2017年11月04日

バタフライ強すぎ問題

 サンクチュアリは亜梨栖をクリアしてコンプリートです。
 流石にメインルートだけあって重厚な物語でした…………と言いたいのは山々だったのですが、結構あれっ?ッ感じの尺と内容の大まかさ、ではありましたね。仮にもロックされてなかっただけあるのか、勿論本来の目的に達するという意味で物語の締めくくりにはふさわしいんですけれどうーん、盛り上がり切らないままに終わった気もするなぁって。正直私のテンションだけで言えば悠里の時の方が三倍くらい高かった(笑)。

 結局引っ掛かるのは、基本的に神座であるところのこの島での水面下で起こっていることが、比較的そこにいる存在ひとつひとつの動きや影響力に直結している、という構図がどこまでなのか、って所ではあるんですよねぇ。
 どうしたって各々のルートでの出来事がはっきり外的要因じゃない、と思える要素が少ないのもありますし、けどそれが主人公達の活動の些細な違いで為されている、と定義されるにあたって、物語的な説得性があるかと言えばやっぱりそこはあくまでも神のみぞ知る、的なアバウトさに任せてしまっているわけで。
 それでも盛り上がれば当然いいのですけれど、一応メインである亜梨栖がその点で他ヒロインと横並び程度のつくりになってしまっているのはちょっと肩透かしではあったのかなと。いや面白かったは面白かったですけどね、ただほら、やっぱり純粋にヒロインとしての思い入れ度合いが違うし(笑)、むしろこのルートみんな勝手に覚醒するけどそのご都合を置いても悠里の活躍に目尻を下げざるを得ないというか。。。

 ともあれ全体像としての整合性がどこまで綿密か、個々のルートの恣意性がどこまで深掘り出来るか、そのあたりも含めてじっくり考えて感想を書きたいと思います。
 絵的にはやっぱりボインメインってのと、これはこれで案外愛嬌と色気はあるな、って楽しみはありつつもそこまでではなかったのだけど、ただBGMが凄まじくツボだったのですよねぇ。
 総合的に見ればかなりいい作品ではあったし迷うところです。間に合えば火曜日に書きます。

 次は順当に行くならノラととなんだけど、感想ストック的な意味も含めて忘却執事にしようかな、と考え中。どちらにせよこれクリアするのにもかなり無理して時間やり繰りしたし、月曜から本腰入れて、になりますけれど。
 むしろ隙間時間でアブノーマルラバーズの体験版やっとこうかしら?
posted by クローバー at 19:12| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年11月03日

とりま足跡だけ

 サンクチュアリはちょっとだけ進んだけれど、まだ亜梨栖ルートの序盤、海坊主と対決してってくらい。
 基本的に2+2ではあるので、こっち側だと普通に悠里が、何も知らずにプレイしてたらこの子がヒロインなんじゃね?ってくらいに可愛さを全力で振り撒いてくれるのが非常に嬉しく感じつつ、序盤から先の読めない展開で面白そうではありますね。
 ただ本気で今日明日と時間がないので、今日は足跡残しで失礼いたします。
posted by クローバー at 15:27| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年11月02日

素直清楚最強やん

 もののあはれは彩の頃。の感想をアップしました。
 随分と遅ればせながら、になってしまったんですが、色々忙しかったのと、純粋にあまり執筆に気乗りしなかったのが半々、ってとこなんですよね。別にプレイ中つまらなかった、って事は決してないんですけど、後から色々考えていくと気の滅入る要素とか雑な部分、物足りない点の方が目についてしまった感じで、なまじ絵が可愛いだけにイチャラブ成分が不足するのはぐぬぬ、ではありました。
 そんな感じで今日は筆の走りも悪かったし、ひとひらに比べると精彩を欠いたところはありますが、とりあえず書き切れただけで今日は良しとしておきます。

 サンクチュアリは悠里をクリアしました。
 ここまでの内容でもこの子図抜けて可愛いなぁー、と思っていたけど、いざ自分のルートになると更に可愛さ爆発と言うか、よくきちんとシリアス展開と並行して、ここまでこそばゆく青々しい素敵なイチャラブ展開を組み込んでくれましたね!とそれだけでも絶賛したくなる内容ではありました。。。
 とにかく素直で明るくて清楚で、けれど芯の部分は強くて博愛精神も強い悠里は本当に本当に魅力的ですし、恋に浮かれては自分を戒める流れでの漏れ出る愛らしさがまたすんごくいいんですよねぇ。主人公も基本朴訥で奥手だから、非常にむず痒いもどかしい進展の中でのやり取りが本当に多彩で素敵でした。

 まぁシナリオ的には、こちらを選んだからこれが起こった、という明確な因果関係はまだ証明できない流れではありましたし、それっとユーリエルートで拾い物したのと関わりあるの?なんて疑問も出てくるけれど、内容自体はとても面白く、かつ悠里の本質的な力も開陳されての協力展開で楽しかったですねぇ。
 こういう時の悠里の清冽さも非常に魅力的ですし、やっぱり弓道少女っていいですよねぇ〜。ただあまり凛とし過ぎて人を寄せ付けないタイプなのはヒロインとしては微妙なので、この悠里と弓、という組み合わせの化学反応が素晴らしかったというべきか。その点は本当に満足です。

 そりゃ一体何体そいつらいるんだよ、とか、大航海時代にもなってないのにどうやってヨーロッパから日本の辺境の島に封印なんて出来たんだよとか、ツッコミどころは多彩にありますが、他のルートに比べても横の繋がりも盛り上がりがあり、色々含めて今のところは一番良いシナリオだったと思っています。
 あ、ノアもクリアしましたけどあれホントに一瞬でしたねぇ。しかもHシーンも超薄いし流石に拍子抜け。ぐぬぬ、雪那とかエリスとかノアとか、ロリっ子専用の攻略パッチはまだですのん?
 ともあれ、最後は亜莉栖ですね。本丸なのでシナリオ面では非常に楽しみだけど、ヒロインとしてはどうあっても悠里は超えられないだろうからなぁ、その辺は割り切って進めますです。

 恋愛事情更新。
 正直この話は、ベネットの濡れ場が書きたいというより、あの状況下でのラストの展開が書きたい、って理由の方が強かったりして。

 つか結局のところ、本当にキーアの力って消えてしまっているのか、マリアベルの言う事だし頭から信用はならないんだよなぁ、ってのがまずあって。
 そもそも零の至宝になる前の段階で、キーアは幻の至宝の因果改変の力は使いこなせたわけで、結局それが直接的に影響したと言明されているのは、零の冒頭、エステルとヨシュア抜きでヨアヒムと対決して皆殺しにされた歴史の改変だけではあって。

 ただその後のシリーズで、閃Tの時はガレリア要塞攻略にクロウがいなくて、列車砲がまともに発射されてしまったかもしれない歴史が改変された兆候があり、また閃Vでも、冒頭のジュノー攻略戦でアンゼリカがいるいないの改変はあるんですよね。
 そのあたりからすれば、幻の至宝の力自体はどこかに保持されていて、って可能性はあるわけだし、或いは意図的にキーアが別次元に封印してるとか、今の時点では妄想を広げる余地はありそうな感じはするのです。。。
 どの道次ではなにかしら関わってくるんじゃないか、って予感はするし、勇み足にならない程度に自分的解釈を盛り込んでいくのも楽しみのひとつではあります。
posted by クローバー at 18:47| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

もののあはれは彩の頃。

 体験版がそこそこ面白く、全体の枠組みがどんなものか気になったし、琥珀が大変にかわゆかったので購入。

シナリオ(19/30)

 救いは確かにあるけれど。

★あらすじ

 主人公は、目覚めると賽の河原に立っていました。
 なぜ自分がここにいるのか、これからなにをすればいいのか、わからない事が多々ある中で、いきなりサイコロを握らされて自身を駒としての双六に興じることになり、様々な不満と不安を抱えつつ、自らの中で「常識」として確立したそのルールに従って、他のプレイヤーと時に協力、時に敵対しながら上がりを目指す事となります。

 盤の駒として選ばれたのは9人の年若い男女。
 裏表を感じさせず、基本的に親切で協力的なみさきや琥珀、最初から主人公に対する敵愾心を隠さない京楓や縁、友好的ではあるけれど底が知れないクレアや黎、ルールに則って粛々とゲームを進めようとする大嗣や、得体が知れず胡散臭いカラスなど、多士済々のメンバーによって、京の街を舞台にした、自己存在をかけての勝負が数多繰り広げられて。
 その中で主人公は時に不思議な、この世界の「常識」が通用しない別の世界の一端を垣間見ることとなり、その謎をゲームの勝利と並行して探っていく事で、この世界の謎と、本当の意味での上がりを見出し、それを達成するために他のキャラを説得して仲間に加えていく事に。

 果たして彼らがこの場所にと囚われている理由は何なのか?
 その先に待つ未来は、いかなるものなのか?
 そして、この世界で紡いだ絆は、正しくあるべき世界に引き継がれていくのか?

 運命の全ては賽の目に――――これは命を懸けた遊戯の中で、深い信頼と絆を育んでいく、信念と覚悟の物語です。

★テキスト

 舞台が古都・京都という事もあり、作風からもわかる通り非常に和テイストの味わいが強く出ています。
 言い回しや語彙の選択などもそれに準拠して、比較的古めかしいものや小難しいものは頻出するものの、全体のテンポは悪くなく、単語そのものもニュアンスで大体捉えられる範疇には収まっているかな、と思います。
 いわば文飾の面での誇張がちょっと大きい、というのと、後は心理的な鍔迫り合いなどもかなり多く出てくるので、そのあたりで全体的に含みを伴う印象が強くて、文章そのものの美しさと、その背景にある思惑を二重に汲み取っていく事でより楽しさが増すタイプのテキストかな、と感じました。

 少なくとも個人的にはこういう風雅な読み口は歓迎ですし、それでいてきちんとキャラも立っていて、掛け合いなども独特の面白さがあったので悪くないな、と思いますね。

★ルート構成

 この作品にはいわゆるヒロインルート、という概念がかなり希薄です。
 形式としては共通双六マップがあり、その終盤でその次のマップにおいてどういう行動を取るか、誰と組んで進んでいくかを決定する賽の目を用いた選択があり、それを網羅する事で隠されていた最終ルートをクリアできる、という構図になっています。

 一応各々の分岐ルートで主役となるヒロインはいるものの、最終的にはそれを全て重ね合わせた状態で最終面をクリアし、その上で改めて誰かを選ぶ事で後日談的な話が展開するという、恋愛ものとして見た場合には味気ない構成になっていて、普通のイチャラブを期待すると肩透かし、という作品ではあります。

 ただその選択の提示の仕方は、作品のゲーム性と上手くリンクしたつくりになっていて、かつより大枠で見た時にもしっかりその行為の理由づけが為されるという、シナリオ面での意味性が強いものとはなっているので、その面での魅力をどれくらい高く取るかで、このシステムに対する評価も違ってくるのかな、と思います。
 私の考えとしてはシナリオのネタバレとも絡んでくるので、その辺まとめて後で書きます。

★シナリオ(大枠)

 基本的には、思うに任せない賽の目を振り進めながら、同じマスに止まった相手と交流し、上手く協力体制を紡いでいの一番の上がりを目指す、という事になっていきます。
 またその渦中で別世界の夢が紛れ込むことも多々あり、これはキャラによって見えたり見えなかったりするのですが、そのあたりの全体像の仕掛けも非常に精緻に組み上げられています。

 それらを並行して進める中で、本当に信頼出来る相手を見出し、都度都度にコロコロと変化していく盤面の上で、智嚢の限りを尽くして自身の望む未来を勝ち取る――――その過程の波乱万丈ぶりや、どんでん返しも含む多彩な展開のカタルシスはかなり高めに設定されており、エンタメ性の強い面白い作品であることは間違いないと思います。
 
 勿論それぞれのマップのマス目機能や特殊ルールなど、シナリオの都合に沿った恣意的なものではあるのは間違いないのですが、最低限それが後出しにならないようなフォローはあります。
 もっとも、最初にマップが提示された時点で、全てのマスのイベントをしっかり読み込むプレイヤーはそうはいないでしょうし、その意味ではヒントの出し方に意地の悪さはあるつくり、とも言えますね。特に琥珀絡みとかは外側の常識と照らし合わせて、って部分もあるので、その辺はなんとも言い難いところです。

 ただ本当に双六、という部分の醍醐味はしっかり複雑なつくりの中でも維持していて、世界観の独特さも踏まえてハラハラドキドキはさせられますし、ルートによってはかなり残忍な展開もあったりしますが、それも含めて先の読めなさを強調しており、悪くないつくりとは言えるでしょう。
 その上での最終ルートでは、きちんとそれまでの負の遺産を清算できる要素が詰まっており、その過程において色々と物申したい部分はあれど、最後には結果オーライ的な大団円になっているので、その点でもしっかり伏線を上手く風呂敷に包んで綺麗にまとめた作品と評価出来ます。

 けれど、どうあってもそのゲームの渦中で紡ぐ絆、というものは、吊り橋効果的な側面も含めてかなり限定的にはなりますし、当然そんな切羽詰まった状況で暢気にイチャラブを展開してくれるわけではありません。
 なのでそういう部分は全ての問題が解決して、彼らがあるべき世界に戻ってからの付け足しになってしまうのですが、正直それは非常に薄いです。
 勿論絆そのものは盤面の上で育まれているから、それを反映して主人公が選べば即くっつく、というのはいいのですが、そこから画一的に初めて結ばれて、デートしてちゃんちゃん、って感じで終わってしまい、残りのシーンは回想に追加、ってのはやはり味気ないですね。

 一応盤面の中でも残された謎や、彼らがそれぞれに向き合うべき部分は少なからずあるわけで、中々難しいにしてもせめてひとつくらいは、それぞれのヒロインらしいイベントや特色を組み込んで欲しかったな、というのはあります。
 強いて言えばHシーンの傾向にその気質や特色を全振りしちゃってるところがあって、ただ正直そこで差異化されてもなぁ、ってのがあります。
 あくまで私の趣味嗜好で言うなら、やっぱりそういう濡れ場もどちらかの気質が一辺倒に反映する、ってのは良くないなー、と思うし、はっきり言えばみさきのような方向性のシチュを畳みかけられるのは好きじゃないので、そのあたりでももう少し配慮と工夫があっても、とは感じましたね。

★シナリオ(ネタバレ・考察)

 正直個々の二面の面白さの違いとか出来の良さを語ってもあまり意味はない作品かな、ってのはあります。
 どれも基本的に最初から枠組みは固着していて、その中でどう醍醐味を見せていくかってのも恣意的なイメージを強く持たざるを得ませんし、敢えて言うならトリックの出来の良さ、大逆転のカタルシスの強さなどでしょうが、それに関しては理屈はプレイすれば一目瞭然ですし、そこに主人公やヒロインの意思の介在する余地は、やっぱり普通のストーリー性の高い作品に比べてしまうと弱い、とは思うのです。

 一応かるーく触れておくなら、つくりとして一番好きなのは琥珀の二面で、純粋に面白かったのはクレアの終盤かな、って思います。
 トゥルーに関しては、そこまでに紡いだ絆がその道のりを拓く、というお約束的な色合いはかなり強く、鬼札に対するカウンターや黒幕などについても、ミステリーの原則を踏まえて考えればかなり絞りこめてしまうので、トリックとしての奥行きも含めて実は二面よりうーん、ってのはあります。

 かつやっぱりラスボスの思惑があくまでも私利私欲ってあたりも複雑で、上で触れた選択肢が双六の目を操作する事で成し得る、という構造も、実はこのラスボスの行為と重ね合わされていた、という点では、プレイスタンスによってはげぇっ、てなる可能性もあるなって思いました。
 私はどちらかと言うと俯瞰的に楽しむタイプなのでそんなに気になりませんが、主人公に感情移入して進めたい人にとっては、そうしていたつもりが黒幕に操られていた、って内容は気に食わないんじゃないかなぁと。

 また、この舞台が成立した背景と、複雑化した理由についてもかなりおぞましい点はあるんですよねぇ。
 そもそもこの双六が成立するルールとしては、まず盤となる存在、今回はみさきですが、年若くして死に瀕し、それを自覚しつつも生きたい、という想いが、芯が強い存在が必要なのだろうと思います。
 黒幕が教師という仮面をかぶっていたのも、或いはそういう存在を察知する為に便利だったから、とも言えそうですし、その上で用意周到に、いずれ駒にすべき存在を涵養していた、というのも如何なる執念の賜物か、なんて思ってしまいます。

 この点黒幕がそんな風にねじくれた精神性を保持している根底の部分が語られないので、なんとも気味悪さしか残らないってのはありますし、またそうやって過去からの不可思議、形としては救済措置として成立している舞台を私物化していること、その成果を下種な手段で掠め取ろうとしているカラスの存在も含めて、基本的にこの辺は胸糞悪いんですよねぇ。
 それに結局のところ、盤が開くタイミングで毒物によって仮死状態にさせられた主人公と京楓だけが本来の黒幕の意図するプレイヤーだったはずが、自殺未遂とそれに巻き込まれた縁と大嗣、無理矢理黎を手にかけて、それを媒介に乱入してきたカラスなど、それぞれのタイミングが良過ぎるのもうーん、って所です。
 まぁ琥珀の場合動物だから、人間と違って仮死状態にならずとも霊的な世界との距離は近い、って見立ても出来ますし、それにクレアもある程度双六の知識は持っていて、それが開くことを前提にああした、ってのはありそうなのですが、それも含めて運命の導き、というのはなんかスッキリしないのはありますよね。

 黒幕本人にしても、自分の縁である、他者の縁を奪う力を存分に駆使して、幾度となくこの盤で戦い、勝利して、その都度にひとつずつ都合のいい縁の力を現実に持ち帰っていたというのは、まぁつくづく強欲だな、とは思いつつ行動理念としてはわかります。
 ただその場合こいつだけは現実の記憶とリンクしたまま入れる特殊な能力があったのかとか、今回にしても時間軸の動きからして、盤の内部には入っていないと上手く操作は出来ないだろう、ってところから、どうしてそんな特別な立ち位置を保持できるのか、って謎も出てくるとは思います。
 最後の失態も文字通り策士策に溺れるの典型でしたし、結果的に主人公達が全て無事でいられるための道筋を紡いでくれた、という意味ではナイスな踏み台ですけれど、ルールに則ったオチのつけ方も途中であぁあれかぁー、ってすぐ想像がつくし、色々盛り上がりに欠けたなぁ、って気はしていますね。

 クナドの存在に関しても同様で、作風的に中々そこまで踏み込めないってのはあるにせよ、賽の神となった妹が兄を助ける、という情緒的な側面だけを強調して、それが成立する由縁の部分はかなりおざなりに流してしまっているのはありますね。
 そもそも賽の神はどんな不慮の死を遂げた存在ならなれるのか、隠していた道を見つけられたらそれで確実にお役御免となってしまうのか、それともこの役目を遂げることで逸脱が可能になったからああなのかってのも曖昧ですし、死んでから10年、一度も盤が開かれていないってのは、黒幕のありようからしても可能性が薄い中で、そう在り続けられた意味なども把握できないですからね。
 あまり理屈に拘ると無粋、それこそぶぶ漬けでもどない?って話ではありますが、基本的には雰囲気重視、エンタメ色を強めての力技で押し切っている感覚はありました。

 総合的に見て、敵役として存在感のある縁も含めて、理不尽な運命を絆の力で打ち砕く、って構図はシンプルながら心に響くものはあれ、その壁の部分のよすがのなさと雑さは目立って、かつイチャラブ要素との両立もあまり上手くはいっていない、と言うあたりを踏まえると、個人的には面白くはあったけど、あまり高い評価はしたくない、ってタイプの作品でしたね。



キャラ(19/20)

★全体評価

 ヒロインはみんな個性豊かで芯も強く、こういう舞台映えのする造型ではあったと思いますが、そのシナリオに則した美点が強調され過ぎている面と、一方で様々な顔を引き出すだけの展開の奥行きが足りなかった、という部分で、キャラの魅力を余すことなく引き出せているか、と言われると私はちょっと違うかな、と思ったりはしました。
 それに比較的悪役が碌でもない、ってのもありますし、ヒロインにしても状況によっては結構えげつないこともしちゃう構成ではあるので、終わりよければ、で全部水に流すのはちょっとね、ってところで割り引いてます。

★NO,1!イチオシ!

 そりゃまぁここは琥珀になるでしょうねぇ。。。
 当然造型的な趣味が一番に来ますが、純粋にヒロインとしてもこういう素朴で真っ直ぐで、どこまでも飾り気なく慕ってくれる子猫タイプは大好きですし、最後の展開もそりゃあ随分都合の良いこって、と苦笑するしかないとはいえ、まぁこの子とイチャエロするために必要ならいっか、と思えるだけの可愛さは備えていたと思いますね。

 理想的にはもっと日常生活の中での新鮮な驚きや、恋と言う感情を噛み締めての愛らしさを堪能できるイベントがあって欲しい、とは思いましたが、奔放なHシーンのつくりだけでもそれなりには可愛いと思えたのはあります。方向性としてみさきに近いけど、みさきほど特化的な上位感はなくて、より純粋にそれが当然と求めてくる様はいかにもって感じでしたしねー。

★NO,2〜

 次いではクレアですかね。
 色々と気難しい部分もあるけれど、根っこの部分では凄くお人好しで情にも脆く、そもそもここに入ってきた根底的な理由の部分から中々なもので、その点での好感度は高いですね。
 どうしても頭が切れすぎるのと、特殊な縁を持っていることで、懐に入りこむまでは中々に全面的な信を置けない、という、スロースターター的な弱点はありますが、二面の時は本当に可愛かったなーって思いますし、シーン構成などもお気に入りです。

 みさきは基本的には好きなんだけど、色んな意味で強すぎるというか融通が利かないというか、結局縁と対立した根本的な部分はどこまでもついて回るから時々怖いな、ってのはありましたねぇ。
 この声とかも好きなんだけどなぁ、ただラストの後日談個別のシーンシチュがすんごく気に入らないってのも含めて、もう一歩ブーストし切れないところはありましたね。

 京楓はどうしてもスタンス的に盤の中では明確に敵、って構成がほとんどでしたし、元々の関係性があるからそれだけでヒロインとして成り立つけれど、それを読み手に強く説得的に訴えかけるだけの魅力を発するチャンスはそんなになかったな、と、ある意味貧乏籤を引かされていると思います。
 まぁタイプ的にもこういうややガサツな同居系はそこまで好みでもなかったのはあるし、そもそも何年も同じ部屋で過ごしててなにもないとか逆にすげぇな、とは思うんですけどね。。。


CG(18/20)

★全体評価

 基本的にはとても可愛いですし、雰囲気にもマッチしていていい感じですね。
 印象的に塗りの違いもあるのかもですが、ランプ時代よりも美麗になった気はしますし、その分男キャラの適当さとの落差が大きいんですが(笑)、飛び抜けて素晴らしい、と言うほどではなかったものの、期待通りの出来ではあったと思います。

★立ち絵

 ポーズ差分はヒロインで2種類、サブで1種類と基本的には少なめ。まぁキャラの動きで楽しむコミカルな展開がさほどない構成ですから仕方ない、とは言えますが、特別にらしさが出ているか、という面も含めてインパクトは薄かったかなとは感じます。
 可愛かったのは琥珀の正面向きとクレアの正面向きかなぁ。

 服飾もややばらつきはあるものの、ヒロインで2〜4種、サブで1〜2種と、こちらもゲームシステム的な面の弊害もあって少なめではあります。
 無論この舞台ならではの服なども用意はされていて華やかではありますが、やはり全体的にもう一押し、ってのはありますかねぇ。
 お気に入りは琥珀着物、私服、みさき着物、クレア制服、メイド服あたりです。

 表情差分も比較的真面目な作風を反映して遊びの要素は少なめ、その分様々な角度での細やかな機微に応対しているとは思いますが、目立って凄みや可愛さを感じるのは、となるとそこまで印象に残らなかったですね。
 お気に入りは琥珀の笑顔、きょとん、半泣き、照れ笑い、みさき笑顔、不満げ、にんまり、クレア笑顔、照れ焦り、ジト目くらいかなぁ覚えてるのは。

★1枚絵

 通常が80枚にSDが10枚で、計90枚ですね。
 とはいえお値段キュッパチですし、通常の中には男キャラや敵キャラも含めて、ってなるので、全体的な印象としては少し物足りない、ってのはありますね。やっぱりシナリオ含めて、もうひとつくらいはイベントとそれに付随するヒロインの日常絵は欲しかったのは拭えません。
 ただ出来は安定して可愛いですし、特にこれは!って言えるほどグッと来たのはなかったんですが、基本的には眼福であったと言えるでしょう。


BGM(17/20)

★全体評価

 作風を強く意識しての和テイストが前面に押し出されており、どれも奥行きと風情があって中々に総合力の高いつくりになっていると思います。
 ただ質はともかく量的には今一歩ですし、こちらもバランスはいいのですがここ一番!ってレベルでインパクトのある曲は、と言われるとパッと出てこない感じで、シナリオ同様もう一歩突き抜けたところがなかったのは惜しいですね。

★ボーカル曲

 全部で2曲ですね。
 OPの『色化粧』はわかりやすく和ロック、って感じで、爽快なテンポを刻む中で、要所にしっとりした雰囲気を交えた中々の良曲です。
 ただAメロの出来は個人的に相当好みだったんですけど、Bメロ、サビと進んでいく中で微妙になんか違う感が出てきて、悪くはないんですけど色々奇を衒い過ぎた感もあるな、って気がしています。

 EDの『縁道〜ゆかりみち〜』は、様々な苦難の先に見つけた進むべき道を、静かに噛み締めながら手を繋いで歩いていく光景が目に浮かぶような、いかにも情緒的なED曲ですね。
 作風にはマッチしていると思いますが、イマイチメロディ的にはピンとこなくて、サビがあるようなないようなつくりも含めて耳に残り切らずに終わってしまう感じです。

★BGM

 全部で22曲とやや少なめですが、ひとつひとつのコンセプトと奥行き、質の高さはしっかりしていて、総合的に見ればかなりいい出来だと思います。
 特に、と書けるレベルかは微妙ですが、『蘭橙』の和の息吹が転々としていく構成の美や、『愁へ』のストレートに哀愁を誘う旋律の素朴な美しさは気に入ってます。


システム(8/10)

★演出

 ゲーム的な要素もそれなりにある中で、そつなく演出効果でフォローしているとは思いますが、といってバトルシーンの迫力や縁発動の部分でも、基本的には1枚絵に頼っている形ですし、そもそも日常シーンは少ないしで、目立ってこれ、という部分を感じなかったのはありますかね。
 ムービーも彩りの美しさは目を引くものの、突出して素晴らしいとは言えなかったし、全体的に無難、というイメージです。

★システム
 
 こちらは基本的に足りないものはなく、使い勝手は悪くないですかね。
 ただ厳密に言うと、サイコロが回るシーンでセーブできないから、その直前でセーブするか、一々バックジャンプを使うか、って厄介さはあって、そのくらいかなぁ不便に感じたのは。


総合(81/100)

 総プレイ時間22時間。
 共通面、各U面が4時間前後、トゥルー面が3時間くらいで、後は後日談ヒロインルートが回収を含めてひとり1時間弱くらいの勘定になります。

 基本的にはプレイ中は次々に波乱の展開が舞い込んで、その都度に設定と見比べたりしながら先を見据えて楽しむという熱中度はそこそこありますが、ただ恣意的にサイコロの目を操れるシーンも少ないですし、やはりその長い共通とも言えなくもないトゥルーまでの道を踏んだうえでのご褒美、ヒロインとの交流がかなり薄いのは物足りないところでしょうか。
 勿論コンセプトや発想の点での面白さ、総合的なバランスと整合性の高さなどは評価して然るべきですが、舞台設定の不憫さや強欲が絡む気分の悪さ、感情面ではともかく理屈の上での下支えの軽さなど踏まえると、個人的にはどうしても引っ掛かるところの方が多かったとは思います。

 少なくともイチャラブ目当てで買うのはNG、と言ってもいいつくりですし、ゲーム性も見た目ほどは高くなく、純粋にこのヒロインズとこの舞台でのシナリオ展開が楽しみたい、って意味ならアリですが、ちょっと間口の狭いつくりかなぁ、とは感じましたね。
posted by クローバー at 14:50| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

閃の軌跡V外伝 戦う乙女の恋愛事情 ベネット#U

ベネット
「はぁっ、はぁ…………っ、ん、くっ、はぁはぁ…………っ」

 ふと気付けば私は、土地勘のない帝都で、安全な場所を求めて逃げまどっていた。
 這う這うの体で物陰に駆け込み、額から滴り落ちる汗を拭いながら息を整える。

 そうしている間も、騒擾は止まない。
 あちこちで、この世のものと思えない激烈な破砕音が鳴り響き、原初的な恐怖と極度の緊張から来る疲労で足が竦み、ちょっとでも気を抜けばその場にへたりこんでしまいそうだ。

ベネット
「…………ん、もぅ…………っ、なによっ、いったい何なのよ、これぇ…………っ!?」

 吐き捨てるように独り言ちても、どこからも答えは返ってこない。
 それが私の孤独感をますます強め、乾いてきた汗が殊更に心身を冷たく蝕んでいく。

 変化は、突然だった。
 何の前触れもなく街の各所に現れた、人の身を遥かに凌駕するサイズの鉄の巨人や四つ足の獣。
 彼らは傍若無人にその暴威を振るい、祭りの喧騒に溢れていたはずの帝都を一瞬にして阿鼻叫喚の地獄絵図へと塗り替えていった。

ベネット
「もう、やだぁ…………っ!どうして、どうしてこんなことになっちゃうのよぉ…………っ!」

 かつてクロスベルでも、市内で猟兵同士の激戦が繰り広げられたこともあったけれど、それでもあの時はまだ、自分の家に逼塞していれば危害が及ぶ心配は少なかったと言える。

 けれど、今は違う。
 魔物たちは人と物の区別もないままに暴れ回っていて、寸刻置きにあちこちの建物が崩壊する音が耳に届く。
 そしてなによりこの地には、私の寄る辺となるべき場所も、共にそこを守ってくれる人もいない――――。

ベネット
「っっ、もど、らなきゃ…………っ!なんとかして、あいつと、合流、しなきゃ…………っ!」

 ようやく息が整い、私は震える足を叱咤して表通りの様子を覗き見る。
 今のところ、脅威の影は見当たらない。
 意を決して物陰から躍り出て、がむしゃらに走る。
 目指すべき場所もわからないまま、それでも本能的な恐怖から逃げるように、ひたすらに足を動かして――――。

ベネット
「――――っっっ!?」

 その出現は唐突で、そして残酷だった。
 何もない空間を歪ませて、中空から降ってきた鉄の巨体は、なんの感慨もなく降り立つ足でそこにあった屋台をぺしゃんこにし、力の奮い所を求めて炯々と目を光らせ――――そして、この付近で唯一の動く存在である私に照準を定める。

ベネット
「あ…………っ、あぁぁ…………っ!?」

 その威圧感に射竦められて、私はペタン、と尻餅をついてしまう。

 逃げなきゃならないのに。こんなところで倒れるわけにはいかないのに。
 その意思の声を、根源的な恐懼が塗り潰していく。

 獲物を見出した巨人の目が舌なめずりをするかのように爛々と輝き、冗談にしか思えないほどの大きさの鉄剣が、嬉々として頭上に振り上げられていく。
 あれが振り下ろされた時が、私という生命の終焉――――その光景はもはや絶望そのもの、だった。

ベネット
「(っっっ!?イヤ、だぁ…………っ、まだ、死にたくない…………っ!だってわたし、まだなにひとつ為せてないっ、なにひとつ伝えられていないのにぃっっ!!)」

 その魂の慟哭は、しかしカラカラに乾いた喉から音となって溢れることもなく。
 遂に振り下ろされた腕が、いやにスローモーションに見えて、刹那脳裏に様々な思い出が走馬灯のように駆け巡り――――。

ベネット
「(イヤ、イヤぁっ!!!誰かっ、助けて、たすけてよぉぉっっ!!!お願いっ、助けてっ、○○○○ーーーーっっっ!!!)」

 ――――おおおおぉぉぉっっっ!!!

 私は果たして誰の名を叫んだのか、そしてその祈りは届いたのだろうか?

 気合の声と同時に、ダダダダダッ、と機関銃の掃射音が響き渡り、鉄巨人の巨体に容赦なく降り注いで。
 それに虚を突かれたかのように剣の動きが止まり、警戒するように一歩、二歩とにじり下がる。

 その隙をつき、ひとつの影がへたりこむ私の前に飛び込んできて――――。

ベネット
「あ、あぁ…………っ、あん、たは…………っ」

 ――――無事だったか、ベネットっ!!!

 それは、夢にまで見た最愛の人の声。
 切羽詰まった様子で似合わない機関銃を抱えながら、それでもここは一歩も動かない、という鉄の意思を、気概を持って、堂々と巨人の前に立ち塞がる。

ベネット
「き、来てくれた、んだ…………っ、で、でも無茶よっ、そんな武器ひとつで、あんな途方もない存在に立ち向かおう、だなんて…………っ!!」

 新たな存在の脅威度を測定するかのように、一時的に距離を置いていた巨人は、改めてその相手も仕留めるべき存在と見做したのか、再び剣を高らかに掲げて。
 それに呼応するように銃口が火を噴き、それは余さず巨人の図体に直撃するものの、もはやそれは威嚇にもならないようで、一顧だにせずジリジリと詰め寄ってくる。

ベネット
「だ、ダメよ逃げてぇっ!そんなんじゃ、勝てっこないっ!そっ、それにあんたの腕は、そんなものを持つためにあるんじゃないでしょっっっ!!!」

 ――――知ったことかっ!!こんな時に好きな女一人護れない腕に、何の価値があるってんだぁっ!!!

ベネット
「――――っっっ!?」

 あぁ、あんたはどうして、こんな時にしれっとそんな言葉を口にしてしまうの?

 たったひとつの単語が、魔法のように私の心に充足をもたらしていく。
 口惜しいけれど、それでも彼と共にここで果てるなら、それも運命だったに違いない――――そんな諦観が全身を支配する。
 その波濤に身を委ねながら、それでも最期まで勇敢に戦う姿を、私が愛されていた証を目に焼き付けていく。

 ――――くっ、畜生ッ!!動け、動けよぉっ!!!

 唯一の武器も遂に弾切れで沈黙し、悪足掻きのように投げつけられた銃を巨人は事も無げに振り払い。
 彼はそれを見て、絶望の呻きを呪詛のように振り撒きながら、はじめてこちらに向き直って、私の身体に覆い被さり――――。

ベネット
「なっ、なにをしてるのよっ!?足が動くなら、とっと逃げなさいよっ!!」

 ――――そんなことできるかぁっ!!!大丈夫だっ、お前のことだけは、死んだって護ってみせるんだよっ!!!

ベネット
「っっっ、バカっ、もうホントに大馬鹿ぁっ!!!そんな事言われたら、振り払えるわけ、ないじゃない…………っ!!!」

 ありったけの力で、その愛しい体にしがみつく。
 向こうからも同様に、私の背骨を折らんばかりの全力で抱きすくめてくれて、その幸福感が、死の背戸際の恐怖を緩和してくれる。

 そして遂に、再びあの恐ろしい鉄剣が頭上から雷光のように落ちてきて、私は反射的に目を閉じ――――。

ベネット
「………………………………………………えっ?」

 けれども、破滅の刻が訪れることはなかった。

 ――――な、なんだ…………?なにが、起こってるんだよ……………っ!?

 その混乱の声に、恐る恐る瞳を開けて周りの様子を窺えば、不思議な事にたった今まですぐ傍で圧倒的な威圧感を放っていた巨体が、まるで幻のように消え去っていた。
 それだけではなく、周囲で散発的に轟いていた破壊の音も一斉に立ち消え、まるで台風一過のような奇妙な静けさが周辺一帯を支配していて。

ベネット
「……………助かった、の…………?」

 言葉にして呟くと、危機一髪から奇跡のように救いがもたらされたという実感がじわじわと込み上げてくる。
 なにより愛しい人の温もりが、激しい鼓動が、まだ私達が生きている証左として伝わってきて、私は思わずその逞しい胸板に頬を擦り寄せてしまう。

 ――――あぁっ、助かったんだっ!なにがなんだかさっぱりだけど…………それでも良かった、お前が無事で……………っ!

ベネット
「…………心配、してくれたの?」

 ――――当たり前だろっ!お前がはぐれたと知って、生きた心地がしなかったっ!

ベネット
「ご、ごめん、なさい…………」

 ――――俺の方こそ、済まなかった。もう二度と、この手を離さないって誓うよ。

ベネット
「っっ!?」

 その言霊が内包する想いの強さが、つい先程まで脅かされていた生存本能と共鳴し、私の身体を熱く潤す。
 もっと、もっと近くに在りたい――――そんな直情的で、ともすれば浅ましい情動が突き抜けていって。

ベネット
「…………ねぇ、どちらにせよもうここが安全とは限らないわ。だから、私の泊まっていたホテルまで、連れていって、くれる…………?」

――――あぁ、そうしよう。いいか、今度は絶対にはぐれるなよ…………っ!

 痛いほどにぎゅうぅっ、と手を握られる。
 けれど今の私には、その痛みすら愛おしく感じられて。

 辻ごとに警戒を露に、まるで流浪の姫を必死に護る騎士のような献身ぶりでエスコートしてくれて、だけど最後まで、その手に籠った力が緩む事はなく。
 その、何よりも私を手放したくない、という想いが伝わる有様に、夢の中をふわふわと歩むような恍惚を覚えながら進んでいくと、やがて見覚えのある地区に辿り着いて。

 幸いにも私が止まっていた宿も、その向かいの彼の職場も崩壊を免れたようだ。
 けれど未だ混乱の余波は大きく、誰しもが浮き足立って他者を思いやる余裕を取り戻せない中、私達は半ば駆け込むようにして、二階の借り部屋に辿り着き――――。

ベネット
「んんっ!?…………んっ、ちゅ、ぅっ、ん、ちゅ、ちゅう…………っ」

 その刹那、まるでワルツのターンのように、掴んだ手のひらを起点に、私の身体は回転しながら軽々と引き寄せられて。
 目の前に、愛しい彼の顔がある――――そう思った時には、強引に唇を奪われていた。

ベネット
「んっ、ちゅっ、れるっ、んっ、んん…………っ、ん、はぁ…………っ、ちょっ、ちょっと、ぉ…………っ、こ、こんないきなり、なんてぇ…………っ!」

 ――――ごめん、この愛しさを、お前が大切だって気持ちを、もう一刻たりとも我慢出来なかったんだっ!

ベネット
「っっ、ま、またそんな調子のいい…………っ、そんな風にされるのも嫌じゃ、ないけどっ、だけどんぅっ!?」

 一心不乱なまでの告白に、いつもより少しだけ素直に気持ちが口から滑り出て。
 すると、感に堪えないとばかりに再び唇が重ねられる。
 戦塵に塗れたせいか、少しだけかさついたリップに潤いを灯すように、幾度も幾度も押し付けられ、啄まれ、やがて舌が伸びてきて、その甘い甘い感触が深い陶酔を呼び覚ましていく――――。

ベネット
「んちゅ、れるっ、ぴちゅ…………っ、んっ、ちゅぱっ、ちゅるっ、あ、はぁ…………っ、な、にこれぇ…………っ、ちから、抜けちゃう…………っ、あたま、ボーっとして、キスの事しか、考えられなくなるぅ…………っ!」

 ――――それでいい、嫌な事は全部忘れよう。今この場所には、俺とお前しかいないんだ。

ベネット
「ふたり、きり…………んっ、ちゅっ、れろっ、ぴちゅくっ、ん、はぁぁっ、やっあぁっ、そん、なぁ…………っ、いい、の…………っ?こんなふぅに、甘えて、好きって気持ち、ぶつけても、嫌いにならないでくれる、の…………っ!?」

 無粋な事を訊く、とばかりに、更なる熱烈なディープキスが私の口腔を変幻自在に蹂躙していく。
 その蕩けるような快美に溺れていると、まるで磁力に引き寄せられるかのように、いつの間にか私の身体はベッドの傍に誘われ、そして口づけを続けるまま、器用に彼の手が蠢いて、私の纏うワンピースをはらりと肩口から抜き去って。

ベネット
「やんっ、あっ、だ、めぇっ、いきなりそんな、はっ、恥ずかしいよぉ…………っ」

 ――――そんな風にしおらしく恥じらう様も可愛いよ。ベネットはこんな風にリードされるのは、嫌か?

ベネット
「そんな、わけない…………っ!私、わたしずっと、こうされたいって、力づくで奪って欲しいって、ずっとずっと夢に見てた…………っ!わたしは素直じゃないから、その心の強張りごと、あんたの情熱で溶かし去って欲しいって、身勝手に思うばかりだった…………っ!」

 その赤裸々な吐露と同時に、私の心身に張り詰めていたなにかが砕け去る音が確かに聞こえて。
 くにゃん、と、促されるままに、私はベッドの縁に腰掛ける。
 そのすぐ隣、ゼロ距離に愛しい温もりが寄り添って、口づけを続けるままに、私の女の部分に容赦なく両の手が伸びてきて――――。

ベネット
「んっ、ふぁっ、あぁっ!?そ、こぉっ、んっ、あぁっ、やぁん…………っ!んく…………っ、あ、はぁっ、いや、だめ…………ぇっ、それ、きもち、ぃ…………っ!?」

 下着の中に潜り込んだ指が、いきなり乳房の先端と秘所に宛がわれ、滑らかに愛撫を繰り返していく。
 普段は魔法のように生地を捏ね回し、見目麗しいパンを仕上げていく繊細な指が、巧みに、執拗に、私の女の顔を引き出そうと責め立てる。

 もうとっくに心身ともに火照り切って、途方もなく敏感になっている今の私に、その快感に抗う術があるわけもなくて――――。

ベネット
「んぁっ、やぁぁっ!!すご、すご…………いよぉっ、なに、これぇ…………!?好きな人に触れられるのが、こんなに気持ちいい、だなんて…………っ、んぁっ、はぁぁんっ!?あぁダメぇっ、痺れる、からだじゅう、痺れるぅ…………っ、こんなの知らないっ、全然知らない…………っ!!」

 ――――自分でするより、気持ちいい?

ベネット
「〜〜〜っっ!?ばっ、ばかぁっ、そんなこと、訊かないでよぉ…………っ!だってしょうがないじゃないっ、どれだけこの日を、この温もりを、私が待ち焦がれていたか…………っ、あっ、うぁんっ、はぁっ、ダメぇっ、そ、んなぁっ、同時に敏感なとこ、擦られたらぁっ!!」

 次々と押し寄せる、快感。
 その自分ではコントロールできない愉悦に、振れ幅の激しさに、私はどこまでも翻弄され、ノンブレーキで高まっていくのを止められない。
 心憎いほどの手練手管を見せながらも、時折交えられる優しいキスがその愛情の深さを知らしめていて、その硬軟織り交ぜた責めに、私は――――。

ベネット
「も、もぅダメ…………っ、おかしく、なるぅ…………っ、あはぁっ、んくぅっ、きゃうぅぅっ!!!あっやっ強っ、んんっ、まっ、まだ激しくなるってぇ…………っ、ダメよぉっ、このままじゃわたし、すぐ、すぐにぃ…………っ!!!」

 ――――いいぞ、イッちまえ。ベネットの一番淫らで綺麗なところ、俺に見せてくれっ!

ベネット
「うぁっ、あっ、ばか、ぁっ、ヘンタイっ!で、でもあぁっ、あんたがそれを、望む、なら…………っ、あぁダメ、くる、くるぅっ、おっきぃの、ぶわぁっ、ってぇっ、んっ、んぁっ、あ、ダメ、あっ、んっ、イッ、クぅ…………っ、ああっ、んっ、ふぁっ、ん、んぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」

 またひとつ、心の枷が外されたように。
 その赦しの言葉に導かれるように、私は特上の法悦に身を委ねる。

 下肢の付け根から、瘧の様な痙攣が全身に伝播し、その波が押し寄せるごとに、かつてない随喜が脳髄を駆け巡る。
 あぁ、好きな人の手で達する事が、こんなにも、こんなにも気持ちいいなんて知らなかった――――。

ベネット
「…………ん、はぁ…………っ、はぁ…………っ、あ、あぁ…………すご、かったぁ…………っ…………」

 ――――ははっ、イク瞬間のベネットの表情、本当にすごく可愛くて艶めかしかったぞ。

ベネット
「も、もぅっ、デリカシーなし…………っ、女の子の恥ずかしい顔を見て悦ぶなんて、趣味が悪いわよ…………っ!」

 ――――女の子、じゃない。ベネットの、だから見たいし、見られて嬉しいんだ。 

ベネット
「〜〜〜っっ!?だっ、だからどこでそんな殺し文句覚えてくるのよぉ…………っ!これ以上私を好きにさせて、どうするつもりなの…………って、あ…………っ」

 その私の癇癪めいた糾弾を封殺するように、ベッドの上に押し倒される。
 まだ私がさっきの余韻で痺れて上手く動けないのをいいことに、サッと下着が剥ぎ取られ、一糸纏わぬ姿にされてしまう。

 そして彼もまた、矢継ぎ早に着ているものを全て脱ぎ去って――――。

ベネット
「っっ、す、すごい…………っ、それが、あんたの…………っ!」

 日々の肉体仕事で程よく鍛え上げられた体つきにも目を奪われるものの、それ以上に隆々といきり立ち、下腹にくっつかんばかりに反り返っている男根の逞しさに息を呑む。
 私にだって多少の知識はあるから、それが間違いなく、私との情事で彼がすごく興奮してくれている証左なのはわかって、嬉しいような怖いような、複雑に入り混じった想いが心中に去来する。

 ――――怖いか?はじめて、なんだよな?

ベネット
「あっ、当たり前じゃないっ!わっ、私は自慢じゃないけどずっとずっとあんた一筋だったのっ!だから、いつこんなことがあっても、って覚悟はしてたし…………、それに、あんただってもう、我慢なんて出来ないんでしょ?」

 ――――あぁ、もう止まれない。止まれっこ、ない。絶対にお前を、俺の女にする。

ベネット
「――――っっ!?いい、よ、してっ、このまま、私を女にしてっ!無茶苦茶でも、無理矢理でもいいっ、あんたの気が済むまで、私を愛し抜いてっ!!」

 その堂々たる漢らしい宣言に、電流の様な歓喜が全身を突き抜けて。

 全てを受け入れる――――上手く言葉に出来ない想いを示すように両手を広げて意思を示せば、彼は躊躇うことなく私の身体に覆い被さってきて。
 仕事柄か、ほんの少し香ばしさが混じる体臭も、荒い鼻息も、滴り落ちる汗が私の肌に紡ぐ軌跡も、なにもかもがめくるめく、愛おしい。

 合図の様な、静かな口づけ。そして――――。

ベネット
「ん、くぅぅぅ…………っ!!あっ、くっ、うぅん…………っ!!」

 じゅぷぅ…………っ――――しとどに潤う私の秘孔に、未踏の女陰の深奥に、艶めかしい摩擦音を奏でながら、屹立した男根が押し入ってくる。

 メリメリっと、身体が下腹部から大きな杭で引き裂かれるような、鮮烈な痛苦。
 けれどなぜだろう、それすらも一期一会の、かけがえのないものだと思えば、圧倒的な歓びがその痛みを塗り替えていく。

ベネット
「ん、あぁ…………っ、はぁぁんっ!!」

 やがて、ズシン、と重々しい衝撃と共に、彼の全てが私の胎内に飲み込まれたのがわかって。
 愛の結晶を生み出す為の大事な場所の入り口を、その逞しい逸物で小突かれる感触は、あぁ何と言ったらいいのだろう、文字通り彼に全てを征服された――――そんな精神的な降伏を余儀なくされる、けれどそうされた事が途方もなく嬉しく、心地よく感じられて。

ベネット
「あ、あはは…………っ、ぜんぶ、はいっちゃっ、たぁ…………っ、あんたとわたし、これ以上なく繋がってる…………っ、ひとつに、なってる、よぉ…………っ!」

 ――――痛かった、よな?

ベネット
「うん、痛かった…………っ!だけど、だけどねっ、傷つけてくれたのがあんたで、本当に良かった…………っ!ごめん、ごめんねっ、ずっと意地っ張りで、素直になれなくて…………そんなどうしようもない私を、こうして壊してくれたのが、突き破ってくれたのが、本当に、本当に嬉しいの…………っ!!」

 愛しさが膨れ上がって、私は自分の下腹部に手を伸ばす。
 どんな鉱物よりも、それこそ伝説として語られるゼムリアストーンよりも硬いのではないか――――そんな錯覚さえ覚える逸物が、お臍の下のあたりまで至っているのが触感から伝わってきて、軽くなぞるだけでぞわっとした快美が宿り、膣内が浅ましく蠢くのがわかる。

ベネット
「ねぇ、あんたは気持ちいいの、かなぁ…………っ?私の身体で、膣中で、満足して、くれてる…………っ?」

 ――――当たり前、だっ!こうしてるだけでも気持ち良過ぎるくらいで…………動く、ぞっ!

ベネット
「ん…………っ、んく、ぅっ、あっ、んん…………っ!すご、ぃ…………っ、あんたのが、出たり、入った、りぃ…………っ、これ、これが性の、営み…………っ、んっ、は、ぁっ、ひぅ…………っ、んぁぁ…………っ!」

 ゆっくりとした、律動。
 さしもの彼もこちらの動きはまだ慣れないのか、たどたどしい挿抜が繰り返され、最初こそピリピリとした痛みがあったものの、すぐに私の浅ましい身体は、この性運動の醍醐味に適応していく。

 彼のモノが押し込まれる時には力を抜いて、引き抜かれる時には力を込めて、その際にカリ首の部分が敏感な箇所を擦り上げていくたび、ゾクゾクした快感がもたらされる。
 特に入り口付近を擦られるのがたまらなく気持ち良くて、やがて彼もその反応を汲み取ったか、動きに変化が出てくる。

ベネット
「やっ、んぁぁっ!?そっ、そこぉっ、そこ弱い、のっ、あぁっダメっ、入り口でぐりぐりってされるの、好きぃ…………っ、んんっ、はぁんっ、あぁっいいっ、気持ち、いぃ…………っ!んっくぅっ!あぁっそれもっ、いきなり奥、ズンってされるのも、好きぃ…………っ!!」

 ――――くっ、うぁっ!?締め付けが、すごい…………っ!?

ベネット
「だっ、だってぇ…………っ、勝手にそうなっちゃうっ、わたしの身体が、もっともっとって、あんたを求めて止まないの…………っ!んっ、はぁっ、あぁいぃっ、それっ、その動き、クセに、なる…………ぅっ、んっああっ、たまん、ない…………っ、はじめて、なのにこんな、こんなに気持ちいい、なんてぇ…………っっ!!」

 直線的だった腰使いが立体的になり、リズムにも緩急がつけられて、その上で的確に私の弱点は刻一刻と見抜かれていく。
 虚ろな目で見上げれば、歯を食いしばって快楽に流されまいと踏んばる必死の表情が映り込んで、そんなに我慢しなくてもいいのに、という気持ちと、もっともっと気持ちよくしてほしいという相反する想い、けれどどちらも疑いようのない本心が、幸福感を伴って胸中を満たしていく。

ベネット
「あんっ、あぁっ、ふぁぁっ!!すっご、いぃ…………っ、こんなっ、こんなにすごいの、ダメ、頭、おかしくなっちゃう…………っ!!んぁぁそれぇっ、奥ぐりぐり、気持ちいぃ…………っ!もっと、もっとしてっ、奥で良くしてっ、おくっ、おくおくぅっ!!!」

 ――――くぅっ、子宮の入り口、パクパクってして、吸い付いてくる…………っ!

ベネット
「だって欲しいのっ、そこに欲しいのぉっ!!あんたと私の愛し合った証、刻んで欲しい…………っ!もう二度と、離れたくないっ、ずっとこのままっ、あぁっ、感じるぅっ、しあ、わせぇ…………っ!」

 ――――離す、もんかっ!誰にだって、空の女神にだって、決してお前を渡したりしない…………っ!!

ベネット
「んぁぁっ、すごっ、まっ、まだおっきく…………ぅっ!!ふぁんっ、ああぁぁっ、いいよっ、もっと激しくっ、このまま最後まで一緒、いっしょにぃっっ!!わたしも、もうダメ…………っ、またきちゃうっ、はじめてなのに、イカされちゃう…………っ!!」

 私の限界の訴えを意気に感じたか、最後の力を振り絞っての激しい注挿が繰り出される。
 じゅぷっ、ずぷっ、にゅちゅっ――――一刺しごとにシーツに愛液が滴り落ち、奥まで届くたびに虹色の光が脳内を蹂躙していく。
 ぼぅっと視界も霞み、握りしめたシーツの感触だけが現実感を伴って、それでもその微かな抵抗は、押し寄せる強大な喜悦の波の前には風の前の塵の如しで――――。

ベネット
「はぅっ、んはぁっ!!!くぁっ、んぅっ、気持ち、よすぎ、てっ、なに、も、考えられ…………っ、んっ、あっはぁっ、ダメっ、ダメダメぇっ、おっきぃの、くるぅっ!!!くぅっ、あぁんっ、もっ、ムリぃ…………っ、しゅ、ご…………っ、あぁイクっ、イクイクイク…………っ!!!」

 ――――おっ、俺も出る…………っ、このまま、全部、お前の膣中に出す、ぞ…………っ!!

ベネット
「き、てぇっ、いちばん、おくにぃ…………っ!あついの、たく、さん…………っ、あぁっ、はぁんっ、ふぁぁぁっ!!!イクっ、あぁイクっっ、ん、く、あ、あ、あ――――あぁぁぁぁあぁぁぁっっっ!!!!!」

 先程とは比べ物にならないほどの、女体の深奥から発する途方もない絶頂の波が、一瞬で意識のほとんどを刈り取っていく。
 まるで極楽に押し上げられたかのような圧倒的な悦楽に、ただただ翻弄され、浸り切る。

 そして私の極まりに誘引されるように、一際力強く叩き込まれた逸物の先端から大量の子種が吐き出され、私の子宮を白く染め尽くしていく――――。

ベネット
「ん…………っ、くぁ…………っ、出、て…………るぅ…………っ、す、ご…………ぉっ、これ、おくのおく、なんかい、もっ、叩かれ、てぇ…………っ!あっダメっ、これ、ダメぇ…………っ、イク、またこれ…………っ、あっ、うぁ…………っ、イッ、ク…………ぅぅぅっ…………っっ!!」

 終わりを知らずに迸る白濁に、原初的な女の悦びを無理やり呼び起こされて、先の絶頂の余韻も鎮まらぬまま、私は立て続けに随喜の極致に押し上げられていく。
 その暴力的な快楽に陶然としながら、虚脱しかかった腕を懸命に動かし、眼前の愛しい身体を引き寄せる。

 ――――はぁ、はぁ…………っ、すげぇ、こんなに気持ち良かったの、はじめてだ…………。

ベネット
「…………ん…………っ、はぁ…………っ、わたし、もよ…………。こんなに、凄いなんて…………それに、こんなに嬉しい、なんて…………っっ!」

 まだ膣内には、彼が放出した愛の結晶を紡ぐための子種が充満し、ずっとこのままにしておきたい――――そんな益体もない願いが脳裏を過ぎる。

 だってこんなの、あまりにも幸せ過ぎるのだ。
 ついさっきまで命の危険に脅かされていた――――その吊り橋効果の様なものはあったに違いないけれど、それでも今この瞬間、私達は世界で一番幸せなカップルだと疑いなく信じられて――――。

ベネット
「…………あれ?でも…………?」

 ――――どうしたんだ?

ベネット
「い、いえその…………、えっと、これってもう、私達はカップル、って事でいい、のよね?」

 ――――カップル?いいや、違うな。

ベネット
「え?えぇぇっ!?」

 その突然の否定に、頭が真っ白になる。
 すると彼は、イタズラが成功した悪ガキのようにニヤッと屈託なく笑って――――。

 ――――俺達はもう、家族だよ。ベネット、俺は君の事が好きだ。誰よりも愛してる。だから、結婚しよう。

ベネット
「〜〜〜〜〜っっっ!?も、もぅっ、あんたって奴はもぅっ、ホントに、本当にっ、どこまでも、どこまでも私を振り回してぇ…………っ!!」

 ――――ははっ、悪い悪い。それで、返事は?

ベネット
「馬鹿っ、性悪っ、天然ジゴロっ!そんなの…………っ、そんなのするに決まってるじゃないっ!!!私だって、わたしだってっ、誰よりあんたの事が好きっ、大好きっ、愛してるんだからぁっ!!!」

 全身全霊で、ありったけの想いをぶちまけて、私はその武骨な求愛に応える。
 そんな駄々っ子のような私を慈しむように、彼は私の頬を優しく撫で、顔を近づけてくる。
 
 目を閉じて、誓いの口づけを受け止めれば、かつてないほどの陶酔感と、まるで酸欠になったかのような息苦しさが同時に襲ってきて、けれどその温もりを、感触を手放したくない私は、そのままスゥッと闇の中に意識が吸い込まれていくのに抗わず――――。

………………………………


……………………


…………


ベネット
「…………………………………………は?」

 目が覚めて、しばらく今自分がいる場所がどこかわからずに混乱する。
 天井を見上げ、窓の外に目を向け、まじまじと自分の両手を見つめて、ようやく乖離していた現実感が意識に追いついてくる。

 そうだ、ここは帝都のとある宿。
 私は武者修行に出たオスカーを追いかけ…………じゃなかった、偵察に来て、そしたら丁度夏至祭のイベントの手伝いに巻き込まれて、それで今日はその本番…………?

ベネット
「…………?…………??……………………え、でもあの…………今の、って、じゃあ…………っ!?〜〜〜〜〜っっっ!?!?!?」

 先程までの体験が、まるで出来過ぎの映画の様な夢であったことを自覚し、とりわけその最後の濡れ場の生々しさが鮮明に思い出されて、私はあまりの羞恥に布団の中で派手に転げ回ってしまう。

ベネット
「(ななっ、ななななっ、なななななななっ!?!?なっ、なんなのよ今の夢ぇっ!?いっ、いくら昨日、少しは自分の気持ちに向き合ってみようかって前向きになったからって、あんな、あんな都合のいい…………っ!馬鹿なのっ、ねぇ私馬鹿なのぉっ!?)」

 内心で浅はかな自分を全力で罵っても、一旦脳裏に焼き付いた光景は簡単には消え去ってくれなくて。
 あんな乙女な一面が自分の中にもあったんだ――――その歴々たる事実に慄然としながら、なんとか呼吸を整えて、割り切ろうと意識を集中する。

ベネット
「(くっ、うぅぅ…………っ、あれは夢あれは夢あれは夢…………っ、あんなの現実で起こりっこない、有り得ない空想なんだから真に受けちゃダメ、忘れるの、綺麗さっぱり忘れるのよベネット…………っ!)」

 ――――ううん、それは単なる夢じゃ、ないよ。

ベネット
「……………………え?」

 一瞬、まだ夢の続きにいるのかと錯覚してしまう。
 けれど確かに今、私の脳内の台詞に応じるように、なんらかの『声』が私の中に届いた。
 そしてそれは、無邪気でありながら老成も感じさせる、善良な気持ちに満ちた、どこかで耳にしたような声で――――。

 ――――今、有り得ないくらい霊脈が活性化してるから、今のはそれを利用して見せることが出来た、もしかしたらあるかもしれない未来の可能性。

ベネット
「可能、性…………?未来の、ですって…………?」

 ――――でも今は、これが精一杯。だからベネット、どうか気を付けて。オスカーと二人で、無事に戻ってきてね…………。

ベネット
「気、気をつけてってっ!い、いったいなに、なんなのよ…………っ!?」

 けれどその声は、すぐに周波数がずれてしまったかのようにノイズ交じりになり、掠れて聞こえなくなってしまう。
 余りにも訝しい出来事に頬をつねりたくなるけれど、でも今の謎の声には間違いなく、私の事を心配してくれていたと信じられる切なる響きがあって。

 これから、一体何が起きるというのか――――窓の外の曇り空のように、私の心にも不安が広がっていく。
 そして、それを助長するかのように、ダダダッと階段を駆け上ってくる音、そして私の部屋を乱雑にノックする音が耳に届いて――――。

オスカー
「ベネット、起きてるかっ!!大変なんだっ、帝都が、皇帝がっ――――」

 私達の運命を流転させる、新たな動乱が幕を開けた。

posted by クローバー at 06:28| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする