2017年05月11日

フィリスアフタークエスト <封印の番人に遭遇!?弱点読み解きの為に文献調査を進めよう!>

アンネリース
「…………しかし、アレですねぇ。この研究室にポツンと羊が一匹繋がれている構図って、中々シュールですね」
カルド
「あぁ、確かに。そもそもどうして羊、だったんでしょうね?やはり生贄と言えば羊、というイメージが古来から定着していたんでしょうか?」
リアーネ
「…………んー、多分ですけど古来から隣の地域が牧草地で、メッヘンみたいな村があってそことの交易が成り立っていたから、じゃないでしょうか。野生の生き物を捕まえるのって中々大変ですし、用途にマッチするよう調整するのでも一筋縄ではなかったでしょうから」

「メェ〜…………」

 そんな推測はどうでもいいから、もっと早く広くて気持ちいい青空の下に戻してくれ、とばかりに羊さんが鳴き声を上げる。

 この一頭は、もうすぐ生体鍵が完成する、という時分になって、リア姉がメッヘンまで走り、借り受けてきてくれたものだ。わたしたちにはこの子を無事にあの村に返す責任が、ある。

プラフタ
「…………それでは、はじめましょうか」
ソフィー
「…………うん」
イルメリア
「…………ええ。フィリス」
フィリス
「りょーかいっ!では今から、生体鍵の生成実験をはじめますっ!」

 プラフタさんの厳かな宣告に続き、先生とイルちゃんも神妙な顔のままわたしを促してくる。
 装置自体は筒状の非常にシンプルなつくりで、対象に触れて吸収スイッチを押すだけで、その生命エネルギーを吸い上げ、それを具象化できるようになる。
 鍵、というからには細かく鍵穴に差し込む形状にしなくてはいけない、という事ではなく、プラフタさんたちが調べてくれた限りは、あくまで扉の鍵穴はダミー、そのエネルギーそのものを扉に注ぎ込むだけで問題なく開く…………らしい。

フィリス
「…………すぅー、はぁー…………うん、じゃあ、行きますっ!ごめんね羊さんっ、ちょっとだけその生きる力を、わたしたちに貸してね…………っ!」

「…………メェ」

 わたしの心が鏡写しになったかのように、羊さんが怯えた鳴き声をひとつ。
 それでも微動だにしないところは、躾の良さというか、従順というかで、益々いたたまれなさが募る。

 もうっ、どうしようもなかったのかもしれないけど、ご先祖様色々と趣味悪いよっ!

フィリス
「…………っ」
イルメリア
「…………(コクン)」

 体毛に装置を近づけていくと、否応なく自分の手が震えているのを感じて。
 思わず首を捻って、イルちゃんと目を合わせると、唇を噛み締め、顔面を蒼白にしながらも力強く頷いてくれる。

 大丈夫、もしも失敗だったら、その痛みは一緒に背負ってあげるから――――無言の中に、改めてそんな意思疎通を重ねて、わたしは勇気を奮って装置を羊さんに接触させる。
 人より体温の高い、柔らかな身体。
 どうかこの温もりが、鍵生成後も失われていませんように――――。

アンネリース
「…………あっ!?」
カルド
「…………これは、壮観、ですね…………」
リアーネ
「フィリス、ちゃん…………っ」

 スイッチを入れると、ぶるぶるっと羊さんの身体が大きく揺れる。
 そして身体全体から、ぼぅっと青白い光を発する。これぞ生命エネルギーが可視化したものだ。
 それが少しずつ、じわじわと装置に吸い込まれていき、目盛りが上昇して、鍵として機能させる為の適正値に近づいていき――――。

ソフィー
「あ…………っ」
イルメリア
「…………終わった、わね」
プラフタ
「…………っっ!?」

 ピィーッ、と、素っ気ないアラーム音が充填完了を知らせる。
 その刹那、わたしは即座に吸収スイッチから手を離す。

フィリス
「…………装置のエネルギー充填確認。そして――――」

 恐る恐る、羊さんの頬に手を伸ばす。
 吸収の衝撃故か、いつしか瞳を閉じてしまっていた羊さんは、私が静かに頬を撫でると――――。


「……………………メェ〜…………」
フィリス
「っっ!!ちゃんと、羊さんも生きてますっ!!」
イルメリア
「っっ、やっ――――」
ソフィー
「やったぁーーーっ!!やったやったっ、あたし達、ちゃんとやり遂げられたんだよっ!!」
イルメリア
「わぷっ!?」

 わたしの安堵が伴う高らかな凱歌に、まずいの一番に反応したのは、一緒にこの装置を作るのに血肉を注いだイルちゃんと先生で。
 小さく胸元でガッツポーズを作ろうとしたイルちゃんに、すぐ傍にいた先生が飛び掛かって抱きしめている。

 なんだろう、それを目にした途端、わたしもいてもたってもいられなくなって――――。

イルメリア
「ちょっ、ちょっとソフィーさんっ、いきなりはやめてください危ないですからっ!」
ソフィー
「えー固い事言うなよぉー、折角の歓びを全身で分かち合いたいじゃーん♪」
イルメリア
「またそんなフィリスみたいなことを…………って、はっ!?」
フィリス
「どーんっ!!」
ソフィー
「きゃわっ!?」
イルメリア
「へぶっ!?も、もーっ、あんたらねぇっ!!」

 その輪に加わるべく、反対側からイルちゃんに抱きかかる。
 間でサンドイッチにされたイルちゃんは苦しそうな声を上げるけど、でもその顔は笑っていて。

リアーネ
「ふふ、三人とも嬉しそう」
カルド
「でもこれで、過去からの試練をこれ以上ない形で乗り越えたのは事実ですしね」
アンネリース
「ええ。確かに安直に使えば世界すら滅ぼしかねない偉大なる技術、根絶の錬金術。それでもやり方次第では正しく世の中の役に立つ形に制御できる、それをはっきり実現させたのは大したものです。ねぇ、そうでしょう、プラフタさん」
プラフタ
「…………えぇ、そうですね。とはいえ、私がこの力に対して懐疑的であり、警鐘を鳴らし続けるスタンスであり続けることは譲れないところです。…………ある意味それが、私が今の時代まで魂を繋いできた使命でもあるのですから」

 わたしたちを取り囲むように近づいてきた四人も、それぞれの言葉で祝福してくれる。
 特に、ずっと険しい表情を崩さなかったプラフタさんは、眉根を軽く下げて大きな安堵を伺わせながら、改めて実験体にされた羊さんの傍に近寄っていく。
 軽く一撫でしてから、前もって用意していた栄養価たっぷりの餌が入った桶を差し出すと、羊さんはのそりと首を動かして桶の中に首を突っ込み、一心不乱にむしゃむしゃと咀嚼をはじめる。

 あぁ、本当に良かった。きっとこれなら、すぐに本来の元気さを取り戻してくれるよね?

ソフィー
「…………ん、よし、じゃあ改めて、今度はその鍵がきちんと開錠できるものか、試してみようか」
イルメリア
「そうですね。これで開かなかったらそれこそ喜び損ですし。ほら、フィリスもいい加減離れなさい」
フィリス
「はぁい。じゃあエネルギー励起、スイッチオーン!」

 乱れた前髪をササッと整えながらのイルちゃんに促され、さっきよりは大分軽い気持ちで、わたしはもうひとつのスイッチを押す。
 すると筒の最先端から、ぽうっと5cmくらいの、圧縮された青く光る生命エネルギーが放出される。うん、ここもOK、完璧に制御出来てるっ!

フィリス
「よーしっ、それじゃー、開け、ゴマ〜〜〜っ!」

 なんとなく頭に浮かんだ台詞を口にしつつ、そのエネルギーの先端を開かずの扉の鍵穴に接触させる。
 すると、一瞬ドア全体がその光の色と同期して青白く光り、一気に装置の中のエネルギーが吸い上げられて――――。

イルメリア
「…………開い、た」
ソフィー
「おぉーっ、開いた、開いたねっ!!」

 ギギィッ、と軋んだ音を立てながら、自動的に扉が観音状に開いていく。どうにかわたしたちは、第二関門も突破することが出来たらしい。

 駆け寄ってきた二人とともに、扉の先を覗き込む。
 薄暗くてよく見えないけれど、なだらかにカーブしながらの下り坂になっているようだ。
 この研究室同様に足を踏み入れれば起動する灯りがセッティングされているようで、足元の不安はなさそうに思える。

プラフタ
「…………では早速ですが、進んでみましょう。アンネリースさん、この子の世話はお任せしてしまって宜しいですか?」
アンネリース
「ええ、もしもこの先に危ない事があった時、わたくしでは足手纏いですものね。歴史的成果の第一発見者になれないのは残念ですけど仕方ありません」
カルド
「手筈通り、僕とプラフタさんが先頭、リアーネさんが最後尾、という形でいいのかな?」
プラフタ
「ええ、この地形なら二人横に並んでも問題ないでしょうし、貴方達三人はもしもに備えて周りに注意を払っておいてください」
ソフィー
「ほいほい、まっかせといてよー」
フィリス
「はいっ!さぁ行こう、イルちゃんっ!」
イルメリア
「鬼が出るか蛇が出るか、ってとこね」

 警戒しながら踏み込んでいくプラフタさんとカルドさんの後ろに、イルちゃんと手を繋ぎながら続いていくと、やっぱりわたしの存在に反応するように、壁の灯りがぽっ、ぽっ、ぽっ、と幻想的な色合いを帯びて灯っていく。
 けれどその光量は研究室ほどではなく、どこかじめっとした雰囲気とも相俟って薄気味悪さはあり、改めてイルちゃんの手を強く握りしめると、向こうからも握り返してくる。

リアーネ
「…………このあたり、もしかすると地底湖に近接しているのかもしれませんね」
ソフィー
「あぁーそうかも。けどあの地底湖の構造も自然に出来たとは思い難いくらいだし、これだけ大掛かりな仕組みを作れるってそれだけですごいよねぇ」
プラフタ
「…………或いは、地底湖のほうがカムフラージュなのかもしれません。木を隠すには、ではないですが、本当に見つかってはいけないものを護るために、とか」
カルド
「うーん、僕としてはそれには諸手を挙げて賛成は出来ないですね。元々土地としては地の精霊力が強いのは間違いないですが、それだけでは足りなかったから、水の精霊力をも借り受けられるようにした、と考える方が、この大仰さに説明がつく気がします」
フィリス
「…………うーん、どっちみち思うのはぁー」
イルメリア
「思うのは?」
フィリス
「…………わたしのご先祖様、性格悪いっ!なぁんでわざわざ子孫にこんな苦労の種を残してくれちゃうかなぁっ!」
ソフィー
「あっはははっ、それはそうかもねぇー。多分その人も、プラフタみたいに無類の心配性だったんだよきっと」
プラフタ
「そこで私を引き合いに出すのは止めていただきたいですね。仮にもこの人は…………いえ、そもそも個人の力だけで成し遂げられたのかも決定的ではありませんが、一線を超えて禁忌に手を染めてしまった事実は厳然としてあるのですから」
イルメリア
「…………でもそれは、世界に致命的な被害は及ぼさず、かえって数百年に渡ってこの町の繁栄を誰にも知られずに支え続けてきた。そう考えると、正義とはどこにあるのか、って話ですよね」
リアーネ
「…………やはり、技術そのものが悪なのではなく、その甘美な誘惑に堕ちて悪しき用途を見出してしまう、人という存在の根源が、そもそも悪を内包しているのかもしれませんね」

 各々が心中に抱えるプレッシャーを誤魔化すように、あぁでもないこうでもないと推測を重ねながら、緩やかなスロープのようになっている曲道を慎重に進んでいく。
 もう結構な距離を下ったように思うけれど、同じ風景が続くために、ここではどうにも空間把握が混線しやすい。
 少しの変化も見逃さないように目を凝らしているのが馬鹿らしくなるくらい、道中何も起こらないままに進んだ先に――――。

プラフタ
「…………どうやら、到着のようですね」

 ヒタ、と、プラフタさんが足を止める。
 その視線の先には、坑道の出口。
 そしてその向こう側に広がる、石造りのホールのような空間を捉えている。

ソフィー
「…………なぁんか、いかにも儀式で使います、って感じの雰囲気だよね」
イルメリア
「同感です。ここで終点、全ての原因が解明すればいいんですけど…………そう一筋縄でいくかどうか」
リアーネ
「とはいえ、ここで尻込みしていても始まりません。踏み込みましょう」

 背中にしょっていた弓を構え、ビン、とひとつ弦を打ち鳴らして、リア姉がわたしたちを鼓舞する。
 プラフタさんもそれに呼応するようにアームを召喚し、泰然とした足取りで静謐な空間に足を踏み入れていく。
 その前後の守りに心強さを覚えつつ、中央にいるわたしたちも、いざという時に防御のためのアイテムを発動できるように準備しながら後に続く。

イルメリア
「…………広い、わね」
ソフィー
「うん、しかも壁とか、明らかに人の手で丁寧に作られてる割に、取り立てて意匠なんかが凝らされてるわけでもないし…………ね、ねぇプラフタ、こういう場所って、大概…………」
プラフタ
「…………えぇ、その懸念は正しいようです」

 最後尾のリア姉までが石畳の上に進んだ刹那、ピィーッ、ピィーッ、と、耳障りな警告音が辺り一帯に響き渡る。

フィリス
「わひゃっ!?な、なになにっ!?」
イルメリア
「っっ!?見てっ、正面っ!なにか出てくるっ!」

 イルちゃんの指の先を視線で追いかける。
 そこでは不自然に空間が歪み、幾度も鳴動して、その度になにかの存在感が膨れ上がっていく。
 なにかとてつもないものが、召喚、される――――。

カルド
「…………っっ、白銀のゴーレム…………ガーディアン、というわけですか。こういう時の御約束ではありますね」
リアーネ
「第三の試練、というわけですね」
フィリス
「や、やっぱりそうなのっ!?うーっ、もーめんどくさーいっ!!」
プラフタ
「具象化しますっ!皆さん、決して油断しないようにっ!」

 プラフタさんの警告と同時に、空間の鳴動が収まり、同時に警告音も解除される。
 そうして目の前に現出したのは、人体の数倍のサイズを誇る、エルトナイトによく似たプリズムを伴う白銀色に染まった、ゴーレム、としか呼びようのないなにか、だった。

ゴーレム
「…………侵入者、確認。パスワード認証を行います。一分以内に該当のメッセージをどうぞ」
フィリス
「ぱ、はすわぁどぉ!?」
プラフタ
「っっ、なるほど、ここは生体認証とは別に、侵入者を水際で妨げる最後の砦の役割なのでしょう。おそらくここを利用していた面々は、あのゴーレムの脅威を無効化出来たのでしょうが…………くっ」
カルド
「…………ふむ、もしかすると、まだ目を通していない文献の中に、その答えがあったかもしれませんね」
ソフィー
「…………え、えーと、じゃあつまり、二人にもそのキーになる言葉はわからない、って事?」
イルメリア
「ちょっ、ちよっとそれまずいじゃないっ!?フィリスっ、あんたなんでもいいから適当に語り掛けなさいっ、こういう時にこそ天性の勘の良さを見せるのよっ!!」
フィリス
「はぁっ!?む、無茶言わないでよイルちゃぁぁんっ!!パ、パスワードって言ったって…………チチンプイプイ!あっち向いてホイ!ビビデバビデブー!!」
リアーネ
「フィ、フィリスちゃんてば…………」

 とりあえずの思いつく限りの魔法の言葉を投げかけてみるものの、当然のようにうんともすんとも返事がない。
 そうこうするうちに、一分などはあっという間に過ぎてしまい――――。

ゴーレム
「…………パスワード入力に失敗。侵入者を第一級敵性存在と見做し、ジェノサイドモードを起動します」
フィリス
「じぇ、じぇのさいどぉっ!?」
プラフタ
「…………鏖殺とは、穏やかではありませんね」
ソフィー
「ちょっ、ちょっとちょっとぉっ!な、なんかすごい威圧感放ち始めたよっ!これヤバくないっ!?」
リアーネ
「くっ、みんな、臨戦態勢!まずは迎撃しましょう!場合によっては力押しで何とかできるかもしれないっ!」

 そのリア姉の覚悟の点った合図を潮に、全員が戦闘態勢を整える。
 そして、モード転換を終えて、瞳の色が紅く妖しく底光りしたゴーレムが、手にしていた剣を天にかざし――――。

プラフタ
「きますっ!」

 ――――振り下ろされる。

 すると、打ちおろされた地面が大きく割れ、それが波紋のように広がってわたしたちに襲い掛かってきた!

フィリス
「え、えぇぇっ!?なんじゃこれぇっ!?」
イルメリア
「くっ、もしかしてこの空間全てが、あいつの存在と完全に同期してるんじゃっ!」

 咄嗟に飛びのいたわたしたちの眼前で、地割れが急激に元の石畳に戻っていく。
 どうやらあの剣を媒介にして、この空間のあらゆる箇所を支配し変貌させ、武器として転化できる力を備えているらしい。

ソフィー
「つぎ、くるよっ!ダメ、防御結界は間に合わないっ!」
プラフタ
「これは…………っ、攻撃のサイクルが、途方もなく速いっ!?このままではジリ貧ですね…………」
リアーネ
「フィリスちゃん達、下がって!まとまっていたら絶好の狙い目よっ!私達が囮になるから、その隙になんとか攻撃をっ!」
フィリス
「う、うんわかったっ!リア姉達も気をつけてっ!」

 それでもわたしたちとて、様々な経験を積んでの百戦錬磨ではある。
 即座に相手の特性と攻撃パターンを分析し、反撃の足掛かりを作るべく即席でフォーメーションを組み直していく。
 プラフタさんとリア姉、それにカルドさんが前線で無縫に動き、手数の多い相手の攻撃を少しでも散らすように健闘しているものの、三人がかりでもまだ相手の手数の方が上回っている。

ソフィー
「なら、足止めっ!!」

 先生がブリッツストーンの雷撃を、ゴーレムの足回りに集中させて展開する。
 少なくともそれは、剣を振り下ろす動作の多少の妨げにはなったようで、そこに――――。

イルメリア
「食らいなさいっ、ペタフラムっ!!」
フィリス
「いっけぇっ!ブリッツコア・無属性っ!!」

 範囲を収束化させて威力を増したわたしとイルちゃんの攻撃が殺到する。
 けどそれを見たゴーレムは、今まで縦に振り下ろしていた剣を横薙ぎにして――――。

フィリス
「えええっ!?ふ、吹き飛ばされたっ!?」
イルメリア
「う、嘘でしょっ!?」
プラフタ
「ですが、隙は出来ましたっ!!」

 わたしたちの驚愕の影で、守勢に回っていたプラフタさん達が物理攻撃を仕掛ける!
 しかし、それもまた――――。

リアーネ
「っっ!?弾かれる?」
カルド
「…………これは、特殊な防御シールドが展開されているっ!?とぉっ!?」
プラフタ
「厄介ですね、おそらくこれも、根絶の錬金術を用いた特殊な守りのようです」
イルメリア
「でもっ!あいつ、物理攻撃は防ぎもしなかったけど、錬金道具での攻撃は迎撃したわっ!なら多分、こっちの攻撃は当たれば少しは…………っ!!」
ソフィー
「だったらっ!迎撃できないくらいの広範囲攻撃で押し潰すっ!プラフタ達っ、ちゃんと避けてねっ、いっけぇっ、終末の種火ぃっ!!」
フィリス
「よぉしっ、それならっ!やっちゃえーっ、聖水晶の分銅っっ!!からのっ、N/A〜〜〜っっ!!!」
イルメリア
「こ、ここが崩れたりしないわよねっ!?ええぃっ、天界の大掃除ぃっ!!」

 部屋全体を覆い尽くすような極光の光に追撃して、召喚された様々な物体がゴーレムの頭上に降り注がれる。
 地表からは灼熱の炎が忍び寄り、さしものゴーレムもその全てに対処することは出来ず、大きな衝撃音を伴ってあらゆる攻撃が炸裂する!

フィリス
「よぉしっ、これな…………ら…………うっ!?」

 濛々と立ち煙る砂埃の合間から、深紅の瞳が更に皓々と輝きを増すのが見て取れた。取れてしまった。

ソフィー
「う、うっそぉ、これでもほとんど無傷、だっていうの…………?」
イルメリア
「…………と、いうより、むしろ下手に傷つけたせいで、余計に怒らせてしまったよう、な…………?」
ゴーレム
「…………脅威レベル、最大。特級敵性存在と認知。ブーストモードを展開します」
フィリス
「ブーストってなにぃっ、って、わきゃあぁぁっっ!?!?」

 突如、無の空間からもう一本の剣が召喚され、二刀流になったゴーレムがそれを縦横無尽に振り回す!
 すると今までの攻撃に加え、地表を介さない剣戟が颶風と化し、不可視の刃として直接襲い掛かってきて、その猛威にわたしたちはあっという間に追い詰められていく。

フィリス
「うっそぉっ!?なんだよこれ反則だぁ〜〜〜っっ!!うひゃっ、わっ、ちょっ、攻撃が速過ぎるっととぉっ!?」
イルメリア
「危ないっ!伏せなさいっ!」

 バランスを崩したところに襲い来る衝撃波から、イルちゃんが押し倒すようにして守ってくれる。

フィリス
「ご、ごめんっ、ありがとっ!」
イルメリア
「お礼はいいからなにか打開策を考えなさっ、わっ、ひぇぇっ!?」

 どこかで隙をついて英雄薬でも投与したのか、イルちゃんが火事場の馬鹿力でわたしを抱きかかえながら華麗なステップで飛びすさるも、相手の攻撃が常にそれを先回りするように追いかけてくる。
 どうやら特級に危険、と見做されてるのはわたしたち錬金術士たちみたい…………って、先生はっ!?

ソフィー
「きゃーっ!わひゃーっ!くぅっ、こんにゃろっ!?」
プラフタ
「馬鹿っ!ソフィー、無理する場面じゃないでしょうっ!」
ソフィー
「で、でもっ、こいつはっきりあたしの方狙ってるしっ!だから今度はあたしが囮に、わわっ!?」

 なんとか眼だけで動向を追い掛けると、辛うじてプラフタさんがガードに回ることで凌いでいるようで、とはいえ完全に二人だけ部屋の向こう側に分断されてしまっている。流石にこれでは――――。

リアーネ
「これは…………厳しいわね。一時撤退しましょう。その上で、パスコードの在り処を調べて貰う方がいいわ」
カルド
「あぁ、僕も同感だ。最悪それが見つからなくて力押しするしかないにしても、きちんと戦略を練り直さねば無理だ」
フィリス
「だ、だけどリア姉っ!」
リアーネ
「だけど、じゃないのっ!このままじゃすぐに怪我人が出るわ!この攻撃の苛烈さからすればそれ以上だって…………私は、貴方達をそんな危険な目に遭わせない為にここにいるんだからっ!」 

 いつになく厳しい目でわたしを窘めたリア姉が、懐からクラフト袋を取り出し、ゴーレムと先生達の間で壁になるように炸裂させる。
 カルドさんも同じように、陽動と妨害だけを目的にアイテムを解き放ち、わたしたちも渋々ながらそれに倣うと、その隙間を縫ってようやく分断されていた先生達が合流に成功する。

プラフタ
「助かりました、リアーネ」
リアーネ
「なんの、それじゃ先に三人を逃がしますから、プラフタさんはもう少し付き合ってくださいっ!」
プラフタ
「ええ、さぁっ三人は走りなさいっ!」
ソフィー
「わ、わかったっ!」
フィリス
「うぅーっ、きょ、今日はこの辺で勘弁してやるーっ!」
イルメリア
「ちょっ!?あんたそれ完全に悪役の台詞だからねっ!?」

 かくしてわたしたちの第一回探索行はものの見事に失敗に終わり、すごすごと撤退を余儀なくさせられるのだった。
 あーもーっっ、ほんっっっとにご先祖様、意地悪いっっ!!なんなのもーーーっっっ!!!

 
posted by クローバー at 14:20| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

グリザイア ファントムトリガー vol,1・2

 全年齢で分割商法と微妙に気に食わないところはありつつも、やっぱりグリザイアシリーズは好きなのでこっちり買いましたとさ。

シナリオ(20/30)

 悲嘆の中で伸びゆく芽。

★概要

 あらすじとしては書きにくいのでサラッと概要にしておきます。
 今作はフロントウイングの人気シリーズ、グリザイアの世界観をそのまま踏襲した物語になります。
 世の中に対するペシミスティックでシニカルな視座を湛えつつ、それでもその中で漫然と生かされるだけでなく、数少ない選択肢の中から能動的に生きる意志を持って現実に立ち向かう事で、その中からしか見出せない輝きや価値を追求していくあたりは、過去作ともリンクするテーマ性を保持しています。

 今回はどちらかというと群像劇的な仕上がりになっており、一応主人公格のキャラはいるものの、普通のADV的に最終的に主人公がヒロインを恋愛的にも攻略する、みたいな空気感は今のところさっぱりなく、あくまでもこのシリーズらしい過酷な境遇の中で、ひたむきに前を見て生きる少女達のありようを、その価値観の特異性を抉っていく点に特化しているような感じですね。

★テキスト

 ハードボイルド、というと言い過ぎではありますが、どこか硬骨の香りが漂う文体は今回も健在ですね。
 言い換えれば火薬の匂いと手触りが顕著な読み口というか、色々と危うさや不条理が背景に潜んでいると承知しつつも、それでも今を懸命に、出来るだけ楽しく生きるという想いを共有する舞台性をしっかり滲ませてくる、というところです。

 いつもながらに歯切れよく、テンポよく、前フリなしにドカッと専門知識ぶっこんでくる遠慮のなさも含めてらしいなぁ、と思います。強いて言えばこういう作品だとTIPS的な補足があった方が親切だろうなとは思いますが、基本重火器業界に全く無頓着な私でも、ふーんそんなものかー、くらいのノリで大体楽しめるので問題はないはずです。
 ヒロインズもそれぞれに個性が際立っていて、それがぶつかり合う中での丁々発止は実に面白いですね。というかタナトスさん相変わらずすぎる。。。

★ルート構成

 なんてものはありません。一本道です。
 まあいずれ物語が急所に差し掛かったらバッド派生とか出てくるかもですが、今のところはそういうところは一切なし、ただ純粋に物語を楽しんでください、というところです。

★シナリオ

 基本的には一話完結方式のオムニバス的なつくりにはなっています。
 ヒロインズが所属する学園の背景など、グリザイアの楽園以後の状況の変化を色々と思わせぶりに見せつつ、結果として訓練を兼ねた形で現場の最前線に立つも、まだまだ至らない事も多い中、様々な事件を通じてヒロインの個性や魅力、必死に現実の中に居場所を作ろうとする様を投射していくことになるでしょう。

 一話目に関しては、新任の担任である秋桜里視点がメインで進んでいって、一応自身も脛に傷持つ身でありつつ、それでも普通の世界で育ってきた故の価値観のズレに煩悶しながら、それでも大人として、担任としてどう向き合っていくかを見出していくことになります。
 彼女がこの舞台に一応に馴染むための契機を紡ぎつつ、個々のヒロインのイメージを紹介する巻、という見立てでいいでしょう。

 二話目は、可愛い新キャラも出して引きを作りつつ、また外から降りかかってきた火の粉を払う中で、主にヒロインの一人であるレナの境遇や現状、そして希望にスポットを当てていく形になっています。
 おそらくこの先、三話目のパッケージは桐花であるように、五話目まででヒロイン一人ずつの過去と今を掘り下げる物語が展開されるのは予想出来ますし、その上でより大きな壁に全員で立ち向かうという王道的な展開が待っているのだろうとは推測できますね。

 物語としてもきちんと一話ずつで、読み手がスッキリした読後感を味わえる程度の完結感は醸し出しており、勿論社会の裏側の歯車として、いつ理不尽な要求にのまれるともしれない不安はありつつ、それでもこの一時の平和がかけがえなく愛しい、と思わせるだけのつくりにはなっています。
 この辺直近でプレイしたここのつに比べると、引きの清々しさで明確にこちらの方が分割という手法にマッチした形ですかね。まあ分割すんな、ってぶっちゃけた話もなくはないですが。。。

 ともあれ、舞台としてはどういようもなく殺伐とした雰囲気は孕みつつ、学園という檻でもあり保護舎でもある舞台の中で、能動的に育まれる戦友的な絆の美しさは流石ですし、まあよくそうボロボロと事件が舞い込んできたリ、巻き込まれたりするよね、って苦笑いする部分はあれど、期待通りの面白さは見せてくれたと思っています。
 しかしこれ、楽園から数年後が舞台って事ではあるのですが、いずれ向こうのあの二人も出てくるのかしら?と、一応PV的な部分ではその辺も示唆されていたし楽しみはありますね。というかタナトスさんの中の人って、この場合どういうシステムで形成されていたんだっけ?と、ちょっとうろ覚えな部分もあって、タナトスさんスキーな私としては、なんとなくグリザイア本編シリーズ、特にエンジェリック・ハウルをリプレイしたい衝動に駆られるのでした。。。

 内容的に細かく具体的に拾っていくほどの尺でもないですし、今日も手抜きざっくりな感想になってしまいますが、一先ずキックオフとしては掴みはいいと思いますし、後はこの先きちんとまともなスパンでリリースし続けてくれることを願うのみです。
 現時点では心にそれなりに響くものはありつつ、まだそれなり、という評価にしか出来ないので点数としては可もなく不可もなくのこのくらいに落ち着けておきますが、最終的な着地点をどういう形に見ているのか、という部分も含めて先行きには興味が尽きないですね。


キャラ(20/20)

★全体評価

 こういう学園に在籍せざるを得ないヒロイン達ですから一癖も二癖もあるのは当たり前で、むしろこれでも本編シリーズよりはとっつきやすいイメージはありますね。
 色々ぶっ飛んだところはあれ、大切なものを守りたいという思いの表出にかけては誰しもが素敵なものを持っていますし、その上にそれぞれの個性をしっかり組み上げている感じで、出番自体はまだ少ないヒロインでも印象度はかなり高く仕上がっていると思います。
 脇の大人たちのありようも含めていかにもだなぁ、と思わせるつくりですし、特にマイナス要因はなかったかなと思いますね。

★NO,1!イチオシ!

 今のところ桐花が一番好きですかねー。
 まあちっちゃい子だから、って部分は見逃せないですが(笑)、ああいうある意味確信犯的なツンデレというか、そういう風に警戒から入る、というありようの裏側に、身内として認めた相手への優しさや思いやりをしっかり隠し持っていて、でもそれが周りには筒抜け、ってところが愛らしいと言いますか、なんか好き。
 次は彼女の話っぽいので非常に楽しみです。

★NO,2〜

 クリスも御多分に漏れず好きなタイプ。こういう縁の下の力持ち的なおっとりしたヒロインはやはりいいですし、けど芯には頑ななものもある、という、未だ見えない顔の部分に想いを馳せると、むしろ守ってあげたい気分になるタイプじゃないかな、と期待感が膨らみます。
 レナの子犬的な懐き方も可愛いですし、ムラサキの掴みどころのなさも面白くて、ヒロインは本当みんな嫌味なく可愛く仕上がっているなと思います。

 チョコバニラも今後出番増えるといいな、と思うほどには魅力的で、しかしバニラってやっぱり実は…………なんでしょうかね?となるといずれ、姉妹揃ってレナとはガチバトる羽目になるんじゃ(笑)。
 あとタナトスさーん、相変わらずいい性格してますね(笑)。本体ともどこかで遭遇できることをチラッと期待しておきたいところです。


CG(17/20)

★全体評価

 基本的にシリーズ続投の形で世界観の違和は全くなく、コミカルでありつつどこか陰影的なキャラ造型は流石だな、と思います。
 まあでも質的に超好みか、と言われるとそこまででもなく、量的にも二つセットで、値段を鑑みると普通くらいなので、評価としてはとりあえずこの辺で様子見、という感じです。

★立ち絵

 現状は必要な素材のみ、という塩梅で、いずれシナリオ的に必要が出てくれば増えていくのかな?と思いつつ、今のところでもそれぞれの個性はしっかり出ていて可愛いは可愛いですね。
 ポーズはヒロインで基本2種類ずつかなと思いますし、それぞれに個性や躍動感が感じられるところは素敵です。
 服飾はまだほぼ制服オンリー、という形ですけど、いずれその辺も追加されていくといいなと思いつつですね。
 表情差分もこのシリーズらしい遊び心は多彩に詰め込まれていて、コミカルで可愛くもありつつ、シリアスな場面との温度差、そちら側の顔というものもしっかり覗かせてくれていて悪くないですね。

★1枚絵

 vol,1が通常20枚にSD3枚、vol,2が21枚に3枚、という配分です。基本一本2000円とすればまず水準にはあるでしょう。vol,1は紹介編なので満遍なく、vol,2はスポットキャラのレナ関連がかなり多くなっています。
 しっかり日常のほのぼの感と、戦場の殺伐感を描き分ける画力はいつもながら流石ですし、そのメリハリがあればこそ心に響くところも大きい、という感じで、基本的にいい出来だと思います。

 まあ特にお気に入り、ってほどガツンときたのもないっちゃないんですが、強いて言うならvol,1での着替えのクリスと、あとvol,2の向こうの教官とチョコバニラあたりが良かったですね。最後のメシウマもやっぱり感じ入るところはありました。


BGM(18/20)

★全体評価

 とりあえずvol,1〜2の間で、しっかりシナリオやキャラに合わせての曲追加がしっかり為されていたのは高く評価したいです。どうしてもこういう連作ものだと、音楽は使いまわしの部分が強く出てしまいがちですし、そこを払拭してくれたのは大きいですね。
 その上で量的には水準はクリアしていますし、出来もこのシリーズらしいスタイリッシュさと物悲しさ、勇壮さをしっかり醸し出していて良かったと思います。

★ボーカル曲

 全部で2曲。
 OPの『世界の果て』は、どこか終末感を孕みつつも、それでも前向きに、という雰囲気はグリザイアの系譜を感じさせますし、本編よりは明るい、に更にシフトしている点をどう感じるか、ですけど、少なくとも現状のこの作品のイメージにはマッチしていると思いますね。
 サビの疾走感なんかもさもありなんですし、普通にいい曲だなと思います。

 EDの『きみと僕の小さな願い』も、手にしたささやかな幸せをしっかり守り抜いていくという前向きな決意がそのまま反映したような色合いで、曲としてはOPの方が好きかな、とは思いますけど、特に違和感はなくスッと入ってくる曲ですね。

 まあ現状はこれで良しとして、その上でシリーズが進む中、大きな場面転換のところでより深刻さと悲壮感を背負った本編的なボーカルが新規投入されていくのを期待、というところです。

★BGM

 1時点で17曲、そこに2で8曲追加されて25曲ですね。
 全体的にスピード感があり迫力ある曲も多く、その上でしっかりしんみりさせるところではそれらしい雰囲気を強く出してくるメリハリ感もあり、バランスのいい構成だと思います。
 質も平均して高いですし、耳に優しく響きますね。

 特にお気に入りは『ゆき場のない僕らの場所』です。やっぱりこういうしっとり柔らかく、透明で今にも砕けそうな脆さを孕みつつ、でもだからこそ温かく愛おしい、という空気を滲ませるピアノの旋律は大好物ですね。
 その他お気に入りは『S・O・R・D』『Get Heart』『誰ソ彼』『Mission start』『Missing link』『午睡のティータイム』『ソメイヨシノ』『Machinary』『SOUL SPEED』『Bloody collar』『memento』あたりですね。


システム(9/10)

★演出

 基本的にはコミカルに動くし、戦闘シーンにもそこそこしっかりと臨場感はあって、この辺はシリーズで培った部分をしっかり投影できていますね。
 OPムービーもこのシリーズらしいどこか角張って無機質な空気感をスタイリッシュに表現していて中々良かったと思います。

 ただあのEDムービー…………いったいフロントウイングはどこに向かっているのか。。。
 そもそもあれ実写なのかCGなのかも私には判別つかなかったですが、正直あれで何を表現したいのか、何が狙いなのかピンとくるものはなかったなぁ、というのはありますかね。どうにも場違いな印象ばかりが募りました。

★システム

 基本的なシステム、操作性には特に問題なしですね。ジャンプ系統もより細かく搭載されるようになりましたし、まあそもそもシステム面で善し悪しを問うほどの尺でもない、という部分はありますが(笑)、大過なくスムーズにプレイできたので可もなく不可もなく、です。


総合(84/100)

 総プレイ時間8時間。それぞれじっくりプレイして4時間前後と見ておけば問題なく、まあこちらも値段相応、話の区切りとしても丁度緊迫感が噛み合う程度に仕上がっていると思います。
 現状ではまだ最終的な狙いが見え切らないのでなんともですが、取っ掛かりとしては普通に楽しく、グリザイアシリーズらしさも存分に孕んでいるので、ファンなら追い掛けてみても損はしないと思います。一応こちらは1話ごとに読み手にも気分の区切りをつけてくれる構成になってますし、その点ではここのつより敷居は低そう。

 まあでもいずれコンプリート版とかも出しそうですし、多分ですけど恋愛色もほぼないのではないかと思われるので、女の子が殺伐とした世界で戦うお話が好きだー、って特化的な趣味があるならともかく、完結まで待っていても特に不利益はないんじゃないかなとは思いますけどね。
posted by クローバー at 06:13| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月10日

胸の弾力は素敵だが

 新妻ラブリケは愛子をクリアです。
 んーまぁ、一先ずキャラとしての愛子は期待以上に可愛くて大変宜しかったです。基本的に前向きでノリもいいし、保育士という仕事で培った部分もあるのか、相手との共感性に優れているからすごく関係性の中で安らぎと癒しを覚える感じですよね。乃々の友達・相棒的な感覚も良かったけど、個人的な趣味としてはこちらの方が嵌った、というところ。
 体型的にも一番グラマラスヒロインではあるけど、それを感じさせないお茶目さや可愛さ、素直さがあるのも素敵でしたし、その点では満足でした。

 ただ結局シナリオ面ではそこに落ち着くのか、ってのはあるねと。
 専業主婦であろうと、子供を持つことに対する覚悟や難しさに遜色はない、と言えばそれまでですけど、やっぱりファクターとして全ルート一律にそこ、ってなると弾力性がないというか画一的というか、もう少し工夫はあっても、とは思うんですよね。
 とはいえこのシリーズ的に変に苦難や悲劇投入も出来ないだろうし、ある程度現実を見つつ、とは言ってもリアルに重荷の方が強くなる話なんて見たくないのも事実ですからね。昨日は母親との関係性が絡んでくるかも、とか書いたけど、例えば母親の介護と子育ての二重苦でも健気に頑張るヒロインとか、確かに見たいとは思わないし。。。

 でもねぇ、これ結構気になるのが今後のアペンド展開で、どのルートも妊娠しました、これから幸せな家族を作りますー、ちゃんちゃん、で終わってしまうと、時系列的にアペンドってその後の妊婦生活から出産までの時期にバチコンじゃね?とは思うわけで。
 まあ安定期に入ればHな事も出来るのだからその辺ぬかりなし、というか敢えてニッチな方向性でという考え方もあるのだけど、そのあたりどう見せてくるのかは注目していきたいところですよね、って話です。

 さて、最後は雪ですね。学生結婚は中々にリスキーだけに、そこからの将来との天秤、みたいな部分で色々面白さが出てくるといいんですが。
 しかし全然関係ないけど、このシリーズプレイしてて久しぶりに日向やりたくなったなぁー、あの子はほんっとうに可愛かったしなぁー。
posted by クローバー at 19:50| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月09日

やっぱり立ち絵が欲しい

 DSiFの感想をアップしました。
 最近ちょっと感想手抜き気味でアレなんですが、まあ実際FDでもあり、実に普通の構成でそれなりに面白い、としか言えないですからねぇ。世界観の掘り下げを更にどうこうする、と言えるほどの種もないわけで、このあたりは中々頑張って書こうというモチベーションを喚起しないというか。。。
 でもゲームとしては値段相応とまでは思わないけど、予想できる範疇の価値を求めて勝った人をがっかりさせるものではないですし、個人的に鳴の出番がけっこう多かったのは嬉しかったのです。

 新妻ラブリケは、乃々をクリアして、愛子と結婚するまで進めました。
 んー、相変わらずアイテム拾いなどで総当たり的な面倒さはありますし、多分全てのイベント分岐まで網羅は出来てないとは思うけど、CGは全部埋まったからいいかな、という感じ。その辺年々完璧主義から遠のくというか、ファジーになってるというか。。。
 シナリオ的にも波の大きい職業を二人で敢えて選んで、という中で、周りの人間に支えられて、当人たちの努力もあって基本的には順風満帆、というそつのないつくりですし、なんだかんだ君ら結構休みまくってるけど余裕あるね?という気分にはなる。
 その上で、自営業、特に自己の腕がものを言う仕事で直面する、家庭と仕事の切り分けの難しさも、結構すんなりした形でクリアしてそれが本丸、という、安定してはいるけど物足りなさはあるつくりではあるなぁと思いました。

 まあ一方で結婚した上で、そういう遠慮ない関係だからこそ頼めるフェティッシュなHとか、気兼ねない生活感とかは楽しめましたし、どうしてもバランスは難しいと思いますけどこのあたりが妥当なのかな、とも。アペンドもあることを考えれば豪華なのは確かですしね。
 ただアレだ、滝田さんの立ち絵実装パッチはまだですか?(笑)
 ぶっちゃけ穂花にも立ち絵欲しいし、エモートで動かせとまではいわないけど、やっぱりメインヒロイン三人だけで、かつその三人にまず横のつながりはない、って構図だと、見た目の寂しさは出てきちゃうなぁと。こういう仕組みのゲームだから仕方ないと言えばそうだけど、もちょっとその辺でファジーさがあってもいいと思うのよ私は。

 愛子ルートはある意味大人的な恋愛というか、フラれてもなおアタックするというありようって一般的なエロゲ展開だと少ないからちょっと目新しいですよね。
 その理由としてもまた最低限頷ける要素は用意されていますし、されをも包括して受け止める覚悟を定めて、互いに歩み寄って、という空気感はとてもいいです。あと穂花の出番が多いのも楽しいし、恋人になって口調が砕けてからの雰囲気もかなり好きです。愛子さん中々にかわゆい。

 まあこの人は結婚願望強そうだよなぁ、子供も欲しがりそうだよなぁ、という点で、旦那の収入がどうかはともかく、乃々よりそこのハードルは確実に低いので、専業主婦にもなっている事だしシナリオのフックは母親絡みに強く繋がってきそうな予感はしますな。
 ともあれ純情清楚を地で行く感じなので、それがどう結婚生活の中で開発されていくかもちょっと楽しみでありつつ、サクサク進めていきたいと思います。
 …………バグもまだ時々強制終了があったりなんだりで怖いんですがね。

 フィリスアフター更新。フィリスー、家にも肩揉みに来てー(笑)。
posted by クローバー at 18:27| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

イルメリアのフィリス観察日記・十一日目

 ――――フィリス・ミストルートは、見かけ通りに感激屋である。

イルメリア
「…………でき…………たぁ…………っ」

 パタリ、と筆を擱くと、途端にずっしりと全身に疲労感が圧し掛かってくる。
 苦戦は予想していたものの、いざ取り掛かってみれば、ロードマップづくりはその推測を遥かに凌駕する難解さだった。

 文字通り、あちらを立てればこちらが立たず、その都度に細かく微調整を重ねて、筆を投げ出したくなる気持ちを使命感で抑え込み、全知全能・全身全霊を込めて取り組んだ。
 今、その成果が、数枚の羊皮紙に結実している。

フィリス
「イルちゃーん、こっちはとりあえず特製の最大品質中和剤作りまでは終わったよー。…………って、あっ!もしかして、出来た!?」
イルメリア
「あぁ、フィリス…………えぇ、なんとか捻じ伏せてやったわ」

 私が集中している間は、気を使ってか自分の仕事に真剣に取り組んでいたフィリスが、空気が弛緩したのを敏感に感じ取ったのか、ちょこちょこと私の傍まで寄ってくる。
 そこで虚勢を張る元気も流石になく、私はズキズキと痛む瞼を揉み上げながら、完成したレシピをフィリスに手渡す。

 眩しそうな目つきで、恭しく両手でそれを受け取ってくれたフィリスは、早速目を輝かせて熟読を始める。
 その眼光は鋭く、一分の隙も見逃さない、という覇気が漲っていて、いつの間にかこの子も本物の錬金術士になれているんだな、と、切ないような、誇らしいような気持ちになる。

 やがて、最後の一枚を読み終わったフィリスが、束の間目を閉じてふぅっ、と息を吐き――――。

イルメリア
「…………ど、どうかしら?自分では特に齟齬もなく、出来る限りシンプルにまとめられたと思うのだけど…………」
フィリス
「……………………す」
イルメリア
「す?」

 隙だらけ?すごくダメ?
 自分でも不思議なくらい、ネガティヴな言葉を連想してしまう。こんな自虐的なのは私らしくない。

 心臓が、ドキドキする。
 どうしてこんなに、フィリスの評価を受けるのに緊張しちゃうの――――?

フィリス
「っごぉぉぉいっ!!!」
イルメリア
「っっ!?」
フィリス
「すごいすごいっっ!!なにこれっ、めっちゃよく出来てるっ!わたしでもちゃんと理路を追えるし、先生の素案から手順も大分簡略化されてるしっ、これなら絶対上手くいくよっ!」
イルメリア
「っっ、そ、そう…………なら、良かった…………」

 ドッと、安堵の気持ちが押し寄せる。
 目の前で瞳を輝かせ、全身をゆすって歓喜を表現しているフィリスのテンションの高さが、じんわりとやり遂げたという達成感を運んできて、感無量でいつものように軽口を叩けない。

 でも逆にそれが、フィリスには反応の薄さに思えたようで――――。

フィリス
「ってぇっ、もっとイルちゃん喜ぼうよーっ!これ本当にすっごいよっ、わたしはじめてイルちゃんが天才だって思えたよっ!」
イルメリア
「そ、それはまぁ、私の自称はほとんど自己を鼓舞するための虚勢…………ひゃっ!?」
フィリス
「でもそんなことなかった!イルちゃんはやれば出来る子だったんだよっ!あーもぅっ、ありがとっ、わたしに出来ない事、こんなに一生懸命、ボロボロになるまで頑張ってくれてありがとぉーっ!!」
イルメリア
「ひゃんっ!?ちょ、ちょっとぉっ、そんないきなり抱きつかないでよっ!」

 まるでお預けを解除された懐っこい犬のように、感極まったフィリスがぎゅうっと真横から飛びついて、頬をスリスリと寄せてくる。

 歓喜に燃える肌の熱と、少しばかりの薬品じみた香り。
 この子だって私の影で、地味な仕事をコツコツと頑張っていただろうに、それをおくびにも出さずに純粋に私を褒め称えてくれていると、一切の根拠なく信じられるだけの存在感が、感情のうねりがそこにはあった。

フィリス
「ふっふふー、イルちゃんイルちゃぁーん♪」
イルメリア
「あっこらっ、くすぐったいってばぁっ、あ、あんたちょっと鼻息荒すぎるわよっ!?」
フィリス
「えー、だってだってぇー、こうしてくっついてるの気持ちいーんだもんっ♪それともイルちゃん、こうされるのイヤ?」
イルメリア
「い、嫌ではないけどっ、アイタ、タタッ、せ、せめてもうちょっと手加減してよっ、ずっと机に向かってて全身バッキバキなんだから…………っ!」

 そう言いつつも、私の意識の大半は、フィリスの肌のすべらかな感触と、抱きしめられる温もりに支配されていた。
 あぁ、この前キルシェのアトリエに泊まった時、抱き合って眠るの断っちゃったの、勿体なかったな、なんて脈絡のない想いが忽然と浮かび上がってきて、人肌のえも言えぬ心地よさに恍惚となる。

 と思えば、普段フィリスがリアーネさんにじゃれついているシーンや、昼頃に見たソフィーさんを労っている姿もモヤモヤと浮かんできて。
 あぁ、我ながら頭を使い過ぎて躁状態になっている。注意力の転導性が亢進している――――。

フィリス
「あははっ、ごみんごみん。でもねー、イルちゃんにはこのくらいしないと、わたしがほんっとうに感謝してるし、喜んでるってのちゃんと伝わらないかなー、って思って」
イルメリア
「なによそれぇ…………。まるで私が人の情を解さない冷血動物みたいにぃ…………」
フィリス
「えーでもぉ、イルちゃんって出会った時から感情をはっきり表に出してるようで、肝心要のところは我慢したり、諦めたりする癖、ついてない?」
イルメリア
「…………それは…………」

 その苦笑を交えながらの指摘に、昔の私ならムキになって反発しただろうし、最近のいつもの私なら笑って受け流していただろう。
 でも、でも今はなんか、無性に――――。

イルメリア
「…………そう、かもね。どうしたって私は、生まれつきかくあるべし、こうすべき、って世界の中で生きてきたの。あんたみたいに太平楽に、ただこうしたい!って想いのままに身体と感情が反応してくれないのよ…………」
フィリス
「…………えっへへへー」
イルメリア
「な、なによいきなり、気色悪い笑い方して?」
フィリス
「ううん、やっとそれ認めてくれたー、って思ったのと、あと今は、感情のままに素直に喋ってくれてるなー、って。それだからね、いつも以上にイルちゃんを近くに感じるのっ!」
イルメリア
「そりゃあこれだけベタベタしてれば…………」
フィリス
「ちーがーうーのー!!物理的に、じゃなくて精神的な距離!いつものイルちゃんはもっと大人びてて、こう仰ぎ見るような感じでちょっと遠いけど、今だけはわたしの傍に降りてきてくれてるっ!って。えへへ、本当はわたしがその高さにはやく至れればいいんだけどねー」
イルメリア
「…………だからそういうのも買い被りだってば。お互いに、それぞれに足りないものを大きく見過ぎてるだけ」
フィリス
「へっ?お互いに、って…………?」
イルメリア
「…………私だって、あんたが羨ましいの。こうして誰にだって屈託なく甘えられて、スルッと懐に入り込んで心をほぐせる、そういう在り方って素敵だなって…………」
フィリス
「…………でへへへへぇ〜♪」

 いつになく思考が空転し、ただ思いつくままの稚拙な言葉がどんどん漏れ出していって。
 それを耳にしたフィリスが、更にだらしなく頬をとろかして、笑う。
 確かにそれだけで、精神的な疲れが吹き飛ぶような感覚に至れるのだから、心を空っぽにして温もりに身を任せるのも悪くはないのだけど――――。

イルメリア
「ほら、いつまでもこうしてちゃダメでしょ。これはやっとはっきりスタートラインが見えただけ、大変なのはまだこれからなんだから」
フィリス
「あーもうっ、イルちゃんの真面目っ子〜!いいじゃんもう少しくらい〜」
イルメリア
「あんたのもう少しはキリがないから信用できないのよ。ほら、離れなさい…………っっ!?」

 惜しい気持ちを振り捨てながらじゃれつくフィリスを振り解き、立ち上がろうとしたところで、グワンと重い立ち眩みが襲い掛かってきて、再びストン、と尻餅をつくように椅子に腰を落としてしまう。

フィリス
「あーっ!ほらっ、いわんこっちゃないっ!イルちゃんはすんっっっごく疲れてるんだからっ、ちゃんと少しは休まないとダメだよっ!!」
イルメリア
「…………んん…………っ、そ、そうね、我ながら集中力を使い過ぎたわ…………。こんな難問に取り組んだのは、本当にはじめて、だったから…………」
フィリス
「うんっ、だからほらっ、ちゃんとリラックスして、しっかりリセットしないとっ!…………あっ、もしなんならイルちゃんにもマッサージ、したげるよっ!」
イルメリア
「えっ?そ、それは…………い、いいわよっ、大体あんただって疲れてるのに変わりないでしょうに――――」
フィリス
「もんどーむよーっ!ほれいくよーっ!」
イルメリア
「っっ!?」

 再び勢いよく近づいてきたフィリスを跳ねのけるだけの体力もなく。
 私は観念して、肩回りに刺激が走るのを身を固くして待っていたのだけど――――。

イルメリア
「ふぇっ!?あ、あれっ?」
フィリス
「イルちゃんには特別コース!まずは目の周りの疲れからねー♪」

 伸びてきた両手が最初に触れたのは、私の額と頬骨だった。
 私の顔の上半分を覆うようにし、五本の指を期用に動かして、こめかみと瞼の上を優しい手つきで揉みしだいていく。

イルメリア
「〜〜〜〜〜っっっ!?んっ、んんぅっ!?」
フィリス
「にひ〜、さっきイルちゃん、自分で目尻モミモミしてたもんねぇー、そりゃーあれだけ机に齧りついてたら疲れるよねぇー、はーい、もっとリラックスしてねー」
イルメリア
「んっ、あ、は…………っ、こ、これ、ぇ…………っ」

 気持ちいい。
 圧倒的に、気持ちがいい。

 先程自分で揉んだのとは全く別物の快感が走り、思わず身悶えしてしまう。
 優しく触れた掌の熱が、じんわりと皮膚の奥にまで沁み込んで、凝り固まった疲れを溶かしてくれるような、不思議な感覚。
 今まで、誰かにこんな風に世話してもらう経験なんてなかったから、その麻薬的な愉悦に私は思わず熱い吐息を漏らし、全身がピリピリと痺れ、湧き上がる肉体と精神両面からの快美に、小刻みに身体を震わせて翻弄されてしまう。

フィリス
「どうかなぁー、これで痛くない?ちゃんと気持ちよくなれてる?」
イルメリア
「う、うんっ、こ、これっ、なにこれっ、すご、ぉっ、気持ち、いいわ…………っ!」
フィリス
「でしょでしょ〜!こうしてぎゅーっ、って掌を押し付けてるだけでも、じんわりと疲れ、引いていくでしょ?」
イルメリア
「うぁ〜〜〜…………ほ、ほんとだわ…………。自分の手と、ぜんっぜん違う…………!」
フィリス
「ふふー、これもリア姉が教えてくれたんだけどね、怪我を直すことを手当、っていうけど、あれは昔、文字通り手を当てる行為を指してたらしいよ。自分以外の誰かにただ患部に触れてもらうだけで回復するって、人体の神秘って感じだよね」

 フィリスが得意げに捲し立てる。
 きっと今は、さぞドヤっとした顔をしているのだろう。
 目を塞がれているのでそれが見られないのが、今はじめて勿体ない、と思えた。おかしいわ、いつもなら調子に乗るな、って想いの方が先に立つのに…………。

フィリス
「はいっ、じゃあ次は首回り〜」
イルメリア
「んくっ!?んっ、ああっ、んっ、そ、そこ効っく、ぅ…………っ!?」

 温もりの残滓を残して目元から離れた手が、間断なく首筋に伸びていく。
 首の骨周りや、耳の裏側などをやわやわと刺激され、凝り固まっていた筋や神経がじゅわぁっ、と解れていくのがわかる。
 昼間ソフィーさんがされているのを見ていた時は、ちょっと反応が大袈裟なんじゃないかって思っていたけど、とんでもない、自分の意思とかけ離れたところで、喜悦の声が漏れるのをどうしても止められない。

フィリス
「あらまーお客さん凝ってますねー。やっぱり普段から頑張ってくれてるからだねぇ、感謝感謝〜」
イルメリア
「そ、そんな事言ったら、んっ、あんた、ふぅっ、だって…………っ!」
フィリス
「わたしはへーきだもん、たっくさん食べて一晩ぐっすり寝れば大抵の疲れは取れるから。にゃはは、まだまだ若いからねぇ〜」
イルメリア
「馬鹿、な、ことを…………んぅっ、私とあんたは、ひんっ、同い年、で、しょうが…………あぁぁ…………」
フィリス
「こんなに全身カチカチにしてちゃ説得力ないなー。やっぱり子供らしく生きてる方が人生楽なんだよ。わたしはそれしか出来ないし、それでみんなに時に迷惑かけてるのも知ってるから、だからこういう時にきちんとお返ししないと、ねっ!」
イルメリア
「んぃぃっ!?」

 首の根元に両の親指が強く押し込まれ、痛みと快楽の絶妙なハーモニーにビクン、と大きく全身が震えてしまう。
 あぁ、もうダメ、本当に気持ち良過ぎる――――。

フィリス
「ほいっ、じゃあ最後に肩と背中もねー、ふふふー、これは先生並に揉み甲斐がありそうだなぁー」
イルメリア
「もう、好きにして…………。けど、あんたは本当に、誰かに何かできる時、嬉しそうにするわね…………」
フィリス
「そりゃそうだよー、自分の手で大切な人に喜んでもらえるのなんて、いっちばん楽しい事じゃない?」
イルメリア
「…………普通、そこまで徹底的にお人好しではあれないものよ」
フィリス
「そっかなぁ?あ、もしかして昼にわたしのこと不思議な顔で見てたの、それが理由なの?」
イルメリア
「っっ、それも…………あるけど…………」
フィリス
「それも?」

 歯切れの悪い私に対し、一度手を止めて、覆いかぶさるように後ろから私の目を覗き込んでくる。
 どこか期待感とからかいの色も交えつつ、私の本音が聞きたい、という想いはつくづくはっきりと伝わってきて、私はガードの緩んだ心の赴くままに――――。

イルメリア
「…………単純に、羨ましかっただけ。私もあんな風に触れられたい、お世話されてみたい、なんて、柄にもない事考えちゃってたから…………やっぱり最近の私、随分とここの空気に感化されちゃったんだわ」
フィリス
「にへっ、にひひひひー、いいんじゃないそれ、わたしはすっごくいい傾向だと思うなぁー。そっかそっかぁー、イルちゃんってこんな風に無遠慮に身体を弄られるの苦手かなー、って思ってたけど、もう遠慮する事ないねっ!」
イルメリア
「…………だからって、のべつ幕無し引っ付かれても困るのよ?」
フィリス
「わかってるよー、あれでしょ、てーぺーおーを弁えろってやつ!」
イルメリア
「TPOね。まったく、あんたときたらアホなんだから…………」
フィリス
「ふふーん、わたしのフィンガーテクでアホみたいな声を漏らしてる人に言われても全然堪えませーん!」
イルメリア
「んっ、んんんっ!!うぁっ、あっあっ、そこいいっ、効くぅっ、そこっ、そこもちょっと強くんんっ!んはぁぁ…………っっ!!」

 それが全く大言でない所がなんとも悩ましい。
 理性までもが溶かされそうな気持ちよさに、いつしか全身が弛緩し、ふわっと倦怠感や眠気が襲ってきて。
 でもそれに身を委ねて意識まで手放すのはあまりに勿体ない気がして、私は大分疲れの癒えた目をフィリスに見えないところで瞬かせ、その生理的欲求を打ち払う。

 そんな私の気も知らず、懇切丁寧な手つきで肩や背中をほぐしてくれる、小さいけれど温かい手が、本当にかけがえのないものに思えて――――。

フィリス
「…………前にね、リア姉に錬金術で簡易なマッサージ器を作って、プレゼントした事があったんだ」
イルメリア
「…………ふぇ?なに、よぅ、藪から棒にぃ…………」
フィリス
「ほら、やっぱり自分の手じゃどうにも出来ない事ってあるし、それを補助する道具があれば便利かなーって思って、リア姉も喜んでくれたんだけどね…………でも、やっぱり最近違うな、って思いはじめて」
イルメリア
「…………んっ、はふ…………っ、なにが、よぉ…………?」
フィリス
「確かに時間は取られちゃうけどね、でもマッサージってこんな風に、ちゃんと人の手で、温もりを分かち合ってする方が嬉しいし、気持ちいいよね、って。ふふっ、これからはイルちゃんにも時々、してあげるからね〜♪」
イルメリア
「…………い、いいけど…………でも交換条件。だったらたまには、私にもあんたをマッサージ、させなさい。ただされるがまま、ってのは癪だもの」
フィリス
「あはっ、大分疲れが取れて、イルちゃんらしさが戻ってきたね♪でもどうかなー、これはこれでマッサージって結構奥が深い技術なんだぞぉー」
イルメリア
「ふん、だ。今だけ大きい顔をしてなさい。その内習熟して、あんたにも蕩け声を上げさせてあげるんだか――――んふぅっ!?」
フィリス
「うんうん、こんな風にだねっ、あー楽しみだなー♪」
イルメリア
「い、いきなり強くするのは反則でしょうがっ!あーもぅっ、なんで、どうしてこんなに気持ちいいのよぉ…………」
フィリス
「それは勿論、わたしがイルちゃんを愛してるから〜♪」
イルメリア
「っっ、もうっ、馬鹿な事言ってないでやるならやるでちゃんと――――あら?」

 ――――キィッ、パタンっ!!

 玄関が開いて閉じる音が私達の耳に届く。
 プラフタさん達は完全に研究所に泊まり込み体制を敷いているし、となるとやはり戻ってきたのは――――。

ソフィー
「たっだいまー!やー大漁大漁〜♪…………おっ?」
リアーネ
「ただいま。二人とも、捗ってるかしら…………あら?」

 荷物を置いてすぐに奥の部屋にやってきた二人が、揃って私達の様子を見てちょっとだけ首を傾げ、すぐににこやかに笑う。
 そこでなんとなく、先程まではなかった気恥ずかしさが一気に込み上がってきて――――。

イルメリア
「そ、そのっ、もういいわ、ありがとフィリス」
フィリス
「そう?うん、じゃあ終わりっと。リア姉お帰りー、ねぇねぇ、夜食作ってー♪」
リアーネ
「夜食?また夜通し根を詰めて頑張るつもりなの?」
フィリス
「だって聞いてよー、イルちゃんがすっごいの、本当に完璧なレシピ作ってくれて、これはもうすぐやらなきゃ!ってやる気が漲って止まんないのっ!でもほら、腹が減っては戦は出来ぬ、とも言うでしょ?だから、ねっ!」
リアーネ
「はいはいわかりました。それで?フィリスちゃん何が食べたいの?」
フィリス
「えっとねぇー…………グラタン!きのこたっぷりのやつ!あ、イルちゃんが好きなほうれんそうも入れたげてっ!あとねぇ、それとねぇ――――」

 ついまた要らぬ見栄を張ってしまった私に頓着することなく、フィリスはリアーネさんの腰にまとわりつくようにしながら、あーでもないこーでもないと夜食のリクエストを上げつつキッチンに消えていく。
 あれはおそらく、なにかすぐに出来るものをつまみ食いする算段に違いない。やれやれ、本当に気紛れというか、なんというか…………。

ソフィー
「…………えへぇー…………」
イルメリア
「な、なんですか、いきなり生温かい笑い方して…………」
ソフィー
「いやね、昼間にあんなわかりやすく指を銜えてたのに、フィリスちゃんは気付いてる様子がなかったから不憫だなー、って思ってたけど、もしかして念願叶った?」
イルメリア
「っっ、そ、そんな露骨に態度に出てました、私?」
ソフィー
「そりゃーもう。なんていうかまぁ、イルちゃんも色々難儀だよねぇ。そりゃ『お友達』って距離感に慣れ親しんでないと、ああいう時に感情を上手く制御できないのはわかるんだけどね」
イルメリア
「…………年の功には敵いませんね」
ソフィー
「わっひどっ!?そこで歳の話するかなぁふつー」
イルメリア
「そっちから私の触れられたくない所に踏み込んできたんじゃありませんか」
ソフィー
「触れられたくなかった、の間違いじゃない?」
イルメリア
「……………………」
ソフィー
「あはは、図星だー♪ほんと、不思議な魅力のある子だよね、フィリスちゃんって」
イルメリア
「…………悔しいけど、同意します」

 今日またひとつ、あの子は私の中に巣食った頑なななにかを解いていった。
 そしてそうされる事に、もう忌避感よりも心地よさを覚えるようになっている私がいることも、確かな事実なのだと認めざるを得ない。

ソフィー
「でもそれでいいんだと思う。人なんて十人十色、それぞれにいいところも悪いところもあって、けどそれを補い合う思いやりさえあれば、きっとすごく大きなことだって成し遂げられるはずだもん。…………少なくともあたしとフィリスちゃんだけじゃ、こんな完璧な仕様書は絶対作れなかったし」
イルメリア
「そんな、まだ中身を見てもいない内から…………」
ソフィー
「見なくても、あのフィリスちゃんのはしゃぎぶりが全てを物語ってるの。そういう直観的な信頼感に、イルちゃんももう少し重きを置いた方がいいんじゃないかな?」
イルメリア
「お二人みたいに、感性だけでは生きられません」
ソフィー
「あ、言ったなぁ!ふふっ、でもホント、これからもっと、あたしにも遠慮しなくていいんだからね。もう二人とも充分に一人前の錬金術士なんだし、対等に気負いなく付き合っていきたいから」
イルメリア
「…………ええ、そうします。確かにソフィーさんには、先達の威厳ってものは微塵もありませんしね」
ソフィー
「またナチュラルに毒舌っ!?うーん、実はフィリスちゃんってすごいよね、この棘に始終晒されながら全く気に病まないんだもん」
イルメリア
「あの子の言語フィルターは、大体の言葉が誉め言葉に変換されて聞こえるんですよ」
ソフィー
「あははっ、そうかもねぇ。うん、まぁとにかく、あたしからもありがとって言っとくね。後はひたすら実作業に従事するだけだし、采配も任せるから好きに使ってくれていいからねっ!」
イルメリア
「わかりました。少なくともフィリスの三割増しでノルマ、組ませてもらいますからね」

 今までの私は、自信ありげに振る舞っていても、どこか誰かに迷惑をかけかねない事には及び腰だった。
 けど、もう今は違う。
 身に帯びた責任感をしっかり全うするべく、そして期待に応えるべく、存分に二人を扱き使ってやる――――そんな不敵な決意が胸中に満ちていく。

 まだ、夜は長い。
 でもきっと私達なら、真剣に、集中力を保ったまま、けれどちゃんと楽しみながら新たな道を、夜明けを切り拓いていけるはずだ――――。
posted by クローバー at 13:45| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする