2017年04月25日

こいのす☆イチャコライズ

 コンセプト的にはイチャエロ特化の実用寄り作品ではあると思ったので、体験版のボーイミーツガールの雰囲気は良かったもののその先に私なりに楽しめる要素がどのくらいあるかな?と懸念しつつ、それでも三者三様のキャラの魅力に抗えずにこっそり購入。

シナリオ(22/30)

 イチャラブの極北を求めて。

★あらすじ(というか概要)

 普段はここで共通の流れを書くわけですが、この作品にはズバリ共通ルートと呼ばれる展開そのものがありません。
 スタートからヒロインを一人選択し、その子との運命的な出会い、若しくは再会から物語が綴られはじめて、そこから多少の紆余曲折を孕みつつも順当に想いを寄せ合い、恋人になって、一人暮らしの主人公の部屋で愛の巣ならぬ恋の巣を形成して存分にいちゃつきまくる、という、コンセプト通りの流れになっています。

 この時点でひとつ補足的に触れておくとすれば、舞台設定こそ共有のものを使用していますが、基本的にそれぞれのルートの主人公は別人と考えた方がいいです。
 恋愛をする時期やそこに至るまでの生き方もそれぞれでガラッと違いますし、そのバックボーンが織りなす思想性も、それなりの共通項は有れど本質的な所ではかなり乖離しています。
 それに舞台設定にしても、例えば防音性ひとつ取っても世界観を共有させる擦り合わせを必要としてない感じで、それこそ並行世界、別の世界線の話ですよーと割り切って解釈してしまった方が気楽に楽しめると思います。

 そもそも最近では珍しい方の、主人公の名前が変更できるタイプの作品でもあり、ラブリケシリーズみたいに愛称で呼んでくれるーとかそういう特典性は特にないものの、主人公に対する自己投影性を極限まで高める仕様であることは間違いないと思います。
 シナリオ自体もライターがルートひとつずつ丸々担当、という割り振りですし、その世界観の癖も含めて別質の、けれど上質のイチャラブ模様を提供してくれるお話、という事です。

★テキスト

 なのでテキスト面でもそれぞれのルートでかなり雰囲気が違います。
 基本的に明るく楽しく、後ろ向きな部分のない軽妙なノリ、という部分は同一性がありますが、ちょっとした思想の襞やバックボーン、行間に滲む情緒などは完全にライターの個性が反映されている感じです。
 かつそれぞれの主人公も、当座のヒロインとの親和性を重視してカスタムされている感はあるので、それぞれに一定の面白さを見出しつつ、どの塩梅が自分にとって一番しっくりくるか、という点で、ヒロインの好き度合いと比較的リンクしてくるテキスト感ではないかと。

 当然こういうエロス特化の話ではあるので、その方向性の掘り下げも深浅の差異はあれ充実していて、かつイチャラブ、きゃいきゃいと日常を楽しむシチュエーションと会話のバリエーションに関してもよく練り込まれているので、単調にならずに最後までウキウキと楽しめる、総合的に見ても味わい深く楽しい読み口ではあったと思います。
 その上での個人的嗜好では、いちかルートの文章が一番楽しめたかなと感じます。

★ルート構成

 個々のルート内においては、結構頻繁に選択肢が登場します。
 概ねそれは性的嗜好や暴力性、変態性を肯定的に受け止めて暴走するか、それとも相手に配慮して控えめに留めるか程度の匙加減ですが、一応その蓄積によって最終的に純愛モードと愛欲爛れモードに変化し、一部シーンの内容が変わったりします。

 ただネガティヴな要素はほぼなく、選択肢のミスで付き合えなかったりとか、或いは終わり方が後味悪い、なんてことは決してなく、あくまでも土台のコンセプトを遵守する範疇での味付け程度と考えていいでしょう。
 まあシナリオで後述するように、一部その枠組みの画一性を逸脱しているシナリオもあったりはしますが、概ねは仲をどんどん深めて、いよいよ本格的に将来を視野に入れて家族に挨拶しよう、的なラストの展開の中で、胸を張っていられるか、多少の後ろめたさを残すかくらいの差なので、基本的には深く考えず、自分の思うままに選択していっても特に問題はないでしょう。

 ただシステム的な要因で、周回プレイがややめんどくさいので、きっちり全イベント回収したいなら比較的紳士的な選択肢と、変態的な選択肢のどちらかを選び続ける×2というやり方が無難なのかなとは思います。
 まあいざとなればフルコンプボタンがあるので回収そのものは容易いのですが、イチャラブからシームレスにえっちに雪崩れ込む空気感とか機微が非常に楽しい作品ですので、なるたけ自力で、流れの中で楽しむ方が良いとは思いますね。

★シナリオ

 本当にただただひたすらイチャエロしてるだけ、って印象は一番強くなる作品ですので、いざシナリオとしてどうか、と書こうと思うと中々に難しさはありますね。勿論すごく楽しかったのですけど、じゃあ具体的にどういう部分が、とか、統合的に見ての評価とか、その辺どうひねり出していいものか、と。

 とりあえずステータス面として、一応ヒロインは三人いるけれど全員年下設定、というのは個人的にはブラスのファクターであり、三者三様の純粋さや年頃ならではの好奇心、恋愛に耽溺していく様と、その中で見せる個性の愛らしさには本当に満足しています。
 ただ細かく見ていくと、そのイチャラブの質という点でそれぞれに少しずつベクトルの違う味付けが為されていて、そこでプレイヤーのより精緻な趣味嗜好の質が暴かれるという感じはありますね。

 私の解釈としては、単純な身体的成熟度ではいちか>なつめ>サチという並びですが、性的情念に対する精神的な成熟度はそれと反比例していて、それがイチャエロの深浅にもそのまま反映されていると感じます。

 いちかが一番性的な面ではノーマルかつ初心で、主人公もその精神的な成熟を無理に引き上げないよう大切に育てている、という感じでの触れ合いの進歩が印象的であり、勿論最終的にはエッチにも積極的な子になりはしますが、そこでも本来の気質である甲斐甲斐しさや母性の面を強く反映した情景になっています。

 なつめはいちかよりは耳年増で、エッチな事にも興味津々ではあるけれど、それは純粋な未知に対する好奇心であって、変態的な行為そのものに極端に傾倒するほどのバランスではありません。
 なのでこのルートは、なんとなくエッチのステップアップをレクリエーション的に楽しむ風潮が強く出ていて、その未知のワクワクを共有し、共鳴させることで互いの興奮をも高め合う、というイメージが強いですね。

 そしてサチが、見た目や序盤の雰囲気に反して一番変態的であり、主人公の造形もそこに親和するように特化されているので、とにかく一度箍が外れればとことんまで互いの変態性を絞り尽くすような濃厚なプレイが増えていきます。
 どこまで変態なお互いを許し合えるか、という部分が繋がりの鍵になっているのもあり、そうする事が二人にとっての必然、という色合いはしっかり担保しつつなので、その流れ自体に違和感はないですが、やはりキャラ性の面で、ビフォーアフターでガラッと一番大きく印象が変わるのはサチになると思います。

 そういう下敷きを踏まえた上で、ルート構成で書いたように一応個別内での結末分岐が用意されているのですが、どちらを取ってもさほど差異の少ないいちかとなつめに対して、サチシナリオだけがやや異端性を孕んでいます。
 それこそ普通のADVにおけるシナリオ要素、シリアス要素が隠されており、それ自体が目新しいものではないものの、他二人のルートの淡泊さに比べると非常にギャップが大きいです。
 なので、サチを最初にやると、他ルートにもこういう要素が?と期待して肩透かしになりかねず、逆にサチを最後にするとなんでここにきてそんなシリアス?と違和感を感じる要素になるので、ことこの作品に関しては、シリアス面でのシナリオの盛り上がりのプラス面より、全体の統一性、イメージを毀損しているマイナス面の方が大きいかも、とはちょっと思いました。

 ただでさえサチルートは、中盤以降の箍を外してのエッチぶりがいい意味で圧巻、悪い意味でねちっこくしつこすぎるきらいはあり、その上でシリアス投入でさらに長くなる、という点でもバランスブレイカーではあると言えます。
 かつ面白いのは、他ルートが無難に紳士的選択の蓄積で最上のハッピーエンド、という感じなのに、こちらはあくまでも二人の個性を尊重し、変態性を突き詰めていった先にこそ、どんな妨害にも負けない確固たる二人の絆、信念が生まれるというありように寄せているところです。
 その隠しシリアスをスルーしても、一応最終的な着地点に変化はないのですが、それを知った上でもなおああまで頑張れる、という在り方で、二人のどこか社会的な協調や常識をかなぐり捨てた恋の巣作りに説得性を与える役割は果たしているので、その点で一貫しているのは評価していいと思います。

 まあそれでも、個人的にはサチルートはやりすぎだったなぁとは思っています。
 このゲームを買っている時点でどういう文句をつけられる筋合いではないのかもですが、やっぱりどうも私は一線を踏み越えてお下劣な方向にまで突き抜けてしまうHシーンってそこまで好みじゃないなぁ、とここで再認識させられたのもあります。
 正直体験版範疇の付き合うまでと、そこからはじめてを致すまでの遅々とした流れと心情の変遷は一番楽しい、と思えるくらいだったんですが、中盤以降の開き直って変態性を解放してのイチャエロには正直ついていけず、キャライメージの崩壊と相俟って楽しみ切れなかった、というのも、このルートの異端性に積極的にプラス評価を付与できない一因になっているので、もうこの辺は好き嫌いの問題だと思いますね。

 その点で総合してみると、シナリオ評価としてはいちか>なつめ>サチになるのかなと思います。
 上二人はシーンでの行き過ぎ感はなくって、かつシナリオも平板でひたすらにイチャラブしていて羨ましいぞ!って程度の話ではありますが、ありようとして自身にほとんど変態性は持たず、けど主人公が求めるならなんでも優しく受け入れてくれるいちかの献身さと包容力により強く惹かれたので、それがそのまま評価に直結している、というところですね。

 ただ基本的に私はこの手のイチャラブ特化型の作風には高い評価をつけないクチですが、今作はコンセプトとして一人暮らしのところにヒロインが押しかけてきて愛の巣をつくる、というところがいい味を出していました。
 二人きりのシチュでも、最低限のデートやらはするけれど基本はまったり日常の何気ない風景を二人で見つめて楽しんで、そこでたわいない会話を楽しみつつ雰囲気が転がっていけばシームレスにエッチ、という状況の組み立てが素敵で、かつバリエーションを多彩に用意して飽きさせないつくりに仕上げられたのが勝因だと思います。
 加えて秘めくりモードやDLCなどで、継続的にこのうらやまけしからん世界観に没入し続けられる仕組みを担保してくれていますし、その将来的な部分も含めたサービス性もコミコミでこれくらいの評価はしてもいいかな、と考えました。かえすがえす、サチがもう少し好みにマッチした穏当なものであれば更に上乗せも有り得たのですけどね、ぐぬぬ。


キャラ(20/20)

★全体評価

 まあ基本的に善性に満ちた世界観ですし、有無を言わさずとにかくヒロインの可愛さをしゃぶりつくしやがれー、って感じの怒涛のイチャラブシチュが満載にも程があるわけで、元々の造形も凄く可愛く作られていますしキャラ面でマイナスに感じる要素は本当に少ないとは思いますね。
 純粋にそれを人間的に、と評していいのかは迷うにせよ、二人の生活の中で恋人としてのスキルアップ、意識改革の面もしっかり備えていますし、その点で充分過ぎる魅力を備えていたと言えるかなと。

★NO,1!イチオシ!

 最終的にいちかになりましたね。全員極めて好きなので、かなり高いレベルでの差異ですが、それでもこの子の個性が一番私の感性にフィットしました。
 どこか箱入りの危うさはありつつ、基本的に健全に育ってきたのが伺える真っ直ぐで純真な精神性には眩しさがありますし、それでいてプチ反抗期的な部分も含めて悪徳に対する興味、ノリの良さも兼ね備えていて、とにかく朗らかに色んな価値観を柔軟に受け止め、試して楽しむという姿勢が一貫していたのが良かったと感じます。
 特に主人公とセットでの口癖、「それなー」って言い合ってクスクスしてるシーンとかめっちゃこの子っぽくて可愛いなーと思って見てました。

 元々のステータス的にも一番良妻賢母的なイメージとして完成していて、その上で恋愛面での情緒を深めていく中での献身性、母性を強く引き出しつつ、性的な面でもバランス良く愛らしく育ってくれたなと。
 元々の気質からすると、強く押せばどこまでも許してしまいそうな面もあるのですが、基本的に芯は強いし、主人公もまたそういう気質を愛でて大切に育てる意識が強く、一歩先で手を携え、追いついてくるのを待つという風情があって、そのおかげで無理なく綺麗にほころび、満載に咲き誇ったイメージが、最後の桜のシーンと二重写しになりますね。

★NO,2〜

 なつめも非常に可愛かったです。
 一番主人公との友人的な距離感があって、その屈託のなさと生来の気質としての意地っ張りが程よくバランスが取れていて、恋愛面でもその後のイチャエロ面でも丁度いい味付けになっていたなと感じます。
 基本的にいい子ですし、前向きで失敗にもめげずに頑張れるひたむきさは素敵だったなと思いますし、からかわれてあわあわしてたり、プリプリしてるのが本当に面白く可愛かったですね。

 サチは見た目は当然一番好みなんですが、やっぱりシナリオ後半の変態性が炸裂していく中での「お?お〜、お〜…………」的なテンションの下がり方というか、もにょり感がなんとも噛み合いませんでしたねぇ。
 ただキャラ造形として、そういう子になった理由づけは非常に説得的で、かついかにもその生育環境ならありそうな話で、それを決して否定せずに同じ目線で受け止めたからこそ心を開いてくれた、という視座で見れば、実に一途で潔癖で可愛らしいとも言えますし、実際付き合いだすまでの雰囲気は最高に良かったんですよねー。
 
 こういう見た目清楚で大人しく甲斐甲斐しい子が、一皮剥けばド変態のエロエロで、下品に過ぎる卑語や喘ぎを臆面もなく放って爛れていく様が好みだ、ってならドストライクですが、私はなんだかんだこうめんどくさいというか、ピュアな子は最後までその純真さの一線を守って欲しいなと考えるタイプの拗らせた人なので(笑)、あそこまで壊れ切ってしまうのはやっばり釈然としなかったですね。


CG(18/20)

★全体評価

 基本的に可愛らしく活発な雰囲気があって、それでいてしっかり仄かなエロスも備え、程よく肉感的でもあって、バランスのいい仕上がりだと思います。
 量的にも方向性としてバランスのちぐはぐさはあれ中々のものですし、コロコロ変わる立ち絵を眺めているだけでも幸せになれるだけの威力はあったなと思いますね。

★立ち絵

 ポーズは素体自体が3種類に腕差分が2〜3個ずつあるという感じで、立ち絵あるの三人だけなのでその点でポリューミーとまではいかないにせよ、ちゃんと個性は反映していて仕草のちょっとした違いに性格が出ていて可愛いなぁ、という感じです。
 お気に入りはまあ基本全部可愛いかなここに関しては。

 服飾もそれぞれに多彩なバリエーションがあって裸を抜きにしても8〜9種類、私服にも種類があったりして折々の雰囲気が楽しめますし、どれもそれぞれの気質に合った衣装ですごく似合っていて良かったです。
 お気に入りはいちか下着、裸Yシャツ、ジャンパースカート、制服、コート、パジャマ、メイド服、なつめ下着、私服、ジャージ、制服、寝間着、水着、サチ下着、裸Yシャツ、私服、ホットパンツ、制服、寝間着、水着あたりですね。
 この辺立ち絵回想があるので楽なんですが、髪型の変化をどうやって反映させたらいいのかわからん。サチなどは寝間着の髪下ろしが一番好きなんですけどね。

 表情差分も素材自体は極端に多くはないけど、赤面度合いなどとの組み合わせで多彩にはなっているし、遊びもありつつ個々の特性がしっかり生きていて可愛いと思います。
 基本的にどれも素晴らしく可愛いので一々拾い切れないのですが、特にとなるといちかの困り笑顔やドヤ顔、なつめのギャグ怒りにサチの拗ね顔あたりが印象的ですね。

★1枚絵

 通常が97枚にSDが18枚で、計115枚とかなりのボリュームですね。
 シーン数に合わせてこちらも膨大な素材になりますし、ヒロイン3人という中でそこまで構図にマンネリ感を出さずにこの数を出してきたのは素直にすごいと思いますし、出来も安定していいのでこの点は期待以上だったと思いますね。

 特にお気に入りは3枚。
 1枚目はいちかスカートめくり、まあ黒ストが好きなだけだろ、と言われればそうなのですが、このむっちりしたお尻の質感と悪戯の背徳感、ときめきのセット感が素敵でした。
 2枚目はサチはじめての正常位、まだこの辺まではバランスのいい恥じらいと華奢なボディラインの楚々とした美しさが揃っていて素敵でしたがねぇ、という感じ。
 3枚目はサチ添い寝、みんな添い寝は可愛いですがその中でもすごくこれが慕ってくれている感じで好みです。

 その他お気に入りは…………まあ基本的に、サチの終盤の品性が消し飛んでしまっている構図や表情のものを除けば概ね好きですはい。。。


BGM(16/20)

★全体評価

 音楽面では特筆するところは少ないですが、一応キャラごとのイメージを投影したテーマ曲やEDなどが用意されているし、出来もそつなく仕上がっていると思います。でも流石にガツンと来るところはなかったですし、あと回想でEDを聴けないのが結構残念な仕様なのもあり、ですね。

★ボーカル曲

 全部で4曲。
 OPの『こいのす☆イチャコライズ』は素朴ながらキュートな仕上がりで、ボーカルの質とセットで無垢さも感じさせるところは悪くないですが、曲としての深みはあまり感じずそれなりに、というイメージですね。

 EDはキャラごとにひとつずつあるのですが、まさかの音楽回想に登録なしで、かつEDムービー回想もなく、気楽にジャンプでED閲覧すら出来ない仕様なので、なんとも聞き込みには適していないつくりなのがドンマイですね。
 ただ曲としてはいちかの『マリアージュ』とサチの『Glowing up』は結構好きな感じで、もっとしっかり聴きこめれば評価も上げられるのになぁ、と思います。流石にこの面倒さを踏み越えてどうこう、とまでは思わないですしね。

★BGM 

 全部で28曲、アレンジなども含みますがまず水準の量はあるでしょう。
 ただ質的には特別シナリオで山谷があるわけでもない分淡泊で、ヘンにシナリオの雰囲気を疎外しない方向性に特化している印象で大人しく、あまりイメージはなかったですし、実際聴き込んでもそこまでこれは!ってのは見出せなかったですね。

 お気に入りは『メインテーマ』『吉野しゃんのテーマ』『サチたんのテーマ』『ピンクな時間』『夕暮れ』『恋人のいる日』『午後のワルツ』『夢の中』あたりですね。


システム(8/10)

★演出

 基本的には背景などの構図の工夫やキャラの動かし方などで奥行きと躍動感があり、横並びでの歩きシーンなども用意されているので、傍に居る、ってイメージがすごく感じられる素朴ながら丁寧な演出になっていると思います。
 ただそれ以上の特筆するものはないし、勿論シーンの演出もそれなりに力は入っていますが枚数勝負のところはあって、純粋な演出面での特別感は醸せてはいないでしょうか。
 ムービーも悪くはないですが特に印象的な所はなく、無難に仕上がっているなというところです。

★システム

 基本的なものは揃っているのですが、この作品をプレイする上でかなり弊害になるのが前へのジャンプが搭載されていない点です。
 シナリオで触れたように、全てのシーンを回収するなら選択肢二極化で進める必要がある感じですし、けど最初の選択肢から全部スキップだけで追いかけていくのは非常にもどかしく、時間もかかるので大変です。
 あと音楽回想でED曲聴けないので、それを即座に聴くためにはED直前のセーブデータ必須、なんてところも厄介で、そのあたりのユーザビリティは少し良くないんじゃないかな、と感じました。

 勿論この作品ならではの親切設計な部分も、秘めくりモードの作りなどで顕著ではあるのですが、プラスアルファは大切として、足元の部分ももう少し固めておいてくれればなお良かったのに、と、この点でははっきり不満が残りましたね。


★総合(84/100)

 総プレイ時間23時間くらい。いちかとなつめは6,5時間くらいでしたが、サチが8時間くらいかかりましたね。とにかく終盤のひとつのシーンのねちつっこさが半端なくて長い長い。。。
 イチャラブ特化でこれだけのボリューム、というのはそれだけですごいですし、かつそこに淡泊さや類似性をあまり感じさせず、常に面白いシチュエーションを接ぎ込み続けてくれた点は大いに称賛に値します。シーンのやりすぎでだれる部分は皆無ではなかったですが、個人的に普通にイチャイチャしているシーンで冗長、かつ単調に感じるところはなかったです。

 体験版の部分でシナリオ的な面ではクライマックスじゃない?という考え方はある意味で的中はしていましたが、それを凌駕するだけのイチャラブの密度・濃度・おかしみがあり、本当に頭を空っぽにしてただただひたすらにヒロインの魅力に傾斜していく、という点では素晴らしく没入感のある素敵な作品でしたね。
 その上でしばらくはDLCなどもあり、継続的に彼女達との蜜月を続けられる設計もいいですし、ヒロインもみんな本当に素晴らしく可愛いので、一人でも好きだなーと思える子がいるなら買って損はしないと思いますね。まあ上で触れたように、サチだけはやや取扱注意の部分もありますが、概ねコンセプトに忠実な見事な出来だったと思います。
posted by クローバー at 05:26| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月20日

甘夏アドゥレセンス

 正直体験版の乱雑さにはどうかなー、って思う向きもありましたが、こういうロックものは久しぶりだったし、ナツと天音がCV込みでとっても可愛いと思えたので、デビュー作でもありお布施の意味もこめてえいやっと購入。

シナリオ(17/30)

 ロックの精神とは。

★あらすじ

 自由を校風とする学園の中にあって、もっとも乱痴気騒ぎが大好きなクレイジー集団として認知されている軽音部。
 ボーカルのナツ、リードギターのリョウ、第二ギターの主人公という歪な構成の促成バンドは、今日も今日とて人様を騒がせ、楽しませるべく暴走を続け、その結果として持ち込んだ火炎放射ギターの暴発によって講堂が延焼する、という事件を起こしてしまいます。

 その結果、堪忍袋の緒が切れた、とばかりに、生徒会長から解散を言い渡され、三人は別々の部活に振り分けられることになります。
 その上主人公は、その事件で自分の尻が燃えたことがトラウマになり、ギターを弾けなくなるという顛末までついてきて、さてこの先どうしよう?と考えていたところに、新たな風を吹き込む来訪者が現れます。

 ロシアでレコード会社を営む両親の画策で、留学生として送り込まれ、主人公の家に同居する事になるサーシャ。
 彼女もまたギターを愛好するものでしたが、それをきっかけに仲良くなろうとする主人公やナツにはすげなく、どうやらその原因があの日の事件にあるようで。
 それでも身近に同志が増えた事で、改めて軽音部としての活動がしたい!と思うようになった主人公達は、クラスメイトの天音やナツの祖母で、かつて伝説のロックバンドのギタリストだったハルなどの助けを借りて、なんとかサーシャを翻意させ、仲間に引き入れることに成功します。
 
 しかし、一度廃部通告をされた軽音部を、いくら肝いりの留学生の希望があったとはいえおいそれとは再興させてはくれません。
 まずは今までのおふざけを止めて真面目に活動する事、そしてきちんとしたライブをする事を正式な再興の条件として提示され、ハルの指導の下、はじめて主人公達は真面目に音楽に向き合うことになります。

 今まで歪だった編成も、もう一人サーシャというギターが増えた事で、トラウマ持ちの主人公が一先ずベースに回り、そしてメンバー募集中の最中に意外な適正を示した天音をドラムとして引き込んで、改めて五人のバンド、ソル・ストロイカとして出発した主人公達。
 サーシャという生真面目一辺倒のギタリストと、今までちゃらんぽらんで、だけど誰かを愉しませたい!という想いだけは人一倍大きかった主人公達の科学融合により、音楽を楽しみつつも真面目に向き合う理想的なバンドとして飛躍していくことになります。

 果たして彼らはしっかりライブをこなし、軽音部再興を果たすことが出来るのか?
 その先に、音楽で幸せを届けたい、という基本理念を胸にいかなる未来が待ち構えているのか?
 その過程で主人公は誰とより深く心を通わせ、相応しい未来を勝ち取っていくのか?

 これはどこまでも勢いに満ちた、眩しさ溢れる青春をロックという形で放射する少年少女たちの、恋と友情と情熱の物語です。

★テキスト

 全体的に非常に口語的な語りで、音楽的なリズム感、語尾のノリの良さなどを重視した綴り方になっているかなと思います。
 とにかくトークにも展開にも勢いがあり、メリハリがあって、多少なり乱暴だったり強引だったりもするけれど、それも含めてこの作品らしい味わいに仕上げられているのかなと感じますね。
 結構複数ライターみたいながら、全体の雰囲気も違和感なく比較的しっかり調和していますし、奥行きや情緒はあまり感じませんが、シンプルに楽しい!という主人公達の気持ちが伝わってくる清々しい読み口になっていると言えるでしょう。体験版部で懸念したほど悪くなかったです。

★ルート構成

 大枠的な展開としては一本道に近くて、その流れの中で誰に寄り添うかで交際の相手が変化し、かつ最終的な舞台での行動理念、方向性も少しずつ違ってくる、というつくりです。
 選択肢自体は特に心情に踏み込むものでもなく、あくまでそのヒロインの傍に居たい、というだけのシンプルなものなので、恋愛に至るまでの機微においての複雑さやダイナミズムはあまり期待しない方がいいかな、というところですね。

★シナリオ

 全体的な構成は正直かなり頓狂ではあります。
 確かにロックとは一種の反抗だ!的な観念は色濃いですが、主人公達の活動に圧力をかけてくる外的要因のスケールがなんとも大袈裟で、ぶっちゃけそれ、まともだったらロック魂で抵抗なんて無意味無茶無謀だよね?ってレベルなのが、著しくリアリティを感じさせないところにはなります。

 でも話の筋道としては、そんな強大な相手に対してでも、音楽を楽しんで欲しいというロックの魂ひとつで立ち向かえば、その魔法で道は切り拓けるという青臭くも眩しい理念を貫き切っていて、それはご都合主義も甚だしい、と言えばそこまでなんですが、少なくとも書きたいテーマ性をしっかり落とし込む、という意味では非常にわかりやすく仕上がっていると思えます。
 背景や状況を敢えて大仰にし、けどその内実などの精緻な部分の穴埋めは一切しない事で、中途半端にいかにもありそうな物語、を目指すのではなく、荒唐無稽だけど痛快で楽しい話を目指した、と考えれば、コンセプト的にもひとつの正解なのかな、と感じる向きはありますね。

 勿論私は出来るだけ有り得そうな方向に話を寄せて、理路できっちり読み解ける方が好みではあるのですけど、ここまで割り切ってると嫌味にも感じませんし、こういうシンデレラストーリーもたまには悪くないね、と考えます。
 けど実際のところ、バンドとしてのまともな活動もしていない、練習も根を詰めてないのに、あんなとんとん拍子でンステップアップしていくのも、祖母の名声の七光り、という側面はあってもいかんせん都合が良過ぎるのは間違いないので、真面目に音楽に取り組んできた人なんかが見ると噴飯ものの展開かもなぁ、なんてことはちょっと思ったりしますね。。。

 ただ全体像として、ひたすらに太平楽な物語というわけではなく、きちんとメリハリはつけられていて、悲しみを乗り越えて笑っていられる力の在り処を求めてより音楽に傾倒する、という心象的な部分の下支えはきちんと出来ているし、その悲しみの原因が契機となって彼らの世界を広げている部分も含めて、最低限の納得は用意されていると言っていいでしょう。
 その上で、バンドとしての活動方向はどのルートでも一定的ながら、それぞれに本質的な部分で自身のロック魂を最大限に反映させるべきステージは違っていて、それを個別で上手く辻褄を合わせて拾っていく、という形になっています。

 なので単純に個別の味わい、という意味での差異性はそんなに大きくなく、評価としてもまあ共通からの地続きで一番スムーズかつ説得的なのはナツで、これが一枚くらいは面白さで抜けているかな、とは思いますが、特筆して具体的な流れや差を見ていくほどの重みのある内容ではなかったです。
 ただ総合的に言えるのは、ロック、という言葉は音楽の一ジャンルとしての意味合いも勿論あるのだけど、そこから飛躍して、生き方そのものの表現としても活用されています。

 そのベース的な観念としては、夢を諦めない強さと前向きさを抱き続けながら、その夢で周りの人間を少しでも幸せにしていく想い、という事になり、それを表現する最適な手段として音楽はあるのだ、というスタンスがあって。
 それでも個々の特性は決して音楽のみに非ず、というところで、特に天音やリョウあたりは音楽とはまた違うベクトルでのロックな生き方を体現する流れになっていくのかな、と感じました。

 それ故にどのルートも読後感はすこぶる明るく前向きでキラキラしていて、そういうノリを最後まで貫き切ったことで作品自体にもしっかりひとつの大きな芯を紡ぐことが出来た、と感じますね。
 まあそれに依拠して色々傍若無人な展開、性善説にも程がある社会の大枠の許しなどの論拠にしてしまって憚らないのは本当に力づく、というイメージは強いので、シナリオとしての工夫としては稚拙というか、安易な方向に流れていると言えるので、私的にあまり高い評価は出来ないのですが、あまり深く考えずに心を揺さぶる破天荒なストーリーを楽しみたい!ってところでは有益に活躍する作品ではないかと思います。


キャラ(20/20)

★全体評価

 基本的にキャラ性にそこまで奥行きや深みがあるわけでもないですが、全体的に明るく可愛く楽しく、をしっかり貫きつつも、一抹の悲しみややるせなさを抱えて、というバランスは、特にナツあたりには顕著ですし中々に見所はあったと思います。
 基本的に世界観も個々人も善良で前向きな色合いが強いので、その点でも安心して楽しめる感じですし、特に減点しなきゃと思う材料はなかったですかね。

★NO,1!イチオシ!

 うーんまぁ、終わってみればナツに落ち着いた感じですかね。
 序盤はひたすら賑やかな弾丸娘、ってイメージが強いですけど、共通の中盤あたりの展開から決してそれだけでない、彼女なりに思慮深いところも見せたりしますし、基本的に騒がしいけどがさつでもなく、女の子らしい愛らしさも最初から持ち合わせているので、ヒロインとしても仲間としても非常に存在感の強い素敵なキャラだったと思います。
 その精神性も非常に高潔で眩しいですし、そして私的には本当にCVが嵌ってていいなぁ、って。期待はしていましたけど期待以上にときめかせてもらえましたね。

★NO,2

 んで当然天音になりますね。私的にこの作品の圧倒的ツートップ。
 CVイメージを裏切る常識人(笑)ではあるのですけど、やっぱり少し変なところもあって、とにかく好きなものには情熱を精一杯傾けるひたむきさと、周りに向ける献身的な優しさのバランスがとても良かったと思います。こんなロリっ子なのにママ呼ばわりは不憫なのやら似合ってるのやらですけど、確かに包容力があって一番安心して寄り添える、という感じはありましたね。

★その他

 サーシャも可愛いけど、もう少し音楽面をフックにしての拘りとかは欲しかったかなあと。
 リョウも破天荒さは面白味ではあれ、流石に会社乗っ取りまで行くとやりすぎだろ、って感もあり、どちらにせよこの二人は属性ボインだから、ってのもあるしね。。。
 そして先生のチョロ可愛さ。。。あれ絶対拝み倒せば押し倒せるタイプだと思うのだが(笑)。


CG(17/20)

★全体評価

 概ねキャッチーで愛らしい絵柄ですし、特にナツと天音が可愛かったので個人的にはそれなりに満足ですね。
 素材量的にも水準クラスはありましたし、やや立ち絵と1枚絵の印象差等で気になる部分はありましたけど、概ね総合的にはそつなく可愛く、勢いのある雰囲気にもマッチしていたと思います。

★立ち絵

 ポーズはヒロインで2種類、サブで1種類ですね。さほど特殊な個性を感じさせるものでもなく、この辺はそつなく控えめに、というイメージです。
 お気に入りはナツやや左、正面、天音やや右、正面、サーシャ正面あたりですね。

 服飾はヒロインで4種類、サブで2〜3種類ですね。学園ものだけどバンドに比重おいてるから、学園的な装備は基本なくてそこは残念、ただ私服が2種類ずつあるのは中々いいですね。贅沢を言えばバンド衣装なんかも欲しかったり。
 あと水着の破廉恥さは言うまでもない。。。というかイベント中はともかく、普段使いでそれはないわ(笑)。
 お気に入りはナツ制服、春私服、夏私服、天音制服、春私服、夏私服、サーシャ制服、夏私服、雅姫私服あたりですかね。

 表情差分はそんなに多くはなく、極端な遊びも少なく無難な出来に感じました。それでも明るくわちゃわちゃした表情が多くて見ていて楽しめるのは確かですね。
 お気に入りはナツ笑顔、慌て、哀しみ、思案、拗ね、照れ困り、うっとり、天音笑顔、苦笑、眉潜め、照れ笑い、怒り、呆れ、サーシャ笑顔、苦笑、不審、照れはにかみ、リョウニヤリ、困惑、雅姫ジト目、慌て怒りあたりですね。


★1枚絵

 通常80枚にSDが12枚で計92枚。量的にはほぼ水準かなと思いますし、質もややばらつきはありますが概ね可愛くて良かったと思います。

 お気に入りはナツ弾き語り、慟哭、お風呂、告白、MC、フェラ、立ちバック、屈曲位、正常位、69、対面座位、サーシャ出会い、裸エプロン?、演奏、69、正常位、バック、立ちバック、対面座位、騎乗位、リョウ宣言、壁ドン、二人で、正常位、背面座位、添い寝、たくし上げ、騎乗位、天音登校、実験、ランニング、告白、おかえり、キス、愛撫、対面座位、フェラ、自慰、手コキ、正常位、騎乗位、アスガルドライブ、海岸ライブあたりですね。


BGM(17/20)

★全体評価

 ロックが主題のゲームだけに、明るく勢いのある曲調がメインで仕上げられていますね。
 ボーカル曲がかなり多いのも特色を踏まえれば頑張ったな、というところで、その分BGMはやや少ないですけど、全体のバランスとしては悪くないのかなとも思います。後は純粋にボーカル曲がどこまで好きになれるか、てところですかね。

★ボーカル曲

 全部で7曲と中々に豪華です。
 内訳はOPに、ライブ挿入歌がふたつ、後はキャラEDで、こちらは各々の声優さんボーカルになっています。
 まあ流石にEDの方は、曲としてはともかく歌唱力的な面では流石にもう一歩なのは否めませんが、OPと挿入歌はそれぞれに中々いい曲です。

 OPの『Go!My Summer Time!』は本当に爽快感がありリズム感も素晴らしく、なんとも耳に残るインパクトの強い曲ですね。Aメロからサビに至るまでのメロディラインとしての完成度も中々高く、これはかなり気に入っています。
 挿入歌ひとつめの『アドゥレセンス』も非常にロックンロール的なイントロから抒情感溢れるメロディが飛び出してきて、力強く味わい深い面白い曲だと思います。サビの迫力も中々ですし、ラストの余韻の響かせ方も素敵です。
 挿入歌ふたつめの『スパシーブギー』も中々いい曲。初っ端から遠く高く伸ばした音の勢いがいいですし、ドラムの走り方が素敵なのでその分だけメロディのメリハリにも雰囲気があるなと思いますね。天音いい仕事してます(笑)。

 ED関連はまぁそれなりに、ですが、単純にメロディとして好きなのはサーシャの『My song』ですかね。勿論曲のカッコよさに対しての声の迫力は足りないのが惜しいのですが。
 小鳥居さんウサさんに関しては……うんまぁノーコメントにしておこう。。。


システム(8/10)

★演出

 基本的な部分では悪くないと思いますが、特筆してどうこう、でもないですね。キャラは動くしSEや背景などの部分でもそれなりにしっかり演出効果組み込んでますが、贅沢を言えばバンドものだし、もう少しライブシーンは情熱的に、情感的に見せる工夫はあっても、と感じました。
 ムービーは曲の勢いに負けないキャッチーでコミカルなつくりになっていて、結構好きです。あとシステムデザイン的な部分での雰囲気も良さも触れておきたいですね。

★システム

 こちらも基本的には問題なし、強いて言うと前にジャンプかないので二周目以降がちょい面倒、ってくらいでしょうか。
 体験版の時にフォント変えようとしてフリーズした嫌な思い出もありましたが、そこも改善されていてほっと一安心、あとレスポンスの良さがかなり上質で、かつそこでのデザインセンスの良さもあり目を引きましたね。


総合(79/100)

 総プレイ時間16時間くらいですね。共通が7時間、個別が2〜2,5時間とやや短めですが、シーン数はそれなりに担保されているし、内容的にも個々人の特別なシナリオ感、というよりは、全体のテーマをそれぞれに当てはめて最適な答えを、という構図なので、その点においての不足感はそこまでないです。
 無論完成度という観点で、なにを完成を見做すかによってはかなり野放図な作品に見える可能性も高いですが、少なくともこのテーマでやりたい!という意欲を一貫して、決して背伸びや無理をせず、欲も欠かずにその枠組みを遵守した事はひとつの正着ではあると考えます。

 なので短いですが破綻もなく、終盤まで勢いが衰えずに楽しめますし、事前に懸念していたよりは大分いい作品だったなと思います。私のスタンス的にあまり評価できないタイプではありますが、図抜けて嵌る人は少なくとも、広く浅くウケるんじゃないかな、という感覚はありますので、それなりに気になっているなら手にとってみても大怪我はしないと思いますね。
posted by クローバー at 06:23| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月18日

トリノライン

 初見時からシロネがものすごい好みだったし、体験版もいつもながらに波乱に富んでいて先が気になるつくりだったので、これは買っておきましょう、と。

シナリオ(20/30)

 人を人たらしめるもの。

★あらすじ

 時代は、現代よりも少しだけ科学技術が進歩し、具体的にアンドロイドが人の生活に寄り添って暮らす可能性が大きく膨らんできたころのおはなし。
 様々な形で人の生活をサポートするアンドロイドの実験を兼ねて、いわばアンドロイド特区というべき島で、研究者の父を持ち、ここで生まれ育った主人公は、当然ながらアンドロイドが身近にある生活には馴染んでいました。

 ただそれとは別に、かつて幼い頃に、弱視だった妹・白音が、ちょっと目を離した隙に海難事故で死んでしまった事をずっと自分の責任と思い、どこか自罰的な、前に進むところのない生き方をしてきていて。
 幼馴染の夕梨などは事ある毎に励ましてくれるものの、長い月日を経ても未だにその心にはぽっかりと虚ろな穴が開いたままなのでした。

 そういう主人公を知っていたからか、もう一人の幼馴染で、幼い頃から天才の名を恣にしていた沙羅は、ここ数年主人公達との連絡を絶ち、研究に没頭してきました。
 そうして作り上げたのが、かつての白音の記憶データを受け継ぎ、自立的に思考し学んでいくアンドロイド・トリノ、で。
 人に役立つだけでない、人に寄り添うアンドロイドとして設計され、生きていたらきっとこういう外見だったろうと模されて作られたその子はシロネ、と名付けられ、そして起動実験の為に主人公の家に預けられることになります。

 いきなりの沙羅との再会と、そして思いもよらない展開に最初は抵抗を示す主人公でしたが、シロネの献身的で朗らかな態度にすぐにほだされ、一先ず積極的にこの子を自分の妹として受け入れようと考えます。
 最初の内は主人公の母親も含めて上手くやっていたのですが、しかしシロネはやはりあまりにも白音に似すぎていて。
 そうであるが故に余計に目立つ些細な差異、白音に対する想いの齟齬が蓄積されていく中で、主人公はいずれにかシロネの事を、妹ではなく別の一人の女の子として扱うことでセーフティを紡いだものの、母親の方はそうもいかずに、精神的にストレスを溜め込んで遂に爆発してしまいます。

 亡くなった人の思い出を持ち、その記憶を核に人格を形成し、或いは自我すら発現しているのではないかと思わせる、新世代の新たなアンドロイド・トリノ。
 彼女のいかにも人間らしい、けれど極限的な部分で人間とは異なるありようと向き合い、その齟齬や問題点を解決していこうとする中で、主人公達はそれぞれに人が人である事、人を人たらしめるものの在り処について思いを馳せ、自身の生きざまに反映させていくことになります。

 これは、まるで人そのものを作り上げるようなアンドロイド計画の素晴らしさと恐ろしさを平等に見据えながら、その特異な状況下で人ならではのきらめきや喜びを手にしていく、少年少女達の苦悩と勇気と絆の物語です。

★テキスト

 全体的にはシンプルで、こういう設定の割に小難しい話は極力回避して、あくまでも人とアンドロイドの共存、というテーマの中での心理的機微や反発、忌避などを中心に紡いでいるので、読み口としても理知的というよりは感情的、抒情的な側面がより強い、とは言えると思います。
 ここはいつもそう、と言えばそうですが、あまり丁寧に説明を付与せずに、言葉が足りない中で抱くすれ違いや不信、対立を容赦なくポンポンつぎ込んでくるので、そう考えるに至った内的動因を一々忖度するのが結構大変だったり、ヒロインに対する愛着を一貫的にプラスのベクトルで維持しにくいという弱点はあります。

 ただそういうぶつかり合いの中で見えてくる本質的な希求や、テーマに対する答えの面ではしっかりしていますし、どちらかと言うとその辺に文章量的にも多くのリソースを注いで、取捨選択がきっちりしている書き方とも言えますね。
 文章そのものにわかりにくさやめんどくささは特にないですし、取り立てて面白味があるわけでも、雅趣があるわけでもないですが、独得のテンポで読み手をハラハラさせるドラマチックな雰囲気を作るのは上手いのではないかと感じます。

★ルート構成

 最初は夕梨とシロネの二人が攻略可能で、どちらか一人を進めると、次のルートは強制的にもう一人になり、その上で最後に沙羅ルートが解放される仕様になっています。
 選択肢としては頗るシンプルですが、構成としては多少特殊な色合いがあり、ある意味で最初の二人を選ぶシーンは、その時点で既に、という留保がついている状態であり、哀しみを孕む展開の中で感得した理念を踏まえて、ポイントオブノーリターンを超越していない時点での変化がもたらされる、そういう形式です。

 構造自体が逆巻きなので、最初の二人を踏まえて、という精神性の連関性が具体的に影響している証拠は特になく、作り手の恣意的なコントロールではある、と見做すしかないのが惜しいところですが、ただ完全に最初の二人と沙羅シナリオの位相を切り分けたことは、こちらのルートで向こうではもう取り返しのつかなくなってしまった部分を零さずに進められる余地を作った、という点で、好意的に解釈は出来ると思います。
 ただし、それがきちんと出来ていたら、ですが。

★シナリオ(大枠)

 もしも人と同じように自立的で柔軟な思考を獲得し、三原則に縛られる事なく生きられるアンドロイドが完成したとしたら、それは純粋に存在として人よりも高次の立場にある、というのは、常々議論されてきたことでもあり、そして現状の科学技術の発展と、その粋を接ぎ込むことを鑑みれば必然でもあります。
 ある意味では人類より上位存在となる種族そのものが生まれるという事で、それは社会秩序、食物連鎖的な概念を根幹から打ち崩す、神の領域の冒涜とすら言える所業になるでしょう。

 それでもなお、そういうアンドロイドが人と共存できる未来を望む、というのは、ある意味アンドロイドとして作った精神性に一貫して善意のフィルターを求める、というエゴイスティックな観念であり、およそ研究者としては立派な責任ある態度とは思えません。

 この物語は根本的に、アンドロイドに育てられ、人間不信を募らせているからこそ、逆にアンドロイドに対する妄信が深い沙羅の研究成果が、およそ必然的に発生するであろう軋轢や衝突を当然のように生起させる話、とくくっても決して過言ではありません。
 その上で、アンドロイド、という似て非なる存在を傍に置くことで、普段意識する事のない人を人たらしめている根幹的な部分、人が生きる本質的な意味に対する気付きや目覚めを作り出し、その理に従って、恐れ、怯えながらもあるべきままに前に進む姿を投射する事がメインテーマになっていきます。

 面白いのは、だからアンドロイドはダメ、という切り捨て論ではなく、むしろ人のダメな部分をも平等に的確に論って、それでも、そうだからこそ、という意味と価値を見出す点にあります。
 それはそれでなるほど、と思えるものですが、一方でそういうテーマ性が全編通して色濃く出ているために、ほのぼのした日常とか温かい交流とか、そういう部分はあくまでも山谷のスパイス的、補助的な役割りに回されて、意識のすれ違い、認識の齟齬による対立や信頼の揺らぎなどが主軸になるので、キャラの魅力を引き立てる、という点ではマイナス要素もかなり多いつくりです。

 また構造的に、最初の周のシロネとのいざこざの行き着く先がもたらす展開は、ある意味でもうその時点で袋小路であり、別の位相の物語という形にはなっていて、それ故にか道中もラストの展開も決して純粋なハッピーエンドとは言えない悲痛さ、息苦しさを内包しています。
 ならばそういうマイナス面も含めて、ルートロックされているラストのルートで解決に至るのか、と言われると、これはこれでちょっと中途半端な部分はあり、もう少し複層的なつくりに工夫が出来なかったものか、と残念に思うところもありました。

 それでも物語に籠められたメッセージ性の強さは本物ですし、どこか突き放した部分もあるのですが、それも含めてこの作品らしさなのかなと感じることは出来ます。
 故に評価としてはかなり賛否が割れるタイプとは思いますし、個人的にも諸手を上げて絶賛、その意見に賛成とは言い難い煮え切らないものはあるのですが、全体的にはこのくらいの点数になってくるかなと。

★シナリオ(個別・ネタバレ)
 
 それを踏まえての個別評価は、沙羅=夕梨>シロネというところです。
 どれもしっかり綺麗にまとまってはいますし、そうならざるを得ない、という必然も、大元が恣意的てばあれきちんと整合性は取れていて、個々に水準はクリアしているのですが、やはり惜しむらくはわざわざロックをかけた沙羅シナリオで、全体の悲しみを包括して掬い上げるだけのメゾット、ロジックを構築せず、あくまでもアンドロイドの生成を対に置いての沙羅の救済の物語に集約し過ぎているのがあります。

 以下個々のシナリオをざっくり浚っていきますが、ネタバレ満載になるので白抜きにしておきます。

 まず共通の展開、というか、アンドロイドの自我の創生に対する理由づけの部分に関してですが、一応固有の個人の記憶データを長期間分保持している、という独自性があり、それを核に思考ルーチンも生成されているなら、そこから自我が萌芽しても、というイメージ的な納得は一応あるかな、と思います。
 白音であることを求められつつも、そうすればするほど本来の目的である、主人公や母親を幸せな気持ちにするという部分がままならなくなる矛盾に対し、そこに自己学習の積み重ねによる人格の乖離が加わっての、シロネ、としての固有の人格が組み上がるのは、むしろ人間の側の扱いの問題であり、引いて言えば人の心の難しさ、複雑さを軽んじた沙羅の過失と見做していいでしょう。

 極限してしまえばこの作品のトラブルって、沙羅が独り善がりの狭い視野の中でアンドロイドを作り上げてしまったが故に起きた弊害がほとんどを占めていて、ひたすらに傍迷惑なわけで(笑)、それでもそうしなきゃいけない、という信念の部分の裏付けも、一応ルビィと主人公の消沈、という二重の理由づけはあるものの、その掘り下げはかなり甘いので、この辺沙羅に対する印象を悪くする大きな阻害要因になってるなと思います。
 ともあれ、そうして形成された新たな人格に対して、元々の白音に対する愛情を踏み台にする形で、主人公が傾斜していくのもある意味では仕方ない、生物的な本能も含めて納得のいくところで、その辺むしろ二人きりの生活で実験継続とか、どれだけ沙羅は人間を知らないのか、って話になってきますけどね。。。

 結果的に熟柿の様に結ばれてしまった二人は、けれどその愛情の中で苦しまざるを得なくって。
 特にシロネが抱く、三原則に縛られたアンドロイドの限界と、それを振り切って進みたい自我の葛藤がもたらす苦衷は、決して答えを出させてくれない残酷さを孕んでいるからこそ切なく、結果的に三原則を突き破っての自己崩壊を選べるほどに追い詰めてしまったわけで。
 それに対する主人公の反応も甚だ人間的ではあり、けどその結果として人を人たらしめる大きな根幹である記憶を失ってしまう、というのは実に皮肉な構図だと思います。

 こちらの流れに入った時に、沙羅シナリオで展開された黒幕の野望編みたいな部分が露呈してこないのは謎と言えば謎ですが、シロネがより不完全さを見せてしまった事と、そこで更に推し進めれば、逆に分ドロイドの危険性を訴える側にとっての絶好の例証を与えかねない、という部分で自重せざるを得なかったのかな、と。
 加えて沙羅自体も、まだあの心中的なシーンを見ても原則論から逸脱できない思考の固さを保持しているので、あくまでも外郭そのものからトリノの構成を考え直す、という方向に意識は向かないし、どちらのルートに入ってもそのサポートで手を煩わせることになる、と思えば納得は出来る範疇ですね。

 その上での夕梨シナリオですが、この子って地味にこの作品で一番不憫な気がするんですよねぇ。。。
 そもそも記憶喪失という状況変化がなければ、ここまで近い関係になれなかったのか、という部分では、本質的な夕梨の臆病さに原因を見るべきではあるのでそのへんは自業自得なんですけど、それも一種の、このルートでも度々発現する歪んだ優しさの発露ではありますからね。

 最初は偽りの優しさと救いを求め、それに都合よく主人公を利用する罪悪感から自身のコピーアバターを作ってもらって、という流れは、まあ発端が嘘から始まっていたりとエゴイスティックな部分はあれ基本問題ないですし、けどそこからアバターとの乖離の中で、病に侵されていない健全な思考と、そうでない現実の自分、というギャップに苦しんでいく様も、実に人間的な尊慮の浅さ故ではあったなと思います。
 主人公にしても最初にそれは良かれ、という意識はある以上、無碍にも出来ないし、積極的に受け入れていけばその微睡のような幸せに浸ってしまうのはある意味仕方なくて、でもそこからの夕梨の反発、拒絶に対し、しっかり人の人ゆえの大切な機微を掴み取り直すのは大したものだと言えましょう。

 裏を返せば、丸ごと夕梨を受け入れられたのも、そういう機微を素直に受け止められたのも、記憶の喪失による虚無感の穴埋め、という皮肉な見方も出来ますが、いずれにせよ人の本質は心と記憶に宿る、という部分を、アンドロイドのありようから比定してみせたつくりは悪くない、と思いますね。
 ただし、手を拱いていれば救いのない死病、って点は中々に矯激ではあり、果たして他ルートで、その治療を前向きに受ける、という意識改革を別口からもたらせられる余地があるのか、なければ影でひっそりと諦念を纏ったまま死んでいってしまうのか、という疑念を置かざるを得ない内容だけに、その辺は注視してみていました。

 そして次のシロネシナリオ、これは本当に救いがない話ですねぇ。。。
 記憶喪失の恢復の為に、出来るだけ元の状況にあったほうが、なんて取って付けた理由で、危険をもたらす実験を継続しているエゴにも中々にうわぁ、って話ですが、空っぽの器に対して一方から想う気持ちがぶつけられれば、それは当然再度呼応してしまって仕方ないだろう、ってところで、その確信犯的なやり口はなんとも煮え湯を飲まされたような感覚を伴うところがあります。

 一応その過程で、シロネの自我の形成に対するお墨付きが得られたのはいいものの、そこから二人が生きていく中での意識や理念のすれ違いをいかに埋めていくかがまた難事となっていって。
 一度は主人公がシロネに寄り添うために、自身も意識をデータ化して永遠の時を生きようと考えるわけですが、それが浅慮であった事を日々の生活の中でいつしか気付かされ、けどそう思い至れた時には色んな意味で手遅れ、というのはなんとも切な過ぎる展開です。
 
 脳スキャンのダメージ、という部分でどれだけの蓋然性があるのか、ってのは、一応記憶喪失のダメージがあた上で、というのと、そうでない時、という差異化は出来ているとはいえ、沙羅ルートでも濫用している事なのでなんとも乱暴だな、と思います。
 結局ここではそういう、死か永遠か、という極限的な選択を余儀なくされる状況の中で、人が最期まで人らしくある尊い選択を見せたいだけの強引なありようではあって、見方を変えれば人とアンドロイドの恋など不毛で矛盾に満ちた絵空事なんだよ、と揶揄しているようでもありつつ、それでも遺るものは確かにある、という味付けがなんともシビアではありました。
 もっともそれを味わわされたのは結果的には沙羅、ってあたりもシニカルですし、当然ながら夕梨に対する配慮なんて微塵もないから、この結果を受けて絶望を胸に死んじゃうんだろーなー、ってところで、うん、やっぱり救いがないですね。シロネ大好きなだけに、ここまで切ない悲劇に終わらせてしまうのはぐぬぬ、ってところでした。

 その上での沙羅シナリオも、スタート地点は変わって記憶喪失がない中で、とはなるけれど、文脈的には似通った展開であり、むしろ一番観念的に拗らせている沙羅を更正させるためにどれだけの想いと事実、危険性の発露が必要なのかって意味では呆れてしまうところではあります。
 無論沙羅が好き好んでそうなったわけではない、生育環境的にどうしようもなかったのは差し引くとしても、その辺のフォローが甘いせいで全体的に沙羅ヘイトが強い構成にはなっていて、ここでの変化での挽回がどれだけ出来たのか、正直怪しいものはあります。

 また、ここだと実験がまだ決定的な破綻をきたしていない中で、黒幕的存在の暗躍が強く出ているのですが、そのやり口も稚拙ではあり博打的な要素は強くて、その理念の底の浅さ、浅ましさも含めてなんだかなぁ、というものはあります。
 主人公と共にあることで、ようやくトリノの完成に必要なパーツを得る、というのも、それが当たり前の事であればこそいかにも沙羅らしい皮肉な展開ではあり、そこからの危機を克服していく中で、友人たちみんなの力を借りて、というつくりそのものは王道的ですが、そのそれぞれの想いに対する踏み込みは雑駁なのでもう一歩だなぁと。
 特に夕梨は、一応ラストで助かる可能性もあるのかな?って雰囲気は醸していましたが、もう少し明確に、前向きさ、生きたいという強い想いを補強するなにかを付与して欲しかったと思いますし、シロネの扱いについても結局生起した自我に対する冒涜的な展開も含まれていて辛いものはありますよね、と。

 最終的なボスの抱く理念に関しては、当然そうなるよね、って納得はありますし、それに対してああいう形での説得が効くものか、という狡さはあるのですけど、それは沙羅が作ったトリノシステム特有の持ち味とは言えるのでまあ許せる範囲かな、と思います。
 ただどの道、そこに至るまで危険性を実感的に掴んでおらずにああいう事態を招いてしまうというのは、正直研究者としては致命的な過失に思えるのですけどね。一見現実的に見えて、実は一番ロマンチストっていう沙羅の歪な在り方は、物語としてはいいフックになってますけど、一人のヒロインとしての造型バランスはちょっとなぁ、と。せめてもう少し主人公に対する傾倒への意識を内在的に補強できていれば、とも思うんですけどね。

 ともあれ、総体的には人は不完全であるからこそ人であり、死するからこそ生きる意味がある、という大所的な極論に行き着くわけで、なんともイデオロギッシュであり、かつわざわざ実証的に人の不完全さをはっきりマイナスのベクトルで、緩和条件を置かずに見せてくる、というあたり、いかにもミノリらしい思い切ったつくりだったと思います。
 なので好き嫌いは強く出ると思いますが、物語としての完成度はまずまず、少なくとも上記のテーマを語る上では必要十分だったと言えるでしょう。
 けど一方で、ヒロインズの魅力を引き出す、生かすという部分では欠落しているものが多々あり、完全に補填は出来ずとも、もう少しまろみを持ってマイナス面も可愛げ、人がましさの一種と捉えられる余地を作る努力は欲しかったなと思う次第です。


★シナリオ総括

 総合的に波乱万丈で哀しみが溢れつつ、それでも、の希望をしっかり投影してくるいつものつくり、と言えるのですが、いつも以上にその尖り方が顕著だったと思います。
 テーマの意義をより強調する意味でも、もう少しバランスを取って欲しかったな、と思う部分は多々あり、とにかくシナリオ展開の中での滑落の突然さ、速さが激しいので落ち着かないところはありましたね。
 心を揺さぶる、という意味では中々の話なんですが、その裏付けがやや恣意的な部分も含めて、個人的にそこまで明確に評価できないな、というところです。


キャラ(19/20)

★全体評価

 美点も欠点も、欠落も不備も、どうしようもない現実まで含めてこれがわたし達、と言わんばかりの、プラグマティックなリアリティに満ちたキャラ造型ですので、屈託なく好きになれるか、というと中々難しいものがあると思います。
 シナリオ展開的にもそれぞれのエゴはかなり強くシナリオに影響を与えてきますし、そういう不完全性や愚かさも含めて愛する、という考え方は、物語の中で優しい造詣に慣れ親しみ過ぎていると劇薬的な部分はあります。
 一番ラストでも示唆されているように、アンドロイド的な存在がもたらす心地よさから脱却して、現実の人のありようにきちんと向き合おうという余計なお世話極まりないメッセージ性も含めて理解は出来ても、それが体現できる人がそもそもこの手のゲームに手を出すかいっ!って話ではありますしね(笑)。

 ともあれ、ヒロインズもそれぞれに可愛さは当然ありつつ、けどそれに等しいレベルで毒や不完全さはきっちり付与されているので、その辺どこまで許容できるか、の勝負ですね。私としてはやっぱりそれをマイナスに置かずにはいられないところはありますし、シロネが本当に好きではあるので迷ったけれど、それでも−2までしないだけが、って所に落ち着いてしまうかなと。

★NO,1!イチオシ!

 うーん、まあそれはシロネなんですけど、イチオシ!と言えるほどに魅力的かは微妙だったかもなぁと。
 勿論表面的な部分での甲斐甲斐しさ、無邪気な愛らしさは素晴らしく可愛いんですけど、情緒的な部分での不安定さはどの局面でも色濃くて、どうしても人のありようと寄り添っていくにはまだ何かが足りない、というのははっきり見えてしまうところではあります。
 個別もああで、他ルートだとほぼ物語から追い出されてしまう事も含めて、好きでしたけど食い足りない、というのが正直なところです。
 あとね、あのサイズで77とかないっすわ。。。数字詐欺ですわ。

★その他

 夕梨も嫌いじゃないし、本質的な優しさはうん、ってとこですが、それを台無しにする刹那的、かつ虚無的な観念の在り方が難しかったですよね。あれはせめて、真っ白でないところで寄り添ってあげないととは思います。
 沙羅に関してはある意味で誰よりも感性が歪だからこその天才性であり、その抜けた感じの可愛さもあるはあるけれど、基本的に迷惑しか振り撒いていないのでうーん、ですよね。

 そして黒幕とか論外の軽さだしなぁ。もう少しこの辺は重厚さがないとわざわざ出す意味がないというか。


CG(18/20)

★全体評価

 基本的には美麗で躍動感があって肉感的で、いつもながらに綺麗だなー可愛いなーとは思いますね。
 キャラでちょっとずつデザインが違うあたりも個性を反映していると言えばそうですが、極端に素晴らしい、というほどまでではなく、それにやっぱりボインばっかりかよ!って歴年の不満も含めて評価的にはここですけれど、出来は安定して良かったと思います。

★立ち絵

 いつもながらに立ち絵と1枚絵の切り分けが難しいつくりですが、一応ポーズとしては後ろ向きまで含めてヒロインはベースとして4種類になるのかなと思います。
 それぞれに上手く手の添え方などで個性を反映させつつ躍動感もあり、この辺は流石の仕事だなと思いますね。
 お気に入りはシロネ正面、やや左、見返り、夕梨前かがみ、沙羅正面あたりでしょうか。

 服飾は立ち絵限定で考えると制服と私服、くらいなんですよね。1枚絵では水着とか裸ワイシャツとか寝間着とかそこそこあるんですけど、その辺はちと残念な所。
 お気に入りはシロネ制服、私服、夕梨私服、沙羅制服かな。

 表情差分はそれなりに多彩で、ある程度遊びも含めつつ、モーションの力もあり実に表情豊かに見せてくれます。
 お気に入りはシロネ笑顔、きょとん、照れ、苦笑、しょんぼり、夕梨笑顔、ニヤリ、怒り、沙羅ニヤリ、照れ目逸らし、拗ね、怒り、哀しみあたりですかね。

★1枚絵

 スチル登録としては284枚と大ボリューム、ただ構図的には似通ったの一杯ありますし、背景的な要素が強いのも多いのでいつもながら既定の枠組みで判断しにくいつくりです。

 お気に入りも選定し辛いつくりなのですが、とりあえずシロネの朝起こし、振り返り、あと黒スト関連Hシーンに沙羅の水着Hなんかは中々に好みでした。


BGM(18/20)

★全体評価

 いつものように荘厳で神秘的な曲が多く、今回は悲劇色がいつもより強い分そのあたりも加味して、というところですね。

★ボーカル曲

 全部で4曲。おのおののヒロイン別EDが定番化してきたのはいいような、聞き込みが大変なような。。。
 OPの『Tetra』はいかにもミノリらしい、閉塞感からの脱却、崇高な想いとそこに宿る哀しみを丁寧に掬い取った中々に雰囲気のある曲だと思います。ただガツンと来るほどではなかったなと。
 EDの中では、シロネEDの『rettRE』が一番好きですかね。あの切なさと一途さがたんまりと詰まった旋律と歌詞は、あの救いのない展開の中でそれでも、と思わせる何かを助長させる強さがありました。
 夕梨EDの『fil……』の静けさや、沙羅EDの『voliere』の闊達さも悪くないですが、そこまで特筆するものもなかったかなという感じです。

★BGM

 全部で50曲、中には似通ったアレンジ版などもあるので実質はもう少し少ないですが、いつもながらに量的には水準を遥かに凌駕してきますし、質も安定して抒情感たっぷり、染み入るような旋律が胸に響きます。

 お気に入りはめんどいのでナンバー拾いですが、1,2,5,6,7,9,11,13,14,16,22,23,26,29,33,34,36,38,39,42,47,48,49あたりが気に入りましたね。手抜きですみません。。。


システム(9/10)

★演出

 いつもながらの独自色満載で、全体的にシームレスなつくりにも磨きがかかっており楽しめます。一部のモーションの重さはあるのですけど、それも含めて臨場感はたっぷりありますし、エロスも相変わらずいい感じにえっちいですし特に文句はないですね。
 ムービーも少しずつ昔みたいなゴージャスなつくりに近づいてきていて、今回は全体の雰囲気のバランスも良かったですし目を引きました。

★システム

 一方でここ毎回いっつも演出の良さの足を引っ張るシステム面の進化のなさ。
 まあ基本的に不備はないと言えばそうなんですが、操作性でかなり面倒なところが多いですし、動きも重たくてもう少しなんとかならんか、とは思ってしまいますよね。


総合(84/100)

 総プレイ時間16時間くらい。共通が5時間、シロネと夕梨が3,5時間、沙羅が4時間くらいですね。
 ボリュームとしてはそんなになく、その分物語の展開は異様に速くて、その上に心をぐさぐさ傷づける緩急の激しさがあるので、ある意味ではハラハラとどんどん先を読み進められる緊迫感があります。
 一方でキャラ性、シナリオに関してももう少し補完しておくべき部分は目立ちね全体の整合性で破たんはしていないものの、いかにもテーマに寄り過ぎて、プロットそのままに遊びが少ない、と思えたので、その辺は課題になってくると言えるでしょう。何事もバランスが大事だと思うのです。

 テーマや、それを踏まえての思索の余地などではかなり面白味のある作品ですが、それをなし得るだけの思い入れを持ちづらい強引なつくりでもあるので、その辺で賛否は別れそうです。少なくともハッピーエンド至上主義の人には向かない作品と思いますし、悲劇耐性が強く、かつ小難しい話が好きって人にはツボに入るタイプではないかと思います。
 個人的にはうーん、シロネが本当に好きだっただけに扱いがなぁ…………と憾みに思うところはなくもなく、って感じですかね。
posted by クローバー at 07:23| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月14日

神頼みし過ぎて俺の未来がヤバい。

 んーまぁ、体験版やって取り立ててキャッチー、って程ではなかったんですけれど、なんだかんだシリーズ全部追い掛けているのと、普通にキャラはみんな可愛いってところで、ちょい惰性気味ではあるけれど購入。

シナリオ(16/30)

 未来像のイメージこそが。

★あらすじ

 主人公は年頃になってから、頑張って女の子にモテたい!という意欲は持っていたものの、その具体的なイメージを持てず、自分を必死に磨くほどの意思も持てなくて、結果的に各地の縁結びのご利益があると言われている神社仏閣を巡っての神頼み、くらいしかやってきませんでした。

 そんな他力本願では実際にモテるはずもなく、自分でもその虚しさに気付きかけてきたある日の事、いつものように神社サイト巡りをしている最中に、いきなりモニターの中に美少女が現れ、話しかけてきます。
 彼女はいきなり、自分の事を縁結びの神様だと言い放ち、モニターの中と会話が通じている事をなんのギミックかと疑う主人公に対し、画面の中から実体化して飛び出してくることで、その不可思議存在としての力を見せつけます。

 流石に目の前でそんな事になれば相手の事を信じざるを得ず、そして麗、と名乗った自称縁結びの神様は、またしても唐突に主人公に、一年以内に運命の相手と結ばれないと一生DTだ、と非情な通告をしてきます。
 それは、今まで主人公が節操なく色んな神様に縁結びを願ったせいで、運命の因果がこんがらがってしっちゃかめっちゃかになってしまった弊害であり、麗は主人公をそんな運命から救うための手助けにやってきた、というのです。

 その上で、主人公に示された三人の運命の相手。

 黒髪の清楚美人で現首相の娘、七海。
 現役アイドルでみんなの癒しキャラ、鈴奈。
 常に眼帯装備のミステリアス少女、由香里。

 彼女達には今の主人公でも辛うじて運命の糸が繋がっている事がわかっており、そして麗によって授けられた特殊能力「縁カウント」をゼロにする事で、一生を添い遂げる相手として確定する、その為に頑張るか?という話に、半信半疑ながらも主人公は縋る想いで頷いて。
 その為に彼女達が通う格式の高い学園に編入するために、残り一年の大半を勉学その他自己研鑽に充てて、なんとかその舞台に立つことには成功します。

 その学園に通っている従姉妹の真央や、幼馴染の泰然などのサポートにも恵まれて、学園生活にはすんなり馴染めた主人公ですが、いざ目的の三人にアプローチする段になって、学園内に蔓延る不思議な空気に気付かされます。
 それは、首相の娘である七海の事を慮って、或いは憚って、学園の屋上が彼女のための「聖域」と化し、一般生徒や先生達までが空気を読んで近寄らない空間になっていたことで。
 そして奇しくも、主人公の運命の相手たる三人の内の残り二人も、学園で数少ない、その空気を読まずに屋上に通って七海と交流を交わしている間柄であることが判明します。

 真央にやんわりと掣肘されつつも、それでもと屋上に足を運んだ主人公は、はじめてのまともな遭遇で、まず七海のエンカウントを確認してみます。
 するとそこに見えた数字は870000000。
 あまりの途方のなさに、本当に運命の相手なのかとパニックになって思わず詰め寄ってしまい、SPの花夜に撃退される一幕などもありつつ、それでも簡単に挫けるわけにはいかず、少しずつ距離を詰めていく形で屋上常連の面々とも仲良くなっていきます。

 けれど、単に友情を築くのが目的ではない為に、時には彼女達の心を揺さぶる急所を遠慮なくつついてみる勇気を奮いながら、増減する縁カウントに一喜一憂し、それと同時に、この学園内で彼女達が託っている境遇に対する不満も首をもたげ、純粋に何とかしてあげたい、という想いも膨らんできます。
 しかし、主人公自身にも時間は少なく、一定期間内に縁を結びきらなければ一生DT、という呪いは重くて、なればこそ誰か一人にターゲットを絞って真摯に大胆に距離を縮めていく必要があるわけで。

 未だ本気の恋を自覚しているわけでもなく、恋するために距離を縮めていく、そんなアプローチの中でも互いを見知り、惹かれ合っていくことで、彼女らが抱えている問題や葛藤が見えてきて。
 その中で果たして彼らは無事に恋愛関係を成立させ、一生ものの縁を結ぶことが出来るのか?
 これは、恋に憧れる主人公と、普通に憧れる少女達の邂逅が織りなす青春群像を綴ったハートウォーミングストーリーです。

★テキスト

 基本的にノリと歯切れがよく、コミカルながらそれなりにしっかり理路は通っていて、気楽にポンポン読み進められるテキストだなと思います。
 ある程度目的意識が明確に輪郭を持っている物語な分だけ、心情面でのアプローチもテンポが速いですし、そういうジェットストリーム的な運命の変転の中でころりと傾斜していく感情の機微を、やや雑駁ではあれしっかりトレースできていますし、基本的には悪くないと思います。

 全部一人で書いているっぽいので、その点でルート毎の温度差がないのも読み口の点ではプラスですが、その分だけ山場などの厚みはあまりなく、構成の空疎さ、安易さを誤魔化す、というと語弊があるかもですが、ある程度文飾で厚みを持たせて本質的な薄さを糊塗するまでの作り込みに至らずに、物語性としては重みなく終わってしまう、その辺を読み口の観点からもフォローは出来ていないな、とは思いました。
 それでも結構世界観としては重たい要素を孕みつつ、それをサラッと前向きに転換していくバイタリティ的な空気感の一貫性は評価できると思いますし、掛け合いもテンプレ的な印象はあれ、ある意味王道的とも言えて、比較的面白かったし、綜合的にはまずまず良かった、と思いますね。

★ルート構成

 最初の一周はメイン三人のみ攻略になります。
 基本的に好感度蓄積選択肢などはなく、あくまでも共通の流れの中で、麗などのサポートもありつつとにかくそれぞれのヒロインとの心の距離を縮める最低限の枠組みは用意されているので、その下地を作った上で、さてより深く踏み込むのは誰にする?という意味合いでのみの選択肢になります。

 ただ、一人クリアすると運命の因果律に変化が訪れた、という建前で、今まで縁がなかった相手との未来が開かれます。
 サブの真央と花夜は選択次第で、この段階でクリアできるようになり、麗に関しては私は一番最後に回したのでわからないですが、一応花夜が攻略できる段階で、そのルートに進むための分岐自体は用意されていたので、一人クリアで平気なのかもしれません。
 ただ一応、程度ではありますけど、物語の全体像や、選ばれなくても前に進めるヒロインのありようなど、総合的に大団円的な印象を紡いでいるのは麗ルート、という感触ですので、最後にしておくに越したことはない、くらいの感覚ですかね。正直大差はないので、メインで断然お気に入りの子がいるならその子がラストでなんの問題もない軽いつくりではあります。

★シナリオ(大枠)

 基本的には恋をすることそのものが目的化している構成の作品ですので、その視座においては展開はテキパキしていますし、余分なものを省いてスッキリ真っ直ぐにヒロインの可愛さ、魅力を引き立ててくれています。
 そして、その魅力を存分に発揮する上での具象的な障害として、「聖域」というシンボルが用意されていますが、それ自体が絶対的要因というわけではなく、本質的にはあくまでもヒロイン個々の立場と境遇がもたらす内的要因を加速させるもの、というのが総合的な枠組みと感じます。

 ただ結果として、現状聖域に逼塞する事がメインの三人の内的要因の打破とも密接にリンクしていいるので、総体的にそこの問題に対処しつつ、同調意識をある程度刺激しながら、より具体的に個々の問題に踏み込んでいく下地を作る、という構成ですね。
 けれどそういう視座で見た場合、共通での下積みが十分か?と問うとそこまでではなく、善意の同調圧力、という元々の問題点がさほど軽いものか、という疑問と釣り合うだけのものとまでは言えないかな、と感じます。

 例えば麗シナリオなんかではその点、二人が結ばれた後にそのあたりを上手くフォローしているのですけれど、そのあたりはもう少し共通で煮詰めておくべき部分だったのではないかな、と感じます。
 このシナリオはいいですけど、他のヒロインに進んだ場合、手を差し伸べられなかった子は、無論それぞれの歩みで少しずつ変化を見せてはいきますが、その幅や限界は感じさせる場面が多いんですよね。
 特にサブルートなんかでは結構ちゃんと、屋上面子と友人の橋渡し的な展開、そこからの空気の循環的な要因がそれなりにきちんとできているくせ、メイン三人だとそのあたりのフォローがおざなりだったりするのは片手落ちかなぁ、と思いますし、勿体ないと思う所でした。

 あと世界観の不可思議面に際しての紐解き、これは正直ザルです。
 神様と言えば、という至極汎用的な要素をごった煮に、かつ恣意的に運用して、便利に山場に用いていたりもしますし、その力の本質的な部分に対するアプローチなんかは全スルーですし、そういう面でのシリアスは微塵も期待しない方がいいでしょう。
 最低限野放図ではない筋道を用意する事で、山谷に僅かなりの必然性を付与して、後はそこまでで紡いだキャラに対する愛着の重さに下駄を預ける、という割り切ったつくりですので、シナリオ面でどこまで楽しめるかは、そのままキャラへの思い入れと比例するタイプの作品と言っていいでしょうね。

 ただテーマ的な部分では一応の一貫性はあって、それは自身の中に確固たる未来像を確立する事の大事さにあります。
 この作品のタイトルが神頼み、であるように、別にここでは、何事も自分自身の努力と意思で切り拓いていけ、なんてヒロイックな話にはなりません。
 むしろ自身の現在地を確かめて、出来ないことは人の力を借りていい、他力本願でもしっかり目的を達成できるビジョンがあるならそれでいい、という話なのですが、結局そうするにはまず望む未来の具体的なビジョンを持たなければどうにもならなくて。

 それは元々ただ恋がしたい、という曖昧な想いで神頼みをしていた主人公と、そして行き過ぎた忖度に対し、自身が本当にどうありたいのか、という現実を見据えられずに流されるヒロイン達、という構図に集約されており、そこを神様の力でまず一歩踏み出し、関係性を強めていく中でより具体的なビジョンを育んでいく、という構図になっています。
 だからある意味では徹頭徹尾神頼みとその応答性が必須要素にはなっているものの、どうあれその願いが具体的であればあるほど寄り添いやすい、というのは人も神も一緒なのだと、そしてそれを望む人が多ければ多いほどその力は強くなるのだと、まあ綺麗事ですが物語としては素敵な、それでいて肩肘張り過ぎないテーマ性を、最後の麗との一幕に象徴的に展開して〆ている、という意味では悪くないのでしょう。

 ただそこに感情と理屈両面での説得性があるかというのはまた別問題で、それをストレートに良かったねぇ、と受け入れられるだけの素地、蓄積があるかと言えば正直ほとんどない、と答えざるを得ないのがこの作品の限界でもあるかな、と思います。
 個々のルートでも思想面ではこのベクトルに沿っての構成になってはいるのですが、スケール感も、それを覆すだけの衝撃要素も特にはないので、概括してしまえば恋で人は強くなる、で話は済んでしまうんですよね。それはひとつの真理でしょうけど、物語としてはいかにも奥行きと醍醐味に欠ける、と言いたくはなります。

 そんななので特に個別評価は書かないんですけれど、どちらかと言うと最初から恋する事を目的に接近しているメインの三人よりも、サブや麗の様に突発的にその可能性が生まれて、という驚きの中からの発展の方が楽しかったりするのがなんとも、というところです。
 特に花夜の展開が個人的にめっちゃ好みだったおかげで、シナリオ面での評価自体はともかく、プレイして良かった的な満足感は担保されたのが救いではありましたかね。

★シナリオ総括

 シリーズ的に見ると妹、嫁探しと代が下るにつれて、シリアス面での奥行きは縮小傾向にあると言えます。
 個人的に妹の時のあれやこれやは裏付けがないくせに大仰でやり過ぎ、と思っていて、その点嫁探しは少しバランスを取りつつ、段階的に重みを付与していて中々良く仕上がったな、と感じたんですけど、今回は逆に流石に簡素に過ぎるなと。
 このご時世で一人で全部書くのは立派ではあるのですけど、そうなると個々の物語の厚みや奥行きが足りなくなる可能性が強まる、というのは難しいところですよね。無論人それぞれ好みはあるでしょうが、常に神様という存在を介在させて、その在り方を多角的に模索してきたシリーズだけに、ここでもそれなりのものは期待はしていたし、そこが肩透かしだったのはやはり評価の面では著しくマイナスになってしまう、というところです。

 これはこれで面白味はありますが、構成的にも画一感は強いですし、これだと本当に尖った部分のない、まろみの強いキャラゲー、というだけでしかないので、その点をどう評価するか、ということになるでしょう。
 ただその方面で特化してる作品なら類例がいくらでも転がっていますし、そこらと相対的に見て特筆するなにかがあるわけではなく、このシリーズならではの味わいを欠損させてしまっているのは私としては残念だった、と総括したいですかね。


キャラ(20/20)

★全体評価

 シナリオ面での棘をなくした分、ヒロインの性格面でも嫌味な部分や重い部分はオミットされて、みんながみんな思いやりがあって懐の深い素敵なキャラにはなっています。
 それが逆に画一的で面白みがないという視点もありますし、元々の聖域にしたって善意によって敷き詰められた牢獄ではあるのだから、そこを打破する上での問題は決して重すぎることはなく、成長面での鮮烈さや個性の多角性はそこまで期待できない、という事でもあり、このあたりは判断の難しいところです。

 個人的にはここまで色々と真っ当過ぎるのも面白味はないなぁ、とは感じましたが、その分均質的にみんな好きにはなれましたし、ちょっと引っかかる部分はあれど、マイナスするまでのものでもないかな、と思いました。

★NO,1!イチオシ!

 なのですが、ここで挙げるのが花夜である、という時点でどこかイケてない感は漂うというものです(笑)。
 ただ本当にこの子はとっても可愛かったんですよねー。勿論見た目や性格、そして当然CV的な面でも元よりすんごく私好み、というところはあったんですけれど、本質的に一番恋愛と遠い所にいて、けれどそれを自覚しての一気の変貌の中に、花夜ならではの柔らかさと朗らかさ、加えて七海との愛情の相互関係の美しさが等分にきらめいていて、あぁ、この関係良いなぁ、と素直に思えました。

 基本こういうSPキャラって、メインヒロインだとするともっと杓子定規だったり真面目だったりで、その意識を恋愛に向けさせていく過程の段取りがめんどくさい、ってのがあるのと、気質的にもっと当たりが強い、堅い部分が目立つので、その辺で好みから外れる場合が多いんですけど、サブという立ち位置だからか、その辺のめんどくささを緩和するだけのクッションと気質を上手く噛み合わせていたのが実にジャスボケだったというべきか。
 恋人になってからの素直クールな可愛さも中々の破壊力でしたし、単調ではあるけど王道的で温かいシナリオとセットで一番お気に入り、と断じていいかなと思います。

★NO,2〜

 次いでだと鈴天こと鈴奈ですかね。
 こういうヒロインも難しさはありますが、いい意味で年上っぽくなくふわふわしてて、素直に頼ってくれたり無邪気に喜んでくれたり、愛らしさに特化しているのが良かったのではないかと思われます。
 由香里もスタイル的には花夜と並んでストライクですが、性格面での難儀さとシナリオ面での奥行きの薄さであまり印象が強く残らなかったんですよね。他ルートでの変貌具合もわかりにくい、という部分も含めてもうちょっと何かが欲しかったなと。

 逆に七海は色々とわかりやすくてちょろくて可愛かったですよね。
 ただ恋愛モードよりも、周りの恋愛をお節介してたり、女の子同士で友達の輪を広げてきゃいきゃいしている時の方が可愛く見えてしまう不思議もありこの位置に。
 麗も当然好きですし、この神様のくせに軽いノリは中々面白いんですけど、その素地の部分とか、好きになっていいとわかってからの軽さとか、もう少し工夫は欲しかったキャラでもあります。
 真央もそのスタンスと一般人的な考え方からして仕方ないとは思いますが、もう少しガツガツ共通の段階から屋上面子と関わりが出来てきてくれればなぁ、と勿体なく感じましたねー。


CG(18/20)

★全体評価

 基本的には可愛らしくロリ寄りの絵柄で好物ですが、過去作と比較してもう一歩出来にムラがあったかなと思うのと、突き抜けて素晴らしい、と感じるところがそこまでなかったので、綜合的な素材量と質の良さは評価しつつこの点数で。

★立ち絵

 ポーズはメイン4人が3種類でサブは2種類、立ち絵のあるキャラ自体は少ないので一人頭がそれなりに多いのはまあ普通、個々の個性の引き出し方に関してはそれなりに面白い工夫や華やかさがあって良かったと思います。
 お気に入りは花夜正面、やや右、鈴奈正面、やや左、やや右、七海正面、麗正面、やや左、由香里やや右、真央やや右あたりですね。

 服飾は4〜6種類とまずまず豊富で、デザインも可愛らしくも新鮮さも加味した中々に面白いものになっていると思います。多少なりやり過ぎ感もなくはなかったですけど、嵌っているものは嵌っていた印象。
 お気に入りは花夜制服、デート服、水着、寝間着、鈴奈制服、私服、アイドル復、水着、寝間着、七海私服、寝間着、麗制服、巫女服、デート服、私服、水着、由香里制服、探偵服、水着、真央制服、私服あたりですね。

 表情差分もポーズに合わせてそれなりには量があり、遊びの要素も多く見ていてコミカルかつ愛らしくてとても楽しめました。
 お気に入りは花夜ニヤリ、ジト目、微笑、照れ目逸らし、鈴奈笑顔、苦笑、照れ笑い、真面目、><、うっとり、しょぼん、ペロリ、七海笑顔、照れウインク、拗ね、ジト目、由香里にっこり、思案、からかい、拗ね、ジト目、麗笑顔、照れ笑い、気まずい、呆れ、怒り、哀しみ、ジト目、真央笑顔、きょとん、ぐるぐるあたりですね。

★1枚絵

 通常88枚と、まずギリギリ水準クラスですが、SDなどの水増し要素もないのでやや寂しさはありますね。
 出来はうーん、正直正確には思い出せないですけど、横向きの時にここまで安定感なかったっけ?とは全体的に思ったな、というのと、七海あたりは流石にメインで安定してましたけど、ガツンと来るほど惹かれるものはなかったんですよね。この辺は山場の薄いシナリオ面も悪いんですが。
 後頻繁に主人公くんの甘いマスクが登場するのには好き嫌いが出るかもしれませんね。

 お気に入りは七海アイス、あーん、お風呂、誘惑、キス、宣言、はじめて、正常位、騎乗位、パイズリ、バック、立ちバック、鈴奈転落、ダンス、歌唱、不意打ちキス、添い寝、愛撫、正常位、69、対面座位、騎乗位、由香里押し倒し、寄りかかり、水着、あーん、ウェディング、はじめて愛撫、正常位、自慰、バック、フェラ、背面座位、麗登場、押し倒し、デート服選び、指輪、ひざ枕、消滅、この手を離さない、騎乗位、自慰、パイズリ、屈曲位、立ちバック、花夜おめかし、手繋ぎデート、愛撫、対面座位、膝座り愛撫、真央キス、号泣、バック、正常位あたりですね。


BGM(17/20)

★全体評価

 意外と「強い」曲が多かったな、というのが率直な印象。
 シナリオの内容や状況に対し、曲が奏でる重みや雰囲気の方が先走ってしまうくらいにインパクトの強い曲が結構多くて、曲の出来そのものは悪くないとは思うんですけど、シナリオとの整合性、バランスの点でちょっと出しゃばってる、と感じる向きもあって、評価に迷うところです。
 質量的には水準ギリギリくらいはありますし、質そのものはかなりいい、と思ったのですけど、もう一点あげるには親和性の部分で足りなかったかな、という判断です。

★ボーカル曲

 全部で2曲。
 OPの『Fate Line』は疾走感と神秘性を程よく同居させてバランスよく纏め上げた中々の良曲で、特にサビの前後半のメロディラインの変化のつけ方がかなり気に入っていますね。
 EDの『キミノオト』もしめやかでかつ柔らかい、この作品の、未来への門出を祝う、という色合いが強く出た染み入るような曲調になっていて中々いいと思います。曲としてはOPの方がより好きですが、どちらも素敵です。

★BGM

 インスト込みで全部で25曲と、量的にはギリギリ水準で、出来は本当に悪く無い、どころかかなりいいと思うんですけど、使いどころの難しい主張の強さが仇になっている部分も時々あったのが勿体無かったな、という感じ。特に『淀気』とか強すぎでしたね。。。

 お気に入りは『春陽』『そよ風』『春眠』『青春の情景』『それ行け!』『楽しいょ〜』『心揺』『想う気持ち』『談』『鈴奈のテーマ』『麗のテーマ』『求めあう二人』あたりですね。


システム(8/10)

★演出

 特に目立つほどのものはないですが、きちんと一般的な部分でのコミカルで躍動感ある演出は引き出していましたし、1枚絵を美しく見せる工夫なども、それが十全に嵌っていたかはともかくなるほど、と思うところはありましたし悪く無かったと思います。
 OPムービーも軽やかで明るくキャッチーで、ワクワクする空気感と程の良い優雅さ、品の良さが噛み合っていて結構好きですね。しかしここでSDキャラデザインがあるなら本編でも使えばいいのに、とかはちょっと思ったりね。

★システム

 こちらも基本的なものはしっかり完備されていますし、ショートカット的な機能の使い出はいつもながらに中々良くいい感じだとは思います。といって特別になにかがあるわけでもないですが。


総合(79/100)

 総プレイ時間は17時間くらい。共通が3時間、メイン3人+麗が2,5〜3時間くらいで、サブ二人は2時間弱程度だと思われます。
 展開的にあまりグダグダしたところはなくさくさく話は進みますし、難しいこと考えずにイチャラブできる、という点では良さもありますか、結びつきの時点で軽いからこそ後々に、というシリーズ特有の不可思議要素と絡めた重さがほぼ払拭されている分だけ印象度は薄いですし、個人的に嫁探しはかなり気に入っていたので、その点で肩透かしだったのはありますね。
 ヒロイン的にも安定して可愛かったですけど、それこそメグリほどの破壊力には出会えなかったですし、総じて特筆できる推しポイントの少ない作品ではあるかな、と。特別にキャラに愛着が湧く、とでもない限り、敢えて手に取るだけのプラス要素は見出せませんでしたね。
posted by クローバー at 05:26| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月06日

水葬銀貨のイストリア

 紙の上の魔法使いが鮮烈な面白さだったし、今回も多少毛色は違うな、と感じつつやっぱり体験版がかなり面白かったので、細かい部分は目を瞑って抑えておこう、と。

シナリオ(23/30)

 その涙の持つ意味は。

★あらすじ

 人魚の伝説が生きる、水の都・アメマドイ。
 この町は、かつて現存した人魚姫に対し、その涙が治癒の力を持っていたことで人間が無体な搾取を繰り返した上に泡と消してしまったという罪の歴史を持っていました。
 そしてその罪故、死した人魚姫の最後の呪いによって、この島の人は涙を流すという行為を封じられ、彼女の好物だったと伝えられる水葬銀貨と呼ばれる林檎をいくら備えても、その現実は変化せず今に至っています。
 
 そんな島で生まれた主人公は、過去に数多の苦難に直面し、どうしようもない現実の不条理をこれでもかと味わう中で、結果的に自らが引き起こしてしまった不幸に対して強い罪悪感と贖罪意識を持って生きてきました。
 周囲から後ろ指をさされ、数少ない理解者である幼馴染の小夜や妹の夕桜もどこか突き放したように扱って、あくまでも自分の身を削ってその贖罪を果たすことに文字通り命を懸けており、しかしその誠心もまた、社会に蔓延る様々な悪意に絡めとられ、利用されて、中々に上手く前に進むことが出来ません。

 いつしかそんな日々に倦んでいたのか、これ以上他者を疎外し孤独の中で生きることに疲れていたのか。
 ある日の帰り、公園でたまたまに出会った、眩しいくらいに愚直に正義を標榜し、憧れを隠さない少女・ゆるぎの姿に、心の奥深くで何か触発されるものがあり、そして彼女とクラスメイトの和奏が危機に陥る中で、自らが生きるために磨いてきた武器を使ってそこから救い出して。

 そうして訪れたささやかな日常の彩り、変化は、そこから更に加速していきます。
 またある日、仕事の帰りに通りかかった路地裏で、何故かゴミ箱に身体を埋めている女の子を発見します。
 どう見ても訳ありな様子に危機意識を募らせるものの、彼女が持つ純粋な瞳と、率直な助けを求める言葉を無視できずに、家に連れて帰って。
 案の定その少女・玖々里は、隔離施設から逃げ出して誰かに追われている身の上のようで、当然のようにその処遇を巡っては悶着があり、蛇が絡みつくような周到さ、残酷さで、主人公につらい選択を余儀なく迫ってきます。

 軋む心を踏みつけるようにして非情の決断を下し、本来の目的に邁進する覚悟を定めた主人公に対し、玖々里はそれでも一心に彼を信じる気持ちを失わず、その苦しみに寄り添ってくれて。
 そして彼が戦いに敗れ、深く傷つき疲れ果てた夜に現れた彼女は、この島では誰もがその存在を知らない涙を流して、彼の傷をたちどころに癒してみせたのです。

 現代に蘇った人魚姫。
 その存在は、今のこの島の隆盛、支配者のありようにも深くかかわる秘密であり、それを知ってしまった事で、主人公は更に大きな陰謀・事件に巻き込まれていって。
 以前よりも少なからず護るものが増えてしまった主人公に取って、それはあまりにも過酷な現実ではありながらも、挫けることなく最善の未来を目指して立ち向かっていく中で、否応なく過去の自分にも向き合うことになっていきます。
 それは主人公に限った事ではなく、誰しもが吹き荒れる悪意の中で自分の在り処を見つめ直し、少しでも恥じない生き方を、正しい生き方を求めていくことになります。

 果たして人魚姫とはいかなる存在なのか?
 その涙の力と、それが発現する意味とはなんなのか?
 跋扈する悪徳の嵐の中で、彼らはその尊さ、美しさを守り抜くことが出来るのか?

 これは、可視化・具象化された善良なる思いの力を背景に、人の本質を鋭く明け透けに抉った、挫折と狂気、そこからの再復と正しき絆のありようを綴った物語です。

★テキスト

 前作同様に散文的で、勿体ぶった言い回しと、人の心を掻き乱す文言、台詞が跳梁跋扈し、いい意味でも悪い意味でも読み手を惹きつける力を持っている読み口だと思います。
 ただ前作においては、如何に刺々しさが強く出ていてもその本質的には悪性は薄かったのに対して、今作はかなり徹底的に悪の論理、精神性を掘り下げる内容になっていて、それ故の胸糞悪さ、救いのなさがより如実に全体の雰囲気に寄与している感じはかなり強いです。

 元々演出面の不備もあるとはいえ、コロコロと奔放に視点キャラを切り替えて、それを一種のギミック的に用いている狡さがあるのですが、今回はよりその傾向が強く、切所においてはこれが誰の思考なのか、と勘案するだけで時間を取られる始末です。
 文章的にもそこで、一般的なヒロインビューとかだと視点キャラを事前に提示したり、或いは語り口でそれを判別できるようにするのが基本ですけれど、敢えて中性的な叙述、語りに徹するのがいやらしいというか、その辺は本当に読みにくくわかりにくく、おそらく二周プレイしてはじめてあぁ!と思うところも多々あるでしょう。
 実際体験版プレイした時点ではわからなかったのが、二周目でなるほど、ってのはかなりあったので、その点では全く親切さがない設計です。あと、前作もそうでしたが相変わらず誤字脱字は乱舞しまくりで、それが読みにくさに拍車をかけています。

 先が気になる引きの巧さ、回りくどさのバランス感は流石、とは思うのですが、今回は読んでいて辛すぎる部分も前作を遥かに凌駕して多かったですし、題材というか、緊迫感を伴う状況の大半をギャンブル的な要素に頼っているのもあるので、前作以上に人を選ぶ感は強いですね。
 本当に悪意の発露、善人を追い詰めていく手練手管の悪辣さは際立って見事ですので、良く取れば一見の価値はある、悪く取れば本気でイラつくので処方注意、というところです。

★ルート構成

 構成として考えると、ほぼこの作品は一本道、と見ていいのだと思います。
 主人公達が踏むべき正道、というルートがあるのですけど、それに至るにはその正道を諦めて、心の傷や隙間風を抱えつつも、掌中に残ったささやかな幸せを大切にしていく、という形でのヒロインルートをクリアする必要がある、という、中々にニッチな仕掛けになっています。見方によってはヒロインルート=バッドエンド的な感じすらあります。

 選択肢自体もかなり長い道中の中でふたつみっつしか存在せず、かつ最初の一個で上で触れたヒロインルートへの脱落が強制的に選ばされるという仕様になっていて中々に尖り切っています。
 文字通り選択する、というより切り捨てる、と呼んだ方が適切な選択肢であり、無論それはシンプルな恋愛譚でもその一面はあるのでしょうけど、これは如実にそう思わせるだけの仕掛けがあるので中々に辛辣です。
 そんな残酷な選択をヒロイン分繰り返すと、ようやくメインのトゥルールートに至る選択が追加で提示されて、そこからバッドエンドの罠を掻い潜っていく、という型式ですね。

★シナリオ(大枠・個別)

 護りたいと思えるものが増えるのと比例するように、島全体に蔓延る悪意の蔦、陰謀の数々とも対峙せざるを得なくなる、という非常に皮肉な構図を、過去の因縁とも密接に絡めて紡いでいる枠組みそのものは、中々にいい出来だと言える作品です。
 前作の紙の上に比べると、ややミステリー的な要素は薄れていて、大どんでん返しとか驚愕の真実、という方面での凄みは足りない、少なくともしっかり理路を追い掛けていれば事前にその仕掛け、結論についてはしっかり把握できる構造になっています。

 その代わりに今回は、前作以上に様々なテーマ性というか、人間という生き物の度し難さと美しさを多角的に見せよう、としているイメージが強かったですね。
 紙の上ではそれを恋、愛情というファクターにほぼ絞り込んでの展開でしたが、今作はそこで提示した観念をも下敷きに、善悪の本質、そして人魚の涙に仮託しての他者を愛する事の正しきありようを披瀝している、そういう風に感じました。

 全体的にその分だけイデオロギッシュであり、タイトルからして人の愚かさの歴史を辿る、というようなイメージを明確に打ち出しており、変わらずエンタメ成分も強い、とは思いますが、前作程のカタルシス、破壊力には届いていないかな、と感じましたね。
 特に、本当にこの作品では舞台を引っ掻き回す悪人が、徹頭徹尾度し難い、決して相互理解が不可能と思わせるレベルでの純粋悪なので、ラスボスではもう少しマイルドな、そういう風になってしまうのもどうしようもないのかな?と思わせる理由づけがあっても、流石に中和しきれてないだろ、と、そのしこりが傾倒しにくい一因にはなっていると思います。

 そして、上で触れたように基本的にヒロインルートは、なにかしら大切なものが欠けた上での物語になります。
 その根底には諦観が蔓延っており、あの時点で主人公が諦める、という事が思想的にいかなる意味を持つのかは後述しますが、その後の展開も表面的には穏やかさを取り戻しつつ、けれど失ったものがもたらす歪に改めて苛まれる、という側面も持ち合わせていて、さやかな幸せの中にも痛みが強く打ち出されています。

 特に祈吏が関わってくる流れでの、なにか取り返しのつかないものを失ってしまった故の哀しみ、虚無感は色濃く、これはこれで物語として面白さはあって楽しめましたけど、やっぱり諸手を上げてこれで良かった、とは決して言えないものではありましたね。
 恋愛的な素養に関しても、特異な状況の中での必然、として、およそそこまでの流れの中で担保されているので、主人公の気持ちがそこに追いつけばまぁ、という感じで、取り立てて深みや、キャラ固有のきらめきが強く打ち出されている事はないと感じます。

 なので、全体像の中ではどうしても、これはこれで、と棚上げして考えるしかない部分であり、一応設計的には人魚姫の涙、というファンタジー要素はあるものの、ヒロインルートでの無念の蓄積が反映してトゥルーに至る心境を形成する、というような特殊な構造質は持っていないので、扱いに困るところではありますね(笑)。
 ぶっちゃけヒロインルートがなくても物語としては成り立つつくりなので、あくまでも18禁作品としてのサービス的な意味合い程度で見ておくべきかなと思います。無論最終的な決着点と比較して考えた時に、なにが必要だったかを算定する物差しとしては有用かもですが。

★シナリオ(ネタバレ白抜き)

 ネタバレと言っても個々の具体的な展開を追いかけるとかでなく、あくまでも観念的な部分をざっくり掘り下げていく形になりますが、その過程で肉付けに個々の事象を使いたくなるかな、と思うので一応隠しておきます。

 テーマというか、メッセージ性という観点で非常に多彩、かつ奥深い作品ではあると思うので、そのあたりを適度に区切りつつ触れていきます。

@愛という感情のままならなさ

 これは前作でより広く深く掘り下げていた部分を援用している、と言っていいでしょう。
 理屈でなく誰かを愛する、という想いは制御が難しく、ましてそれが叶わないとなると余計に暴走しがちです。
 この作品における典型例としては、当然征士の静流に対する歪んだ情熱の原点に位置づけられますし、後は小夜の、涙の力によるトラウマ解消後の主人公に対する依存の原因としても作用していると考えられます。

 正当な形では辿り着き得ない、本質的に報われない愛を宿してしまった時に、最初から諦めるか、正当でない卑怯な手段を用いても繋ぎ止めようと考えるか。
 前者の場合自己愛の閉塞を、後者の場合肥大をもたらし、いずれにせよ愛のバランスを欠く結果になっていきます。この愛のバランス、という部分が、人魚姫をそうたらしめる要因になってくると私は考えていますが、その点はもう少し多角的に仮説を立てた上でまとめて考察します。

A善悪の対称性と、相性

 御覧の通りに、この作品にはかなり振れ幅の大きい正義と悪が混在しています。
 何を正義、何を悪と呼ぶべきか、その定義論まで踏み込むとキリがない話なのでそこは放置しますが、基本的にこの二つは対照的な概念として汎用的に成立しているでしょう。

 ならその二つの概念が激突した時に対等性はあるのか?と考えると、それはそうではない、と私は解釈しています。
 何故ならば、世界には正義と悪の概念がある中で、正義の側は悪のロジックや手法を用いることが出来ない、いわば世界の半分に目隠しされた状態で戦うことを余儀なくされるからです。
 或いはロジック程度は認識して対抗策を練ることは出来るかもしれませんが、少なくともそれを逆手にとって罠を仕掛けたり、正当でない手段を用いてしまえば、それは既に正義からは外れてしまうのですね。そのあたりは灯という存在が、正義の為に人殺しに手を染めてしまった流れの中で具象的に示されます。

 ポーカーだと例えにくかったのでじゃんけんにしますが、いわば正義の側は、グーチョキパーのうち、パーの使い方を知らずに、或いは許されずに戦っているようなものです。
 対して悪の側は、基本的にはその全てを理解しています。何故ならこの社会において、子供の頃から正義という観念は普通に誰しもに教え込まれるものですが、悪は特殊な条件や自己認識がない限りは、外的要因によって学ばされるものではないからです。

 勿論理解しているからと言って、それを的確に用いて攻撃の手段に昇華できるかは別問題です。
 基本物語の悪というのは、悪であってもその悪徳の全てを十全に発揮できない状況下にあって、その隙を正義の側が、正義らしい在りようのままで突けるように出来ていて、その一点突破で大団円、となるのがいわば様式美、お約束ではあります。
 しかしこの作品の悪は、きちんと正義の作法・理念を正しく認識した上で、それを崩すのにはどういう手法を用いればいいか、それを明確に理解した上で駆使してくる、それこそ分かり合う余地や取っ掛かりを見出せない、純然にして完全たる化身だ、というのは、あの征士の様を見ればあながち誇張、とは言えないでしょう。

 ともあれ言いたいのは、悪が悪として全ての手段を使える状況において、正義の側がひとりで戦いを挑んでも、相手の慢心やミス以外で勝ちを引き寄せられる理路が立たない、という事です。
 さっきのじゃんけんの例に例えれば、ずっとグーを出しておけば確実に負けない、という安全地帯を確保しつつ、様々な形で相手の信念を揺るがす指嗾を繰り返し、グーしか出せない状況、或いはチョキを出さざるを得ない状況に追い詰めてしまえばいいわけで、そういう心を揺さぶる手練手管、扇動的な言動の数々は具体的事例を挙げるまでもなく散らばっていましたね。

 じゃあそれに正義の側はどう立ち向かえばいいのか、その一つの答えとして出てくるのは、これも当たり前の事ではありますが、同じく正義の心を持つ誰かに、虚心に助けを求める、という事になるかな、と思います。
 グーとチョキしか武器がなくても、二人いればそれぞれがグー・チョキと出すことによって、最低でも痛み分けか引き分けに持ち込める計算が成り立ちますし、また自分一人では不可能だった状況を覆す手法も見出せる余地が増して、こちらが足並みを揃えて相手を敗着手に追い込む事も不可能ではなくなっていくわけですね。

B人魚姫の誕生に必要なものとは

 しかしこの、虚心に助けを求める、というのは、実のところ正義にかぶれていればいるほど難しい方法でもあったりします。
 大抵の場合、その正義は少しはき違えた解釈の中で成立していて、あくまでも周りを巻き込んではいけない、周りの人間が幸せになるならば自分が犠牲になる事は厭わない、という精神性が深く掘り込まれている場合が多いです。
 特にゆるぎのように、かつて正義を毀損されて捻じ伏せられた屈辱を胸に抱く存在は、反動的にそうなりやすいですし、後はそれ以前の根幹的なありようとして、自己愛の涵養の部分で欠損がある主人公のような存在もここに陥ってしまいやすいと言えるでしょう。

 作中ではミスリード的に、現代の人魚姫として生まれ変わるのに必要なのは純粋に他人の為に自分を犠牲に出来る心根だ、と膾炙していて、ある程度登場人物たちもそれを、実際に人魚姫に触れていく中で噛み締め、自己の矮小さ・卑小さを嘆く、という展開が多く見られます。
 ただそれは実のところ、全く的外れではないでしょうが、半分だけ正解、というものではないか、と私は考えます。

 そもそも、誰かを愛するという在り方に、これという正しさがあるのでしょうか?
 ことこの作品に関して考えるに、タイトル的にも西洋的な思想が源泉として存在する印象は強く、となると愛の作法としてまず取り上げなくてはならないのはやはり聖書的な観念になってくるでしょう。
 特にここで重要になってくるのは、いわゆる「汝を愛するがごとく隣人を愛せ」という部分です。

 この文言を正しく解釈するならば、愛とはまず前提に自己愛があり、それが十全、かつきちんと自己の中で抑制されている状態において、それと同じだけの愛を隣人にも注ぎなさい、という教えであるわけです。
 つまりそこでは、自分を愛する=隣人を愛するという等式が成り立ち、それは包括された概念として成立します。
 この作品においては、人魚姫の涙、という特殊なありよう、自分の寿命を相手に移し替えるという異能が横たわっている事で、それが一際に自己犠牲的に見えてしまい、その本質を曇らせていますが、自己と同様に愛する隣人、という枠組みの中では、それは愛の総量に変化をもたらすものではない、自己保全と同じ原理の上で成立する、と考え得るのです。

 なので私の作業仮説としては、人魚姫に至る為には、確固として揺らがない自己愛を抱き、その上で心から大切な相手を助けたいと思う事、悪意が跋扈する世界において、助け合いの中でしか人は真っ当に生きていけない事に気付き、虚心坦懐に受け止めた時にはじめて辿り着ける境地だ、という事です。

 この場合に話を難しくするのは、自己愛が決して完全な形で成立する必要はない、というところですね。
 例えば夕桜の場合は、主人公と違って今に至るまで母親の愛情を疑っていなかった、それが健全な自己愛の涵養をもたらし、そして近しく大切な相手の危機に瀕して涙が発現した、と考えられますが、そうやって真っ当な社会性の中でまともな自己愛を確立できているのはレアケースになっています。

 玖々里や紫子・紫乃の姉妹などは、生まれてすぐに極端に限定的な境遇に置かれていて、けどかえって普通の幸せ、自己愛の形成の形に一切触れていないが故に、手に出来る微かなものの中で温かなものだけを必死にかき集めて、それを自身の自己愛の形に組み上げて精神的な保全を果たしている、という文脈で理解することが出来ます。
 そして、紫乃の場合は正確にはわかりませんがおそらくは庇護者たる姉に対する暴力が契機になって、玖々里や紫子に関しては、その欠落はあれどその世界の中では純然たる自己愛に、大切な相手の死という現実が付与された事で、人魚姫覚醒の契機になったという読み解きが出来ると思います。

 このあたりは、逆に人魚姫になれなかった面々の推移を見ていくとよりわかりやすく考えられます。
 特に小夜と夕桜の差異に関しては、この場で戯れに与えられた立場の違いが決定的な訴因になっているように思えます。
 少なくとも宗明の真っ当な愛情を受けて育ってきた小夜は、触れ合う機会が少なかったとはいえ誘拐以前から主人公に対して淡くも特別な感情を抱いていて、もしかすると夕桜の様に立ち回れる役割であれば、人魚姫に開眼する可能性を秘めていたかもしれません。
 しかしここで、最大限に無力な立場に置かれ、ほとんどが難癖ではあれ、延々と自己の否を論われることで、主人公達よりも強い罪悪感を抱くことになっていきます。

 いわゆる正義心の発露の一形態として、純然たる悪を憎む以上に自己を責める、というのは普通に起こり得るものです。例えば同じ事故に遭いながら、自分だけ生き残ってしまった人が抱える後ろめたさ、的なものですね。
 少なくとも揺りかご事件の被害者三人は、征士が絶対悪と理屈でわかっていても、自分がもっとなんとかできたのではないか、という罪悪感から逃れることは出来ず、特に当時においては一番何も出来ず、ただ主人公に危害が加えられるのを自分のせいだと言い含められることで、小夜は大切な人を助けたい、という、自己愛から現出する切なる想いよりも、その罪悪感と諦念の方を先に強く育ててしまったのでしょう。
 その意味では征士の目論見は失敗であり、夕桜が人魚姫を発現している皮肉も含めて、奴が綿密に考えて物事を実行しているわけではない証左にもなっているわけですね。

 ともあれ、いわばそこで自己愛に歪を作ってしまった事、かつトラウマの解消後は逆に愛情面で自己愛を肥大されてしまった事が重なって、表層的には人魚姫に親和的な存在と考え得る小夜は、結局その境地には至れなかったと見做すことが出来るのです。
 ゆるぎや灯などはもっと淡泊に、正義の挫折という経緯を経ての尖鋭化、屈折化によって、自己愛のバランスを欠いてしまったと言えるでしょう。
 とりわけ常識的な解釈として、人魚姫は自己犠牲の塊だ、と思っていればこそ、よりストイックに自分をその境地に追い込もうとして、結果的に本来的な人魚姫から乖離していくわけですね。

 この作品ではそもそも、人魚姫という呪いによってもたらされた特殊能力を理論的に解明できる素地を置いていませんので、ひとたび人魚姫になったものが、その後人間に戻る事はあるのか?という疑問を明確には規定できません。
 ただ概略的、かつ傍証的にでいいなら、紅葉という自己犠牲を忘れて暗躍する悪の存在と、そして玖々里が愛を知り、一般的な自己愛の在り方に触れてバランスを崩してもなおその立場に留まっていられることを踏まえれば、それは不可逆的な進化、と考えていいのでしょう。

 ともあれ、人魚姫になるのに必要なのはバランスの取れた自己愛と、純粋に近しい大切な相手を助けたい、救いたいと思える精神性とシチュエーションの確立、と定義できると考えます。
 その文脈で紅葉の行動理念は裏付けできますし、そしてそう考えると、あの土壇場で主人公が開眼できた理由にも繋がっていきます。

 あの玖々里と夕桜の二択に至るまでの主人公は、小夜と似たような加害者観念を拗らせて、自己愛が極端に閉塞している憐れな存在でした。
 そうであるがゆえに人に頼ることを知らず、そして同じ血を引く、という事実をちゃんとわかっている存在なればこそ、無意識的に夕桜を共犯者的な立ち位置に強制的に押し込めてしまっています。
 本来均質な自己愛の持ち主であるはずの夕桜が、この窮地の中で自己犠牲を選ぶのも、その主人公の観念の押し付けに対し殉じた故の作法であり、そうさせてしまった事は主人公の一番の失敗だったと感じます。

 そして、あの波止場での選択に至る刹那において、自分が一方的な自己犠牲の精神を夕桜にも押し付けていた事実を知り、自分がそうさせてしまった事を感情でしっかり理解した事で、そこではじめて、主人公自身の想いが問われることになっています。
 そこで犠牲を看過してしまう事は、無論主人公の意に適う結末ではなく、それは言い換えれば自己愛に対して背を背けた道、と言う事になります。だからこそこちらでは、人魚姫としての性質が発露する可能性も根源的に断たれてしまうわけです。

 対してここで、自分の気持ちに正直に、真っ直ぐに、諦めない、諦めたくないという気持ちを確認すること、そして自分にとって何が大切かを再確認し、それを護る為ならどんな手段もいとわないと割り切ることで、ようやく閉塞・萎縮させ続けてきた自己愛に向き合うことが出来たと定義が出来て。
 そうであればこそ、今まで禁忌的手段と考えていた他者への助力の請願も、そして根源的な諸悪の根源に対しての処断などが可能になり、かつそのバランスの中で、かつて自分が助けられたという事実を梃に、紫子の今に対して過去の一切の因縁を振り払っての憐れみ、助けたいという意思を発現できたと見做せるでしょう。


★シナリオ総括

 以上、ネタバレで触れたように、思想的な部分ではきちんと筋道の通った、強いメッセージ性を孕む作品であると解釈できますし、そこに面白さを見出せるとは思います。
 ただとにかくわかりにくさは多分に含まれていて、表面的な事象を追いかけるだけだと辻褄が合っているのかが非常に見えにくくて、その上に度の過ぎた悪の跋扈が目立つため、読み口としてスッキリ、という感じにはどうしてもなりません。

 エンタメ的なギミックとしても紙の上ほどのインパクトやカタルシスはなかったですし、ギャンブルを人生の縮図と見立てて、その上でその不条理をも真っ直ぐ受け止めて生きていく強さを涵養していく理路としては万全でも、とは思ってしまいますね。
 総合的に、折角の奥深さと盛り上がりを、全体構造のわかりにくさと重苦しさで少なからず毀損してしまっていて、それでも、と言えるほどの突き抜けた面白さに至るまでにはならなかった、と思うので、点数的にはこのあたりかな、と考えます。

キャラ(19/20)

★全体評価

 どうしてもテーマ的に人間そのものの根源的なありようが主体になる部分が多いために、個々のヒロインに対する掘り下げなどもその派生的な部分でしか行われず、ヒロインを愛でる、という観点においては前作よりも更に間口が狭いな、と感じました。
 かつ前作はまだ結果論的な悪意、という匙加減があったものを、今回はその制約を取っ払ってかなり尖鋭的な悪の在り方を追求しているので、基本性善説信者の私としてはどうしても辛いものは、ここまでやらんでも、って想いはありましたね。

 そのあたり加味して考えると、キャラクターを愉しむという観点ではもう一歩足りなかったなぁと思います。

★NO,1!イチオシ!

 これはまあ玖々里一択ですね。
 どうしても生まれ育ちの関係で色々と欠落しているし、素直になり切れなくてツンツンしてるけど本当は、って部分がわかりやすく滲んでいて、物語全体の立ち位置としても存在感はありましたし、一々可愛くて愛らしくて、守ってあげたいと切に思えるヒロインに仕上がっていたと思います。

★NO,2〜

 ゆるぎなんかはいかにも正義心に満ち溢れた猪武者、って感じで、そのネアカさがなんとなくかなたを彷彿とさせているものはあったけれど、結果的に物語としては脇役でしかあれなかったし、無論そこそこに見せ場はありましたけどヒロインとしても一番まともに恋してる、という点も踏まえて、もう一歩奥行き、意外性は欲しかったなと。
 夕桜もこの振れ幅の広いキャラ性とCVのマッチングが素晴らしかったですし、本来的には一番安定している存在でありながらも抗せざるを得ない悲しみは強く伝わってきて、幸せになって欲しい子ではありましたね。

 小夜も嫌いではないけれど、周りがちやほやして積極的に守るほどのなにかがあるのか、という疑問は最初から付き纏っていて、結果的にその違和感は正しかったのかなとも。
 少なくとも今に至る状況は、この子の卑怯な擬態がもたらした、と言えなくもなく、それが罪の意識、トラウマによって必然的に、ならともかく、きちんと治癒され払拭されてなお、と思うと、個人的にはうーん、となるところは多いですね。

 そして祈吏はなんていうか、とことんピエロではありますよね。
 自己存在の根源にどんな犠牲があったかは知ることなくああいう立ち振る舞いを求められる、せざるを得ないのは悲しいところですし、しかしヒロインルートに進んだ際の主人公もその括りでは同質的なので、色んな意味で滑稽ではあります。
 この、男として育ち、途中から女としての意識も包括してというアンバランスな危うさが魅力的でもあるとは思いますが、もう少しいい使い方をしてあげて欲しかったです。

 そして和奏ルートを寄越せー!
 あとロリババアルートも寄越せー!
 特に紅葉はラストがああですから、その後にそういう未来は、ってのは考え得るのですけどね。まあこの流れの中だと同族意識が恋愛観の醸成にも一番強く寄与しそうですし、玖々里の目が黒い内は、って感じもなくはないんですけれど。その意味でも玖々里はメインヒロインではあるんですよね。


CG(16/20)

★全体評価

 率直に言うと、あれ?一枚絵こんなに崩れてたっけ?ってのはあります。
 紙の上はもうちょっと輪郭などしっかりしてたし、可愛さも強く出ていて、まあこれはキャラゲーではないよ、って意味合いでの妖しさ、扇情的なイメージを強く出すために敢えて、なのかもしれないですが、見ていて前作程これは可愛い!と思えなかったのは純粋に残念です。まだ立ち絵はそれなりと思うんですけどね。

★立ち絵

 ポーズはヒロインで2種類、サブで1種類。
 量自体も少ないし、特に質の面でも特別感は強くなく、あまり印象に残らない感じでしたね。
 お気に入りは玖々里正面、やや左、ゆるぎやや左、夕桜正面、和奏正面、紅葉やや左あたりです。

 服飾もヒロインで3〜4種類、サブで1〜2種類とそんなに多くはないですね。
 勿論話の中で必要な分は確保していますし、デザイン的にも悪くないですが、突き抜けて素晴らしい、とまでは思えるところはなかったなぁと。
 お気に入りは玖々里制服、私服、裸Yシャツ、ゆるぎ制服、夕桜パジャマ、制服、紅葉私服あたりですね。

 表情差分も特に遊びはなく、細やかさや奥深さもあんまり感じられなかったかなぁと。とりわけ、基本的に作品全体的に快活さは薄く、みんな痛々しい顔ばかり目立ってしまうのがなんとも、ですね。
 お気に入りは玖々里笑顔、不満、拗ね、からかい、怒り、照れ目逸らし、ゆるぎ驚き、笑顔、照れ笑い、怒り、夕桜ニヤリ、拗ね、哀しみ、紅葉ニタリ、冷酷、溜め息あたりですかね。

★1枚絵

 全部で92枚と、量的には水準を確保しています。
 ただ上でも触れたように、こんな目の描き方だったっけ?とか、ボディパーツのバランスの悪さとかが結構頻繁に目立ってて、立ち絵との印象面での違和感もあったしうーん、と。
 紙の上も安定感はなかったですけど、それでもこれは可愛いっ!って強く感じるものは結構あったと思うので、それに比べると物足りなさが募りますね。

 お気に入りはゆるぎポーカー、小夜ディーラー、玖々里との出会い、紅葉、玖々里抱きしめ、看病、涙、対峙、正体は、囚われの玖々里、祈吏の激高、登校、水族館、告白、抱きしめ、糾弾、花火、紅葉との対決、涙、玖々里正常位、対面座位、バック、夕桜愛撫、バック、正常位、ゆるぎ背面屈曲位、フェラ、正常位、幼きゆるぎ、かつての玖々里あたりですね。


BGM(17/20)

★全体評価

 量的には今回も物足りないのですが、幻想的で退廃的な世界観にスッと沈み込むような味わいのある曲が用意されていて、質の面では中々良かったと思いますね。

★ボーカル曲

 OPの『アズライトの棺』は中々に名曲ですね。非常に情緒や郷愁に満ちた旋律、ボーカル、サビの盛り上がりやイントロの走り具合など、綜合的なバランスが高くメロディラインも荘厳で美しく、これはかなり好きですね。ただボーカルトラック特典がないとまともに聞く機会がない、音楽鑑賞にも入ってないのはちっょと不親切な所。
 そしてEDは今回もなし。うーん。

★BGM

 全部で23曲と、量的にはもう一息ですね。ただ質は悪くないですし、水の都らしい流麗さが目立っていて結構好きです。
 お気に入りは『長閑なひと時』『静けさの中で』『喧騒に揺られて』『天真爛漫』『海底少女』『禁忌の箱』『勇気と共に』『悲愴』『深淵の果てへ』『糸』『享楽の魔女』『届かぬ思い』あたりですね。


システム(6/10)

★演出

 正直かなり粗雑で、前作以上にこの面での底上げがない分わかりにくさ、混迷を極めている感は強いです。
 あちこちに視座が切り替わるくせにワイプ演出すらもないし、無論キャラも動かない、情感的な部分は最低限担保していますけど全体的に深みをもたらすような作用は少なく、ムービーも悪くはないけど総合的にはまるで足りない、という感じが否めないところです。
 やっぱりせめてもう少し丁寧なアイキャッチの投入は欲しいですし、EDクレジットすらないのもなんともお粗末と言うか余韻が台無しと言うかで、前作はまだデビュー作だし、と言えたけれど、今回はそこでの反響も受けてこうだというなら確信犯だなぁ、と評価を落とさざるを得ないですね。

★システム

 こちらも必要最低限もちょっと危うい感じはありますね。
 結構話が長くてルートロックもあるのにスキップは遅め、ジャンプもないだとプレイ感としてもどかしいですし、操作性としてもあまり便利ではなく。
 あとやっぱりデバックの雑さが目立ち過ぎていて、誤字脱字もそうですし、立ち絵キャラ指定とかも盛大に間違えてる、画面と文章が乖離しているなんてのはザラにあるので、これで完成、と言われてもうーん、と考えてしまいますね。本当に無理くり決算期に合わせてきた感が否めない…………。


総合(81/100)

 総プレイ時間25時間くらい。共通が9時間、そこから個別がそれぞれの二者分岐で2時間ずつ、個別自体は1時間ずつくらいの短さで、後はトゥルーがバッド含めて8時間くらいですね。
 尺の取り方から見てもわかるように、本当にヒロインルートは脱落してのおまけ程度で、共通からの一本道でのエンドが全て、と言っても過言でないつくりではあります。

 文章量的にはかなり多く、展開も濃密重厚で楽しめる部分、どんどん先を読み進めたくなる感覚は確かにあるのですが、折角のそれを総合的な部分がかなり台無しにしてしまっているのがつくづく勿体無い限りです。
 特に演出の薄さ、区切りのわかりにくさや、一般的なルールを逸脱した奔放な視点キャラの渡りなど、トリックやギミックと言うにはやや卑怯なつくりの中でわかりにくさを加速させているので、非常に読み解きに困難を極めます。

 その辺は前作もそうでしたが、今回はそれでも、と言えるだけの突き抜けたカタルシスにまでは至っていない感じは強く、光る部分は多々あるのですけどそれ以上に弊害が強いので、正直素直におススメです、とは口が裂けても言えないなぁ、とは感じます。
 紙の上をプレイしていて、あれをギリギリ許容できる、ではなくこういうくねくねしたのが好き、って前向きにとらえられる人なら平気かな、と思いますし、後は悪の理念に対して耐性が強い人、こういう言い方はなんですが、多種多様な悲劇の観察に愉しみを見出せる性格の悪い人(笑)なら、そのあたりでシンパシーして楽しめる余地もあるのかな、と感じました。

 私個人としては、ここまで振り切れてしまっているとちょっときついなぁ、というのは正直ありましたし、それを乗り越えてのカタルシス的な面でもちょっと足りなく感じたので、次があるとして無条件で手を出すかはちよっと考えたい、とは思いましたね。無論すごく面白く感じた面もあったのでなんとも複雑なんですけどねー。
posted by クローバー at 13:40| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする