2017年11月07日

スライド登板

 忘却執事と恋するお嬢様の回想録の感想をアップしました。
 
 …………という顛末になった理由は、予想通りの風邪の悪化でございます。
 昨日はまだ兆候程度だった熱ががっつり上がって朝から大分意識が朦朧としており、どう頑張っても集中力が一時間程度しか続かなくて、一時間起きては一時間うとうとする、って感じで一日を過ごした中で、これしかまともに書き切れる気がしなかったという情けない理由によるスライド登板と相成りました。
 内容もいちもより配慮抜きのざっくりしたものに終始してしまっていますが、最低限面白かった部分と不安に思った部分の表裏一体というもどかしいところはきっちり触れられたので、むしろ書いただけ頑張ったと自分を誉めてあげねばなりませぬ。。。

 んであぶのーまるらばーずの体験版もやってみました。
 スタッフが非常に豪華でどんなもんかな、と思いましたがうーん、これは正直個人的な好みとしては「ない」ですかねぇ。
 基本的に最初からヒロインズが好感度マックスで、かつそれぞれに特殊な性癖を持ってそれを武器にひたすら主人公に所構わず迫ってくる、という構図が明確で、受難系主人公や開けっぴろげ淫乱系ヒロインが好み、っていうならアリかもですけど、私としてはこうまで露骨なのは流石に引くなぁ、って感じ。

 元々絵やキャラデザなんかはそんなにピンときてなかったし、唯一まだちょっと後ろ髪を引かれる、って程度にロリっ子音フェチの結奏あたりは位置するけれど(シナリオも保住さんだし)、でもまぁ音フェチヒロインは今年は明日歌でお腹一杯でもあるし、基本的には見送る方向です。

 そしてやっとこノラとと2に着手しました。
 まだ最初の選択肢(と同時に、雰囲気的に既にヒロイン選択の気もしますが)に辿り着いたくらいですが、これは体験版もやらなかったので最序盤から新鮮に楽しめてますし、印象よりアイリスが明るく前向きでちょっとおバカな感じも悪くないですね。
 ヒロイン昇格の向きもあってかノブチナやルーシアは序盤から大活躍なのに対し、いきなり僻地に追いやられてメッセージだけ参加状態の未知ってば不憫(笑)。そして相変わらずのこのパトの可愛さというか、メインヒロインの貫禄よ。ユウちゃんも相変わらずかわゆうございます。

 元々展開的には荒唐無稽さを勢いと言葉のマジックで貫いていくタイプですので、今回もその情感溢れるリリカルなテキストと、どんな状況を前にしても肝の太いノラチームの面々の逞しさが存分に楽しめるつくりになっているようで楽しいです。
 音楽的にもやたら豪華っぽいけど、パトの出番が増えると『月』のアレンジが沢山流れるのが素敵。特にピアノアレンジって本編にあったか覚えてないけど最強に綺麗だわこれ。
 攻略的には、多分本編ヒロインは分岐の中になくて誰かクリアしたら、ってことっぽいし、一応シナリオ的にはラストアイリスの方が盛り上がるかなって気もするので、敢えてユウちゃんからにしてみようかと今のところ思っています。

 …………そしてこの程度の文章を書くだけで大分クラクラしてきたし。大丈夫か明日…………?
posted by クローバー at 18:39| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

忘却執事と恋するお嬢様の回想録

 この低価格路線のシリーズははじめてなんですけれど、絵とヒロインのキャラデザが今回はストライクで、体験版も悪くなかったのでこっそり購入。

シナリオ(17/30)

 情緒的には面白い。

★あらすじ

 主人公は幼い頃に両親を亡くし、かつ大病の影響でそれ以前の記憶がほとんどないという苦労人。
 育ての親の祖父母が亡くなってからは天涯孤独の身で、それでもいつかのぼんやりとした約束の記憶と、そのキーアイテムであるに違いない巻き螺子を心の支えに頑張ってきました。

 ある日ほんの気紛れから学園の屋上に出た主人公は、そこに居合わせた高貴な雰囲気の少女が、懐中時計を見つめながら涙している所に遭遇します。
 その時は声をかける程度しか出来ず、でもどこかその姿に引っ掛かるものを覚えますが、その後の主人公はそれどころではなくなります。

 なんと、働いていたバイト先が給料未配のまま潰れ、そのせいで滞納していた家賃が払えなくなり、仕事場と棲み処をいっぺんに失ってしまうのです。
 途方に暮れる中、主人公は怪我をして彷徨っている一匹の犬を見つけ、生来の心優しさを発揮して手当てし、タグについている住所まで導いてあげます。
 するとそこは見たこともないような大きな屋敷で、そしてそこの実質的な主人が、この前屋上で出会った少女・雛乃でした。

 愛犬を助けてくれたお礼にと食事に招待され、その席で今の身の上を漏らしたところ泊っていってもいい、と言われて。
 その好意に感謝しつつも気後れが止まない中、夜半、主人公は雛乃に連れられて満天の星空が見られるバルコニーに連れていかれます。
 そこで改めて詳しい境遇を問われ、そしてそこで雛乃から、行く当てがないなら自分の執事にならないか、と持ち掛けられるのです。

 それは雛乃にとっては、様々な家柄がもちらす軋轢を避けるための手段でもあり、またかつての記憶のよすがでもありました。
 主人公もまた、どこか彼女には親近感を覚えていたこともあり、その申し出を有難く受け入れて、執事としての日々をスタートさせることになります。

 慣れないながらも懸命に執事として頑張っていく中で、主人公は雛乃が置かれている立場の苦しさや不自由さ、そしてその狭間から見え隠れする本当の雛乃の気持ちに触れていって。
 果たして彼らはかつての運命に導かれた間柄だったのか?
 主人公は彼女が背負っている重荷を解き放ち、心のままに生きるよう導けるのか?

 これは様々な想いが錯綜する中での、一心な想いと家族の絆を綴った物語です。

★テキスト

 比較的特色のないシンプルなテキストかな、と思います。
 その意味で読みやすくはあるんですが、やや語彙のチョイスや言い回しに野暮ったさや軽快さが足りず、ベタっとした雰囲気にはなっていて、丁寧だけど読み口だけで惹き込んでいく魅力にはちょっと欠けるかな、というイメージですね。
 ただ全体的にはきちんと勘所も押さえているし、ヒロイン視点多用という狡さもあるにせよ、概ね感情的な面での変遷はしっかり筋道に沿って仕上がっているので、悪くはないでしょうか。

★ルート構成

 選択肢なしの一本道です。
 本編をクリアした後にアフターストーリーが解放され、シリアス目な展開とイチャラブがはっきり区分化されたわかりやすいつくりになっています。

★シナリオ

 家柄に縛られ、籠の鳥になっている少女を愛の力で救い出す、という、極めて王道的なつくりではあります。
 かつ展開に奇を衒った部分は少なく、序盤から予告されている二人のかつての関係性や想いを、改めて日常を積み重ねることで募らせ、そして自由が今にも奪われる、という危機的な状況の中で本当の気持ちに向き合っていくというシンプルな構図になっています。

 特に雛乃の側の葛藤に多少複雑な仕込みをしてはいますが、でもその結果としてずっと雛乃が家の為、と気負ってきたものが、本当はさの護りたい者達にとって望ましいものではなかった、という気付きに至るまでの経緯がそれなりに情緒面では面白く紡がれています。
 かつ最後も、しっかり何も失われない形での大団円であり、悪役側の下種い思惑をしっかり挫く、という胸のすく構成にはなっているので、短い中でもメリハリはついて悪くない、とは思います。

 ただ情緒的にはともかく、理路の面ではかなりおざなりなのは気にかかります。
 やはり一番のネックになるのは遺言状の有様で、その相手を尊敬しているだけにその判断を尊重せざるを得ない、というのも、大時代的ではありますがまぁわかります。
 でもそれは、その遺言自体がどれだけ厳格に正当性を持っているか、という面でのフォローはあって然るべきで、最後のどんでん返しにおいて、ああいう形で突然に世に現れたものに対し、特に悪役の側がその正当性を疑って追及する、という姿勢が全くないというのはリアリティに欠けるとは言えるでしょう。

 そもそも、あんな場所に、ひょっとしたら見つからなくなるかもしれないのに(実際にそうなっていた)、大切な孫娘の未来を左右するものを潜めておく、という了見がおかしいですよね。
 まず言えるのは最初の遺言、かつてまだこの家が今ほど隆盛していなかった時点での遺言、というのも、時系列的に父親の恋愛結婚のどさくさ、雛乃が生まれるちょっと前、って事にはなりますし、それから10年余りでその頽勢を覆すことが出来たのか、ってのは疑問です。
 少なくともこの祖父の思惑としては、すぐ次の誕生日時点では開陳していい、って判断なのでしょうし、無論分家の言いなりになる情けなさから奮起して頑張った、とも言えますけれど、そこに確固たる理由づけがなにもないのは問題です。せめてこれこれの分野で確固たる立場を築いて、大きく飛躍したんだくらいの説明は必要でしょう。

 しかも雛乃の父親はビジネス面ではボンクラ扱いですし、そこに引き継がれて益々グループが繁栄する、なんてのも眉唾ではあります。
 と言って手術直後の幼い時分から雛乃が実権を握っていたというのも無茶すぎる話でしょう。力関係が分家と逆転するくらいの隆盛をどのタイミングで築いたのか、色々な意味で非常に胡散臭い時系列にはなります。
 
 故に基本的にこのあたりの構図は、最後のシーンの家族愛を強調するためのアイデアを正当化するために無理やりこじつけたつくりなのは間違いなく、もうちょっとまともな配慮があれば不自然さに気が付いて然るべきだったとは思いますね。
 それに当然ながら、正統的な遺言書の遺し方の流儀からも逸脱したところは説得性を大きく毀損していますし、大体それで孫娘をサプライズで喜ばせたかったのかもしれないですけど、元々の婚約云々の話すら知らないところに突然そんなものが出てきても???でしょうに、と、大元の祖父のやり口が頭おかしいのは間違いないです。

 それが不器用な家族愛、と見做せるならそうかもですし、情緒面ではまぁ、とは言えますけど、いくらロープライスとはいえ最低限の理路の下支えは意識しようよ、となります。
 しかもアフターの冒頭で、遺言書焚書未遂事件とか、全く本編では影も形もなかった展開まで捏造して無理矢理後顧の憂いを絶っていますし、でもそのくらい書こうと思えばいくらでも書けたでしょうになんでわざわざ矛盾を作るかな、とは思いますね。

 そういう部分で感心しない作品でしたが、少なくとも雛乃の凍り付いた心を溶かし、愛の力でメロメロにしていく過程や、その先の微笑ましい交流風景、仲睦まじさはそれなりに楽しめましたし、総合的に見てまぁこんなもんかな、と納得できるくらいの水準ではあったと思います。


キャラ(20/20)

★全体評価など

 基本的には雛乃ゲーですし、彼女の境遇と葛藤の有様はそれなりに生きざまに密接したものであって、けれどあまり意固地に過ぎず、少女らしい可愛らしさが少しずつ花開いていく、その過程をしっかり追いかけていたのは良かったなと思います。
 主人公の誠実さも含めて基本的には気持ちいい造型ですし、敵役のあからさまな小物ぶりはともかくとしても、まあ無碍に割り引くほどではないと感じますね。

 それにしても雛乃の、庶民生活体験でのどんよりっぷりは可愛かったです。。。


CG(18/20)

★全体評価など

 元々好みの絵柄に近い部分はありますし、雛乃のキャラデザがドンピシャなのもあって評価は甘めです。

 立ち絵はポーズも雛乃らしく、服飾もフリフリでお嬢様らしい気品と愛らしさがしっかり出ており、表情も存外感情豊かでコミカルで愛らしく仕上がっていて良かったですね。
 1枚絵は全部で25枚とまあ値段相応、やや安定感の面で怪しいところはありましたけれど、基本的にはすごく美麗で可愛いですし満足です。

 特にはじめてのバックのシーンの絵と、その後の添い寝は抜群に可愛いと思います。


BGM(16/20)

★全体評価など

 回想がないのでなんとも言えませんが、OPは爽やかで健やかで、二人の運命的な道筋を煌かせる雰囲気が漂う悪くない仕上がりです。

 BGMもノーブルな雰囲気をしっかり補完する堅調な出来だったと思いますし、水準には達してるでしょう。


システム(8/10)

★演出など

 概ね水準レベルのものは用意されていますし、ムービーもそつなく組み上がっていて特に不満はないですかね。無論際立ってどうこう、ってのもないですけれど。

 システムも必要なものは概ね揃っていますかね。フォントが変えられないのは個人的にはちょい気になりますけど。
 あと初期の音声設定が小さ過ぎじゃないです?まあ調整すれば済む話ですけれど。


総合(79/100)

 総プレイ時間4時間ちょっと。本編が3時間でアフターが1時間ちょっとって感じですね。
 ロープライスとはいえ正直かなり短いです。昨日からはじめてもうこれを書けている時点でお察しでもあります。
 加えて物語の筋道自体は王道的ですし、綺麗にまとまっていて情味の面では悪くないですけれど、それをより説得的に見せる為の工夫がかなり壊滅的ではあり、もっと色々肉付けする余地は見え隠れしているので、その点でも不満は付き纏いますね。

 ただ雛乃というヒロイン自体は非常に可愛く素敵でしたし、そこに目当てを置くなら大きくコケるほどではないでしょう。
posted by クローバー at 12:33| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年11月06日

ストライクなのは間違いない

 ようやっと忘却執事をスタートさせました。
 まだ体験版部は超えて、いよいよ本格的に二人の関係の進展を阻害する問題と対峙し始めるくらいではあるのですけれど、基本的に都合のいい展開ではあり、かつヒロインサイドの思惑もちょいちょい入ってくるので、見せ方として奥行きや深みがあるか、というと微妙かなー、とは改めて思います。
 んでもヒロインとしての雛乃は本当に好みドンピシャって感じで大好きですし、どこまでこのノーブルな世界観で主人公のバイトスキルが役に立つのか(笑)、サクッと楽しみに進めてしまいたいと思いますです。

 ただアレなんだよ、季節の変わり目でお約束の風邪気味がね…………。
 今週は比較的余裕がある方で、ただ来週からはそうもいってられなくなるので、今の内に出来る事は前のめりに片づけておきたいのは山々なんですけれどもねぇ〜、ぐぬぬぐぬぬ。
posted by クローバー at 18:48| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年11月05日

愛あらばこそ

 結局まともにゲーム進める時間を作れず、今ちょっと前からようやく半端な時間が生まれたので、八割方書き上げてた創作の続きを仕上げるのに使ってしまいましたとさ。。。
 今回はサンディ編ですけれど、実際のところこれもサンディの色めかしいシーンを書きたいというよりは、この前段、形としては幻のレシピ前日譚ってところだけど、ここでvol,2を先取りするような形でのティータとのお喋りが書きたい、って割合の方が強かったりする。

 そして正直なところ、新作進めてるよりティータを書いている方が今は楽しいという事実(笑)。あああああティータ可愛いよティータ。
 ただもひとつ正直なところ、流石に空の軌跡の中での、ティータとオリビエの具体的な絡みの内容までは覚えてないので、そこはサンディと仲良しぶりを発揮する事で誤魔化してたりも。いやほら、これもぶっちゃけた話、空時点でのティータもあれはあれで可愛かったけど、流石にストライクゾーンを少し低めに外してたところはあったわけで、今のど真ん中ストライクなのに比べれば思い入れが薄いのも仕方ないのだ、と開き直ってみる。。。

 …………明日からはちゃんと新作進めます、はい。
posted by クローバー at 20:04| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

閃の軌跡V外伝 戦う乙女の恋愛事情 サンディ#T

ティータ
「はいっ、お待たせ〜♪自信作のボース産・ゴールデンリゾットだよっ!」
サンディ
「おぉ〜、これはこれは。新鮮な卵の色味がしっかりお米に染み込んでて、香りも芳醇ですっごく美味しそうっ!」

 ティータが運んできた、まだできたてで湯気が立ち昇るリゾットは、もう見た目からして外れるわけがない、という輝きに満ちていた。
 万事控え目なティータが、その賛辞に対して謙遜せずに、そうでしょ〜、とばかりに会心の笑みを浮かべているのも珍しく、やっぱりこの子にとって地元の料理というのは特別なものなんだな、と思う。

サンディ
「うーん、私からお願いしたこととはいえ、これだけのものを二人占め、ってのはちょっと申し訳なくなるね」
ティータ
「フレディくん、まだ見ぬ食材が呼んでいる!って張り切って出掛けちゃったもんねぇ。あはは、今度はどんなものを見つけてくるのか…………楽しみだけどちょっと怖いかも」
サンディ
「むしろ彼の料理って、元の材料を知らずに食べた方がおいしく思えるもんねぇ」

 今ここにいない、もう一人の料理研究部メンバーの話で共感を紡ぎながら、私は両手を合わせてティータ謹製のリゾットに舌鼓を打つ。

サンディ
「…………うっわ、期待してたけど味も抜群。この感じ、特別な材料は使ってないみたいだけど…………」
ティータ
「本当はヴァレリア湖で取れた淡水魚の切り身を使うのが正しいんだけどね。ここじゃ新鮮な魚は手に入りにくいから、魔獣の白身で代用しちゃった」
サンディ
「わ、じゃあ本場の味はもっと凄いのかな?やっぱりその地方特産の素材の持ち味を生かした料理って最強なんだよねぇ〜」
ティータ
「えへへ、そうだね。これも我ながら美味しく出来た!って思うけど、やっぱりはじめてお姉ちゃん達と一緒に食べた時の感動は忘れられないもん」
サンディ
「出た、ティータのお姉ちゃん達。しょっちゅう語り口に混ざってくるけど、ほんっとにその人達の事大好きなんだね」

 そう指摘すると、ティータは可愛らしくはにかみながら頷く。
 こういう素直な反応はティータの何よりの美徳で、きっとこの子なりに異国の地で気苦労も多いだろうに、それを感じさせない心の曇りのなさは、かえってこの子に構ってあげたい、という保護欲をそそってくる。

 だからこそ、その笑みに混じる一握の寂しさも率直に伝わってきて――――。

サンディ
「…………ねね、ちなみにボースってどんな街?」

 けれど流石に、まだ不用意に心の深い部分に踏み込むのは躊躇われ、なるべく当たり障りのない興味本位の質問を選んで投げかける。

ティータ
「え?んとんと…………ボースはねぇ、帝国から見てリベールの大都市の中では一番近くって、南の国境のハーケン門から真っ直ぐ街道を南下したところにあるんだぁ」
サンディ
「…………へぇー、じゃあ産業面では帝国との流通の玄関口みたいなイメージ?」

 南の国境、というところで、春先に演習に出向いたハーメルの事も連想したけれど、あの時に見せたティータの痛切な様子を思い返せば、これまた気の休まる一時にわざわざ蒸し返す話題でもないだろう。

ティータ
「うんっ、リベールの商業の一大集積地で、すっごく大きなマーケットなんかもあるんだよっ!でもすぐ近場にクローネ山脈、ちょっと南に下ればヴァレリア湖もあって、風光明媚な観光地、って側面もあるんだっ!」
サンディ
「なるほどね、そうやってリベール各地の産物や人が集まってくるから、きっと名物料理も色んな場所の味を融合させる形で沢山洗練されたものが生まれるんだろうねぇ」
ティータ
「うん、そうかも。あ、あとね、市長さんがすっごい美人!だけど見た目だけじゃなくて、行政手腕も凄い人でね――――」

 こういう形で水を向ければ、ティータのお国自慢はスラスラと、尽きる事はない、とばかりに溌剌とした語り口で零れ出てくる。
 体験知を伴うティータの旅情溢れるリベール譚は、今まで故郷から離れた事がほとんどなかった私には殊更新鮮に感じられて、相槌を打ちながらあったかいリゾットがもたらす滋味と一緒に噛み締めていく。

ティータ
「でねでねっ…………って、あっ、ご、ごめんね、わたしばっかりベラベラお喋りしちゃって…………」
サンディ
「ううん、私ティータがそんな風に活き活きと喋ってるの、好きだよ。心からリベールって国が大好きで、誇りに思ってるって伝わってくるし、そこで育んだ絆がどれだけ大切なのかも手に取るようにわかるから」
ティータ
「あうぅ…………、な、なんかそれって子供っぽい、って思われてるようで、卒業しなきゃって戒めてるんだけどなぁ…………。えへへ、なんかサンディって色々と話しやすいんだよね」
サンディ
「あれ、そうなの?ティータってあのシュミット博士とも喧々諤々やり合ってるくらいだし、対人関係では物怖じしないタイプだと思ってたけど」
ティータ
「そ、そんな事ないよぉ!わたし、自分では結構人見知りするほうだと思ってるんだけどなぁ…………」

 ティータが人見知りなら、世の中の大半の人間はコミュ障に分類されてしまう気もする。
 或いはそれだけ、そんな本質を糊塗して他者に悟らせないくらい、潜ってきた修羅場の重さが違う、という事なのかもしれない。
 まぁ、目の前で両手をブンブンと振って、情けない顔で否定する様からは、そんな凄味は一切伝わってこないのだけど。

ティータ
「そ、それで結局、今回の趣旨はなんだったの?突然、リベール特産の美味しいリゾットを知ってる?なんて訊かれたから、頑張って振る舞ってみたけれど…………」
サンディ
「あぁうん、実はね、昔故郷で一度だけ食べたリゾットを再現したいな、って思ってて。それこそティータと同じように、はじめて食べた時には腰が抜けるくらい感動して、でもそれ以来口にする機会もなくってね」
ティータ
「へぇーそういう事だったんだ。ふふっ、確かに料理って、そういう思い出が味わいをよりふくよかにしてくれるとこ、あるもんね。でもわざわざ助力を頼まれたって事は、上手くいってないの?」
サンディ
「ご明察。合間を見て色々試してるんだけど、どうしても思い出の味には近づかなくって。…………うーん、やっぱりあの食材がないと完璧な再現は無理なんだろうなぁ…………」
ティータ
「あの食材?」
サンディ
「うん、ムーントリュフって言ってね、この帝都近辺でしか取れない幻のトリュフらしいの」
ティータ
「幻の食材!なんかウキウキする響きだねそれっ!」
サンディ
「でしょでしょ。特に近年はほとんど発見出来なくなってるらしくて、ごく稀に市場に流れてくる時もあるんだけど、それこそ目ん玉が飛び出るような値段がついちゃってて…………」
ティータ
「えとえと、それってどのくらい?」

 首を傾げるティータに耳を寄せるよう仕草で示すと、素直に身を乗り出して、絹糸の様な金色の髪を搔き上げながら、可愛らしい形の耳をあらわにしてくる。
 自分で求めたくせに、その可憐な所作にちょっとときめきを覚えながら、前に調べた時のお値段を耳打ちすると――――。

ティータ
「…………ひゃー…………。そ、それは一庶民には到底手が出せないよぉ…………。それひとつでオーバルギアの部品のあらかたが賄えちゃいそう…………」
サンディ
「そこで機械部品と並列して考えるのがいかにもティータらしいね。まぁ実際、今の帝国は軍需に関わる資材なんかは過剰生産でかなりお値打ちになってるしねぇ」
ティータ
「そ、そうだね。わたしとしては助かるところもあるけれど、やっぱり複雑でもあるよね。軍需の活性化による緊張の高まりと比例して、逆に食材の値段なんかは高騰してる気もするし」
サンディ
「トワ教官の授業でも出てきたけど、クロスベルやノーザンブリアの併合、それに伴う中央集権化で、帝国経済そのものは活性化して、けどその分平均的に見ればインフレも発生してる。といって庶民の稼ぎがその度合いに追いついてるかって言うと微妙だし、特に地方では生活のやり繰りが苦しくなってるところもあるのよね」
ティータ
「あはは…………わたしってそういう方面であまり苦労した事がないから偉そうなことは言えないけど…………、だけど今の帝国の急激な発展は、鉄道網の猛烈な延線ひとつ取っても、やっぱりちょっと行き過ぎな気はするね」

 綺麗な眉を八の字に顰めて、ティータがこの国の、いやこの大陸の未来の先行きを憂う。
 そのあたりの危機感は、他国人だからこそより明確に見えるところでもあるだろうし、それにこの子は遊撃士の知り合いも多いようなので、人道主義が骨の髄まで沁みている、という点からも、無益な衝突を誘引する可能性は看過出来ないのだろう。
 もっとも、そんな話を突き詰めていっても暗い気分になるだけなので、話の鉾先を少し元に戻して――――。

サンディ
「実のところ、ムーントリュフが絶滅危惧種にまで追いやられたのも、その急激な発展の弊害でもあるんだ」
ティータ
「そうなの?」
サンディ
「うん。ムーントリュフって帝都近辺の、比較的綺麗な水場の近くに生えるものなんだよ。だけど開発が一気に進んで、水場が多少なり汚染されたり、埋め立てで水場そのものが少なくなったりしたから…………」
ティータ
「…………利便性を追求するのはいい事だと思うけど、その影で失われていくものもある、って事は、ちゃんと考えていかないとダメなんだよね」
サンディ
「その点リベールっていい国みたいだよね。国土の自然環境を出来るだけ守る、その線引きを明確にした上で少しずつ発展を受け入れていくような肝要さと柔軟さがある気がする」
ティータ
「うんっ、今の女王様が本当に情け深くて立派な方だし、それに後を継ぐクローゼさんも…………」
サンディ
「クローゼ?それに後を継ぐって…………ねね、それってもしかしてクローディア王太女の愛称なの?」
ティータ
「あ…………っ!?」

 思わず口が滑った、とばかりに、ティータが両手で口元を覆って、おずおずと上目遣いでこちらを見つめてくる。
 うわっ、なにこの可愛い子っ!そりゃああの赤毛の遊撃士さんも骨抜きにされるわけだなぁ。

ティータ
「え、えとえと…………そ、そのっ、実はクローゼさんも一緒に旅した仲間の一人だったり…………。だ、だけどどうかこの事はここだけの秘密にしといて…………っ!」
サンディ
「あはは、わかってるって。うーん、それにしても本当にティータの過去って随分と波乱万丈というか、さりげなく凄い面々と絡んでるよねぇ。オリヴァルト皇子もその仲間の一人だったんでしょ?」
ティータ
「う、うん、流浪の演奏家を自称して、それはもう自由奔放に立ち回ってたし、随分お世話になったなぁ」
サンディ
「うわぁ、改めて羨ましい〜っ!クロスベル演習の時にユウナ達に随行してたのもチラッと見かけたけど、本当に活き活きして楽しそうだったし、私も一緒に冒険の旅とかしてみたいっ!」
ティータ
「えとえと…………サンディって確かオリビエさんと同郷、なんだよね?アルスター、だっけ?」
サンディ
「そそ、帝国北部のアイゼンガルドの山裾にある辺境。帝都はおろか、リーヴスと比べてもなんもない土地だけど、でもすごく素朴で人情に溢れたいいところだよ」

 そんな風に説明していると、ホームシック、とまではいかないものの、やはり望郷の念は募る。
 今になって私が、かのレンハイムリゾットのレシピの再現を思い至ったのも、或いはそういう要素が細かく蓄積してのものだったのかもしれない。
 まぁ、その中でも一番大きな動機は――――。

ティータ
「そっかぁー、じゃあオリビエさんやサンディの、すごく鷹揚で懐が深いところは、その自然の恵みに溢れた大地が養ったものなんだねきっと」
サンディ
「あ、あはは、仮にも皇族の皇子と並び評されるのは不遜に過ぎない?」
ティータ
「うぅーん、わたしからすればオリビエさんは皇子って柄じゃない、ってどうしても思っちゃうんだよね。…………あっ、オリヴァルト皇子を信奉してるサンディにこんな事言うのは失礼だったかなっ?」
サンディ
「ううん、確かに気さくな人柄だと思うし、実際にそれにより深く触れてるのはティータの方だろうからね。私も時々、ああやって政争に明け暮れる姿が似合わない、痛々しい、って思う時もあるもん」
ティータ
「…………もしかして、そのリゾットを再現したいのって?」
サンディ
「…………うん。大それた願いかもしれないけど、皇子に故郷の味に触れて頂いて、少しでも気の休まる時を作ってあげられたらな、って」
ティータ
「わっ、それすごくいいアイデアだと思うっ!わたしも応援する、というよりもっと色々協力させて欲しいなっ!…………あれ、でも…………?」

 私のちょっと恥ずかしい真意を悟っても、決してそれを馬鹿にすることなく真っ直ぐに褒め称えて応援してくれるあたりはつくづくティータだったけど、そこで疑問に思い至ったか首を傾げる。

ティータ
「…………えっと、アルスターって僻地、なんだよね?別に流通網の中継地だったりとかもしない?」
サンディ
「うん、しないねぇ」
ティータ
「じゃあじゃあ、どうして帝都近辺でしか取れない食材を使ったリゾットが名物になるの?」
サンディ
「厳密には名物、って事もないんだよね。…………そのリゾット、正式にはレンハイムリゾットって言うんだけど」
ティータ
「レンハイム…………ってそれ、オリビエさんが仮の名で用いていた名字だよっ!そっかぁ、じゃあその名前って、ひょっとするとオリビエさんのお母さんの…………?」
サンディ
「正解。要するにその人は皇帝陛下のお妾さんだったわけで、だから折々に帝都の特産品とかが送られてきててね。その中にムーントリュフもあって、それをみんなの為に美味しい料理にして振る舞っていたら評判になった、って話なんだ」
ティータ
「…………じゃあ、正確なレシピも存在しない?」
サンディ
「そう、それは亡くなってしまった皇子の母君の頭の中にだけあったもの。…………でも、それでもあの味は完璧にこの舌が覚えてる。ちゃんと再現出来たなら、絶対に間違えない自信があるよ」

 そう、絶対に間違えたりしない。
 私が生きてきた中で一番優しく、温かく、そして鮮烈な味わいは、文字通り皇子母子があの場所で暮らしていた証そのものでもある。

 なにもかもが変わりゆく帝国の中で、それでも忘却されてはならない記憶として、その証言者として立つ事。
 それは今まで狭い地平に生きてきて、大きな視野を持たずに安穏と暮らしていた私が、このトールズ分校で切磋琢磨していく内に培った大切な信念のひとつとして息づき、芽吹こうとしている――――。

ティータ
「…………それだけ真剣に想いを捧げられるのってすごいね。でもうん、わたしもオリビエさんはこの国で窮屈な想いばかりして、色々頑張りすぎだから、そこから少しでも解き放ってあげたいって思う」
サンディ
「そだね、私達に出来る事なんて高が知れてるけど…………それでも指を銜えて傍観しているより、ちょっとでも役に立てるようにって頑張ることには意味があるよね。それにきっと皇子を応援する事は、この国、この大陸が平和に至る道にも繋がってるはずだし」
ティータ
「うんうんっ、それにやっぱりオリビエさんは今みたいに緊張感を諧謔で糊塗してるような状況より、シェラさんあたりと自由気儘に大陸各地を演奏旅行でもしてるのが一番似合ってると思うもんっ!」
サンディ
「…………っっ」

 ティータ、また口を滑らせてるよ、と指摘する前に、チリチリっとした微かな痛みが胸の内に走る。
 そのシェラさんとやらが誰かは知らないけれど、口ぶりからして皇子にとって大切な人なのは間違いないだろう。
 そうか、当たり前だけど皇子にもそういう情を寄せた相手がいるんだ――――その認識は、けれどはじめて私の中に実感を伴って押し寄せ、今までに感じたことのないざわついた気持ちを呼び起こす。

ティータ
「…………サンディ?どうしたの?」
サンディ
「えっ?あ、あぁうぅん、なんでもないっ!ともあれまずはそのリゾットを完成させなくちゃ話が始まらないんだけど…………」
ティータ
「…………で、でもムーントリュフがないと、どうにもならないんだよね?」
サンディ
「だねぇ」
ティータ
「それ、とってもとってもお高い、んだよね?」
サンディ
「…………だねぇ。まぁその線でどうにかはまず無理筋だし、いずれ暇を見て帝都近郊に出向いてみるつもりだけど…………、どっかで都合よく、帝都演習なんかあったりしないかなぁ?」
ティータ
「あはは…………。そ、そのっ、本当に力になりたいとは思うから、だから出来ることがあったら何でも言ってっ!」

 暗に無い袖は振れない、と困り眉を作りつつ、それでもそう言い切ってくれる気持ちは嬉しい。

 すっかり冷めてしまったリゾットの最後の一口を放り込み――それでも風味が落ちないのが凄い――、咀嚼しながら思案する。
 その厚意に甘えるとして、じゃあ今すぐにティータにお願いしたい事と言えば――――。

サンディ
「…………だったら、折角だしもっと色々詳しく、ティータが皇子と一緒に旅をしていた最中のエピソードを教えてよ」
ティータ
「え?う、うん、それは構わないけど…………あっ、でもちょっと待っててっ!」

 私のお願いを快諾しつつ、ティータは一度話に留保をかけて、空になった皿を流しへと運んでいく。
 そして、戻ってきた時にはその手に別の皿を抱えていて――――。

ティータ
「じゃーんっ!おまけで作った今日のデザート、王都グランセル名物のみすてりぃクレープだよっ!」
サンディ
「わぁぁっ、なにこれなにこれっ、超豪華っ!リベールの王都ってこんなのが普通に売ってるわけっ?」
ティータ
「ふっふー、凄いでしょー。見た目だけじゃなくて味も抜群なんだから、これをゆっくり食べながらお話しよっ!」
サンディ
「うっわぁー、贅沢ぅ。で、でもこれ、二人で食べちゃったらカロリーが危険な事にならない?」
ティータ
「えへへぇー、それがそうでもないんだぁ〜♪」

 語尾を軽やかに弾ませたティータは、ちょいちょい、と可愛らしく手招きをしてから、耳の後ろに手を当てて聞き耳の姿勢を作れと訴えてくる。
 …………ってそれ、さっきの私の仕草の真似っ子じゃない!っとにもうっ、つくづくこういう所がいじらしくて可愛いよねぇこの子。
 そんな愛らしい誘いに乗らないわけもなく、可憐な桃色の唇の近くで耳をそばだてると――――。

ティータ
「――――――――」
サンディ
「…………はぁっ!?う、嘘でしょっ、こんな絢爛に色んな食材てんこ盛りにしといて、そのカロリーって有り得るのっ!?」
ティータ
「それが有り得ちゃうのがみすてりぃの由縁なんだよー。ほらっ、食べてみて♪」
サンディ
「う、うん、頂きます…………もぐ、もぐ…………あれっ、見た目より大分すっきりした味わいかも。といって風味が薄い事もないし、程よい酸味と、あとこの独特の触感…………このあたりは帝国じゃ馴染みのない食材だね?」
ティータ
「うん、アゼリアの実にドラゴンビーンズ、ホタル茸なんかはリベールの特産品だよ。どれもヘルシーで栄養十分な食材だから、リベールでは色んな料理に使われるの」
サンディ
「へぇー、だけどここで手に入れるのは大変なんじゃない?」
ティータ
「そうでもないよ。如水庵で注文すれば取り寄せてくれるし、もっと急ぎの時はジョゼットさんにお願いすれば融通利かせてくれるし」
サンディ
「ジョゼットさん?」
ティータ
「あ、カプア宅急便って知らない?すごく小回りが利いて親切な運送会社でね、ジョゼットさんはそこの跡取り娘さんなんだ」
サンディ
「はぁー、やっぱり色々な人脈持ってるよねティータってば。…………これ、今度レシピ、教えてくれる?」
ティータ
「うん、勿論。あ、それでそれで、オリビエさんの話だったよね――――」

 かくして食後のデザートをめいめいにつつきながら、改めてティータの口から零れ落ちる情感の籠った過去のエピソードに耳を傾け、私はまだちょっとだけヒリヒリする心をどうにか宥め、落ち付かせるのだった――――。
posted by クローバー at 19:31| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする