のバレエ発表会のシーンなど非常に盛り上がりもしましたし、後々に切なさが残らない、夏らしく爽快で壮麗な物語だったのもあり、素直に一番評価したいところです。
 まあある程度秋編の二人の夫婦漫才のこなれっぷりに絆された部分もないとは言えないんですが、少なくともこのストーリーだけでもそれを予感させる空気は春秋と違って明確に出していましたからね。冬編でもこのエリチドの活躍には大いに期待です。
 秋編での、譲葉を鞘当てにしての互いにヤキモチ焼かせよう合戦とか超いじらくて最高でしたしねー。。。

★シナリオ(秋編)

 こちらは点数だと26点です。
 他の季節に比べて、秋らしくどこか奥深く情緒的な恋模様になっていて、かつ三角関係の構図としても、ベースとしての譲葉の純愛があれど、それを軸に双子それぞれの想い、愛らしさ、どうしようもない葛藤や傾斜など非常に丁寧かつ説得的に描かれており、一人天真爛漫なネリネさんが時々憎たらしくなるくらいに悩んで悩み通すイメージですね。

 そういう心の繊細な機微をある程度共鳴して持ち合わせているが故の、関係性のままごとめいた、だけど心の底から愛おしい関わりもしっかり綴ってくれていますし、けどそれでも忘れられない想いに対するアプローチ、それが結果的に幼馴染の関係性の根幹にも罅を入れ、全てをリセットしてありたい自分に歩み寄っていく、そのあたりのバランスは流石でした。
 ここまでのイメージと違い、譲葉が思いの外ヘタレというか自己を持たないキャラとして投影されていて、一年生の知り合いたちにあれこれと手を焼かせ、尻を叩かせてってあたりは先輩の威厳もあったものじゃないんですが、逆に春夏ヒロインズの素晴らしい魅力を底上げする役にはたっていますし、それくらいでないと超えられない壁であるのも確かで。

 あまり学園自体に宗教色を強く滲ませてはいなくても、それでも宗教人としての在り方を明確に打ち出している以上、許されない関係は明白にあって。
 それでも、と、今までの全てを捨てて新たな契りを結ぶ覚悟を問われて、ようやくそこに至れた時のカタルシスは非常に大きく、ある意味ではネリネを宗教に依拠した思考を預けるありようから引きずり下ろした、という意味で残酷でもあるのですけど、その先にきっとそれ以上の幸せはある、と思わせる内容ではありました。

 といって、あのタイミングでそこまではっきりと過去を断ち切る必要はあるのか?って気もするけれど、譲葉はともかくネリネにとってはそれが必要なんだったんだろうなと。
 実際に少しでも心が揺れればあの地平には踏み込めない、というのは、他のルートの展開を見ても明らかですし、二重の禁忌を乗り越えるための飛躍、と思えば残念だけど仕方ないのでしょう。正直この二人の改めての恋人としてのイチャイチャはすごく見てみたかったんですけどね〜。

 双子の物語としても非常に出来がいいですし、まぁそのトリックは春にもやったよね、ってところでのマイナスポイントはありますけれど、二人で譲葉に寄り添う感じの一枚絵の破壊力もあり、しみじみと美しいなぁと思わせてくれました。
 あと夏編でも書いたけど、エリチドの活躍がすごく目立っていてそこは嬉しかったですねー。蘇芳は逆に、より水面下で色々頑張ってたみたいですけど、喋りひとつでも春とは別人のように逞しくなって、本当に譲葉はい後輩に恵まれたと思います。。。

★シナリオ総括

 点数は三作の平均で出していますが、総じて百合ものとして上質、ミステリィとしても奥行きがあり、友情譚としても非常に楽しめる内容で、文学的な芳醇さすら兼ね備えており、思った以上に好みにマッチする作風でした。
 まだ完結していない段階で名作、と断じることが出来るのは中々に珍しいですし、本当に明日からの冬編が楽しみで仕方ないですね〜。


キャラ(20/20) 

★全体評価など

 全体的にはとてもキャラの造形は上手く、年端も行かない少女らしい一途さと儚さが良く醸し出されている一方で、どこか退廃的で大人びた雰囲気との掛け合わせがキャラ毎別個に丁寧なつくりだと思います。
 非常に狭い世界の中の、なおも狭い人間関係ではるので、もう少し煮詰まったところはありそうだなー、と思ったり、一クラスしかないのに顔もわからない先輩がぞろぞろいたりする?とか、後はシナリオでも書いたように知的に過ぎる、というきらいはあるものの、総じて魅力的です。

 当然ながら影の部分も持ち合わせての魅力ではありますし、好き嫌いは全体を進めていく中で出てくるかもですけど、基本悪人はどこにもいない世界観ですからね。
 その分神の赦しなど、そちらに傾倒した感もなくはないですけど、どうあれ基本軽快で愛らしいキャラの魅力に対し、敢えてケチをつけるほどでもない、という感じです。

★NO,1!イチオシ!
 
 現状は、と留保をつけつつえりかかなと。
 春編からの独特な立ち位置と、精神性と身体性の乖離、そこを埋めてくれるアミティエにして恋人の登場と、あらゆる場面で実際的な可愛らしさをとことん楽しませてくれますし、この子の憎まれ口と好奇心、不器用な優しさは本当に物語の膨らみをもたらしつつ、暴走を塞ぎ止めてくれているって感じがあります。

 見た目的にも性格的にも相当に好みですし、冬編の活躍や内容次第で蘇芳に譲る可能性はありますけど、それでもこのシリーズのトップ2はゆらがないところでしょうね。

★NO,2〜

 当然蘇芳ちゃんもとびきり可愛いですし、頑張り屋で情熱的なだけに、どんな困難もその熱量があれば平気だよ、と励ましたくなりますね。
 色々出来過ぎな印象もありますけど、その大人な部分と子供の部分のアンバランスさが非常に陰のある美しさと相俟って耽美な魅力に繋がっていますし、次が本当に楽しみです。

 その次だと、んー悩むけど千鳥、かなぁ。
 主に秋編でのガラッと一変した素直な愛らしさが本当に破壊力抜群だった、というのもありますし、結構どこか腹に一物、ってほどではないけど悪戯好きとかも含めて何かを抱えるキャラが多い中、この子は本当に裏表少なくさっぱり爽快なイメージで、そこも見ていて安心するというか。

 双子、特に林檎は可愛いと思いますが、彼女の生き方の選択が正しいものだったのかは難しいところですし、それでも二人が仲良く幸せであれるなら、とは思いますね。
 まあキリスト教的には、自分の才能を韜晦して生きることは許されない神への冒涜なだけになんともですが、そのあたりのアンチテーゼとしてもいい味わいのキャラになっていると思います。


CG(19/20)

★全体評価など

 非常に儚さと美しさを兼ね備え、それでいて年頃の少女らしい淡い耽美さまでをもしっかり注ぎ込んだ、絶妙に幽玄で流麗優美な絵柄だと思います。
 塗りの淡さも相俟って本当に芸術的な雰囲気が溢れていますし、出来も安定していて素晴らしいですね。絶対的に好き、というほどではないですけど、独特の魅力があるのは間違いありません。

 立ち絵に関しては基本ポーズや表情差分は春から変化なく、服飾は季節ごとの制服が別々に用意されていて目に麗しいところです。
 特に秋制服は超好みで、勿論黒スト完備なのが一番の理由ですけど(笑)、春夏の涼しげなイメージから一歩引いた、清楚で気品ある雰囲気がすごくこの学園のイメージにマッチしているなって。

 一枚絵は各季節ごとに45枚ずつ、値段考えればまずまずですし、その中に小物や演出系のもあるので量的には大満足とはいかないでしょうが、その分高いクオリティで目を楽しませてくれますね。
 どの季節も綺麗ですけど、単純に好み度と印象度で言えば秋編が一歩抜けていると思います。譲葉に寄り添う双子の愛らしさや、ネリネの神すら嫉妬するような凄絶な美しさをすごく丁寧に引き出せていて、あと秋編ラストの蘇芳の悶えがエロ過ぎて。。。


BGM(19/20)

★全体評価など

 こちらも連作ものにありがちな音楽の使い回しが一切なく、勿論一定数作品全体のイメージを投影する基幹曲は残っていますけれど、きちんと季節とこの主役となるキャラの恋愛イメージに合わせた曲を用意していて、その辺はいい仕事をしていると思います。
 楽曲の質も凄く透明で繊細で柔らかく、絵と同様に世界観との親和性が抜群で本当に綺麗ですし、ひとつひとつの曲にメッセージ性、奥行きも感じさせる出来で素晴らしいと感じますね。
 まぁそこまでガッツリ聴きこんではいないですし、ボーカル的に全部いい出来だけど突出して、というほどのはなかった分少し割り引いて、ですけど、ここは満点でも文句ないくらいの内容でした。

 ボーカル曲は基本各シーズンOP・EDで2曲ずつに、イベント曲なども少し用意されています。
 曲としては秋編OPの虹の魔法が一番好きで、後は春編のEDもいいですね。秋編はあの讃美歌っぽい、譲葉とネリネが一緒に歌う曲も好きなんですけど、あれは実際にある曲っぽいですしね。

 BGMも各シーズン平均15曲にアレンジそこそこ、と、値段を考えればかなり豪華な水準で用意されており、どれもいい出来で耳に優しく響きます。
 流石にシリーズ通貫しているだけあり、アングレカムやモノローグはすごくいい曲だなと感じますし、他も特別にこれは!ってまで聴きこんでないのでアレですが、聞けば聞くほど好きになれそうな曲が結構あったなと思いますね。
 流石に冬編はこの辺もしっかりやりたいところです。


★システム(8/10)

★演出など

 演出に関してはシリーズが進むにつれて少しずつ特色が出てきているというか、遊び心が増えているというかで、目立って動くものはないけれど、要所での面白さ、破壊力は中々ですね。
 夏から搭載したうるうる目とか、秋編のハロウィンリッカなんかは素晴らしいインパクトでしたし、そして当然物語の要所での情感演出の構図の切り方は工夫が凝らされていて、盛り上がりをしっかり下支えしてくれていると思います。

 システム的には必要最低限、ってところで、ジャンプ機能は搭載されているのでそこは便利ではあります。これだけ選択肢があるとスキップだけでは中々ね。
 ただ本当に最低限ですし、使い勝手も普通、デザインセンスの良さは流石ですし、ギャラリーの充実度も評価出来ますけど、もう少し細やかでもいいかな、と思う所はなくはないですかね。
 まぁある意味、世界観をあまりゴテゴテ機能性で飾って壊したくないタイプの作風ではありますし、これはこれで充分と言えなくもないんですけど。


総合(91/100)

 総プレイ時間は33時間くらい。
 基本各シーズンで10〜12時間くらいの範疇で、値段を踏まえると物語としてはかなりポリューミーではあるし、といって中身が薄っぺらい事は決してなく、隅から隅まで面白さが詰まっていて見事ですね。

 無論やや癖はありますし、百合ものの常套とはどんななのか、ってガイドラインがない中では評価もしづらいですが、少なくとも一般的な萌えゲーのノリとは大きく一線を画した風雅で文学的な情緒が薫る印象であり、展開も柔らかくなっているとはいえきついものも多いので人を選ぶところはあるでしょう。
 それでもキャラの魅力と物語の構成の妙、奥行き、美しさなどは一見の価値がある出来に仕上がっていると感じますので、百合に興味があるならプレイしてみて損はしないシリーズではないかな、と思います。

 どうしても夏秋に比べると春だけは弱さがありますけれど、そこは導入編としてのどうしようもなさはありますので、ちょっと突っかかるところはあっても気にせず先に進んでもらえればいいんじゃないかとは感じますね。 
posted by クローバー at 15:23| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年09月12日

超昴神騎エクシール

 体験版やってみたら、思ったよりエリスもキリカも可愛かったのでノリで購入。

シナリオ(19/30)

 表裏一体の人の業。

★あらすじ

 幼い頃は引っ込み思案だった主人公は、ある日自分が魔王の転生体であると魔族の宰相であるベゼルに聞かされ、それからは少しずつ、自分の願う世界を求める気持ちを真っ直ぐさらけ出せる、良くも悪くも意思と情熱、欲望に満ちた存在になっていきました。
 普段はエロゲーのシナリオライターなどのバイトで稼ぎ、偶然知り合った趣味を同じくできる貴重な後輩であるキリカと適当につるみながら、いつか来る覚醒の日を待ち望んでいたのです。

 そして、遂にその日がやってきて。
 ベゼルに連れられた儀式の間で、かつての魔王の力を得ることに成功しますが、普段の言動から魔族の王としての自覚を感じ取っていなかったベゼルの裏切りにより、その力の大半を奪い取られてしまいます。
 すわもう少しで全てが失われる、そんなところに飛び込んできたのが、魔族の天敵、神界に住む天使の中でも特に戦闘力に秀でた存在と言われる一人の神騎でした。

 たまさか以前に、主人公が弱きを助ける場面を見知っていたことで、その神騎であるエリスは動揺しますが、それでも魔の撲滅が自らの使命と、二人に一斉に刃を向けてきます。
 ベゼルとエリスの戦闘を為すすべなく見ているしかない主人公、そして折り悪くその場に、主人公の動向を気にかけていたキリカまでやってきてしまい、結果としてベゼルから刃を向けられた主人公を庇う形でキリカが致命傷を負ってしまいます。

 主人公の本気の慟哭を前に、ベゼルを逃がしてしまったエリスは、自分の力を分け与えてキリカを救いますが、その代償は大きく、その後に現れた魔族の雑魚にすら苦戦するほど力が落ちてしまって。
 そんなエリスの力になれないか、必死に考えた主人公は、自分の中に残っている僅かな魔力を増幅させ、受け渡すことでエリスに力を与えられることに気付き、もっとも欲望が直結するエロティックな行為を行う事でそれを成功させます。
 その力で辛うじて当面の危機を凌いだエリスですが、その時にはベゼルは魔の力を顕現させ、街を悪魔の煉獄に変貌させてしまったのです。

 魔宰相改め魔王となったベゼルと、その配下の六魔将。
 彼等の絶対的な恐怖の支配に街は閉ざされ、その支配を打破するために、主人公とエリスは一時互いの本質的な立場を脇に置いて共闘する事に。
 やがて目覚めたキリカも、エリスの力を貰った事で神騎として覚醒し、それぞれにエクシール、キリエルとして、世界の平和を、無辜の民の安全を守る為に奔走する事になるのです。

 果たして彼らは、今まで永遠に程近い長さで諍いを繰り広げてきた魔族と天使の因縁の狭間で、自らの道を貫き平和な世界を取り戻すことが出来るのか?
 その戦いの発端、世界の真実に直面した時に、いかなる選択をしていくのか?
 これは、想いの力が世界の形すらも変えていく、人の可能性の大きさと、その業が持つ二面性を突き付ける、愛と努力と欲望の物語です。

★テキスト

 全体的に主人公の気質がネアカで真っ直ぐなのもあり、軽快でコミカルで、シリアスでも重くなり過ぎない空気を出せているかなと思います。
 まあゲーム的に日常の絡みがメインの作品ではないので、その辺は最低限の関係性の進展であり、大体は導魔と名付けられたHシーンでの関わりにはなってきますが、そこでのノリも基本的にはさほど差はない感じですし、簡素過ぎでもくどすぎでもなく、バランス良くさくさく読み進められる内容でしょう。

 単純な友愛や純愛だけでなく、ドロドロの辱的な関係やその場での心理などもそれなりには丁寧に紡がれていますので、苦手な人にはうーん、ってところもありそうですが、それも作品自体の持ち味ではありますし、凌辱関連は避けようと思えば避けられる(ただそれを見ないとゲームボリュームとしては物足りなさは出てくるけれど)ので、特に気にするほどではないのかなと。

★ルート構成

 基本的には導魔の繰り返しによる好感度と鬼畜度が、最終的な分岐のファクターになっているようです。
 純愛寄りが二人のハッピーエンドとハーレムエンド、鬼畜寄りが二人の鬼畜エンドになり、それ以外にもステータス変化によるゲームオーバーなどは多彩にあり、ゲーム性の中でヒロインを攻略する意識も同時に楽しめるバランスにはなっているのかなと。
 
 まあ好感度や鬼畜度の調整は比較的簡単ですし、ルート分岐が最終章の序盤にあるので、ある程度しっかりその直前くらいまでにデータを作り込んで、好感度二人ともマックスで、鬼畜度が分水嶺の80ちょい手前、ってくらいにしておくと、そこから一気に全部のエンドに派生出来て便利かなと思います。

★シナリオ

 序盤に純粋な魔族と天使の抗争、という構図を作っておきながら、それをもう一段奥行きのある展開、策略の中で開示していく構造はそれなりに盛り上がりますし、主人公達を含めた過去の因縁話と、そこに含まれる人と言う存在の普遍的なありよう、弱さと希望の様をしっかり見せてくれる、という意味では、新味はないけれど堅実なシナリオではあると思います。

 誤謬ばかりの人間に愛想を尽かして、徹底的な管理社会で導いていこう、という思考は、正義の旗印の前では魅惑的に見えるものの、それは人が持つ継続性や無限の可能性を踏みつけにし、消滅させてしまうものであるのは確かで、その軋轢や葛藤の中で自分の未来を清く正しく選び取ることが出来るか、また危機の中でどれだけ人としての淳良さを保てるか、そういうイメージが強く投影されていて。
 導魔の内容的にも、鬼畜に流れるほどにそういう道徳的な人間性を振り捨てていく格好になりますし、結果として土台に愛があるからそれをいったんは受け入れてくれるけれども、そういうやり方は歪みや更なる欲望の螺旋を生み、しっぺ返しとなって戻ってくる、という構図を鬼畜ルートはしっかり示していましたね。

 純愛系のルートの場合は、主人公の人格も歪まず、あくまでも人の可能性を信じて見守り、困った時はそっと手を差し伸べるというスタンスを維持して最後まで進んでいきますし、その過程の中で今までしっかり見据えてこなかった自分の中の真なる思い、愛の発露に気付くというのも王道的な構図でした。
 正直シナリオとして、全体的に綺麗にまとまっておりさほど粗もなく、といってものすごく盛り上がるほどの奥行きや肉付けもない、設定をサラッとなぞった感のあるつくりではあるので、あまり深く語ることもないんですよねぇ。。。

 導魔や凌辱などの主軸の部分については、導魔はあくまでも魔力供給、という建前を貫きつつも、比較的しっかりヒロインと心が繋がる過程を段階を追って丁寧に描いているシーンもあり、それとは別に性の奔放さを素直に楽しむ、みたいなものもあって、そのあたりは多彩なニーズに応えていると思います。
 ただ凌辱系もそうですが、魔力を使って認識操作をし、今の自分がおかしいことをしていない〜、的な形での特殊なHが比較的多いですし、凌辱なんかは傍目から見た嫌悪感と、ヒロインの感情に比較的乖離が出来てくるものも多かったので、純粋な凌辱としては甘いですし、特殊シーンを楽しむという上でもその感情にややリアリティが薄いのかな、とは感じました。
 それに凌辱系は基本寸止めで救えるパターンがほとんどですし、段階も2つまでなので、幅広く色々なニーズを抑えてはいますが、特化的に嵌る、というほどの奥行きは足りなかったように思います。まぁこちらの方面には造詣が薄いのでなんともですけれど。

 まぁやっぱり個人的には純愛ラブラブHのほうがときめきましたし、あと地味に二人のレズシーンが好きだったなぁ(笑)。本当にここ最近百合的な関わりに対する好み度が上がってる気もするのはなんでかしら。

★ゲームシステム

 基本的には1日2回の導魔、パワーアップイベントと、夜間の徐々に行動回数が増えていく戦闘・マップ解放イベントを繰り返して、時間制限もある中で一定の区域をボスを倒して解放、を進めていく形です。

 導魔に関しては、主人公の魔力の限界もありますので、ある程度上手く配分していく必要がありますが、ヒロインがAPを確保していなければそもそもまともに戦えないので、このあたりのバランスのとり方が、特に序盤慣れるまでは苦労するかもしれません。
 魔力回復の手段が、貴重なコマンドを一つ使っての休憩と、後は鬼畜度次第での一日の終わりの回復のみなので、攻略として楽なのは、最初のうちに肉欲度が上がり過ぎない程度に敗北して鬼畜度を50〜60くらい稼いでおく、だったりします(笑)。
 まぁ私の場合中盤過ぎまで、あくまで一周目は純愛!鬼畜な事は一切しないしさせないぜ!なんて淳良すぎる誓いを立てて進めていたらすごく大変だったわけで、流石に途中で節を折ることになりました。。。まあ無論色々戦い方を工夫すればそういうやり方でもなんとかなるとは思いますけれど、初見でそれは無謀でしたね(笑)。

 ともかく、ある程度魔力の担保と余裕がある状況では、積極的に導魔を繰り返していくのが得策ですし、どちらかと言うとステータスアップよりはAPの確保に重点を置いた方が楽だったのかな、と思います。
 基本どれだけ強い技を持っていてもAPがなければ持ち腐れですし、ステータスだけ上げても基礎攻撃だけでは上限に限界があるので、APを多く確保して技を出来るだけ幅広く解放、相手の適正に対して効果的なものを優先的に選択していくのが無難ですが妥当な戦略になります。

 一部ボスなどは連戦になったり、予期しない展開になったりもしますので、転ばぬ先のAPというべきか、常にいつでも全力戦闘で出来るくらいは保持して進めれば、行き詰まることも少ないはずです。
 ボス敗北でのステータスアップやAP獲得もあるので、鬼畜度や肉欲度との兼ね合いである程度わざと負ける戦略が本当に有効なんですよね、心情的には避けたいのは山々なんですけど。

 戦闘に関しては、千里眼を使って次に戦う相手の攻撃セットを覗いて、それを踏まえて無駄なく効率よく勝てるように自身のセットを調整していくのが基本になります。
 無論雑魚相手ならそれなしで力押しでも勝てなくはないですが、特に能力がひとつのステータスだけ特化したようなタイプは、それなりの戦略を使わないと無駄打ちになる場合が多いので、魔力が勿体無いとは思っても長い目で見ればその方が確実ですし安定します。
 再行動や肉欲度抑制の魔法は正直あまり出番がないと思うので、千里眼だけは惜しまない方が、特に一周目では楽に進められると思いますね。

 ちなみに魔力をケチる為に、千里眼使ってから直前データロードして戦う、というのもやってみたのですけど、攻撃パターン自体はロードするとランダムで変化するようなので、雑魚ならそれでもいいですが、ボスクラス相手だとちょっとリスキーですね。
 戦略としては、かなり早い段階でアクトジェンドという、相手の行動と回避を抑制するスキルが覚えられるので、特にボス戦では敵の必殺攻撃に合わせてそれを繰り出すのが一番楽な勝ち方になると思います。
 回避も不能になるので、一人がアクトジェンドを使い、そのタイミングでもう一人が強力な攻撃、という組み合わせは非常に効果的ですし、こちらのダメージも抑制できるので、なにはなくともこれだけは積極的に採用すべきパターンになるのかなと。

 ダメージに関しては一日過ぎると大体1/4なのかな?自動回復しますし、勿論ダメージを受け過ぎた時はイベント項目で回復も出来ますが、なるべくそれは避けたいところです。
 突き詰めると雑魚相手の時は、なるべくAP消費を抑えて、かつダメージを1/4以内で済ませられるバランスを狙っていくのがいいですし、ボス戦は攻めるべきタイミングでの消費を惜しまず、アクトジェンドを効果的に使って押し切るのが基本でしょうか。

 マップ探索は必ずしも全部解放しなくても、ボスさえ倒せばOKですが、一周目の時は全部解放していった方がいいかなとは思います。
 特定のマップを踏むことで隠し通路やイベントマップが解放される事もありますし、そこで能力UPやAP獲得など有難い恩恵も受けられるので、時間の許す限りやっておくべきでしょう。
 雑魚も駆逐すると魔王である主人公に魔力が還元されて上限が上がる仕組みですので、なるべく積極的に倒すべきですし、ただ当然こちらのダメージや残りAPを踏まえて無理のない手順は必要になりますね。

 この辺システムとしては、たまに雑魚がマップ移動して、それを放置しておくと一度占領した地点を取り返される場合があるのですけど、それのデメリットがあまりない、ってのはぬるいつくりなのかなと。
 もしかすると本拠地まで占領されたらアウト、くらいはあるのかもですが、例えば占有率でボスの能力が変わってくるとか、そのくらいの制約はあってもいいと思いますし、また敵から攻撃される事はないので、こちらが常に意図的に、万全のタイミングでのみ仕掛けられるというのも楽っちゃ楽なところですね。

 実のところ、ある程度ステータス上げておけば終盤までは力押し出来るのですけど、流石に終盤のボスだけはそれでは足りないところはありますし、救済措置はありますけどやっぱり負けると悔しいですからね、ある程度序盤から戦略を練って進めていく方が楽しいですし、ステータスは極端に相手の数字より低い、とは困るにしても、互角くらいまで育てておけば特に問題はなさそうです。
 特に、一周クリア後に開示される、特殊条件クリアを達成するためには、日数制限も厳しくなる中で効率を突き詰めたやり方は必須でしょうね。実際のところ、それに挑戦しようと思うほどゲームとして楽しいか、と言われると微妙なラインとは思いますし、私もやってないのでそれで何が楽しめるのか(恒例のスタッフコーナーの樹はしますが)はわかりませぬ。

★シナリオ総括

 トータルとして色々な要素をバランス良く詰め込んだ、まとまりのある作品にはなっているのですけど、どの要素にも特化的な面白味が足りない感もあります。
 この作品に何を求めるにしても半端さはあるので、誰しもがそこそこは満足するけどこれは神ゲー!というような嵌り方はまずしないんじゃないかな?という無難さに終始していて、その点で印象的にも内容的にも点数をつけるのが難しいところはありましたね。


キャラ(19/20)

★全体評価

 どうしてもキャラゲーlevelにしっかりキャラを掘り下げる、という方向には進まないですし、辱いシーンの中での精神的な変貌や崩壊なども多々出てくるので、どうしても諸手を上げてぞっこん好き、って感じにはなれないのが難点ではありますね。
 まあそれでもヒロインは二人とも思いの外可愛かったし、脇のキャラも個性豊かで面白さはありましたけれどね。

★NO,1!イチオシ!

 まぁやっぱりキリカかなぁ。
 表面上クールだけど内面的にはかなり熱いものがあり、その情も濃くて、ジュラウス絡みの展開とかも悪くなかったですし、呆れながらも常に主人公の想いや願いに寄り添ってくれる健気さも含めて可愛かったと思います。当然ロリ体型サイコー!ってところもありますし(笑)。

 エリスも普通に可愛かったですし、一々「魔王的です!」って過剰反応するのとか面白かったですけど、トータルで見るとキリカよりはどうしても、って感じですね。
 あとここで書くべきかはともかく、日常シーンがパートボイスなのはより感情移入を妨げてしまっていたとは思いますけれどね。


CG(18/20)

★全体評価

 絵柄そのものはやはり鮮麗でかつ扇情的でもあり、素晴らしいものがあったと思います。
 ただCGの大半が辱いシーンなのはあるし、出来自体は安定してるけどやっぱり痛々しいのとかグロいのは個人的にうーん、ってのはあって(じゃあ買うなよ、って話になりそうですが。。。)、純愛モードの素敵さと相殺してこのくらいの点数かなぁと。

 立ち絵に関してはこういう作品ですのでポーズも少ないし表情差分や服飾も超限定的であり、攻撃食らっての悲鳴を上げる表情はそそられる、とか鬼畜い事は思いつつ(笑)、特別に語ることもないかなと。

★1枚絵

 全部で81枚と、まあ量としては水準くらいですね。
 全体的に情感溢れる迫力のある絵柄ですし、エロスはひたすらにえっちくて美しくもあり、総合的な満足度はかなり高いと思います。シーンシチュに好みのものがあればそれなりにハマるのではないでしょうか。

 特にお気に入りは3枚。
 1枚目はレズエロ貝合わせ、この艶めかしい体勢と二人の淫靡な雰囲気、どことなく流れる情愛の空気が凄く好きですね。
 2枚目はキリカセックスバック、不安と期待が綯い交ぜになった初期の雰囲気から、徐々に慣れてきて快楽に溺れていく雰囲気の作り方が凄く好きです。
 3枚目はキリカコスプレH背面座位、まあこの体位が好きなのもありますし、絶頂の時に頤をさらけ出してのけぞるのってなんかすごくエロいよね。。。体勢的には売春Hの前戯の時の方が好きかもなんだけど、あれはシチュが嫌いなのでなんとも。


BGM(18/20)

★全体評価

 いかにもこのシリーズらしい疾走感と緊迫感がしっかり絡み合った素敵な楽曲に仕上がっているかなと思います。
 質量ともに充分な出来ですし、ボーカル曲がかなり好みだったので点数としては少し甘めにしてありまする

★ボーカル曲

 全部で3曲。

 OPの『Exseed the Destiny』はわかりやすく疾走感と爽快感に満ちた、正義の変身ヒロイン参上!って感じの素敵な曲ですね。
 基本力強くありつつ、時折旋律やボーカルで透明感が滲むのもいい味を出していて、フルバージョンのDメロが中々に情緒的で素敵なのもありかなり気に入っています。

 バットEDの『夢が泣いてる』も地味に凄くいい曲です。
 シチュ的に切ない終わり方ですので、それを投影して郷愁漂うメロディがベースになってますし、その噛み締めるような雰囲気、サビの、遠くの月に叫ぶような哀切さが胸にひしひしと迫ってきて、粒揃いのこの作品のボーカルの中でも一番好きですね。

 ノーマルEDの『In Dream of You』は、純愛寄りのエンドなのでその分軽快で柔らかさと優しさがあり、その先の明るい未来を強く感じさせる正統派のEDと思います。
 特にサビの爽快な走り方は好きですけれど、この作品の中では一番インパクトは薄かったかな、という感じですね。

★BGM

 全部で29曲+αと、ほぼ水準に出揃っていますし、質も安定して高いと思います。
 どことなく世界観を投影した神秘的な装いもあり、バトルにも荘厳さが多少なり加わっていて、そのあたりの奥行きがちゃんと備わっているのも、聴きこむと楽しいところですね。
 
 特にお気に入りは『Azazel』ですね。
 昔から私こういう天使系のラスボス曲好きなんですよねぇ。クルくるのアゼル戦とか今でもソラでコーラス出来るし。。。
 こちらも華美で壮麗で、かつ緊迫感と疾走感があり、時々重厚な荘厳さが入り混じる構成は本当に聴いていて飽きないですし心躍りますね。


システム(9/10)

★演出

 まあゲーム演出が概ねになってしまいますが、わかりやすく動くしエフェクトなども多彩に用いて見た目の印象はかなりいい感じです。
 要所でのアニメーションも特に浮くことなくバランス良く配置されていますし、出来も安定していて素敵ですね。
 OPムービーも完成度高く、全体として悪くない出来だったと思います。

★システム

 こちらも必要なものは揃っていますし、やや操作性で厄介と言うか、基本のものにはショートカットは欲しいかなと思う所もありますがまぁ、という感じです。
 つか、システムの簡易版と詳細版の区分けって需要あるんですかね?この手のゲームで、システムが混み合い過ぎててわかりにくい、って意見は結構あったりするのか、逆に気になりますけど。


総合(83/100)

 総プレイ時間は、一周目で22時間くらい、そこから回収プレイで10時間くらいはかかったのかな?って感じですね。
 まあ正直、ガチで戦って負けまくる、って難易度ではないので、普通にやる限り凌辱シーンを見るなら敢えて負けるセットにする必要はあると思いますし、その点強制的に、ってのはないからまあ安心安全設計だと思います。
 でも肉欲度とかのも含めての後々からの回収はちと面倒さもあるので、すごく贅沢な事を言えば、一周クリアしたなら凌辱回想シーン全開放ボタンとかあればいいのに、とかちょっと思ってしまったりね。。。

 そこまでポリューミーってほどではないにせよ、値段相応には楽しめますし、一周目のプレイ中はそれなりに熱中して楽しめたところもありますので、買って損する感じはないです。
 ただどの項目にも突き抜けた魅力があるわけではないので、期待し過ぎると肩透かし、って感じもあるかなって、基本お手軽な変身ヒロイン総合作品としての位置づけになりそうですね。
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2017年09月05日

ことのはアムリラート

 体験版やってみてルカがすこぶる可愛かったし、言葉を覚えて意思疎通、というコンセプトが面白く、百合百合しい雰囲気も好ましかったので購入。

シナリオ(18/30)

 言語の壁に甘えないで。

★あらすじ

 主人公の女子高生・凛は、ある日楽しみにしていた鯛焼きを買う際に恥ずかしい思いをし、そそくさとその場から消え去りたいという感情に囚われた際に蹴躓き、改めて顔を上げた時、世界がガラリ一変していることに気付きます。
 街並みそのものはほとんど変わりないのに、世界を彩る言語が全く別のものになっており、そしてなにより空の色が不気味なピンクに染まっていて、誰に話しかけても言葉が通じずに途方に暮れてしまいます。

 悄然となり、路地の隅っこで膝を抱えながらどうしてこうなったのかを考えていると、突然頭上から可愛らしい声が降ってきます。
 顔を向けると、そこにはとびきりの美少女が一人いて、こちらを心配げに見つめながら話しかけてきていたのです。
 最初は全く意思疎通出来ずめげそうになるものの、ふと飛び出した日本語のワードを相手が拾って、その言葉を少しだけ理解できるとたどたどしく告げてくれたことで、心細さが極まりかかっていた凛は、縋るようにその子に案内されるまま後をついていきます。

 交番に案内して、とお願いしたのですが、連れていかれたのはその少女・ルカの家でした。
 疲れがどっと出て一晩眠りこけてしまった凛は、翌日ルカが留守の間に暇を持て余し、改めて街に出て、本当に言葉が通じない事、そして地理的には変化がないのに、自分の家だけはこの世界にないことを確認し、本当に異世界に来てしまった事を痛感します。

 元の家の近くの公園で意気消沈し、思わずうたた寝などしてしまって、慌ててルカの家に戻ると、そこには涙を浮かべたルカが待ち構えていました。
 どうやらこの世界では時間の経過で空の色が変化せず、思わず夜遅くまで放浪してしまった事で心配をかけた――――その事実をもどかしいやり取りの中から把握して、出会ったばかりなのにこんなに親身になってくれるルカに感謝するとともに、なんとかこの世界で前向きに生きていく手段を見つけないと、と思う事になります。

 翌日、ルカにこの世界の言語と、自分の名前の書き方を教えられ、役所のようなところに出向いて、担当者であるレイとルカに自身がここまできた状況を説明する事になります。
 どうやらこの世界は、数多の世界から異邦人がやってくる特異点のようなもので、様々な言語話者が集まる為に、不公平感をなくすためにも共通の言語・ユリアーモというものがあり、二人が日常話しているのもそれでした。
 凛はきちんと異邦人としての登録を受け、一定の補助を受けつつ、この世界で生きていく為にルカの協力も得て、まずはその共通言語を学んでいくことになります。

 ひょんなことから至ってしまった別の世界で、いきなりはじまる美少女と二人きりの生活、その環境の変化に戸惑いつつも、少しずつ凛はその生活に適応していき、ルカの可愛さにやられ、もっと円滑にコミュニケーションを進めるためにもしっかり言葉を覚えよう!と考えるのでした。
 これはちょっと不思議な世界で繰り広げられる、少女と少女の出会い、そして心の隙間を埋め合うために少しだけ普通の関係から踏み込んだ関わりを為していく、努力と友情と稚い恋の物語です。

★テキスト

 この人の文章はやっぱり相変わらず雰囲気重視というか、行間を読め!的なところは強くって、けど説明があまりにも簡素過ぎて行間を読むにも辛いだろ、ってのは時々ある感じですかねぇ。
 その分会話のテンポや、ぎこちなさなどの組み立てにおいての自然さはありますし、言語習得をかなり本格的にチャレンジする内容の為に、くどくなったらキリがない、というのもありそうですからこれでいいとは思います。

 心の機微の部分も、いかにもなキャラの個性をしっかり生かしてのすれ違いや勘違い、独り善がりや先走りが目立つけれど、そうだからこそカチッと心が通じ合った時の喜びは大きく感じさせますし、言語の壁があって、プレイヤーもそれを習得する敬意を綿密に追いかけるツールがある(選択可能ですが)ため、その点で共感を導きやすくなっているのも面白いつくりだなーと感じます。
 ただやっぱりざっくりし過ぎている部分も大きいですし、尺の関係上イチャイチャする展開もそこまで目立って多くはないので、もう少し全体的な肉付けは欲しい、というのは正直なところです。

★ルート構成

 結構頻繁に選択肢は出てきて、その選択の仕方によって最終的にはルートがみっつに分岐する事になります。
 その選択のバランスと、結果としての結末の是非はシナリオ評価に譲りますが、それなりにゲームとしての面白味も担保しつつ、メインとなるのは言語絡みだったりはするので、その辺は好き好き、って感じですかね。

 最初のコンフィグで言語勉強モードを密にするか基本スルーするか選べて、私は体験版の時点で、これをやったほうが共感度が高くなるだろうと感じたので一応真面目にお勉強しましたが、面倒な人は当然スルーしても物語の内容に変わりはありません。
 どれかひとつエンドをクリアすると、次の周からは言語翻訳モードでプレイも出来るようになり、なんとなく雰囲気は伝わっていたけど、実はこんなこと話してたんだ、ってのが分かる仕組みになっているので、一粒で二度おいしい、的なルート構成でもあり、その点も含めて面白いつくりで楽しめたと思いまする

★シナリオ(大枠)

 基本的にはルカとレイの助けを借りて、右も左もわからない世界で凛が頑張って生きていく力を得ようとする、そうして適応を積み重ねていくうちに、ルカとレイの境遇や思い、関係性なども詳らかになっていって、ますます心を寄せていく――――そういう蝟集した世界観の中で、やや耽美的で禁断要素も含む関係の変化をちらほらと醸す格好ですね。
 正直百合ものとして、どのくらいの雰囲気や心情の踏み込みが適正なのか、この分野は今のところまるで門外漢ではあるため、それを評価する軸が自分の中にないのですが、それを差し引いての印象論としても、百合としての濃度は低め、友情の延長線で語れてしまう範囲で留まっているのかな?とは思います。

 丁度今続けてFLOWERSをプレイしているのもあるのですが、あちらが完全に同世代の女子ばかり、という、設定面で百合が醸成されるのも致し方なし、という舞台であるのに対し、このピンク空の世界は恣意的に男性の存在感を排除している感じはあります。
 登場人物はモブのお店の人に至るまで女性だし、せいぜいレイの思い出話で出てくるくらいで、それもどこか悲しくも身勝手な存在としてスポイルされているような扱いです。
 普通に考えれば町中に男はいくらでも歩いてるだろうし、ルカの学校だって共学か否か明示もされてないしで、敢えて百合に走るだけの環境要因は薄いとは思うのですが、敢えて触れない事で世界観を歪曲させているところはありそうですね。

 勿論心情的な面での傾斜は当然納得がいくところではありますし、ルカはルカで、自身の事情も含みつつ、そのお世話をする事が張り合いになっている部分からの進展でわかるっちゃわかる、そこに同根意識も加わってくればまぁ、少し逸脱した関係に踏み込むのもありっちゃありなのかな、とは思います。
 ただ構成的に基本凛視点固定なので、どうしても側面的な要素は仔細に語る、というところはなく、雰囲気やニュアンスで汲み取りましょう、というお得意の雰囲気押しで済ませているところも多々あり、個人的には野暮ったくてももう少しプラスアルファがあっても、とは感じましたね。
 或いはどうせ二周目で言語解放モードが出来るのだから、その中で追加視点、追加シナリオを組み込む、ホワルバ2的な手法もアリだったのではないかなとちょっと思います。いやまぁ、そこまで完成度を高められるなら、今までの作品群の諸々がなんだったのか、って話ですけど(笑)。

 結末としても、この世界にふと来てしまった以上、帰るチャンスが巡ってきたなら当然掴みたい、けどそれはこの世界で紡いできた関係性をリセットする所業でもあるから、と悩むあたりは非常に王道的なものと言えます。
 その中での選択として、一度感情のままに踏み越えた線に対し、引き返すでも踏み込むでもなく、あくまで中庸を維持する事でもたらされる結果、というのは、印象論的に見れば恋愛は一方的なものではないから、その天秤が釣り合っていないと本当に二人が望む結果には至らない、って示唆なんでしょうけど、まぁ色々と恣意的な部分も多く判断に悩むところです。

 おそらくはあのふたり帰還エンドがメイン扱いなんでしょうけれど、あれが本当に一番の幸せか?って部分も含めて考える余地はありますし、それが成り立つ土壌に関しても説明が基本的に足りていないのはあるので、そのあたりの骨格がもう少ししゃんとしてればなぁ、とは思います。
 まぁ近年のエンタメ事情はこういうタイプの方が受けがいい、というのもありそうではありますが、どうしても旧態依然な思考回路を捨てられない身だと、どうしてそうなったか、背景の部分の不備を見通してうーん、って、感情のまま素直に良かったねぇ、となれないところはありますからね。

★シナリオ(ネタバレ考察)

 あんまり難しく考えてもあれなのでざっくりですが、やっぱりこの作品の肝としては、かつてレイが、異邦人同士で結ばれ、相手の世界に渡ろうとして失敗したという壁をいかに克服していくか、その仕組みにあったとは言えます。
 結果的には二人ともが、数多あるだろう並行世界の中で、ためさか同じ世界からの異邦人だった、というオチではあり、それ自体は心情的にいい要素ではあるのですけど、色々考えてしまうものはあるのです。

 まぁ置き去りにされたレイは不憫よね、くらいはどうでもいいとして(酷い)、やはりここで問題になるのは、世界線を飛び越えるのに必要な要素、条件の設定が物凄くファジーな点でしょうか。
 少なくとも出だしの、鯛焼き食べながら俯いてたら転移してました、ってのはあまりにも雑なつくりではあり、その分唐突感というかインパクトはあるので、それを後々必然的に思わせるだけの仕掛けがあれば構わなかったわけです。
 ただ結局、なんでそうなるのかってのは全く話の中に出てこなくて、あくまでも凛の一事例だけで判断するしかない為に、あまりにも恣意的、と思わざるを得ないんですよね。

 少なくともルカもレイも異邦人である以上、それぞれがどういう状況からこの世界に来たか、という記憶はあるはずで、レイに示唆されて元の世界に帰る方法を探し出すことになったなら、まずそこは抑えておくべきポイントだとは思うんですよね。
 どんな世界のどんな場所からでも、このユリアーモ特区に強制的に飛ばされてくるのかとか、そういう都合の良い設定面を数の暴力で補強したりは出来るし、また私はこの世界の飛躍を心情面がスイッチになっていると考えますが、そのあたりを補強する、それぞれがその瞬間、その世界から消え入りたい、と願った経緯位判然としてればいいのに、と感じます。

 少なくともこの世界に来てしまうきっかけの理由づけが出来れば、翻してこの世界から脱出するための方法論にも多少なり筋道が見えてきますし、結果的には凛だけでなく、あのタイミングでルカにもゲートの存在が見えていた理由に説明がつけやすいとも思います。
 もっともあの場合、ルカにそれが見えているのは中庸の選択肢を取った時のみなのか、それともいつでも見えていたけど、関係性を引き返した時は危険を顧みず追いかけるだけの想いが足りなかったのか、その辺も曖昧模糊としていますし、やはりなんらかの補完は欲しい部分です。

 なによりルカに関しては、実は同じ世界の住人だった、という部分をもう少し説得的にするだけの下拵えは必要だったと思います。
 何年前にこの世界にやってきたのか、元々の国籍はなんだったのか、少なくとも来たばかりのころは帰りたいとずっと思っていた、というセリフから、最低でも物心はついてからの転移になるでしょうし、日本語を離せない以上母語は違うはずです。
 二周目の翻訳モードで、端々に(独)って出るのがその答えのつもりなのかな?とも思いますが、やっぱりその辺の言葉足らずな感じはもどかしいですし、一周目の時点でその辺を凛が知りたがる展開は組み込んでも全く不自然ではないはずで。
 
 レイのように、同じく日本語を母語とはしているけど、住んでいた世界は違う、というのを明示したのと対になる形で、母語を共にはしていないけど、共通の世界にいた、という示唆になるフックを一つでも用意しておくだけで、このラストの展開の説得性は格段に増すと思うだけに勿体ないなと感じました。
 かつ上でも触れたように、二周目で翻訳モードだけでなく、より別視点での心情に触れる構成を積み増しておけば素晴らしかったのに、と思います。まぁそれを無粋、と考える向きもあるでしょうが、折々でのルカの心情を覗いていくことで、この設定・展開なら絶対に深みが増すと思うんですけどね。

 以上、全体的には雰囲気良く、闊達で愛らしい二人の交わりを堪能できるいい作品ですけれど、物語性としてはより良く出来るだけの土壌は沢山残っていて、それを概ねお得意の雰囲気で察して!でスルーしちゃってるのは物足りなく、点数としてはこのくらいかな、ってところです。
 やっぱり構成面の不備を除いても、もっと二人が純粋にイチャラブしているところは見たかった気はしますしねー。



キャラ(20/20)

★全体評価

 まぁ基本的には三人しかいないようなものですが、その中でも異邦人ながらそれぞれに個性が豊かで味があり、けれど同朋意識的な共感がしっかり通底していて、そのあたりがキャラの優しさというか魅力をしっかり担保してくれている、というのはありそうです。

★NO,1!イチオシ!

 そりゃルカしかいないでしょうよ、とは思いますが。。。
 妖精みたいに愛らしくふわふわした容姿で、けれどすごく年の割にしっかりしていて、なにより自分より誰かの為にこそ一生懸命になれるその気質の素敵さが目立っていましたね。
 とはいえ年相応に甘えたり、拗ねたり、感情の幅もそれなりに広く、素直に好意を示してくれるのが本当に可愛くて良かったなと思います。ユリアーモ喋りもとっても可愛かったですし、時々日本語の発音が外国人的になってるのも実に味があって、それを耳にしているだけで幸せになれる感じでしたね。

 やっぱり理想を言えば、この子の視点からの補強があればより愛着がわいたろうなと思いますし、最後の選択もルカにとって無謀な賭けだったのか、それともある程度成算のあるものだったのか、その辺の秘密までしっかり救える構成になっていれば嬉しかったですけど、まぁそれでも本当に期待通りのいい子でした。

★その他

 凛も少し気が逸り過ぎというか、すっとこどっこいでお調子者なところは目立つものの、それでも常に周りに感謝を忘れず、自分に出来る事を精一杯、という率直さ、直情さが良く出ていて、その道ならぬ思いに煩悶してジタバタするシーンなんか本当に可愛かったと思います。
 レイも色々味のあるキャラだけに、もう少し掘り下げというか、この人なりの立ち位置での強さなどがあればなお良かったですけどね。


CG(17/20)

★全体評価など

 ふんわりとした柔らかい絵柄で、この世界観とキャラ性にはすごくマッチした絵だと思います。
 質量的な部分ではとびきり、ってほどでもなく、安定してそこそこくらいですけれど、ルカが大概可愛いので大よそは満足です。

 立ち絵に関してはポーズ2種類に服飾も2種類、表情差分も流石にそこまでは多くなく、値段相応の物量とは言えるでしょう。
 その分キャライメージに特化したつくりにはなっているかなと思いますし、二人の外出着は特に好きでした。ルカの御姫様然としたロングスカートも素敵だし、凛の黒ストホットパンツもわたしの大好物なのでGJ!って感じで。。。

 1枚絵は全部で26枚と、まあギリギリ値段相応、って感じです。
 全体的に幻想的で愛らしく、二人の世界の空気感をよく拾い上げていたなあと感じます。

 特に好きなのは紛れ込み添い寝と、電車でイチャイチャですかね。


BGM(17/20)

★全体評価など

 見知った街に見知らぬ言葉、という、僅かに位相のずれた特異な雰囲気を、音楽面ではしっかりフォローしてきている感じで、概ねどこか日常的でありつつも違和感があるようで、耳に印象付けるフレーズが結構有ったなと感じます。

 ボーカルはOP・EDの2曲で、どちらも爽やかで優しい雰囲気の素敵な曲ですね。
 どちらかと言えばOPの方がメロディとしては好きですが、作風に合致した、という視点だとEDの方がいいかもしれません。どちらも強烈さはないですが、優しく耳に響くいい曲だと思います。

 BGMは全部で12曲と、値段を踏まえればこんなものかなというところ。
 全体的にいい仕上がりですが、特に好きなのは『ユリアーモ』と『わたしは凛だ!』かな。どちらもユリアーモ字表記なので適当なニュアンスの翻訳ですけど、それぞれにすごくイメージが掴み易くて、この世界にピッタリだなと感じます。


システム(8/10)

★演出など

 基本的にあまり洗練されている感じはないんですが、選択肢の吹き出し表記とか、あと勉強でのおさわりモードとか、出来る範囲での斬新なアイデアは散りばめられていて、これはこれで面白かったと言えますね。
 ムービーも標準的な出来、システムはややジャンプやスキップ系統に物足りなさ、使い難さはありましたけど、最低限は完備しているのかなと。


総合(80/100)

 総プレイ時間7時間くらいですかね。勉強モードありで、ですので、それを抜きにするともう少し短いのと、あと翻訳モードで楽しんだ二周目のプレイ時間も込みなので、さっさか一周クリアするだけなら4時間くらいのボリュームかなと思います。
 値段的にも応分ではあると思いますが、話にはもっともっと面白くする余地、膨らませる余地はあったように思いますし、一方通行の視点で書くのはちょっと勿体無いな、とも感じました。

 ただこんな風に、異世界に飛んで言葉を覚えるところから、ってのは逆に新鮮ですし、その過程で心が繋がっていくという発想も自然で面白く、期待したくらいは楽しめたと思います。
 余談ながら、これ書く前に一応エスペラント語のあれこれをウィキで眺めてたんですけど、エスペラント語を応用した作品一覧の末尾に既にこれが乗っかっててちょっと笑ってしまった。。。
posted by クローバー at 05:53| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年09月02日

ワガママハイスペックOC

 新規ヒロインは奏恋くらいしか興味なかったんですが、とにかく未尋が好きで好きで仕方ないので買わない選択はないのだー、という感じで。

シナリオ(18/30)

 コンセプト的には考えちゃうけど。

★概要

 この作品は、2016年4月に発売されたワガママハイスペックのFDになります。
 コンテンツとしては本編サブヒロイン3人の物語を新たに収録したのと、本編ヒロイン4人の後日談、という極めて王道的な構成であり、新規ヒロインの物語も本編共通を下敷きに綴られるので、当たり前ですが本編事前プレイは必須の内容です。

★テキスト

 本編同様に軽妙で、キャラ同士のやり取りがとても楽しいですね。
 相変わらず時代性に対するアンテナもしっかり張り巡らせている感じですし、多少雰囲気の差はあるけれど基本的にはどれも読みやすく仕上がっていると思います。

★ルート構成

 基本的に物語の結末を左右するような選択肢はありません。最初に好きなヒロイン選んでその物語を堪能するだけです。
 なので新規ヒロインに関しては、その分岐の必然性の部分でやや説得力が薄いってところはありますが、まぁFDですしある程度は致し方ないのかなと。

★シナリオ(大枠)

 さしあたっての感覚としては、新規ヒロインの物語ってそもそもワガママさやハイスペックさが中途半端にならざるを得ないよなぁ、というのはありまして、でもこれは本編の、コンセプトピンズバで設定されたヒロインに比べれば弱くなるのは仕方ないのかな、ってところ。
 本編ですとルート間の格差や温度差はあれ、ハイスペック前提でその上でのワガママが物語を意図しない方向にまで進める牽引力になっていたと言えますが、その点での特異性はやや薄れているかなぁと。強いて言えば私の目の黒い内は〜、的に暗躍する兎亜が相変わらずやりたい放題だなってあたり。

 といってじゃあ物語として面白くないか、というと別にそうでもなく、特に優遇されていた奏恋シナリオなんかは非常に心温まる綺麗なつくりになっていていい味を出していますが、本編にあったこの作品ならでは、という差異性、印象度は流石に食い足りないかなぁとは思います。
 その点無論既存ヒロインのアフターで補完されているところもありますけれど、こちらもまぁ一応恋愛的な部分では落ち着いてその先を、ってところなので、本編ほどの無茶苦茶が繰り広げられるわけでもなく、全般的に面白いけどおとなしめ、という感覚はありましたかね。

 ただこの作品の肝的な、ヒロイン同士の横の繋がりや和気藹々とした雰囲気はどこでも健在で、恋人が出来てもそのあたりの関わりは設定的にも蔑ろに出来ないし、周りもそれを認めて付き合っている、という空気感はやっぱり好きだなぁ、と思います。
 でもその点でも、折角ならもう少しその関係性掘り下げて欲しい、って感じる部分は特に新規ヒロインルートで結構あって、FD水準の尺ではあるのであまり本筋からずれると恋愛色が弱くなる、というジレンマはあるかもなんですが、そこの肉付けがもう少し豪奢でも良かったんじゃない?とは思ってしまいますね。基本的にFDとしては割高なのは間違いないので。。。

★シナリオ(個別・ネタバレ)

 敢えて伏せるほどの内容でもないですが、一応ある程度具体的な内容を伴いつつの個別回顧をしていきましょう。
 とりあえずざっくりと、新規シナリオは奏恋>千歳>縁くらい、既存ヒロインはかおるこ>未尋=兎亜=アーシェくらいですね。いつも以上に細かい部分での個人的思い入れや好みが反映しているのは否めませんが。

 奏恋に関しては、私がこういう幼い家族の為に頑張るお姉ちゃんシナリオが大好きー、ってのもあり、またその対象である双子の妹の奏音と奏歩がすこぶるつきに可愛いのでそれだけで満足、ってところがあったりします(笑)。
 勿論そこに絡んでいくことで、互いの過程的な面を見つけて惹かれていく描写などもいい味がありますし、ナチュラルに人に無闇に頼ることをしない奏恋の気質なども反映した内容で、展開的には納得は行くところはあります。

 ただですねぇ、そうなる理由はわかっても、それでもどちらかと言えば強引に本編ヒロインズとの交流に尺を割いて欲しかったというか、ぶっちゃけ四月一日家妹ズと兎亜&未尋コンビの絡みがすごく見てみたかったのですよ!ずぇーーーっったいそれめっちゃ微笑ましくて楽しい光景になるのにぃ!って歯噛みしまくりでした。
 そもそも未尋に尾行だけさせといて、自分だけ美味しいとこ持ってった挙句、生来のズボラ発揮で直接的には関わってこない兎亜とか狡いわ。。。まぁその辺の絡みに尺使い過ぎると肝心のイチャラブが、という点はあるにしても、それでも見たかったというのが本音。

 それはともかくとしても、奏恋の頑張り屋で、自然と自分の優先順位を下げてしまうあたりは自然の成り行きでもあるし、けれど恋人として深く触れ合うことで底に潜む、慣れて鈍麻してしまった痛みへの感覚を改めて突きつけ、我慢しなくていい、と言ってあげられるのは恋人ならではの醍醐味だな、って思います。
 構成として漫画絡みの秘密を処理する段も面白かったですし、感情と台詞が比較的直結する奏恋だけに、そのモヤモヤ感やめんどくささも含めて等身大で可愛かったなとは感じましたね。
 でも妹ズとほわほわ遊んでる時の方が楽しかったのは秘密だ。。。お嬢様は素直になれないの若葉も、こんな感じで下の子達と仲良くなるタイプの追加パッチはよ!と切に願う(笑)、実に私好みのお話でした。

 千歳に関しては後付けの設定が、いざ他のルートで披瀝される事はないのか、って懸念はどうしても出てくるところだけれど、まあ誰かと恋人になった後なら致命的でもないのかな、と。
 構成としては一番ドラマチックで少女漫画的・運命論的ではありますし、けれど今の関係性、パワーバランスを崩さずにその想いの末端だけを噛み締めるやり方としての進展は、まあもどかしいし都合はいいけど、そこに踏み込めない怖さもわからないではないかな、と思います。
 結局踏み越えるべき部分が決まり切っている中で、最後は世界の優しさに救われる形なのも悪くはないですが、このルートだとワガママさやハイスペックさ特に関係ないなー、ってのもあるし、個人的にこういうやきもきする形での結ばれはやっぱり没頭しにくいって部分でややマイナスですかね。

 縁もそれなりに面白かったですけど、ここは一番取っ掛かりが酷いですし、そこからの自爆感も色々と不憫だなぁと。
 個人的には兎亜&未尋コンビがやりすぎなくらいに大活躍だったのでその点でかなり楽しめた、ってのもありますけれど、やっぱり恋愛としては一番情緒もへったくれもない短絡的な構造ですし、一皮剥けば誰よりも純情乙女、なんて設定も使い古されてはいるからなぁ、という所。
 どうしてもヒロイン好感度がイコールになりやすいとはいえ、それを覆すほどのインパクトはなかったとは思うし、本当に立ち位置的に横車、って感じで、それを受けての兎亜の過剰反応&フォローする未尋のらしさの方が楽しかったとは言えます。

 んで本編ヒロインに進んでのかおるこですが、これはあくまでも個人的な感覚のシンクロニティ踏まえて、ってのはありますね。
 あれだけ付き合って時間が過ぎても頭の中お花畑のフワフワモードってのもいかにもかおるこらしいところですが、そういう天然気質というか事なかれ気質がもたらす問題としてのドタバタは、滑稽ながら中々に考えさせられるところ。
 文学に対する嘲笑的なありようはどうなの?って思う向きもあるけれど、それもある意味では劣等感の裏返しというか、どうしても自分のやっていることに対する生得的な後ろめたさがぬぐい切れない部分に繋がってくるのかな、と感じます。

 やっぱりこういう、幼いころからの躾が厳格であり、どちらかと言えばそういう娯楽趣味は良くないもの、と刷り込まれてきて、その反動で成長してからドハマりするって構造にはすごく親和的なところがあって、でもそれに対してどうしても割り切れない思いというか、自分が良くない事をしている的な感覚が拭い去れないってのは確かにあると思うんですよ。
 今時はオタクコンテンツの敷居も相当に低くなっていますけれど、私なんかもそれでも自分の趣味嗜好をおおっぴらにしようとは思えないし、それがどこか反社会的だ、って感覚が捨てきれない性質なので、このかおるこの、自分の仕事に誇りは持っているつもりでも、それでも親の前では望まれるいい子でいたい、不干渉であれるならその方がいいって先送りしちゃう気持ちが嫌なくらいわかってしまって、その点であまり糾弾できないなー、と。
 本編の時点である程度克服したように見せかけてのこれ、という中で、こういうコンプレックスに無縁な人にはあんまりピンとこないもどかしさかもですけれど、私としてはそこを丁寧に掬い取ったのは面白い発想だなと感じましたし、その上での成長をしっかり描けているので評価したいな、というところです。

 兎亜に関してはあいっかわらずめんどくさい妹だなぁ、ってのはあれ、それを含めて周りが納得して愛でている雰囲気には染まるし、ふとした時に見せるいじらしさとか、ぞっこんラブな部分は確かに可愛いのでその点での満足度は高いですね。
 主人公の無欲というか、自分の希望を表に出さない気質が更にブーストしてすれ違って、というのも、身から出た錆と言うべきかありがちな展開で、恋人であり妹でもある、という難しさを一端に孕みつつの内容は面白かったとは思います。
 が、やっぱり最初の顛末とか、力技で捻じ伏せすぎる部分はいかにも兎亜らしい傲慢さ、ふてぶてしさだなぁと苦笑いでもあるし、このルートのサルって絶対いつか抹殺されるのではなかろうか(笑)。

 未尋はストレートに結婚願望というか、お嫁さん気質であればこそ、いつでもウェルカムカム〜♪なのに対して、色々理由をつけて留保したがる主人公の気質、といより男の見栄的な部分に刺激を与える内容で、その点非常に未尋の可愛らしさと健気さが出まくっていてとっても楽しかったですね。
 まあ画策すればするほど自信を無くして裏目、ってのも、いかにも男女の感性の違いって感じで面白かったですが、それにしてもやっぱり未尋ルートに関しては、本編の時もそうですけど心理的機微の変遷や色付けがやや稚拙というか、視野狭窄というか、その点で勿体無い、損してると感じる部分はありますね。

 ここでも終盤の展開なんか、かなり力技で強引ですし、我慢から本音発露までの反転の構成がどうしても雑味が多くて、もうちょっとその辺上手く処理できなかったかなぁ?という面はあれ、トータルではすごくアフターストーリーらしいラブラブ感で、とことん未尋が可愛くて満足は出来ました。
 にしても、日記でも触れたけど本当に最近はパブみHシチュが横行しているなぁ、ってのはあって、まぁ確かに未尋に関しては、この作品のヒロインの中では一番似合うのは確かだと思います。一番年下なのにね。。。
 でもやっぱりこれって、母性の象徴たる乳的な部分が全てってことでもなく、ヒロインの気質に依存する部分が大きいから、むやみやたらに誰でも、とは思わないんですよねぇ。逆に言えば、胸は小っちゃくてもそれが似合う子はいると。
 あれですよ、ましまろでも花音と汐にそういうシーンがあったけど、絶対あれ汐の方が体格的には似合わずとも、キャラ個性的にはマッチしていたと思うし、そのご奉仕構図にいかに自然体で入り込んでくるか、ってのは重要だと改めて思うのでしたとさ。

 アーシェに関しては相変わらず丼しか印象にない(笑)、というのは語弊があるけれど、まぁヒロインとして一番ガラリと甘え度合いがアップした子でもあるし、主人公の空回りにやきもきするあたりも含めて可愛かったとは思います。
 ラストの卒業式展開は、形としては作品全体の縮図的な部分もあり、そのメンバーでいられたからこその今、という味付けがよりしっかり味わえるところで、その点も含めて地味だけど堅実な構図だったなと思いますね。

 以上、全体的に粗もないけど、特別にこれは!ってインパクトもない、丁寧なFDという印象ですね。
 点数的にもこのくらいが妥当だろうとすんなり決められましたし、本編が好きならプレイして損はないのは確かだと思います。



キャラ(20/20)

★全体評価

 基本的に本編準拠ではあり、ハイスペックすぎる故の傲慢さとか厄介さは健在ですけれど、それを笑い飛ばせるだけのコミカルな雰囲気と関係性があるのでやはりキャラ性の良さは目立っているなと。
 今回からのヒロインもそれぞれに本編では見えなかった部分を上手く拾って魅力的に仕立て上げていたし、相変わらず未尋がクッソ可愛かったのでそれだけで満足とも言えますね。。。

★NO,1!イチオシ!

 まあ新規で、となれば当然奏恋一択にはなります。
 頑張り屋で世話焼きで、けど感情には基本素直で好きになったら一直線で積極的、という明け透けな部分も可愛く、癖の少ない魅力的なヒロインだったなと思います。
 ただ個人的には、あの双子がいたからこその魅力、という部分もかなりの比重を占めている感じで、こういう主人公に対してではない自然体お姉ちゃんキャラは本当に好きですねー。んー、久し振りにキッキンののばらやりたい。

★その他

 やっぱりFDになっても未尋の可愛さは尋常じゃなく素晴らしかったですわー。
 基本的にこの子もナチュラルに世話焼きで、面白がりで悪乗りし過ぎる時もあるけれど、しっかり周りを見ていてバランスを取ってくれる聡明さもあり、兎亜とのコンビ的にも、主人公との関係性としても本当に可愛いなぁ、見ていて飽きないなぁ、好きだなぁとしみじみ思うのでした。


CG(17/20)

★全体評価など

 FDとしては頑張っていますが、値段相応の量か、ってーと微妙なラインで、ただ質は本編にも劣らずですし、評価に迷うところはあります。
 立ち絵に関しては新規ヒロインのポーズ差分や服飾差分などがメインで、奏恋の私服と双子ちゃんの立ち絵は実に好みで宜しかったなあと思いますかね。

 1枚絵は通常71枚のSD7枚で計78枚、まぁそれなりにしっかり完備されているのは確かですけれど、贅沢を言うならもう少し新規ヒロインの優遇度を出しても良かったのかなぁと。バランスとして難しいところですけどね。

 特にお気に入りは4枚。
 1枚目は兎亜の着ぐるみ編み物、この普遍的愛らしさは素晴らしいの一言でしょう。
 2枚目は兎亜リボン騎乗位、どうしてもスレンダー系ヒロインこの子しかいない中で、こういう密着型騎乗位は大好物でして。
 3枚目は未尋メイド服マッサージ、この恥じらいつつ蕩けている未尋の可愛さは絶品ですな。
 4枚目は未尋裸エプロンバック、これも構図とボディライン、表情の艶めかしさがとても好きです。


BGM(17/20)

★全体評価など

 今回はボーカル曲が、既存ヒロインと新規ヒロイン別にOPがあって、かつ全員に固有のEDがあるという超豪華仕様、正直お金かけるところちょっとバランス悪くない?って思うくらいです。。。
 一方でBGMは新規追加なしだと思われますので、その辺ももう少しなんとかならんものか、ってのはあるし、ボーカルもサントラがあるとはいえ中々聴きこむまで至らないんですよねぇ、これだけあると。

 とりあえずOPとしては既存ヒロイン編の『Hey Darling!』のスピード感がかなり気に入っているのと、EDではアーシェの『不思議なプリズム』、奏恋の『my little wish』が好みだったかな、と思います。


システム(9/10)

★演出など

 この辺も基本的には本編準拠で、全体的に堅実でキャッチーな出来になっていると思います。
 個人的にOPムービーふたつとものセンスの良さが光っているなと思ってて、そのあたりも含めて特に土台から割り引く必要性もないかなと感じますね。


総合(81/100)

 総プレイ時間13時間くらい。だいたい一人1,5〜2時間の範疇で、奏恋だけちょい長かったかなぁ位の感覚です。
 FDとしてはお値段割高ですので、どうしてももうちょい尺が欲しかったなぁ、ってイメージはありますけれど、本編の勢いをしっかり維持しつつ、新規ヒロインとの話もそれぞれに持ち味を生かした形で展開できており、本編が好きな人なら最低限は楽しめる内容にはなっているかなと思います。

 個人的にも未尋にまた会えたことと、双子ちゃんの可愛さにとことん癒されたので満足です。。。
posted by クローバー at 04:32| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする