2017年03月28日

フェアリーテイル・シンフォニー

 元々レクイエムの頃から気になっていたタイトルで、この度FDと追加シナリオがセットになったシンフォニーが出る、という事で、ならば抑えておこうと。
 丁度同じ日に発売になったシンソウノイズが自分の中でドはまりしたのもあって、この作品に対しても期待感は高まっていたのですが、中々プレイする猶予を作り得ずもどかしい限りでしたね。

 なおこの作品の感想に関しては、三作セットで全体評価にさせてもらっています。
 本来的には一本ずつばらしての値段相応とか、そういう細かい付言も必要か、とは思うのですが、今から買う人は普通にこのシンフォニーを買うでしょうし、三本まとめてこのお値段、という私のプレイ感がストレートに出た形で書かせてもらう、という事はご了承ください。

シナリオ(27/30)

 収奪の連鎖を乗り越えて。

★あらすじ

 主人公は、目が覚めると真っ白な何もない部屋にいました。
 ばかりか、自分の名前や過去も一切思い出せない状態で、それを不安に思いつつも今いる場所が何なのか、それを探りにドアの向こうに足を踏み出します。
 するとわかってきたのは、ここは一種の精神病院、御伽話症候群という特殊な病気に罹った患者を集めて快復、更生に導くための施設だという事で。

 白い記憶の靄の向こうに、自分にもこんな場所に入れられる大きな傷がある。
 その実感のない認識を噛み締めつつはじまる、通称「楽園」での日々と、そこでのメルヘンの世界に埋没した少女達との出会い。

 カラフルな衣装に身を包み、不思議の国を踊るように、夢見るように闊歩するアリス。
 引き離された兄の面影を追い続ける、ひとりぼっちで食いしん坊なグレーテル。
 悲恋の命運を背負い、昼と夜で二つの顔を抱く双子のような存在のオゼットとオディール。
 高い塔の最上階で幽閉され、王子の到来だけを心待ちに夢に埋没するラプンツェル。
 失われた大切な人の背中を追い求め、現実と夢想の最中でもがき苦しむ雪の女王・ゲルダ。

 彼女達の夢や幻想に寄り添いながら、自身の記憶の欠片を拾い集めていく主人公は、しかし突如部屋に浮かび上がった謎のモニターが映し出す光景から、この病院が包摂する裏の顔、少女達を不幸な収奪の連鎖に放り込む悪魔的なシステムの存在に気付かされて。
 更には、部屋に残してあった謎のスケッチに書かれた、この中に罪人が一人いる、という謎の言葉。
 様々な疑問や不安を内包しつつ、主人公は出会った少女達の中から、特に信を寄せられると直観した相手により深く傾斜していくことになります。

 果たして、御伽噺症候群とはなんなのか?
 この病院が秘めた謎とはどのようなものなのか?
 彼らを打ちのめすあらゆる仕打ちから、そこから逃げるための夢の世界から、彼らは正しく脱却し前を向いて進む未来を手に出来るのか?
 これはそんな、世界の不条理と残酷を謳い、そこから逃れる唯一の手段としての物語への逃避を選んだ少年少女達の救いと再生、そして巣立ちの物語です。

★テキスト

 全体的に優美で雅飾の効いた美しい日本語を楽しめますね。
 それでいてくどすぎたり、文飾に酔い過ぎたりという感じはなく、あくまでも淡々とこの非道な現実と夢の甘美さを綴っていて、けどそこにそういう言の葉の優雅さを塗すことで上手くクッションにしている、そんなイメージがあります。

 私はこういう美しい文章はとても好きですし、非常に情緒があって、汎用的な萌えゲーとかだったら浮き上がって仕方ないでしょうけど、この幻想的な箱庭世界での物語においては、世界像にきっちりマッチした素晴らしい読み口だったと思います。

★ルート構成

 基本的にはヒロインの心理にどこまで正しく寄り添えるか、を積み重ねて、その上で更なる依拠、支え合いの形を紡いでいく事になります。
 ヒロインごとにスタンスは違うので、意外と引っ掛け的な部分もありますし、ルートに入って後の選択はその後の未来のありようにも大きく影響するわけで、これは正しく18禁作品ですのでどうしても選択を間違えると残酷な未来が待ち受けている事がほとんどです。
 
 そのあたりは当然意識的に作られていますし、かつヒロイン毎のグッドとバッド、両方から記憶の欠片を回収していかないと、ラストのグランドルートに辿り着けない仕様になっているので、非業の結末とかが好みでない人には道中結構な我慢が強いられる尖ったつくりなのは確かです。
 その分だけ当然ながらラストの伏線回収、盛り上がりは見事ですし、そこでも選択ミスで容赦ないバッドが待っていたりするので、頑張って選択を吟味する価値のある構成、内容だと思います。

 アンコールは基本的に一本道、シンフォニーはやはり同じようにヒロイン毎に正しく寄り添えるか、が問われる選択がありますが、根本的な価値観の差異などもあるので中々比較してみていくと面白いものがありますね。

★シナリオ

 基本的には、閉鎖空間の中で歪んだ偽りの幸せ的な認識を持って過ごす少女達に待ち受ける悲劇的な未来をいかにして回避するか、というのが状況的な面からのメイン要素になってきて、その上でそうするために自分と向き合う必要があるのだけど、という心象的な部分がテーマとして浮き彫りになるスタイルですね。

 共通ではシンプルに、個々のヒロインが見る夢の形とその原典を探っていき、その上で真っ白な主人公が彼女達に寄り添う為の在り方を思索し、確立させていく流れが描かれます。
 その上での個別では、少女それぞれの物語を模した形で、先行きの見えないものを追いかけ、可能性を切り拓いていく流れとなり、そこに作品イメージからも想起されるファンタジー的な要素も幾分か加味され、非常に独特の味わいを組み上げています。

 個別での特色は、物語から物語への飛躍、という点が挙げられるでしょう。
 誰しもが辛い現実を背負っていて、本人の与り知らぬところで、それを解決するために、という方便を建前に、本質的にはより悪質で、現実の淀みそのもののようなこの場所に尊厳諸共に売り飛ばされていて。
 そうした自己の存在価値や罪悪感から逃れる為に、少女達が与えられたおとぎ話のヒロインという立場を甘受している事は全く責められようがないですし、けどその自意識の薄さをいい事に、ただでさえ乏しい個々の存在資源をより残酷な形で収奪されるのがこの舞台、と言えます。

 この場合搾取ではなく収奪と表現するのは、あくまで本人の正当な意思が介在していない形で、自己にとっての大切なもの、自己を確立するための資源、可能性が二束三文で売り飛ばされ、摘み取られているからです。
 それでも物語の世界に没頭している限り、その現実での被害も夢の中で都合よく塗り替えられていく、そうして絶望を知らぬままに枯渇していくのが、基本的にこの場所でおとぎ話のヒロインの名を与えられた少女達の逃れ得ぬ運命だったのですが、それを主人公の存在が揺り動かします。

 というのも、主人公はこの場所で、自分が何者でもない、という認識を持っているからで、その理由はグランドで詳らかにされますが、ともあれその視座から見た違和、また多少なり現実へのチャンネルを残しているゲルダやオディールの存在にも触発されて、自分がわからないなりに、彼女達が背負っている不幸の理不尽さには気付いてしまうし、そうであれば救いたい、と考える善良な精神の持ち主だからですね。

 ただ、そうやって現実への揺り戻しを企図する上で、少しでも手管を間違えれば一気に奈落の底、という危うさを秘めているのも確かで、それがより悲惨なバッドの存在として証明されています。
 そして自身もまだ子供で、立場的には少女達と同様の籠の鳥である主人公がひとりで何かを為す事は難しく、それ故に個別ルートでは根源的な解決ではなく、あくまでも夢の世界の改変、主人公が介入する事でより幸せで温かい幻想にシフトチェンジ、渡っていく風景が基本的な構成になっているのが面白いところです。
 なので正直、個別でのグッドエンドでもどこかしらもやっとしたものは残りますし、世界像の謎も突き詰められてはこない、けれどそれ故にどんどん先が知りたくなる、というつくりだなと、そのバランスの絶妙さには感心しましたね。

 個別そのもので言うなら、アリスの世界のまっさらな明るさ、前向きさは、この世界観の中では大きな救いになっているし、ゲルダの非業と献身に関してはこの時点でも強く胸を打つものがありました。
 オデット&オディールの、二転三転の展開も中々に楽しめましたし、グレーテルとラプンツェルはどうしても自分から何かを変えていく活力に乏しいところがある分、物語的にも内在的で、比較してみると物足りなさはありましたが、それでも水準以上には面白かったと思います。

 そうして記憶の欠片を全て集めることで道が拓けるグランドルートは圧巻の出来。
 夢と現実の狭間をゆれる物語らしい形での収束になっていますし、本来的な個々の境遇、そこへの正しい形での向き合いと克服の過程が丁寧に綴られていますし、それを為すための最後の障害、つみびとの追求なども含めて、非常に痛ましいながらも味わい深い仕上がりになっていると思います。
 謎の解明に関しても、基本的には素直に読み解いていけばこれしかない、って結論に至れるだけのヒントは出ていますし、間違えた時に現実を夢に塗り替える、という、スケール感が肥大した展開に持ち込まれるのも中々に印象的でしたが、やはり正しい道を、皆で手を取り合って進む形はとても美しく。
 そして期待通りというか、本当の意味でのヒロインはゲルダなんだよなぁ、というのがここではっきり提示はされますし、それだけに彼女がここまでで囲ってきた悲哀の極みが本当に想起するだけで苦々しくも切なく、本当に望む世界に回帰できて良かった、と胸に温かく響きますね。

 結局そのあたりで見えてくるのは、本当につらい時には人は逃げてもいい、けれど逃げる場所の選択だって大切なんだ、という事ですね。
 勿論ほとんどのヒロインや主人公は、それすらも選べない収奪構造の中で押し潰されている、それは現実が持つ冷酷な一面ではありますが、その中でなにもかもを振り捨てて逃げる、我慢せずに信頼が置ける相手に訴える、それが難しいのは承知でも、そうしなければより悪辣な収奪の螺旋に飲み込まれるだけであって。

 誰しもが自分の中に夢の世界を飼っていて、厳しい現実に直面したくない時にそこに逃げ込んでいるのだけど、それも度が過ぎると毒になるし、一定の救い、快復を得られたならばそこから離脱、脱却する勇気を持たなくちゃいけない、おとぎ話は葬送歌の中にそっと送り出さなくちゃいけない。
 その視座でもやはり一番それを体現しているのはゲルダでしたし、そしてこの物語の中で精神的には一番現実を理解しているオディールが、目指すべき未来像という観点では一番後ろ向きで内罰的だというのも皮肉が効いていて面白いところです。

 アンコールに関しては、レクイエムの物語の情緒的な側面をより丁寧に下支えするための前日譚、という趣で、それ故に約束された非業、悲恋にひた走りながらも刹那の輝きを放つ様が非常に愛おしく味わい深い仕上がりになっていて。
 そして末尾を飾るシンフォニーに関しては、もしものif展開でありつつ、そうであればいい、という世界が持つ一抹の気紛れ的な優しさを内包していて、その仕掛けの発想自体がまず面白いですし、だからこその快刀乱麻な展開も胸がすくものはあります。
 そしてある意味ではこのルートのゲルダが一番労苦なく幸せを手に出来ていて、それを奪った遠因は、と考えれば帳尻はトントン、だとは思うのですが、それでもやはりホッと心を撫で下ろす一幕だったと思いますね。

★シナリオ総括

 一応カテゴリとしては旧作なので、かなりざっくりとした感想にさせて貰っちゃいましたが、ともかく構造的な作り込みは秀逸、そこに籠めた現実に対するペシミスティックな視線と、それでも救いはある、と信じたい想いの鬩ぎ合いが非常に綺麗で、読後感も良く素敵な作品だったと思います。
 点数的にはレクイエムの時点で25点、他二つで+1点ずつくらいの感覚ですね。

 作風的にも独特で、内容も正しい18禁要素の使い方満載、間違っても純粋なヒロインとのイチャラブを愉しむ類の作品ではないので、文体も含めて人を選ぶところはあると思います。
 ただそれでも完成度の高さ、テーマ性の奥深さは特筆できますし、そんなに長くもないのでプレイしてみて損はない、と感じさせる出来でしたね。


キャラ(20/20)

★全体評価

 基本的に与えられた役割を演じて、という狭い枠組みが前提なので、そこから極端な奥行きや意外性をキャラそのものからは読み取りにくいですし、基本的に周辺周囲の存在は胸糞悪いダメ大人ばっかりで、そういう面だけを見るとあまり評価はしにくくなります。
 でもだからこその無垢さ、純白さ、真っ直ぐさやひたむきさ、潔癖さが決然と浮き彫りになっている、という相対的な価値度合いは高いですし、大切なものために、という意思の美しさをベクトルは違っても体現している存在がふたりいる、そういう点でのきらめきと引力を踏まえると満足度はそれなりに高かったなぁと。

★NO,1!イチオシ!

 ここはもうゲルダの為にあるような枠となりました。
 元々一番抱える雰囲気的にも使命感、召命感的な佇まいと行動力からも、すごく正義感と意思が強くて、大切なものの為に全てを投げ出せるような素敵な子なんだろうと想起させますし、実際にその印象を裏切らない、むしろそれ以上に献身的でひたむきな強さを見せてくれて。
 それだけに道中での不遇や絶望、ルートや展開次第では大半がそういう方向に突き落とされる点も含めて本当に圧倒的な不憫さを感じますし、その誇りをこういう形で踏み躙って憚らないこの場の在り方に強い憤りを感じさせてくれる、身体を張ってテーマを体現していた少女だと思いますね。

 だからこそ、無明の靄の向こう側に隠されていた愛と思慕が判然として、それを真っ直ぐ披瀝できる状況での愛らしさは格別でしたし、レクイエムのラストもこれはこれで味がありますが、一番ストレートに外的要因で救われているシンフォニーがより有難いというか、救われた感が強くって良かったですね。

★NO,2〜

 次いではやはり立場的にもオデット&オディール、特にオディールの秘すべき想いの裏返しとしての歪んだ献身は、テーマ的に言えば過ち、とも言える象りなのですが、それでもそれをわかっていて突き進む覚悟、絶望的な境遇の中でも諦めない強さは光っていました。
 個性として見る限り、悪意のない世界で生きるならばオデットは本当にその中でも美しい一幕になるのでしょうが、そうやって世界の半分を遮断しているようなありようは、世界の悲嘆に目を向けない無垢さ淳良さは、果たして度が過ぎればそれそのものが罪と言えるのではないか、そんな事を考えさせられる対照的な、だけど本質的にはよく似ている素敵な双子でしたね。

 アリスもあの奔放さと真っ直ぐさはいい意味でアクセント、救いになっていたと思いますし、あと地味に好きなのはドロシーですね。ドロシーになりきれないどうしようもない要因を抱え、この楽園の陰惨さにも巻き込まれて本当に不憫極まりないながら、それでもあの刹那の感情を胸に、きちんと幸せを知ろうと向き合った強さは響くものがありました。


CG(17/20)

★全体評価

 非常に淡い塗りと線の使い方が特徴的で、幻想的かつ耽美的な雰囲気を打ち出すのに特化したような魅力的な絵柄ですね。決してぱっと見でのキャッチーさはないですが、細かいところからじわじわと伝わってくる雰囲気の美しさ、構成の妙は中々だったと思います。
 ただ三作まとめて、であっても素材量的にはあまり褒められたものではないですし、量を必要とする類の作品ではない、という観点はありますが、その辺は難しいところですね。

★立ち絵

 ポーズ、服飾、表情差分どれも相当に限定的ではあり、元々のデザインも可愛いながら、そこから逸脱したなにかを引き出すほどのものではないか、という感じです。
 見せ方的にも画面でコミカルに動くというよりは、本質的な意味で紙芝居的な見せ方を企図している感も強いですし、動きの可愛らしさなどではなくあくまでも物語の中の心性をしっかり投影する事で勝負、という事になるでしょうか。

★1枚絵

 レクイエムが63枚、アンコール24枚、シンフォニーが12枚で、計99枚ですね。
 まあシンフォニーセットで買う限りは量的には水準はクリアしてますし、出来も安定して美しく風雅で、如何にも洋的な物語性、幻想風景を綺麗に幽玄に描き出していて、その割にきちんと18禁的要素の部分では艶美だったりもするので見事でした。

 過去作なので細かく振り返りはしませんが、やはり全般を通してゲルダが一番印象的でしたし、あとドロシー絡みの秘めた恋の艶やかさも素敵でしたね。

BGM(15/20)

★全体評価

 三部作でも全部で11曲しかないのは中々に寂しいですね。確かにそこまで幅広いイメージを必要としない作品なのは確かですが、それにしても、と。
 OPのボーカル曲は中々に神秘的で独特の雰囲気がある素敵な曲でしたし、オデット&オディールのテーマ曲が物凄く優美かつ哀切感が漂っていてものすごく好きですが、それを差し引いてもトータル評価だと、私の判定基準ツールに当てはめればここまで、ってことにはなっちゃいますかね。


システム(8/10)

★演出

 ここも情感演出的な色合いがほぼ全て、という感じで、色彩や背景、音やシナリオとの連動性などですごく情緒的、抒情的なイメージを植え付けるのには成功しているので、方向性が企図するものは正しく作り上げられていると見るべきでしょう。
 OPムービーなどもそれをしっかり反映した示唆的で奥深い構成になっていて、全部クリアしてから見ると趣深いものがありますね。

★システム

 非常に簡素ですが必要最低限は、という感じですね。
 ただジャンプを搭載していても、移動選択肢がかなり多く、一々アイキャッチ的な音が消えるまでスキップできないもどかしさはあるので、その辺はもうちょい何とかして欲しかったところです。


総合(87/100)

 総プレイ時間は22時間くらい。レクイエム16時間、アンコール4時間、シンフォニー2時間くらいですかね。
 物語としての出来は素晴らしいですし、道中の辛さはあれラストではそれをしっかり解放してくれるカタルシスがあって、その点での満足感はあります。
 コスパ的にもシンフォニーセットで買うなら充分だと思いますし、ちょっと毛色の違った、テーマ性が深い物語に触れてみたいと思うならお勧め度はかなり高い作品になりますね。

 ただしヒロインとのまともなイチャイチャはほぼ皆無なので、その辺は含み置いておくべき、というところです。私はこのメーカーはじめてだからどうか、ってのはわからないですけど、多分雰囲気的には大体こういう方向性で特化してやってきているのでしょうし、固定的だけど熱心なファンがついているのだろうなぁ、と感じるにはこれ1作で充分、という特別な感懐、インパクトはありました。
 今後の作品や他の過去作に手を出すか、はまた別問題になりますけれど、この作品は私は好きです、というところで。
posted by クローバー at 04:48| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月23日

桜花裁き

 初見から面白い要素てんこ盛りだなぁ、と思っていたし、CVが出た時点で買い確定にはなりましたね。。。
 体験版自体はやや掴みどころのない雰囲気でしたが、面白い方に転んでくれると期待して購入です。

シナリオ(25/30)

 正しさだけでは生きていけない。

★あらすじ

 時は封建文化真っ盛り、その中でも一際の反映を誇る桜花町において、主人公は町の治安を司る奉行所の新設に伴い、北町、南町に続く中町の奉行に若くして抜擢されました。
 冷徹なる北町、人情の南町と称され、その均衡によって町の平穏や不穏分子の抑え込みをなんとかこなしている状況において、南町の大岡の血を引く主人公の赴任は、そのバランスを崩す可能性を秘めており、それ故か北町からも奉行の娘の桜が監視役兼補佐役として出張ってきて。
 その他にも幼馴染で発明家、そしてこの度は岡っ引きの役目も引き受けてくれた理夢や、幕府組織とは別の理念で動く自治的な治安組織の進撰組の面々に支えられる形で、主人公の奉行生活ははじまります。

 しかし、内部統制もままならない、知識も経験もない段階で、早々と町で発生する殺人事件。
 その現場で返り血を浴びているのを見とがめられ、犯人として突き出された小梅は、か細い声で自身の無罪を主張し、主人公も目撃証言だけを鵜呑みにすることなく綿密に事件現場の調査や聞き込みなどで真実を白日の下に浮かび上がらせていって。
 そうした努力の甲斐あり、幕府上層の嫌がらせなども受けつつ、なんとかはじめての白州での裁きを正しく導くことが出来たものの、一連の動きを通じてまだまだ自身の未熟を痛感する事ばかり。

 その事件の結果として、寄る辺がないという小梅を奉行所の書記として引き取り、まだ少なからぬ軋轢を残し、文字通り内憂外患の門出ながらも必死で頑張って食らいついていこうと考えたその刹那。
 改めて父の仕事の重みを知り、その助言を貰おうと訪れた山間の神社、その夜闇の中で、他ならぬ現役奉行の父が血の海に倒れているのを発見します。
 狼狽する主人公に対し、今際の際にこれが因果だと諭し、軽率に事件の裏側を探ってはならないと戒めて事切れ、主人公はその遺言となった忠言を心に刻み、日々の仕事に忙殺される中で、迷宮入りとなったその事件について追いかけるのを留保します。

 かのように、華やかさの裏側で様々な思惑、思想が跋扈暗躍し、無辜の民の生活迄もを陥れようとする不穏な空気を孕んだ桜花町。
 果たして主人公は、父から受け継いだ人情裁きの理念を胸に、社会を正しく導くことが、そしてそれを脅かす陰謀を打ち破り、平和を取り戻すことが出来るのか?
 その陰謀の背景にある想いとは、この社会の歪みとは何なのか?
 これはそんな、社会正義のありようと、その歪の中で圧殺されてしまった嘆き、挽歌を拾い上げて慰撫しつつ、罪は罪として真っ直ぐ向き合っていく強さを、それを得るために必要なものを育んでいく物語です。

★テキスト

 舞台は明らかに江戸時代半ばくらいを想定していますが、語り口や語彙のチョイスとしては極端に時代性を加味せず、ある程度わかりやすさと勢いを重視した格好になっていると思います。
 風俗的な面については暗々裏に江戸時代のそれを踏襲している感があるので、そこでやや齟齬や違和感が生じたりはなくもないですが、四角四面であるよりはいいのかな、と思います。
 正邪の切り分けがやや雑駁なのも時代背景に基づく部分があり、むしろその混在が精神性として、この世界像においては稀有と言える人権に対する配慮、優しいまなざしを持つ主人公側の想いに必然的に依拠できる土壌を紡いでいる、とも言えるかなと感じますね。

 読み口自体は極端に笑いやシリアスに振れ過ぎる事はなくバランスは取れていますし、基本的には読み易くシンプルに構成されているなと。
 あと蛇足的ですが、やっぱり個人的には縦書きの方が文章の内容って頭に入ってきやすいな、と思う部分はあります。
 当然これは作風を加味しての処置で、全てのADVにマッチするやり方ではないので特に加点要素になるわけでもないですが、雅趣を凝らした文章になればなるほど横書きだと読みにくくなりますからね、これは正解だと感じました。

★ルート構成

 一応恋愛ADVを銘打つ作品としては、中々に異端的で大胆な構成になっていると思います。
 勿論体験版の時点で、奉行仕事とそれに連なる大きな事件の解明が本筋になるなら、恋愛要素はおまけというか、脱落式みたいな構成になるのかな、という予感はありました。
 ただその予想をいい意味で覆したというか、この作品では完全に本筋とその後の恋愛模様を切り分けて二部構成にしてしまっています。

 本編においても一応のルート分岐はありますが、基本的には一本道、かつその分岐はヒロイン云々でなく自身の社会に対する思想性のありようを問うものであって、まずはそちらわじっくり堪能してください、という作り手の意思をヒシヒシと感じる構成になっています。
 そうして大枠の事件が解決してはじめて、後日談やおまけif的な形で個々のヒロインルートに進める形になっていて、かつそうやって切り分けたつくりの割にヒロインルートの尺もしっかり取れているという、中々に意欲に満ちたつくりになっているなと感じましたね。

 少なくともこの本編の展開や個々人の思想、立場を鑑みれば、そこに同時に恋愛をねじ込むのは相当の力技がいるし、より違和感も生じさせるだろう、というところで、これはこれでひとつの正解だと思います。
 なので、小難しい奉行パートとかシリアスは別にいらん、さっさとヒロインとイチャエロさせろー!という人には忍耐が強いられるとも言えますが、まあ流石にこの作品を手に取る人でそういう層は少数派だと思いますしね、ターゲットを絞り込んだ上で受け入れられるだろうという試算がしっかり感じられる部分でもあります。

 ヒロインルートの分岐は一箇所だけ、そもそもそれまでの仕事の同僚として培った信頼があるので、その辺はまあざっくりでも仕方ないと思いますし、私としても道中やきもきはしたけど結果的にはこれで良かった、と感じるつくりでした。

★シナリオ(本筋)

 この作品の場合、本筋と後日談ではかなり毛色が違うものはありますし、ここで強く提示されたテーマ性や想いの余波や残滓が個別に流れ込むところはあれ、更に深く掘り下げたりとかそういう事はないので、分類としてはこういう分け方で語っていこうと思います。

 大枠としては、主人公が奉行になった事も含めて、実際的には出来事の全てが伏線、真犯人の思惑の想定内にある中で、日々発生する事件から、その影を少しずつ垣間見て、最終的に全てを糾合させて真実を暴き出す、という流れになっていきます。
 時代性としては江戸がモデル、と上で書きましたが、物語としては歴史もの的ではなく時代もの的、かつ様々な要素を混在させているので、そのあたりは恣意的に、この話の中で伝えたいことをより鮮烈に抽出するための舞台装置を整えた、といっていいでしょう。

 実際、作中での登場人物はそれぞれに隠された立場とか思想を抱いている事が多いですが、それもまあなんというか、時代劇に親しんでいる人ならなんとなくそうなんじゃないかなー、と想像のつくありようになっています。松平健とか松方弘樹とか、ああいう感じの(笑)。(ちなみに超余談ですけれど、私景元さんに関しては西郷輝彦の方が好きです。なぁにぃをぉ〜、今日は求めて生ぃきたぁ〜♪)。
 そんな感じの伏線や実際的な思想性が錯綜する中で、主人公自身は大岡の血脈としての人情裁き、という理念を第一に掲げ、それを社会正義に適性に落とし込む匙加減を実地の中で滾々と学んでいく、という事になり、しかし結果的にそういう主人公の煩悶や苦慮、血の滲む努力や研鑽を引き出している、そういう方向に知らず導いているのも、というあたりが中々に凄みのある構成ではあったなと感じます。
 
 そして、この作品を読み解く上で大切なのは、あくまで世界像そのものは江戸時代の制度を踏襲している、という点です。
 つまり簡便に言えば、封建制度、身分制度は確かにあるし、それ故の理不尽、絶対的貧困なども当然のように跋扈していて、けどそれを配慮するような特権階級はレアものである、という観点がまずあります。
 ここには法の下の平等とかはまだ成立しておらず、だからこそ北と南で治安維持の方法論がガラッと変わってしまうような状況も罷り通るし、また当然上層部としては北的な冷徹な処置を良しとする風潮はあるのでしょう。

 この本筋の序盤から中盤には、わかりやすくめんどくさい御偉方が出てきて、主人公を目の敵に色々理不尽に引っ掻き回していってくれるわけですが、それも考えようによっては統治のバランスが人情寄りにシフトしていくことによる弊害を鑑みての事とも言えます。
 無論それはあくまで自分が甘い蜜を吸い続ける仕組みを堅持するという矮小な理念ではありますが、思想の枠組みとしてそもそも人権、自然権という観念がないという前提であれば、むしろそれを若い頃から皮膚感覚で知っている主人公の方が異端なんだろうなと思いますし、翻ってその父親の教育方針の源がどこにあったのか、その辺までは触れられていなかったので気にはなりますね。
 北町にしてもやり方は酷であれ、それを指嗾する立場の人間は面従腹背というか、敢えて上の逆鱗に触れないようにバランスを取る役目を自ら負っている感もあり、その意味では北南ともに、名奉行と称えられるだけの在り方、時代劇的なスタンスを踏襲はしていると見立てていいのでしょう。

 ただし、そういう多義的な統治のやりようは、よりその裁きの質に対する理不尽さを強く感じさせる土壌にもなってしまっています。
 情状酌量、なんて理念が言語化も、慣習化もされていない中では、それは被害者として見れば依怙贔屓的に見える余地も当然あるし、罪を憎んで人を憎まず、という理念も形而上の美学、自己陶酔的なものに思われてしまう可能性も必然的に孕んでいて、この作品の根底的なテーマもそのあたりに置かれています。

 そういう曖昧さは、当然奉行としてのお仕事の在り方にも影響を及ぼしてきます。
 私も例外ではなく思った事ですが、まずあまり深く考えずにこの作品の調査パートや白州での裁きの流れを読んでいて、情理を尽くしてはいても明確な決め手には欠けるし、徹底的に反駁されたらどうするんだろう?って感じる部分はあったと思います。
 ただそれは、主人公達の観念や、あと文章的な部分で現代的素養が自然に織り込まれている事による弊害というか齟齬というかで、基本的に白州での裁きってのは最終的には心を挫くところに主眼を置いたシステムなんだろう、とは思いました。

 どうしたって科学的根拠とか、人の目以外の目撃証言、アリバイ証明が出来ない以上、なにを信じ、なにを疑うかは奉行の心ひとつ、という怖さがあり、それを白日化したのが三章の桜編でもあって。
 故にこそその職責、捌きひとつひとつに対する重さは現代の裁判官の比ではないものがあったろうし、もっともふつうの奉行は庶民の人権を強く顧慮しないでしょうから成り立っていた形式、とも言えて、主人公のような思想を抱いていればそれは恐怖を覚えるし、立ち止まる事もある、その果てに自己犠牲を良しとしてしまうような精神性に辿り着く可能性も内包しているのだろうと思います。

 結論的にこの作品のテーゼは、草の根的な社会変革、制度の厳格化の訴えであり、必定として人の作る仕組みの限界を示唆するものでもあったと思います。
 それでも、その中でもまだ悪くない形を常に模索して、変わり続けていかなくてはいけない、というのが、その変革を志向する側の思惑が成功裏に終わったエンドの矯激さ、息苦しさに端的に現れていて面白かったですね。

 畢竟、人は正しさだけでは生きていけない弱い生き物であり、緩衝となるなにかが社会の仕組みの中に存在しないとどうしたって破綻する、というのは歴史的に証明されてもいるところです。
 不条理に対し、物理的に無理だったことを差し引いても、それを社会の歪みの是正に繋げていくあたり、根っこの部分では善良過ぎるという色合いを孕みつつも、社会の仕組みを壊すことは当然に大きな罪となるし、その拘泥こそがバランスを欠いた危険な思想になり得るわけで。
 為政者にはこの矛盾を飲み込みながら、少しでも世界を良くし続ける努力が必要であり、その為には自己の理念や悲嘆に埋没しない、横の繋がり、助け合い、支え合いこそが最良の武器なのだと示すところは、如何にも物語的な閉じ方だったと思います。

★シナリオ(個別)

 個別に関しては、メイン三人は本筋を引き継いで、自分の道を踏みしめて進む中でより強く寄り添って生きていきたい相手の選択、という延長線上にあり、サブ二人は立場的にも、社会の歪みに翻弄されてもがく哀しみ、心の欠損的な部分を強く打ち出した味わいになっています。

 物語性という意味ではサブ二人の方がむしろ抒情的で、弱者故にこそ身につけざるを得なかった強さの悲哀など美しく綴られている形で、これはこれで中々に味わい深く面白かったなと思いますね。
 特に彩花ルートはベタな展開ではあれ、様々な状況に支えられた重みがあり、悲嘆の中で紡いだ絆の重み、切なさを非常に強く感じさせるもので、ラストの紫乃とのやり取りのシーンが凄く鮮烈だったと思います。

 紫乃もまぁ、それまでの立場や依存を見るにつけ、あんな風になってしまう可能性を秘めていたのを主人公の介在、お節介が後押しした、という形にはなっていて。
 他ではその決定的なシーンを目撃していない、という差異化によって、あそこまで慨嘆の海に沈む必然性を排除していると思えば一応筋道は通っていますし、基本的にはそうならない、紀風ルートを通過して後日談へ、という迂路もきちんとしている、かつそこでこっそり拾いそこねた伏線を確保していたりと抜け目ないつくりになっていたなと思いますね。

 メイン三人に関しては、本筋の中で自分の生き方を見直し、新たな決意を胸に前に進むだけの土壌は出来上がっているので、後はそれをどう発展させていくか、誰の手を取っていくか、という問題ではあり、なので主人公が介在しなくても、緩やかにはその方向に進んでいくのだろうという安心感はあります。
 それ故にここではその辺の配慮は最低限で、あくまでも恋愛模様を重点的に描いていて、立場などを踏まえためんどくささも、サラッと社会そのものが変わっていく中でのモデルケース的な理由をつけて軽々と回避、しっかり濃密なイチャラブを展開してくれています。

 正直こういう本筋メインのつくりだと、ヒロインルートはおざなり、おまけ程度に縮小されてしまう場合が多いのですが、これは後日談でも酌はそれなりにしっかり、シーン数も恋人らしいイベントもそれなりに確保していて満足度は高いですね。
 理夢の真っ直ぐさや桜の気高さ故の葛藤も可愛いんですが、やはり私的には小梅の、自分の在り方をなにもかも踏まえた上でのひたむきな思慕、甘えが圧倒的な破壊力で迫ってきて楽しかったです。

★シナリオ(ネタバレ白抜き)

 この作品の本筋って、小梅の立場、或いは近藤の立場で流れを見返していくと、色々と面白い発見があるだろうな、それだけの為にリプレイする価値がありそうだな、とは思うのですが、流石に時間がありませんでそこまでは出来ず、ゆえに現状で語れるざっくりした外観を少しだけ触れるにとどめようと思います。

 まず近藤の立場から見ていくと、まず自身の不幸と不条理に直面した事で、それでも純粋な恨みつらみに走らず、ある程度善性を持っていたが故の正義感の暴走で、社会制度の改革という遠い道を選択して、ある程度それを察しつつ主人公の父親は黙認していたのはあるのでしょう。
 ただ、結局の所多少幕府の政策に関与できる組織を作ったとはいえ、厳然として身分の壁はある限り簡単には事は進まず、二人の奉行や名君である小梅の父の存在があっても、それは近藤の目にはあくまでも手ぬるい体制内改革に映っていたのでしょう。

 それに業を煮やしたのか、小梅の父の暗殺に関してはなんとも短絡的な感はありますが、あの時点ではこうして幕政を牛耳る立場に奉行二人を押し上げる、というような目論見があったのやもしれません。
 でも結果的にそれは、兼ねてより血判状にて将軍の弟を傀儡にし幕政を牛耳るという謀反じみた魂胆を練っていた永井一派を利する結果に終わってしまい、改革を進めるどころか、より腐敗を拡大する結果になってしまって。
 けれど一方で、主人公という錦の御旗の存在を覚知して、そこで方針を切り替え、こちらはこちらで傀儡を仕立て上げる、それに従って主人公の思想を育て上げる、という事になり、それが主人公の奉行抜擢に繋がっていくわけですね。

 その意味で、最初の事件に小梅が巻き込まれたのが必然なのか偶然なのかは不明ですが、その窮鳥を自身の懐に匿いつつ、主人公の器を試すという一石二鳥がそこに顕現していて、しれっとその後も奉行所の一因として留めたのも大きな布石であり、永井一派に対する牽制でもあったと言えますね。
 それだけに、その策謀で主人公が一時的に昏倒に陥った事件は、まかり間違えば大元の目論見を粉微塵にしてしまう危うさを秘めていたわけで、なんとなくその後の桜に対する当たりのきつさも、無論理屈としてこの場で永井一派を一網打尽にする算段の一環、というのもありつつ、地味に八つ当たり的な色合いもあったのでは、と勘繰りたくなります。

 小梅は小梅で、最初の収監の時点でも、いざとなれば身分を明かしてしまえばいい、という切り札はあるので完全に取り乱さずにいられた、というのはあるでしょうし、そして一連の解決を見て、この面々になら社会正義の実現に対する期待を寄せてもいい、という計算は働いたところはあると思います。
 それでも本質的に人恋しく善良でもあるから、桜編あたりでも背景に一抹の疑いは抱きつつ寄り添うしか出来なかったし、その流れの中で自身に火の粉が飛んでくることも半ば覚悟していた雰囲気はあって、半端に背景を見知る故の煩悶は重かったろうなぁ、と感じますね。

 そして永井一派の影響力を幕閣から排除した事で、いよいよ真の目的を達するための具体的な方策に着手する事が出来るようになったわけですが、その動きは逐一北町に補足され、嫌疑の目を向けられていたわけで、その辺はもう長年の因縁というか、おそらく主人公の父が惨殺された時点で、その犯人はわかってたんだろうなぁ、と。
 それでも、こんな性急な形で、かつ主人公の思想性を完全に自分達の側に寄せるだけの挫きを紡がぬままに為さざるを得なかったのは、前回の失敗を踏まえ、また掌中の珠の重さを知り尽くす故に、今しかないという乾坤一擲を感じさせるものですね。
 なので、全体として設定的に甘いようで、しっかり因果と必然は担保されている事になりますし、小梅が生半可に動けない理由づけも、思想と状況の両面で積み上げているのが印象的で、その部分での整合性に曖昧さはないのが強みになっていると思います。

 ともあれ、将軍である小梅と、改革の先導者である近藤、ついでに言えば景元の理念や考えを、その折々に比較しながら見ていくと物語の複層性と、思想性の差異、それぞれの正しさと虚しさが透けて見えてきて面白いと思います。
 ただ結局のところ、近藤にしても完全な革命ではなく、主人公という錦旗を押し立てての体制内改革に留まっている部分はあり、社会の歪みがその制度を保ったままで改善に導けるか、という点は難題で、いくら将軍がそこに問題意識を持っていて、町を統括する奉行が緩衝的なありようを体現したとしても、それを全てに波及させることが出来るのか、そのあたりは封建制度の限界を示しているようでもあり、中々に示唆的です。

 でも結局、制度を生かすも殺すも人であり、じゃあ翻って今の時代はそのあたりの欠点を補って完璧なのか、理不尽はただ直截的に命のあるなしに関わらないだけで、構造としては同じなのではないか、という問いかけも孕んでいて、結果的に処方箋は人の繋がりしかない、というところに結実するのがいかにも、ですね。


★シナリオ総括

 ちょっと感想的にもあちこち話が飛躍した部分はありますが、作風としても様々なものを恣意的な舞台設定に仮託して盛り込んでいると思いますし、その全てを拾い上げるのは中々大変で、思った以上に歯ごたえのある作品だったなと思います。
 随所に触れたように、仕組みの中での限界があるからこその粗さは見え隠れするものの、それも含めて意図的な色合いは強いですし、全体構成としても野心的なもので、それを全て中途半端にさせずに完結させたのは大したものだと感じますね。
 その分だけ尺も中々ですし、突き抜けて面白いか、というとそうでもないですが、総合的に見て名作レベルの出来にはあったのではないでしょうか。


キャラ(20/20) 

★全体評価

 登場人物も多彩に渡る中、様々な事件を通じてそれぞれの思想や生き様をしっかり掘り下げていると言えますし、そこに決定的な錯誤はなく、ただ社会と折り合いがつくか、正義の体現として許されるか、という視座を根底に置いて描いている分、基本的に嫌味はなく真っ直ぐで清廉な人柄がより明確に打ち出されている作り込みだと思います。
 社会性の中での異端として主人公達を置くことで、読み手の共感がそこに必然として依り易い形式になっていたのもプラスですし、それぞれの信念がぶつかり合う様は美しかったと思いますね。

★No,1!イチオシ!

 まあ元々一番好きでしたけど、プレイを終えてみれば更にぶっちぎりで小梅になりますよねー、と。
 色々謎が多そうな子だなぁ、とは思っていたけれど、まさかそういうスタンスかい!って驚きはありましたし、その癖にどうしてあんなに真っ直ぐで献身的で優しくも強い子に育っているのか、むしろ主人公含めてその生育環境の突飛さに意外性が強く滲んでいるというべきか、変革の萌芽はその上の世代に既にあったと見做す証拠とでもいうべきか。

 ともあれどこまでも一途で健気で、それでも自分の立場は見失わずに両立させようと願う様はいじらしく、なんとしてでも支えてあげたい、そのささやかな志望を、夢をかなえてあげたいと思わせる儚さがありましたね。
 だけに個別に入っての割り切ってからの真っ直ぐさは超可愛かったですし、他ルートでの恋に恋するモードも良かったですけどやはり一線を画した可愛さだったと思います。無邪気に甘えていつつも、時にひっそり蠱惑的な気配を偲ばせる手練手管といい、もうメロメロにさせられましたね。ホント絶品に可愛かったですし、シナリオ補正込みで考えれば殿堂ラインに乗って来るんじゃないかなと思います。

★NO,2〜3

 理夢も思った以上に気風が良く爽快で愛らしい素敵なキャラでしたね。
 途中の事件に置いて自分の追いかけていく夢の形の難しさと悲しみを理解しつつ、それでもと胸を張って歩む様は素敵でしたし、立場的には本来一番臆して引っ込んでなきゃいけない立場なのに、ここ一番で上の立場の人間の遠慮をサラッと取っ払う人懐っこさ、人間的魅力の発現がとても目立っていましたし、本筋終盤で主人公を喝破、叱咤するシーンとか痺れましたね。
 恋愛面でもいざ障害がなくなれば猪突猛進、ってのがいかにもでしたし、それでいて家庭的で甲斐甲斐しいところも、女の子らしい愛らしさも存分に備えているのだから中々に卑怯な可愛さだったと思います。

 桜も当然好きではありますが、どうしても序盤のツンドラぶりがあるから上二人には届かないかなって。
 でも三章での苦悩と変転は素敵でしたし、あと個人的に主人公との絡みというより、小梅との関係性が凄く素敵だなあと思っていて、立場を超えた、なんつーか乙女の園のシスター的な繋がり、信頼の形がすごく気に入ってます。
 勿論恋愛モードに入っての乙女感、隠し持っていた可愛さの炸裂も素晴らしかったですし、基本的には満足していますね。三章とか明らかに桜が悪いにしても、そんな虐めないでー、ってこっち側で見ていられる匙加減にはなってましたしねー。

★その他

 紫乃も普通に可愛かったですよね、どうしても気持ちの上での絶対、があるだけに、中々依拠するところはなかったにせよ、きちんと仲間と認めた相手に対する誠実さと真っ直ぐさは美しいものがありました。

 男キャラだと紀風の存在感、そこにいるだけでの信頼感はいいものがありましたし、誰もが腹に一物抱えてる世界観の中で燦然と輝いていたとは思います。
 景元なんかも色々抱えつつの複雑な人格のありようは面白かったですし、基本的に憎めないキャラばかりしかいないのでその点では痛々しさはありつつも楽しめるところだと思います。


CG(18/20)

★全体評価

 とりあえず素材量としては圧倒的、なんですよね。
 質としてはかなりばらつきや偏りがあって、純粋に絵柄としても好みど真ん中か、って言われるとそうでもないので評価が難しいのですが、しっかり作品の雰囲気を引き出すのに必要な部分に出し惜しみなくリソースを注ぎ込んでいる姿勢は評価したいですし、このあたりが妥当な落としどころかなと。

★立ち絵

 ポーズは正確に数えてないんですが、特にヒロイン格にはかなり多彩なポーズパターンが用意されています。腕差分なんかまで含めるとメイン3人は10パターンくらいあったんじゃないでしょうかね。その分だけ躍動感や感情の迸りが鮮烈だったのはありますし、ここは良かった点ですね。
 特にお気に入りは小梅の前屈み祈り、この正面からの照れ顔とか破壊力有り過ぎて大好きです。
 その他お気に入りは、小梅は大体全部、理夢正面、前かがみ、躍動、桜正面、呆れ、紫乃正面などですかね。

 一方服飾は、時代性も加味してかかなり控えめ。
 ヒロイン格の三人でもおまけ下着まで入れて3〜4種類で、サブも1〜2種類、まあこの辺は登場キャラがやたらと多いので仕方ない面もありますし、ポーズが多彩なだけでこれで水準レベルとは思いますがね。
 デザインも和を基調としつつハイカラなイメージも付与して、折衷した可愛らしさが出ていると思います。
 お気に入りは小梅普段着、寝間着、十二単、下着、理夢普段着、寝間着、下着、桜普段着、紫乃寝間着あたりですね。

 表情差分もかなり多彩ではあり、遊びの要素も多く散りばめられていて目に楽しく映りましたね。質的には結構荒れて感じるところもありましたが、基本的には愛らしくいい出来だと思います。
 お気に入りは小梅はまあ全部でいいや、理夢笑顔、きょとん、呆れ、叱り、照れ笑い、苦笑、哀しみ、膨れ、桜笑顔、照れ焦り、睨み、怒り、苦笑、紫乃惚け、照れ拗ね、微笑、怒りあたりですね。

★1枚絵

 墨絵やSD、カットイン的なのも全部一括してコミコミですが、総量225枚という大ボリュームには圧倒されます。
 墨絵は幽玄な雰囲気、SDは愛らしさなど、絵柄で場面の使い分けがかなり明確に為されていて、その点でインパクトはありましたし、質もばらつきはあって決して素晴らしい、とは言いづらいのですが、この物量だと致し方ないかな、と思う向きもありますね。

 特にお気に入りは、小梅のあんみつあーん。この極限的な可愛さはもう私を殺しにかかってるとしか思えません。。。
 その他お気に入りはざっとになりますが、暴走理夢、縋る小梅、小梅なでなで、父の死、お風呂覗き、桜剣舞、縁側の理夢、花火、小梅と資料の山、その正体は、牢獄での語らい、信じています、目覚め、感極まって、紫乃と紀風、小梅と夜桜、理夢の糾弾、理夢絡繰りつくり、腕組みデート、キス、寄り添い、愛撫、正常位、屈曲位、晩酌、朝這い、騎乗位、対面座位、桜手繋ぎ、巨大パフェ、キス、愛撫、酔いどれ、添い寝、背中合わせ、小梅膝座り、本を前に、想い通じて、膝枕、手淫、フェラ、正常位、まんぐり返し、添い寝、酔っぱらい、背面座位、抱きつき、バック、辞世、紫乃愛撫、正常位、キス、立ちバック、夜酒、すず、墓、対峙、正常位あたりですね。


BGM(18/20)

★全体評価

 おそらく意図的な、この作品の楽曲面での大きな特色はボーカル曲なし、になりますね。
 無論それは単純にはマイナス、ではあるのですけれど、それを補うだけの楽曲は用意されているのと、あとOPEDにしても曲ではなく、それぞれの述懐などを差し挟むという特殊な演出を組み込んでくる中で、その情感を従的なスタンスで支えるには曲のみの方が適している、という判断なのだと思います。
 流石にこれだけボリュームのある意欲作で、そこだけ資金的に都合がつきませんでした、なんてオチはまずないでしょうしね。。。

★BGM

 全部で41曲と、水準は余裕でクリアしていますし、全体的に和の印象でまとめつつも折衷的な良さも織り交ぜ、それでいてタイトルは硬骨的に四文字熟語で統一するなど、端々にこだわりを感じさせる作りですね。
 純粋に四文字に収めているだけでなく、漢詩などからの引用も多いから、その背景にある雰囲気との調和も含めて印象深いですし、曲そのものとしても総合的に質は高く、流石にこれだけでこれ以上の点はつけにくいですが、BGMとしては最大級に高く評価しています。

 特にお気に入りは2曲。
 『真実一路』は非常に勇壮で壮大で、曲がらぬ意志の強さと、それを支える想いの温もりをバランスよく紡いだ素晴らしい一曲になっていると思います。
 『快刀乱麻』は、裁きでの一騎打ちなどでよく耳にした分印象深いですし、この壮麗で疾走感と切迫感のあるメロディライン、管楽器の旋律の奥行きが素晴らしく、とても好きです。

 その他お気に入りは『桜花繚乱』『無事息災』『実践躬行』『嚆矢濫觴』『察言観色』『一触即発』『安平穏々』『至誠一貫』『鳩首凝議』『推理考察』『永遠偉大』『春愁秋思』『不不安穏』『万死一生』『春和景明』『抜山蓋世』『清風明月』『朝雲暮雨』あたりですね。


システム(9/10)

★演出

 1枚絵にだいぶ依拠してはいますが、基本的には情感演出の積み上げ方が上手く、要所では更にそれを奥深く積み上げていて、しっかり物語に引き込む力があったと思いますね。
 日常もポーズ差分の多彩さやSDが主力ではあったものの、コミカルさ、軽快さ、愛らしさをしっかり引き出せていたとは思いますし楽しくプレイできました。
 OPはしっかり作品全体像のイメージを投影した堅牢なつくりになっていますし、ボーカルがない分だけより鮮明に愚直にそれを打ち出せていて印象深いものはありましたね。

★システム

 足回りなどはちょっと不便さはありましたね。スキップの停止とか、ジャンプ搭載なしとか、結構こまめにセーブしておかないと後々面倒なことになる、ってところはありました。
 縦書きや可変ウィンドウは作風にマッチしていて良かったと思いますし、シナリオチャート的なのも用意されていて、それが一応ジャンプ不可の代替的な役割になっていますが、分岐地点くらいは明示できる形にしておいた方が親切かな、と。
 なにせ奉行パートを何遍もやるのは大変ですし、そもそも最後のほうとか一度クリアしただけで全部の正解なんて覚えられる量でもないですしね。。。

 操作パートや奉行パートの作り込みもシンプルでわかりやすくはあったので良かったと思います。


総合(90/100)

 総プレイ時間32時間くらいですかね。本編が20時間を超えるくらい、ヒロインルートはメイン3人は2,5時間、彩花と紫乃は1,5時間くらいで、後はバッド回収やおまけシナリオなどなど。
 完全に二部構成になっているので、物語が錯綜して中弛みしたりという部分はほぼなく、むしろ本編は話の進みが早過ぎるくらい次々怒涛の展開になっていく上、きちんと最後には伏線が綺麗に収束するので見事な出来で、奉行パートがそれなりに難しいのはあれ一気にプレイできました。

 実際奉行パートは間違えてもおまけの勲功がもらえないだけではあるので、最悪総当たりでもなんとかなりますし、ちゃんと理路を踏まえて考えれば読み解ける、ひっかけなどは特にないものなので、その点でも楽しめる余地は充分にありますね。
 ただし探偵ものとは違い、より精密な実証とかを求めだすとあれ?ってなるので、あくまで舞台背景を認識しての、この時代性を加味した裁きのありようだというのは頭に置いておくべきでしょう。

 本編だけでも普通にフルプライス級のボリュームがある上、そこからの後日談としてのヒロインシナリオも、流石に純粋恋愛ADVの個別ほどではないとはいえ、かなりしっかり濃厚に仕上がっているので、そちらが目当てでも肩透かし、という事はありませんし、色々と癖はありますけどしっかりした意欲と方向性が感じ取れる作品ですので、ピンとくるものがあったなら是非に手に取ってもらいたいですね。とても面白かったです。
posted by クローバー at 04:09| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月14日

猫忍えくすはーと

 低価格ですし特別コンセプトにどうこうはないけれど、鷹野さん絵とCV小鳥居さんをお目当てにして購入。

シナリオ(16/30)

 生きづらい時代だから。

★あらすじ

 主人公はごく普通の学生。
 だったはずが、ある日突然二人の猫の亜人が足下に現れ、そのゆらとたまの姉妹は、生まれてよりこの方、自分達は主人公に仕える為に生きてきたと言うのです。

 なんでもそれは、遥か昔、戦国の世にさかのぼる古き約定。
 北条の家の直系の世継ぎには、風魔の里から付ききりの護衛を用意する、その代わりに風魔の里の生活を保障する――――そんな話が現代にまだ生きている筈もない、と思っても、目の前の二人はただひたすらに純粋で、真剣で。

 けれど両親に話を聞いても埒が明かず、どんなに邪険にしても付き纏い、忠義の心を揺らがせにしない二人に対し、徐々に不憫に思う気持ち以上の愛着を抱いていって。
 果たしてその約定が本物か、それ以上に主人公もまた、いつしか二人を守ってあげたいと思う気持ちが強くなり、その為に両親には内緒で二人を養っていくことを決意するのです。

 そんな、歪だけど温かい日々に忍び寄る影。
 果たして彼らの命運は?

 これは現代社会の世知辛い契約とは一線を画した、昔ながらの互助、互恵関係の麗しさを綴りつつ、現代においての適応の可能性を探っていく、つましくも愛らしい姉妹猫忍との心の交流の物語です。

★テキスト

 特段に読み口に癖はないですが、話の筋立てに多少枠組みに合わせた強引さはあります。
 あと猫故の気紛れというか、話を聞かない自由さというか、そういう部分も含めて、基本常識人の主人公があれこれ振り回される場面を敢えて強調して書いている部分も多いので、その点で少し読み口にももやっとさせられる面はあるかもしれません。
 ただ一方でそういう猫らしい仕草とか甘えの描写は的確かつ独特の可愛さがあっていい感じですね。

★ルート構成

 基本的には一本道です。
 途中でキャライベント分岐があり、そこでCGやシーン回収がありますので両方プレイ必須ですが、純粋に好きな方からでいいし、分岐終了に至るまで両方を埋めてから先に進む、でもまったく支障はないです。

★シナリオ

 全体的には、いきなり押し掛けてきた二人の猫忍に情を抱いてしまって、彼女達を養うためにあれこれ奮闘する物語です。
 少なくとも現代において主君の敵!というゆらたまが提示するような敵対関係は皆無ですが、そうした戦国以来の社会システムが解体された現代において、どうしようもなく失われた互恵関係のより密接な形を、この三人の姿を通じて取り戻す、という視座では中々に興味深いものはありました。

 その上で、居ないと思われていた敵が襲ってきて、三人の絆の重みが試される、という展開に流れていくわけですが、ネタバレ上等で語ってしまえばある程度そこまで含めて予定調和、二人が色々な意味で現代に適応できるかを確かめるための試練の一種、ということになります。

 社会からあぶれ、不必要とされてしまうものは、特に移り変わりの大きい時代の中では顕著にありますが、それが実質的な力を持つものであれば、社会を騒擾させる火種になることは避けられなくて。
 そういう疎外を新たに生み出さないか、そしてその騒擾を収束する側に立たせられないか、そういう願いを込めての実験的な経過観察であり、ゆらたま二人の忠誠心に加えて、主人公のお人好しさに裏付けられた主君の資質、正義感をも試されていたという格好になります。

 これは世界観の思考実験としては結構面白いな、とは思ったし、ただ結果的にそれを反映させるために周囲の反応が不自然だったり、けんもほろろな対応が多かったり、その辺はもう少しマイルドに対応するか、クッションを置いて欲しかったなとも。
 特に主人公の両親の対応に関しては中々に酷いものがあったので、そういう反骨心や自立心を煽る言い方をすれば奮起すると思っていた、くらいの、敢えて我が子を谷底に突き落としたぜくらいのフォローはあってもいいんじゃないかと思いましたね。

 まあ後はキャラ造型や立ち回りにおいても、今の社会とそぐわない常識感、という部分は強調せざるを得ないとして、結果的にそれが主人公にダメージになって返っていく構図は流石に不憫だったなぁと。
 特に生真面目だけど基本ポンコツなゆらの空回りは全体的に痛々しさはありましたし、それを見目麗しさ、可愛さで糊塗しきれていたか、となると微妙なラインで、低価格の割にあまり特化的なつくりでないのは評価として揺れるところではないか、と。
 やっぱりもちょっと安心して二人をもふもふ愛でられる状況があっても、とは思わなくはなかったし、それが確立するところで物語は終わってしまうのでなんとも、ですね。

 終わり方や枠組的に、もしこの戦略が上手くいけばネコぱら宜しくの続編の構想もなくはない、という印象ですが、さてどうなるか。
 影ながら社会の平穏を守るべく奮闘する時代遅れの忍者達、その中でまた新たな絆が芽生えて、的なスタンスでヒロイン屋上掛けも出来ない構成ではないとは思いますが、そういう色気がある分だけ枠組の堅牢なつくりに尺を割く必要があったし、この作品単品での魅力は漸減しているのではないか、と思う向きもあった、ということです。

 まあ猫とは本来気儘なもの、という割り切りがあれば十分に楽しめますし、ゆらたまは確かに素晴らしく可愛かったですが、諸々含めて点数としてはこのくらいまででしょうかね。


キャラ(19/20)

★全体評価

 可愛いんですけど掘り下げは当然薄いですし、その割にヘイト集めそうな諸々も結構埋まっているので、単純に可愛かった、大満足、と言い切れない部分はありますね。

★NO,1!イチオシ!

 元々ゆらが目当てだった割に、終ってみると断然たまのほうが可愛いという不思議。。。
 というのも、この子の方がわかりやすくワガママで本能に忠実ではあるのだけど、その分だけめんどくささや余計な厄介を呼び込まないし、一度懐いてくれれば際限なく甘えてくるし、言葉にしなくても忠誠心は厚くて、能力面でも姉以上なのでいざって時には全然頼りになるし、ねぇ(笑)。

★その他

 ゆらは自分の気持ちをわかってもらいたい、けどそれをあからさまにするのは失礼、なんて半端な常識を備えているせいでの空回りや暴走が多いし、なんだかんだで妹を出汁にして自分の欲求を満たそうとしてくるやり口が、それはそれでいじらしいんだけどなんかこうもにゃるというか。
 素直になれない、という括りとはちょっと違う、かつてのような身分差がもたらす観念というか、シナリオでは互恵関係が活発だった社会性の麗しさ、みたいな切り口でやいのやいのと語りましたが、その負の面を一手に体現させられちっゃてる感じで不憫でしたね。
 かつ能力的にも一点突破で融通が利かないとかなんともですし、もちょっとなんとかならんものか。折角小鳥居さんなのに痛々しく滑っていく言葉が多くてねぇ…………。 

 一番上のなちはともかく、采羽は続きがあるとすればより関係を深めて、って可能性はあってもいいなぁ、と思わせる子ですな。ナイスな黒スト族ですし、この子もある意味で巻き込まれた部分は大きそうですから、その辺の共感で仲を深めていく過程は説得力を持ちそうですし。


CG(20/20)

★全体評価

 ひたすらに可愛いです。ここに関しては本当に不満はないし、値段を考えれば量的にも充分で、あれこれしてると厄介で面倒でもあれ、ただ寝顔を見つめていればあまりの愛らしさに主人公がコロッと傾倒するのもわかるぜー、と納得できる天使の可愛さでした。

★立ち絵

 ポーズはヒロイン二人は2種類、サブは1種類ですね。特にたまのやや左向きが可愛かったです。

 服飾はヒロイン二人が3種類、サブは1〜2種類。
 二人の制服私服に忍者服と、どれも愛らしくて良かったですし、采羽の制服姿も中々麗しくて宜しかったかと。

 表情差分も多彩ではないけれど可愛らしさ全開で見ていて楽しかったですね。
 特にたまが拗ねた時と、上目遣い的にじっと見つめてくる感じがたまらなく可愛かったですねー。

★1枚絵

 通常25枚とSDが4枚ですね。2000円しないロープライスなので十分に量は確保されていますし、質も非常に高くまとまっていて、素晴らしい可愛さを提供してくれました。

 特にお気に入りは3枚。
 1枚目はふたりの添い寝、このいじらしくも無垢で愛らしい寝姿は、そりゃ心打ちぬかれますわ、って感じで素晴らしい可愛さでした。
 2枚目はたま膝座り、その完全に懐いて、かまってかまってーと全身で主張しているような雰囲気が途方もなく可愛くて良かったですね。
 3枚目はたまはじめて正常位、全てを委ねて受け止めるという無垢な信頼といじらしさを感じさせる構図に、可愛くもえっちぃ雰囲気のバランスが良かったなと。

 その他基本的に全部可愛かったです。この点では改めて文句なしですね。


BGM(15/20)

★全体評価

 そもそもBGM鑑賞がないという割り切ったつくり。。。
 実際作中で使われた曲は10曲もないかな、とは思いますが、そこは一応作りましょうよ、と言いたいし、流石にないと評価の基準も置きにくいなぁと。

 まあボーカル曲の『la la for you』は中々可愛らしくていい曲ですし、バトルシーンとかの盛り上げもそこそこでしたので、ざっくり見て最低でもこのくらいにはなるだろう、ってイメージで、ですね。


システム(8/10)

★演出

 そこそこ軽快にコミカルに動くものの、特別に凄みはあるわけでもなく、ですかね。
 猫耳が動くシステムなんて、それこそねここい!時代から完備しているわけですので、低価格ならではの売り的な演出効果を盛り込んでないと目立つところはない、というのは率直にあると思います。
 OPムービーはふたりの愛らしさと作品の雰囲気が上手く合致していて結構好きです。

★システム

 いつもながらにどこかもっさりしているシステムですが、必要なものは概ね揃っているので問題ないですね。
 ここは早い段階からボイス登録機能完備しているのでそれは嬉しいんですけど、今回あんまりそれを使いたいと思わせる台詞が少なかったのが宝の持ち腐れ的で勿体ないなあと。あともう少し使用感の工夫はあってもいいと思います。


総合(78/100)

 総プレイ時間4時間ちょい、くらい。
 値段考えてもコスパがいいとは言えない尺ですが、その分CGは豪勢に使われているイメージがあるので、どこに評価の力点を置くか、ですね。キャラ的にはシナリオの枠組みづくりの中で、どうしても少なからず尖った部分や面倒なイメージを無視できない様相がありますし、そこがネックと言えばネック。
 もっと純粋に二人をウェルカムして甘々ドタバタラブコメディを予想していたので、思ったよりシビアな思想性が投影されていて、でもこの尺だとそれとイチャラブの楽しさを完璧に両立させるのは難しかった、という点で私は勿体ないなと感じました、かね。
posted by クローバー at 07:20| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月09日

スイセイギンカ

 スタッフ的にもこれは!って感じだったし、体験版も非常に楽しく、メインのいざながとっても気に入ったので迷わずに購入。

シナリオ(22/30)

 三つ子の魂百まで。

★あらすじ

 主人公は10年ぶりに、生まれ故郷の町に帰ってきました。
 10年前に起きた事故によって、秘密裏に「E」化と呼ばれる、人として外れてしまうほどの不可思議な異能を身に備えたことで、今までの生活を全て振り捨てていかなくてはならなかった主人公は、とりわけその当時に彼とその幼馴染の姫子、いざなを災禍に巻き込んだ謎の銀色に対し、きっちりケジメをつけるべく強い覚悟で戻ってきたのです。

 しかしいかんせん10年ぶり、その間に事故の補償がらみなどで町は大きく発展を遂げており、どこになにがあるか完全に土地勘を失っている状態で。
 かつての朧な記憶を頼りに、街の全貌を見渡そうと高台の秘密基地にやってきたところで、彼は一人の女の子と遭遇します。
 自分の事を一目見るなり、その正体を言い当てた少女こそ、かつての幼馴染で、その中でも一番気心が知れ、なにをするにも一緒だったいざな、でした。

 けれど、主人公の中には、確かに感覚的に芽生える懐かしさとは別の戸惑いもありました。
 何故なら、かつてのいざなはぽっちゃちしたやんちゃなガキ大将そのままで、当時の主人公は彼女の事を同じ男だと思い込んでいたからなのです。
 そのあまりに失敬な勘違いに気付かれ、怒りのあまりハイキックの洗礼を受ける事から、彼のこの町での新たな日々はスタートするのでした。

 そんなこんなで、這う這うの体でようやく塒である、お世話になっている探偵事務所に辿り着き、長年のE化のパートナーにして、姉代わりのような存在の桃に呆れられながら、主人公は本来の目的の偽装の為に学園に通うことになって。
 そこで改めていざなや、もう一人の幼馴染の勝紀と再会し、そして主人公がいなくなった後にいざなの親友ポジションに収まった青香には敵視され、彼らが所属する生徒会の書記であるマリアとも知己になります。
 それはなんやかやで、主人公がずっと憧れながらも手の届かない所にあった平穏な生活そのもので、こんな日々が続くのも悪くない――――そう思いつつも、そうはいかないのは主人公自身がよくわかっていました。

 時を同じくして、町中では不穏で奇怪な事件が頻繁に勃発するようになります。
 所構わず暴れる狼藉者に、路地裏などで乾涸びたまま放置されている被害者など、その得体の知れない影は当然のように主人公の周りにも及び、早速いざなと青香が襲われているところを助けたりと、様々な形で事件に巻き込まれていく中で、少しずつでも変わってしまった自分を知られていって。
 それでも、と迷わず受け入れてくれているいざなを前に、新たな未来への希望、渇望が胸に芽生え、本来の目的であるE化の治療の、その先を見据えながら懸命に今を「生きる」ことに改めて視座を据え直す主人公。

 果たして、この町の背後に蠢く闇の正体はなんなのか?
 人知を超えた症例であるE化とは、いかなるプロセスでもたらされるものなのか?

 人から外れても、人らしく生きる事を諦めない中で、様々な要因が絡まってヒロインとの距離が縮まり、一番に守りたいものが確固とすることで事件への立ち向かい方もまた少しずつ違ってきて。
 そしてそうであっても、決して揺らがない芯は確かに主人公の中にあって。
 これは、人らしく「生きる」ための支え、絆の意味と価値を照らし出す、意思と信念、そして寛容の物語です。

★テキスト

 いつもながらに人の真理の裏側を丁寧に擽るようなテキスト構成は健在ですね。
 今作の場合は、E化にまつわる事件の解決という要素にかなり比重が置かれる分、そちらへの割り振りも多いのであまりやり取りそのものを楽しめる余地がそこまで多くないのは個人的にはちと残念ではありますが、状況に対しての行動原理や心理誘導の在り方などが丹念な分、外的要因と内的動因の区別がしっかりしているのはわかりやすくていいです。
 キャラ造詣に関してはヒロインはまだしも、こちらもいつもながらに捻った主人公像だなぁ、というところで、その差異がもちらす諦念がどうしても真っ当な形での恋愛を許容しないという弊害はあるものの、逆にきっちり割り切った部分がある事で筋道の通し方、誠意の示し方などにはなるほど、と思わせるものがあります。

 そういう部分を強化するのがいざなとの関係であり、それを説得的に為すための細やかな積み重ねもしっかりされていますし、こういう明け透けな主人公と対峙する上で新たな自分を引き出される、的な意味でならヒロインの魅力も丁寧に描けていて、そしてどんな場面でも基本軸の主人公といざなの関係が崩れないつくりも素敵ですね。
 テキスト的にはそういう部分への感慨や有難味の噛み締めなども含めてフォロー効いていますし、陰惨でありつつ清涼さを持つこの不思議な作品の雰囲気にはきちんとマッチした読み口だったかなと感じますね。

★ルート構成

 全体的にちょっとだけ癖のあるつくりと思います。
 まず最初から攻略できるのはいざな以外の三人で、いざなは全員クリア後に追加選択肢が出て、という形になっています。
 それ以外の部分では、純粋なヒロイン選択においては横並びからのピックアップと、その蓄積により理解しうる心情へのアプローチの二面性があり、まあそこは王道的な構成かなと思います。
 
 その上で面白いのは、今回は作品全体の外的要因の形を左右する選択肢が用意されていて、当該ヒロインにとって何が未練で、対峙しなくてはならないものかが結果的に明確な輪郭を描く中、それに対する指定をここでする、という色合いがあり、地味にこれを間違えるとどれだけ好感度蓄積してもダメ、というシビアなつくりになっていたりします。
 とはいえ、元々選択肢数自体は少なめですし、ジャンプもあるので総当たりでどうにでもなる範疇ですし、意図としては第三者視点での選択、という部分で議論の余地はあるにせよ、面白い試みではなかったかと思いますね。

★シナリオ(大枠)

 ややネタバレ的ですが、大雑把にいってしまえば、本来の目的を叶える為に手を変え品を変え町に混沌をもたらしている存在に対し、かつて幼馴染として過ごしていた時期に育んだ、人としてのあるべき芯はそのままに、個々のヒロインにとってのもっとも譲れないものに真っ直ぐ対峙していく、という形になります。

 ルート構成で触れたように、共通の段階で外的要因が大きく分岐する選択肢が用意されており、青香・桃サイドとマリア・いざなサイドでは、矢面に立つ相手が違ってくるのが大きな特色のひとつです。
 その上で、それぞれが持つ情報の差異もあり、それを重ね合わせる事で少しずつ全貌に迫っていって、その全てが錯綜・波及して、より大きな苦難に直面しつつも根源的な解決に繋げていくのがいざなルート、という、わかりやすく王道的な構成になっていますね。

 やや状況展開、特に遭遇戦などに恣意的な印象はあったり、大きなフレームの中で整合性が多少揺らいでいる感じはなくはないのですが、基本的には当該ヒロインの傍に居る、その想いを遂げさせるという揺らがない意思を背景にしているから、感情面では納得のいく部分が多いですね。
 ただ科学的な見地では、ほとんどその力の源の部分の解明や言及、という要素はないですし、あくまで偶発的、運命のいたずら的にそうなった、という解釈しか出来ない部分もあるので、その辺をどう捉えるかは難しいところです。

 けど改めて思うのは、この物語で根本的なテーマとして立脚しているのは、納得できない理不尽をどう噛み砕き、受け止め、それでも、といかに歪まずに前を向いていくかというありようであり、その為に必要なものはなんなのか?という観点にあるのかな、とは感じるところで。
 そうである限り、物語性という意味での理路を逸脱した、現実とアナロジカルなリアリティ、この場合は大枠的に、どんなに個々人で備えや心構えがあろうと、理不尽は突然襲い掛かってきて決して防げるものではない、という冷徹な真理の投射、という事ですが、それ自体を物語的必然として必要としている作品、なのでしょう。その辺具体的にはネタバレでもうちょっと詳しく触れるつもりです。

★シナリオ(個別)

 個別評価は、いざな>>桃>マリア>青香という感じですね。
 ちなみにこれは純粋にシナリオのボリュームやCG投入量にも比例していて、その分謎に対する解明の深さも違ってくるので、この評価順の後ろからプレイしていくのが一番いいのかな、と思います。実際CG表示順もこうなっていますしね。

 正直ヒロインとの恋愛的な要素はあまり期待しない方がいい作品で、結ばれる過程にしてもかなり特殊です。
 純粋な恋愛感情は、少なくとも萌芽くらいはしているし、或いはいざなや桃にすれば元々から備えていた、という形になりますけれど、どうしても主人公が既に外れていて、真っ当な人生を送れる保証もない中での諦めが先に立つので、そこを丁寧な感情のやり取りで覆して、なんて綺麗な形にはなりません。
 どうしても切羽詰まった状況の中で、そうしてもいい、或いはそうした方が都合がいい、どうにもならない、そんな契機での、契ってしまったことから改めて始まり、枠に嵌めていく関係ばかりではあるので(笑)、その面では恋愛ADVとしてどうなのか、って疑念はあって然るべきとは思いますね。。。

 また、主人公の行動規範としての軸は、あくまでもかつてのいざなとの関係で育み、今確かに取り戻したものになってくるというのは作品に通底する観念であり、いざなもまた色々な形で事件の当事者ではあるから、他ヒロインのルートでも多かれ少なかれ首は突っ込んできます。
 その上での、ヒロインの想いを優先的に大事にする、というスタンスなので、個々のシナリオ自体はそんなに細かく分析しても、という部分はあって、評価差も純粋に謎の開示度合い、それに比例する情緒面の奥行き度合いを反映している、と考えてもらえばいいのではないかと思います。
 というより、個々で区別して書こうとしても大きな枠で繋がっている部分が多過ぎるし、かつ大抵ネタバレになってしまうので、その辺はまとめてこの後に、ですね。

★シナリオ(ネタバレ白抜き)

 この作品の難しい、というかもどかしい部分の根源的な理由は、やはりエトランゼの存在と、それがもたらすE化という症状の多様性が、理路においてはきっちり解明はし切れない部分にはなってくるかな、と思います。
 エトランゼという相互理解が非常に難しい、そして人類にとって悪性をもたらす力を秘めた存在の始原的な部分の不明は、そのまま世界の理不尽の体現的な要素でもあり、ただそこから波及したものも含めてそうした混沌的な要素が絡んできてしまうわけで。

 結局のところE化の症状が多種多様な理由も、進行中のE化と終わってしまったE化の差異も、確たる理由は見出しにくいですし、例えば見津鐘が永い時を経てきた理由は、本来は終わってしまっているのをエトランゼに「お願い」して保全してもらっている、という事でしょうが、ならなぜそれが雫が介在した時に破綻してくるのか?
 終わってしまった同士の介在だと傷つくのか、ってのは、どうにもマリアルートの示唆からすると不自然ではあり、或いは穿ってみれば矛先を逸らすために怪我したフリをしたり、混沌に振れ過ぎた状況のほとぼりを覚ましてリセットするために死んだふりをしたり、と考える事も出来ますが、その辺もう少しヒントは欲しかったなと感じます。
 10年前のエトランゼの挙動にしても、その前提となるE化の促し、エトランゼの一部である銀色の散布なんてのが、どういう科学的技法で可能になったのかとかもありますし、理不尽は理不尽でいいとして、理路として切り分けるべき部分まで力押しにそういうものだ、としてしまっている感があるのはちょっと物足りなく感じた部分です。

 いざなにしても、なぜいざなだったのか?という部分には答えはないんですよね。
 名前からしていざなうもの、と読むべきか、異邦との懸け橋的存在を最初から規定されているのは確かで、その素養は先天的な部分が強く、物語としてはそこに裏付けがないとなんか落ち着かない、ってのはあります。
 ただ、それだけでなく一部には後天的な研磨の力もあるのかな、と思う部分はあり、それは根幹的なテーマに繋がってくる、主人公との関係で紡いだものとも密接に関わってくるのかなと思っています。

 先にそちらの説明をこなしてしまうと、単純に見れば主人公といざなの関係とは、互いに嘘がつけない関係、と解釈できます。
 お互いの事が全てわかる、と言う事は、裏返せば相手にも自分にも嘘がつけないのと同義であり、またそうして自己を嘘で誤魔化したりする必要性がない、という事でもあって、それを一番純粋な子供時代に確立してしまった事が、二人にとっての生きる上での明確な芯、になっているのは間違いなく。
 かつそこで生きてくるのは、主人公がかつていざなを男子だと勘違いしてた設定で、いくら子供でもやはり男女の別があれば、いくら行動理念や気質が似通っていても多少なり隔意は出てくる、それすらも勘違いが元で埋めてしまった関係ゆえの距離感、と規定することが出来ます。

 そういう、自分にも嘘をつかない割り切ったありようが確立されていたからこそ、離れ離れになって多少なり翳りはあったとしても、それをまるっきり覆されるような事にはならなかったし、改めての再会の中でそれを再燃させ、より研ぎ澄まされた共感性と、自分の想いに素直に向き合う、という強さを揺らがすに抱き続けていられるのだろうと思っています。
 そしてそういう真っ直ぐで健やかな正しさ、強さは、過去に拘泥するより未来を見据えて前向きに生きるべき、という当たり前で、でも傷を持つ人間には中々に難しい生き方を、ごく自然に体現できる素養をも備えさせています。要は、自分を誤魔化せない以上、苦渋の過去であろうときちんと見据えて、早々に折り合いをつけないと前に進めない、という思考回路が定着しているのですね。

 そうであればこそ、二人はどんな局面でも自身の一番大切なものの為にだけ迷わずに動くし、或いはそれは対極的に見てエゴイスティックなのかもしれないけれど、でも過去の因縁や柵そのものに対する蒙昧な思い込みを排除して、これから手にする、守れるものだけ守るというありようは眩しいほどに正しいな、と感じさせます。 それは生者と死者の明確な峻別にも出ていて、二人の姫子に対する一貫した想いがその証左になっているし、そしていざなルートラストで姫子の心境に触れる事で、そうある事の方がむしろ普通ではない、特別なものだという事ははっきり示唆しています。
 それが出来るというのは、やはり前述した互いに嘘をつかない、つけないという点にあるし、そういう明け透けさはやはり共感を呼び込む上での大きな力にもなると思っていて、そうした過去の研磨が、いざ最終局面でエトランゼの心証をいざなの側に引き寄せる上では大きなアドバンテージになっていたのではないかな、と考えます。

 もう取り戻せないものを長々と振り返らない、というさっぱりした在り方は、だけど死すべき運命をそのまま享受すべき、なんて恬淡とした高潔さとはまた無縁のものでもあるのが面白いところです。
 これパッと見、ラストの主人公のご都合的な復活は、それまでの信念に反しているのでは?と思わせるのですけれど、でもよくよく考えるとそうではないんですよね。
 まだ生きる事を諦めていない、生きている限りはどんな手を尽くしてでも守ってみせる、繋ぎ止めてみせるというのは、一面的には恣意的にエトランゼを利用していた見津鐘と倫理道徳的な観念では差はないのですけれど、そこで社会的な影響とか善悪を根拠に入れず、あくまで自分の周りの大切な存在が幸せで有れるか、という判断基準でのみ動ける強さ、潔さもまた、二人に深く根付いているものではあり、それも含めて人らしさ、それも絆によって得られる観念の極北的な境地なのかな、と考えさせられます。

 こういう形での支え合いは、男女の情愛のみでは成立しにくい要素であり、あくまでも純粋無垢な友情として根本的に成立して、その礎が揺らがないからこそ、更にその上に情愛が乗ってこようと問題なく作用しているわけで。
 最初と最後では、変わらない友情の手向ける方向性が多少なり違ってくるとはいえ、畢竟心のある存在が十全に分かり合う為には、互いに剥き出しの心をぶつけ合って、嘘のない関係を紡ぐ努力を続けるしかないと規定しているようでもあり、それを子供時分に自然に体得できてしまった二人は稀有、かつ幸運な存在だったと言えるのでしょう。
 姫子や勝紀のスタンスを見てもそれが特殊なものなのは確かですし、物語的にはそこにも素因を求めたくなるのはあるのですけど、でもこれはあくまで理不尽の裏返し、あまりないけれどどこかではあり得る、理不尽に対抗していくカウンター的な関係性の発露なんだと思えば、これはこれで意図的に完成しているのだな、とは思えますかね。


★シナリオ総括

 正直間を置かずに感想書くには難しい、もっと掘り下げて考えていけば面白いものが見出せそうな感じはあるのですけれど、そういう観念的な面白さはともかく、純粋なエンタメ的面白さ、という意味では流石に突き抜けて素晴らしい、というほどではなかったかなと思います。
 どうしても外的要因として必ず発現する事件への対処がメインになっていく作品ですし、尺的にも普通だから恋愛要素やそこから発展したやり取りの楽しみなどを存分に引き立てるまでには至らなく、面白いんですけどもう少し重厚感が欲しかったな、とは感じるところが多かったです。
 ラスボス的存在にしてもやはりちょっと底が浅い部分はありましたし、このテーマを明確に浮き彫りにする上で外せない理不尽はあるとはいえ、それに依拠し過ぎて理路で武装して語るべき部分を多少なり蔑ろにしてはいないか、と、まぁ元々の期待値が高かった分僅かな瑕疵でも気になってしまうというかね。

 勿論これはこれで充分に楽しめたのも事実ですが、手放しで絶賛とは言えませんし、あとこれ、月影の設定と似ている部分があって、だけどあちらに比べて学びの手法という点での曖昧さ、乱雑さが目立ったのも、タイミング的にちょいマイナスでした。
 諸々総合して、評価的にも少し控えめに、という感じですねー。


キャラ(20/20)

★全体評価

 どうしても事件に対処していく流れが主流にある中で、持ち味の多角的なキャラ性の引き立て、独特の心証描写の妙があまり生かしきれていなかった感はなくはなく、それぞれの立場、あり方の幅の中で、というのが目立ってしまったのはちょっと残念に感じる向きはあります。
 ただやはり主人公といざなのキャラ造詣そのものが実に秀逸で、それが触発的に雰囲気をすごく清涼かつ爽快に彩ってくれていて、その辺を考えても特にマイナスするまでの弱味ではないかな、と。

★NO,1!イチオシ!

 まぁそりゃあ当然いざなになりますね。体験版時点から大好きでしたけど、いざ本編プレイして更に好きになりましたし、今年最初の殿堂ヒロイン候補かなと。
 基本的にすごく寛容で大らかで真っ直ぐで、女の子らしさはちゃんと保持しつつやたらと男前で、こういう清潔で絢爛としているヒロインは本当に可愛いし素敵だなぁと思います。
 その上で今回は幼馴染というステータスがあり、それを存分に、むしろ存分過ぎるくらいに生かしての主人公との特別な関係性を無理なく自然に築けていて、しかもそれが恋愛的な要素において阻害要因にならないという優秀過ぎる性質まで備えているのだから、これはもう決定的に設定の勝利だよなぁ、と。

 あくまでも下敷きには、自分も相手にも嘘がつけないほどの理解、友情の絆が置かれていて、その延長線上にあらゆる関係が付随していく、というありようと、最初こそ戸惑いつつ、どちらにしてもそれをある程度直ぐにきちんと割り切ってしまえる豪快さ、前向きさは輝いていました。
 だから主人公が他の子と結ばれても、それで揺らぐものはなく、自身が結ばれるのであれば、男女の別はきちんと理解して折り合いをつけつつ、それでもできる限りには真っ直ぐ嘘なく対等に、という雰囲気が自然体の中から満ち溢れていて、本当に素敵な子だよなぁと思います。
 こういう言い方は正しいかアレですけど、秘め事的なシーンにおいてもやっぱり女の子、というよりいざななんだよなぁ、と思わせた時点で勝ちというか、あくまでも恋愛的な面以上に友情が紡ぐ力の方がメインファクターなんだよなぁ、と納得させられるありようなんですね。

 ともかく、常に情に厚くお節介で朗らかで、どのシーンでも作品を明るく彩ってくれていましたし、本当にメインヒロインとしてこれ以上ない絶対的な存在感を放っていたと思いますね。ほんっとうに可愛くて可愛くて、非常に満足できました。

★NO,2〜

 次点だと桃、になりますかねやはり。
 いざなとは違う形での共感を抱いているだけに、どうしてもそれはどこか諦観や斜視を招くような部分はあって、それ故の停滞がもたらす実年齢との様々な面でのキャップが中々可愛かったと思いますし、シナリオ的にもは恵まれていて存在感は非常にあったなと。あと地味にスタイル的な意味では一番好きだったりしますし。。。

 マリアも可愛いけど、どうしても立場的に出来る事は限られる、或いは手駒として言い様に使われて、って部分での不憫さの方が先に立ち、ヒロインとしても本当の意味で結ばれるのはこれから、って感じで終わってしまっているので、もう少し掘り下げて欲しかったなぁと思います。
 折角いざなルートのラストで、あんな形で助けられる展開とか美味しかったわけですし、そういう素地をどう紡いできたか、くらいは語ってあげても良かったと思うのですけどね。

 青香は最初は本気で尖りまくってるからうわぁ、ってのはあるし、それを覆すだけの事件を経てなおまだそれはそれ、って感じでツンツンしてるのだから、生育環境ってのは重いなぁ、と、主人公といざなの関係性の特殊さと眩しさに翻ってやはり不憫さを催す感じですね。
 ただそれだけのものを背負っても挫けない強さは光りましたし、間接的に言えばいざなに救われたというのは、ってところで、むしろこの子がこうでなければあんなに速やかに二人が二人らしさを取り戻せなかったのかもしれないなぁ、と思ったりもしますね。どちらにせよ、主人公といざな、二人を通しての青香、って部分の方が色濃くて、もう少し柵から開き直っての青香らしさ、は見てみたかった気もしますね。

 そして姫子可愛いよ姫子!いかにそうするしかない、とはいえ献身的に支えてくれたり、いざとなったら自分を犠牲にして助けてくれたり、地味にラストルート以外では大活躍でしたよね。
 主人公といざなが共に無鉄砲な部分はあるからこそ、それを支える立ち位置を選んで、ってのはすごく最後まで伝わってくるし、その健気さは胸を打ちますね。非常に印象深いキャラだったと思います。


CG(17/20)

★全体評価

 基本的に好きな絵柄ではあるのですが、質量ともにんー、もう一歩かなぁ、と思う部分はちょいちょいあって。青香とかあそこまで尖り目じゃなくてもよくね?とか、後は1枚絵のバランスとか投入箇所とか、立ち絵も人数は多いけど素材的にはってのもあり、諸々込みで迷ったけどこの点数にしとこうかな、と。

★立ち絵

 ポーズはヒロインで2種類、サブで1種類。腕差分などもないのであまり躍動感はなく、それぞれの性格はしっかり出ているとは思うけれど目立って素晴らしい、とまでは言えないかなと。
 お気に入りはいざなやや左、正面腕上げ、桃やや右、マリアやや左、姫子あたりですね。

 服飾はヒロインで3種類、サブで1種類とここも必要最低限ですかね。むしろ水着があっただけ良しとすべきなのか。。。小物差分なども少しはありますけれど目立つほどではなく、ただいざなのエプロン姿はえもいわれぬ魅力がありましたな。
 お気に入りはいざな制服、私服、水着、桃部屋着、私服、水着、マリア私服、水着、姫子私服あたりですね。

 表情差分はそれなりに多彩、複雑な機微を細かく拾える仕様になっていますし、それぞれに味わいもあって、特にいざなは全般的に可愛く良かったなと思います。
 お気に入りはいざなはまぁ全部でいいかしら、桃溜め息、ジト目、微笑、照れ、笑顔、マリアジト目、微笑、照れ笑い、苦笑、青香照れ2、笑顔、驚き、姫子呆れ、困惑、怒り、驚きあたりですね。

★1枚絵

 全部で75枚、流石にちょい少ないかな、とは感じますね。もっともシンプル版の値段で言うならギリギリ水準に届くか?くらいですし、その辺の判断が難しいところですけれど。
 質も一番好みだったころとはちょっと画風が変わってる感もあり、可愛いんですけれどそこまでガツンと来るのはあまりなかったなぁ、というのが正直なところですかね。表情の角度によって、可愛いのとアレ?ってのが混在してたり。勿論悪くはないんですけどね。

 お気に入りはいざなとの出会い、ビーチバレー、青香腕ひしぎ、肩組み、フェラ、騎乗位、バック、69、背面座位、正常位、マリア遠泳、背中流し、錯乱、引き留め、フェラ、騎乗位、対面座位、桃ごろ寝、シャワー、射撃、オイル、反省、監禁、寄り添い、押し倒し、騎乗位、バック、立ちバック、正常位、フェラ、対面座位、いざなキック、キス、濡れ透け、膝枕、見送り、未来へ、後ろから襲って、バック、パイズリ、騎乗位、正常位、クンニ、背面座位あたりですね。


BGM(19/20)

★全体評価

 全体的に水のイメージを強く打ち出した旋律に統一感がありつつ、非常に哀愁と信念の色合いがしっかり滲む強い曲が多くて、中々にインパクトがありましたね。無論作風や場面とも合致していますし、全てにおいて高水準に仕上がっていると思います。

★ボーカル曲

 全部で3曲。
 OPの『Hydrargyrum』は神曲ではないでしょうか。悲哀と疎外の色合いが絶妙に絡み合い、それでも強く生きていく信念の悲しみもまた内包して、特にBメロの旋律が素晴らしい出来でもんのすごい気に入ってますね。無論サビの伸びやかさもいいですし、曲として中々破天荒な構成に思えますが、それがギリギリのところで調和している感じなのも大したものだなと。

 挿入歌の『水棲』も実に綺麗な曲ですね。
 本質的に違う種族が交わっていく中で、必然的に生まれてしまう痛みや悲しみを包括しつつ、それでもひとつになってその先を見たい、という希望と撞着が真っ直ぐに溢れている曲で、柔らかく透明な旋律が、まっさらな心で向き合っているイメージとも合致していますし、曲としてもかなり好きです。

 EDの『銀の夜明け』は、実際的に根源的解決に至っていない中で、なので、不条理をそのまま受け止めつつ、出来得る限りに前向きに強く生きていく意思を示した感じで、曲的にもその分奥行きがやや薄め、メロディ的にもこの3曲の中ではちょっと落ちるかなとは思います。

★BGM

 全部で30曲はほぼ水準ですが、面白いのはいくつかの曲に重ね合わせやアレンジバージョンがあるところで、それによりキャラの組み合わせや場面による些細な雰囲気の違いもフォローしていて、中々に面白い試みだなと感じますね。
 またそれとは別に、きちんとシナリオに合わせた危機感溢れる曲や悲哀に満ちた曲、感動を引き寄せる曲なども豊富に用意されていて、そのどれもが出来が良くこれは満足度がかなり高かったと言えますね。

 特にお気に入りは2曲。
 『Dear my close friend』は非常に疾走感があり、ギターの旋律が耳に色濃く残っていきつつ、どこまでも真っ向勝負、という爽やかさも内包していてなんとも言い難い魅力を感じる曲です。
 『全ての始まり』は、悠久の流れの中に潜むどうしようもない齟齬や哀切を幽玄な旋律の中に練り込んでいて、しっとりしていながらどこか胸が騒ぐ、独得の味わいがある素敵な曲ですね。特に後半部分の透明感が気に入ってます。

 その他お気に入りは『Mercuries』『細かいことは気にしない』『エトランゼ』『あるべき日常』『楽しい奉仕活動』『たそぐ間に』『煌く空を』『雨のように』『流動に取り残されて』『Crisis』『安らかな涙』『辿り着いた世界』『青く滲む別れの雫』『Hope or justice』『青の記憶』『スイセイの音』あたりですね。


システム(9/10)

★演出

 全体的に無難な出来、ではないでしょうか。
 キャラは動くけどそれなりで、バトルシーンなどもそこまで躍動感があるわけでもない、情感的な部分での背景効果などはそれなりにきちんとしていますし、シナリオと連動しての見せ方には工夫が感じられて好きですけれど、抜群にこれは、と思えるほどのものはなかったかなと。
 ただOPムービーは色遣いといいキャラの見せ方といい、どこか息苦しさを伴う画面構成といい中々に秀逸ですし、これはかなり好みですね。

★システム

 必要なものは揃っていますし特には問題なし、ですね。
 ジャンプも速いし、シナリオセレクトがあるからあまり頻繁にセーブしなくても平気なのはいつもながらに有難い所です。


総合(87/100)

 総プレイ時間19時間くらい。共通5時間、青香とマリアが3時間で、桃といざなが4時間くらいの感覚ですかね。
 全体的にポリューミーというほどではなく、しっかりとコンパクトに必要な要素は組み込んできてますが、裏を返すと遊びというか、余暇の色合いは薄めなので、変にイチャラブを期待すると少し肩透かしにはなります。
 といってシリアスなSFミステリとして突き抜けている程ではなく、テーマ性に忠実な分だけ敢えてファジーにしている設定などもなりそうなので、表面的な部分だけ辿るとちょっと食い足りないかも、という印象はありましたね。

 でも全体的にしっかりまとまっている良作とは思いますし、いざなのキャラが体験版で素敵!と思えたなら問題なく買ってみていいのではないかと思います。
posted by クローバー at 05:47| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月07日

しゅがてん!

 公式で一目見た瞬間からかかか可愛過ぎるっ!!とときめきまくってしまったので、その時点で買うのは不可避、実際に体験版などに触れても非常にハートフルで癒される素敵な内容でしたのでちょー楽しみにしてました。

シナリオ(22/30)

 奇跡の定義。

★あらすじ

 笛矢町には、「妖精の降る夜」と呼ばれる不思議な現象が古くから根付いていました。
 それは寒い冬のある特定の日、気流の関係で上空が極端に冷えてダイヤモンドダストが生成される事で現出する、天上のスクリーンに夢幻の煌きが映し出される情景の事です。

 この街唯一の洋菓子屋、フォルクロールの孫娘と、そこの居候であるめると氷織は、こっそり抜け出してその「妖精の降る夜」を間近で見届けた日の夜、我が家の軒先で人が倒れているのを発見します。
 奇矯な上着を羽織ったその体格のいい男性は、この店の雨どいの一部を握ったまま雪塗れで気を失っており、そのままにはしておけないと一晩看病した事で、無事に男性は目を覚ますもののそこからがまた一波乱。
 どうやら状況証拠からして、彼はこの家の屋根から滑落したようなのですが、本人がその事を覚えていないばかりか、自分の名前すら思い出せない記憶喪失になっていたのです。

 かくして、洋菓子屋でしばらく経過観察することになった主人公は、二人になにくれと世話を焼かれるうちに、今この家が店主の入院により店を開けていない事、それにより町の中で少し立場が悪くなっている事を知ります。
 試みにお菓子作りなどをしてみたところ、意外な器用さを発揮した事で、めるからは変な期待を投げかけられるものの、流石に明らかに怪しく素人同然の自分が代理を務めるわけにもいかない、と思っていましたが、事態はそこから更に悪い方向に。
 とある大きなホテルの代理人としてのガトーとショコラのネージュ兄妹が、洋菓子部門新設の為にこの町の、唯一無二の高い煙突と釜を保持するこの店に目をつけ、開店の目途が立たないなら譲って欲しいと持ち掛けてきたのです。

 けれど、店に思い入れの強いめるはそれに頷かず、切羽詰まった挙句にみんなの前で主人公が代理のパティシエで、明日から開店すると告げてしまいます。
 元々この店のファンであるショコラはその選択を無邪気に歓迎し、本来の目的である町の伝承調査の傍らにちょくちょく手伝ってくれるようになり、兄のほうもお手並み拝見とばかりに引き下がって、一時の猶予を得るものの、意気込んでばかりでなまじ下準備が出来ていない再開は困難続き。
 年末に近い時期もあり、開店が周りに周知されずにお客はまばら、彼女達なりに営業努力をするもうまく結びつかず、意地を張っていためるも徐々に諦めムードになりますが、結局それはやり方がまずかっただけで。
 とあるきっかけにより再開が周知され、新たなパティシエの腕も知られた事で、ギリギリのところでフォルクロールの経営は息を吹き返し、改めて主人公は、戻らない記憶の在り処に微かな悩みを抱えつつも、この店を盛り上げていくために尽力していくのでした。

 果たして主人公の正体とは何なのか?
 この町に眠る伝承に秘められた謎とは?
 
 これは、洋菓子店経営の中で少しずつ深く心を通わせ、より近しい関係にステップアップしていく中で見えてくる優しいメルヘンを綴ったハートウォーミングストーリーです。

★テキスト

 全体的に理知的で整っていつつ、感情表現や動作表現などに独特の擬音語、擬態語を使って可愛らしさを存分に引き出しているのが特徴的ですね。
 その分非常に前向きで愛らしい雰囲気が徹頭徹尾崩れない感じですし、個々の性格なども所作や反応、言葉の選び方や気遣いなど、日常の様々なシーンに丁寧に散りばめられていて、本当に純粋に心が温まる、癒しを提供してくれる読み口になっているなと感じますねー。

★ルート構成

 ごく基本的な、ヒロインの心情を忖度する好感選択に加えて、最終的には具体的なヒロイン選択、どの子が示唆する考え方、あり方に共感するかという部分でルートが確定していきます。
 ボリューム的にも長い話ではない中で選択肢も最低限ですが、ある程度ツボを心得た場面での一支え、という感じにはなっていますし、特別思想性やとっつきにくさの閾値が大きく食い違うわけでもない、かつ主人公の本質を考えれば妥当な配置だと思います。

★シナリオ

 大枠的にはあらすじで大体触れたのでざっくり、ヒロインが三人いる中で、主人公がどの子により深く傾倒するかで見える世界が少しずつ位相を変えていくイメージですね。
 具体的にはこの物語の中で外的要因的な要素を備えているのは氷織の秘密とあとおそのさんとの関係性くらいになってきますが、ショコラの傍に居るとその辺はほぼ見えず、めるだと半分くらい見えて、氷織だと全貌が明らかになる上により展開自体もトラブル度合いの高い方向に転がっていく、という感じです。
 
 無論どのルートにしてもシリアス色はそこまで濃くはないですが、それぞれに心に秘めた迷いや寂しさはあり、それを引き出すまでの距離感はまちまちなので、それもある程度シナリオの質の差にはなっているのかな、と考えます。
 個別評価的には氷織>める=ショコラくらいで、上で触れた要素込みで多少氷織が優遇されているかな、とは思いますが、どのルートも二人が結ばれていく中での動き、それを見ての周りの配慮などで、内的要因によるささやかな変化と必然は担保されていますし、整合性も取れているので安心して楽しめる形です。

 ショコラシナリオは、彼女だけが普通の学生ではなく、日中に店の手伝いをしに来てくれるという中で、視座の中心がその店の時間になる分だけ氷織の動向に目配りが甘くなるし、かつめるや氷織シナリオ程氷織が向こうに傾斜しない、きちんとめるの面倒も見てますよ、って裏側になっているのかなと感じます。
 その上での恋模様は、ある意味では一番最初から意識している部分があるだけストレートで甘々で、進展的にはお約束を交えつつも一番紆余曲折は少なくなっていますね。
 
 恋仲になっていく中で、ショコラがこの町に来た一番の目的と、その背後にある寂しさにも想いが届いて、それを支えてあげたいという一念の中で、彼女が追いかけている伝承の謎を解いていく形になります。
 それ自体はいずれ氷織シナリオを見ても種も仕掛けも根も葉もある、という部分でもありつつ、そうでもないかつての主人公的な存在、現市長のあいらのなにかしら、を想定させる含みがあって、これはこれで興味深く楽しめましたし、最後のオチの部分の温かさ、人となりも含めてほっこり出来る素敵なお話だったと思います。

 めるシナリオは、おそらくショコラルートだと発生しないような心理的状況の蓄積が、色々と状況を違った方向に拗らせていっている感じはありましたね。
 主人公が一番にめるを見ていて、めるもそれに全力で甘えているという中で、今までめるの世話役を自任していた氷織が一歩引くと同時に、元々心を砕いていた親戚のおそのさんの出産に向けての手伝いに傾斜していく中での、めるが抱く幼くワガママな想い、氷織とも離れていきたくないという思いが上手く噛み合わずにすれ違っていく様は多少なり切ないものはあります。
 
 が、それがあればこそ、本来一番恋愛感情に疎いめるが、主人公に対してその想いを発露するだけの土壌が出来上がっているとも言えますし、色々思わせぶりだったり強引な部分もありますが、結果的にその本心がどこにあるか知っての改めての懐きっぷり、愛情の示しが本当に可愛く素敵でした。
 なんかもう終盤主人公との恋愛譚というより、めると氷織のイチャイチャがメインなのでは、と思ってしまうくらいのつくりなのですが(笑)、個人的にこういうヒロイン同士がきゃいきゃいしている展開は大好物なので中々に満足できました。

 氷織シナリオは一応メインだけあり、様々な謎をしっかり解明しつつ、複雑怪奇な氷織の心情に対しても一歩ずつ丁寧にヴェールを剥いでいく様が良かったなと思います。
 かつての幼い我が儘な想いが不幸を呼び寄せたのでは、という疑念から離れられずに、どうしても人に対する距離を一歩置きがちな氷織に対し、彼女が抱え込む奇跡の秘密を解明するのと並行して、類比的にその心情をほぐし、また奇跡の定義、受け取り方の点で異なった視座を提供する事で、より踏み込んだ距離感を紡ぐことが出来ているのは素敵なところだな、と思います。

 関係性の進展にはそれでも、彼女の特異体質そのものが最後の踏み込みとして入用にはなっていますが、そうなる事での周りの祝福と配慮などはやはり温かく。
 けれどその事で、本来氷織が配慮すべき部分に疎漏が出てきて、それが巡り巡ってちょっとした危機を呼び寄せてしまう、という部分は、少なからず恣意的かつ力技ではあるのですが、主人公の特質を踏まえればギリギリあり、なのかなぁ?と。
 やってることの無茶はともかく、そういう形でかつて主人公が言葉で定義した奇跡を実質的に体現者として見届ける事で、ようやく氷織の胸を覆っていた全ての幕が取り除かれて、というのはわかりやすくハッピーエンドで、実に綺麗なまとめ方だったと思いますね。

★シナリオ(ネタバレ白抜き)

 全員クリアすると見られるエピローグでの答え合わせは、まあそうだろう、ってところではありますね。
 実際に主人公が訪れていたのもクリスマスイブか当日かで、この街唯一の煙突がある家、上空の気流が激しいなど、きっちり道理に合った要因が準備されていますし、名刺の時点でも鋭い人ならそういう事なんだろうな、とは気付けるでしょう。

 その上で、やはり存在の本質としては人の願いを叶える、という所にある以上、めるが願うならずっとパティシエとしていられるし、氷織シナリオの終盤の山場のような、普通だったら許されず乗り越えられない状況でも、想いの紡ぐ奇跡をそっとその不思議な力が下支えして可能にしてしまう、というメカニズムを通底させている、と言えます。

 更に穿ってみれば、普段の生活の中では、主人公の側からは一切色めいた思考は出てこないのに、いざヒロインから秋波を向けられた途端に反応する、というありようもそこに根付いているのかな、とも思えますし、非常に都合のいいメルヘンな存在なのは確かですが、この物語には正しくマッチしている在り方でした。
 テンパリングはチョコレートの湯煎の技法ですけれど、主人公の存在がヒロイン達にとってそういう触媒になっていて、凝り固まった想いを一度解きほぐして、正しい形に固め直すという存念もしっかり伝わってくるのが優麗なところですね。


★シナリオ総括

 とにかく粉砂糖のかかったパウンドケーキのようにふわふわ甘い物語でしたし、ほんの少し隠し味的にビターな要素もありますが、それも含めて甘さを引き立てる装置になっていて、最初から最後までひたすらに癒される素敵な仕上がりだったと思います。
 無論そこまで長くはなく、大上段に構えた大仰なテーマ性もあるわけではない、小奇麗にまとまった物語ですから、突き抜けてシナリオとして面白い、深みがあるとは言いませんし、点数的にもこのくらいにはなってきますが、プレイ中は本当に幸せをたっぷり貰える素晴らしいお話でした。  


キャラ(20/20)

★全体評価

 この点に関しては申し分なし、ですねー。
 元々絵柄的にも気質的にも私好みのロリ寄り設定ですし、基本的に誰しもが愛らしく甘えてくれるのですけれど、その匙加減が三人の中で上手く折り合いがついている、かつその気質の差が独自の魅力と直結しているのは良かったですし、誰しもが善良でお節介で、雪の町が舞台でも非常に温かい絆が紡ぐ空間、雰囲気を作り上げていて素晴らしかったと思います。
 その上でそれぞれのヒロインの心に巣食った大小様々の瑕疵を丁寧に拾い、癒していく流れも素敵でしたし、そこで見せてくれる成長も含めて、こじんまりとはしているけれど一通りしっかり押さえていて満足度は高いです。

★NO,1!イチオシ!

 三人ともに抜群に可愛いのですが、やはり特に、となると氷織を置いて他にないなと思います。
 他の二人に比べて隠し事や、内に秘める成分が強くて、その分表側ではしっかりと大人びた、理知的な雰囲気を見せているのですが、その心の根っこの痛みや葛藤に触れた時の弱さや愛らしさ、そこを乗り越えておずおずと甘えてくる時の可愛らしさは本当に格別でしたね。
 挙措的にも、他の二人が活動的なのに対して楚々としており、物静かで不器用ながらきちんと思いやりが溢れているという匙加減は見事だったと思いますし、きちんとしているモードと甘えモードの演技分けも素晴らしかったですねー。この人の声はやはり無邪気な甘えモードには破壊力があり過ぎます。

 それまでの体験的に、どうしても奇跡に対して突き放した考え方をしてしまうのは致し方なかったと思いますし、その上で主人公と結ばれる事でそこから抜け出し、正しく奇跡を体現できる、人との距離をより深く、大切に出来る子に成長してくれているのもほっこりしますし、酔っぱらいモードなんて最終武器もあったりで、全般的に隙のない素晴らしく可愛いヒロインでした。

★NO,2〜3

 めるとショコラは甲乙つけがたいですかねぇ。どちらも途方もなく可愛いのは間違いないのです。

 めるはとにかく真っ直ぐ無邪気で、表しかない!って感じの甘え方、蕩け方が本当に可愛いですね。ここまで感情がわかりやすく透けて見えるタイプは中々ヒロインとしては奥行きが作りにくくて難しいと思いますが、その点主人公と、だけでなく氷織との三人の関係を上手く交錯させることで、この子の本質的な善良さと大人の部分、それでも隠し切れない情動をしっかりバランスよく見せられていたと思います。
 77の弱点も可愛かったですし、感極まって飛びついてくる時の愛らしさは格別で、でも個人的にはめるルートラストでの氷織とのじゃれ合いが一番ときめいたりね。。。

 ショコラも当然素晴らしく可愛かったですね。
 外人さん設定故の独特な積極性や愛らしさ、愛嬌を全方位に振り撒きつつも、一番男女的な意味合いでも素直に正直に反応していて、そういう恥じらいとか慎ましさとかも含めて面白い子、実に可愛い子だったなと思います。
 内弁慶、というのとはちょっと違うにせよ、どちらかと言えば氷織同様に誰彼構わず仲良く、とめるみたいにはいかないだろうし、そのくせとびきり好きな相手には不必要なくらい緊張する、という姿勢はなんとも微笑ましいものがありますし、このCV力による独特の惚けた優しい空気感も含めてすごく愛しい子でした。

★その他

 小町ちゃんも攻略したいなー、でも体重計が宿敵になりそうだ(笑)。
 街の人達も誰しも温かくて素敵でしたし、あいらもなんだかんだで気にかけてる感じでいいツンデレ感でした。そして結局一匹だけ犬の名前覚えられん(笑)。


CG(20/20)

★全体評価

 もうね、私の好みど真ん中ストライク過ぎて死にますねこの可愛さは。。。
 ヒロイン全員ロリ寄せですし、絵柄も柔らかく色合いもパステルな感じでふんわりしていて、可愛い特化型ではあると思いますが私はこういうの大好き。シンアイの時も可愛いな、ってすごく思いましたけど、今回は作風に塗りや画風も寄せている事で一段と破壊力が増していると思います。
 値段に対しての素材量、という意味では水準かやや足りないか、くらいではるのですが、あまりにも私好みの要素が散りばめられ過ぎていて、これはもう満点つけるしかないだろう、となりますね。

★立ち絵

 ポーズはヒロインで3種類、サブで1種類ですね。まあ多くはないんですが、それぞれの個性はしっかり滲み出ていますし、あと個人的に後ろ向き立ち絵があるとそれだけで好評価したくなるのでした。。。
 お気に入りは、というか基本的にヒロインは全部可愛いんですよね。。。

 服飾はヒロインで3種類+α、サブで1種類ですね。
 基本的にはウェイトレス、制服、私服にコート差分で固定ですが、冬の物語だけありヒロインズのストッキング比率が高いのが個人的にはちょー満足ですねー。
 特にお気に入りは氷織の制服とめるのウェイトレス、この制服のスカートの短さに白ストが映えるのと、めるの快活さには本当にこの格好がマッチしているなと。
 その他お気に入りもまあ全部で。というか小町はなんでこのくそ寒い中であんな衣装なのか(笑)。

 表情差分も、それ自体は特別多くはないですが、エモーションが多彩に用意されている分すごく感情に奥行きが出ていますね。遊びも多い中で愛らしさを重点的に引き出しているしすごく可愛いです。
 特にお気に入りは氷織のジト目とめるの線目、どちらもすごく個性が溢れていて、楽しい感情の発露ではないのに愛らしいという特別な味わいを醸していて好きです。
 その他お気に入りも、めんどいので全部にさせといてくださいませ。。。

★1枚絵

 通常が47枚のSDが5枚で52枚ですね。
 ミドルプライスなのですけど、それでも値段に対してだとちょっと物足りなく感じる向きはなくもなく、でもシーン数で稼ぐ作品でもないし、日常の必要なシーンにはしっかり完備されているので、その都度心がほっこりさせられたものです。
 本当に出来に関しては素晴らしく素敵で、あまりに可愛過ぎて何度エクトプラズムを吐き出したことか(笑)。ここまで眺めているだけで幸せなのはいつ以来かな?って思うくらい、ばっちり抜群に癒されましたねー。

 特にお気に入りは6枚。
 1枚目はめると氷織の添い寝、このとことんに幸せそうなめるの表情が素敵過ぎますねー。
 2枚目はめるの雪合戦、このとことん楽しそうなめるの雰囲気と、デフォルメっぽい氷織の対比がまた可愛いです。
 3枚目は氷織の涙、積年の想いが溶けていくような温かく優しい涙は本当に綺麗で、これがこの作品の中でも白眉だと思いますね。
 4枚目は氷織と69、こうして髪をかき上げてしゃぶる仕草が献身的で愛らしいし、半脱ぎ白ストも素晴らしいと。
 5枚目はパーティー飾りつけ、この楽しげで、少しバツの悪そうな氷織が本当に可愛いです。
 6枚目はショコラ初H愛撫、この流し目とお尻の造型が実に見事で宜しいかと。。。

 その他お気に入りも全部でFAデス(笑)。いやほんと全部可愛過ぎて可愛過ぎてたまらんのですよ。。。


BGM(17/20)

★全体評価

 作風に合った幻想的でスウィーティでカラフルなイメージの曲が揃ってますね。タイトル的にもお菓子の名前が入っているし、その辺は拘りを感じさせます。
 質量ともに水準クラスとは思いますが、非常に耳障りは良くて好きですね。

★ボーカル曲

 全部で2曲。
 OPの『Candy a Mine』はすごくキラキラした、ポップでキュートなこの作品のOPらしい曲で、そして何故か私の中でこの曲大ヒット中です。。。この可愛さがツボというか、サビのメロディがホントに好きだし、歌詞もすごく甘くふわっとしていていい味わいで、質的に抜群とは思わないんですけど聞き飽きませんねこれ。
 EDの『てんぱりん』も中々にいい曲。こちらは少し力強いボーカルで、でもやはり明るくキラキラした前向きな未来を言祝ぐ雰囲気が中々良く、こちらは特別に思い入れはないですが普通にいい曲だな、と思いますね。

★BGM

 全部で14曲は、ミドルプライスとはいえポリューミーとは言い難く、もう少しああってもとは思います。
 ただ基本的に必要なものは揃ってますし、どれも基本的にリズミカルで素朴な中に温もりがあり、素敵なラインナップになっていると思います。

 お気に入りは『街角のドーナッツ屋さん』『ウェハースを片手に』『お土産はマカロンで』『パリッとクラッカー』『涙味のキャラメル』『愛しいタルト』『とろけるムース』『オシャレにシュー・ア・ラ・クレーム』あたりですね。


システム(9/10)

★演出

 演出は全体的に良好と思います。
 キャラも細かくコミカルに動いて愛らしいですし、エモーションで感情面のフォローもばっちり、後ろ向き立ち絵なども駆使した位置関係や背景との噛み合わせもこの系列らしいつくりですし、1枚絵の破壊力を中心にした情感演出もしっかり備わっていて、突き抜けたものはないですけどバランスのいい出来だと感じますね。
 OPムービーもとても神秘的かつ情緒的で、胸に染み入るような美しさと可愛らしさをしっかり等分に引き出せているし、色々な配慮も含めて丁寧に作られていて好きですね。

★システム

 基本的に必要なものは揃っていますし、操作性もいいので特に問題なく。
 基本的に回想に立ち絵鑑賞を入れてくれるのは嬉しいのでその点でも満足です。どうしても日常展開だと、足回りまで丹念に見つめられる引きの場面って少ないですしね。。。


総合(88/100)

 総プレイ時間13時間くらい。共通4時間にショコラとめるが2,5時間ちょい、氷織が3時間ちょいでエピローグは10分程度という感じですかね。
 全体的にとにかく朗らかで、雪の町が舞台ながらどこまでも温かく、癒しの力に満ち溢れた素敵な作品でした。現実に疲れたロリコンさん必携の一作と思いますし(笑)、作風にも極端な癖はないので、絵やキャラを見て惹かれる部分があるのなら素直にお勧めできる一品ですね。

 
posted by クローバー at 12:19| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする