2017年07月18日

春音アリス*グラム

 散々延期繰り返してたし、内容的にはあまり期待は持てなかったんですけど、絵とCVが強かったので惰性に任せて買ってみた、という感じですね。

シナリオ(14/30)

 乱雑もここまでくると芸術か?

★あらすじ

 主人公は、かつて正義感からとある事件を起こし、下手すると退学になりかねなかったところを生徒会長の優理に助けられ、懲罰的な意味も含めて生徒会の下部組織である黄昏部に所属する事になりました。
 部長の耶々も同じように優理に助けられて、その受け皿としてこの部を作ってもらった経緯があり、その為に恩返しを、という想いは軌を一にしていて。
 故に、学園で実験的にごく少数に配られているアーケンカードの特異な能力を用いつつ、二人でこじんまりと、生徒会では目の行き届かないささやかな人助けに奔走しています。

 この学園には、とある事情から自治組織が生徒会と新生会の二つあり、新生会が一方的に旧態依然とした生徒会のやり方を弾劾し、新風を巻き起こそうと対立を煽る中で、新生会下部組織の風紀執行部代表である幼馴染の一葉や、新生会の役員ながらしょっちゅう黄昏部に遊びに来る後輩の雪などとは、立場を超えた交流を持ちつつ、穏やかに日々を過ごしていました。

 そんなある日、学園に北欧からの転入生・エリサがやってきます。
 転校前日にひょんなきっかけで彼女と交流を持った主人公は、好奇心旺盛なエリサにいい意味で一目置かれ、その傍にいれば面白い事が沢山ありそう、くらいのノリで黄昏部の新たな部員となって。
 その登場と足並みを合わせるように、学園内ではZEROと呼ばれる不思議な怪盗の噂が流れ始めます。
 黄昏部が出窓としている目安箱にも、そのZEROと思しき相手からの数々の挑戦状や予告状が送られてきて、学園のイベント絡みで奔走する中でそちらの対処にも追われることとなり、今まで以上に賑やかな日々と、そして沢山の事件が舞い降りてきます。

 ひとつひとつの事件を足腰を据えて解決しつつ、その経緯でヒロインとの関係性もより深いものにしていって、そうこうする中でヒロイン達が抱える葛藤や苦悩、それをもたらす様々な学園にまつわる謎や闇も垣間見えて。
 やがて寄り添う相手を見出した主人公は、その相手の問題に向き合い、自身が持つ無限の可能性を有用に扱いながら立ち向かっていくことになります。

 果たして学園を騒がせる怪盗の正体と狙いはなんだったのか?
 アーケンという不透明な技術がもたらす不穏を、彼らは無事にはねのけられるのか?
 対立という関係性を克服し、手を取り合って、より明るい学園の未来像を紡いでいけるのか?

 これは春の手前で足踏みしている謎を解き明かし、美しく輝かしい未来を紡ぐための愛と絆の物語です。

★テキスト

 基本的に当たり障りはない、と思いますが、どこかとっつきにくさ、読みにくさは感じる文章です。
 全体的にノリそのものは真面目寄りなんですけど、説明しなくていいところがくどかったり、逆にすべきところが淡泊だったり、そのあたりのバランスが悪いのと、キャラ性を意識するのはいいにしても反応がかなり画一的で新鮮味が薄い空疎なやり取りになりがち、ってのはあります。
 サブ含めて横の繋がりが広いのはいいところなのですが、その幅広さを生かし切れていないというか、有機的な反応を引き出しきれていない感は強く、別枠でヒロイン視点モードもある割に、感情の掘り下げが基本浅いなぁ、と思いました。

 加えて土台の構成自体もかなり骨組みがファジーなのも相俟って、都度都度の状況が非常にアバウトで芯がない感じ故に、多少テキストが頑張って感情に訴えようとしても空転する、というイメージは強く、総じて眠くなりやすいというか、スラスラと先を読みたいと思わせてくれる吸引力はあまりなかったですね。

★ルート構成

 基本的にロックはなく、共通の中で狙ったヒロイン寄りの選択肢を選んでいけば、というオーソドックスなつくりです。
 ただこの点でプラス評価なのは、個々の選択がヒロインの心情を汲み取り、より深く寄り添うか否かというものであることと、その数が比較的最近のゲームにしては多く用意されているところですかね。そこで少なくとも主人公とヒロイン両者の信頼感や、恋愛の萌芽に至る筋道をある程度説得的に担保していると思います。

★シナリオ(大枠)

 基本的には不思議な能力や現象などと、ヒロインの心情を色々と噛み合わせながら情緒的な物語に組み上げていく、という事になりますが、大枠で見た時に気になる部分はかなり散見するつくりです。

 大別すれば三つあるのですが、一つ目は作品全体を通貫するテーマ性の弱さですね。
 基本的には優理のありようを模範として、善悪の対立と、悪をも内包し改心させて前に進む理想的な在り方を紡ぎたい、というところはあるでしょうが、ルート毎に内容そのものはかなり多様化、パラレル化しており、その中での強弱はどうしても出てきます。
 それはエンタメ色の強さ、という意味ではプラスに働くかもですが、その分作品の統一性においては致命的な欠損をもたらしてもいて、読後感の味わいひとつとってもかなり差異があるので、この作品といえばこう!というフックがないなぁと感じさせます。

 二つ目はそれに付随しての、強制力の高そうな外的要因の濫用と整合性の放棄ですね。
 特にエリサと一葉ルートで顕著ですが、少なくとも主人公達の立ち振る舞いとは全く無関係のところでほぼ確実に発生しうる事件を物語の土台に置くのは、他のルートではなぜそれが発生しないの?という疑問に直結します。
 勿論ある程度共通で伏線は引かれている展開なのですが、特にエリサルートのそれなどは共通の主軸と言ってもいい部分で、なのに他のルートに入ったらその問題は一切表面化せずに終わってしまうというのはあまりにも不自然であり、このあたりの都合のいい恣意的な構成は気に入りません。しかもエリサルートはラストがあんなんですし、その点でも救いがないというか。

 三つ目は章立ての構成面の画一感と、その繋ぎの不自然さですね。
 この作品は1章が導入、2〜6章がそれぞれヒロイン一人ずつにスポットを当てつつの共通で、7〜9章が個別になっています。
 この個別の割り振りがほぼ全員一緒で、7章で恋愛感情を高めてお付き合い開始、8章でイチャラブエロス、9章でシリアス〜解決という流れなのですが、この尺だとまず単純にイチャラブ自体はそんなに多くなく、密度も高くないと言えます。
 その上で9章でいきなり唐突にシリアスが始まることが多く、その個々の是非は個別感想に譲るとしても、その前の7〜8章での伏線の引き方や、9章での危機の中にいるなりのイチャラブ要素というものの引き出しが乏しく、あまりに不自然な状況で無理矢理エッチに雪崩れ込んだりとか、最初から回数が決まってるから消化しました、感がありありと出ているのが目立ちました。

 このあたりは正直もっと柔軟性があっていいと思いますし、シリアスもやるならやるでもっときちんと説得性を有するようなつくりにして欲しかったなぁと。上で触れた外的要因の扱いにしてもそうですし、それを抜きにしても個々のルートでの展開があまりにも都合が良過ぎることが多かったし、その背景についての説明不足は目立っていましたので、そのあたりは良くないと思います。

 ともあれ、この辺を踏まえた上で個別感想に入っていこうと思います。

★シナリオ(個別・ネタバレ)

 一応それぞれのルートのネタバレも書かないと語れない部分が大きいので、白抜きで進めていきますね。

 個別評価としては、優理>>雪=耶々=一葉>エリサくらいですね。
 正直物語としてのダイナミズムに関しては一葉とエリサがトップを争う感じですけど、私の評価的にはそういう部分的な盛り上がりの為に全体の整合性を大きく犠牲にしているのは気に入らないし、その上でまだご都合主義全開でもハッピーエンドだった一葉はともかく、エリサルートって誰得?と思わざるを得ないのでこうなりました。
 正直頭一つ抜けて最上位評価の優理でも水準クラスよりちょいマシ程度、というイメージですけどね。

 今日は下から順番に行きますと、まずエリサは本当に色々勿体ないルート。
 このルートはエリサが来日した真の目的と、そこでエリサが護りたいものをつけ狙うZEROとの対決、という構図で、その点ある意味共通のイメージからは一番シームレスに繋がるシナリオでもあったりします。

 ただこのルート、本当に色々と強引さや無理やりさが付き纏う上に、ものすっごいビターエンドなんですよね。。。
 そもそもからして時計塔の秘密と、そこに隠された秘宝の存在をどうしてZEROは最初から知っているのか、それを目的として色々画策、行動できたのか?って疑問点は色濃くありますし、ああまで執拗に主人公に介入させようとする想い自体も、過去の関係性があるとはいえかなり無茶なこじつけに思えるんですよね。
 かつその動機が本当に切実で、それがなきゃ自分が死んでしまうという中で、そこまでなのにどうして他のルートでは全く鳴りを潜めて、それこそ人知れずに死んでいってしまうのか、という部分がなんとも虚しく、なんでこんな設定にしたのかと思いたくなります。

 結局のところ、他のルートで整合性を保てないなら、ここで辻褄は合わせて欲しかったし、こんな重いものにして欲しくはなかったですよね。
 共通のZEROはあくまで主人公に絡む愉快犯的な部分が強かった、けどエリサルートで二人が時計塔の秘密を探ることになって、それを窺っている内にその秘密の内実に気付いて、それが自身の目的と合致していると気づいてより介入を加速させた、くらいの後付け、内的要因での展開に組み立てられる部分だと思いますし、かつあんな悲惨な背景はいらないだろと。
 あくまで過去を懐かしむノスタルジックと、そこで得た人生観との乖離を妨げるため、というイデオロギー的な対立に留めておけば、まだこの世界観的な善による悪の内包、というファクターとも絡み合ってくるのに、どうしても無理矢理悲劇的な物語に仕立てたかった、としか思えない悪意的な展開と構成要因なんですよ。しかもそれが他ルートにも悪影響を及ぼしているから何重にも性質が悪いというべきか。

 そこに至る経緯にしても、七不思議を解決しなきゃ道は開かれない、なんてのも、どこでそれを判定してるのか全く不透明ですし、あの殺伐とした展開の中で、主人公のアーケンの用い方としても、一葉ルートと並んで突拍子もない能力の発現になっています。
 基本主人公のカードは特別製で、想いの力で何物にもなれる、というのはまぁこの手のゲームでお約束感はありますが、それを特に苦労もなく恣意的に発現出来てしまうというのは、一葉ルートもそうですけどどっちらけの要因になりますよね。しかも本当にその幅が広すぎてやりたい放題なのも拍車をかけています。
 ここでもミスれば死、なんて矯激的な条件を付加するための巻き戻し、という強烈な発現に至っていますし、謎解きそのものは結構面白かっただけに、その温度差が何とも勿体ないですよね、と。
 挙句あのタイミングでHシーン突っ込むのはあまりに無謀だったと言わざるを得ない。。。

 その辺コミコミで最終盤の対決も、盛り上がりというより悲壮感ばかりが先に立ちますし、ここまであれこれやっておきながら、いざ対峙すればしたらでのあまりにも茶番な展開で、約束された悲劇を踏み越えてなんとか目的に辿り着いたかと思えば、そこから更にエリサとの別れなんていういらん要素まで持ち込んでくるから度し難いというべきか。
 確かに元々は三学期一杯、というのは共通でも出ていましたけど、他のルートだと目的が達せられていないのかは知らないですが普通に新学期になってもいるじゃん、という話で(逆に遥くんだけはちゃんといないのがなんとも哀愁をそそりますが)、この辺こそ都合よくどうにでも出来るだろうと。

 そもそも自身が政争の具になることを良しとは思っていないはずですし、その火種になる時計を封印したとしても、それを見守る為にこちらに残る、的な選択を、上手く別口の理由をつけて紡ぐくらいは出来ると思うんですよねぇ。
 結局このルートに関しては徹頭徹尾敢えて切ない展開を企図しているとしか言えず、そこに構成面での必然性が感じられないから鼻白むし、誰がこんなビターエンドを望んだんだよ!って突っ込まざるを得なくなるのです。

 さて、エリサで長くなりすぎたので後はサクッとにしたいですが、一葉もフレームとしてはエリサと似たような問題を抱えています。
 アーケン利権を巡っての外部対立、というのは共通でも示唆されてはいましたが、それがこのルートでだけ勃発する理由づけが皆無の上に、そこに主人公の父親の問題を無理にこじつけているから構成が非常にちぐはぐというか、粗いというか。

 一葉を助けたい、という想いで風紀に移籍して、そこからの距離の縮め方やイチャラブ展開自体はかなりいい味わいだっただけに、余計にそのシリアスの唐突さと上げ底のスケール感が痛々しくはなるんですよね。
 元々本格的なバトルもの、という構成ではなく、特に主人公はそっちの資質は現状ほぼない、という中で、それこそ自分達に出来ることをコツコツ進めていったら、いつの間にか大きな危機の流れに巻き込まれていた、という段階的な構成であれば、まだ最終的にこういう直接ラスボスと対峙、というつくりでも納得はいきます。
 しかしこれは、危険とわかっている所に徒手空拳で特攻する無謀そのものであり、それを是認する周りもどうかって思いますし、それを一葉と結ばれてのかつての正義感・信念の再勃興の証・裏付けとして見せたいと意図したなら、尚更に軽率で浅はかな側面ばかり目立って逆効果にすら思えます。
 挙句その打破にアーケンの無限可能性を拡大解釈しまくったようなやり方で対処しちゃってるし、時間がない、という側面はあったにしても(それだって物語的都合だからどうにでもなるし)、あまりにも粗雑だったとは思います。

 まぁ光の剣召喚して快刀乱麻を断つ、とばかりに獅子奮迅の活躍をする一葉がカッコ可愛いのは確かですし、終盤の展開も実は糸を引いていたのは…………的なお約束構成で、このあたりは土台がしっかりしていれば盛り上がった事でしょうが、あまりにその存在が唐突過ぎる&伏線が雑すぎるのでなんともなぁ、というところ。
 まだしもみんなの力を糾合して大団円、という方向にこじつけてるだけマシですけど、やっぱりもうちょっと構成に工夫がいるだろうと。その偽アーケンの活用にしても、露見しないようにより隠微に、とか、或いは二人の行動がそれを加速させる要因を作るとか、最低限それだけでもイメージは違ってきたのに、とは思います。

 あとエリサほどではないけど、そのタイミングでえっちに雪崩れ込むの?ってのは相変わらず。せめて梢に、時間までは二人きりでごゆっくり〜、くらいの台詞を言わせておけって話で、あの飛び出し方でもし真っ只中に戻ってこられたらどうすんのよ、って話で(笑)。
 そもそも一葉に関しては、仮にも風紀のワンツーのくせにはじめてが風紀委員室、という時点でアレなんですけどね。。。ただこの舞台設定だと、腰を据えて事に及ぶだけの場所が少ないってのはあるんですよねぇ。
 これは優理の話ですけど、彼女のはじめても主人公の部屋に連れていってみたら相方がいなくて、なし崩し的に結ばれて、でしたが、これ正直めっちゃ冷や冷やするというか、してる途中で戻ってきたらどうすんのよ、と思って集中できなくなっちゃうんですよねぇ。
 これがせめて優理の部屋なら、優理のあられもない姿を見るのが朝陽って事になるからまだいいけど(むしろその時の反応を見てみたい&まかり間違って3Pに雪崩れ込んで欲しい。。。)、主人公にしたって最愛の彼女の裸を別の男に見られる危険性は考えろって言いたいわ。

 ともかく、全体的にHシーンの回数と挿入場面が画一的に割り振られている弊害か、安心して二人きりの世界でイチャエロ出来る、というイメージを持ちにくいシーンがやたら多かったのが勿体無いところですし、一葉はその筆頭格ではあったな、とは思うのです。
 そして梢ルートの分岐がない事に望陀の涙を流すしかない。。。良い妹キャラなのになぁ。

 耶々に関しては、物語としてのダイナミズムは薄めで、あくまでも耶々が抱えるかつての家族への複雑な想いの解消がメインになっています。
 その点で極端な外的要因は用いていないし、シリアスとしてもアクセントは弱めなので、7〜8章でイチャエロしつつ少しずつその内面の複雑さに触れていく、という流れも自然ではありましたが、ただ9章の構成は非常に雑でしたね。

 いくらなんでも主人公がようやく黙ってみているだけでなく、自分で腰を上げて解決を目指そう!と思い立ってフラフラしているところで、超ご都合的にその過去を知る相手と遭遇して、本人にも聞けないような話を聞き及んでしまう、というのは不誠実でもあり、適当に過ぎるとも思います。
 そしてその原因となる病気やら技術やらも裏付けのないブラックボックスですし、それと結果的に主人公のアーケンの拡大性や、耶々母過労設定とか必要だった?と思える乱雑ぶりで、心理の踏み込みも浅く色々な意味で稚拙だったなと感じます。
 上に書いた2ルートに比べれば減点要素は少なめですが、逆に加点要素も少ないですし、ここもやっぱりその雪崩れ込みHシーンでいいのかい?ってのもあったりで、最初にプレイしたルートですがこの時点で作品全体にあまり印象は持てなかったですね。

 雪ルートも似たような感じで、彼女が拘泥する悠久の場所にまつわるエピソードがメインであり、その拘泥に至った心理をほぐしていくのが主題になりますが、その割に心理的変遷の紡ぎ方が稚拙と言うべきか。
 ヒロインとしての可愛さは抜群なのですが、その裏側で色々我慢したり、得たものが愛しいほどに怖くなる、という特殊な心情をしっかり掘り下げきれていないので、いきなりフラッといなくなって、その世界観に主人公を巻き込もうとするメンヘラちゃん的な見え方が強く出ていて、このあたりは確実にもっと工夫・掘り下げが必要だった部分でしょう。幻のゲーム探しにあんな尺割いてる余裕があったらこっち補完せい、って感じ。。。
 まあ悠久の場所、という不可思議の塊要素を抜きにすれば、基本内在要因だけで話は完結していますし、筋道そのものは悪くないのですけど、やっぱり基本的にパンチが足りない話なのは間違いないと思います。

 最後に優理ルートですが、これとて他に比べればかなりマシ、というだけで、色々ファジーな部分は目立ちます。
 良い点としては、元々伏線として紡がれていた過去の生徒会の不祥事と、それに尾を引く問題を、本来の優理だときちんと仕事を回すだけで手いっぱいで解決に導く決意にすら至れないところ、主人公と結ばれその助けを得て、そこに踏み込む余裕と勇気を得た、という内的要因で完結している部分、かつそこにほぼ不思議要素が絡んでこない点です。
 結果的にそれを推進することで、臭いものに蓋をしていた状況から一時反発を呼ぶものの、その誠実さとひたむきさで事態に向き合っていく中で協力者も沢山現れ、理想の形での送り出しが出来るという、いかにも善人過ぎる優理らしい綺麗な結末に導けているのも読後感としては素晴らしいと感じますし、そこに踏み出すまでに、溜め込んだものを全て主人公に受け止めてもらう、という愛情の蓄積があるのも丁寧なつくりだったなと。

 ただ一方で、結局その過去の不祥事絡みに関する明確な説明や、結果としての現在が必然だったと思わせるだけの説得力はほとんどないんですよね。
 そもそも学園の生徒会で派閥ってなんだよ、って思いますしねぇ。なんとなくその派閥って語感で、古く融通の利かない因習、というイメージを確立させて、それで有耶無耶に押し切っている感じがしてなんとも、ですし、それを解体するためにああいう自爆作戦が本当に必要だったのか、というのも怪しいところで。

 勿論ただ告発するだけじゃそれを守る勢力は砕けないから、一度その派閥に取り込まれて内部から瓦解させる、という戦略性はわからないでもないですが、そうならそうでそこをしっかり浮気さんくらいは把握していて示唆して欲しいですし、その結果として色々と負い目を追ったり、いらない苦労をしょい込むことになった人が多数いるのもまた事実なんですよね。
 大体からして、優理は元々の生徒会の一員ではなかったはずなのに、どうして後継者に選ばれたのか、それ以前に元会長の朝陽の姉とどういう関係性だったのか、その辺が全く不透明なのも良くない点で、朝陽の傾倒も含めて、優理自身にその大任が務められる、と邑陽に信じさせる繋がりをきちんと組み込んでおくべきだったと思います。

 言ってみれば今の生徒会って貧乏籤みたいなものですし(笑)、その筆頭が優理と朝陽なわけで、朝陽はまだ身内の事ですからともかく、優理はその不条理を押し付けた相手に対してもっと複雑な思いがあってもよさそうなものなのに、むしろ尊敬してます、その理念を継ぎたいです、と全力いい子ちゃん過ぎるわけでねぇ。
 共通での事件に関しても、魔が差した、出来心、って話で済ませていいの?っとレベルのおいたをあっさり許しちゃうところはあり、あまりに女神過ぎて逆にどうなの?とすら思ってしまうわけで、そうある背景も含めての掘り下げ、時系列を含めた明確な裏付けがあれば、このシナリオはもっともっと心に響く内容に出来たろうに、と残念に思います。


★シナリオ総括

 以上、とにかく全体的に色々とっ散らかってて、総合してなにが見せたいのかがわかりにくく、かつ物語としての味わいもコクが足りないというか、奥行きが薄いというかで、最後までこの世界観に没入出来る感じがなかったですね。
 アーケンにしてもこのメーカーの風土としての特殊性だけにより踏み込みにくいところはあり、でも多分以前の作品やっててもそこまでこの世界観に馴染めてる気はしないんですけどね。アリアも体験版だけやったけどかなり粗雑だったのは確かですし。

 ともあれ、局所的に見れば評価できる部分もあるけれど、総合的に色々と乱雑で面白味も濃くなく、後味が宜しくないルートもあるのでなんともなぁ、という感じです。
 ここまで取っ掛かりがないと逆に点数にしづらいですが、良い点を最大限評価してもこのくらいが限界かな、というところですね。


キャラ(19/20)

★全体評価

 サブキャラ沢山でにぎわっているのはいいですが、どうしても一人ずつの掘り下げは浅く、また善悪の振れ幅も大きい割にそれを一括りにしてしまうようなざっばさ、気持ち悪さもあったりで、全体的に造形としてまとまりを欠くし、乗り切れない部分もあっのたで少し減点、という感じで。

★NO,1!イチオシ!

 最初に出てくるのが朝陽、って時点で色々どうかなって話です。。。
 まあでもこの子が一番癖はなくまっすぐ淳良で、かつバランスも取れていたと思うんですよね。あたりは強いですけど敬慕する相手には礼節もあるし、率直に自分の想いとも向き合えるいい子なので、是非攻略キャラにしてあげてください。。。

★NO,2〜

 優理は流石の安定感で可愛かったですね。ヒロインモードでの女の子らしさは抜群でしたし、実に王道ヒロインだったと思います。
 ただこの子の無限大の優しさの根源がわからぬままに進むので、その点シナリオの中でちょっと気味悪く見えたりしてしまったりもするし、バランスという意味ではやや善性全振りしすぎてリアリティがないなぁとは感じました。

 次いで梢になっちゃうかなぁ。この子もいい実妹ヒロインでしたし、それでいて一線を超える想いを抱くに足る経緯を持っているので惜しいなぁと。
 それ以外のヒロインもそれぞれに魅力はありますけど、めんどくささやシナリオ面での脚の引っ張りがあったりで、どうにもガツンとは来なかったというのが率直な所。


CG(18/20)

★全体評価

 美麗な絵柄ではありますし、当然可愛くて満足なのですが、やっぱり本質的にボイン特化ではあるし、シーンに入っての品性を崩すような構図を狙ってやってくるところで、私の好みとは噛み合い切らんなぁ、ってのはありますかね。量的にもちょっと足りないですし。

★立ち絵

 ポーズはヒロイン2種類にサブ1種類、腕差分もあるけれど躍動感はそこまで、ですかね。それぞれの個性に見合ったつくりではあったと思います。
 お気に入りは優理全部、雪正面、一葉正面、梢、朝陽、乃々花あたりです。

 服飾はヒロインで3〜4種類、サブで1〜2種類ですね。決して多くはないですが必要なものは揃っています、が、贅沢を言えば寮生活なんだしパジャマは欲しかったかな。
 お気に入りは優理制服、水着、一葉水着、耶々制服、私服、雪制服、水着、着物、朝陽制服、梢私服あたりですね。

 表情差分もそこまで多くはなく、遊びも含めて面白さはありますし可愛かったですけど特別感はないかなと。
 お気に入りは優理は大体全部、一葉笑顔、怒り、照れ目逸らし、雪笑顔、ドヤ顔、ジト目、耶々照れ焦り、苦笑、朝陽笑顔、ジト目、怒り、梢笑顔、てへぺろあたりですね。

★1枚絵

 通常82枚にSD10枚で計92枚、値段を鑑みるともう一押し欲しいかな、という感じで、特にみんなでワイワイってイベントは結構あるのだから集合絵は欲しかったです。
 質は悪くないですが、上に書いたように好みと合致しない部分もあり、特に、と言えるほどのものはなかったですね。


BGM(19/20)

★全体評価

 質量ともに素晴らしく、この作品で唯一手放しで賞賛できるポイント。
 非常に神秘的かつ抒情的な曲が多くて、ちょっと不思議な世界観を見事に下支えしているなと思います。

★ボーカル曲

 全部で2曲。
 OPの『春音*ベール』は爽快さと流麗さがしっかり表に出ていて、高音域のボーカルやコーラスの使い方が上手く、それでも耳に刺々しくなく響いてくるメロディラインの美しさと合わせて中々いい曲だと思います。
 EDの『ALICE GRADUATION』もかなりの名曲。
 こちらはしっとりした出だしでEDらしく、と思いきや、Aメロ後半から奔放な展開を織り交ぜ、サビでも一気に高音域まで突き抜ける鮮やかさを見せながら、全体の統一感は取れているという見事さ。シナリオ構成に爪の垢を煎じて飲ませたい(笑)。

★BGM

 全部で46曲とかなり豪華。正直リソースつぎ込むべきところを間違えてる気すらする。。。
 とにかくその分だけ状況に合わせて細やかに曲を設定できているし、ひとつひとつに奥行きがあり神秘性と透明感、荘厳さも付与されていて非常に耳に残る出来でしたね。シナリオがイマイチでも、曲の力で盛り上げていると感じた場面も多々ありました(笑)。

 特にお気に入りは2曲。
 『悠久のアリスグラム』は問答無用で神曲ですね。今年のBGMでもトップクラスに入ってくるのではないかと。
 とにかくピアノの主旋律が神秘的で壮麗で、それでいて哀切や郷愁も応分に織り交ぜ、それを全て公平に内容して想いに転化してくる感じで、汎用性も高く非常に耳に残りやすい、この作品を代表する曲だと思います。
 『未来完了形』も非常に素晴らしい曲です。
 こちらは受け入れがたい現実と向き合い、それを乗り越えていく強さと覚悟の尊さを刻み込んだ感じで、中盤の盛り上がりから終盤静謐さを取り戻すところまでの構成が絶妙であり、こりーれも大好きな一曲ですね。

 その他お気に入りは割愛。最近CGもだけど、特に、以外をわざわざ書く必要ってないかも、と思い始めてきたので。。。


システム(8/10)

★演出

 そこそこ頑張ってはいますけど全体的にもっさりしているし、カットインに頼り過ぎている部分もあったりで、あまりパッとはしないですかね。
 情景演出もそこまで後押しできるほどの迫力はなかったですし、ムービーなども普通の出来なので、総じて可もなく不可もなく、ってところです。

★システム

 こちらは比較的豪華というか、色々面白い機能も搭載しているなと。
 勿論必要最低限はしっかり完備した上で、お気に入りボイスとかプレイ時計とかは中々実用性があると言えばあるし(使わなかったけど。。。)、やっぱりちょっと動作が重い気はするけれど全体的に悪くはないです。
 しかしゲーム内の時間表記の管理が甘すぎるのは、シナリオの責任もあるでしょうけどもうちょいなんとかしようよ、とは思いますけどね。


総合(78/100)

 総プレイ時間22時間くらい。共通が7時間、個別が3時間ずつという感じですね。
 全体尺としては結構しっかりあるのですけど、いかんせん個別がパラレルなくせ、共通にその伏線を無造作に全部突っ込む雑仕様ですし、繋ぎに無駄な部分も多いのでなんともですね。
 個別の構成もスムーズとは言い難く、時間の割に中身はない感じで、正直プレイ中に入り込めずしょっちゅうウトウトしていた私がいる。。。つまらない、とまでは断言しませんが、これだけ時間をかけてこのシナリオはなぁ、とは思います。

 まぁ絵とCVは期待通りの威力でしたが、といって期待以上ではなく、むしろキャラの魅力をシナリオが足を引っ張って減衰させているところもなくはないので、その辺は難しいですね。
 まぁ基本的にはあまりお勧めは出来ない一本、という感じかなと。
posted by クローバー at 04:24| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月11日

蒼の彼方のフォーリズム EXTRA1

 ヒロイン単体売りFDとはまた暴利な…………とは思いつつ、あおかな本編は超好きでしたし、真白も可愛いとは思っていたので買っておこうかな、と。

シナリオ(17/30)

 二兎を追って欲しかった。

★概要

 この作品は、2014年11月に発売された蒼の彼方のフォーリズム(もう発売からそんなに経つんですね。記憶も薄らいでいるわけだ。。。)より、人気NO,1ヒロインだったらしい真白にスポットを当てた後日談FDです。
 コンテンツとしても清々しいまでに余分はなく、純粋に真白の恋愛模様にフォーカスを当てた物語オンリーですので、コスパがいいとは口が裂けても言えませんし、この世界観や真白本人に対する熱烈な愛がないとなぁ、という感じはありますね。

★テキスト

 基本的にキャラ同士の横の繋がりがかなりしっかりしている作品ですので、ここでもその伝統は踏襲され、コミカルな掛け合いが非常に楽しい読み口に仕上がっていると思います。
 変な癖も感じないですし、コンセプト面もあるでしょうがひとつひとつのイベントに対する心情の機微や肉付け自体は丁寧ですので、特に文章面で引っ掛かったりする感じはなかったですかね。

★ルート構成

 清々しいまでの一本道です。一応選択肢自体はひとつだけありますが、そのどちらを選ぼうと進行に影響のない飾りです。。。
 まぁ今更好感度を稼ぐ必要もないわけですし、純愛路線王道まっしぐらの作品で変に小細工されるよりは、と思いますけどね。

★シナリオ

 基本的にイチャラブオンリーです。
 今回は別にネタバレしたところでさほど問題のある内容でもないのであまり気にせず触れていきますが、本編が基本的にはFCとの向き合い方を主題にしたスポ根の色合いが強く、その分イチャラブやエロスは割を食っていた感があるので、その補完、という意味では申し分なくしっかりイチャイチャを堪能できます。

 本編終了時点では、どちらかと言うと恋愛に全力没入出来る状況ではなかったわけで、ここからが恋愛模様としては本番、好き、という気持ちだけでは持続させられない関係性を育む上でのこそばゆい気遣いや機微、焦慮などを、予想以上に丁寧に綴ってきてくれたな、と感じています。
 まるっとまとめてしまえば、改めてまともなデートらしいデートをきちんとしよう!と二人で決めて、相手に喜んでもらえるかドキドキ、失敗しないかそわそわしつつ、周りの力を借りながらその準備に勤しむ過程を楽しむ作品ですね。

 基本的に周りのヒロインズはみんな、すんなり主人公と真白の関係性を祝福して応援してくれている中で、純粋な女子力という点ではやや物足りない真白が、これではいけない!と一念発起してその方面のスキルを学んでいく流れが、コメディチックな空気を強く醸しながら断続的に投入されており、女の子同士のイチャイチャが好きな私としてはかなりテンションの上がる展開でしたね。
 FDというとどうにも主人公とヒロインが1対1で完結してしまうようなものも多い中で、きちんと横の繋がり、周りに支えられてこその自分達、というのを自覚できるシチュをプレイ感覚の中で自然に想起できるのは物語性としてもプラスだと思います。
 主人公のありようにしても、当然他のヒロインとの絡みや、真白の両親との関係性などから、同じベクトルの要素を抽出出来ていますし、その上で隙あらば真白とイチャラブしてくれるので、非常にバランスも良く、読み手の側もデートまでの期間を楽しみにドキドキしながら萌え転がれる素敵さがありました。

 真白自身本編ではみさき先輩一筋!ってところからの傾斜で、このギャップ面での魅力はあれ、ここまで甘デレ状態を見せてくれていた記憶はあまりないので、本当に無邪気に甘え寄り添ってくる姿は可愛かったです。
 物語自体が健やかな雰囲気を存分に発揮しているので、正直エロゲとしての食い合わせ自体は微妙な作品だとは思うのですが、それでも本編で物足りなかった分くらいの最低限のエロスはここで投入してくれてもいますし、真白の魅力、愛らしさに溺れる、という視座では充分に満足できる内容でしたね。

 個人的には主人公との関係性の甘さも好きでしたけど、莉佳とのスピーダー同盟からの親友モードが楽しかったなぁ。
 やっぱりこの物語の中で一番好きなヒロインは莉佳なので、その点でも出番が多かったのは嬉しかったですし、料理の勉強などを通じてきゃいきゃい仲良くしているシーンは本当に心がほっこりします。チョコ舐めCGとか、疑似キスシーンCGとかほんっとうに可愛くて悶絶しましたしね(笑)。
 気質的にも周りが天然だったり不真面目だったり暴走キャラだったり、って中で唯一に近い常識人的な感性と立ち位置で和ませてくれますし、けどやっぱり年相応の女の子らしい好奇心もあるから、周りの暴走に眉を顰めながら流されちゃうあたりもまた可愛いんですよ!本当にこの子の困り眉の立ち絵も可愛いんですよ!真白メインの作品だけど終わってみれば莉佳にばっかり萌えていた自分がいるあたり、ある意味では広いファン層を満足させる仕掛けになっている、と言えなくもない。。。

 ただ当然不満もないわけではなくて、その際たるものとしては尺に尽きるかなぁ、と思います。
 無粋な話ではありますけど、一応定価4980円と、ヒロイン一人だけにフォーカスした物語としては破格のお値段設定になっているわけで、確かに絵や音楽面ではそれにギリギリ見合うだけの素材投入量はあるとは感じます。

 でも肝心要のシナリオに関しては、普通に読み進めて4時間程度のボリュームで、その点はやっぱりお値段相応とは思えないんですよね。
 その上で敢えて言うなら、これがヒロイン4人分のFDなら、本編で決定的に足りなかったイチャラブ徹底補完、という形でも満足度は充分あったと思うのですが、わざわざ一人立てにしているなら、この作品の根幹であるFCに関わるイベント、エピソードなどが一切合切組み込まれていない、というのは片手落ちに感じます。

 やっぱりこの作品の魅力って、ただ女の子が可愛い、というだけでなく、努力して爽やかな汗をかく、ひたむきに頑張る女の子の姿が可愛い、という面も強く、それが両輪として上手く作用しているからこその評価とは感じているので、一人に集中するならそこも物語の中で補完して欲しかった、と思うのは決して贅沢な話ではないと思います。
 仮にこれがロープライスなら文句は言いませんけど、このお値段を取るなら、と思いますし、ヒロインに相応の新たなFCイベントを組み込む難しさは承知の上で、これだけ制作に時間かけてるんだしなんとかならなかったものかなぁ?と残念に感じる向きはありますね。

 その辺が多少なり補完されていれば評価としてももう少し上向いたのですが、これだと完全に、非常に丁寧ではあるけど方向性に個性のない、当たり障りないFDとしか言えないので、点数としてもこのくらいが妥当、となってしまいますね。
 というか、FCやらないと沙希が出てこないんだよっ!

 総合的には、この作品のどこに魅力を強く感じていたか?で評価が変わってくる内容だと思います。
 FCの対決感はそこそこでいいから、もっと可愛い女の子とイチャイチャさせろ!と強く思っているならこれでも十分満足できるでしょうし、FCという競技に面白さを見出していた人なら肩透かし感はある、というイメージで、どちらにせよ真白に対する愛はないとね、って感じです。
 …………いやまぁ、多少なりでも愛の足りない人がわざわざ買うものでもない、と言えばそれまでなんですけどね。。。


キャラ(20/20)

★全体評価など

 基本的に本編から新キャラがいるわけでもないので、この物語の流れの中での関係性を改めて確かめるとともに、恋愛を進める過程で友情も強く結ばれていく、というバランス感がとても良かったとは思います。

 当然真白がメインのシナリオなので、彼女の成長や女性としての成熟、輝きをしっかり見せられているのは間違いなく、その変化に呼応するように周りのヒロインも少しずつ大人になっていく感じはありますよね。
 特に莉佳やみさき、有梨華あたりは顕著に感じましたし、その点ある意味で最初から最後まで天然的に完成されている明日香はやっぱり明日香だなぁ、と、ルートが変わっても根底的な個性にブレがないのはこの作品の良さのひとつでもありますね。

 ともかく、本編では希少価値だった真白の真っ向デレ、超絶甘えモードが存分に楽しめますし、メイドご奉仕モードなんかも楽しめますし、女の子らしいやきもき感もたんまり盛り込まれていてニヤニヤしまくれること請け合いですので、その辺のキャラ性の引き立て方に関しては全く文句ないですねー。


CG(19/20)

★全体評価など 

 基本的に立ち絵素材は、いくらか真白の新コスチューム&髪型があるくらいで、白ワンピに浴衣はそりゃー可愛かったですけど、それだけで加点要素に出来るほどのプラスアルファでもないかな、という感じ。
 1枚絵は通常が50枚にSDが22枚の計72枚と、こちらは値段に充分見合うボリュームです。正確には本編からの流用CGもいくつかあると思うけど、もう昔過ぎてどこまでがそうかは判別つかないですし、それを除いたとしてもSD比率が高いというところはあれ、質量ともに文句は出ないですね。
 シナリオが短いのもあり、ポンポン1枚絵やSD絵が出てきたり、一部一気にまとめて出てきたりと、贅沢な使い方をしている印象ですし、この点ではとても楽しかったです。

 特にお気に入りは、莉佳のチョコ舐め、膝座り、明日香とクレープ、水着、夕陽を背にあたりですかね。
 それ以外も非常に安定して可愛いですし、この絵の威力だけでも買う価値はある、と言える素敵な完成度だったと思います。


BGM(16/20)

★全体評価など

 本編同様にBGM鑑賞がついていないのは個人的にはえー、って感じはありますね。
 サントラ情報からしますと、新規追加はボーカル2曲にBGM9曲らしいですが、BGMの方は流石にどれが新しいのか今更には判別できませんし、ボーカル曲もいちいち聴きこむのにセーブロード駆使しないとなので大変。といって流石にサントラ買うほどのものでもないですし。

 とりあえずOPは非常にこの世界観にマッチした爽やかな空気を醸した素敵な曲ですが、本編と違ってイチャラブに注力しているせいか、疾走感はあまりなくその分甘やかさ強めになっていると感じます。
 その辺の善し悪しは人それぞれでしょうが、個人的には本編のOPふたつともに抜群に好きだったのに比べると、ややインパクトに欠けるかな、とは思いました。

 むしろどちらかと言えばEDの方が、歌詞やメロディラインなど含めて好きでしたね。
 これは一種のキャラソン扱いなイメージですけど、これまでの主人公と真白の来し方を振り返って、それをしみじみ噛み締めるような色合いが、しっかりヒロインボーカルで打ち出せているので、突出して素晴らしいとかそういう事はないですけど、色々感じ入るものがある曲に仕上がっていたと思います。


システム(9/10)

★演出など

 演出面は非常にコミカルで溌剌とした雰囲気をしっかり打ち出せていますし、素材投入量の豊富さとの組み合わせで見た目にも飽きさせない楽しさを提供できていたと思います。
 しかしアレですよね、本編でも日常風景と、いざFC対決に入っての眼光の鋭さのギャップに慄いたところはあったわけで、これだけ日常特化に作ると、ごくたまーにそのバトルの雰囲気が滲み出てくるとぞわっとするというか、ある意味このメリハリも魅力っちゃあそうなのかもですけど。

 システム面は本編準拠って感じで、ジャンプ系統がないのが物足りないとはいえまぁ短いですからね。基本的には不備なく最低限は、というところです。


総合(81/100)

 総プレイ時間4時間。短いのは短いし、暴利と言えば暴利です。。。
 ただ内容自体は、偏りこそあれど非常に丁寧で微笑ましく、安心して萌え転がれる密度がありますし、真白というヒロインに多少なり思い入れがあるならば充分に楽しめるでしょう。でもFC関連のエピソードは皆無だからそこは留意してね、というところです。

 しかしこのシリーズ、わざわざEXTRA1、と銘打ったからには2以降も作る気はあるんでしょうかね?
 個人的には莉佳だけはガチで買いますが、明日香でちょっと迷う、みさきはヒロインとしてはそんなに好きではないので悩む、けどそこまで全部買ってたらこれだけ買わないのもなぁ…………とか言いつつ買ってしまっていそう。。。
 ただこのリリースペースで進めていったら、次の本編たるツヴァイの発売が一体いつになるのやら?という懸念もありありですし、上でもチラッと触れたけどFCやってくれないと沙希の出番がなさそうですからねぇ。あれは素敵な小鳥居さんでしたので、はよ攻略させろー!と声を大にして訴えねばならないのです(笑)。
posted by クローバー at 04:17| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月06日

ピュアソングガーデン!

 ココロファンクションの系譜を継ぐ近未来型ADVというところで、ココファン自体のシナリオはそんなに評価してなかったのでどうかな?という向きはありつつも、ヒロインのキャラ演出とシナリオの雰囲気、音楽が中々良かったし、体験版での明日歌がとてもかわゆかったので購入。

シナリオ(21/30)

 可能性の到達点。

★あらすじ

 主人公は著名な音楽家の両親を持ち、自身も英才教育を施されてきましたが、両親の放任主義や才能のなさなどが積み重なって、今は両親の背中を追う、という道からドロップアウトしていて。
 それでも原点的な思想として、音楽で周りの人間を笑顔にしたい、という志望は抱き続けており、今の学園でも、同居人の女の子の玖音の勧めもあり、M3部というゆるーい形で音楽に携わっている部活に所属し、後輩の明日歌をはじめ、気の合う仲間たちと平凡ながら温かい日々を過ごしていました。

 一方で、幼い頃から親代わりのように面倒を見てもらっていて、今では有名なエンジニアとして名を馳せている律の内々の実験にも協力しており、その画期的な発明である未来予測システムや、その派生であるハーモニクスシステムなどを用いて、未来の音楽の新しい可能性を切り拓くことに心躍らせつつ、けれど才能のない自分の人生に、そんな劇的なドラマは起こりえないと諦観を抱いてもいて。
 それでも一縷の可能性を求めて、近々開催されるVRを主題とした祭典・ピュアソングガーデンに積極的に参加する事で刺激を受けようと考え、責任者の律に頼み込んで、部のメンバー共々現場のスタッフにしてもらいます。

 その伝手もあり、本番一週間前に、今回の祭典の目玉である、触れるVRアイドルの生誕シーンに立ち会わせてもらえることになって。
 VRの舞台の中央で、白一色の世界に置かれた卵の中から、実態を持ったVRアイドル・アイが華やかに色づいて登場する――――そんな感動的なシーンは、しかし意外な方向に転がっていきます。
 目を開いたその少女はVRと呼ぶにはあまりに挙措が自然で、反応も予定外のものばかりで、困惑する周囲を尻目に、その少女はいきなり宣言します。
 曰く、自分は星野いろは、2077年の未来から来ました――――と。

 現場の混乱を避けて、主人公の家まで避難してきた後、改めていろはと、そのナビゲーション・フェアリーを自認するVR存在のすずと話をして、未来技術のタイムシフトでこの時代に精神だけ移行してきたいろはが、この時代での素体としてアイの中に入ってしまった、という事が明らかになり。
 彼女の目的自体はただの観光で、一週間後には未来に戻る、という事でしたが、折り悪くその日はピュアソングガーデン本番の初日。
 その目玉の一つであるアイの出番をどうするか、色々と話し合った結果、アイと瓜二つのいろはを即席アイドルに仕立て上げ、M3部の総力を持ってそれにふさわしい楽曲を作成するという事になります。

 それまで漫然としていた日々が一気に色づいたように、音楽づくり、いろはの観光案内、同居生活の中での毎日が修学旅行のような高揚感に包まれ、いろはとも一気にみんなが仲良くなり、濃密な時間を過ごしていきますが、タイムリミットはすぐそこに迫っていて。
 別れを惜しみつつ、最後には素敵な思い出を、と全力で想いを音楽に籠めて、いざ迎えた本番は、それは感動的な、VR新時代の可能性を明確に観客に意識させるものとなり、けれどその終盤、予期せぬアクシデントが発生します。
 突如それまで順調に稼働していたVRが制御不能に陥り、大混乱が発生する中、いろはを帰還させるためのタイムシフトすらも作動せず、彼女はまだこの2027年に取り残される事になってしまいます。

 後にVRハザード、と呼称される、VR新時代を迎えるための生みの苦しみに、日常の生活まで浸食されつつ、主人公達はいろはの時間旅行に期せずもたらされた延長戦を楽しみながら、そこまでの過程で特に心を近づけた相手と共に、それぞれのスタンスで復興の手助けをすることになります。

 果たしてVRハザードの本質とは何なのか?
 いろはは無事に未来へと戻ることが出来るのか?
 その未来は間違いなく、VRが阻害なく発展した、幸せなものとなっているのか?

 これは、人と人のみならず、VR存在にも固有の心の在り処を認め、共に手を取り歩んでいく為に、とりわけ音楽というツールを用いて繋がりを育んでいく、夢と希望がたくさん詰まった物語です。

★テキスト

 全体的に尖った部分や癖は少なく、その分意識に残るところもない、プレーンで心地よい空気感を形成しているテキスト、読み口だと思います。
 基本可愛いは正義!の玖音を筆頭に、心の清らかさや善良さが滲み出ているヒロインズなので、せいぜい毒舌担当のすずが目立つ程度で、会話の展開も比較的画一的で予定調和な印象はありますが、その外縁の部分である程度不穏な印象とか、底知れないイメージとかも少しずつ塗して、全体像が結果的に引き立つように化粧している、という感じもしますね。

 まあ構成面での作り込みの甘さがどうしてもある分、テキストとしてもそこをフォローし切れなかったり、曖昧に糊塗していたり、殊更に感動的なシーンに仕立て上げて力技で押し切ろうとか、そういう色合いも結構散見するのは確かですが、鼻につくほどの読み口ではないですし、こういう善意を根底に置く有り様自体は当然好きなので、基本面白おかしく、時に萌え転がりつつ楽しめました。

★ルート構成

 選択肢自体はかなり簡素に紡がれていて、共通終盤でどのヒロインと交流を深めるか――――例の未来予測システムの導きに従って能動的に行動する事でルートが確定する仕様です。
 なので正直、主人公側の意識づけとしては必要十分かもしれないけれど、その1イベントの差異だけであれだけヒロインの意識が傾斜するのは流石に軽すぎないかなぁ?というきらいはあり、でも元々ある程度の好感度は蓄積されているヒロインが多く、メインのいろはにしても自身の特異な状況下で、ころりと傾斜するに足るだけのものは用意されてはいると思うので、もうちょい工夫が欲しい、とは思いますが、お嬢ないみたいに流石にそれだけじゃ納得できない、とまではならないですかね。
 
 まぁここで書く話でもないですが、そもそも出会いが劇的だった&それからの日々が濃密だったと言っても、たった一週間であそこまで互いに思い入れを深めるというのが自然な成り行きか、っていうとちょっと強引さはあると思うので、その程度問題を引きずって考えると、恋愛的なキックオフに関しても軽すぎる、という感覚に至るかもしれないです。

 そして、最初に選べるのはすず以外の4人で、すずはいろはルートの途中に分岐があるのですが、いろはを一回クリアするまでは選べない仕様になっています。
 その鈴をクリアすると、更にラストのいろは追加エピソードが選択できるようになっておりねこのあたりが当然ながら物語の根幹に密接してくるので、基本的にはいろは&すずはラストに回した方がいいかな、と思います。
 律も立場的に、この根源的な問題に対してある程度触れていく事になりますし、まずは玖音と明日歌という、タイムシフト云々にほぼほぼ関わってこないヒロインで楽しんで、その後大枠としての問題に触れていくストーリーに入っていくのが無難、ではないでしょうか。
 
★シナリオ(大枠)

 基本的な構図としては、VR技術の発達によって現出する可能性のある未来像を一定のベクトルの中で定義し、そしてそれは今までの価値観や倫理観をも変容していくものだ、と示唆した上で、その時代の過渡期の中で多様的な繋がりの密度や価値を、象徴的にいろは、というヒロインの幸福度に帰結させた物語、と見ていいのではないでしょうか。

 正直なところ、タイムシフトにまつわる技術的な担保や、構造面からの説得性はかなり薄く、ニューリンとも被るところがあるのですけど、特にこの可能性が動き出した起源論、的な部分を考えていくと色々矛盾や弥縫に突き当たる、というのはスッキリしないところはあります。なのでそのあたりは突き詰めて考察しません。
 ただ少なくともニューリンより柔軟性がある、と思えるのは、すずの存在によって時間軸をも内包した並行世界の存在を認めている事、そのいわばクラウド的な繋がりによって、全ての世界で均一に、というわけにはいかずとも、VR技術の発展がもたらす可能性の極北的な関係性を実現できる余地をきちんと見出してきているところです。

 まぁそれは端的に言えば、タイムトラベルの当事者であるいろはとの恋愛が、こういう設定にありがちのお涙頂戴悲恋だったり、或いはどちらかが自分の時代を捨てて、的な後味の悪さを残すものではなく、きちんと読み手にハッピーエンド、と感じさせる結末に導いている、という事で、それがいろはの幸福度に帰結している、というポイントの最たる部分です。
 おそらく構造的に、玖音や明日歌の物語では本質的なVRハザードの解決には至り切ってはいなくて、いろはの帰還によって自然消滅的に、ってのが顕著ですし、この時代で解決の鍵を見出せる唯一の可能性を持った律に対して、主人公達がどういうアプローチをするかによってよりハザードの本質を掘り下げ、結果的に危機を強調する事にもなる、というのは構図としてはわかりやすいものです。
 確認できる限りではおそらく、その分岐点はすずが未来予測システムに手を加えて「すずさま」を出現させるか否か、ということになるのでしょう。

 ただその場合、どうしても危機が顕在化する方が物語としてのシリアス度は高くなるし、余計な横槍とか、それを解決するための強引で感傷的な作戦などが横行する事にもなるので、純粋にシナリオの出来、として見た時に、そちらの方が盛り上がるし面白い、と一概に言えないのがこの作品の難しい所でもあると思います。
 色々アイデアとして面白いものはちりばめられていますし、演出面での後押しも強くていい味は出していますが、やっぱりちょっと、いろはやすずあたりはこじつけや無理やり感、性急さが表層化してしまっているきらいもあって、その辺をどう判断するか、ですね。

 また、全てのルートで共通時点でVRハザードが発生し、その対処にてんやわんやになる、というのは一致する中で、その解決に向けての当事者の思惑ってのはある程度外挿的な要因でもあって、そのあたりに主人公とヒロインが恋愛して、その繋がりを基盤にハザードに対する自分達なりのアクションを、という内因的な変化との噛み合わせの齟齬、全体的な整合性で甘さはあるでしょう。
 無論明らかな矛盾が出るほど、ではないですが、キャラの個性や思想性などの部分で使い方がかなり違う部分も散見しますし、明日歌パパなんかその象徴的な存在で、シナリオ展開を紡ぐ上で都合のいい駒になってしまっている気はしました。

 あと主人公達のVRに対する一貫した賛成、の姿勢に対する意義付けが、個々のルートでちらほら垣間見えるところもあるものの、体系的にこう、と提示し切れていない感もあり、その辺は勿体ないところです。
 例えば主人公なら、VRの存在が、才能がないと思っている自分でも理想の音楽との関わりを紡げるかもしれない、という希望に依拠した部分からの派生とか、それぞれになにか背負っているものはあっての傾倒なので、そこをもう少し説得的に見せる仕組み、イベントがあれば良かったなとは思います。

 とまぁ、細かい部分で気になる余地はあるものの、総合的には物語に牽引力はあり、一定以上にイチャラブ密度もあるので、楽しんでプレイできると思います。
 でもその理想論の帰結がこの筋立てで心を打ち、共感を呼び起こすほどか?と言われると、その辺は色々雑なところも多く、シナリオ、としてはもう少し完成度を上げられる可能性はあったろう、とは思います。
 しかしその場合はより真面目に世界観そのものの定義から入らないと、という難しさもあるので、ふわっとした雰囲気を大掴みにして楽しめるバランスを考えると、これはこれで、という見方も出来るでしょう。

★シナリオ(個別・ネタバレ)

 シナリオ評価としては、いろは>明日歌>玖音=律>すずくらいのイメージですね。
 当然根幹となるのはいろはで、それを下支えするのが律とすず、という位置づけですが、後者二人はその要素に足を引っ張られてか、色々都合のいい流れやバランスを余儀なくされており、結果的にクライシスの根幹に関わらない明日歌や玖音の方がストレートなイチャラブシナリオとして面白い、という結果になっていたりするのが皮肉です。
 かついろは自体も、最初から心置きなく恋愛に耽溺する、という立ち位置にはいないですし、色々心理的な抑制要素を緩和するように上手く補っている、とは思いますが、どうしたって恋愛面がメイン、とまでは比重的にならないですし、シナリオの方もかなり都合のいい構成になってしまうので、メインシナリオに相応しいボリュームと内容とは思うけど図抜けて、とまでは言えないという評価になりますね。

 今回は評価とは別にプレイした順に触れていきますが、まず明日歌は純粋にイチャラブ、ラブコメ要素としての面白さが高かったと思います。
 この子の場合は共通の選択肢のあのイベントだけでそこまで傾斜するのは軽々しい、という見方もありますが、一応それがこのルート当初での父親への反発、傍にいたいという心情の契機になっていて、そこから徐々に恋愛観を刺激する要素を組み込んでいく、という丁寧なつくりでもあるので、そこまで違和感はなかったですね。

 ハザード関連ではほぼこちらからは干渉せずに、あくまでも自分達に出来ることを、というのを二人の関係の進展とともに追い掛けているだけなので、ダイナミズムはほとんどないですが、少なくとも色々夢、というものに対して色々と鬱屈したものを抱えていた二人が、その復興の過程と、いろはの応援もあって、そこにしっかり向き合っていく、という過程を無理なく綺麗に紡げているので、読み物として上質だったなと思います。
 まあこの辺は単純に、私が明日歌大好き過ぎる故の色眼鏡、という可能性も否めませんが、少なくともこの個別プレイ前から好きで好きでたまらない、ってほどではなく、これをクリアした後に一気に傾斜したので、それだけ明日歌というヒロインの魅力をしっかり引き出せていた、という証左にはなるだろうと思います。

 玖音シナリオはそれと比較すると、どうしても元々の関係性の建前というか、玖音の拘りがめんどくさい、ってのはありますね。いわゆる幼馴染もの的な、恋愛スイッチへの移行の難しさがそのまま露呈してしまっている感はあります。
 でもお互いを意識していく過程としてのイベントはそこそこ豊富に用意されていますし、その契機としての復興フェスへの携わり方、そこからより根源的・原点的な感謝と想いの強さを引き上げていくあたりは上手く出来ていると思います。
 個人的にもう少し主人公や玖音のトラウマ面に深く接していく可能性を考えていたのですが、その辺あまり重くし過ぎず、けど全く軽視しているわけでもない程良いバランスで組み込んでいますし、それを受けての終盤の展開も、いかにも玖音らしさを反映したものになっていて。

 この辺りのつくりなどは、かなり都合のいいアイテムだなあとか苦笑する向きもありますけど、一応それも共通から仄めかされていた部分はあり、色々と象徴的な展開を綺麗に収束させるための装置としては面白い働きだったなと、この辺りの盛り上がりに関しては明日歌シナリオよりも上ですね。
 ただ総合的に見てちょっと無理くり繋げている感じはあるのと、イチャラブ濃度も順々、というより上げ下げが激しい色合いはあるので、その点では明日歌の方が良かった、というイメージです。

 んで律は、一番全体的なシナリオとのバランスで難しい立ち位置だったと思いますが、その辺上手く糊塗している、とは思いますし、その一連の流れの中で上手く恋愛色もしっかり組み込めているので、つくりとしては頑張ったのではないか、と感じます。
 上で触れたように、このルートからはすずさまが介在して、律に解決の為のヒントを与えてしまうことになり、けどすぐに見出せる解決策は実は罠だった、という構図の中で、上手くダメージコントロールを主人公達の存在に依拠して成り立たせている、というのが、いろはルートとの大きな違いになります。

 いろはルートだと念の為のテストを組み込んでいる時間的余裕がなかったのか、政治的配慮に逆らえなかったのか、とにかくいきなりその罠解決策を発現させて更なるパニックを呼び込んでしまいますが、こちらではそれを企業内ダメージのみで回避して、その謹慎期間中に改めてVR知能との向き合い方を定義するとともに、それを支えてくれた主人公との恋愛も紡ぐという構成自体は、物語の繋ぎの位置としてはギリギリのバランスだったなと。
 ただその分、どうしてもこのルートでは核心的な回答はぼやかされたまま推移していきますし、明日歌や玖音ルート同様に、いろはの帰還で自然消滅的な形でハザードが回避される構図は変わりなくて、その先に見出した希望がどれだけVR技術の進歩を促すか、はなんともですけど、綺麗な解答にはなっていると言えるでしょう。

 上で触れたように、起源論的に言えば律がいろはとすずに2027年で出会って、それが原因となってタイムシフトの技術がより確実なものになっていく、という脈絡は、その一番最初のすずはどこから来たのか?という部分で謎なのですけど、少なくともこの並行世界での律なら、その答えに辿り着くための時間は短く済んでいるのだろうな、って思います。
 一応グランドの最初にスタート地点の律とすず、みたいな存在は定義されているのですが、あれ自体では起源論そのものを説明はし切れておらず、でも時代推移を考えても、何も介在がない状況下での律だと、ああして最晩年にならない限り、2077年のいろはが2027年にタイムトラベルする、という技術的体系を完成させられないのかな?とは思いますし、明日歌や玖音ルートの流れならまずそうなる、そしてそれが世界の平均的なVR進歩のありよう、という見方は出来ると思います。

 その上で、いろはルートに入る前に考えておくべきなのは、どうしてすずが、律を創造主として持ちながら、ああまでいろはファーストな存在として定義されているか、なんですよね。
 矛盾を無視して言うなら、それは律が最初に出会ったすずがもう既にそういう存在だったから、と考えるしかないですし、どうあれその目的がいろはの最大幸福を追求し続ける、という所にある限り、どれだけ並行世界を渡り歩いてでもそれを見出すのは必然ですし、本質的にはいろはの幸福度がVR技術の発展にリンクする、というのも副産物に過ぎないのでしょう。

 ただし、未来予測演算を信じるのであれば、最初の選択肢の時点でいろはと結ばれる可能性を内包する分枝に至る確率は、他のヒロインのそれより高くおよそ1/4もあるわけで、そこからすずに分岐する可能性を差し引いたとしても、すずの存在がそう定義された時点で、人と人、人とVR、未来と過去という多面的な繋がりを可能にする社会の成立確率、その可能性の極北に至る割合は結構高く見積もられているんだなと、そのあたりは人の想いや善意の強さへの信奉度とリンクしているようでもあって面白いところです。

 ともあれ、そのいろはルートは、律の失敗でより一層ハザードが強化されてしまって、その根幹的な原因が自分にある、と皮膚感覚で理解しているいろはが、このままでは戻れないと決心することで、他ルートでは時系列の制約でそこまで見えなかったより奥深い展開を引き出す事にはなります。
 また期間延長となったことで、それまで意識的に抑えていた思慕も噴出し、かつそれを後押しするようなハザード収束の確率といろはの幸福度リンク、という胡散臭い理屈も介在してきて(笑)、恋愛をし、かつ復興の為の協力は惜しまない、という二面的な活動の中で、徐々に解決の筋道を立てていくという、中々に都合のいい展開にはなっています。
 
 しかしそれを阻害する外的要因が介入してきて、それ自体は他ルートとは時間の尺が違うので、そういう可能性もさもありなん、と思わせるものではありますが、やはりかなり強引な展開であるのも確かで。
 それが実行される前にこちらで根幹的な問題解決を導いてしまえばいい、という短絡的な結論と、それに対しての律の解答案も、あくまで物語の展開を前提としての都合のいい中途半端な技術だなぁ、とは思いますが、この作品が音楽をメインに人の心を繋げる、というつくりですのでそこは仕方ない所でしょう。

 そしてこの時点では、役目を無事に終えたいろはは、改めてこの時代に不確定要素を持ち込まない為に即座の帰還を余儀なくされて、ここではあーやっぱりなぁ、と切なく思わさせるのですが、そこからの補完としてのすずルート、そしてグランドいろはルートの存在があります。

 すずルートに関しては、いろはの最大幸福が実現される枝をしっかり2027年で確立した事で、別の並行世界の中ですず自体の幸せを希求する正当性を得られたことで発現する、というところで、それはまあ理屈としては理解できますしいいんですが、物語そのものとしてはある意味事後処理的な色合いも強く、恋愛面での機微も非常に雑多で、ヒロインとしてはおまけ程度の扱いなのは致し方ないのかな、というところ。
 しかしいろはもそうだけど、ラブドール素体の都合の良さはなんだろな、ってところで、その辺で上手くエロス需要としては十全にさせつつ、それでもこれは、いろはがいろはの可能性を最大限に追及するルートではない、とは思うので、世界観を補完する、という意味では大切ですけど、やっぱりおまけはおまけなんでしょう。
 まぁツンデレすず可愛いは可愛いですし、VRキャラとの恋愛、という意味でのテーマ的な補完としては有用ですけどね。

 ともあれ、そこで世界観の謎をチラ見せしつつのグランドルートは、綺麗にいろはルートの悲しみを払拭して、繋がりを担保する大団円ルートになっています。
 一応そういう形での時間移動技術は、共通時点でも示唆されていたし、そこはスパンの長い上手い伏線になっているなと感心するところで、どこか織姫彦星的な雰囲気もありつつ、それでも定期的に実体でも会える、VR空間ならいつでも会える、というのは、暮らす時代の隔たりを無視して恋愛を成り立たせるのに十分な要素にはなっていると思います。

 そしてそれを可能にしたのは、一度未来に戻ってからのいろはの頑張りに尽きる、というところで、その想いを引き出すためにはあのクライシスと覚悟が必要だったと思えば、すずの思わせぶりな態度や半端な手助けの意味も透けて見える、というわけですね。
 これだけ近しい時代の行き来で、それこそタイムパラドックス的な部分は技術的に回避可能になってるのか、とか、やっぱり技術面でのファジーさは有り余るほどありますけれど、少なくとも感情面での納得、これがVR発展の先にある理想形なんだと読み手に思わせるくらいの盛り上がりはある構成だったと言えるでしょう。
 

★シナリオ総括

 正直期待以上に奥行きと面白さのある作品だったと思います。
 ただ結局のところ、危機を乗り越えなくてはより良い未来はやってこない、という部分でこじ付け的な教訓色も出ていますし、その構造を説得的にするための下地、骨組みも甘いので、全面的に素晴らしい、と言いづらいものはあります。
 あまり根源部分に関与しないヒロインルートの方がイチャラブ濃度が高くて普通に楽しかった、なんて部分も含めて、シリアスの必然性は担保されているとはいえ、それをより説得的に見せるための補完はあって欲しかった、全体構成の発想と帰結に関しては素敵だけど何かが足りない印象を残す物語で、採点としても迷いましたが、やはり問答無用で心震えた、というシーンはほぼなかったのでこのくらいが妥当かな、と。


キャラ(20/20)

★全体評価

 基本的にヒロインみんな善良で真っ直ぐで愛らしく、かつシナリオを通じての成長もしっかり担保されていて、横の繋がりとしてもふくよかさがあり見ていてこのコミュニティの温かさを感じさせるつくりだったと思います。
 強いて言えば外縁存在の不安定さというか、シナリオの構造に依存する形で個性がやや多様化している感があるのは勿体ないところで、勿論それが大人としての多面性、という考え方も出来ますけど、あまり不快感や反発をもたらすような色合いにまで逸脱しているのはやりすぎかなぁ、と、そこは擦り合わせが欲しかったところです。
 ただ全体としては安定したキャラメイクでしたし、まぁ多少玖音がうざい、と思う部分も無きにしも非ずですけど、個人的に女の子同士のイチャイチャも大好物なのでそこまで気にはならなかったかな、という感じですね。

★NO,1!イチオシ!

 兎にも角にもこの作品の最大の拾い物は、明日歌の問答無用の可愛さに尽きると個人的には言い切れますね。
 いやぁ、ほんっっっとうに明日歌は可愛いんですよ!基本的に素直で上品で、人懐っこく愛らしく、それでいて機微にも通じていて気の回し方や距離感の取り方が上手く、恋愛脳に至っていない状況でも非常に存在感があり、潤滑剤として絶妙の働きをしていて、どのルートでもかなり存在感がありました。

 その上で恋をしたときの乙女モードの破壊力や、同居生活の中でふと見せる隙、恋する心に忠実に、好きな人には尽くしたい!という想いの発現の真っ直ぐさなど、実に正統派の、いたいけでひたむきなヒロイン像を体現しており、恋愛成立までのこそばゆい空気感も素敵で、かついざとなれば意外と押しが強く、感情にも素直で、甘えてきたリ快楽を求めてきたリ、そういう部分まですごく清廉さを感じさせて本当に好きです。
 それに立ち絵がすんごく可愛くて、エモートモーションの出来の良さもそれに拍車をかけており、本当にあらゆる角度で私の好みのツボを的確に刺激する素晴らしいヒロインだったと思います。確定的ではないですが殿堂レベルの破壊力はあったし、今年これだけ萌え転がれたのってあとせいぜい水緒里くらいだよなぁ、と考えれば本当に貴重なヒロインでした。

★NO,2〜

 次点は流石にいろはですね。
 シナリオ面での補完もありますし、単純に絵の好みや性格の綺麗さ、純朴さと芯の強さに惹かれるものもあって、本当の意味で恋愛が始まるのはこの物語の後、という感じもなくはないのでその辺ちょい食い足りなさはありますが、とにかく徹頭徹尾いい子で、物語の中心に鎮座しつつ、玖音とは違う形で雰囲気を明るくしてくれる稀有な子だったと思います。天使の称号は伊達じゃないですね。

 次いでは難しいけどすず、かな。
 この辺も見た目依拠の部分は大きいですが、玖音は色々とめんどい部分も多かったですし、対してこの子の毒舌の方がわかりやすさと率直さが裏打ちされていて、ヒロインとしてはちょろ過ぎるのがアレですが、VRでありつつ一番多様な想いを内包して、人臭い情緒も併せ持った面白いキャラだったと思います。


CG(18/20)

★全体評価

 立ち絵がフルエモート対応、というのもあってか、ヒロイン毎に原画が違って、絵柄的にもやや統一感に欠いた部分はありますが、それぞれにしっかり個々の魅力を打ち出せている、という点では評価できると思います。
 当然質の面でのブレや好みの差は大きく反映しますし、量的にもちょっと物足りないところはあるのですが、立ち絵の破壊力だけでもそれなりの点数は進呈したい、と思わせる、生き生きとしたヒロインの魅力がありましたね。

★立ち絵

 ポーズは基本3パターンに、それぞれ基礎的なモーションパターンがいくつか用意されていて、その組み合わせで躍動感を演出する格好になっています。
 素のポーズパターン自体もそれぞれの個性や可愛らしさをしっかり引き出せていますし、それに可愛い仕草が伴って素晴らしい出来になっていましたね。
 
 特にお気に入りは明日歌の正面モーションと、あと時々出てくる下から覗き込みのモーションかな。この二つは本当に素晴らしい威力で、延々眺めていても飽きない愛らしさでした。
 その他明日歌といろはは全般的に可愛いですし、すずや玖音もリアクションが面白く楽しめました。

 服飾はヒロインで2〜3種類と、ここはやや少なめですね。世界観的に必要最低限という感じで、ただルートによっては寝間着とか水着とかの1枚絵もあるのだから、その辺の立ち絵補完があっても、とは思いました。くっ、明日歌の水着立ち絵超見てみたかった…………!
 お気に入りは明日歌制服、私服、アイドル服、いろはアイドル服、私服、元の私服、すずアリス服、玖音私服あたりですね。

 表情差分はそれなりにモーション機能のおかげでバリエーションはありますし、遊び要素も結構あって可愛く楽しかったですね。全体的に明るい表情のバリエーションが多めなのも好感は持てます。
 お気に入りは明日歌といろは全般、すず笑顔、照れ焦り、困惑、玖音笑顔、驚き、ニヤニヤ、照れ笑いあたりですね。

★1枚絵

 通常74枚、SD18枚の計92枚と、SD配分が大きく値段を踏まえるとちょっと物足りないですね。
 律とすずがヒロインとしてはおまけ扱いで少なめですし、他3人も横並びなので、せめてもう少し集合絵とかそのあたりで補完があればと思うのですが、これだけ原画さんがいっぱいいるとそれも難しい、というのを弊害として感じさせるところで、出来もかなりばらつきあるので、時折クリティカルに素敵なのもあるのですが手放しでは褒めづらいですね。

 特にお気に入りは2枚。
 1枚目はいろはの目覚め、これはこの作品を象徴するシーンでもありますし、色づいて無機質な雰囲気から、人らしい表情への変遷の見せ方が本当に綺麗でした。
 2枚目は明日歌の制服エプロン、組み合わせとしてはド鉄板ですけど、本当に若妻感が出まくっていて、その甲斐甲斐しさが真っ直ぐ伝わってきて素敵な1枚です。

 その他お気に入りは、いろは全般、玖音背負い、ストレッチ、ドレス、幼少時、キス、タクト、裸エプロン、背中流し、パイズリ、明日歌演奏、採取、寝ぼけ、告白、添い寝、水着、舞台、はじめて愛撫、屈曲位、バック、フェラ、正常位、パイズリ、騎乗位、律水族館、約束、正常位、背面屈曲位、すず膝座り、すずの部屋、演奏、正常位、背面座位あたりですね。


BGM(19/20)

★全体評価

 近未来感を非常に強く打ち出した、テクノ感とスタイリッシュさ、スピード感が強く感じられる楽曲が揃っており、独得の雰囲気を紡ぎだせていると思います。
 量的にはさほどでもないですが、全体の質は高く、特にボーカルの出来がかなり良かったので、その点を重く評価してちょっとおまけ的にこの点数、という感じです。

★ボーカル曲

 全部で5曲。
 OPテーマソングの『ワールドスタート』は、本当に色々なものがここから動き出した、というイメージを堅牢に抱かせるイントロの疾走感とボーカルの走りぶりで、メロディラインも時に破天荒に動きつつも調和がとれており、スタイリッシュでとても好きな曲ですね。特にサビのメロディラインが気に入ってます。

 いろはテーマ曲でEDでもある『エンゼルブレス』も素晴らしい曲ですね。
 テクノ感に加えてアイドルらしい伸びやかさ、ふくよかさがあり、透明なボーカルとイントロの噛み合わせ、メロディラインの綺麗さが凄く印象的で、サビとそれ以外の部分でのメリハリのつけ方も良く、耳に優しく残るところが気に入ってます。

 アイテーマ曲の『ラブエア』は、よりVRアイドルらしい技巧的な要素を取り入れつつ、全体としてはスピード感と可愛らしさをうまくミックスさせた印象的な曲に仕上がっていて、前の2曲にはインパクトで劣りますけどこれもかなりいい曲です。

 明日歌テーマ曲の『ドリームトゥモロゥ』も好きな曲です。
 メロディラインにワクワクするような伸びやかさとリズム感があり、透き通ったボーカルとも噛み合っていて、特にサビの旋律が綺麗でいいですね。曲としての完成度はやや落ちるかもしれませんが、メッセージソングとしては強さがあるなと思います。
 ただ余談ですけど、この曲っていろはルートでその旋律が浮かび上がる必然ってあるのかしら?とは思うけど。。。

 ラストのグランドテーマソングの『ソング・フォー・ミュージック』に関しては、アイデアとして面白い、というのがまず来ますね。
 コンセプトとしてダイバみんなの好きな音楽を糾合して、というところから、上記のボーカル曲のメロディラインを次々に渡り歩いて、また一部BGMにボーカルをつけて、なんて処理もしつつ、大河ドラマの協奏曲みたいなつくりに仕上げています。
 なので全体のバランス感という意味ではやや無理やり感はありますが、テーマ性を体現した曲として印象は強いですし、土台になっている曲がみんな素晴らしいのでその点で評価出来ますね。

★BGM

 全部で21曲とやや少なめですが、質はすごく統一感があり、奥行きもあるものが多くて気に入ってます。

 特にお気に入りは『トゥー・ビューティフルコーダ』。
 非常に強い決断や覚悟を意識させる迫力ある旋律に否応なく盛り上がりますし、中盤しっとりと落としてからの盛り上がりに繋げる構成もいい感じで、かなり気に入ってます。ただしこの戦慄がいきなりソングフォーミュージックの中に出てくると違和感バリバリでしけだと(笑)。

 その他お気に入りは、『パラダイスココア』『ユートピアノート』『ティル・ナ・ノーグ・ベル』『イマジネションサイド』『オルタナティブ』『ミスティックウィスパー』『プリミティブビート』『ミュージックダイバーシティ』『ハーモニックフラワー』『ピュアハート』『ヘブン』『フェアリーホロウ』あたりです。


システム(9/10)

★演出

 こちらは非常に洗練されたいい出来ですね。
 立ち絵はフルエモートですごく躍動感と愛らしさが出ていますし、イベント演出も非常にスタイリッシュでセンスある彩色・構図での展開をふんだんに駆使しており、未来のVR世界のイメージを丁寧に投影できていると思います。
 ムービーもそれと合わせて非常にかっこいい出来になっており、特にOPの出来は秀逸ですね。

★システム

 いつもながら動作的にはもっさりしたところもありますし、前にジャンプがないのも厄介と言えばそうですが、特にプレイして不便を感じるほどではないかな、と思います。
 デザイン性は流石の見栄えですし、あと今回のつくりで思うのは、TIPS組み込むならそんな辺り一辺倒の説明だけに留まらず、もう少し深い部分を推測させてくれるような説明を付随させてくれれば、ってのはありますね。直接システムとは関係ないですけど。


総合(87/100)

 総プレイ時間20時間ほど。共通が4時間、個別がメインの3人は3〜3,5時間、サブの2人は2〜2,5時間、ラストのグランドが1,5時間くらいの換算ですね。
 全体的に長すぎず短すぎず綺麗にまとまっていて、設定面での甘さはあれ整合性も最低限は担保されていて、その上で語りたいテーマに関してはしっかりラストに至るまでの流れの中でしっかり組み込めている、と思います。

 細かい事を考えると齟齬や粗はそれなりにありますし、バランス面でももう少し配慮が欲しいところはありますが、総合的にはかなり完成度は高いですし、きちんとハッピーエンド、大団円で終わっているのも、タイムトラベルものとしては評価できるポイントだと思います。
 突き抜けて素晴らしいところはないにせよ、安定して面白いので好きなヒロインがいるならプレイしてみて損はないと思います。個人的には本当に明日歌が大当たりでその点大満足でしたねー。
posted by クローバー at 14:14| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月29日

お嬢様は素直になれない

 基本的なコンセプトやシナリオ面の期待はあんまりなかったんですけれど、私的にCVが強すぎたのでほぼそこだけで押さえておこう、とならざるを得なかった作品ですね。

シナリオ(16/30)

 コンセプトに対しての…………。

★あらすじ

 主人公は幼い頃に両親を亡くし、要人警護の仕事に就く近衛の家に養子として迎えられました。
 養子の自分を実の家族同様に育ててくれた恩義に報いるべく、そして本人の気質にも会っていたのか、義妹の六花共々駆け出しのガードとして働くようになった主人公は、ある日とある学園で、対象に気付かれずに影ながら警護をする、という任務を請け負います。

 その学園は、近年共学化に踏み切ったものの未だに女子生徒の比率の方が圧倒的に高い、お嬢様学園の名残が強く残る場所でした。
 転校前日、そこに向かっていた主人公は、周辺の街の地理を覚えようとしている最中に、公園で子犬と追い掛けっこをしている少女に出会います。
 彼女の真っ直ぐな気質と、心根の清らかさに感じ入るものがあった主人公はその捕り物を手伝い、恩に着せることなくその場を立ち去りますが、その少女の中には彼への好意的な印象が強く焼きつきます。

 学園に着いて、学園長に挨拶し、学生会長の恵梨香や副会長の若葉、更に困り事を抱えていた上級生の美紅などと触れ合いつつ、明日からの任務に備えて、これからの住処となる男子寮で気を引き締めている中、女子寮では彼がその日であった少女達がたまさかに集まって、総じて彼の事をそうとは知らずに話題に挙げます。
 その流れで、実はそれが同一人物であったことが発覚し、それにより強く感銘を受けたのは、一番最初に子犬と追い掛けっこをした少女、実は主人公の警護対象でもある久遠でした。

 翌日、初登校中の主人公を途中で待ち構えていた久遠は、いきなりこう言い放ちます。「お前は今日から、私のシュベスタだ!」と。
 実は久遠は、年々生徒数が減少傾向にある学園の現状を憂い、その打開策として、かつて学園に根付いていた伝統的な風習、特別に仲のいい相手とのより深い絆・友情の契りを意味するシュベスタ、という制度を復活させようと目論んでおり、自身がそれを体現する相手としてうってつけだと、主人公に目をつけたのです。

 主人公は最初こそその剣幕に戸惑いますが、後々その真意を説明され、その熱意と想いに打たれるものもあって、そういう関係を紡いで傍にいれば警護も楽、という事情もありつつ、まずはお試しとして、久遠とのシュベスタ関係を受けることになります。
 そのことで彼女の元々のガードであるなつきにやや警戒されもしますが、実は彼女もかつての幼馴染だったことがわかって、主人公はシュベスタ絡みで触れ合う機会の多い、心根の美しい少女達に本当の事を隠している事に痛みを覚えつつ、せめて彼女達の手助けになれればと積極的にその活動に参加していくのでした。

 後には主人公の事を心配した義妹の六花も、ガード補佐として学園に転入してきて、賑やかな日々の中でよりヒロイン達の心情に触れる機会も多くなっていきます。
 より深く知ることで、それぞれのヒロインが抱える複雑な想いや、素直になれない部分とも対峙する事になり、それは基本的に善良でお節介な主人公の琴線に触れることになり、やがてそれは深い想いへと繋がっていくのです。
 これはそんな、頑張り屋で、けど素直に頼れない、自分の気持ちに戸惑う少女達との交流、絆の形成を描いた物語です。

★テキスト

 全体的にはお嬢様学園らしい典雅な雰囲気を意識しつつ、誠実さや朗らかさが強く表に出ている読み口だなと思います。
 特別に掛け合いの面白味や鋭さはないですが、それぞれの想いの美しさや交流の暖かみは存分に楽しめますし、そういう状況を潤滑させるキャラも上手く配置していたりで、概ねわかりにくいところもなく軽やかに読み進められる感じですね。

 個別に入るとややライターの個性の差が出るというか、若干なり主人公の軽重さに差異があるかな?というくらいの違和感はありますが、それほど気になるという所もないです。
 まあ一部語彙の用い方にあれっ?って思う向きがあったり、言い回しがかったるく感じるところもありましたが、全体的には毒にも薬にもならない、という範疇で、しっかりヒロインの可愛さと性格の良さを表現できているのではないかと思いますね。

★ルート構成

 ほぼ選択肢としては、最後のヒロイン選択だけ、という簡素さです。
 お試しシュベスタが終わって、そのまま久遠との関係を続けるかをまず問われ、それを断った時に、じゃあ誰が気になってるか?と問われて、それで個別突入なので、なんともプレイヤーが能動的に選んでいる感は全くない面白味のないつくりです。

 個人的にはこの設定なら、どうしたってある程度久遠の存在にアドバンテージを感じるところは強かったですし、また作品のコンセプトとしても、共通の段階でヒロインの気難しい部分にふわっと入り込み、それをほぐすような状況を能動的に選択して蓄積し、その結果を最後に反映する、くらいの工夫は欲しかった気がしますね。
 それくらいならこの共通の流れでもほんの少しの工夫で何とでもなりますし、元々久遠のシュベスタ復活に対する熱意に対して強く感じ入るものがあった以上、それを上回るだけのなにか、というイメージをより鮮明にプレイヤーに持たせた方が、個別に入っての個々ヒロインへの思い入れの持ち方も大分違ってくるのではないかと、この点の適当さはちょっと残念ですね。

★シナリオ(大枠)

 基本的にこの作品は、ガードものをしたいのか、ヒロインのツンデレ模様を強く推したいのか、その辺の比重においての優位性が有耶無耶に感じますね。
 タイトル的にはヒロイン達がそれぞれに抱える、素直になれないポイントを強調してそれを解きほぐし、主人公の前でだけはその凝り固まった部分を解放して真っ直ぐ甘々になれる、という所が推しに感じるのですが、正直なところこのつくりだとその要素が十全に楽しめるほど奥深い、質量的に充分担保されている、とは言い難い気はします。

 物語の山谷として、ガードという立場を生かしての事件の解決、というのはとても便利なファクターなのは間違いなく、そういう部分を組み込むな、と言っているわけではないのですが、ここまでイチャラブが最低限だと、この作品のコンセプトがガード奮闘記、的なイメージになりかねません。
 といってじゃあ、そのガード絡みの展開が凄く白熱して面白いか、というとさほどでもなく、共通でもそうですが問題発覚⇒即座に対処にして解決、というワンステップの展開がほとんどで、やっぱりその在り方からするとこちらはエッセンスでしかない、はずなんですよね。
 けど全体尺としても短めで、その中でのバランスを見ていけばやっぱり比重が曖昧なので、タイトルを墨守するならもっとイチャラブシーンを多くするべきだったと思います。純粋にHシーンそのものすらかなり少ないヒロインもいますし、アンサンらしい簡素さと言えばそうですが、やはり勿体ないと感じるところは強いです。

 ガード展開そのものに関しては、一応最低限、主人公がそのヒロインと結ばれた事で派生する展開や、或いは他のルートで起こっていたとしても、影ながら母親とか六花がなんとかしてくれたんだろう、と思える範疇でのつくりになっているので、そこで歪みが生じている、というほどではないのは悪くはないところです。
 その中での一定のハラハラ感もないとは言わないですし、特にメインの久遠ルートなんかは結構しっかりしてる、とは思うんですけど、それでも全体的にはちょっとそういうハードボイルドな雰囲気を齧った程度の味付けではあるので、そちらに過度の期待を置けるほどではない、と言えるでしょう。

 ルート構成の項でも触れたように、主人公がガード、という立場にある中で、それでも、とヒロインに傾斜していくだけの積極的な理由を、あの共通の展開だけで見出すのも難しいですし、ヒロイン側もそれだけで惚れちゃうのかよ!?というちょろさはどうしてもあって、総じてあらゆる要素において深みが足りない、というのはあるでしょう。
 ならやっぱり、コンセプトに忠実にもっとイチャラブ、恋愛面での機微の踏み込みを強化すべきでしたし、そういう部分で共通の主役章と各個別ルート、あと30分ずつくらいは盛り込みがあれば良作レベルには感じられたのに、と残念に思います。
 あと個人的に一番ぐぬぬ、なのは、体験版プレイして、本編クリアしてもなおトップクラスに好きな若葉が攻略できない事だーーー!追加パッチカモーン!!!

★シナリオ(個別)

 個別評価としては久遠=恵梨香>なつき=六花>美紅くらいですかね。
 総じて高い水準にはなく団栗の背比べ、と言えばそうですが、その中での差としては、やはりイチャラブの中でのヒロインの気質のギャップをどれだけ楽しめたかと、後はシュベスタやガードという要素をどれだけ無理なくシナリオの中に組み込んで、主題の部分と有機的に絡められていたか、というところですね。

 久遠に関しては、個人的にこのつくりの共通の流れの中では、彼女が一番主人公との距離感でアドバンテージを握っている、とは思っているので、シュベスタ関係の継続を宣言されてより傾斜していくありようは当然に感じられます。
 ただ元々の恋愛情緒がかなり幼く、そのあたりを刺激されると自分の気持ちを素直に受け止められない、という部分に対し、もう少し掘り下げがあってもいいと思いましたし、ギャップ的な意味ではこの子が一番可愛かったと思えるだけにより勿体なく感じます。
 翻って主人公もそのあたり鈍感なので、恋のライバル登場!ってあたりからの展開で久遠の想いを忖度出来ていなかったり、最終局面での勘違いなど、そういう部分はもっと大仰にコメディチックに組み込んでも良かったのに、って思いますね。

 一応ガード的活躍の展開にしても、共通からの大枠の流れの中での問題に絡めていますし、ただこのあたり、主人公が着いていかなかった時どうなってたの?ってのはありますね。
 単純になつきもいないから、参加を見合わせた可能性が一番強いと思えばそうなんですけど、その場合は憎まれっ子世に憚る、的な状況は継続するわけで、そっちは母親がなんとかしたと思うしかないのが難しいところではあります。

 その辺はともかく、個別内でのささやかなエピソードでその後の展開を示唆したり、さりげなく重要な伏線を組み込んでくるところなどは比較的丁寧だったと思いますし、その分展開的に一番クライシス要素が強くあっても、それが不自然過ぎず、解決への道筋の中でも非常に紡いできた絆の温かさ、強さを感じさせるもので、そのあたりはメインヒロインの面目躍如、という格好でした。
 でもやっぱりそちらにかなり比重が置かれているせいで、イチャラブ展開やHシーンなどが乏しいのは残念でしたね。本当にこの子とイチャエロするのはすごく楽しいし、愛らしくて、もっともっと見てみたいと思わせるものがあったのになぁ。

 恵梨香は基本的に、ガードならではのアプローチや解決と、シュベスタという関係性の、共学時代におけるあるべき姿、という問題提起に一番生真面目に、真っ直ぐぶつかっているシナリオで、そこはすごく好感が持てるな、と思います。
 そのあたりも恵梨香というヒロインの立場と個性に起因する部分が多く、それ故に色々と難しく考えすぎて立ち止まったり、素直に頼れなくて問題を拗らせたり、と、ヒロイン固有で見ると所々めんどくせぇー!ってなる点はあるんですけど、このルートではとりわけ、補佐役で潤滑剤の若葉を上手く活躍させてるなぁ、と。

 基本的に彼女の存在で、空気が重くなりすぎなかったり、その善意のからかいで意識が柔らかくなったりするシーンが殊の外多かったですし、恵梨香との親友関係としても中々に深みがあって、この辺若葉大好きな私としては大歓喜、というところでした。
 無論それだけでなく、恵梨香自身の努力や勇気のありようも見逃せない良さがありましたし、ダイナミズムという点では久遠に譲るものの、丁寧なシナリオになっていたと思います。嵯峨野さん絡みでの、画面効果も上手く利用してのプレイヤーに対する心情の上げ下げの操作感はなかなか見事な手管だったと感じますね。

 ただやっぱりここでも、純粋なイチャラブはやや足りないな、とは思うんですけどね。久遠に比べればシーン数も含めてまだマシ、とは思いますけど、もうちょっとこう、若葉をドン引きさせるくらいのイチャラブまで踏み込んで欲しかった。最後のお邪魔しましたー、のくだりとか超面白かったし、ああいうラブコメ的な展開もっとプリーズ!って感じ。。。
 そしてサッカー絡みで意気投合して、一緒に観戦しましょうよ!的な展開の中で、若葉ルート分岐がないか全力で探してしまう私の哀しい性よ(笑)。

 なつきに関しては、恋愛面での機微の紡ぎ方はある意味では一番丁寧だった気もします。
 元々幼馴染で、なつきのほうはずっと淡い想いを抱いてきた、という関係性でもあるので、その差異というか温度差が埋まるまでのもどかしさを楽しむ、という意味では中々でしたし、想いを素直にぶつけてくるようになったなつきの可愛さも良かったとは思います。
 ただやっぱりその辺の踏み込みが浅く終わってしまっているのはありますし、ガード絡みイベントとしても久遠の下位互換的な展開で、シュベスタ絡みでも特別踏み込んだところはなく、想いのままにそれを踏み台に、という簡素さなので、総合的に見ると上二人にはちょっと落ちるかな、という感じです。
 久遠同様に一番シーン数が少ないヒロインでもありますし、色々もっと面白く出来る余地はありそうなだけに勿体ないですね。

 六花はそもそも最初からガードであることを偽らなくてもいい相手、という部分で、傍にいる理由づけとしてはそれなりに説得性を有しているのはいいのですが、シュベスタ関係から派生しての想いの変化に対しての戸惑いや躊躇などはいかにも妹シナリオっぽい面倒さで、その辺をどう感じるか、ですね。
 まあ義理なので、六花の側の想いとしては不自然さはないですが、それに対する主人公の意識の変遷として、共通色仕掛けシーンではそよとも靡くところを見せないくせに、選択肢の段階で彼女を想うというのはやや強引に感じたり、その後も鞘当ての登場、だけど勘違いという古典的な手法一本槍で、というのは少し深みは足りないだろうと思います。

 あと、会話の端々にもガード兄妹ならでは、って部分が結構強く出ていますが、そのあたりの距離感がややわざとらしく感じたり、その割にガード要素を用いての終盤の展開もさほど大きく盛り上がるわけではない、ってのは、久遠シナリオなどと比較してもやや肩透かしの印象はありますね。
 まあその事件の契機としてシュベスタ制度の復活がもたらす歪、という部分を引き出してきたのは悪くない発想だと思いますが、まぁ使い方としては淡泊で勿体無い、とは思います。
 当然イチャラブ濃度も薄めなのは共通しているので、総じてキャッチーさが足りないシナリオだったとは思いますね。

 美紅に関しては今作の飄然妖艶お姉さん枠、というところで、ただそれが好みに合致するか、という部分での難しさは強く出てきます、かね。
 キャラ的にどうしてもあまりガードとしての要素もシュベスタとしてのありようを深く考える、という方向性も噛み合わない立ち位置ですし、恋愛関係としても非常になし崩し感が強く、他のルートでの主人公像から考えても流され過ぎだろ、って思う部分は結構あって、個人的にはあまり感心できないかなぁ、と。
 設定的には面白さもありますし、縁の下の力持ち的な気質が綺麗に嵌っている部分もあるので悪くはないんですけど、イチャラブの方向性としても、ギャップ的な部分でも何か違う感じはあって、印象薄く終わってしまったなぁ、というところです。

★シナリオ総括

 全体的にはやはり薄い!がまず最初に来ますし、その中でも、素直になれない度合いが足りん!もっと甘イチャデレモードを搭載せよ!ってイメージが最後まで払拭できなかった作品ですね。
 なまじガード要素に尺を割いているだけ、全体のバランスとして整ってはいるけれど、主題がどこにあるのかぼやけてしまっている感は強く、その辺の補強は、そこまで極端に構造改革をしなくともなんとかなる部分は結構あるので、もちょっと何とかできなかったかなぁ、というのは出てきてしまう、ある意味ではいつも通り何となく物足りなく終わるアンサン、という感じです。

 まぁ物語としての整合性は最低限確保されているかなと思いますし、女装ものとはまた違う形での煌びやかさや華やかさを楽しめる余地もあり、悪くはない、と思いますが、逆にこれ!という推しがないのも事実でしょう。
 わたしの場合結局CV面でこうでなければ、ってのはありますし、その点での満足度はあったにせよ、それ以上期待以上の収穫があったか、と言われると首を横に振らざるを得ない、奥行きや密度の足りない作品なのは間違いないかなと思いますね。


キャラ(20/20)

★全体評価
 
 正直言えば個々のヒロインの魅力の掘り下げはまだまだ足りない、とは思いますし、敵役なんかにしても崇高な理念など薬にしたくてもないただのチンピラだったり、この点でも奥行きがないのは確かです。
 でも元々のヒロイン造型が全体的にすごくいいですし、その個性を伸びやかに見せてくれているだけでも楽しめたのは事実なので、もっと面白く出来るのに、素敵に見せられるだろうに、という想いは残しつつも、敢えて減点するほどの欠点ではないかなというところです。

★No,1!イチオシ!

 敢えて掟破りの、サブヒロインなのに一番可愛いぜアピールをしてしまいましょう、という事で、嫌でも本当に若葉は可愛いんですよこれ。
 基本的に快活で好奇心旺盛で、特に恋愛ごとに対するセンサーが鋭敏ですぐにちょっかい掛けたり、からかったり、その都度に箸が転んでもおかしい、とばかりにころころ朗らかに柔らかく笑っている感じもすごく可愛いのですが、一方で弟妹達の生活を支える一家の大黒柱としての逞しさ、精神的な成熟も併せ持っていて。
 その分常に周りをしっかり見ていますし、心の機微にも敏感で思いやりある行動と言動が出来て、すごくバランスよくこの世界観を潤滑させてくれているなぁ、という感じがあり、まぁ好きだー!って。

 結局のところ、根本的な素直になれない、というコンセプトにマッチしない、最初から鷹揚さと、頼れるところは頼る柔軟さを持っているからヒロインじゃない、ってことなんでしょうけど、そもそもそのコンセプト自体シナリオで十全に生かし切れてないんだし別にいいじゃん、と思ってしまうのですが。。。
 まあこの子の物語を紡ぐ場合は、学園でのありようよりも家庭の側に比重を置かなくちゃ、ってので難しさもあるでしょうけど、小さい弟妹を抱えながら頑張るお姉ちゃんを支えたい、的な話は大好物なので、その点でもつくづく惜しいのです。本当に追加パッチか、ミニFDでヒロイン昇格切に希望です。超好き。

★NO,2〜

 とまあ、掟破りをかました上でのヒロインズの評価ですが、やはりここは久遠が一枚抜けて可愛かったかなと。
 すごく性格的に威風堂々というか明朗快活というか、或いは天真爛漫でどこまでも人間性のありようで相手を見ている感じが清々しく、とても存在感があったし見ていて楽しかったですね。
 そういう彼女が少しずつ恋愛情緒、性情緒を獲得して、それを咀嚼し切れずに悶えているところなんかも微笑ましくてとても良かったですし、その辺もっともっと掘り下げてくれ!って思えるキャラだけに色々勿体ないのですが、現状でも本当に可愛く愛らしい素敵なヒロインだったと思います。

 六花や恵梨香も可愛かったですけど、それぞれの立場や気質の面からのめんどくささも相応にあって、久遠ほど素直に萌えられん、ってところはあったかなと思いますし、なつきも可愛いけど立場的に自分以外のルートであまり出しゃばってこないし、基本的には幼馴染チックな葛藤がメインなので、この辺も久遠に比べると面白味は足りないですよね、というところ。
 美紅も相談役としてなら中々にいいキャラなんですけど、恋愛面でのフックがちょっと強引かつ宜しくない感じだったしなぁと。
 あと地味に嵯峨野さんが可愛いんですけど。あの1枚絵の使い方は中々やりおる、って感じですよね。


CG(16/20)

★全体評価 

 原画さんをかなり複数使っているので、どうしても雰囲気の差異や出来のバラつき、そもそもの質の好みの差が大きく出てしまいますし、あとこれだけの人数使っておいて素材的にこの量か、って感じる向きもあります。
 シナリオ面での奥行きが足りないのとセットで、絵の素材としてももう少し多彩さと、可愛さをより強く押し出したシーンが欲しいな、って感じるところでしたし、ちょっと全体評価としては下げておきたいと感じましたね。

★立ち絵

 ポーズはヒロインで2パターンずつ、特に腕差分なども目立って見当たらないので、躍動感としては乏しい感じですし、キャライメージの投影としても穏やかだなあとは思います。
 お気に入りとしても久遠の正面、恵梨香やや左、若葉くらいしかないですし、ちょっと物足りないですね。

 復職も同様にヒロインで2種類ずつしかなく、なのになぜか若葉だけ3種類ある謎。。。いやまぁ私としては嬉しいんですけどね、でもあのメイド服別に何の活躍もしてないよね、ってところでの、どうあれ最低限、って感じは目立つところです。せめて寝間着立ち絵くらいは欲しいよね。
 お気に入りは久遠制服、私服、若葉制服、メイド服、私服、六花私服くらいでしょうか。

 表情差分も当然少な目で、特に奇抜なものもなく安定して可愛い、という感じではありますが、これも個々に癖は出ていて全てが全て良し、とも言えないのが難しいところです。
 お気に入りは若葉笑顔、きょとん、からかい、憂い、久遠笑顔、威張り、憂い、ニヤニヤ、照れ笑い、焦り、恵梨香笑顔、焦り、照れ困り、なつき目逸らし、笑顔、怒り、六花膨れ、笑顔、照れ笑い、真剣、げんなり、><あたりですね。

★1枚絵

 全部で84枚。値段が高めであることも踏まえると純粋に枚数的にも物足りないですし、人数や内容から考えてももう少し頑張ろうよ、と感じるところはありましたね。
 質自体はそんなに悪くはないですが、といってガツンと来るほど素晴らしいのがあったわけでもないので、評価的にはどうしても強くは推せないところです。

 お気に入りは久遠出会い、六花目覚め、色仕掛け、恵梨香お姫様抱っこ、久遠ラーメン、背中流し、着替え、鞘当て、告白、ダンス、キス、屈曲位、添い寝、立ちバック、壇上プロポーズ、腕組み、騎乗位、恵梨香うたた寝、親友と恋人、立ちはだかって、正常位、なつきデート、添い寝、抱きしめ、対面座位、キス、美紅自慰、背面座位、バック、正常位、六花胸揉み、ドレス、騎乗位、フェラ、69、バックあたりですね。

 余談ながら、久遠のはじめての時の愛撫シーン、いつの間にストッキング脱がしたんだゴラァー!という怒りもありつつ、色々足りないとは思う今日この頃でした。


BGM(17/20)

★全体評価

 質量ともにさほどでもないですが、出来としては全体的に整っていて優雅さがあり、耳に優しく、かつキャッチーに響いてくる楽曲に仕上がっていたなと思います。結構ここは好みでしたが、量的にはやや足りないのでバランスを取ってこのくらいで。

★ボーカル曲

 全部で3曲。
 OP1の『内緒のホント』は、華やかさとスピード感、ドキドキ要素がバランスよく詰め込まれていて、作品コンセプトをシナリオ以上に(笑)きちんと体現している、可愛らしく綺麗な曲だなと思います。
 メロディラインのバランスも良く、特にBメロで少ししっとりさせてからのサビの疾走感は中々印象深く、全体として面白さが詰まったいい曲だと思います。

 OP2の『Blooming』もかなり好きですね。
 個別に入るところで流れる曲で、想いが花開いていくところを丁寧に拾い上げて、その機微をしっかり捉えている歌詞とメロディの柔らかさのバランスが良く、サビの心浮き立つイメージが投影された雰囲気も凄くいいなって思いますね。

 EDの『想いの花束』も、しっとりしんみりしつつ、しっかり二人の未来を見据えて、という雰囲気が綺麗で優しくいい感じですし、曲としてもイントロのシンプルながら丁寧な支えの中で、広がる未来への期待感をしっかり感じさせる、実にEDらしいED曲だと思います。

★BGM

 全部で20曲と、量的にはやや少なめですね。
 ただその中で、色々多彩なシーンの雰囲気にしっかり応える骨太の楽曲が仕上がっていて、全体の調和もしっかり取れていますし、概ねいい出来だなぁと。

 お気に入りは『麗しき麗峰』『快晴の空の下で』『攻勢防御』『月光』『雨に溶ける涙』『回生の一矢』『また会えたね』『思索』『ありがとう』『きっと、いつまでも』あたりですね。


システム(8/10)

★演出

 基本的にはそんなに目立つところもなく、最低限の演出は出来ているけれどそれでも高く評価できるほどではないですね。
 結構活劇的な要素もある作品だけに、その辺もう少しメリハリがあってもいいのに、とは感じますし、もうちょっと工夫は欲しいところです。
 
 OPムービーは1、2共に無難な出来、という感じで、キャライメージや揺れる恋心などを上手く表現できていますけど、深く印象に残るほどキャッチーでもなかったかなと。

★システム

 こちらも最低限は整っていますが、微妙と言えば微妙。
 いつもながらの前ジャンプなしも、これだけ選択肢がなければ不便には感じませんが、それだからこそ選択肢を容易に組み込めないと思えば足枷ですし、個人的にはいつもながらフォント変えさせてよ、とは思うのでこの辺はなんとも。動作自体もっさりですし、改善の余地はそろそろあると思うんですけどね。


総合(77/100)

 総プレイ時間16時間弱。共通が3時間で、個別が2,5時間ずつあるかなぁ?くらい。
 ちなみにこれ、恵梨香と六花、それに途中からは若葉ボイスはもれなくすべて聞いてこの時間なので、ある程度ボイススキップして進めていたらもっと短くなると思いますし、その辺でも値段相応とは流石に言えないなぁと感じるところです。

 そんなに悪いところが目立つ作品でもないですが、推しどころもほとんどない無色透明な作品、というイメージで、やはり上で書いたようにシナリオ面での多少の工夫、イチャラブ面、素直になれない女の子の可愛さという減点的なコンセプトに対するアプローチをもっと多角的に、深く掘り下げる努力はあって然るべきではなかったかと思います。
 尺としても絶対的に足りない、と言えますし、それこそ私みたいにCV面での満足度をたっぷり得られる、というならともかく、ただ純粋にヒロインとのイチャラブが濃密に堪能できそうなコンセプトだ、と思って飛びつくと味気なさを感じることになると思うので、あんまり積極的にはお勧めできないなぁ、という感じですね。
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2017年06月27日

天結いキャッスルマイスター

 近年冴えてなかったエウなのでどうかな?とは思いつつ、往年の名シリーズ・マイスターシリーズの正統継承作であり、体験版でどう見てもフィアゲー、と一目でわかるつくりに、フィアに一目惚れしてしまっていた私としてはもう回避不可避、というところでしたね。

シナリオ(22/30)

 世界観がそれを許すのか?

★あらすじ

 主人公は両親の思い出を持たないハーフエルフの捨て子で、ゆえに自分の力のみを当てにするしか生きる術を知らず、その為に鍛梁師という特殊な技術と能力が求められる職に就き、その腕一本で諸国を渡り歩いていました。
 今はそういう根無し草でも、いつかは自分の工房を持ちたい…………そんな想いを抱きつつやってきたインフルース王国にて、遺跡調査の仕事を請け負った主人公は、その最中に崩落事故に巻き込まれてしまいます。

 目を覚ました時、主人公は遺跡の奥深くまで転げ落ちており、そして目の前には神秘的な光景が広がっていました。
 魔力を帯びた水晶に包まれた、不思議な衣装を纏う少女がそこにはおり、導かれるようにその水晶に触れると、途端にそれは砕け散り、中から封印されていた女の子が転げ落ちてきたのです。
 
 こうして目を覚ました少女はフィアと名乗り、色々な記憶こそ失っているものの、自分は縁結びの神様だと明言します。
 そして理由は定かではないものの、この国の聖地である神響の霞廊に行かねばならない、という使命感を抱いており、その為には信仰という形で神の力を充填し、フィアの体そのものであるこの遺跡を動かさねばならないので、主人公と使徒の契約を結んで、その目的のために協力して欲しい、と口にするのです。
 あまりにいきなりな展開に半信半疑の主人公でしたが、フィアの純真さと、そしてこの城砦をそのまま工房として活用していい、という提案に魅力を感じ、一先ずはその思惑に乗って協力関係を築くことになります。

 しかし一方で、いきなり城砦が起動した事で、この城砦にまつわる過去の因縁を知るものや、戦略兵器としての有用性に目をつけたものなどの画策も水面下で始まり、それはやがて、縁結びの神様として誰かの役に立ちたい、様々な種族の壁すら超えて、広く深い絆を紡ぎたいというフィアの美しい夢を蹂躙すべく牙を剥くことになります。
 フィアとの二人三脚の日々の中でその想いに絆され、いつしか彼女を疑うことなくその夢に邁進する姿を支えようと心に誓った主人公は、志を共にする仲間を増やしながら、様々な障害を乗り越えて、本来の目的である神響の霞廊に辿り着くための、出来る限りの平和的な手段を模索していくことになるのです。

 果たして、その聖地・神響の霞廊には何が待っているのか?
 失われたフィアの過去の記憶とは、どのようなものなのか?
 彼らの純粋で高潔な志や想いは、道半ばで挫けることなく正しいまま全うすることが出来るのか?

 これは、兵器としての多大な価値を持った城砦の目覚めにより蠢き始めた人の業と対峙し、様々なイデオロギーが交錯する中で、自己の正しさを貫き歩む、王道的な愛と絆の物語です。

★テキスト

 ADVとしてのボリューム感はやや手薄な作品ですので、判断に難しさはありますが、基本的な読み口としてはシンプルで軽快で簡潔でもあり、さくさく読み進めることが出来ると思います。
 どうしても城砦の処遇を巡っての数多の思惑や業が錯綜する中で、行き過ぎたイデオロギーや情念が色濃く滲んだり、逆に太平楽に過ぎてどうなのか?って思う部分はあったりと、その辺の噛み合わせをもう少しテキスト面でも丁寧にフォロー出来ていればよかった、とは感じるのですが、骨格の部分から出来るだけブレない、キャライメージもしっかり固着させての展開、という意味では最低限の一貫性はあったかなと思います。

 でもキャライベントにしてもメインストーリーにしても、骨組みそのものは悪くなくとも肉付けや深みが足りない、と思う部分は多々ありましたので、もう少し思考の襞や精神的な部分の掘り下げはきっちりやって欲しかったですし、読み口そのものから面白味を汲み取るのはちょっと難しいかな、という感触です。
 まぁフィアがロリっ子ヒロインズとイチャイチャしている風景だけでも楽しいっちゃ楽しいのですが(笑)、結局シナリオ面でも触れますけど、こういう平和な雰囲気を一貫する事がこの世界観で説得性を持つのか?というのは、エウの物語が一貫した世界観を踏襲していることを考えると…………というのは出てくると思いますね。

★ルート構成

 今回はメインヒロインが明確にフィア一人に固定されていて、その為に物語の分岐も少なく、概ねが一本道的な様相を呈しています。
 一応道中の選択や、キャラ育成のやり方などで、ある程度の差異や、最悪の場合のバッド的な分岐もありますが、正直この城砦に蔓延る空気感をプレイヤーが汲み取って選択していく限り、まず一周目は正道のエンディングに辿り着くのではないかと感じます。

 本当にバッド分岐の為の方法論というか、選択肢の蓄積の必要性は逆に超難易度が高いなぁ、という感じで、普通ならそんな選択するわけないじゃん、ってのをほぼ全て網羅しないと分岐しないっぽいのですよね。
 なので正直、そのルートに至る為の必然性がかなり薄く感じるところではありますし、当然ながらかなり悲惨な終わり方にはなりますので、敢えて見ずとも、と思わなくはないです。
 今回は凌辱的なシーンも一切なく、バッドで回収できるのってその切ないイベントとCG絡みくらい、そこでしか見られないキャライベントやシーンなども特にないと思うので、あくまでおまけ程度と思っていればいいと感じます。
 なので正直そのあたりの作り込みは稚拙だと思いますし、もう少し色々と混濁した展開なども含めて、あからさまに操り人形なのが丸見えな構図ではなく、工夫や奥行きは欲しかったですね。

 二周目以降はアペンドやEXイベントにも進むことが出来ますが、個人的に時間と気力がなくてアペンドしかやってません。。。一応EXにも結構なCGとシーンが振り分けられているようですが、本筋の大勢とは関連性は薄そうだったので、一先ずスルーする事にしました。というか神採りの時もEXスルーしてたなぁ私。

★シナリオ

 フィアが縁結びの神様、という立場で、分け隔てなく仲良くしよー!という心情の持ち主である限り、出来るだけその大方針に沿った形で物語を進めていこう、という想いの部分には特に問題はないと思います。
 ただ、城砦という存在が、ただそこにあるだけで世界の危機、或いは欲深い人間達の業を満たす好機となり得る状況下で、かつエウの共通した戦乱の気風が残る世界観で、その善なる思想をそのまま投影して、それが完全に近い形で全うできる物語を紡ぐ、というのは、それ相応に必然性や説得性がないと難しいものだと私は思います。

 この辺神のラプソディでも同じような言及をしたかもですが、けっきょくのところエウの世界観において、正しさ・光一辺倒で、何の犠牲も出ない予定調和のハッピーエンドを紡ぐのは、どうしても違和感が付き纏うんですよね。
 勿論それが悪いとは言いませんし、私自身そういう性善説信者ではあるので嫌いでもないんですけど、どうしてもSRPGとしての側面を強く持ち、その分ADV要素が緩めの中で、その結末がきちんと数多の危機を理知的に、信念をもって乗り越えてきたが故のものか、と、それだけの納得を呼び起こす下支えを紡げているかと言うと、やっぱり今回も色々と足りない、と言わざるを得ません。

 基本的にフィアは底抜けのお人好しですし、主人公もそれに染まって警戒心を大分薄口にした思想性を持っていて、でもそれって本格的に悪者側が付け入ろうとすればいくらでも、というのは目に見えて沢山あるのですよね。
 結果的にどれもが克服できた、という部分はあれど、それはむしろ悪の側の手段がいかにも拙劣で首尾一貫していなかった、或いは政治的綱引きで自由に行動できなかった、という点に大きく助けられており、それならそれで、悪の側がどうしてそういう手段しか取りようがなかったのか、という点をもっとしっかり書き込まないといけないだろうと感じます。

 結局のところ、こういう性善説的なストーリーの骨組みと、社会的存在のイデオロギーの対立の中で、その清濁が混ざり合うことなく綺麗なままで全うできる、というのは食べ合わせの悪い要素ではあるなぁと。
 神採りの時はそのイデオロギー面のスケールが小さめで、かつヒロイン三人ごとに別々の、ヒロイン自身の問題と隣接したストーリーを展開していたので、その枠組みの中でなら彼らなりの正義を全うする事にそこまで違和感もなかったし、個々のヒロインに傾倒する事でその状況が発生する必然性や、克服に至る経緯に関してもそれなりの説得性がありました。

 でもこの話は、畢竟裏で糸を引く存在の思惑の綱引きの中で、不自然に彼らの存在が認められていた、というイメージはどうしても強く持ってしまうし、最終局面においても、その元となる問題を打破するために彼らに全てを託す、という在り方を軽々に選択していいのか、実際それは世界の危機を間近にもたらしたわけで、どうにもその辺はご都合主義が過ぎるというか、軽薄に過ぎるというか。
 我欲を貫く、という視座でも結構主人公達は無茶してるのは確かですし、そこに希望を見出すほどの信頼関係や正当性を見出すのは中々難解で、そのあたりテキストでも触れたように、諸々肉付けや掘り下げが足りない、という点にも繋がってきますね。

 無論結末としての美しさや、その後の幸せな風景に関しての文句はないのですが、そこに至るまでに苦労や研鑽を重ねて、意思を磨いてそうなった、という感情面での納得も薄いですし、むしろその辺はプレイヤー自身のゲームシステムに対する努力を反映させて補完する、という感も強く、単純にシナリオ、としては奥深さは足りなかったと思います。
 少なくとも世界観の必然イメージからすれば、正義を全うする意思はあれども、どうしてもその中で一定の頓挫はあって、それでも…………と痛みを堪えて歯を食いしばって前に進むようななにかがないと、どうしても予定調和的な画一的展開でハラハラ感が足りなくなるなぁと思いますし、その予定調和を貫きたいならより多角的な肉付け、想いの掘り下げの蓄積による必然を確固たるものにしないといけないでしょう。

 またルート構成でも触れたように、バッド分岐の選択肢のあからさまさというか、どう考えてもそんなリスキーな事しなくない?って方にわざわざ能天気に足を踏み込み続けないといけない、っていうのも不自然でしたよね。
 明らかに主人公達の道は危うい綱渡りですので、一歩踏み間違えれば、というルートが存在するのはむしろ当然に感じるところなのですが、ここまで極力セーフティがかかっていて、その上での悲嘆の方向性もあくまで純粋な部分にのみ傷をつけている、そのあたりのつくりも日和っているというか、らしくないなぁとは思うところで。
 別に敢えて辱い展開を入れろ、とまでは言いませんが、選択の積み重ねや必然の流れの中でそれがもたらされるのであれば、この世界観ならそれを内包する素地はあるわけで、それを敢えて削った結果として全体のシーン数も少なめ、って事になってるのは勿体ない気はします。

 総合的に見て、実に王道的なつくりで決して悪くはないのですが、こういうのはADV専任でもっとじっくり多角的に掘り下げられる環境がある中で紡ぐべき物語だよね、って結論になりますでしょうか。
 そういう意味では過去のマイスターシリーズが持っていたシナリオ面でのバランスの良さや魅力、善悪どちらに転ぶかわからない危うさや、個々人や仲間の思惑のみで充分に貫ける範疇での正義のありようなどが、イデオロギーの肥大化に対して噛み合わなかった、減衰してしまっていた、と言えるかもしれません。

 千桃の時にも触れましたけど、途中からこれは予定調和的に身内の犠牲なしで進めるんだなー、って看取出来てしまうのは、やはりどうしても熱狂的なのめり込みを阻害する要素になりますし、かつ今回の場合バッドに進めば絶対にそこは揺るがないんだろうなー、ってのがあからさまに過ぎて、零か百か、っていう二極的なありようが余りにも露骨すぎたろうと。
 その辺もう少し中庸的な内容の方が噛み合う部分は多い内容、骨子ですし、どちらにせよ先が読めない、っていうドキドキ感を紡がせてくれない構成はなぁ、と。そりゃまともな純愛ゲーでいきなり辱ったりボアしたりしたら避難囂々かもですけど、仮にもエウでしょう、そこを独自の魅力として攻めなくてどうする!って、そろそろ古参ファンの域に入ってきた私からすると思わざるを得なかったというか、色々もどかしかったですね。
 シナリオ点としては8.5/15で採点しています。

★ゲームシステム

 こちらは全体的に良好で、マイスターシリーズのいい部分を受け継ぎつつ、新たな要素もそこそこに加わっていて、こちらの面で随分と熱中して楽しめたのが大きな救いではあります。

 いつもながらにシンプルなバトルシステムで、しっかり装備や武器の付け替え、相性などを吟味して論理的に状況に当たればいい、という部分はそのままに、今回は少しお手軽感を増すためのひとつ巻き戻しシステムが搭載されていたのが、ゲーム性での難易度を下げてくれていたと思います。
 大概マップの隠された部分に突っ込んでみたはいいけど、強敵がうじゃうじゃいてうぎゃー!ってのは誰もが経験するところでしょうし、そこをセーブロードなくトライアンドエラーできる仕組みがあるのは楽ちんでした。あと地味に、攻撃に当たる順番変えてみるだけで、敵のスキルの発動タイミングが違ってきたりとか、その辺でもこちらが取れる手段に多様性が出ていたと思いますね。
 個人的にフィアの結騎砲台的な活用が一番楽しかったし便利だったなぁと。

 採取や工房機能に関しても、元々のシステムから大きくは逸脱せず、けれど新味も加わっていて面白かったと思います。
 専用の装飾がない内は素材集めも中々大変、特に特定の敵しか落とさないアイテムとかは中々苦労が大きいですが、それだけに敢えて作り込むことに愉しみはありますし、またそれを蓄積する事が女神力の向上にも一役買う、という連関性がはっきりしているのがいいところですね。
 武器や防具の強化機能などもやり甲斐がありましたし、基本的に多少基礎性能が弱い武器でも、属性の相性次第で使う余地は充分に有る、というつくりなので、序盤の武器防具を育てても無駄、ということはさほどないのがやり込み派としてはありがたかったです。

 フリーマップ開拓なども、神ラブの時の無意味な自然破壊とは違って(笑)、土地の活性化と信仰のシンボルの復活、という一貫した理念が、そのまま女神力の増加に結び付く仕組みなので、そこまでマップ開拓に厄介さ、面倒さを感じずに済むのは良かったと思います。
 ただし序盤は、女神ランクが上がらないと先に進めない、という条件の中で、ランクアップに必要なポイント獲得のための幅が結構シビア、というのもあるので、最序盤からの自由度はそんなに高くなく、大体六章位から加速度的に自由度が増していくイメージでしょうか。

 その他城砦の建物建築や、結騎育成など、やるべきことは本当に多岐にわたっていて、どれもがやり込むことでしっかり実際の戦闘展開に意味を持ってくるので、オラオラプレイが好きな私としては楽しかったですねー。
 防衛戦などは本来、特殊な防衛装置を駆使して凌ぐのが醍醐味なんでしょうけど、正直味方を強化し過ぎて大概それがなくても押し切れてしまったのはご愛嬌ですけど。。。

 強いて気になったのは、まずやっぱりドロップ率の低さかなぁと。
 ひとつの敵が大体五種類くらいドロップ持ってて、ただでさえ確率20%なのに、その敵しか落とさない、なんてのもザラで、その為だけに幾度も遭遇戦繰り返すのは中々に辛いです。まあこの辺は、二周目にフールティアスや占いの館、或いはアペンドがあればヴァレフォルありき、のシステムなんだとわかってはいても、ついついこの時点で達成が可能なら!と意地を張って頑張っちゃうのが私の最大の悪癖なのですよね。。。

 あとアレだ、城砦マップの固定セーブが可能なら、出撃キャラ固定セーブも作って欲しかったなぁと。
 上で触れたように採取&ドロップの為だけの出撃を繰り返す時に、わざわざ出撃キャラを一々設定し直すのとか面倒でしたし、捕獲メインの時に装飾を切り替えるのも鬱陶しかったので、採取用出撃、捕獲用出撃、って最初から振り分けるシステムがあればなお良かったと思います。

 でも総じてゲームシステム面では不満はなかったですし、マイスターシリーズらしいやり込み度の高さで大変に楽しめました。この点は13,5/15点で採点しています。

★シナリオ総括

 シナリオそのものは薄っぺらくご都合主義ですけど、キャラの魅力とゲーム性の深みで最後まで牽引してくれる作品、というのが妥当な評価ではないでしょうか。
 プレイ時間からして相当なので贅沢な話ではありますが、もう少し全体的にメインのシナリオの作り込みの深さ、キャライベントの蓄積が欲しいなと思わせる内容でしたし、それでもフィアが大好きー、ってなればそんなに気にならないでしょうが、そうでないとなるとシナリオ面では中々オイオイ、って事にはなりかねないかなと思います。
 

キャラ(20/20)

★全体評価

 まぁ正直に言えば、キャラの掘り下げは絶対的に足りません。
 味方の側はみんなフィアに感化されたのかやたらと太平楽で、もう少しまともな軍師役がいてもなぁ、と思う向きは強かったですし、敵役もその想いの深浅に触れる要素はあまりなく、ただ表層的な対立関係の中でしっかり向き合う余地は少なくて、そのくせ台詞的には一々フィアが、ちゃんと言葉と想いを通じさせて云々言うから片腹痛いわー、ってのは多々ありました。

 んでもまぁ、そういうマイナス面を差し引いても全体的な雰囲気、ヒロイン達の愛らしさは中々のものでしたし、フィアも期待通りには可愛かったので、色々相殺してギリギリマイナス点組み込まなくてもいいかな、くらいの感覚ですね。

★No,1!イチオシ!

 まぁなんだかんだで最終的にはフィア、ですけどね。
 ただ基本的にこの子自身のイベントは結構序盤で終わってしまって、その後新規加入メンバーの、ってパターンになるのでちょっと愛着に波があるし、メインとしてならもう少しイベントにぶ厚さは欲しかったとは思います。
 でも根本的に善良で快活で真っ直ぐひたむきで、ちょっとお茶目やら過ぎるところはあるけれど非常に支えてあげたい!という想いを呼び起こす親身な神様で、一目惚れしただけの可愛さは見せてくれたと思いますねー。

 それだけにあのバッド派生はぐぬぅ、って感じではありましたが、それはそれでフィアらしさが貫かれていたとは思うので、結局徹頭徹尾フィアゲー、という当初の感覚を裏切らないだけのものはあった、と言えるでしょう。
 CV的にも絶妙なウザ可愛さと、時折見せるシリアス差とのギャップの使い分けが見事でしたし、本当にキャライメージにマッチしていて良かったですね。

★NO,2〜

 好きな子は結構多いというか、基本ヒロインズみんな好きなんですけど、敢えて次点を選べ、というならロズリーヌかなぁと。
 この子はかなり悲嘆の境遇にある中で、少しずつ生を謳歌する喜びを回復していく、その中での老成した部分と愛らしい部分のギャップが凄く良かったですし、主人公に対する慕情も一番理由づけがはっきりしていて真っ直ぐ綺麗な感じで、見た目の儚さも超好みでしたし良かったです。

 ミケユ&イオルコンビも非常に二人揃ってのバランス感に加え、日々の癒し力なども含めて活躍していましたし、カトリトも引っ込み思案な中での頑張り屋な面がいじらしく、リシュなども押しが強いようでしっかり乙女の部分があったり、それぞれに魅力があったなと思います。
 まあミクシュアナだけはキャライメージと、それを投影するタイミングが噛み合っていなくて微妙だったなってのはあるのですけど、総じて文句はないですね。

 敵役に関してはどうしても仰々しさの割に弱っちかったり、策略的にも甘さが目立っていてどうなの?と思ったり、もう少しその辺はいやらしさを強くしても良かったと思いますけどね。
 無論雰囲気や喋り的にはイラっとするところも多かったですけど、やっていること自体は拙劣なのがアンバランスでしたし、この辺は難しいですねぇ。


CG(18/20)

★全体評価

 これを書くにあたって、過去のマイスターシリーズの情報なんかも見てきたんですけど、当時に比べるとキャラデザインとかはキャッチーさ、可愛らしさが随分と強くなってるなぁ、って思いますね。
 無論それはそれでいい味を出していますし、特に今回のキャラ設定の中では嵌っていたと思いますが、それも大方針の一環というか、重い部分を削る中での見せ方の返還が土台にあるとしたら善し悪しだなぁ、とは思います。

 どうあれ質・量ともに充分な出来ではあり、ぶっちゃけ全て見切れていないのでその辺どう評価に組み込むか、ってのはあるのですけど、特別これは凄い!ってほど傾倒する絵の魅力、ってほどでは流石にないので、このあたりが妥当な所かなと思います。

★立ち絵

 ADV要素としては軽めなので、ポーズや服飾、表情差分なども総じて少なめなのはどうしようもないですね。
 その中でも個々の個性はそれなりに出ていて可愛らしいですし、衣装も独特な工夫がそこかしこに見られて良かったとは思います。なんといってもあのフィアの横肌丸出し衣装は考えた人天才じゃん(笑)。パッケ絵で肌色の部分を一直線に点に伸ばしている、あの構図も凄くインパクトありましたし、この辺はアイデアの勝利ですね。
 表情差分的にもフィアの喜怒哀楽の幅の広さは楽しかったですし、そのあたりは流石にメインとして優遇されてるなって思いました。パッチでパジャマ立ち絵搭載されたのもグッド。

★1枚絵

 アペンド込みで全部で162枚と、中々のボリューム感です。
 ただ結構構図的には似通った絵を背景だけ使いまわして、とか言うのも多かったですし、戦闘なども迫力は出ていて良かったですが、これは素晴らしい、とまで言い切れるほどの突き詰めた感じはなくて、ヒロインズも可愛いけどまぁ、って水準でとどまっているのは惜しいところですかね。

 基本的にはフィア絡みが当然多いですし、どれもその感情の発露をしっかり捉えていて可愛いなって思います。
 それ以外でも総じて出来はいいですが、特に、と書き足すほどのものはなかったのでちょっとサラリと終わります。


BGM(18/20)

★全体評価

 いかにもエウらしい荘厳さや悠久の気配、切迫感や神秘性が色濃く出た楽曲であり、今回も総じていい出来、聴き応えがあったと思います。

★ボーカル曲

 全部で2曲ですね。
 OPの『infinite knots』は、とても情緒と奥行きのある中々にいい曲ですね。
 特にAメロとBメロの、手に手を取って進んでいくという雰囲気がすごく好きで、逆にサビはやや全体の統一感、広がりで単一的に加速している感じでそこまででもないですが、総合的にかなり好きですね。

 EDの『all my relations』は、ED次第で2パターンに分かれて、その中で後ろのイントロや歌詞などが少しずつ違っていたりと、これは面白い試みだなぁと思います。
 曲としても悠久の広がりや時の中に眠る哀しみを上手く連想させつつ、そのルート毎の終わり方に合わせた雰囲気をより強く出していて悪くないですし、曲そのものとしてもOPより完成度自体は高いなって思います。好き嫌いで言えばOPの方が好きですけどね。

★BGM

 全部で33曲、アレンジなどもありますがほぼ水準はクリアしていると言えるでしょう。
 内容もいつも通りの日常曲、フィールド曲、戦闘曲などバランスが取れた構成で、それぞれに奥行きと雰囲気の良さがあり、いい仕上がりだなぁと思いますね。

 特にお気に入りは2曲。
 『現に輝いて』はタイトル曲でもあり、OP曲のアレンジでもありますが、このメロディラインはこういう音でしんみり表現した方が確実に良さを感じますね。オーケストラ的な荘厳感も含めてすごく気に入ってます。
 『迫られる決断』は、バトルシーンが佳境に入った時の曲ですが、この切迫感と疾走感がすごくいい味を出していますし、中盤からのピアノイントロメインになったところでの美しさが物凄く気に入っていますね。

 その他お気に入りは、『大地を駆ける城砦』『ひとりひとりと繋がる縁』『悲しみの雨』『守るべきものへの誓い』『恐るべき重圧は目の前に』『求めた真意』『遥か北の地を目指して』『木漏れ日に包まれて』『忘れられた古跡』『荒廃した古の大地』『聖地に眠る真実』『烈しい一戦』『負けられない戦い』あたりですね。


★システム(9/10)

★演出

 基本的にADV部分での演出はほぼ目立ったものはないですが、それなりにぴょこぴょこは動くし、要所での情感はしっかり引き出せているので悪くはないでしょう。
 バトル系の演出も恒例の味わいで新味こそないですが、まあこれがやはり慣れているので楽しく見える、というのはありますね。

 OPムービーは非常にゲームの本質を上手く掬っているというか、しっかりフィアゲーらしい雰囲気と絆の暖かみが投影されていてかなり好きです。

★システム

 概ねは基本的なものは揃っていますし、サイドバー搭載になってそのあたりの利便性も上がっているので、特に不便を感じるところはなかったです。
 こういうゲーム性が強い作品である限りジャンプ系統が搭載できないのは仕方ないですし、やや癖のあるシステムではありますがいつもこうなのでその辺は慣れ、ですかね。


総合(87/100)

 総プレイ時間は85時間。まぁ正直私が時間かけ過ぎなのは間違いないですが、無謀なことに拘泥せずシンプルに進めていったとしても、一周目で50時間はくだらないでしょうか。その辺のボリューム感に関しては流石のマイスターシリーズですし、そのやり込みにもそこまで飽きを感じさせず熱中させてくれる深みはあったので、近年のエウ作品の中では極めてまともだったと言えます。

 まぁ色々シナリオのバランスや作り込みなどに文句をつけたい部分はありますが、ゲームとしては本当に楽しめましたし、キャラもロリ寄りで私好みだったので良かったですね。まぁここまで時間食うとは思ってなかったのが嬉しい誤算と言えばそうなんですけど。

 過去のマイスターシリーズよりは難易度も低いかな、と思いますし、エウの作品がはじめて、という人でもそこまで敷居は高くないでしょう。
 流石に神採りのバランスの良さに比べると劣るところは多いですが、最近のエウとしては頑張っているし普通に面白い、と思えるので、フィアが好きになれそうで、時間に余裕がある人になら充分おススメできる作品ですね。
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