2017年04月11日

これは拾い物ですな

 ナツイロココロログHSの感想をアップしました。
 しかしこれ、本文でも書いたけどここまで書きたいことが見当たらない作品って珍しいわ。特に褒めるところもないんだけど、不満な部分も別にないって、ある意味ではレアで貴重なのかもしれないと思ってしまったり。
 まあなにかしらのフックがないとそこから感想を膨らませる事も出来ないので、その点では難儀なんですけど、まだ熱も下がってないし丁度良かったというべきかしらん。。。

 神頼みは花夜、由香里、七海までクリアしました。
 いやーそれでですね、勿論楽しみにはしていたんですけれど、思っていた以上に花夜が私の好みジャスボケど真ん中で、これは非常に嬉しい誤算でした。当然遥そらさんだし期待もあったけどサブだしなぁ、と思ったら中々とんでもない。。。
 まあ別にシナリオ面で、とか特段になにか驚きがあるわけでもなく、実にSPという立場らしい葛藤や躊躇からの脱却、そこで開き直っての素直デレと、基本的な要素をきっちり抑えてる、ってだけではあるのですけれど、元々の気質がぐんにゃりしてて尖ってないのとか、体型的にも華奢で愛らしいのとかも相俟って、なんか知らんが素晴らしい破壊力でございましたよマジで。

 まあ後、サブルートでだと妙に七海が張り切るというか頑張るというか、大切な花夜の為ですから!的に色々と独り立ちして勝手に幸せになっていくのもいいですよね。それを踏まえて心置きなく、て好循環も出来ているし、本当に恋人モードでの素直な甘えっぷりが愛らしくてたまりませんでしたなー。
 こういうキャラにお約束の、普段はあまり笑わないのに柔らかい笑みを向けてくれたり、とか、いざデートになってはじめて可愛い服を着てきてくれる、なんてお約束も網羅していましたし、なによりきちんとHシーンで制服黒ストを堪能させてくれたので私としては申し分なし、でしたねー。
 でもアレだ、花夜らしいイントネーションと若干鼻にかかったような雰囲気を残しながら喘ぐのって難しそうね、とかは思った(笑)。

 ともあれ、なんか花夜で存分に満足出来たせいで、その後のメインの二人がやっぱりシナリオの厚みとしてはもう一歩かなぁ、ってところはあっても気にならず、むしろニコニコこのちょろい空気感を存分に楽しめた気がします。。。
 由香里に関しても、というかヒロイン全般に言える事だけど、それなりに明確に好意を向けられたら、それを意識して釣られるように好きになってしまう、って心理的効果の部分を最大限に恣意的に活用しているというか、最低限の理屈面でのフォローもあるけど基本的には好き、って思われてるから好きを返してるってアクション、展開がほとんどだったりしますね。
 この子の場合は本質的にちょっと難しさがあるからその分分かりにくい、って個性はあるにせよ、概ね自分から擦り寄っていって、って事ではあるし、恋愛模様としては簡潔ではあるな、と。

 その上で彼女自身がじゃあ何か抱えているのか、それが縁を完全に紡ぐうえで弊害になっているのか、って部分でも、もう少しなにか奥行きがあるのかと思えば、あくまでも自身の過去の傷がもたらす眇めにのみ依拠させてる、ってところで、そこはちょっと物足りないなと。つか眼帯って絶対何かの伏線と思ってたんだけどなぁ、敢えて世界の半分を見ないようにしているのだー、的な暗喩オシャレでしかないのかい。。。
 まあでもこの子のクールなようで情熱的なデレも充分に可愛かったですし、体型的な部分では花夜に並んでドストライクなのは間違いないので万事OK。まあここの作品って、元々サイズ差をそんなに強調しないスタンスっぽいですから、大きい子でもさほど気にならないってのはありますけれど。

 七海もシナリオとしては、立場そのものが抱える問題は前向きにクリアできる目途が早々に立って、その上で最初から懸念されていた問題に対してのみ、ってのはちと弱い気もしますが、それでもこの素直でちょろく、一度恋を知るとどんどん傾倒していく愛らしい様には微笑みが絶えませんでしたね。そして常に温かく支えてサポートしてくれる花夜さんがまた素敵です。
 寄り添いはするけど、前に進むのはあくまで自身の問題、という腑分けは鈴奈ルートでもあったように、神頼み、って前提がある以上きっかけはともかく、そこからは、って意図がある程度浸透している結果なのかなとも思いますし、まあそれにしても善意の同調圧力の性質の悪さはなぁ、ってなりますよね。
 それを受け取る側がむしろそれを活用できるくらい悪賢ければいいのかもですけど、ここまで清廉だと雁字搦めになってしまうという意味でも、色々と考えさせられるところはあります。

 あと七海が今のところ一番1枚絵の出来が良かったなと。無論基本的には好きなベクトルですし、ただここまで若干真横とかで甘さや粗さを感じる時があったので、その点でメインヒロインの面目躍如、なのか?
 時々シーンでしっかり1枚絵を見せるためにウィンドゥが上に行くのは、まあ試みとしてはわかるけど微妙っちゃ微妙。やっぱり多少違和感はある。
 メーカーによってHシーン専用の邪魔度合いが低いウィンドゥを使い分けたりとか、後は紫や緑茶みたいな可変ウィンドゥのほうが違和感なく見られるかな、というのはあるけれど、突然出てきた分もあるのでなんとも。目の動かし方としては上下上下で変わりないんだけど、下で文章読んでから絵を見る、という流れが何となく沁みついちゃってますからねぇ。

 ともあれラストは麗です。まあこの子もここまでの流れを見るに、そこまで重い話にはならないんじゃないかなとは予想されますし、逆にそれでいいのかな、という気もしてきたリね。楽しみ楽しみ。

 ここのつの体験版は…………やってる暇ないからスルーでいいか。スタッフ的には基本信頼できますしね。
posted by クローバー at 18:17| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ナツイロココロログ 〜Happy Summer〜

 取り立てて引きになるトピックもなかったんですけれど、鈴がすんごい好きだったのと、一応現実電脳両面でのハーレム追加しますよ、ってアナウンスに心動いたのでこっそりと購入。

シナリオ(16/30)

 FDらしいFD。

★概要

 この作品は、2016年5月に発売されたナツイロココロログのFDになります。
 コンテンツとしては、本編ヒロイン4人+1人のそれぞれのルートに依拠した後日談と、あと電脳世界、現実世界編それぞれでのハーレム展開をちょっとだけ、というコンパクトな内容になっていまして、基本的に本編でヒロインかわぇぇっ!って萌え狂った人たち向けのサービスオンリー、という作品です。

★テキスト

 特に言う事もなく、本編同様にある程度ライターさんの癖は出るにしても、世界観・雰囲気はしっかり共有させている感じですね。
 読みにくいところはないしヒロインズは普通にすんごく可愛いしで、さして文句はないです。改めて評価すべきところもないですが。。。

★ルート構成

 ゲームスタートから該当のシナリオを選択するのみの簡易仕様です。まあこの辺も仕方ないですね。
 FDならではのギミックや遊び心は一切ない、至極シンプルで王道的な構成と言えます。

★シナリオ

 そしてどうしましょう、我ながらこの作品単品で見ると、全くもって書くべきこと、書きたいことが見当たらないんですが。。。
 というかむしろ、よく本編の感想でこの作品をああまでしっかり掘り下げて書いたな私、と自分でビックリしてしまうのですが(笑)、ともあれ今作に関しては、その本編の個別シナリオの流れ、ひとつの山場の克服を経て得られた絆と平穏の先に、それぞれの未来像の輪郭をくっきりと描き出していく、というお話、というところでほぼ集約しきれてしまうんですよね。。。

 結局本編感想で触れた、心的外傷が大きめのヒロインの将来性の担保に対するフォローとかも特にはなく、ただ綺新を除くと舞台設定が1年後の夏、となっている中で、それぞれに拙いながら自分の道を模索している、その上で今でも和気藹々と過ごせていますよ、という表層的な部分から、ある程度の安心感を組み止め事は出来る、という程度でしょうか。
 まあ正直本編解釈に関しては、今読み直してみると流石に穿ち過ぎじゃね?って部分もなくはないので、基本的にこの部に関わって、電脳世界という一種の逃避先、ストレスの捌け口を確保した事で、多少なりとも詰まっていた息が抜けて、心身のバランスが取れてきた、と考えても無理筋ではないので、私的にはそこで納得しておこうと思います。

 そして今作の個別の特徴は、その電脳世界の新機能追加が統一的に採用されていて、まあこれが正直都合がいいというか、電脳世界という非日常的な空間で、今まで出来なかった、この世界のどこでも人の目を気にせず、よりプライベートな活用が可能になる機能のテスターとして参画する事で、ちょっとしたスリルのある環境でのイチャエロが楽しめますよ、ってところですかね。
 その辺もシンプルにファンサービス的というか、電脳世界での疑似恋愛が本物に昇華していく、という、オタク気質としては頗る羨ましい状況と、自己投影感を一層加速させてくれる要素にはなっていると思います。

 個々の状況を踏まえつつ、ずっと未来まで寄り添っていくだけの心構えをつくる程度のシリアスは交えつつ、基本的には生身とアバターどちらともイチャエロしますよ、ってところで、シーン数もFDにしては多めに確保されていますし、本編の流れだと無理筋に感じたアバターの再復なんかも上手く辻褄合わせてやってくれているので、どのヒロイン、どのアバターが好き、って人でも一定水準満足できるものには仕上がっていると思われます。
 先生ルートも短めですけどそれなりに切実な部分をしっかり掬い取って面白味がありましたし、相変わらずエウ君は可愛いので充分に楽しかったですね。

 おまけ要素のハーレムに関しては、電脳も現実も香奈恵椎菜の梅宮姉弟のマッドな才能が変な方向に開花、的なifではあるし、がっつりリアルハーレム、ってんではなく、あくまでも夢想をそのままチラッと投影させてみました程度の匙加減なので、極端に期待できるものでもないです。
 ただまぁそのために新衣装とかも用意されていたり、桃色空間から離脱した後のこそばゆいもどかしさとかその辺は中々楽しめて、まあ個人的には現実鈴が鬼のように可愛かったのでそれだけでも満足ですはい。。。

★シナリオ総括

 …………うん、頑張ってみたけどこのくらいが限界でした。。。流石にもう本編の内容も薄れているし、今更にそちらとリンクしての発展論的な話を膨らませられる気力もないですし、そこまでするほど重みのあるシナリオでもないとは思いますしね。
 本当に、別になんにも悪いところはないですが、本編からプラスアルファ、という中で、幸福な未来像の典型的パターンから逸脱して面白い、なんてものはないし、固有の何かを生かしてのフックを効かせているわけでもない、その意味では箸にも棒にもかからないフラットな内容ではあるので、短いですけどこのくらいで話はまとまってしまうし、点数としてもFDとしては標準、程度に落ち付けるしかないな、ってところです。


キャラ(20/20)

★全体評価

 こちらも特に発展的に魅力を発掘、という部分はさほど多くなく、無論本編より前向きで明るくなったヒロインの可愛さを堪能できるだけでも満足感はありますけれど、ってところ。
 元々のキャラ造詣の良さ、そして人間関係にほとんど軋轢を持ち込まない優しい世界観がそのまま延長されている、というところで、期待通りのものは見せてくれましたし、敢えて減点する理由もないですが、この作品単体でどうこう、とは言えませんね。

★NO,1!イチオシ!

 んぅ〜〜〜、やっぱり鈴はすんごくいい妹ですよねぇ〜〜。ちょーかわいい。
 基本的に妹、って立場から、他のルートでも他のヒロインより出番が多いし、そこではもう時間も経って自分の気持ちの整理もついたからか、献身的にその関係を祝福し支える構図が自然に確立されていて、その視座からでも魅力がマシマシで最高でした。
 勿論個別やハーレムでのお兄ちゃん大好きモードの愛らしさも炸裂していましたし、基本的に癖のないザ・エロゲ妹、って感じですけど、その無個性感が逆に魅力的な個性になっている、という稀有な例ではないかと思います。

★その他

 まあプラスアルファ、という観点で特に付け加えるところもないんですよね。。。
 より前向きに自分を振り返って見られるようになった小都音や、自然体で幸せを享受している久遠、綺新も可愛いですけれど、それ以上のこのヒロインならでは!ってインパクトはなかったので。


CG(19/20)

★全体評価 

 質に関しては本編よりも全体的に上がってきたかな?と思うくらいに、時折ハッとするほど素晴らしいクオリティのものがあって、基本キャッチーでキュートな色合いに特化している感はありますけど、そこに仄かに扇情感などが塗されていて素敵でした。
 ただしFDとはいえ、量的にはややギリギリ、ではあるので、満点まではどうかな、ってところです。方向性としては当然相当に好み度合いの高い絵なので、今後も追いかけていきたいとは思いますが。

★立ち絵

 新規素材としては現実での和風喫茶ウェイトレスと、新たなデート服くらいでしょうか。
 ウェイトレスは、それぞれのキャラテーマ色を上手く使っての、古式ゆかしさと華やかさを両立させたデザインが実に素晴らしく、特に鈴がほんっとうに可愛くて可愛くて…………!
 新私服に関しては、基本可愛い寄りのつくりの中で、鈴だけより身近な部屋着ってのも個人的にポイント高いのです。なんか結局好みが鈴に吸引されていくのはもう痘痕も靨状態、ってことなのか。。。
 ポーズや表情差分そのものに変化はないけど、やっぱり鈴は眺めているだけでとことんまで幸せになれる可愛さでしたしね。

★1枚絵

 通常が51枚にSDが9枚で、計60枚。
 7800円定価ではあり、最近のFDとしてはこれでも良心的なお値段なのかな、と思いつつ、量的にもギリギリ水準までは届かせている感じですね。
 質に関しては本編の時より安定感もあったし、質感的にもグッとくるものは多くて、満足度は高いですね。

 特にお気に入りは3枚。
 1枚目はクオンバック、見た目の清楚さと扇情的なポーズのギャップが良かったですし、お尻のラインがキュートで好き。
 2枚目は鈴背面座位、浴衣も素敵だしちっちゃい子の背面座位も好き、基本的に私好みが集約されてて嬉しかったなと。
 3枚目は小都音あーん、このあざといばかりのキラキラ、くっ可愛いじゃねぇか!となりますね(笑)。

 その他お気に入りは、んーまぁ基本的に全部好きですよホントに。本当にこれはちょっと…………的なのは全然なかったですしね。構図的に奇を衒ってもないし王道的で驚きはないけど、安定した可愛さを提供してくださったと思います。


BGM(14/20)

★全体評価など

 こちらは本編からの追加はボーカル1曲とそのアレンジBGMのみ、ということで、評価はいつものFD採点になってます。
 新規OPの『PRIZM/CIRCUiT』も爽やかで疾走感があって悪くない曲ですけど、特にガツンと来るほどではなかったので特に加点要素としてはない、ってところですね。


システム(8/10)

★演出・システム

 こちらも本編から特に進歩も変化もなく、というところで本編準拠。
 相変わらずEDクレジットがカットできない上に、本編と同じED曲なのがなんともですな。まあこの曲嫌いじゃないのでいいですが。。。
 立ち絵鑑賞に関してはもっと引きに出来る仕様は欲しいなと思います。


総合(77/100)

 総プレイ時間10時間。
 本編ヒロインが1,5時間ちょい、香奈恵が1時間弱、ハーレムも1時間ずつあるかなくらいの分量ですね。まあFDとしてはこんなものでしょうし、ある意味で非常に過不足のない王道的なFDと言えるでしょう。

 なので正直本編がすっごく好きでした!って人以外に敢えて買う理由はないと思いますし、ただ絵的には本編より良かったかも、と思うくらいなので、その辺目当てなら、ってところでしょうか。
 個人的にもまあこんなものだろうと思っていた、その予想のど真ん中で収束したというところで特に不満はないけど大満足とまではいかない、って感覚です。でも久しぶりに可愛い可愛い鈴を堪能できたのは嬉しかったです。

posted by クローバー at 04:06| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月10日

ちーん

 うーん、今日からまた頑張らにゃ、と思っていた矢先なのですが、一気に寒さが戻ったせいか風邪をぶり返したのに加え、お仕事でちょっとトラブって色々と貴重な時間を費やしてしまった…………。
 まあそっちはなんとか捻じ伏せたのでいいんですが、おかげで一切進捗なしとか。明日は色々頑張れる、と思いたいんですが、ここから更に体調悪化しないといいなぁ、というところで、今日は生存報告まで。

 …………あー、こう書くとアレだ、フォーチュンアテリアルの陽菜の、付き合い報告の恥じらい「ご報告、まで」を思い出してリプレイしたくなる。。。我ながら色んな所にリプレイしたいスイッチが多過ぎて困りますな(笑)。
posted by クローバー at 18:36| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月09日

共通でやって欲しいのに

 神頼みは鈴奈、真央までクリアしました。
 んー、さしあたり鈴奈に関しては、元々の目的意識が、っていうのがある中で、より耽溺できるものがある状況でどうする、ってのは当然主眼になってくると思ったし、それを依存だったり手を取り合って、でなく、あくまで一個の人間として尊重して突き放す、という選択そのものは悪くない、と思うんですよね。
 ただ全体像として山場がそのワンイシューに集約されてしまったのは味気ないし、仮にもメインヒロインルートでこの薄さはなぁ、とは思うのです。これがサブルートと言われてもそんなに違和感ないですぜ。。。

 個人的にこういう偶像からの脱却系は好きな方なので、この子の気質ともマッチしていたと思うしその点では楽しめました。鈴奈もヒロインとして期待通りには可愛かったですしね。
 ただ今回、微妙に一枚絵安定感ないなぁ。元々こんなんでしたっけ?でも69のシーンのだけは超可愛かった。

 んで二周目からはいつも通りサブも攻略できるのかな?と思って最初からジャンプさせてみたら案の定、でしたので、予定通りにそのまま真央に。
 あの時点でそういう衝動と、縁が確立するという部分に対する説明付けがいかにも恣意的でご都合なのは否めないですけど、その辺はサブだから仕方ないですよね、と。

 ただねぇ、個人的には屋上面子の解放を目指す中で、主人公が架け橋となっての一般勢との繋ぎ、その筆頭として真央はいるのかな、と思っていただけに、このルートで恋人になってからようやく屋上面子に紹介されるのでは遅いだろ、むしろ共通で仲良くなれよ!とは思わざるを得なかったのです。
 このルートの七海とか真央との相性面含めて一番活き活きしてるなー、って思えたし、こういう風通しの良さ、背伸びしない柔らかさが共通で育まれて、その上で、というワンクッションがある方が面白いと思うんですけどね。まあまだ七海個別で可能性がないわけでもないんでしょうが。

 とにかく、ヒロインとしての真央は妄想炸裂系ではありつつ基本常識人、そしてお約束のお嫁さんにしてあげるぜ幼馴染ではあるので、ベタだけど安定して可愛いとは思いますね。思いが通じた時の涙目で抱きつく1枚絵はげに素晴らしきかな。でももうちょい尺は欲しいというか、0にするのにも王道過ぎてこっぱずかしいというか。。。
 次は…………素直に花夜さんでいいかしらね、こういうもごもごした喋りの遥そらさんは今までにないタイプでちょっと面白い。

 フィリスアフター更新。そしてサブクエの展開をまだ考えていない。。。
posted by クローバー at 18:44| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

イルメリアのフィリス観察日記 七日目

 フィリス・ミストルートは、じっとしているのが苦手である。

フィリス
「あ〜…………う〜…………む〜…………」
イルメリア
「…………」
フィリス
「…………ん〜…………んぅ〜…………うぁ〜…………」
イルメリア
「…………っっ!」

 ――――パタンッ!

イルメリア
「もうっ!なんなのよさっきからっ!冬眠前の熊みたいに奇怪な唸り声上げながらうろうろチョロチョロとっ!!」
フィリス
「はぇっ!?え?イ、イルちゃん!?わ、わたしそんな事してたっ!?」
イルメリア
「…………今ので自覚なしとか、どんだけ本能的に生きてんのよあんたってば」

 どうやらあれで、本人的には構ってアピールではなかったらしいと気付き、私は呆れ交じりに、些か乱暴に閉じてしまった本を書棚に戻す。
 流石にこうも周りで落ち着かなげにされれば、集中も途切れるというものだ。

フィリス
「ほ、本能的ってなんだよぉ〜!わたしはただ、手持ち無沙汰なのが落ち着かないな、なんか出来る事ないのかな、って思ってただけで…………」
イルメリア
「あのね、普通思惟思索ってのはゆったり寛ぎながらするものよ。まあ人それぞれにスタイルがあるのは認めないでもないけど、あんたのそれは文字通り、下手の考え休むに似たり、ってやつね。ううん、むしろ無駄に動いて体力消費してるだけ害悪?」
フィリス
「ひ、ひどい…………そこまで言わなくてもいいじゃ〜ん!そりゃあ確かに?何を考えていいかもわかってなかったかもしれないけどさぁ…………だけど先生達が頑張ってくれてるのに、って思ったら…………」

 あの地震から一週間が過ぎた。
 町の復興はほぼ完遂され、採掘も一部区域を封鎖した上で一般業務は再開している。

 そして、カルドさんの協力を得られたことで、例の隠されたアトリエに残された古文書の解読作業も昨日から本格的にはじまり、引き続きプラフタさんとソフィーさんはそちらに携わっている。
 要するに、基本的に私達はその調査の結果待ち、という状態なのだが――――。

イルメリア
「別に負い目に感じることはないじゃない。物事はなんにせよ適材適所なのよ、一々出来ないことに素人が出しゃばって、プラスに働く事なんてほとんどないわ。それに私達だってこの一週間働き詰めに近かったんだし、今のうちに英気を養っておけ、ってのも理に適ってる話じゃない」
フィリス
「…………イルちゃんって存外そういう割り切りは上手だよねぇ」
イルメリア
「存外、ってのが不本意なんだけど。私は元々自分のペースをかっちり決めて動きたいタイプだもの。休む時は休む、能率を高める上では大切な事なのよ?」
フィリス
「わ〜かってるけどさぁ〜、でもでもっ、結局休むって言ったって、イルちゃんお勉強してるようなもんじゃんか!それでホントにリラックスなんて出来てるのかな、って思っちゃうんだけど?」
イルメリア
「…………無趣味なのは認めるけど。でも私にとってはこれが一番落ち着くのは事実なのよ。あんたもそうして無聊を囲ってるくらいなら、いつもみたいに御用聞きに飛び出していけばいいじゃない。探せばなにかしらあるでしょ、お得意の人助けの種くらいは」
フィリス
「うー、それはそうだろうけど…………でもそっちにかまけてて、いざわたしたちの力が必要、ってなった時に動けないのは良くないんじゃないかな、ってどうしても思っちゃって…………」

 なんとも煮え切らない。
 こういう時にリアーネさんがいれば上手く宥めたり気を逸らしてくれて楽なのだが、あいにく今日も狩りに出掛けている。
 町に滞在している限りは出来る限り役に立ちたいという心根は、姉妹揃って本当に頭が下がるものだけど、自分に出来る事を弁えて動けるリアーネさんと違い、こんな風に責任と責任感を履き違えて色々と拗らせているのは地味に厄介だ。

フィリス
「…………ねね、やっぱりもう一度、ヴァイスラークに行ってみない?もしかしたらアンネリースさん、戻ってきてるかも…………?」
イルメリア
「まだでしょ。小噴火した火山の周辺の被害調査と原因究明、となったらすぐに終わるとは思えないし、健脚で神出鬼没な人だから、闇雲に探して見つかるものでもない。徒労に終わるのが関の山よ」
フィリス
「う、うぅーっ、だ、だったら古文書を調べるののお手伝い…………」
イルメリア
「それをしようとして、大量に本を抱えたままずっこけて派手にバラバラにしたのは誰だったかしら?貴重な資料を散逸させたりしたら困るし、そうでなくても片づけで二度手間をかけてるようじゃ本末転倒でしょうが」
フィリス
「うぐっ、う、うぅーーーっ、なんだいなんだいっ!またイルちゃんてば正論ばっかりで、ほんっとにイジワルなんだからぁっ!!」

 肩を怒らせながら地団駄を踏む様は、まるっきりに駄々っ子だ。
 でもそうやって焦る気持ちの根源にある純粋さを知っていればこそ、共感は出来ずとも理解は出来るし、ここにいる限りなにもかもを忘却して気を休めるのが難しいのもわからないではなくて。

 だったら仕方ないか、と、私は腹を括ることにして――――。

イルメリア
「…………なら、フロッケに行きましょう」
フィリス
「へ?フロッケ?な、なんでまたいきなり…………」
イルメリア
「どうせここにいても休むに休めないなら、物理的に隔離するしかないじゃない。その上で、折角なら温泉にでも浸かってばっちりリフレッシュしてきた方が今後の為よ」
フィリス
「か、隔離ってえぇー…………?ず、随分とイルちゃんらしくない突飛な提案だね?」
イルメリア
「あんたの顰に倣ったのよ。こんな風に燻ってるくらいなら、最初から完璧な休暇の体を無理やり作って動いた方が余程建設的だし、それに…………」
フィリス
「それに?」
イルメリア
「どうも一連の天変地異はこの大陸全土に広がってるみたいだし、ならその現地調査、という名目は立つ、罪悪感も薄れるでしょう?」

 そう畳みかけると、フィリスは尖らせていた唇をペロッと一舐めして、小首を傾げて上目遣い。
 その光彩には徐々にキラキラ感が増していって、心がそちらに傾倒しかかっているのが手に取るようにわかる。

フィリス
「…………それってぇ、イルちゃんも勿論一緒してくれるんだよね?」
イルメリア
「…………口にしたからには付き合うわよ。あの温泉にはもう一度入りたいとは常々思っていたし、いい機会でしょ?」
フィリス
「やたっ!!イルちゃんと裸の付き合いだ〜ん〜ふふふ〜♪」
イルメリア
「だ、だからって変なイタズラしたら怒るんだからねっ!私達はあくまで体を休めに行くの、かえって疲れるような事してきたら承知しないんだからっ!」
フィリス
「んも〜、相変わらずお堅いなぁイルちゃんは。ともかくっ、そうと決まれば行こうっ、すぐ行こうっ!あっ、それにどうせなら久しぶりにキルシェちゃんにも会いたいなぁ〜!向こうに着いたら誘ってみようかな、滞在してくれてるといいなぁ〜♪」

 一転しての浮かれ具合に、現金なものだと内心嘆息してしまうが、でもこうでなくちゃフィリスらしくない。

 かくして私達は、念の為の言伝を残し(ソフィーさんが羨ましそうに爪を噛んでいたのは見て見ぬふりをさせてもらったわ)、テキパキと雪国装備を整えて(やると決まれば迅速なのよね…………)一躍フロッケへと向かうことになった。

………………

…………

……


「ひとっとび〜♪」


……

…………

………………


フィリス
「うっわぁ〜、相変わらず一面真っ白だねぇ〜!ぶるるっ、うぅー、それにやっぱりさむぃぃぃ!歯の根が合わないぃぃ…………」
イルメリア
「そうね、息が吐いた傍から凍り付きそう。でも私、こういう引き締まった寒さは凛と背筋が伸びる感じで嫌いじゃないわよ」
フィリス
「じー…………」
イルメリア
「な、なによ?」
フィリス
「ううん、改めて見ても、そのロングコートでの立ち姿かっこいいな、って。そういう意外と大人っぽいのをサラッと着こなせちゃうあたりイルちゃんだよねぇ」
イルメリア
「そ、そう、かしら?その…………フィリスのその衣装も可愛いわよ、ふわふわもこもこで」
フィリス
「うん、知ってるー!これお気に入りだしねー、だけどこの辺りまで来ないと暑くて着られたもんじゃないし、ふふっ♪」

 帽子のボンボン飾りを遊ばせるように、フィリスは雪の上でくるくるとスピンを決める。
 こういう時に自分の子供っぽさを糊塗しようとはせずに、無邪気に全力で楽しめるのもこの子の美点だと思う。

フィリス
「さってと!温泉は恋しいけど、さしあたりはキルシェちゃんのアトリエに行ってみよう!もしかしたらお困りのことがあるかもだしねっ!」
イルメリア
「ま、世はなべて事もなし、であってくれたほうがいいんだけどねー」

 無造作に手を引かれて、私達はフロッケのなだらかな坂道を上っていく。
 町の人達もそろそろ私達の顔を見知ってくれているのか、明るく声をかけてくれて、フィリスも快活にそれに愛想を返している。

 私も軽い会釈を返しながら、この寒くても温かな雰囲気に、そしてなにより手袋越しの温もりに安らぎを覚えて、なんだかんだで私も張り詰めていたのかな、と気づかされる。
 元はフィリスの為に提案した事だけど、思い切って来てみて良かった――――そう思ってフィリスの横顔を覗き込めば、向こうも横目でこちらを見ていて、同時にプッと吹き出してしまう。

フィリス
「もー、なにイルちゃん、盗み見は感心しないなぁ〜♪」
イルメリア
「そっちこそ。そそっかしいんだからちゃんと足元を見て歩きなさい」
フィリス
「いいんだもーん、いざとなったらイルちゃんが助けてくれるし、最悪でも一蓮托生。ん〜ふふふ〜♪」
イルメリア
「私はイヤよ、ころけて雪塗れになるなんて」
フィリス
「だったらわたしの分も周りに気を払っておいて〜」
イルメリア
「もぅっ、こんなとこでまで甘ったれ発動なの?」
フィリス
「だってイルちゃんがこうしてデートに誘ってくれるなんて思いもしなかったからさぁ〜、な〜んかもうさっきからウキウキワクワクしちゃって止まらないんだよ〜♪」
イルメリア
「デ、デートって…………させてることはまるっきり子供と保護者のくせに、しゃあしゃあと都合のいい言葉を選ぶじゃない」
フィリス
「いいじゃんいいじゃん、こんなの心持ちの問題だし、それに一々泡を食ってくれるイルちゃんも可愛いし〜♪」

 じゃれるように軽く肩をぶつけ合いながら、弾むような足取りで歩いていれば、目的地のアトリエまではあっという間だった。
 それでも私の手は離さないまま、フィリスは勇んでドアに駆け寄り、トントントン、と軽やかにノックする。

フィリス
「…………あれ?返事がないなぁ?キルシェちゃ〜ん?」

 再度、もう少し強めにノックをしても、中から反応はない。

フィリス
「うぅー、留守なのかぁー…………。残念、折角来たのに」
イルメリア
「仕方ないわよ、彼女だって引く手数多の優秀な錬金術士なんだし、早々暇してることもないでしょう。先に温泉に立ち寄って、帰る前にもう一回顔を出してみましょう」
フィリス
「むぅー、つまんないのー…………」

 フィリスはわかりやすく下唇を突き出して膨れながら、名残り惜し気に窓から中を覗き込もうとする。

???
「あの子なら今は、村外れに墓参にいっとるよ」
イルメリア
「えっ?」
フィリス
「うん?」

 すると、後ろからしわがれた、けれど穏やかな声がかかる。
 二人して振り向くと、そこにいたのはいつしかフィリスにこの衣装を仕立ててくれた品のいい老婆だった。

フィリス
「わっ、おばあちゃんお久しぶりー!元気そうだねぇ!」
老婆
「ほっほ、おかげさまでの。服の具合はどうかえ?」
フィリス
「うんっ、こっちこそおかげさまで、愛用させてもらってますっ!すんごく丈夫だしふかふかであったかいし、とってもお気に入りだよっ!」
イルメリア
「その、ご無沙汰してます。…………それで、墓参、ですか?」
老婆
「うむ、今日はあの子に錬金の術を叩き込んだ祖母の月命日での。律儀なあの子は墓参りと掃除を欠かさんのだよ」
フィリス
「へぇー、確かにそういう几帳面で、でも情が濃いのはキルシェちゃんっぽい!ねねイルちゃん、わたしたちもご挨拶させてもらおうよっ!」
イルメリア
「でも、慕っていたおばあさまを偲んでいるなら、その静謐を邪魔しないほうがいいんじゃないかしら?」
フィリス
「そうかなぁ?キルシェちゃんとお友達になりましたー!って報告してあげた方が喜ばれると思うんだけど」
老婆
「ほっほ、そうじゃの。あやつも生前は賑やかなのが好きじゃったし、死ぬまで好奇心の衰えんやつじゃったからの、めんこい孫娘に友達が出来たと教えてやった方が安らかに眠れるやもしれん」
フィリス
「でしょっ!ほらぁ〜、イルちゃんはちょっと杓子定規に考えすぎなんだよ〜」
イルメリア
「勝ち誇らないの!それにどうせ、反対したって簡単に引き下がるつもりなんてさらさらなかったでしょうに」
フィリス
「へっへぇー、さっすがイルちゃん、わかってくれてるぅー♪」

 墓地までの道を丁寧に教えてくれた老婆に改めて礼を言い、二人で雪道を掻き分けながら目的地へ向かう。

 村の共同墓地は、高台から更に奥まった場所にあった。
 隘路を抜けた途端、清らかで厳粛な銀世界が広がり、そこに真新しい小さな足跡がひとつ、迷いなく真っ直ぐに刻まれていて、積もった雪に脚を取られながらそれを追いかけていくと――――。

フィリス
「…………あ」

 既に雪かきと掃除は済ませた後なのだろう。
 下手をすると雪に埋もれて見えなくなってしまいそうな、背の低い墓石の前で、キルシェは静かに祈りを捧げていた。
 流石にその神聖な祈りに割り込んでいくほどにはフィリスも無粋ではなく、二人してその小さな背と、透き通った頬をじっと見つめて、その終わりを待つ。

 やがて、心の中での語らいが終わったのか、ふぅー…………と長く白い息を吐いたキルシェが、こちらに振り向いて――――。

キルシェ
「…………フィリス。イルメリアも」
フィリス
「やっほーキルシェちゃん。もしかして、気付いてた?」
キルシェ
「うん。でも待ってくれてるみたいだったから。二人ともどうしてここに?」
フィリス
「村の人にね、ここだって聞いたから。ねっねっ、良かったらわたしたちにもご挨拶、させてくれるかな?」
キルシェ
「もちろん。おばあちゃんも、喜ぶ」

 相変わらずに言葉足らずだけど、歓迎してくれているのはわかって。
 案ずるより生むがやすしと考えすぎを自戒していると、フィリスがお墓の前で膝を抱えて磊落に語りかける。

フィリス
「こんにちはっ、キルシェちゃんのおばあさんっ!わたし、フィリスって言いますっ!キルシェちゃんと同じ錬金術士なんだよ、えへへ、まだまだ駆け出しですけどねっ!」

 それはまるで、実際に目の前に誰かが立っているような、力の抜けた自然な語り口で。

フィリス
「キルシェちゃんには、わたしが公認試験を受ける時にたっくさんお世話になったの。だから、わたしよりちっちゃいけどとっても尊敬してるし、それに今でも友達だけど、これからもっともっと仲良くしたいって思ってます。だからどうかこっちでの事は安心して、優しく見守っていてあげてくださいねっ!」
キルシェ
「…………フィリス…………」
イルメリア
「…………敵わないわよね、本当に」

 入れ替わりに私の隣に立つキルシェが、感に堪えないとばかりの声を漏らすのを聞いて、私も思わずそうひとりごちる。
 こういう真っ直ぐな行為を、衒いなく自然にやってのけてみせるから質が悪いのだ。
 だって、こんなことをされたら、誰だって益々この子の事が好きになるに決まってる――――。

イルメリア
「…………何の手向けもなくて申し訳ないけれど。私もお祈り、させてもらうわね」
キルシェ
「…………ん、ありがと」

 尚も朗らかに、キルシェとの思い出を嬉々として語り倒すフィリスの背後から、私も静かに、真摯に祈りを捧げる。
 正直今の今まで、私とキルシェの関係はフィリスという鎹あってこそ、と思っていたところもあるけれど――――。

イルメリア
「(…………私も、今よりもっとこの子に目を向けようと思います。同じ錬金術士として切磋琢磨して、少しでも世界を良くする為に前に進んでいきますから、だからどうか御先達として、かけがえのない家族として、彼女の心の支えであり続けてください)」

 そういう感情が自然に湧き起こるようになったのも、やはりフィリスの傍にいたからこそなのだろう。
 それを少しくらいは誇ってもいいのかな?と思っていると、一頻り語り尽くして満足したか、フィリスが立ち上がって墓石の前から退き、はじめて私の目にその全貌が映って――――。

イルメリア
「…………え?」
キルシェ
「??」
フィリス
「ん?どったのイルちゃん?」
イルメリア
「……………………いえ、なんでもないわ。それより、流石に身体が冷え過ぎよ、そろそろ温泉に向かいましょう」
フィリス
「あ、そだねっ!ねーねー、キルシェちゃんもご一緒しない?」
キルシェ
「問題ない。雪かきで疲れたから私も元々そうするつもりだったし…………それに、もっと二人とお話ししたい」

 そう言ってはにかむ横顔に重なる面影に、また私の心臓はドキッとひとつ大きな鼓動を刻む。

 墓碑銘の下に控えめに刻まれていた、小さな付言。
 或いは、フィリスは気付かなかったのだろうか?
 おそらくそうだろう、もし気付いていたら、それを隠せるような器用な性格はしていない。

イルメリア
「(…………だったら、今私がわざわざ混ぜっ返す事でもないわ。気にはなる、けど…………)」

 勿論偶然の可能性もあるのだけれど。
 それでも胸の内に芽吹いた疑問は、容易には消え去ってくれない予感がした。

………………

…………

……


フィリス
「ふぃー、極楽極楽ぅぅ…………。うぁー、疲れた身体に沁みるねぇー…………」
イルメリア
「ったく、年頃の女の子がそんなだらしなくぐてっとしないの。お里が知れるわよ」
キルシェ
「でも気持ちはわかる。フロッケの温泉は世界一。薬効成分もバッチリ」
フィリス
「そーそー、この期に及んで固い事ばっか言ってるから伸び伸びと育っていかないんだぞー!」
イルメリア
「ひゃんっ!?ちょっとあんたねぇっ、ヘンなイタズラしないって約束だっだでしょっ!」

 猫のようにスルリと忍び寄ってきたフィリスに、不覚にも横腹をつつかれてしまい、必死で後ずさる。
 うぅっ、やっぱりこういう咄嗟のスキンシップとかって、ちょっと苦手なのよね…………。

フィリス
「いいじゃんかぁ、ここまで来たなら無礼講でしょっ!それにイルちゃんのお肌すっべすべでもちもちで、触ってると気持ちいーんだもん♪ほれほれぇ、色々揉み解してやわこくしてあげるぞよ〜♪」
イルメリア
「て、手つきが怪しいのよっ!あんたはいい歳したオッサンかっ!」
フィリス
「女の子同士なのにイルちゃんてば自意識過剰だよぉ、ねっ、キルシェちゃんもそう思わない?」
キルシェ
「…………じー」
フィリス
「え、えっと…………なにかなその視線?」
キルシェ
「フィリスのお胸、お湯にプカプカ浮いてる。羨ましい。触ってみていい?」
フィリス
「へ?い、いいけど…………」

 自分がセクハラ三昧だった手前断りようもないのか、どうあれ私的にはフィリスの魔の手が止まってくれて助かった。
 折角の温泉で無駄に疲れるようなことは本当に御免だ…………と言い切るには、ああされることの楽しさもなんとなくわかってきた今では忍びないものはあるけれど。

キルシェ
「…………ふわふわ。マシュマロみたいに柔らかい」
フィリス
「んふっ、ひゃんっ!キ、キルシェちゃんくすぐったいよぉっ!」
キルシェ
「もうちょっと。人体の神秘、実に興味深い。なにを食べたらこうなる?」
フィリス
「な、なにをって、基本的にずっとリア姉が用意してくれたものを、だけど…………」
イルメリア
「あの人の料理、本当に栄養満点でバランスにも配慮されてるものね。こんなたわわに育つのも無理ないわ、姉妹揃って妬ましい…………」
フィリス
「イ、イルちゃーん、暗黒オーラが漏れてる、漏れてるよ…………?」
キルシェ
「食生活。確かに最近は忙しくてその辺なおざり。気をつけてみる」
フィリス
「うん、それがいいよ。キルシェちゃんはまだまだ伸び盛りだと思うし…………」
イルメリア
「そこで憐れんだ眼をこっちに向けるんじゃないのっ!!」

 やっぱりさっきのは気の迷い!同い年のくせにメリハリのある体型の奴はおしなべて敵よっ!

キルシェ
「…………それで、結局二人は、ただ温泉に浸かりにきたの?それとも、お仕事絡み?」

 内心で憤る私を余所に、存分にフィリスの胸を検分して満足したのか、ぺたんと湯の中で女の子座りでリラックスしつつ、キルシェがそう切り出してくる。

フィリス
「あっ、うんとねぇ、その辺は色々複雑な事情があるんだけど…………」

 それに対し率先してフィリスが説明を始めたので、とりあえず口を挟まないようにする。
 最近はどうにも私が出しゃばり過ぎていたので、こういう機会にきちんと筋道を立てて物事を考える力をつけて欲しい、と思ったんだけど――――。

フィリス
「と、いうわけ。わかった?」
キルシェ
「…………ごめん。ちっともわからない」
フィリス
「えええっ!?なっ、なんでなんでっ!?」
イルメリア
「なんで、じゃないでしょうが…………」

 大きく溜息。やっぱりこの子、こういうのにとことん向いてないわね。

イルメリア
「一々説明の時系列や筋道が飛躍するし、説明に擬音語や擬態語が多過ぎるし、むしろそれで伝わると思う方がビックリよ。のぼせて頭ゆだってんじゃないの?と言いたくなるレベル」
フィリス
「そ、そこまで言う〜!?いいじゃん、大体のところはわかってるんだしっ!」

 まあ実際、大局をガッと直観的に掴む勘所の良さは間違いないものがあるし、その意味では大物とは言える。
 だからこそこういう子には、私みたいに緻密に物事を組み立てていく参謀タイプが――――なんて考えたところで、いつしか自分がフィリスの補佐に回ることを当たり前に思っている自分に気付いて、思わず首をブンブンと振る。

 ち、違うわっ、私とこの子はライバル!あくまで一時的に共闘してるだけで、本来は競い合う関係なんだからねっ!

キルシェ
「…………イルメリアも、ヘン。髪の毛振り乱すと、水滴が飛び散って迷惑」
フィリス
「だよねー、イルちゃんてば、人に言うほど自分の情緒も安定してないと思うんだわたし」
イルメリア
「う、うるさいわねっ!あんたが一々脱線させるからでしょうがっ!…………はぁーっ…………と、ともかくねっ!」

 フィリスのくせに痛いところを突いてくる。
 熱した感情を咄嗟に吐息に逃がして、仕方ないので改めて要点だけをキルシェに説明し直す。

キルシェ
「…………大陸全土の天変地異。そんな事になってたなんて、知らなかった」
フィリス
「あはは、仕方ないよね、ここは間違っても交通の要所とかじゃない、その、言っちゃ悪いけど僻地だもん。そういう情報が届くのは遅れちゃうよね」
イルメリア
「しれっとここをディスってるけど、あんたの町も相当に辺鄙よ。たまさか私達が情報集積に優位な脚を確保してるってだけで」
キルシェ
「確かに。空飛ぶ船、羨ましい。私も作ろうかな…………」
フィリス
「おー、やっちゃう?その気なら色々手を貸すよ?」
イルメリア
「馬鹿な事言わないの。アレ作るのにどれだけの人の手を借りて、どれだけの素材を集めたと思ってるのよ。そんな資金も、時間の余裕もないでしょ」
キルシェ
「無念。…………ん、だけど余裕がないのは事実」
フィリス
「んっ?やっぱりここでも、なにか天変地異が起こってるの?」

 フィリスがそう水を向けると、キルシェは首を上げて、垣根の向こうに見える白い稜線をじっと見つめる。
 釣られて私達もそちらに目をやると…………あら?なんだろう、以前と少し傾斜が違って見える気が…………?

フィリス
「…………ねぇ、なんか山、抉れてない?」
キルシェ
「ん、正解。どうやら高いところで雪崩があったみたい」
イルメリア
「雪崩!?それはそれで一大事じゃないっ、この辺りに被害はなかったの?」
キルシェ
「幸いにして。でも、これから危険なことになるかもしれない、って予兆は、ある」
フィリス
「えっ、どういう事?」
キルシェ
「雪崩のせいで、山に生息していたモンスターの一部が麓近くまで下りてきてるみたい。それで、交通路の近くで、元々そのあたりを縄張りにしてるモンスターと衝突してるのを目撃した人がいる」

 キルシェの説明は肝にして要を得ている。
 なるほど、それは確かに今後、生息域の問題で一大事に発展するかもしれない。

キルシェ
「…………いつだったか、誰かが一帯の雪を溶かした時も、生態系が壊れかかって大変だったけど」
フィリス
「うぇっ!?あ、あはははー…………そ、その節はご迷惑をお掛けしました…………」
イルメリア
「確かに、人工太陽なんて濫りに使っていいものでもなかったわね。この子、すぐに目的の為に手段の是非を見失うから」
フィリス
「あっ、そんな事言うけどっ!あの時イルちゃんだって止めなかったじゃないっ!同罪!同罪だもんっ!」
イルメリア
「…………コホン、どうあれ今回はそんな一時的な影響でなく、って事よね」
フィリス
「あーっ、誤魔化してるぅっ!!」

 …………だって、一緒になって興奮してたなんて認めたくないじゃない。

キルシェ
「そう。新しいモンスターには今の魔除けの外灯もあまり効果ない、って噂も聞くし、一度自分の目で確かめなきゃ、とは思ってたけど…………でも私は、正直実践的な事は苦手」
フィリス
「あっ、そういう事ならわたし達が一緒に行ってボディーガードするよっ!やっぱりモンスターでも、無意味に喧嘩して欲しくないし、皆が仲良く縄張りを分け合って生きていけるならそれに越したこと、ないもんねっ!」
キルシェ
「…………いいの?結局お休みじゃなくなるよ?」
イルメリア
「…………いいのよ、どうせこの子が言い出したら聞かないし、元よりそうなるかも、って思ってたもの」
フィリス
「あははー、見透かされてーら。うんっでも、話を聞いた以上放っては置けないもんね、だったらチャチャッと偵察に行って、善後策をみんなで考えようっ!」

 そんな風に、湯気の中で堂々と宣言するフィリスは、やっぱり悔しいけど眩しく映るのだった――――。
posted by クローバー at 03:48| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする